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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166655
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J15/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082887
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA07
3J040EA05
3J040EA18
3J040EA22
3J040FA01
3J040HA05
3J040HA20
(57)【要約】
【課題】ガスケットが挟み込まれる一対の密封面を互いに接続する作業が行われるときにガスケットが脱落することを抑止できる密封構造を提供する。
【解決手段】密封面の一方に形成された環状溝23と、環状であって中心に向けて開口した開口部41を有し且つ環状溝23に装入される環状のガスケット40と、ガスケット40に装着され且つ環状溝23に装入されて環状溝23の中心から膨らむ方向に湾曲する長尺状のバネ部材50と、を有する。環状溝23は、内周面において環状溝23の中心に向けて窪む逆テーパ面23bを有する。バネ部材50は、ガスケット40の開口部41に挿入される両端部(端部51、52)と、逆テーパ面23bによって押される被押圧部53と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の密封面を密封する密封構造であって、
前記密封面の一方に形成された環状溝と、
環状であって中心に向けて開口した開口部を有し且つ前記環状溝に装入されるガスケットと、
前記ガスケットに装着され且つ前記環状溝に装入されて前記環状溝の中心から膨らむ方向に湾曲する長尺状のバネ部材と、を有し、
前記環状溝は、内周面において前記環状溝の中心に向けて窪む逆テーパ面を有し、
前記バネ部材は、前記ガスケットの前記開口部に挿入される両端部と、前記逆テーパ面によって押される被押圧部と、を有する、密封構造。
【請求項2】
請求項1に記載の密封構造であって、
前記ガスケットは、前記開口部における前記環状溝の溝底側に位置する底側片と、前記開口部における前記底側片とは反対側に位置する上側片と、を有し、
前記底側片は、少なくとも前記被押圧部と反対側の領域において前記上側片よりも前記ガスケットの中心に向けて延出している、密封構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の密封構造であって、
前記バネ部材が前記ガスケットに装着され且つ前記ガスケットが前記環状溝に装入されていない状態において、前記バネ部材の両端の前記ガスケットの中心に対する角度が180±20°である、密封構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の密封構造であって、
前記バネ部材が前記ガスケットに装着され且つ前記ガスケットが前記環状溝に装入されていない状態において、前記バネ部材の前記ガスケットの中心に対する距離が、前記環状溝の内周最小半径よりも小さい、密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に関する。具体的には、一対の密封面を密封(シール)する密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
流路を構成する配管の接続部において、流体の漏出を抑止するためにガスケットが用いられる場合がある。具体的には、一対の配管のそれぞれの端部を形成する密封面が互いに閉じ合わされるとき、密封面の間にガスケットが挟み込まれる。
【0003】
