(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166661
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241122BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/04 J
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082893
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀輔
【テーマコード(参考)】
3J063
5H609
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB01
3J063BA11
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD53
3J063XD62
3J063XD72
3J063XE18
3J063XF14
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609RR32
5H609RR41
5H609RR46
(57)【要約】
【課題】キャッチタンクに供給されるオイル量に対してキャッチタンクからの排出量が上回る場合に、キャッチタンクに貯留されるオイルが偏ることを防止でき、回転電機の広い範囲にオイル供給できる回転電機の冷却構造を提供すること。
【解決手段】駆動モータ3の冷却構造において、駆動モータ3の上方に配置されたキャッチタンク8を有し、キャッチタンク8は、駆動モータ3の外周に沿って湾曲する下壁10Bを備えている。下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向に沿って延び、下壁10Bから上方に突出する複数のリブ11を有し、隣り合うリブ11の間の下壁10Bにはキャッチタンク8に貯留されるオイルを駆動モータ3に滴下するオイル排出孔が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の上方に配置され、オイル通路から供給されるオイルを一時的に貯留するキャッチタンクを備えた回転電機の冷却構造であって、
前記キャッチタンクは、前記回転電機の外周に沿って湾曲する下壁を備えており、
前記下壁は、前記回転電機の軸線方向に沿って延び、前記下壁から上方に突出する複数のリブを有し、
隣り合う前記リブの間の前記下壁に、前記キャッチタンクに貯留されるオイルを前記回転電機に滴下するオイル排出孔が形成されていることを特徴とする回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記下壁は、前記回転電機の軸線方向の一方側の前記キャッチタンクの一方側側壁側から前記回転電機の軸線方向の他方側の前記キャッチタンクの他方側側壁に向かうに従って高く傾斜しており、
前記オイル通路は、前記キャッチタンクに収容され、前記他方側側壁に向かって開口するオイル吐出口を有する配管部を備えており、
前記配管部は、前記一方側側壁から前記他方側側壁に向かって前記回転電機の軸線方向の略中央部まで延びており、前記下壁の最も低い部位よりも高い位置に設けられた前記下壁の部位の上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
隣接する前記リブにおいて、前記下壁の高さ方向で上側に位置するリブの上端位置に対して下側に位置するリブの上端位置が低いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機等の回転電機を備え、車両等に搭載される動力伝達装置にあっては、回転電機の発熱による効率低下を抑制するために、回転電機を冷却する必要がある。従来、回転電機を冷却するものとして、特許文献1に記載される車両の電動機冷却装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載される車両の電動機冷却装置は、第2電動機のコイルエンドの鉛直上方にキャッチタンクが設けられており、キャッチタンクは、コイルエンドの外周に沿って湾曲している。
【0004】
