(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166657
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】スライド式切換弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F16K31/06 305D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082889
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA08
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB22
3H106DB32
3H106DC12
3H106DC19
3H106DD03
3H106EE34
3H106EE35
3H106GA11
3H106KK23
3H106KK34
(57)【要約】
【課題】本発明は、駆動部における出力の向上、および、駆動部の製造コストの低減を両立することができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】スライド式切換弁は、弁本体30と、弁座部材40と、弁体60と、電磁駆動部70と、を備えている。電磁駆動部70は、弁本体30の内部に設けられるプランジャ71および吸引子72と、弁本体30の外部に設けられるモールドコイル部81(コイル)と、モールドコイル部81を囲んで磁路を形成する外函部82と、を有している。外函部82には、軸線L方向に貫通し弁本体30を挿通させる本体挿通部91と、本体挿通部91の縁部から突出して外函部82と一体に設けられ弁本体30の外面に沿って延びる半円突起92と、が設けられている。半円突起92は、弁本体30を挟んでプランジャ71に対向している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられる弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記駆動部は、前記弁本体の内部に設けられるプランジャおよび吸引子と、前記弁本体の外部に設けられるコイルと、前記コイルを囲んで磁路を形成する外函と、を有し、
前記外函は、前記軸線方向に貫通し前記弁本体を挿通させる本体挿通部と、前記本体挿通部の縁部から突出して前記外函と一体に設けられ前記弁本体の外面に沿って延びる突起部と、を備え、
前記突起部は、前記弁本体を挟んで前記プランジャに対向していることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記外函は、前記軸線方向と交差する交差方向に延在し前記弁本体における前記軸線方向の一方側を覆う天壁部と、前記天壁部から前記軸線方向の他方側に延びる一対の側壁部と、一対の前記側壁部から互いに近づく方向に延びる一対の底壁部と、を有して全体角筒状に形成され、
一対の前記底壁部のそれぞれには、前記弁本体の外面に沿って切り欠かれて前記本体挿通部を構成する切欠部が設けられ、
前記突起部は、前記切欠部の周縁にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記天壁部、前記側壁部、前記底壁部の板厚に対して、前記突起部の板厚は同一または小さく、
前記本体挿通部の開口面積と前記底壁部の板厚との積で決まる体積に対して、前記突起部の体積は同一または小さいことを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記コイルは、前記本体挿通部と同軸で前記本体挿通部に連通する筒状のボビンと、前記ボビンに巻回される巻線と、を備え、
前記切欠部のそれぞれは、前記軸線方向から見て互いに向かって開口する半円状に形成され、
前記突起部の内径は、前記ボビンの内径よりも小さいことを特徴とする請求項2または3に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記突起部は、前記外函の外方に突出して形成されていることを特徴とする請求項4に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記突起部は、前記切欠部の縁部に沿って断続的に延びていることを特徴とする請求項5に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
請求項1に記載のスライド式切換弁を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換える切換弁として、筒状の弁本体と、弁本体内部にスライド自在に設けられた弁体と、弁本体に設けられる弁座と、弁体を軸線方向にスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、スライド式切換弁としての電磁弁が開示されている。電磁弁は、弁本体としてのソレノイドチューブ内に、駆動部としての可動鉄心および固定鉄心を備えている。ソレノイドチューブの外側には、中空ボビンの外周に巻線を巻回して形成されたソレノイドコイルが設けられている。ソレノイドコイルの外側には、ソレノイドコイルを囲んで磁路を形成する外函としてのフレームが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスライド式切換弁は、磁性材料からなる外函によって磁路を形成することで、ソレノイドコイルの出力向上を図るものであるが、さらなる出力向上あるいは巻線の巻数を少なくすることによるコスト低減が求められている。
