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特開2024-166656スライド式切換弁および冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166656
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】スライド式切換弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082888
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC54
3H067DD02
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA16
3H067EB07
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】本発明は、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】スライド式切換弁の弁座部材40は、摺動面41と継手面42と摺動面41から継手面42まで貫通する第1貫通孔43とを備えている。第1貫通孔43は、摺動面41に開口する第1ポート孔43aと継手面42に開口する第1継手孔43bと第1ポート孔43aと第1継手孔43bとを連通させる第1連通孔43cとを有している。第1連通孔43cは、摺動面41の直交方向Xに対して傾斜し、その内径が第1ポート孔43aの内径よりもよりも大きく形成されている。第1ポート孔43aは、第1連通孔43cとの連続部分において全周が第1連通孔43cの円周内に位置している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられる弁座部材と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記弁座部材は、前記弁体が摺動する摺動面と、前記摺動面と反対側に位置する継手面と、前記摺動面から前記継手面まで貫通する複数の貫通孔と、を有し、
前記貫通孔は、前記摺動面に開口したポート孔と、前記継手面に前記ポート孔よりも大きな内径で開口して継手部材が挿入される継手孔と、前記ポート孔と前記継手孔とを連通させる連通孔と、を有し、複数の前記貫通孔における前記ポート孔は、前記軸線方向に並んで設けられ、
複数の前記貫通孔のうち少なくとも一つを構成する第1貫通孔は、前記ポート孔として第1ポート孔を備え、前記連通孔として第1連通孔を備え、前記継手孔として第1継手孔を備え、
前記第1連通孔は、前記摺動面の面直交方向に対して傾斜して設けられ、その内径が、前記第1ポート孔の内径よりもよりも大きく、
前記第1ポート孔は、前記第1連通孔との連続部分において全周が前記第1連通孔の円周内に位置し、
前記第1継手孔の内径は、前記第1連通孔の内径以上の大きさに設けられていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
複数の前記貫通孔のうち前記第1貫通孔と異なる第2貫通孔の前記ポート孔である第2ポート孔は、前記摺動面の前記面直交方向に延びて設けられるとともに、前記第2貫通孔の前記連通孔である第2連通孔よりも内径が小さく形成され、
前記第2連通孔は、前記摺動面の前記面直交方向に延びて設けられ、
前記第2ポート孔と前記第2連通孔との連続部分において前記第2ポート孔の全周が前記第2連通孔の円周内に位置し、
前記第1ポート孔の貫通方向の長さは、前記第2ポート孔の貫通方向の長さよりも短く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記第1連通孔の内径は、前記第1継手孔の内径よりも小さく、
前記第1連通孔は、前記第1継手孔との連続部分において全周が前記第1継手孔の円周内に位置し、
前記第2連通孔の内径は、前記第2貫通孔の前記継手孔である第2継手孔の内径よりも小さく、
前記第2連通孔は、前記第2継手孔との連続部分において全周が前記第2継手孔の円周内に位置し、
前記第1継手孔の貫通方向の長さは、前記第2継手孔の貫通方向の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
複数の前記貫通孔における前記継手孔は、前記軸線方向に並んで前記継手面に開口することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記第1継手孔は前記第1連通孔と平行かつ同軸に設けられ、前記継手面には、前記摺動面に交差する方向に延びて前記第1継手孔が開口するテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記第1貫通孔が複数設けられ、前記第1継手孔は、前記第1ポート孔と平行に延びて前記継手面に開口し、
傾斜した前記第1連通孔を前記継手面まで仮想的に延長した仮想周縁が、前記第1継手孔の開口の円周内に位置することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記弁座部材はステンレス製であることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
隣接する前記継手孔にそれぞれ連通する前記ポート孔のうちの一方の中心から、他方の中心までの前記軸線方向の距離である中心間距離は、隣接する前記継手孔の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
請求項1に記載のスライド式切換弁を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換える切換弁として、筒状の弁本体部と、弁本体部内部にスライド自在に設けられた弁体と、弁本体部に設けられる弁座と、弁体を軸線方向にスライド駆動する駆動機構と、を備えたスライド式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。弁座は、弁体が摺動する摺接面に開口する複数(例えば3個)のポートと、各ポートに対して摺接面の反対側から連通する継手孔と、を有し、各継手孔に継手部材としての配管が挿入されている。このスライド式切換弁では、複数のポートが軸線方向に並んで設けられるのに対し、配管を接続する継手孔は、ポートに対して径寸法が大きいためにポートと同軸に設けることができず、各ポートに対して軸線方向や軸線方向に交差する交差方向にずれて設けられている。すなわち、ポートと継手孔とは、摺接面の面直交方向から見たときに、互いの円周の一部同士が重なり、その重なり部分によって連通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-133663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のスライド式切換弁では、弁座においてポートと継手孔とを形成する際に、上述した重なり部分に切削バリができやすく、この切削バリが異物となって冷凍サイクルの不具合を発生させる可能性がある。