ガスケットが挟み込まれる一対の配管を互いに接続する作業を容易にするため、ガスケットの仮止め構造が提案されている。この仮止め構造によれば、ガスケットは、一対の配管の間に配置される本体部と、本体部の縁部(周辺部)から突出して配管の一方の外周を挟む複数の突出部と、を備えている。本体部には、一対の配管が互いに接合されるときに圧縮されて変形するビード部が形成されている。複数の突出部によって配管の一方が把持され、その結果、ガスケットが当該配管から脱落することが回避される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-42796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ガスケットによれば、配管の一方の外周面に突出部が現れるため、配管周辺に空間的余裕が乏しい場合は使用することが困難となる。加えて、ガスケットの密封機能がビード部によって実現されることが前提となるため、環状ガスケット(例えば、Oリング)が使用される場合と比較して一対の配管のそれぞれの端部に設けられるフランジの小型化が困難となる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ガスケットが挟み込まれる一対の配管(即ち、一対の密封面)を互いに接続する作業が行われるときにガスケットが脱落することを抑止できる密封構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明に係る密封構造は、一対の密封面を密封する密封構造であって、前記密封面の一方に形成された環状溝と、環状であって中心に向けて開口した開口部を有し且つ前記環状溝に装入されるガスケットと、前記ガスケットに装着され且つ前記環状溝に装入されて前記環状溝の中心から膨らむ方向に湾曲する長尺状のバネ部材と、を有し、前記環状溝は、内周面において前記環状溝の中心に向けて窪む逆テーパ面を有し、前記バネ部材は、前記ガスケットの前記開口部に挿入される両端部と、前記逆テーパ面によって押される被押圧部と、を有する。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る密封構造であって、前記ガスケットは、前記開口部における前記環状溝の溝底側に位置する底側片と、前記開口部における前記底側片とは反対側に位置する上側片と、を有し、前記底側片は、少なくとも前記被押圧部と反対側の領域において前記上側片よりも前記ガスケットの中心に向けて延出している。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係る密封構造であって、前記バネ部材が前記ガスケットに装着され且つ前記ガスケットが前記環状溝に装入されていない状態において、前記バネ部材の両端の前記ガスケットの中心に対する角度が180±20°である。
【0010】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係る密封構造であって、前記バネ部材が前記ガスケットに装着され且つ前記ガスケットが前記環状溝に装入されていない状態において、前記バネ部材の前記ガスケットの中心に対する距離が、前記環状溝の内周最小半径よりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、バネ部材が発生させる弾性力に応じて被押圧部が逆テーパ面によって押され、その結果、一対の密封面を互いに密封する作業を行うときにガスケットが環状溝から脱落することを抑止できる。より具体的に述べると、被押圧部が環状溝の中心へ向かうように変形する弾性力をバネ部材が発生させると、被押圧部が逆テーパ面によって押されてバネ部材がガスケットと共に環状溝内を移動する。
【0012】
その結果、被押圧部に加え、ガスケットにおける被押圧部とは反対側の箇所(当接箇所)が、逆テーパ面を押圧する。加えて、逆テーパ面が環状溝の中心へ向けて窪んでいる。そのため、バネ部材の被押圧部とガスケットの当接箇所とが逆テーパ面の窪みを両側から挟むこととなる。換言すれば、ガスケットを環状溝から取り外そうとすると、バネ部材を新たに弾性変形させる必要がある。従って、ガスケットが環状溝から脱落することが抑止される。
【0013】
第2の発明では、バネ部材の被押圧部が逆テーパ面によって押された結果としてガスケットにおける逆テーパ面と当接する箇所(即ち、ガスケットにおける被押圧部とは反対側の箇所、当接箇所)の底側片が、ガスケットの中心へ向けて延出している。そのため、底側片が中心へ向けて延出していない場合と比較して当接箇所に対応する上側片がガスケットの中心から離間する。その結果、一対の密封面を密封したときに上側片が密封面に挟まれることが回避される。
【0014】
第3の発明では、ガスケットの開口部に挿入されてガスケットの内周面に当接するバネ部材の両端のそれぞれを結ぶ直線が、ガスケットの中心を通る直線(即ち、直径)と比較的近接する。そのため、バネ部材がガスケットから脱落することが抑止され且つバネ部材の両端をガスケットに装入する作業が困難となることが回避される。
【0015】