【0005】
本発明は、駆動部における出力の向上、および、駆動部の製造コストの低減を両立することができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のスライド式切換弁は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられる弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられる弁体と、前記弁体をスライド駆動する駆動部と、を備えたスライド式切換弁であって、前記駆動部は、前記弁本体の内部に設けられるプランジャおよび吸引子と、前記弁本体の外部に設けられるコイルと、前記コイルを囲んで磁路を形成する外函と、を有し、前記外函は、前記軸線方向に貫通し前記弁本体を挿通させる本体挿通部と、前記本体挿通部の縁部から突出して前記外函と一体に設けられ前記弁本体の外面に沿って延びる突起部と、を備え、前記突起部は、前記弁本体を挟んで前記プランジャに対向していることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、駆動部では、プランジャ、吸引子、コイル、および外函によって磁路を形成することができる。この際、外函は、プランジャと対向する突起部によってプランジャとの対向面積を増大させることができることから、駆動部における磁束の損失を抑制し、磁気効率を向上させることができる。これにより、駆動部における出力を向上させることができる。また、この構成によれば、駆動部のコストに影響の大きいコイルの巻数を低減しても、駆動部の駆動力を維持することが可能となることから、駆動部の駆動力を維持したまま駆動部の製造コストを低減することができる。また、突起部は、外函と一体に設けられることから、駆動部の磁気効率向上のために新たな部品等を設ける必要がなく、駆動部の製造コストを低減することができる。したがって、駆動部における出力の向上、および、駆動部の製造コストの低減を両立することができるスライド式切換弁を提供することができる。
【0008】
また、この際、前記外函は、前記軸線方向と交差する交差方向に延在し前記弁本体における前記軸線方向の一方側を覆う天壁部と、前記天壁部から前記軸線方向の他方側に延びる一対の側壁部と、一対の前記側壁部から互いに近づく方向に延びる一対の底壁部と、を有して全体角筒状に形成され、一対の前記底壁部のそれぞれには、前記弁本体の外面に沿って切り欠かれて前記本体挿通部を構成する切欠部が設けられ、前記突起部は、前記切欠部の周縁にそれぞれ設けられていることが好ましい。このような構成によれば、天壁部、側壁部、底壁部で全体角筒状、すなわちロの字状に形成された外函によって様々な方向からコイルを囲むことができるので、上述した駆動部における磁束の損失を抑制し、磁気効率を向上することができる。
【0009】
また、前記天壁部、前記側壁部、前記底壁部の板厚に対して、前記突起部の板厚は同一または小さく、前記本体挿通部の開口面積と前記底壁部の板厚との積で決まる体積に対して、前記突起部の体積は同一または小さいことが好ましい。このような構成によれば、本体挿通部すなわち切欠部を形成するために外函を切り欠いて捨てる部分の体積と同じか、それよりも小さい体積で突起部を形成することができ、切欠部を形成するために外函を切り欠いた部分の体積よりもより大きな突起部を形成しなくてよいため、外函の材料コストを低減することができる。また、本構成では、例えば、板材をプレスで打ち抜き、曲げ加工等により板材をロの字状とし、さらに打ち抜きにより切欠部を形成するとともに、切欠部の縁部を曲げ加工することにより突起部を形成する、というようにして外函を形成することができる。このように、板材を打ち抜きおよび曲げ加工するという比較的シンプルな工程により、外函の製造を容易に行うことができる。
【0010】
また、前記コイルは、前記本体挿通部と同軸で前記本体挿通部に連通する筒状のボビンと、前記ボビンに巻回される巻線と、を備え、前記切欠部のそれぞれは、前記軸線方向から見て互いに向かって開口する半円状に形成され、前記突起部の内径は、前記ボビンの内径よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、突起部がボビンの内周面よりもプランジャに接近することとなるため、上述したような磁束の損失をより生じ難くし、駆動部における磁気効率を向上させることができる。
【0011】