【0005】
本発明は、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のスライド式切換弁は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられる弁座部材と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、前記弁座部材は、前記弁体が摺動する摺動面と、前記摺動面と反対側に位置する継手面と、前記摺動面から前記継手面まで貫通する複数の貫通孔と、を有し、前記貫通孔は、前記摺動面に開口したポート孔と、前記継手面に前記ポート孔よりも大きな内径で開口して継手部材が挿入される継手孔と、前記ポート孔と前記継手孔とを連通させる連通孔と、を有し、複数の前記貫通孔における前記ポート孔は、前記軸線方向に並んで設けられ、複数の前記貫通孔のうち少なくとも一つを構成する第1貫通孔は、前記ポート孔として第1ポート孔を備え、前記連通孔として第1連通孔を備え、前記継手孔として第1継手孔を備え、前記第1連通孔は、前記摺動面の面直交方向に対して傾斜して設けられ、その内径が、前記第1ポート孔の内径よりもよりも大きく、前記第1ポート孔は、前記第1連通孔との連続部分において全周が前記第1連通孔の円周内に位置し、前記第1継手孔の内径は、前記第1連通孔の内径以上の大きさに設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、摺動面の面直交方向に対して傾斜して設けられた第1連通孔を介して第1ポート孔と第1継手孔とが連通する。第1ポート孔の内径は、第1連通孔の内径よりも小さく、第1ポート孔と第1連通孔の連続部分において第1ポート孔の全周が第1連通孔の円周内に位置する。また、第1継手孔の内径は、第1連通孔の内径以上の大きさに設けられている。このため、第1ポート孔、第1連通孔、および第1継手孔をそれぞれ干渉させることなく、第1貫通孔を形成することができる。このため、上述した従来のスライド式切換弁のように、ポートと継手孔との重なり部分が生じることがなく、貫通孔を形成する際に切削バリが生じることを抑制することができる。したがって、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁を得ることができる。
【0008】
また、この際、複数の前記貫通孔のうち前記第1貫通孔と異なる第2貫通孔の前記ポート孔である第2ポート孔は、前記摺動面の前記面直交方向に延びて設けられるとともに、前記第2貫通孔の前記連通孔である第2連通孔よりも内径が小さく形成され、前記第2連通孔は、前記摺動面の前記面直交方向に延びて設けられ、前記第2ポート孔と前記第2連通孔との連続部分において前記第2ポート孔の全周が前記第2連通孔の円周内に位置し、前記第1ポート孔の貫通方向の長さは、前記第2ポート孔の貫通方向の長さよりも短く形成されていることが好ましい。このような構成によれば、弁座部材には、面直交方向に対して傾斜する第1連通孔と、面直交方向に延びる第2連通孔と、で延びる方向の異なる連通孔を設けることができるので、複数の連通孔、および、その複数の連通孔にそれぞれ接続される継手孔が互いに干渉することを防ぐことができる。また、第1ポート孔の貫通方向の長さを第2ポート孔の貫通方向の長さよりも短く形成したことで、第1ポート孔と第1連通孔との連続部分と、第2ポート孔と第2連通孔との連続部分と、を面直交方向にずらすことができる。すなわち、第1ポート孔から第1連通孔に亘って内径が大きくなる部分と、第2ポート孔から第2連通孔に亘って内径が大きくなる部分と、を面直交方向にずらすことができる。このため、第1ポート孔と第2ポート孔とを接近させた場合にも、第1連通孔と第2連通孔とが互いに干渉することを防ぐことができる。
【0009】
また、前記第1連通孔の内径は、前記第1継手孔の内径よりも小さく、前記第1連通孔は、前記第1継手孔との連続部分において全周が前記第1継手孔の円周内に位置し、前記第2連通孔の内径は、前記第2貫通孔の前記継手孔である第2継手孔の内径よりも小さく、前記第2連通孔は、前記第2継手孔との連続部分において全周が前記第2継手孔の円周内に位置し、前記第1継手孔の貫通方向の長さは、前記第2継手孔の貫通方向の長さよりも長く形成されていることが好ましい。このような構成によれば、第1連通孔の内径の大きさと第1継手孔の内径の大きさの差の分、第1貫通孔に隣接する貫通孔のポート孔や連通孔を、第1貫通孔に接近させることができる。このため、第1連通孔の内径が第1継手孔の内径と同じ大きさとなる構成と比較して、弁座部材における貫通孔を形成するための部分が小さくてすみ、弁座部材の小型化に資することができる。また、同様に、第2連通孔の内径の大きさと第2継手孔の内径の大きさの差の分、第2貫通孔に隣接する貫通孔のポート孔や連通孔を、第2貫通孔に接近させることができる。このため、第2連通孔の内径が第2継手孔の内径と同じ大きさとなる構成と比較して、弁座部材における貫通孔を形成するための部分が小さくてすみ、弁座部材の小型化に資することができる。そして、第1継手孔の貫通方向の長さを第2継手孔の貫通方向の長さよりも長く形成したことで、第1継手孔と第1連通孔との連続部分と、第2継手孔と第2連通孔との連続部分と、を面直交方向にずらすことができる。すなわち、第1連通孔から第1継手孔に亘って内径が大きくなる部分と、第2連通孔から第2継手孔に亘って内径が大きくなる部分と、を面直交方向にずらすことができる。このため、第1ポート孔と第2ポート孔とを接近させた場合にも、第1継手孔と第2継手孔とが互いに干渉することを防ぐことができる。
【0010】
また、複数の前記貫通孔における前記継手孔は、前記軸線方向に並んで前記継手面に開口することが好ましい。このような構成によれば、複数の継手孔は、それぞれ軸線方向に並んで継手面に開口しているため、一の継手孔と他の継手孔とが、例えば、軸線方向から見て互いに重ならずに、弁座部材の軸線方向に直交する幅方向の一方側および他方側にそれぞれ延びるような構成と比較して、弁座部材の幅方向寸法を小さくし、弁座部材の小型化に資することができる。
【0011】
また、前記第1継手孔は前記第1連通孔と平行かつ同軸に設けられ、前記継手面には、前記摺動面に交差する方向に延びて前記第1継手孔が開口するテーパ面が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、摺動面の面直交方向に対して傾斜した第1連通孔の加工の際、まず加工用の工具を用いてテーパ面を切削して第1継手孔を形成し、そのまま、同じ角度で切削することで第1連通孔を形成することができる。このため、第1継手孔および第1連通孔の形成を容易に行うことができる。また、テーパ面は、摺動面に交差する方向に延びているため、例えば、テーパ面を第1連通孔の貫通方向に直交する方向に延びるように形成することもでき、この場合、加工用の工具をテーパ面に直交して当接させることができる。このため、当該工具がテーパ面に対して滑ることなどを防ぎ、第1継手孔および第1連通孔の形成を容易かつ正確に行うことができる。