キャッチタンクにはコイルエンドにオイルを滴下させるための油孔が形成されており、第2ノズルから噴射されてキャッチタンクに一時的に貯留されるオイルは、油孔からコイルエンドに滴下されることにより、電動機が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の車両の電動機冷却装置にあっては、キャッチタンクに供給されるオイル量に対してキャッチタンクからの排出量が上回る低車速域等において、キャッチタンクに貯留されるオイルの油面がキャッチタンクの下壁の低い部分に極端に偏り、油孔からモータの一部に偏って滴下されるおそれがある。これにより、モータの広い範囲にオイルが行き渡らないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、キャッチタンクに供給されるオイル量に対してキャッチタンクからの排出量が上回る場合に、キャッチタンクに貯留されるオイルが偏ることを防止でき、回転電機の広い範囲にオイル供給できる回転電機の冷却構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転電機の上方に配置され、オイル通路から供給されるオイルを一時的に貯留するキャッチタンクを備えた回転電機の冷却構造であって、前記キャッチタンクは、前記回転電機の外周に沿って湾曲する下壁を備えており、前記下壁は、前記回転電機の軸線方向に沿って延び、前記下壁から上方に突出する複数のリブを有し、隣り合う前記リブの間の前記下壁に、前記キャッチタンクに貯留されるオイルを前記回転電機に滴下するオイル排出孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、キャッチタンクに供給されるオイル量に対してキャッチタンクからの排出量が上回る場合に、キャッチタンクに貯留されるオイルが偏ることを防止でき、回転電機の広い範囲にオイル供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る回転電機の冷却構造を備えた動力伝達装置の右側面断面図であり、回転電機を縦断面で切断した図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る回転電機の冷却構造を備えた動力伝達装置の左側面断面図であり、オイル通路を縦断面で切断した図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの左斜め後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの断面図であり、パイプを縦断面で切断したキャッチタンクの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクのタンク本体を左斜め下方から見た図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクのタンク本体を左斜め上方から見た図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの一部を上方から見た図であり、リブの間を流れるオイルを示す。
【
図8】
図8は、本発明の一実施例に係るキャッチタンクの下壁とリブの高さの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、回転電機の上方に配置され、オイル通路から供給されるオイルを一時的に貯留するキャッチタンクを備えた回転電機の冷却構造であって、キャッチタンクは、回転電機の外周に沿って湾曲する下壁を備えており、下壁は、回転電機の軸線方向に沿って延び、下壁から上方に突出する複数のリブを有し、隣り合うリブの間の下壁に、キャッチタンクに貯留されるオイルを回転電機に滴下するオイル排出孔が形成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る回転電機の冷却構造は、キャッチタンクに供給されるオイル量に対してキャッチタンクからの排出量が上回る場合に、キャッチタンクに貯留されるオイルが偏ることを防止でき、回転電機の広い範囲にオイル供給できる。
【実施例0013】
以下、本発明に係る回転電機の冷却構造の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から
図8は、本発明に係る一実施例の回転電機の冷却構造を示す図である。
【0014】
図1から
図8において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態の動力伝達装置を基準とし、車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、車両に搭載される動力伝達装置1は、動力伝達ケース2を備えている。動力伝達装置1には回転電機としての駆動モータ3と発電モータ4が収容されるモータ収容室2Aが設けられている。
【0016】
動力伝達装置1には図示しない減速機室が形成されている。減速機室は、モータ収容室2Aと離隔されており、減速機室にはいずれも図示しない減速機とディファレンシャル装置が収容されている。
【0017】
駆動モータ3の駆動力(回転速度)は、減速機で減速された後、ディファレンシャル装置によって図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に伝達される。
