(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166664
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】フロントトランク構造
(51)【国際特許分類】
B60R 5/02 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B60R5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082898
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 快
(72)【発明者】
【氏名】永野 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA20
3D022BB01
3D022BC10
(57)【要約】
【課題】トランクボックスの結露や凍結を抑制可能なフロントトランク構造を提供する。
【解決手段】フロントトランク22は、一方に開口する箱状の部材であって内部に収容空間を形成するトランクボックス30を主体として構成され、トランクボックス30には、車両の走行中において熱を発生する熱源体16aが隣接して配されており、トランクボックス30は、外側の表面の少なくとも一部に金属層46が形成された構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前方にその車室と区画して形成される収容空間であるフロントトランクの構造であって、
前記フロントトランクは、一方に開口する箱状の部材であって内部に前記収容空間を形成するトランクボックスを主体として構成され、
前記トランクボックスには、車両の走行中において熱を発生する熱源体が隣接して配されており、
前記トランクボックスは、外側の表面の少なくとも一部に金属層が形成されているフロントトランク構造。
【請求項2】
前記トランクボックスは、前記金属層が格子状に形成されている請求項1に記載のフロントトランク構造。
【請求項3】
前記トランクボックスは、前記金属層が、外側の表面の全域に形成されている請求項2に記載のフロントトランク構造。
【請求項4】
前記金属層は、前記熱源体と対向する部分に形成された熱源対向部と、前記熱源体から離間する方向に前記熱源対向部から延び出した延出部と、を有している請求項1に記載のフロントトランク構造。
【請求項5】
前記トランクボックスは、前記金属層が形成されている部分の表面積が、前記トランクボックスの外側全体の表面積の10%以上20%以下とされている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフロントトランク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントトランク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動系(エンジン)が車体の中央部に配されるミッドエンジン車や、車体の後方部に配されるリアエンジン車においては、車体の前方に収容空間(フロントトランク、いわゆるフランク)が設けられる場合がある。また、近年では、エンジンを搭載しない電気自動車の開発が進んでおり、その電気自動車においても、フロントトランクが設けられる。引用文献1には、そのフロントトランクの収容空間を形成する主体となるフランクモジュール(トランクボックス)を車体に対して堅固に固定させるとともに、衝突時の衝撃を緩衝可能な取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2273991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントトランクの収容空間を形成する主体となる概して箱状のトランクボックスは、その周囲を走行時の空気が流れ易い位置に配置されるため、結露や凍結する虞がある。また、フロントトランクは、車室の前方にその車室とは区画して形成されているため、車室内の暖気は届かず、車室の暖気によって、トランクボックスの結露や凍結を防止することも難しい。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、トランクボックスの結露や凍結を抑制可能なフロントトランク構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示されるフロントトランク構造は、下記の構成とされている。
(1)車室の前方にその車室と区画して形成される収容空間であるフロントトランクの構造であって、
前記フロントトランクは、一方に開口する箱状の部材であって内部に前記収容空間を形成するトランクボックスを主体として構成され、