【0012】
また、前記第1貫通孔が複数設けられ、前記第1継手孔は、前記第1ポート孔と平行に延びて前記継手面に開口し、傾斜した前記第1連通孔を前記継手面まで仮想的に延長した仮想周縁が、前記第1継手孔の開口の円周内に位置していてもよい。このような構成によれば、摺動面の面直交方向に対して傾斜した第1連通孔の加工の際、まず加工用の工具を用いて継手面を切削して第1継手孔を形成し、次に、角度を変えて第1連通孔を切削することになるが、第1連通孔を継手面まで仮想的に延長した仮想周縁が、第1継手孔の開口の円周内に位置しているため、加工用の工具を第1継手孔の内周面に当接させることなく第1連通孔の形成をすることができる。このため、第1連通孔の形成を容易に行うとともに、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁を得ることができる。
【0013】
また、前記弁座部材はステンレス製であってもよい。ステンレスの材料は、従来のスライド式切換弁の弁座部材の材料に用いられる黄銅などの材料に比較して、加工時の切削バリがより生じやすいが、上述したように、本構成によれば、貫通孔を形成する際の切削バリの発生を抑制することができる。したがって、切削バリの生じやすい材料を用いた弁座部材にも本発明を適用することができる。
【0014】
また、隣接する前記継手孔にそれぞれ連通する前記ポート孔のうちの一方の中心から、他方の中心までの前記軸線方向の距離である中心間距離は、隣接する前記継手孔の内径よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、軸線方向、すなわち弁体のスライド方向において、継手孔の内径よりも小さい範囲に、一のポート孔の中心から他のポート孔の中心までが収まるほど隣接するポート孔の中心間距離を小さくすることができるため、弁体のスライド距離を小さくすることができる。このため、例えば、駆動部をプランジャと吸引子とを備えた装置等で構成した場合、プランジャと吸引子との距離を近づけることができ、駆動部の小型化、および小型化にともなう省力化に資することができる。
【0015】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、上記スライド式切換弁を備えたことを特徴とする。このような構成によれば、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁を用いて冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弁座部材の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る冷凍サイクルシステムの一例を示す図
図2】本発明の実施形態に係るスライド式切換弁の軸線に沿った断面図。
図3】スライド式切換弁を構成する弁座部材の拡大断面図。
図4】(A)は、弁座部材の平面図であり、(B)は、弁座部材の断面図であり、(C)は、弁座部材の背面図。
図5】弁座部材の寸法関係を示す拡大断面図。
図6】弁座部材におけるポート孔と連通孔との連続部の説明図。
図7】(A)は、変形例の弁座部材の平面図であり、(B)は、変形例の弁座部材の断面図であり、(C)は、変形例の弁座部材の背面図。
図8】変形例の弁座部材の寸法関係を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1~6に基づいて説明する。なお、以降の説明において、後述するプランジャ61の軸線Lが延びる方向を「軸線L方向」とし、軸線L方向に直交する方向を「直交方向X」とする。直交方向Xは、後述する弁座部材40の摺動面41に直交する方向でもあり、本発明における面直交方向である。なお、これら方向の定義はあくまでも説明の便宜のためのものであり、必ずしも本発明の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、当該方向を限定するものではない。図1は本発明の実施形態に係る冷凍サイクルシステム100を示している。冷凍サイクルシステム100は、四方弁1と、パイロット弁2(スライド式切換弁)と、室内熱交換器3と、絞り装置4と、室外熱交換器5と、圧縮機6と、を備えている。
【0019】
四方弁1は、4つの配管の連通状態を切替えることで冷媒の流路を切替える弁装置である。四方弁1は、ハウジング10と、ハウジング10内にスライド移動可能に設けられたスライド弁体20と、を備えている。ハウジング10は、両端が蓋部材で閉塞された円筒形状の本体11を備えている。本体11は、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工等して形成されている。本体11の側壁には、冷媒が流れる高圧配管としてのD継手管12が板厚方向に挿通した状態でろう付け等により固定され、本体11内部と連通している。本体11の側壁におけるD継手管12と対向する部分には、図1における左側から順にE継手管13、S継手管14、およびC継手管15がそれぞれ板厚方向に挿通した状態でろう付け等により固定され、それぞれが本体11内部と連通している。
【0020】
E継手管13、S継手管14、およびC継手管15は、D継手管12と同様に冷媒が流れる配管であり、高圧配管または低圧配管として機能する。本体11の内部は、後述するピストン23によって3個の空間に区画されており、D継手管12と常時連通する高圧室16と、高圧室16に隣接する第1作動室17および第2作動室18と、で構成されている。スライド弁体20は、本体11の内部で本体11の軸方向にスライド移動可能に設けられ、上述したD継手管12、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15の連通状態を切換える。スライド弁体20は、弁体本体21と、弁体本体21を保持し本体11の軸方向に延在する連結板22と、連結板22の延在方向両端部にそれぞれ設けられて一対となるピストン23と、を備えている。
【0021】