第4の発明によれば、バネ部材が発生させる弾性力によってバネ部材の被押圧部とガスケットの当接箇所とによって逆テーパ面が挟まれることがより確実となる。より具体的に述べると、ガスケットの中心からバネ部材までの距離(の最小値)が、環状溝の内周最小半径(即ち、環状溝の中心から逆テーパ面の窪みまでの距離)よりも小さいと、ガスケットがバネ部材と共に環状溝に装入されたときにバネ部材が弾性変形する。その弾性変形に伴う弾性力によって、ガスケットが環状溝に対して移動し且つ逆テーパ面がバネ部材の被押圧部とガスケットの当接箇所とによって挟まれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る、密封面の一方に形成された環状溝、環状溝に装入されるガスケット、及びガスケットに装着されたバネ部材を含む密封構造の横断面図である。
図2】環状溝、環状溝に装入されたガスケット、及びバネ部材の上面図である。
図3】環状溝に未だ装入されていないガスケット及びバネ部材の上面図である。
図4】バネ部材を環状溝に装入する様子を示すための、環状溝、ガスケット及びバネ部材の横断面図である。
図5】本実施形態の変形例に係るバネ部材をガスケットと共に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図1~4を参照しながら説明する。説明中の同じ符号(参照番号)は、重複する説明をしないが同じ機能を有する同じ要素を意味する。図1に、実施形態に係る一対の密封面を密封する密封構造1が示される。なお、以下の説明において、「下方」及び「左方」等の上下左右に係る用語が用いられている。これらの用語は各図に示された方向を表し且つ便宜的に用いられている。従って、これらの用語によって密封構造1の構造が限定されるものではない。
【0018】
密封構造1は、図1に示される配管2、3に適用される。密封構造1は、更に、環状且つ金属製のガスケット40及び長尺状且つ金属製のバネ部材50を含んでいる。配管2、3のそれぞれの先端部にはフランジ21、31が配設されている。フランジ21、31のそれぞれは、密封面22、32を有している。
【0019】
フランジ21、31のそれぞれには、複数のボルト孔21a、31aが形成されている。ボルト孔21a、31aに挿通されるボルト及びナット(何れも不図示)によってフランジ21、31が互いに締結され、以て、配管2、3が互いに接続される。即ち、一対の密封面22、32が互いに閉じ合わされる。本実施形態における配管2、3は、内燃機関のエキゾーストマニホールドから過給機のタービンへ至る排ガス経路の一部を構成する(何れも不図示)。
【0020】
密封面22、32が互いに閉じ合わされたときに密封面22、32を互いに密封(シール)して配管2と配管3との間から排ガスが漏出するのを抑止するため、密封面22(フランジ21)に設けられた環状溝23に、ガスケット40がバネ部材50と共に装入される。環状溝23は、配管2の外側に、配管2と同軸状に形成されている。図1における直線Laは、配管2(及び、配管2に同軸状に連結される配管3)の軸線であり且つ環状溝23の中心を通る直線である。
【0021】
図2においては、環状溝23の中心且つ配管2の中心(即ち、直線Laの位置)は点Paによって示される。一方、ガスケット40の中心は点Pbによって示される。図1における直線Lbは、点Pbを通り且つ直線Laに対して平行に延びる直線である。図1、2から理解されるように、ガスケット40は環状溝23に対して左方に移動しており、その理由は後述される。なお、図2では、配管2及びボルト孔21a並びにフランジ21の全体の図示が省略されている。
【0022】
環状溝23にガスケット40が装入された状態にて密封面22、32が互いに閉じ合わされると、ガスケット40が環状溝23(より具体的には、後述される溝底23a)と密封面32とによって圧接(押圧)されて変形する。その結果、密封面22、32が密封される。具体的には、図1に示されるように、環状溝23の深さd1よりもガスケット40の厚みd2の方が長いため、厚みd2と深さd1との差分(即ち、d2-d1>0)が、いわゆる締め代となる。
【0023】
環状溝23は、密封面22が下方へ窪んで形成された内周面によって構成されている。環状溝23の内周面は、下面である溝底23a、及び直線La側(点Pa側)の壁面である逆テーパ面23bを含んでいる。図1から理解されるように、逆テーパ面23bは、直線Laへ向けて窪んでいる。より具体的には、逆テーパ面23bにおける上端部から直線Laまでの長さである半径r1は、逆テーパ面23bにおける最も窪んだ箇所から直線Laまでの長さである半径r2(内周最小半径)よりも大きい(即ち、r1>r2)。