前記トランクボックスには、車両の走行中において熱を発生する熱源体が隣接して配されており、
前記トランクボックスは、外側の表面の少なくとも一部に金属層が形成されているフロントトランク構造。
【0007】
本願に開示のフロントトランク構造は、トランクボックスの金属層が、モータやヒートポンプ等の熱源体からの輻射熱によって熱を吸収することができるため、トランクボックスが温められ、結露や凍結を抑制することができる。また、熱源体が、当該車両を駆動するモータ等である場合には、周囲の温度変化によってモータの効率が変化することが知られており、モータの周囲温度の適切化が望まれる。本願に開示のフロントトランク構造によれば、例えばモータに隣接するトランクボックスが温められることでモータ周囲の温度低下を抑えることができるなど、モータの周囲の温度の適切化を図ることができ、モータの効率低下を抑えることができる。
【0008】
さらに、本願に開示のフロントトランク構造は、トランクボックスの金属層の存在によって、ボデーに帯電する電荷を減少させることができ、車両走行中の空気流を安定させて、走行安定性を向上させることができる。詳しく説明すれば、車両の走行中において、ボデー表面とボデーの周囲の空気が同じ極性に帯電すると、ボデーと空気との間で斥力(反発力)が作用し、その斥力によって、ボデーの表面近傍に沿って流れる空気流において、ボデーの表面から剥離するような乱れた流れが生じる場合がある。その車両走行中における空気流の剥離によって、狙った空力特性が得られず、走行安定性や走行性能などが低下する虞がある。トランクボックスの金属層は、車両前方の車体パネル近傍の電荷を一時的に蓄え、自己放電(コロナ放電)を生じさせる。自己放電によって生じたイオンは周囲に極性の異なるイオンを引き寄せ、中和除電される。つまり、ボデーに帯電する電荷を減少させることができ、車両走行中の空気流を安定させることができるのである。
【0009】
なお、本願に開示のフロントトランク構造において、金属層が形成される範囲は特に限定されないが、熱源体からの輻射熱を利用するため、少なくとも、その熱源体に近接する部分には形成されることが望ましい。また、後に詳しく説明するが、金属層が形成される範囲が大きくなるほど、車両の吸音性が低下するため、吸音性を維持するという観点からすれば、トランクボックスの外側表面全体までは金属層で被覆せず、外側表面の一部に金属層が形成されることが望ましい。金属層に用いられる材料に関しては、特に限定されないが、熱伝導率の高いものが望ましい。
【0010】
また、上記構成のフロントトランク構造において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0011】
(2)前記トランクボックスは、前記金属層が格子状に形成されている(1)項に記載のフロントトランク構造。
【0012】
この構成のフロントトランク構造によれば、トランクボックスにおける金属層が形成された部分の面積を大きくすることなく、つまり、吸音性の低下を抑えつつ、トランクボックスの外側表面における広範囲に金属層を形成して、トランクボックスの広範囲を温めることができる。また、この構成のフロントトランク構造は、トランクボックスの剛性(特に張力方向の剛性)を高めることができる。
【0013】
(3)前記トランクボックスは、前記金属層が、外側の表面の全域に形成されている(2)項に記載のフロントトランク構造。
【0014】
この構成のフロントトランク構造によれば、トランクボックスの外側表面の全体を温めることができ、効果的に結露や凍結を抑制することができる。
【0015】
(4)前記金属層は、前記熱源体と対向する部分に形成された熱源対向部と、前記熱源体から離間する方向に前記熱源対向部から延び出した延出部と、を有している(1)項に記載のフロントトランク構造。
【0016】
この構成のフロントトランク構造は、熱源体からの熱を効率的に吸収して、熱源体から遠い箇所も温めることができる。また、熱源体周囲の温度低下を、効果的に抑えることができるため、例えばモータ等の熱源体の効率低下を効果的に抑えることが可能である。
【0017】
(5)前記トランクボックスは、前記金属層が形成されている部分の表面積が、前記トランクボックスの外側全体の表面積の10%以上20%以下とされている(1)項から(4)項のいずれか一項に記載のフロントトランク構造。
【0018】
この構成のフロントトランク構造は、金属層の表面積が、トランクボックスの外側全体の表面積の20%以下とされることで、吸音率の低下を確実に抑えることができる。なお、熱源体からの熱の吸収、および、結露・凍結予防のためには、ある程度の金属層が必要であり、10%以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トランクボックスの結露や凍結を抑制可能なフロントトランク構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態のフロントトランク構造が採用された車両の斜視図