弁体本体21は、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15側に向かって開口するように椀状に形成されている。弁体本体21の開口は、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15のうち、隣り合う2個の開口を覆う大きさに形成されている。弁体本体21は、図1に示す左端位置では、E継手管13とS継手管14とを連通させるとともに、D継手管12とC継手管15とを連通させる。そして、この状態から、図1における右側に移動して不図示の右端位置に移動すると、C継手管15とS継手管14とを連通させるとともに、D継手管12とE継手管13とを連通させる。連結板22は、本体11の軸方向中央部に弁体本体21を保持し、軸方向一方側と他方側とにそれぞれ延在している。ピストン23には、パッキン等の封止部材が取り付けられており、これによって本体11内部が上述した3つの空間に区画されている。
【0022】
具体的には、一対のピストン23で挟まれた空間は高圧室16を構成し、高圧室16の図1における左隣は第1作動室17を構成し、高圧室16の図1における右隣は第2作動室18を構成している。図1に示される冷凍サイクルシステム100において、D継手管12は圧縮機6の吐出口に接続されており、S継手管14は圧縮機6の吸入口に接続されている。また、C継手管15は、室外熱交換器5に接続され、E継手管13は、室内熱交換器3に接続されている。室外熱交換器5と室内熱交換器3は絞り装置4を介して互いに接続されている。このように、C継手管15、室外熱交換器5、絞り装置4、室内熱交換器3、およびE継手管13からなる経路と、S継手管14から圧縮機6およびD継手管12からなる経路と、により冷凍サイクルシステム100が構成される。
【0023】
パイロット弁2は、本発明におけるスライド式切換弁であり、四方弁1のスライド弁体20を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させる直動式電磁スライド弁である。図2に示すように、パイロット弁2は、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工して形成された弁ハウジング30と、弁ハウジング30に取り付けられる弁座部材40と、弁座部材40に摺動する弁体50と、弁体50をスライド駆動する電磁駆動部60(駆動部)と、を備えている。弁ハウジング30は、軸線L方向に延びる有底筒状(すなわち、中空筒状)の弁本体31を備えている。弁本体31の内部は、後述するプランジャ61の軸線L方向一方側(図2における左側)の弁室32と、プランジャ61の軸線L方向他方側(図2における右側)のプランジャ配置室33と、を構成している。弁本体31の側壁には、直交方向Xに貫通する第1取付孔34が貫通形成され、第1取付孔34には、高圧配管としてのD細管35が挿通された状態でろう付け等により固定され、弁本体31内部と連通している。D細管35は、図1に示すように、上述した四方弁1のD継手管12に連通している。
【0024】
弁本体31の側壁におけるD細管35と対向する部分には、直交方向Xに貫通する第2取付孔36が貫通形成されている。第2取付孔36には、弁座部材40が嵌め込まれている。弁座部材40は、弁体50を摺動させる部材であり、ステンレス製の材料を用いて直交方向Xに延びる円柱状に形成されている。図2に示すように、弁座部材40の直交方向X内側の端面は、弁体50が摺動する摺動面41を構成している。摺動面41は、軸線L方向と平行な平坦面となっている。一方、弁座部材40の直交方向X外側、すなわち摺動面41と反対側に位置する部分は、後述する継手部材(第1作動細管45、第2作動細管46、S細管47)を接続する継手面42を構成している。図3に示すように、継手面42は、摺動面41と平行に延びる平坦面42aと、平坦面42aに連続し摺動面41に交差する方向に延びるテーパ面42bと、を備えている。
【0025】
弁座部材40には、摺動面41から継手面42まで貫通する複数の貫通孔が形成されている。例えば、本実施形態では、貫通孔は、軸線L方向に間隔をあけて並ぶ2個の第1貫通孔43と、2個の第1貫通孔43の間に形成される第2貫通孔44と、で構成されている。すなわち、弁座部材40には、複数の貫通孔のうち少なくとも一つを構成する第1貫通孔43と、第1貫通孔43と異なる第2貫通孔44と、が設けられている。第1貫通孔43は、摺動面41に開口する(すなわち、弁室32内に開口する)第1ポート孔43a(ポート孔)と、第1ポート孔43aよりも大きな内径で継手面42に開口する(すなわち、弁室32外に開口する)第1継手孔43b(継手孔)と、第1ポート孔43aと第1継手孔43bとを連通させる第1連通孔43c(連通孔)と、を備えている。図3に示すように、第1ポート孔43aは、直交方向Xに延びて形成されている。第1ポート孔43aは、第1連通孔43cとの連続部分において、全周が第1連通孔43cの円周内に位置するように形成されている。
【0026】
なお、第1ポート孔43aと第1連通孔43cの連続部分において第1ポート孔43aの全周が第1連通孔43cの円周内に位置していれば、第1ポート孔43aの位置は適宜選択することができる。具体的には、図6(A)に示すように、第1ポート孔43aは、第1連通孔43cとの連続部分において、その中心軸aが第1連通孔43cの中心軸cに連続する位置に配置され、全周が第1連通孔43cの円周内に位置するように形成されていてもよい。また、図6(B)に示すように、第1ポート孔43aは、第1連通孔43cとの連続部分において、全周が第1連通孔43cの円周内に位置する範囲で、その中心軸aが第1連通孔43cの中心軸cと連続しない位置に偏心して形成されていてもよい。
【0027】
なお、この図6(B)に示す第1貫通孔43の場合、中心軸aを隣接するポート孔(本実施形態では、後述する第2ポート孔44a)に接近するように中心軸cから偏心させると、第1ポート孔43aと他のポート孔とを接近させることができ、摺動面41の面積を確保しやすくなることから、その分、弁座部材40の小型化に資することができるためより好適である。一方、図6(C)に示すように、本発明の弁座部材40ではない従来の部材に形成されたポート孔80aと連通孔80cとの連続部分のように、ポート孔80aの全周が連通孔80cの円周内に位置しない場合、従来のスライド式切換弁のように、ポート孔80aの円周の一部と連通孔80cの円周の一部とが、直交方向Xから見て互いに重なることから、貫通孔形成時の切削バリが生じやすくなるため、本発明の課題を解決することができない。
【0028】
図4に示すように、第1連通孔43cは、第1ポート孔43aの直交方向Xの端部に連続し、直交方向Xに対して傾斜している。第1連通孔43cは、その内径が、第1ポート孔43aの内径よりもよりも大きく、かつ第1継手孔43bの内径よりも小さく形成されている。第1連通孔43cは、第1継手孔43bとの連続部分において全周が第1継手孔43bの円周内に位置するように形成されている。第1継手孔43bは、第1連通孔43cと平行かつ同軸に形成され、継手面42におけるテーパ面42bに開口している。図3において、左側の第1継手孔43bには、上述した四方弁1の第1作動室17に連通する第1作動細管45が挿入された状態でろう付け等により固定されている。図3において、右側の第1継手孔43bには、四方弁1の第2作動室18に連通する第2作動細管46が挿入された状態でろう付け等により固定されている。