また、前記突起部は、前記外函の外方に突出して形成されていることが好ましい。例えば、突起部は外函内方に突出させることも考えられるが、この場合、突起部とボビンとの干渉を避けるために突起部をボビンの内方に挿入することとなり、そのスペースを確保するためにボビンが大型化する。これにより、コイル全体が大型化し、コイルの製造コストが増大することとなる。これに対し、例えば、ボビンの内壁に突起部を収めるための段差部等を形成することも考えられるが、この場合、ボビンの構造が複雑化することによりコイルの製造コストが増大することとなる。また、段差部等の形成によりボビンの一部が薄肉化し、コイルの強度が低下することとなる。しかしながら、本構成によれば、突起部を外函の外方に突出させて形成するため、突起部の構成がボビンの大きさや形状に影響を与えることがなく、上述したボビンの大型化、複雑化、または薄肉化を避けることができ、コイルの製造コストが増大することやコイルの強度が低下することを避けることができる。
【0012】
また、前記突起部は、前記切欠部の縁部に沿って断続的に延びていてもよい。このような構成によれば、上述したように打ち抜きにより切欠部を形成するとともに、切欠部の縁部を曲げ加工する際に、例えば、切欠部の縁部に切込みを入れて当該縁部を分割した上で分割された縁部のそれぞれを別々に曲げ加工して突起部を形成することができる。このため、切欠部の縁部をまとめて曲げ加工する必要がなく、切欠部の縁部の全てに突起部が設けられる構成と比較して、上記曲げ加工を容易に行えるようにすることができる。したがって、突起部の形成を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、上述したスライド式切換弁を備えたことを特徴とする。このような構成によれば、駆動部における出力の向上、および、駆動部の製造コストの低減を両立することができるスライド式切換弁を用いて冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、駆動部における出力の向上、および、駆動部の製造コストの低減を両立することができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る冷凍サイクルシステムの一例を示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係るスライド式切換弁の軸線に沿った断面図。
【
図4】スライド式切換弁を構成する外函を斜め上から見下げた斜視図。
【
図6】(A)は、スライド式切換弁を構成するプランジャチューブに対して取り付け前の外函の断面図であり、(B)は、プランジャチューブに対して取り付け後の外函の断面図。
【
図7】(A)は、外函の軸線方向に沿った断面図であり、(B)は、外函の底面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を
図1~7に基づいて説明する。なお、以降の説明において、後述するプランジャ71の軸線Lが延びる方向を「軸線L方向」とし、軸線L方向に交差する方向を「交差方向X」とする。交差方向Xは、プランジャ71の径方向でもある。また、以降の説明における「上下、左右」の概念は、図における上下、左右に対応するものとする。なお、これら方向の定義はあくまでも説明の便宜のためのものであり、必ずしも本発明の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、当該方向を限定するものではない。
図1は本発明の実施形態に係る冷凍サイクルシステム100を示している。冷凍サイクルシステム100は、四方弁1と、パイロット弁2(スライド式切換弁)と、室内熱交換器3と、絞り装置4と、室外熱交換器5と、圧縮機6と、を備えている。
【0017】
四方弁1は、4つの配管の連通状態を切替えることで冷媒の流路を切替える弁装置である。四方弁1は、ハウジング10と、ハウジング10内にスライド移動可能に設けられたスライド弁体20と、を備えている。ハウジング10は、両端が蓋部材で閉塞された円筒形状の本体11を備えている。本体11は、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工等して形成されている。本体11の側壁には、冷媒が流れる高圧配管としてのD継手管12が板厚方向に挿通した状態でろう付け等により固定され、本体11内部と連通している。本体11の側壁におけるD継手管12と対向する部分には、
図1における左側から順にE継手管13、S継手管14、およびC継手管15がそれぞれ板厚方向に挿通した状態でろう付け等により固定され、それぞれが本体11内部と連通している。
【0018】
E継手管13、S継手管14、およびC継手管15は、D継手管12と同様に冷媒が流れる配管であり、高圧配管または低圧配管として機能する。本体11の内部は、後述するピストン23によって3個の空間に区画されており、D継手管12と常時連通する高圧室16と、高圧室16に隣接する第1作動室17および第2作動室18と、で構成されている。スライド弁体20は、本体11の内部で本体11の軸方向にスライド移動可能に設けられ、上述したD継手管12、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15の連通状態を切換える。スライド弁体20は、弁体本体21と、弁体本体21を保持し本体11の軸方向に延在する連結板22と、連結板22の延在方向両端部にそれぞれ設けられて一対となるピストン23と、を備えている。
【0019】