【0024】
ガスケット40は、略C字断面を有している。具体的には、ガスケット40は、直線Lbへ向けて開口しており、そのため、開口部41が形成されている(図1を参照)。開口部41の溝底23a側の端部は、直線Lbへ向けて延出した環状且つ平板状の底側片42を含んでいる。開口部41の溝底23aとは反対側に位置する環状の縁は、上側片43とも称呼される。
【0025】
配管2、3を互いに接続する作業(即ち、密封面22、32を互いに閉じ合わせる作業)が行われるときにガスケット40が環状溝23から脱落することを抑止するため、バネ部材50がガスケット40に装着される。図2に示されるように、バネ部材50は、ガスケット40と共に環状溝23に装入されたとき、点Pa(直線La)から膨らむ方向に湾曲している。
【0026】
バネ部材50は、一対の端部51、52(両端部)及び被押圧部53を含んでいる。バネ部材50がガスケット40に装着されるとき、端部51、52は、ガスケット40の開口部41に挿入される。被押圧部53は、バネ部材50の中央部である。被押圧部53は、バネ部材50がガスケット40と共に環状溝23に装入されたとき、逆テーパ面23bによって押圧される。
【0027】
より具体的に述べると、バネ部材50がガスケット40と共に環状溝23に装入されると、被押圧部53が逆テーパ面23bに押圧されてバネ部材50の形状が変化する。即ち、バネ部材50が弾性変形する。加えて、バネ部材50がガスケット40と共に左方へ移動する。そのため、環状溝23の左方において被押圧部53が逆テーパ面23bと当接し、且つ環状溝23の右方においてガスケット40の底側片42が逆テーパ面23bと当接する。
【0028】
換言すれば、被押圧部53が点Pbから離間するようにバネ部材50が弾性変形していることに起因して発生するバネ部材50の弾性力によって、被押圧部53が逆テーパ面23bを左方から押圧し且つ底側片42が逆テーパ面23bを右方から押圧する。即ち、被押圧部53と、底側片42(具体的には、底側片42における被押圧部53とは反対側にある箇所(領域))と、によって逆テーパ面23bが両側から挟まれている。
【0029】
更に、上述したように逆テーパ面23bが直線Laに向けて窪んでいる。そのため、ガスケット40及びバネ部材50の図1における上方への移動がバネ部材50の弾性力によって妨げられる。換言すれば、ガスケット40を環状溝23から取り外そうとすると、バネ部材50を新たに弾性変形させる必要がある。具体的には、被押圧部53が直線Lb(点Pb)から離間するようにバネ部材50を変形させる必要がある。従って、配管2、3を互いに接続する作業が行われるときにガスケット40が環状溝23から脱落することが抑止される。
【0030】
図3を参照しながら更に具体的に説明する。図3には、バネ部材50がガスケット40に装着され且つガスケット40が環状溝23に装入されていない状態(「装入準備状態」とも称呼される)にあるバネ部材50が示されている。加えて、図2に示されていた環状溝23に装入されたガスケット40に装着されたバネ部材50が、二点鎖線により示される。被押圧部53から点Pbまでの長さである距離r3(即ち、点Pbとバネ部材50との間の距離の最小値)は、半径r2よりも小さい(即ち、r3<r2)。
【0031】
そのため、ガスケット40がバネ部材50と共に環状溝23に装入されると、上述したように被押圧部53が点Pbから離れるようにバネ部材50が弾性変形する。その結果、ガスケット40が左方へ移動し且つバネ部材50が弾性力を発生させてガスケット40の環状溝23からの脱落が抑止される。
【0032】
ところで、バネ部材50の形状によって、バネ部材50がガスケット40から脱落することが抑止される。ガスケット40に装着されていないバネ部材50(即ち、自然状態にあるバネ部材50であり、不図示)の端部51、52どうしの距離は、装入準備状態にあるバネ部材50と比較して大きい。
【0033】
換言すれば、挿入準備状態にあるバネ部材50は弾性変形しており、その結果、端部51、52のそれぞれがガスケット40の内周面を内側から押圧する弾性力を発生させている。従って、ガスケット40に装着されたバネ部材50をガスケット40から取り外そうとすると、バネ部材50を新たに弾性変形させる必要がある。加えて、点Pbとバネ部材50の両端のそれぞれとを結ぶ直線(具体的には、点Pbから点P1aに延びる直線L1、及び点Pbから点P2aに延びる直線L2)のなす角度θ1(即ち、バネ部材50の両端の点Pbに対する角度)は、略180°である。そのため、バネ部材50がガスケット40から脱落することが抑止される。