【0029】
なお、本実施形態では、上述のように、第1連通孔43cの内径は、第1ポート孔43aの内径よりもよりも大きく、かつ第1継手孔43bの内径よりも小さく形成されており、第1連通孔43cは、第1継手孔43bとの連続部分において全周が第1継手孔43bの円周内に位置するように形成されていた。しかしながら、この構成に限らず、第1連通孔43cと第1継手孔43bとを、同じ内径の大きさで、同軸で、一体に形成することで、例えば、第1継手孔43bの一部を第1連通孔43cとして機能させ、第1ポート43aに第1継手孔43bが連続するようにしてもよい。このため、第1連通孔43cの内径は、必ずしも第1継手孔43bの内径よりも小さくなくてよく、第1継手孔43bの内径と同じ大きさに形成されていてよい。このため、第1継手孔43bの内径は、第1連通孔43cの内径以上の大きさに設けられていればよい。
【0030】
第2貫通孔44は、摺動面41に開口する(すなわち、弁室32内に開口する)第2ポート孔44a(ポート孔)と、第2ポート孔44aよりも大きな内径で継手面42に開口する(すなわち、弁室32外に開口する)第2継手孔44b(継手孔)と、第2ポート孔44aと第2継手孔44bとを連通させる第2連通孔44c(連通孔)と、を備えている。図4に示すように、第2ポート孔44aは、直交方向Xに延びて形成されている。第2ポート孔44aは、第2連通孔44cとの連続部分において、全周が第2連通孔44cの円周内に位置するように形成されている。第2連通孔44cは、第2ポート孔44aの直交方向Xの端部に連続し、直交方向Xに延びている。すなわち、第2連通孔44cは、第1連通孔43cと異なり、直交方向Xに対して傾斜せずに形成されている。第2連通孔44cは、その内径が、第2ポート孔44aの内径よりもよりも大きく、かつ第2継手孔44bの内径よりも小さく形成されている。第2連通孔44cは、第2継手孔44bとの連続部分において全周が第2継手孔44bの円周内に位置するように形成されている。
【0031】
第2継手孔44bは、第2連通孔44cと平行かつ同軸に形成され、継手面42における平坦面42aに開口している。図3に示すように、第2継手孔44bには、四方弁1のS継手管14に連通するS細管47が挿入された状態でろう付け等により固定されている。なお、本実施形態では、上述のように、第2連通孔44cの内径は、第2ポート孔44aの内径よりもよりも大きく、かつ第2継手孔44bの内径よりも小さく形成されており、第2連通孔44cは、第2継手孔44bとの連続部分において全周が第2継手孔44bの円周内に位置するように形成されていた。しかしながら、この構成に限らず、第2連通孔44cと第2継手孔44bとを、同じ内径の大きさで、同軸で、一体に形成することで、例えば、第2継手孔44bの一部を第2連通孔44cとして機能させ、第2ポート孔44aに第2継手孔44bが連続するようにしてもよい。このため、第2連通孔44cの内径は、必ずしも第2継手孔44bの内径よりも小さくなくてよく、第2継手孔44bの内径と同じ大きさに形成されていてよい。このため、第2継手孔44bの内径は、第2連通孔44cの内径以上の大きさに設けられていればよい。
【0032】
このように形成された第1貫通孔43と第2貫通孔44においては、図4(A)に示すように、第1ポート孔43aの中心と第2ポート孔44aの中心とが、軸線L方向に一直線に並んでいる。すなわち、第1ポート孔43aと第2ポート孔44aと(複数の貫通孔におけるポート孔)が軸線L方向に並んで配置されている。また、図4(B)に示すように、第1連通孔43cと第2連通孔44cとが軸線L方向に並んで配置されている。また、図4(C)に示すように、第1継手孔43bと第2継手孔44b(複数の貫通孔における継手孔)とが軸線L方向に並んで配置されている。このように、第1貫通孔43と第2貫通孔44は、軸線L方向に並んで配置されている。
【0033】
また、図5に示すように、第1ポート孔43aの貫通方向(直交方向X)の長さAは、第2ポート孔44aの貫通方向(直交方向X)の長さBよりも短くなっている。また、第1継手孔43bの貫通方向(第1連通孔43cの傾斜方向)の長さCは、第2継手孔44bの貫通方向(直交方向X)の長さDよりも長くなっている。そして、第1ポート孔43aの中心から第2ポート孔44aの中心までの軸線L方向の距離である中心間距離Eは、継手孔の内径F(本実施形態では、第2継手孔44bの内径F)よりも小さくなっている。すなわち、隣接する継手孔(第1継手孔43bおよび第2継手孔44b)にそれぞれ連通するポート孔(第1ポート孔43aおよび第2ポート孔44a)のうちの一方の中心から、他方の中心までの軸線L方向の距離である中心間距離Eは、隣接する継手孔の内径Fよりも小さくなっている。
【0034】
弁体50は、図2に示すように直交方向Xに延びて柱状に形成され、軸線L方向にスライド自在に設けられている。弁体50における摺動面41と対向する面には、摺動面41に向かって開口する凹部51が形成されている。図3に示すように、凹部51の開口は、隣り合う2個のポート孔(第1ポート孔43aおよび第2ポート孔44a)の開口を覆う大きさに形成されている。凹部51は、その開口端縁を摺動面41に摺動させるように構成されており、軸線L方向にスライド移動することで、ポート孔(第1ポート孔43aおよび第2ポート孔44a)の連通状態を切換える。これにより、D細管35、第1作動細管45、第2作動細管46、およびS細管47の連通状態が切換えられる。
【0035】
具体的には、凹部51は、図2に示す左端位置では、第1作動細管45とS細管47を連通させるとともに、D細管35と第2作動細管46とを連通させる。この状態では、D細管35を通して弁室32に流れ込んだ高圧の駆動流体が、後述する第2均圧孔66を通って弁座部材40側に流れ、凹部51に覆われていない第1ポート孔43aから第2作動細管46を通って四方弁1の第2作動室18に流れ込む。一方、S細管47を通って凹部51に流れ込んだ低圧の駆動流体は、第1ポート孔43aから第1作動細管45を通って四方弁1の第1作動室17に流れ込む。これにより、第1作動室17と第2作動室18とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体20が図1に示す左端位置に移動する。
【0036】