【
図2】フロントトランクを構成するトランクボックスの斜視図
【
図5】被膜率の異なるトランクボックスごとの減音効果を示すグラフ
【
図6】実施形態のフロントトランク構造が最硫黄されていない車両におけるボデー周辺の空気の流れを示す図
【
図7】実施形態の車両におけるボデー周辺の空気の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフロントトランク構造が採用された車両10について、
図1から
図7を参照しつつ詳しく説明する。本車両10は、
図1に示すように、車体12の前方側の部分が、上方に開口しており、その開口12aをボンネット14によって開閉可能な構成とされている。ただし、本車両10は、電気自動車であり、エンジンは搭載しておらず、モータを動力源として走行するものである。その駆動用のモータ16a(
図2参照)を含む駆動ユニット16は、車両10のボンネット14を開けた開口12aの内部に搭載されている。なお、その駆動ユニット16の上方は、カバー18によって覆われている。
【0022】
ボンネット14を開けた開口12aは、駆動ユニット16を収容しても、比較的余裕のある大きさとなっており、車両10は、車室20の前方にその車室20と区画して形成された収容空間であるフロントトランク22(以下、「フランク22」と呼ぶ場合がある)を有するものとなっている。
【0023】
フランク22は、
図2に示す箱状の部材であるフロントトランクボックス30(以下、「フランクボックス30」と呼ぶ場合がある)を主体として構成される。フランクボックス30は、上方に開口する概して直方体形状のものとされ、開口12aの内部における駆動ユニット16の前方に配されている。ちなみに、このフランクボックス30は、上端の縁部にパッキン32が取り付けられており、ボンネット14を閉じると、ボンネット14の裏面がパッキン32に接して、トランクボックス30が密閉される。つまり、トランクボックス30とボンネット14とによって、密閉された収容空間であるフランク22が形成される。なお、フランクボックス30は、開口12a内に配された状態において、
図2に示すように、背面30aの後方下端部付近に、駆動ユニット16が有するモータ16aが隣接して配されることになる
【0024】
フランクボックス30は、
図3に示すように、合成樹脂繊維からなる基材40と、基材40の内面(荷室側の面)全域に貼着された表皮材42と、基材40の裏面全域に積層された保護層44と、を含んで構成される。さらに、フランクボックス30は、保護層44の外側に、金属層46が設けられている。この金属層46は、引っ張り剛性が高く・放電特性のある金属の薄膜が望ましく、本実施形態においては、厚みが2mm以下のアルミニウムの金属皮膜とされている。なお、金属層46の厚みは、車両の重量増加に繋がるため、薄い方が、例えば、0.2mm以下であることが望ましい。また、金属層46は、
図4に示すように、フランクボックス30の裏面(外側面)全域に、格子状に形成されている。
【0025】
また、保護層44は、吸音材および断熱材として機能するものであり、本実施形態においては、圧縮された不織布とされている。なお、保護層44は、ある程度の剛性が必要であるため、目付けが600gsm~4000gsmとされている。ちなみに、本実施形態において、フランクボックス30は、基材40の裏面側に保護層44が形成された構成とされていたが、それらが一体的に形成された構成とすることも可能である。つまり、保護層44と同じ材料である圧縮不織布を採用し、目付けを大きくして、フランクボックス30の形状を確保した構成のものを採用することができる。また、基材として、樹脂層と樹脂層との間に不織布を挟んだ積層構造のものを採用することもできる。
【0026】
本実施形態において、フランクボックス30は、表皮材42,基材40,保護層44を積層した板状の部材(プレボード)における保護層44の上に、印刷,塗装,蒸着等の方法によって金属膜を格子状に積層形成した後、プレス成形によって成形されたものとなっている。なお、上記のプレボードをプレスして箱状に成形した後に、接着材あるいは接着剤等を使用してテープ状の金属板、例えばアルミニウムフィルムを貼着して、金属層を形成してもよい。
【0027】