【0034】
更に、端部51、52は、ガスケット40の内周面に連続して当接する区間を含んでいる。具体的には、端部51は、点P1aから点P1bまでの区間においてガスケット40の内周面に当接している。一方、端部52は、点P2aから点P2bまでの区間においてガスケット40の内周面に当接している。即ち、少なくとも装入準備状態において、端部51、52は、ガスケット40の内周面と曲率が等しい区間を含んでいる。
【0035】
換言すれば、端部51、52のそれぞれは、ガスケット40の内周面に対して点ではなく線により当接している。そのため、バネ部材50がガスケット40に対して移動することが抑止され、従って、バネ部材50がガスケット40から脱落する可能性が低くなっている。加えて、ガスケット40及びバネ部材50を環状溝23に装入したときにバネ部材50(具体的には、端部51、52)がガスケット40に対して移動することが抑止され、その結果、ガスケット40がバネ部材50の弾性力によって確実に左方へ移動する。
【0036】
図4を参照しながらガスケット40及びバネ部材50を環状溝23に装入する過程を説明する。図4では、バネ部材50が装着されたガスケット40が環状溝23に装入されているが、被押圧部53は未だ密封面22上にある。そこで、被押圧部53を作業者が密封面22上を矢印で示されるように移動させて更に環状溝23に収めると、バネ部材50が全て環状溝23に装入される。被押圧部53が環状溝23に装入されるとき、上述したようにバネ部材50が新たに弾性変形すると共にガスケット40が環状溝23に対して移動する。その結果、被押圧部53が逆テーパ面23bと当接すると共にガスケット40における被押圧部53とは反対側の領域において底側片42が逆テーパ面23bと当接する。
【0037】
(変形例)
図5を参照しながら本実施形態の変形例について説明する。本変形例に係る密封構造1aは、バネ部材50に代わり、バネ部材50aを含んでいる。図5に示されるように、バネ部材50aは、少なくとも装入準備状態にあるとき、点Pbから膨らむように湾曲しており、且つ点Pbに向けて窪んだ一対の被押圧部54、55(凹部)を有している。点Pbから被押圧部54、55のそれぞれまでの長さである距離r4(即ち、点Pbからバネ部材50aまでの距離の最小値)は、半径r2(図1、2を参照)よりも小さい(即ち、r4<r2)。
【0038】
従って、ガスケット40がバネ部材50aと共に環状溝23に装入されると、被押圧部54、55のそれぞれが逆テーパ面23bに押されてガスケット40が左方に移動する。そのため、バネ部材50aが発生させる弾性力によって、2つの被押圧部54、55及び底側片42(具体的には、底側片42における被押圧部54、55と反対側にある箇所(領域))によって逆テーパ面23bが挟まれる。その結果、ガスケット40が環状溝23から脱落することが抑止される。
【0039】
加えて、バネ部材50aは、点Pbから離れる方向に膨らんだ一対の端部56、57(両端部)を有している。具体的には、端部56は、点P3aから点P3bまでの区間においてガスケット40の内周面に当接している。一方、端部57は、点P4aから点P4bまでの区間においてガスケット40の内周面に当接している。点Pbから点P3aに延びる直線L3と、点Pbから点P4aに延びる直線L4と、のなす角度θ2(即ち、バネ部材50aの両端の点Pbに対する角度)は、180°よりも若干小さく且つ170°よりも大きい角度である(即ち、170°<θ2<180°)。そのため、バネ部材50aがガスケット40に対して移動することが抑止され、以て、バネ部材50aがガスケット40から脱落することを回避できる。
【0040】
更に、バネ部材50aは、端部56(具体的には、点P3a)から被押圧部54とは反対側へ向けて更に延在し且つガスケット40の内周面と当接しない区間(離間区間)を含んでいる。同様に、バネ部材50aは、端部57(具体的には、点P4a)から被押圧部55とは反対側へ向けて更に延在し且つガスケット40の内周面と当接しない区間(離間区間)を含んでいる。バネ部材50aの長さがバネ部材50と比較して長くなっているが、一対の離間区間はガスケット40の内周面とは当接していないので、バネ部材50aをガスケット40に装着する作業が困難となることが回避できる。