一方、弁体50が左端位置から右側に移動して不図示の右端位置に位置すると、凹部51は、第2作動細管46とS細管47を連通させるとともに、D細管35と第1作動細管45とを連通させる。この状態では、D細管35を通して弁室32に流れ込んだ高圧の駆動流体が、第2均圧孔66を通って弁座部材40側に流れ、凹部51に覆われていない第1ポート孔43aから第1作動細管45を通って四方弁1の第1作動室17に流れ込む。一方、S細管47を通って凹部51に流れ込んだ低圧の駆動流体は、第1ポート孔43aから第2作動細管46を通って四方弁1の第2作動室18に流れ込む。これにより、第1作動室17と第2作動室18とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体20が図1に示す左端位置から右側に移動する。
【0037】
電磁駆動部60は、図2に示すように、プランジャ配置室33に配置されるプランジャ61と、プランジャ61と軸線L方向に間隔をあけて配置される吸引子62と、電磁コイル63と、ケース64と、を備えている。プランジャ61は、弁本体31の内周面に対して軸線L方向に摺動する大径部61aと、大径部61aに連続し、弁室32側に延びる小径部61bと、を備えている。大径部61aには、軸線L方向に貫通する第1均圧孔65が形成されている。小径部61bには、第1均圧孔65に交差して直交方向Xに貫通する第2均圧孔66が形成されている。この構成により、第1均圧孔65と第2均圧孔66とは、連通している。また、この構成により、上述した高圧配管としてのD細管35から弁室32内に流入した駆動流体は、第2均圧孔66を通って弁座部材40側に流れ、弁室32に開口する第1ポート孔43aまたは第2ポート孔44aに流れる。
【0038】
また、弁室32内に流入した駆動流体は、第2均圧孔66から第1均圧孔65を通ってプランジャ配置室33に流れる。これにより、弁室32と、プランジャ配置室33と、が第1均圧孔65および第2均圧孔66を介して連通し、弁室32とプランジャ配置室33とに同じ圧力がかかっている。プランジャ61の小径部61bには、弁座部材40に向かって開口する凹状の保持部67が形成されている。保持部67には、弁体50が収容されている。弁体50は、保持部67内部に設置された付勢部材67aによって、弁座部材40の摺動面41に押し付けられている。吸引子62は、プランジャ61と軸線L方向に間隔をあけて配置され、弁本体31内に固定されている。吸引子62とプランジャ61との間には、プランジャばね68が介在するように配置され、これによってプランジャ61が弁体50側に向かって付勢されている。
【0039】
電磁コイル63は、弁本体31の外周に配置され、プランジャ61および吸引子62を軸線L回りの周方向に囲んでいる。電磁コイル63は、ボビン69と、ボビン69に巻かれる巻線69aと、を備えて構成されている。このような構成により、電磁駆動部60は、非通電時には、プランジャばね68の力によりプランジャ61が図2における左側に付勢されてプランジャ61および弁体50が図2における左端位置に移動する。一方、通電時には、吸引子62が励磁されることでプランジャ61と吸引子62との間に吸引力が発生し、プランジャ61および弁体50が右側に移動する。
【0040】
以上の構成により、圧縮機6で圧縮された高圧の冷媒はD継手管12から高圧室16内に流入し、冷房運転の状態(冷却モード時)では、高圧冷媒が、C継手管15から室外熱交換器5に流入される。また、スライド弁体20の位置を切換えた暖房運転の状態(暖房モード時)では、高圧冷媒はE継手管13から室内熱交換器3に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機6から吐出される冷媒はC継手管15、室外熱交換器5、絞り装置4、室内熱交換器3、E継手管13と循環し、室外熱交換器5が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換器3が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。絞り装置4は、室外熱交換器5と室内熱交換器3との間にて冷媒を膨張させて減圧する。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換器3が凝縮器、室外熱交換器5が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0041】
以上、上述した実施形態によれば、摺動面41の直交方向X(面直交方向)に対して傾斜して設けられた第1連通孔43cを介して第1ポート孔43aと第1継手孔43bとが連通する。第1ポート孔43aの内径は、第1連通孔43cの内径よりも小さく、第1ポート孔43aと第1連通孔43cの連続部分において第1ポート孔43aの全周が第1連通孔43cの円周内に位置する。また、第1継手孔43bの内径は、第1連通孔43cの内径以上の大きさに設けられている。このため、第1ポート孔43a、第1連通孔43c、および第1継手孔43bをそれぞれ干渉させることなく、第1貫通孔43を形成することができる。このため、上述した従来のスライド式切換弁のように、ポートと継手孔との重なり部分が生じることがなく、貫通孔を形成する際に切削バリが生じることを抑制することができる。したがって、弁座部材40の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるパイロット弁2(スライド式切換弁)を得ることができる。
【0042】
また、弁座部材40には、直交方向Xに対して傾斜する第1連通孔43cと、直交方向Xに延びる第2連通孔44cと、で延びる方向の異なる連通孔を設けることができるので、複数の連通孔(第1連通孔43c、第2連通孔44c)、および、複数の継手孔(第1継手孔43b、第2継手孔44b)が互いに干渉することを防ぐことができる。また、第1ポート孔43aの貫通方向の長さAを第2ポート孔44aの貫通方向の長さBよりも短く形成したことで、第1ポート孔43aと第1連通孔43cとの連続部分と、第2ポート孔44aと第2連通孔44cとの連続部分と、を直交方向Xにずらすことができる。すなわち、第1ポート孔43aから第1連通孔43cに亘って内径が大きくなる部分と、第2ポート孔44aから第2連通孔44cに亘って内径が大きくなる部分と、を直交方向Xにずらすことができる。このため、第1ポート孔43aと第2ポート孔44aとを接近させた場合にも、第1連通孔43cと第2連通孔44cとが互いに干渉することを防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態では、第1連通孔43cの内径は、第1継手孔43bの内径よりも小さく、第1連通孔43cは、第1継手孔43bとの連続部分において全周が第1継手孔43bの円周内に位置していた。このような構成によれば、第1連通孔43cの内径の大きさと第1継手孔43bの内径の大きさの差の分、第1貫通孔43に隣接する貫通孔(例えば、第2貫通孔44)のポート孔(例えば、第2ポート孔44a)や連通孔(例えば、第2連通孔44c)を、第1貫通孔43に接近させることができる。このため、第1連通孔43cの内径が第1継手孔43bの内径と同じ大きさとなる構成と比較して、弁座部材40における貫通孔(第1貫通孔43、第2貫通孔44)を形成するための部分が小さくてすみ、弁座部材40の小型化に資することができる。