弁体本体21は、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15側に向かって開口するように椀状に形成されている。弁体本体21の開口は、E継手管13、S継手管14、およびC継手管15のうち、隣り合う2個の開口を覆う大きさに形成されている。弁体本体21は、
図1に示す左端位置では、E継手管13とS継手管14とを連通させるとともに、D継手管12とC継手管15とを連通させる。そして、この状態から、
図1における右側に移動して不図示の右端位置に移動すると、C継手管15とS継手管14とを連通させるとともに、D継手管12とE継手管13とを連通させる。連結板22は、本体11の軸方向中央部に弁体本体21を保持し、軸方向一方側と他方側とにそれぞれ延在している。ピストン23には、パッキン等の封止部材が取り付けられており、これによって本体11内部が上述した3つの空間に区画されている。
【0020】
具体的には、一対のピストン23で挟まれた空間は高圧室16を構成し、高圧室16の
図1における左隣は第1作動室17を構成し、高圧室16の
図1における右隣は第2作動室18を構成している。
図1に示される冷凍サイクルシステム100において、D継手管12は圧縮機6の吐出口に接続されており、S継手管14は圧縮機6の吸入口に接続されている。また、C継手管15は、室外熱交換器5に接続され、E継手管13は、室内熱交換器3に接続されている。室外熱交換器5と室内熱交換器3は絞り装置4を介して互いに接続されている。このように、C継手管15、室外熱交換器5、絞り装置4、室内熱交換器3、およびE継手管13からなる経路と、S継手管14、圧縮機6、およびD継手管12からなる経路と、により冷凍サイクルシステム100が構成される。
【0021】
パイロット弁2は、本発明におけるスライド式切換弁であり、四方弁1のスライド弁体20を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させる直動式電磁スライド弁である。
図2に示すように、パイロット弁2は、弁本体30と、弁本体30に取り付けられる弁座部材40と、弁座部材40に摺動する弁体60と、弁体60をスライド駆動する電磁駆動部70(駆動部)と、を備えている。弁本体30は、軸線L方向に延びる有底筒状(すなわち、中空筒状)のプランジャチューブ31を備えている。プランジャチューブ31は、ステンレス鋼製の金属板等をプレス加工して形成されている。プランジャチューブ31の内部は、下側部分の弁室32と、上側部分のプランジャ配置室33と、で構成されている。
【0022】
プランジャチューブ31の側壁には、交差方向Xに貫通する第1取付孔34が貫通形成され、第1取付孔34には、高圧配管としてのD細管35が挿通された状態でろう付け等により固定され、プランジャチューブ31内部と連通している。D細管35は、
図1に示すように、上述した四方弁1のD継手管12に連通している。プランジャチューブ31の側壁におけるD細管35と対向する部分には、交差方向Xに貫通する第2取付孔36が貫通形成されている。第2取付孔36には、弁座部材40が嵌め込まれている。弁座部材40は、弁体60を摺動させる部材であり、ステンレス製の材料を用いて交差方向Xに延びる円柱状に形成されている。
【0023】
図2に示すように、弁座部材40の交差方向X内側の端面は、弁体60が摺動する摺動面41を構成している。摺動面41には、軸線L方向の下側から上側に向かって順に、第1ポート孔42、第2ポート孔43、第3ポート孔44が形成されている。第1ポート孔42、第2ポート孔43、第3ポート孔44は、交差方向Xに延びて弁室32に開口する凹状に形成されている。弁座部材40の交差方向X外側の端面は、継手面45を構成している。継手面45には、軸線L方向の下側から上側に向かって順に、第1継手孔46、不図示の第2継手孔、第3継手孔47が形成されている。
【0024】
第1継手孔46は、交差方向Xに延びて形成される貫通孔であり、一端が第1ポート孔42に連通し、他端が継手面45に開口している。第1継手孔46の交差方向X外側の端部には、第1作動細管50が挿入された状態でろう付け等により固定されている。第1作動細管50は、
図1に示すように、四方弁1の第1作動室17に連通している。第2継手孔は、交差方向Xに延びて形成される貫通孔であり、一端が第2ポート孔43に連通し、他端が継手面45に開口している。第2継手孔の交差方向X外側の端部には、S細管51が挿入された状態でろう付け等により固定されている。S細管51は、
図1に示すように、四方弁1のS継手管14に連通している。第3継手孔47は、交差方向Xに延びて形成される貫通孔であり、一端が第3ポート孔44に連通し、他端が継手面45に開口している。第3継手孔47の交差方向X外側の端部には、第2作動細管52が挿入された状態でろう付け等により固定されている。第2作動細管52は、
図1に示すように、四方弁1の第2作動室18に連通している。
【0025】
弁体60は、
図2に示すように交差方向Xに延びて柱状に形成され、軸線L方向にスライド自在に設けられている。弁体60における摺動面41と対向する面には、摺動面41に向かって開口する凹部61が形成されている。