【0018】
発電モータ4は、駆動モータ3に対して前側下方に配置されており、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する発電を行って図示しないバッテリを充電する。
【0019】
駆動モータ3と発電モータ4は、動力伝達ケース2に固定されたステータ3A、4Aと、ステータ3A、4Aの内周側に回転自在に配置されるロータ3B、4Bと、ロータ3B、4Bと一体で回転するロータ支持軸3C、4Cとを有する。
【0020】
ステータ3A、4Aは環状に形成されており、ステータ3A、4Aの外周、すなわち、駆動モータ3と発電モータ4の外周は円形に形成されている。
【0021】
図2に示すように、動力伝達ケース2にはオイル通路5が設けられている。オイル通路の下端には図示しないオイルポンプから吐出され、図示しないオイルストレーナによって浄化されたオイルが導入される。
【0022】
オイル通路5は、動力伝達ケース2の下部から上部にわたって形成されており、オイル通路5の上端部にはモータ収容室2Aに開口するオイル導入口5Aが設けられている。
【0023】
図1に示すように、駆動モータ3の上方にはキャッチタンク8が設けられている。
図3、
図4に示すように、キャッチタンク8は、タンク本体8Aと、タンク本体8Aに取付けられた蓋部材8Bとを備えている。
【0024】
キャッチタンク8は、それぞれタンク本体8Aと蓋部材8Bに設けられた上壁10Aと、上壁10Aの下方に設けられた下壁10Bと、上壁10Aの左端部と下壁10Bの左端部とを連絡する左側壁10Cと、上壁10Aの右端部と下壁10Bの右端部とを連絡する右側壁10Dとを有する。
【0025】
これに加えて、キャッチタンク8は、上壁10Aの前端部と下壁10Bの前端部と左側壁10Cの前端部と右側壁10Dの前端部とを連絡する前壁10Eと、上壁10Aの後端部と下壁10Bの後端部と左側壁10Cの後端部と右側壁10Dの後端部とを連絡する後壁10Fとを有する。
【0026】
左側壁10Cは、駆動モータ3の軸線C(
図1、
図4参照)の方向の一方側に位置しており、右側壁10Dは、駆動モータ3の軸線Cの方向の他方側に位置している。
【0027】
以下の説明において、軸線Cの方向を軸線方向という。本実施例の左側壁10Cは、一方側側壁を構成し、右側壁10Dは、他方側側壁を構成する。
【0028】
図1に示すように、下壁10Bは、前壁10Eから後壁10Fに向かい、駆動モータ3の外周に沿って湾曲している(
図5、
図6参照)。
【0029】
図4に示すように、下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向の一方側に位置する左側壁10C側から駆動モータ3の軸線方向の他方側に位置する右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜している。
【0030】
具体的には、下壁10Bは、蓋部材8Bの下壁10Bを除いたタンク本体8Aの左側壁10C側の下壁10Bから駆動モータ3の軸線方向の他方側に位置する右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜している。つまり、蓋部材8Bの下壁10Bは傾斜していない。
【0031】
下壁10Bには複数のリブ11が形成されている。リブ11は、左側壁10Cから右側壁10Dまで駆動モータ3の軸線方向に沿って延びており、下壁10Bから上方に突出している。リブ11は、前壁10Eの近傍から後壁10Fの近傍まで前後方向に並んで配置されている。
【0032】
下壁10Bには複数のオイル排出孔10aが形成されている。オイル排出孔10aは、右側壁10D側に位置しており、隣り合うリブ11の間に配置されている。本実施例のオイル排出孔10aは、左右方向に並んで2個配置されている。
【0033】
下壁10Bには複数のオイル排出孔10bが形成されている。オイル排出孔10bは、リブ11の延びる方向の中央部に対して左側壁10C側に位置しており、隣り合うリブ11の間に配置されている。
【0034】
図1、
図4に示すように、左側壁10Cにはパイプ取付部10cが形成されており、パイプ取付部10cは、左右方向でオイル導入口5Aに対向している。つまり、パイプ取付部10cとオイル導入口5Aは、同じ高さ位置で、かつ、前後方向で同じ位置に設けられている。
【0035】
パイプ取付部10cにはパイプ12が取付けられている。パイプ12の左端部は、パイプ取付部10cに挿入されており、パイプ取付部10cに支持されている。本実施例のパイプ12は、配管部を構成する。
【0036】
パイプ12は、オイル通路5を流れるオイルをキャッチタンク8に導入し、キャッチタンク8は、パイプ12から導入されたオイルを一時的に貯留する。キャッチタンク8に貯留されたオイルは、オイル排出孔10a、10bから駆動モータ3に滴下されることにより、駆動モータ3がオイルによって冷却される。