【0041】
以上、説明したように、密封構造1、1aによれば、バネ部材50、50aが発生させる弾性力によって、密封面22、32を互いに密封する作業を行うときにガスケット40が環状溝23から脱落することを抑止できる。具体的には、上述したように装入準備状態にあるバネ部材50、50aに係る距離r3、r4が環状溝23の内周最小半径である半径r2よりも小さい。そのため、ガスケット40を環状溝23に装入したときに発生するバネ部材50、50aの弾性変形に伴う弾性力に起因して、逆テーパ面23bが、被押圧部53(又は、被押圧部54、55)と底側片42とによって左右から挟まれることとなる。
【0042】
仮に、密封構造1、1aに係るガスケット40が底側片42を含んでいなければ、密封面22、32を互いに密封するときに上側片43が密封面22、32の間に挟まれる可能性がある。即ち、開口部41の溝底23a側の端部が上側片43と比較して点Pb側に向けて延出していなければ、ガスケット40における被押圧部53又は被押圧部54、55と反対側の領域において上側片43が逆テーパ面23bを超えて点Pb側に接近する。その反面、上述したガスケット40によれば、上側片43よりも点Pbに向けて延出した底側片42を有しているため、ガスケット40における被押圧部53又は被押圧部54、55と反対側の領域において上側片43が点Pbから離間する。その結果、上側片43が密封面22、32の間に挟まれることが回避される。
【0043】
更に、なす角度θ1、θ2が180°±20°の範囲に含まれているため、装入準備状態にあるバネ部材50、50aがガスケット40に対して移動し、或いは脱落することが抑止される。仮に、なす角度θ1、θ2が170°よりも小さければ、バネ部材50がガスケット40から脱落する可能性が高くなる。一方、なす角度θ1、θ2が190°よりも大きければ、バネ部材50をガスケット40に装着する作業が困難となる可能性が高くなる。
【0044】
以上、本発明の実施形態を上記の構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能である。従って本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、例えば下記のような変更が可能である。
【0045】
バネ部材50の端部51、52は、装入準備状態において、ガスケット40の内周面と曲率が等しい区間を含み、そのため、ガスケット40の内周面に対して線により当接していた。これに代わり、バネ部材50の端部51、52は、ガスケット40の内周面と曲率が等しい区間を含んでいなくても良い。即ち、端部51、52がガスケット40の内周面に対して点により当接しても良く、この場合であってもバネ部材50がガスケット40から脱落することが抑止され得る。
【0046】
ガスケット40は、ガスケット40の中心へ向けて延出した環状且つ平板状の底側片42を有していた。これに代えて、ガスケット40は、被押圧部53又は被押圧部54、55と反対側にあって環状溝23にバネ部材50、50aと共に装入されたときに逆テーパ面23bと当接する箇所(領域)においてのみ中心(即ち、逆テーパ面23b)へ延出した底側片を有していても良い。更に、底側片は、平板ではなく、中心へ向けて延出した1つ又は複数の突起であっても良い。
【0047】
直線L1と直線L2とのなす角度θ1は、略180°であった。一方、直線L3と直線L4とのなす角度θ2は180°よりも若干小さく且つ170°よりも大きい角度であった。これに代えて、角度θ1、θ2は、180°±20°の範囲において適宜変更されても良い。
【0048】
配管2、3は、内燃機関のエキゾーストマニホールドから過給機のタービンへ至る排ガス経路の一部を構成していた。即ち、密封構造1は、気体の流路を連結する密封面22、32を互いに密封していた。これに代えて、密封構造1は、流体の流路を連結する一対の密封面に適用されても良い。
【符号の説明】
【0049】
1、1a…密封構造
2……配管
21…フランジ
21a…ボルト孔
22…密封面
23…環状溝
23a…溝底
23b…逆テーパ面
3……配管
31…フランジ
31a…ボルト孔
32…密封面
40…ガスケット
41…開口部
42…底側片
43…上側片
50、50a…バネ部材
51、52…端部
53~55…被押圧部
56、57…端部
図1
図2
図3
図4
図5