図2に示すように、凹部61の開口は、第1ポート孔42、第2ポート孔43、第3ポート孔44のうち、隣り合う2個の開口を覆う大きさに形成されている。凹部61は、その開口端縁を摺動面41に摺動させるように構成されており、軸線L方向にスライド移動することで、第1ポート孔42、第2ポート孔43、および第3ポート孔44の連通状態を切換える。これにより、D細管35、第1作動細管50、第2作動細管52、およびS細管51の連通状態が切換えられる。
【0026】
具体的には、凹部61は、
図2に示す下端位置では、第1作動細管50とS細管51を連通させるとともに、D細管35と第2作動細管52とを連通させる。この状態では、D細管35を通して弁室32に流れ込んだ高圧の駆動流体が、弁座部材40側に流れ、凹部61に覆われていない第3ポート孔44から第2作動細管52を通って四方弁1の第2作動室18に流れ込む。一方、S細管51を通って凹部61に流れ込んだ低圧の駆動流体は、第1ポート孔42から第1作動細管50を通って四方弁1の第1作動室17に流れ込む。これにより、第1作動室17と第2作動室18とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体20が
図1に示す左端位置に移動する。
【0027】
一方、弁体60が下端位置から上側に移動して不図示の上端位置に位置すると、凹部61は、第2作動細管52とS細管51を連通させるとともに、D細管35と第1作動細管50とを連通させる。この状態では、D細管35を通して弁室32に流れ込んだ高圧の駆動流体が、弁座部材40側に流れ、凹部61に覆われていない第1ポート孔42から第1作動細管50を通って四方弁1の第1作動室17に流れ込む。一方、S細管51を通って凹部61に流れ込んだ低圧の駆動流体は、第3ポート孔44から第2作動細管52を通って四方弁1の第2作動室18に流れ込む。これにより、第1作動室17と第2作動室18とで圧力差が発生し、四方弁1のスライド弁体20が
図1に示す左端位置から右側に移動する。
【0028】
電磁駆動部70は、弁体60を軸線L方向にスライド駆動するものであり、
図2に示すように、プランジャ配置室33に配置されるプランジャ71と、プランジャ配置室33内でプランジャ71と軸線L方向に間隔をあけて配置される吸引子72と、コイルユニット80と、を備えている。プランジャ71は、プランジャチューブ31の内周面に対して軸線L方向に摺動する大径部71aと、大径部71aに連続し、弁室32側に延びる小径部71bと、を備えている。大径部71aには、軸線L方向に貫通する第1均圧孔73が形成されている。小径部71bには、第1均圧孔73に交差して交差方向Xに延び弁座部材40側に開口する第2均圧孔74が形成されている。この構成により、第1均圧孔73と第2均圧孔74とは、連通している。また、この構成により、上述した高圧配管としてのD細管35から弁室32内に流入した駆動流体は、第2均圧孔74から第1均圧孔73を通ってプランジャ配置室33に流れる。
【0029】
これにより、弁室32と、プランジャ配置室33と、が第1均圧孔73および第2均圧孔74を介して連通し、弁室32とプランジャ配置室33とに同じ圧力がかかっている。プランジャ71の小径部71bには、弁座部材40に向かって開口する凹状の保持部75が形成されている。保持部75には、弁体60が収容されている。弁体60は、保持部75内部に設置された付勢部材75aによって、弁座部材40の摺動面41に押し付けられている。吸引子72は、プランジャ71と軸線L方向に間隔をあけて配置され、その外面がプランジャチューブ31の内面に溶接により固定されている。吸引子72の軸線L方向上側の端部には、上側に開口する雌ねじ部77が形成されており、雌ねじ部77には、固定ねじ78が螺合している。吸引子72とプランジャ71との間には、プランジャばね76が介在するように配置され、これによってプランジャ71が弁体60側に向かって付勢されている。
【0030】
コイルユニット80は、弁本体30の外部に設けられるモールドコイル部81(コイル)と、モールドコイル部81を囲んで磁路を形成する外函部82(外函)と、を備えている。モールドコイル部81は、円筒状に形成された中空ボビン83(ボビン)と、中空ボビン83の外周に巻回される巻線84と、巻線84の外周を覆うモールド樹脂85と、を備えている。中空ボビン83の中心には、軸線Lと同軸で軸線L方向に貫通する貫通孔86が形成されている。貫通孔86は、プランジャチューブ31を挿通させる孔であり、その内径の大きさは、
図3に示すように、プランジャチューブ31の外径の大きさよりも若干大きく設定されている。このような構成により、電磁駆動部70では、非通電時には、プランジャばね76の力によりプランジャ71が
図2における下側に付勢されてプランジャ71および弁体60が
図2における下端位置に移動する。一方、通電時には、吸引子72が励磁されることでプランジャ71と吸引子72との間に吸引力が発生し、プランジャ71および弁体60が上側に移動する。
【0031】
外函部82は、モールドコイル部81を囲んでコイルユニット80の外殻を構成する部分であり、