【0037】
パイプ12の先端部(右端部)にはオイル吐出口12a設けられており、オイル吐出口12aは、右側壁10Dに向かって開口している。つまり、パイプ12は、キャッチタンク8に収容されている。
【0038】
パイプ12は、左側壁10Cから右側壁10Dに向かって駆動モータ3の軸線方向の略中央部まで延びており、オイル吐出口12aからオイル吐出口12aの下方に配置されるリブ11の間にオイルを吐出する。
【0039】
図1に示すように、動力伝達装置1を右方から見た場合に、パイプ取付部10cは、下壁10Bの後側に位置する低い部位よりも高い部位に位置する下壁10Bの上側に位置している。
【0040】
図5に示すように、下壁10Bには凹部10dが形成されており、凹部10dは、下壁10Bから下方に膨出している。
【0041】
オイル排出孔10aは、凹部10dの膨出方向の底面に形成されており、キャッチタンク8に貯留されるオイルは、凹部10dに円滑に集められ、オイル排出孔10aから駆動モータ3に滴下される。
【0042】
下壁10Bには図示しない凹部が形成されており、凹部は、下壁10Bから下方に膨出している。オイル排出孔10bは、凹部の膨出方向の底面に形成されており、キャッチタンク8に貯留されるオイルは、凹部に円滑に集められ、オイル排出孔10bから駆動モータ3に滴下される。
【0043】
隣接するリブ11において、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11の上端11aの位置(すなわち、リブ11の上端位置)に対して下側に位置するリブ11の上端11aの位置が低く形成されている。
【0044】
具体的には、
図8に示すように、隣接するリブ11B、11Cにおいて、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11Bの上端11aの位置に対して下側に位置するリブ11Cの上端11aの位置が低く形成されている。
【0045】
これにより、隣接するリブ11B、11Cにおいて、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11Bの上下方向長さが、下壁10Bの高さ方向で下方に位置するリブ11Cの上下方向長さよりも短い場合であっても、リブ11Bの上端11aの位置がリブ11Cの上端11aの位置よりも高くなるように配置される。
【0046】
図8は、隣接するリブ11A、11Bは、同じ高さ位置に形成されており、リブ11A、11Bの上端11aは、同じ高さ位置に位置している。
【0047】
ここで、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11とは、隣接する一方のリブ11の下端部(例えば、
図8のリブ11Bの下端部)が隣接する他方のリブ11の下端部(例えば、
図8のリブ11C)の下端部よりも高い位置にあるリブ11(例えば、
図8のリブ11B)に相当する。
【0048】
図3、
図5に示すように、キャッチタンク8の上壁10Aにはオイル排出孔10eが形成されている。キャッチタンク8に導入されるオイル量が増大し、オイルがキャッチタンク8からオーバーフローする場合にはオイル排出孔10eからオイルが排出される。
【0049】
上壁10Aよりも上方には閉止部10Jが設けられており、オイル排出孔10eの上方は、閉止部10Jによって閉止されている。
【0050】
オイル排出孔10eから排出されるオイルは、上壁10Aと閉止部10Jの間を通して、動力伝達ケース2に形成された図示しないオイル通路に案内され、このオイル通路を通して減速機室に供給される。これにより、減速機がオイルによって潤滑される。
【0051】
オイル排出孔10eの上方は、閉止部10Jによって閉止されているので、オイルがオイル排出孔10eから上方に飛散することを防止できる。
【0052】
次に、本実施例の駆動モータ3の冷却構造の作用効果を説明する。
動力伝達ケース2の底部にはオイルが貯留されており、このオイルは、オイルポンプによって吸い上げられてオイル通路5に導入される。
【0053】
オイル通路5に導入されたオイルは、オイルストレーナで浄化され、オイル導入口5Aからパイプ12を通してキャッチタンク8に導入される。
【0054】
本実施例の駆動モータ3の冷却構造によれば、駆動モータ3の上方に配置されたキャッチタンク8は、駆動モータ3の外周に沿って湾曲する下壁10Bを備えており、下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向に沿って延び、下壁10Bから上方に突出する複数のリブ11を有する。
【0055】
これに加えて、隣り合うリブ11の間の下壁10Bにはキャッチタンク8に貯留されるオイルを駆動モータ3に滴下するオイル排出孔10a、10bが形成されている。