【0044】
また、第2連通孔44cの内径は、第2継手孔44bの内径よりも小さく、第2連通孔44cは、第2継手孔44bとの連続部分において全周が第2継手孔44bの円周内に位置していた。このような構成によれば、第2連通孔44cの内径の大きさと第2継手孔44bの内径の大きさの差の分、第2貫通孔44に隣接する貫通孔(例えば、第1貫通孔43)のポート孔(例えば、第1ポート孔43a)や連通孔(例えば、第1連通孔43c)を、第2貫通孔44に接近させることができる。このため、第2連通孔44cの内径が第2継手孔44bの内径と同じ大きさとなる構成と比較して、弁座部材40における貫通孔(第1貫通孔43、第2貫通孔44)を形成するための部分が小さくてすみ、弁座部材40の小型化に資することができる。
【0045】
そして、第1継手孔43bの貫通方向の長さCを第2継手孔44bの貫通方向の長さDよりも長く形成したことで、第1継手孔43bと第1連通孔43cとの連続部分と、第2継手孔44bと第2連通孔44cとの連続部分と、を直交方向Xにずらすことができる。すなわち、第1連通孔43cから第1継手孔43bに亘って内径が大きくなる部分と、第2連通孔44cから第2継手孔44bに亘って内径が大きくなる部分と、を直交方向Xにずらすことができる。このため、第1ポート孔43aと第2ポート孔44aとを接近させた場合にも、第1継手孔43bと第2継手孔44bとが互いに干渉することを防ぐことができる。
【0046】
なお、上述のように、第1ポート孔43aの貫通方向の長さAを第2ポート孔44aの貫通方向の長さBよりも短く形成する構成と、第1継手孔43bの貫通方向の長さCを第2継手孔44bの貫通方向の長さDよりも長く形成する構成は、それぞれ独立させることもできる。しかしながら、第1ポート孔43aの貫通方向の長さAを第2ポート孔44aの貫通方向の長さBよりも短く形成した上で、さらに第1継手孔43bの貫通方向の長さCを第2継手孔44bの貫通方向の長さDよりも長く形成することで、第1連通孔43cと第2連通孔44cとが互いに干渉することを防ぐとともに、第1継手孔43bと第2継手孔44bとが互いに干渉することを防ぐことができるため、本実施形態のように、長さA、B、C、Dを設定することが好適である。
【0047】
また、第1継手孔43bおよび第2継手孔44b(複数の貫通孔における継手孔)は、それぞれ軸線L方向に並んで継手面42に開口しているため、第1継手孔43bと第2継手孔44bとが、例えば、軸線L方向から見て互いに重ならずに弁座部材の軸線L方向に直交する幅方向の一方側および他方側にそれぞれ延びるような構成と比較して、弁座部材40の幅方向寸法を小さくし、弁座部材40の小型化に資することができる。
【0048】
また、第1継手孔43bは第1連通孔43cと平行かつ同軸に設けられ、継手面42には、摺動面41に交差する方向に延びて第1継手孔43bが開口するテーパ面42bが設けられている。このため、摺動面41の直交方向Xに対して傾斜した第1連通孔43cの加工の際、まず加工用の工具を用いてテーパ面42bを切削して第1継手孔43bを形成し、そのまま、同じ角度で切削することで第1連通孔43cを形成することができる。このため、第1継手孔43bおよび第1連通孔43cの形成を容易に行うことができる。また、テーパ面42bは、摺動面41に交差する方向に延びているため、例えば、テーパ面42bを第1連通孔43cの貫通方向に直交する方向に延びるように形成することもでき、この場合、加工用の工具をテーパ面42bに直交して当接させることができる。このため、当該工具がテーパ面42bに対して滑ることなどを防ぎ、第1継手孔43bおよび第1連通孔43cの形成を容易かつ正確に行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、弁座部材40がステンレス製で構成されていた。ステンレスの材料は、従来のスライド式切換弁の弁座部材の材料に用いられる黄銅などの材料に比較して、加工時の切削バリがより生じやすいが、上述したように、本構成によれば、第1貫通孔43(貫通孔)および第2貫通孔44(貫通孔)を形成する際の切削バリの発生を抑制することができる。したがって、切削バリの生じやすい材料を用いた弁座部材40にも本発明を適用することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、隣接する第1継手孔43b(継手孔)および第2継手孔44b(継手孔)にそれぞれ連通する第1ポート孔43a(ポート孔)および第2ポート孔44a(ポート孔)のうちの一方の中心から、他方の中心までの軸線L方向の距離である中心間距離Eは、第2継手孔44b(隣接する継手孔)の内径Fよりも小さくなっている。このような構成によれば、軸線L方向、すなわち弁体50のスライド方向において、第2継手孔44bの内径Fよりも小さい範囲に、第1ポート孔43aの中心から第2ポート孔44aの中心までが収まるほど第1ポート孔43aおよび第2ポート孔44a(隣接するポート孔)の中心間距離Eを小さくすることができるため、弁体50のスライド距離を小さくすることができる。このため、例えば、電磁駆動部60をプランジャ61と吸引子62とを備えた装置等で構成した場合、プランジャ61と吸引子62との距離を近づけることができ、電磁駆動部60の小型化、および小型化にともなう省力化に資することができる。
【0051】
また、上記のように中心間距離Eを小さくすることで、摺動面41における弁体50の開口端縁と摺動し凹部51をシールする部分の面積が確保しやすくなる。このため、中心間距離Eが隣接する継手孔の内径よりも小さくない構成と比較して、摺動面41の外径を小さくすることができ、これによって弁座部材40自体を小型化することができる。この小型化は、特に本実施形態のように、弁本体31を有底筒状に形成する場合に好適である。具体的には、弁本体31を有底筒状に形成した場合、弁座部材40を嵌め込むために上述の第2取付孔36のような孔を弁本体31に形成する必要があるが、弁本体31は筒状であるため、第2取付孔36が大きくなるほど加工が困難となる。しかしながら、本構成によれば、弁座部材40自体を小型化することで、第2取付孔36を大きくしなくて済むため、パイロット弁2の製造を容易にすることができる。
【0052】
そして、このように、弁座部材40の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるスライド式切換弁を用いて冷凍サイクルシステム100を構成することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。図7(A)は、変形例の弁座部材70の平面図であり、図7(B)は、変形例の弁座部材70の断面図であり、図7(C)は、変形例の弁座部材70の背面図である。図8は、変形例の弁座部材70の寸法関係を示す拡大断面図である。