図4に示すように、例えば、板状の磁性材料をプレスにより打ち抜き、曲げ加工等することで全体角筒状、すなわちロの字状に形成され、モールドコイル部81周りに磁路を形成している。外函部82は、天壁部87と、一対の側壁部88と、一対の底壁部89と、を備えている。天壁部87は、交差方向Xに延在している。天壁部87の中央には、軸線Lと同軸で軸線L方向に貫通する固定孔87aが貫通形成されている。固定孔87aには、上述の固定ねじ78が挿通することとなっており、固定孔87aに固定ねじ78を挿通させた状態で、固定ねじ78を吸引子72の雌ねじ部77に螺合させることで天壁部87が弁本体30の上端側(軸線L方向の一方側)を覆った状態で、プランジャチューブ31に固定される。
【0032】
側壁部88は、天壁部87の交差方向Xの両端部に連続し、下側(軸線L方向の他方側)に延びている。
図2に示すように、側壁部88の内面は、天壁部87がプランジャチューブ31に固定された状態で、モールドコイル部81の外面と交差方向Xに対向するようになっている。底壁部89は、一対の側壁部88の下端部に連続し、それぞれが交差方向Xの内側、すなわち互いに近づく方向に突出し、同方向に延びて形成されている。
図4に示すように、底壁部89は、先端に向かうほど軸線L方向の上側に位置するように傾斜して設けられており、側壁部88との連続部分を支点として、先端部が軸線L方向に弾性変形可能となっている。一対の底壁部89の先端縁は、交差方向Xに僅かに隙間Sをあけて互いに対向している。
【0033】
なお、隙間S部分では、上述した磁路が形成されないことから、隙間Sを大きくしすぎるとモールドコイル部81の磁束の損失の原因となるため、隙間Sはなるべく小さく設定することが望ましい。一対の底壁部89の先端縁の各々には、軸線L方向から見て互いに向かって開口するように切り欠かれた切欠部90が形成されている。切欠部90は、プランジャチューブ31(弁本体30)の外面に沿ってそれぞれ切り欠かれ、
図4に示すように、軸線L方向から見て半円状に形成されており、互いが軸線L方向に貫通しプランジャチューブ31を軸線L方向に挿通させる本体挿通部91を構成している。本体挿通部91は、上述した中空ボビン83の貫通孔86と同軸に設けられ貫通孔86に連通するようになっている。
図5に示すように、本体挿通部91の縁部には、外函部82と一体の半円突起92(突起部)が設けられている。
【0034】
半円突起92は、本体挿通部91の縁部を例えば、曲げ加工等することで形成されている。半円突起92は、軸線L方向の下側に突出し、プランジャチューブ31の外面に沿って延びている。すなわち、半円突起92は、切欠部90の周縁にそれぞれ設けられ、プランジャチューブ31の外側(外方)に突出している。
図3に示すように、半円突起92(突起部)の内面は、プランジャ71の大径部71aと、プランジャチューブ31の側壁を挟んで交差方向Xに対向している。また、半円突起92の内径は、貫通孔86の内径(すなわち中空ボビン83の内径)よりも小さく形成されている。また、半円突起92の内径は、少なくとも底壁部89が上述した弾性変形した後の状態で、プランジャチューブ31の外径よりも大きくなっており、これによって、本体挿通部91および貫通孔86にプランジャチューブ31を挿通させた際には、半円突起92とプランジャチューブ31の外面との間に僅かな隙間が生じるようになっている。
【0035】
次に、パイロット弁2の組み立てについて説明する。まず、プランジャチューブ31に、プランジャ71、吸引子72を収容した弁本体30に、D細管35、弁座部材40、および弁体60を取り付ける。また、中空ボビン83に巻線84を巻回しモールド樹脂85で固定してモールドコイル部81を組み立てる。そして、モールドコイル部81に外函部82を取り付ける。この際、外函部82における一対の底壁部89の間に形成される隙間Sを広げるように底壁部89を変形させ、
図2に示すように、交差方向Xの両側から、モールドコイル部81を挟み込むようにして外函部82をモールドコイル部81に取り付ける。そして、このように組み立てたモールドコイル部81および外函部82に対して弁本体30を取り付ける。
【0036】
具体的には、プランジャチューブ31を、本体挿通部91および貫通孔86に対して、半円突起92側から軸線L方向に挿通させる。そして、プランジャチューブ31の上端部が外函部82の天壁部87内面に当接したところで固定ねじ78を固定孔87aに挿入し、吸引子72の雌ねじ部77に螺合させて、弁本体30、モールドコイル部81、および外函部82を互いに固定する。
【0037】
なお、この組み立ての際、外函部82では、
図6(A)に示すように、先端に向かうにしたがって軸線L方向の上側に位置するように傾斜していた底壁部89が、隙間Sを広げるように弾性変形した後、弾性変形前の状態に戻ることとなるが、
図2に示すように、底壁部89の内面はモールドコイル部81の底面に当接する。これにより、
図6(B)に示すように、底壁部89は、完全には弾性変形前の状態に戻らず、交差方向Xに傾斜せずに延びることとなる。このため、弾性変形前の状態に戻ろうとする弾性力によって底壁部89がモールドコイル部81の外面に対して軸線L方向に押し付けられ、これによって、外函部82がモールドコイル部81を安定して保持することとなる。
【0038】
次に、半円突起92の大きさについて説明する。
図7(A)は、半円突起92の軸線L方向に沿った断面図であり、
図7(B)は、半円突起92の底面図である。