【0056】
これにより、隣り合うリブ11の間の空間をオイル溜まりとして用いることができ、キャッチタンク8に供給されるオイル量に対してキャッチタンク8からの排出量が上回る低車速域等において、オイルをリブ11の間に溜め、リブ11の間に形成されたオイル排出孔10a、10bから駆動モータ3に滴下できる。
【0057】
このため、キャッチタンク8に貯留されるオイルの油面が下壁10Bの低い部位に極端に偏り、下壁10Bの低い部位に形成されたオイル排出孔10a、10bから駆動モータ3の周方向の一部分に集中して滴下されることを防止できる。
【0058】
この結果、キャッチタンク8に供給されるオイル量に対してキャッチタンク8からの排出量が上回る場合であっても、駆動モータ3の円周方向の広い範囲にわたってオイルを供給でき、駆動モータ3の冷却性能を向上できる。
【0059】
また、下壁10Bに複数のリブ11を形成することにより、リブ11によって下壁10Bを補強することができ、キャッチタンク8の剛性を向上できる。
【0060】
また、本実施例の駆動モータ3の冷却構造によれば、下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向の一方側の左側壁10C側から駆動モータ3の軸線方向の他方側の右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜している。
【0061】
オイル通路5は、キャッチタンク8に収容され、右側壁10Dに向かって開口するオイル吐出口12aを有するパイプ12を備えている。
【0062】
パイプ12は、左側壁10Cから右側壁10Dに向かって駆動モータ3の軸線方向の略中央部まで延びており、下壁10Bの後側に位置する低い部位よりも高い部位に位置する下壁10Bの上方に設けられている。
【0063】
これにより、パイプ12のオイル吐出口12aから排出されるオイルは、オイル吐出口12aの下方に配置されるリブ11の間に吐出される。
【0064】
図7に基づいてオイルの流れを説明する。
オイル吐出口12aの直下に配置されるリブ11をリブ11A、11Bで表し、リブ11Bに隣接するリブ11をリブ11Cで示し、リブ11Cに隣接するリブ11をリブ11Dで示す。
【0065】
リブ11A、11Bの間にはオイル溜まり12Aが形成されるので、オイル溜まり12Aを流れるオイルは、オイル吐出口12aから吐出されたオイルの勢いによってリブ11A、11Bに沿って右側壁10Dまで流れる(オイルO1参照)。
【0066】
このとき、オイルは、リブ11A、11Bに遮られてオイル溜まり12Aよりも低い下壁10Bの部位に流れることがない。つまり、オイル溜まり12Aよりも低いオイル溜まり12Bに流れることがない。
【0067】
下壁10Bは、左側壁10C側から右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜しているので、リブ11A、11Bに沿ってオイル溜まり12Aを流れるオイルO1は、右側壁10Dに衝突した勢いでリブ11A、11Bに沿って反転し(オイルO2参照)、左側壁10Cに向かって流れる(オイルO3参照)。
【0068】
このときもオイルは、リブ11A、11Bに遮られてオイル溜まり12Aよりも低い位置に流れることがない。これにより、オイル溜まり12Aには左右方向にわたってオイルが満遍なく行き渡る。
【0069】
すなわち、下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向の一方側の左側壁10C側から駆動モータ3の軸線方向の他方側の右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜しているので、オイル排出孔10aよりもオイル排出孔10bにオイルが溜まり易い。
【0070】
しかしながら、パイプ12を左側壁10Cから右側壁10Dに向かって駆動モータ3の軸線方向の略中央部まで伸ばすことにより、パイプ12のオイル吐出口12aから吐出されるオイルをリブ11A、11Bの間のオイル溜まり12Aに溜めてリブ11A、11Bに沿って流すことができる。
【0071】
このため、オイル溜まり12Aに左右方向にわたってオイルを満遍なく行き渡らせることができ、左右方向に離れたオイル排出孔10aとオイル排出孔10bからそれぞれ排出されるオイル量差が拡大することを防止できる。
【0072】
リブ11A、11Bの間のオイル溜まり12Aが満杯になると、オイルの油面がリブ11Bの上端を超える。
【0073】
このとき、オイル溜まり12Aの余剰のオイルは、リブ11A、11Bが配置される下壁10Bよりも低い部位に配置され、リブ11Bに隣接するリブ11Bとリブ11Cの間のオイル溜まり12Bに流れ、オイル溜まり12Bには左右方向にわたってオイルが満遍なく行き渡る。
【0074】