【0054】
弁座部材70は、ステンレス製の材料を用いて直交方向Xに延びる円柱状に形成されている。図7に示すように、弁座部材70の直交方向X内側の端面は、上述の摺動面41と同様に弁体50が摺動する摺動面71を構成している。一方、弁座部材70の直交方向X外側には、継手面72が形成されている。継手面72は、上述した継手面42と異なり、テーパ面42bを備えず、平坦面で構成されている。弁座部材70には、摺動面71から継手面72まで貫通する3個(複数)の第1貫通孔73が形成されている。第1貫通孔73は、摺動面71に開口する第1ポート孔73a(ポート孔)と、第1ポート孔73aよりも大きな内径で継手面72に開口する第1継手孔73b(継手孔)と、第1ポート孔73aと第1継手孔73bとを連通させる第1連通孔73c(連通孔)と、を備えている。
【0055】
第1ポート孔73a、第1継手孔73bおよび第1連通孔73cは、第1ポート孔43a、第1継手孔43bおよび第1連通孔43cに相当するが、変形例では、図7(B)に示すように、第1継手孔73bが第1連通孔73cと平行に延びず、直交方向Xに延びて継手面72に開口している点が上述した実施形態と異なっている。また、この構成により、隣接する一の第1継手孔73bと他の第1継手孔73bとが干渉することを避けるため、図7(C)に示すように、直交方向Xから継手面72を見た場合に、軸線Lと直交する幅方向の一方側と他方側とに、一の第1継手孔73bの中心と他の第1継手孔73bの中心とが互い違いにずれるように配置されている。また、変形例では、図7(B)に示すように、傾斜した第1連通孔73cを継手面72まで仮想的に延長した仮想周縁73dが、第1継手孔73bの開口の円周内に位置するようになっている。これにより、図8に示すように、第1継手孔73bの直交方向Xの寸法G(第1継手孔73bの深さ寸法)の範囲内で、仮想周縁73dが第1継手孔73bの内周面に当接しないようになっている。
【0056】
このような構成によれば、摺動面71の直交方向Xに対して傾斜した第1連通孔73cの加工の際、まず加工用の工具を用いて継手面72から第1継手孔73bを切削し、次に、角度を変えて第1連通孔73cを切削することになるが、第1連通孔73cを継手面72まで仮想的に延長した仮想周縁73dが、第1継手孔73bの開口の円周内に位置しているため、加工用の工具を第1継手孔73bの内周面に当接させることなく第1連通孔73cの形成をすることができる。このため、第1連通孔73cの形成を容易に行うとともに、弁座部材70の加工時の切削バリの発生を抑制することができ、異物による冷凍サイクルの不具合を発生し難くすることができるパイロット弁2を得ることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、パイロット弁2の弁本体31を有底筒状に形成したが、底部を有さない弁本体を備えたパイロット弁2に本発明を適用することもできる。しかしながら、このような構成の場合、弁本体31の底部に孔が開いていることから、当該底部の孔を介して弁座部材40を組み立てることもでき、必ずしも上述した第2取付孔36が必要ない場合もあり、上述したような第2取付孔36を大きくし難いという問題が起きない場合もある。このため、弁本体31が有底筒状に形成されている場合に、より本発明は有効である。
【0058】
また、本実施形態および変形例では、スライド式切換弁の一例として、4つの配管の連通状態を切換える四方弁1のスライド弁体20を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させるパイロット弁2を例示し、主にパイロット弁2の弁座部材40について説明したが、例えば、四方弁1において、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15を配置する弁座部材に、本発明を適用してもよい。また、スライド式切換弁は、これら四方弁1やパイロット弁2に限られない。スライド式切換弁は、弁ハウジングに少なくとも一対の配管が接続されたものであれば、例えば3本の配管のうちの一対の配管を連通させるときの連通対象の配管を、弁体を用いて切換える三方弁であってもよい。もしくは、連通対象の配管の数をさらに増やして多方弁としてもよい。このように、スライド式切換弁における配管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて変更してよい。
【0059】
なお、上述の実施形態では、2個の第1貫通孔43の間に1個の第2貫通孔44を配置することとしたが、実施形態においても、変形例のように第1貫通孔43を隣接させることはできる。また、その際、第1貫通孔43の第1継手孔43bを、変形例と同様に直交方向Xに延ばすこともできる。そして、この場合も、上述の構成と同様に、隣接するポート孔の中心間距離Eを、継手孔の内径よりも小さくすることができる。すなわち、隣接する第1ポート孔43aの中心間距離Eは、第1継手孔43bの内径より小さくすることができる。この場合、第1継手孔43bの内径の大きさは、それぞれの第1継手孔43bの半径の和と等しくなり、この範囲内に一の第1ポート孔43aの中心から他の第1ポート孔43aの中心までが収まるほど、隣接する第1ポート孔43aの中心間距離Eを小さくすることができる。
【0060】
この構成によれば、例えば一の第1継手孔43bと他の第1継手孔43bとを軸線L方向に隙間なく並べた場合、一の第1継手孔43bの中心から他の第1継手孔43bの中心までの軸線方向の距離である継手側中心間距離よりも小さな中心間距離となるように隣接する第1ポート孔43aを配置することができる。なお、この構成においても、第1継手孔43bの内径は第1ポート孔43aの内径よりも大きいため、第1ポート孔43aと、第1継手孔43bとは同軸にならない。しかしながら、本発明では、傾斜した第1連通孔43cで第1ポート孔43aと第1継手孔43bとを接続することができるため、従来のスライド式切換弁のようにポートと継手孔との重なり部分が生じることを防ぐことができる。したがって、隣接する第1ポート孔43a同士、および隣接する第1継手孔43b同士を接近させた状態においても、弁座部材40の加工時の切削バリの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0061】
L 軸線
X 直交方向(面直交方向)
2 パイロット弁(スライド式切換弁)
31 弁本体
40 弁座部材
41 摺動面
42 継手面
43 第1貫通孔(複数の貫通孔)
43a 第1ポート孔(ポート孔)
43c 第1連通孔(連通孔)
43b 第1継手孔(継手孔)
45 第1作動細管(継手部材)
50 弁体
60 電磁駆動部(駆動部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8