図7(A)に示すように、半円突起92の板厚Aは、天壁部87、側壁部88、底壁部89の板厚Bよりも小さくなっている。そして、半円突起92の軸線L方向の長さ(切欠部90の縁部を折り曲げた部分の長さ)と、半円突起92の周方向の長さと、半円突起92の板厚Aと、の積×2で決まる半円突起92の体積である第1体積Cは、本体挿通部91の開口面積と、底壁部89の板厚Bと、の積で決まる第2体積Dよりも小さくなっている。なお、
図7(A)、(B)では、第1体積Cについて、左側の半円突起92の体積のみ斜線で示している。また、
図7(A)、(B)では、第2体積Dについて、左側部分の体積のみ斜線で示している。
【0039】
また、本実施形態では、上述のように板厚Aを板厚Bよりも小さく設定したが、板厚Bと板厚Aは等しくてもよい。また、第1体積Cは、第2体積Dよりも小さく設定したが、第1体積Cと第2体積Dは等しくてもよい。すなわち、天壁部87、側壁部88、底壁部89の板厚Bに対して、半円突起92の板厚Aは同一または板厚Bよりも小さくてよい。また、半円突起92の体積である第1体積Cは、本体挿通部91の開口面積と底壁部89の板厚Bとの積で決まる第2体積Dと同一または第2体積Dよりも小さくてよい。
【0040】
以上の構成により、圧縮機6で圧縮された高圧の冷媒はD継手管12から高圧室16内に流入し、冷房運転の状態(冷却モード時)では、高圧冷媒が、C継手管15から室外熱交換器5に流入される。また、スライド弁体20の位置を切換えた暖房運転の状態(暖房モード時)では、高圧冷媒はE継手管13から室内熱交換器3に流入される。すなわち、冷房運転時には、圧縮機6から吐出される冷媒はC継手管15、室外熱交換器5、絞り装置4、室内熱交換器3、E継手管13と循環し、室外熱交換器5が凝縮器(コンデンサ)、室内熱交換器3が蒸発器(エバポレータ)として機能し、冷房がなされる。絞り装置4は、室外熱交換器5と室内熱交換器3との間にて冷媒を膨張させて減圧する。また、暖房運転時には冷媒は逆に循環され、室内熱交換器3が凝縮器、室外熱交換器5が蒸発器として機能し、暖房がなされる。
【0041】
以上、上述した実施形態によれば、電磁駆動部70では、プランジャ71、吸引子72、モールドコイル部81(コイル)、および外函部82(外函)によって磁路を形成することができる。この際、外函部82は、プランジャ71と交差方向Xに対向する半円突起92(突起部)によってプランジャ71との対向面積を増大させることができることから、電磁駆動部70における磁束の損失を抑制し、磁気効率を向上させることができる。これにより、電磁駆動部70における出力を向上させることができる。また、この構成によれば、電磁駆動部70のコストに影響の大きい巻線84の巻数を低減しても、電磁駆動部70の駆動力を維持することが可能となることから、電磁駆動部70の駆動力を維持したまま電磁駆動部70の製造コストを低減することができる。また、半円突起92は、外函部82と一体に設けられることから、電磁駆動部70の磁気効率向上のために新たな部品等を設ける必要がなく、電磁駆動部70の製造コストを低減することができる。したがって、電磁駆動部70における出力の向上、および、電磁駆動部70の製造コストの低減を両立することができるパイロット弁2(スライド式切換弁)を提供することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、天壁部87、側壁部88、底壁部89で全体角筒状、すなわちロの字状に形成された外函部82によって様々な方向からモールドコイル部81を囲むことができるので、上述した電磁駆動部70における磁束の損失を抑制し、磁気効率を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、半円突起92の体積である第1体積Cは、本体挿通部91の開口面積と、底壁部89の板厚Bと、の積で決まる第2体積Dに対して同一または第2体積Dよりも小さくなっていた。この構成によれば、本体挿通部91、すなわち切欠部90を形成するために外函部82を切り欠いて捨てる部分の体積(第2体積D)と同じか、それよりも小さい体積で半円突起92を形成することができ、切欠部90を形成するために外函部82を切り欠いた部分の体積より大きな半円突起92を形成しなくてよい。このため、外函部82の材料コストを低減することができる。また、本構成では、例えば、板材をプレスで打ち抜き、曲げ加工等により板材をロの字状とし、さらに打ち抜きにより切欠部90を形成するとともに、切欠部90の縁部を曲げ加工することにより半円突起92を形成する、というようにして外函部82を形成することができる。このように、板材を打ち抜きおよび曲げ加工するという比較的シンプルな工程により、外函部82の製造を容易に行うことができる。
【0044】
また、半円突起92の内径は、貫通孔86の内径(中空ボビン83の内径)よりも小さくなっていた。このような構成によれば、半円突起92(突起部)が中空ボビン83の内周面よりもプランジャ71に接近することとなるため、上述したような磁束の損失をより生じ難くし、電磁駆動部70における磁気効率を向上させることができる。
【0045】