さらに、リブ11B、11Cの間のオイル溜まり12Bが満杯になり、オイルの油面がリブ11Cの上端を超えると、余剰のオイルがリブ11B、11Cが配置される下壁10Bよりも低い部位に配置され、リブ11Cに隣接するリブ11Cとリブ11Dの間のオイル溜まり12Cに流れ、オイル溜まり12Cには左右方向にわたってオイルが満遍なく行き渡る。
【0075】
これにより、リブ11Aとリブ11Bの間に位置するオイル排出孔10bから駆動モータ3にオイルを滴下できるとともに、リブ11Bとリブ11Cの間に位置するオイル排出孔10aから駆動モータ3にオイルを滴下できる。
【0076】
これに加えて、リブ11Cとリブ11Dの間に位置するオイル排出孔10bから駆動モータ3にオイルを滴下できる。この結果、駆動モータ3の周方向の広い範囲にオイルを滴下でき、駆動モータ3をより効果的に冷却できる。
【0077】
なお、パイプ12は、下壁10Bの最も高い部位の上方に設けられることが好ましい。 このようにすれば、パイプ12の直下に設けられた隣接するリブ11の間から前側と後側に隣接するリブ11の間にオイルを流すことができ、下壁10Bの前後左右方向にオイルを満遍なく行き渡らせることができる。
【0078】
これにより、駆動モータ3の全体にわたってオイルを滴下させることができ、駆動モータ3をより効果的に冷却できる。
【0079】
なお、パイプ12は、下壁10Bの最も低い位置を除いた下壁10Bの部位の上方に配置されていればよい。
【0080】
ここで、隣接するリブ11において、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11の上端11aの位置に対して下側に位置するリブ11の上端11aの位置が高いと、油面がリブ11の高さを超えられず、オイルがキャッチタンク8の下壁10Bの低い部位に流れないおそれがある。
【0081】
本実施例の駆動モータ3の冷却構造によれば、隣接するリブ11において、下壁10Bの高さ方向で上側に位置するリブ11の上端11aの位置に対して下側に位置するリブ11の上端11aの位置が低く形成されている。
【0082】
これにより、キャッチタンク8へのオイル供給量が少ない場合でも、オイルがリブ11の上端11aを容易に乗り越えることができる。
【0083】
このため、キャッチタンク8の下壁10Bの高い部位から低い部位にオイルを容易に流すことができ、キャッチタンク8から駆動モータ3の円周方向の広い範囲にオイルを確実に滴下できる。これにより、駆動モータ3をより効果的に冷却できる。
【0084】
また、本実施例の駆動モータ3の冷却構造によれば、下壁10Bは、下壁10Bから下方に膨出する凹部10dと図示しない凹部とを形成し、凹部10dの底面にオイル排出孔10aが形成されているとともに、図示しない凹部の底面にオイル排出孔10bが形成されている。
【0085】
これにより、キャッチタンク8に供給されるオイル量に対してキャッチタンク8からの排出量が上回る場合に、凹部10dや図示しない凹部にオイルを円滑に集めてオイル排出孔10a、10bから駆動モータ3に滴下できる。これにより、駆動モータ3をより効果的に冷却できる。
【0086】
また、図示していないが、発電モータ4の上方にキャッチタンク8を配置し、キャッチタンク8に一時的に貯留されるオイルによって発電モータ4を冷却してもよい。
【0087】
この場合に、発電モータ4の上方に配置されたキャッチタンク8にはオイル通路6(
図1参照)からオイルが供給される。オイル通路6にはオイルポンプから吐出されてオイルストレーナによって浄化されたオイルが供給される。
【0088】
なお、下壁10Bは、駆動モータ3の軸線方向の一方側の左側壁10Cから駆動モータ3の軸線方向の他方側の右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜してもよい。つまり、下壁10Bは、蓋部材8Bの下壁10Bの左側壁10Cから駆動モータ3の軸線方向の他方側に位置する右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜してもよい。
【0089】
換言すれば、タンク本体8Aと蓋部材8Bの下壁10Bは、左側壁10Cから駆動モータ3の軸線方向の他方側に位置する右側壁10Dに向かうに従って高く傾斜してもよい。
【0090】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...動力伝達装置、2...動力伝達ケース、3...駆動モータ(回転電機)、5...オイル通路、8...キャッチタンク、10a,10b...オイル排出孔、10B...下壁、10C...左側壁(一方側側壁)、10D...右側壁(他方側側壁)、11...リブ、11a...上端(リブの上端)、12...パイプ(配管部)、C...駆動モータの軸線(回転電機の軸線)