また、半円突起92は、外函部82の外側(外方)に突出して形成されていた。例えば、半円突起92は外函部82の内方に突出させることも考えられるが、この場合、半円突起92と中空ボビン83との干渉を避けるために半円突起92を中空ボビン83の内方に挿入することとなり、そのスペースを確保するために中空ボビン83が大型化する。これにより、モールドコイル部81(コイル)全体が大型化し、モールドコイル部81の製造コストが増大することとなる。これに対し、例えば、中空ボビン83の内壁に半円突起92を収めるための段差部等を形成することも考えられるが、この場合、中空ボビン83の構造が複雑化することによりモールドコイル部81の製造コストが増大することとなる。また、段差部等の形成により中空ボビン83の一部が薄肉化し、モールドコイル部81の強度が低下することとなる。しかしながら、本構成によれば、半円突起92を外函部82の外方に突出させて形成するため、半円突起92の構成が中空ボビン83の大きさや形状に影響を与えることがなく、上述した中空ボビン83の大型化、複雑化、または薄肉化を避けることができ、モールドコイル部81の製造コストが増大することやモールドコイル部81の強度が低下することを避けることができる。
【0046】
そして、本実施形態によれば、電磁駆動部70における出力の向上、および、電磁駆動部70の製造コストの低減を両立することができるパイロット弁2を用いて冷凍サイクルシステム100を構成することができる。
【0047】
以上、パイロット弁2および冷凍サイクルシステム100の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
図8は、変形例に係る外函部82’を斜め下から見上げた斜視図である。変形例では、半円突起92に、切欠き93が形成されている点が上述した実施形態と異なっている。切欠き93は、半円突起92の径方向および下側に向かって開口して形成され、半円突起92の周方向に1または複数個設けられている。切欠き93の形成により、半円突起92(突起部)は、切欠部90の縁部に沿って断続的に延びている。
【0048】
このような構成によれば、上述した実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。また、上述したように打ち抜きにより切欠部90を形成するとともに、切欠部90の縁部を曲げ加工する際に、例えば、切欠部90の縁部に切込み(この切込みが切欠き93になる)を入れて当該縁部を分割した上で分割された縁部のそれぞれを別々に曲げ加工して半円突起92を形成することができる。このため、切欠部90の縁部をまとめて曲げ加工する必要がなく、切欠部90の縁部の全てに半円突起92が設けられる構成と比較して、上記曲げ加工を容易に行えるようにすることができる。したがって、半円突起92の形成を容易に行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態および変形例では、スライド式切換弁の一例として、4つの配管の連通状態を切換える四方弁1のスライド弁体20を移動させるための駆動流体を四方弁1との間で流通させるパイロット弁2を例示したが、例えば、上述した四方弁1に本発明を適用してもよい。また、スライド式切換弁は、これら四方弁1やパイロット弁2に限られない。スライド式切換弁は、弁ハウジングに少なくとも一対の配管が接続されたものであれば、例えば3本の配管のうちの一対の配管を連通させるときの連通対象の配管を、弁体を用いて切換える三方弁であってもよい。もしくは、連通対象の配管の数をさらに増やして多方弁としてもよい。このように、スライド式切換弁における配管の数や、連通状態の切換え方等については、スライド式切換弁の適用対象等に応じて変更してよい。
【0050】
また、外函部82は、天壁部87、側壁部88、底壁部89によって全体角筒状、すなわちロの字状に形成されていたが、外函部82の形状はこれに限られず、モールドコイル部81を覆い、コイルユニット80の外殻を構成できればどのような形状でもよい。ただし、外函部82をロの字状に形成することで、モールドコイル部81の上端、外周、下端を外函部82で確実に覆いやすくなり、磁束の損失を低減することができるため、磁気効率向上の観点から、外函部82はロの字状に形成することが好ましい。
【0051】
また、本実施形態によれば、プランジャチューブ31が円筒状に形成されていたことから、その形状に合わせて切欠部90を軸線L方向から見て半円状とし、半円突起92を突起部とした。しかしながら、切欠部90および突起部の形状は、プランジャチューブ31の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、プランジャチューブ31が角筒状に形成されていた場合は、その外形に合わせて切欠部90を軸線L方向から見てコ字状に形成してもよく、これに合わせて突起部を軸線L方向から見てコ字状としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
L 軸線
2 パイロット弁(スライド式切換弁)
30 弁本体
40 弁座部材(弁座部)
60 弁体
70 電磁駆動部(駆動部)
71 プランジャ
72 吸引子
81 モールドコイル部(コイル)
82 外函部(外函)
91 本体挿通部
92 半円突起(突起部)