次に、以上のように構成された本実施形態のフロントトランク構造の効果について説明する。車両10は、走行中において、開口12a内に空気が流れるような構成とされており、フランク22のトランクボックス30は、その周囲を空気が流れることで、外側面の温度が低下する。つまり、フランク22内の空気の温度・湿度が高い場合には、内面に結露や凍結が生じる虞がある。それに対して、本実施形態においては、上述したように、フランクボックス30が、最外面に金属層46が形成されていることで、車両10の走行中において熱を発生させる熱源体であるモータ16aからの輻射熱によって、その金属層46が温められることになる。詳しく言えば、まずは、金属層46のうちモータ16aの近接している部分、つまり、背面30aの下側部分や、底面30bの後方側部分が、モータ16aの輻射熱によって温められる。そして、金属層46は、フランクボックス30の裏面全域に格子状に形成されていることで、その熱を、側面30c,30dや前面30eにまで伝達し、フランクボックス30の前面を温めることができ、結露や凍結の発生を抑制することができる。
【0028】
また、フランクボックス30は、保護層44によって、走行中の騒音等を吸音する機能を有している。しかしながら、金属層46の面積が大きくなればなるほど、その吸音性能が低下することになる。そこで、フランクボックス30の外側全体の表面積に対して、金属層46が形成されている部分の表面積(被膜率)を異ならせ、騒音等の周波数に対する減音効果を、吸音率に基づいて理論的に算出した。その算出した結果を、
図5に示している。なお、
図5においては、減音効果を示す値が小さいほど、減音効果が高いことを意味している。具体的には、
図5には、金属層46の被膜率が、0%(比較例1,金属層なし),10%(実施例1),20%(実施例2),30%(比較例2),50%(比較例3)のものを、グラフ化している。この
図5からも分かるように、被膜率が高くなるほど、金属層のない比較例1に対して、減音効果が低くなることが分かる。
【0029】
そして、
図5に示すように、被膜率10%,20%のものは、比較例1に対して、0.2dB程度以内の性能低下で済んでいることが分かる。したがって、被膜率は10%以上20%以下であることが望ましい。本実施形態のフランクボックス30は、金属層46が格子状に形成されていることで、フランクボックス30の外側全域に格子状の金属層46を形成しつつ、金属層46の被膜率が10%を僅かに超える程度とされている。つまり、本実施形態によれば、吸音率の低下を抑えつつ、フランクボックス30の結露・凍結を効果的に抑えることができる。
【0030】
さらに、本実施形態のフランク構造は、フランクボックス30の金属層46の存在によって、ボデーパネル(詳しく言えばボンネット14)に帯電する電荷を減少させることができ、車両10の走行中の空気流を安定させて、走行安定性を向上させることができる。
【0031】
走行中の車両の周囲を流れる空気は、負あるいは正に帯電する場合がある、換言すれば、
図6に示すように、走行中の車両10の周囲に、負あるいは正のいずれかの電荷(イオン)50が多くなる場合がある。また、車両10は、走行に伴う静電気等によって、ボデーパネルが負あるいは正に帯電する。つまり、車両10の走行中において、ボデーパネルとその周囲の空気が同じ極性に帯電していると、ボデーパネルの表面と空気との間に斥力が生じ易い。つまり、
図6に示すように、ボデーパネルの表面近傍に流れる空気流において、ボデーパネルの表面から剥離するような乱れた流れが生じる場合がある。その走行中における空気流の剥離によって、狙った空力特性が得られず、走行安定性や走行性能などが低下する虞がある。
【0032】
そして、本実施形態の車両10は、フランクボックス30の金属層46が、ボンネット14の電荷を蓄えることができる。なお、ボンネット14を閉じた状態において、ボンネット14の裏面と、フランクボックス30の金属層46とが導通するような構造とすることで、ボンネット14が帯電した負あるいは正の電荷を、直接蓄えることが可能な構成とすることもできる。そして、金属層46に蓄えられた電荷は、金属層46のエッジ部分に集中し易く、自己放電(コロナ放電)が生じる。その自己放電によって生じたマイナスイオンあるいはプラスイオンは周囲に極性の異なるイオンを引き寄せ、中和除電される。したがって、本実施形態の車両10は、ボンネット14に帯電する電荷を減少させることができ、
図7に示すように、走行中の空気流を安定させて、走行安定性を向上させることができるのである。なお、
図7は、ルーフパネル等にも、電荷を蓄えることが可能な構成が採用されているものとして、空気の流れを示している。
【0033】
<変形例>
上記実施形態のフロントトランク構造において、フランクボックス30は、金属層46が、外側全域において格子状に形成されていたが、金属層は、フランクボックスの少なくとも一部に形成されていればよく、その形状や範囲も、特に限定されない。例えば、
図8に示すフランクボックス80のように、金属層82を形成することも可能である。詳しく言えば、変形例のフランクボックス80は、金属層82のうち、フランクボックス80の背面80aの下端側の部分、つまり、モータ16aに対向する部分である熱源対向部82aは、格子状ではなく、面状に形成されている。また、フランクボックス80の両側の側面80b,80dの下端側の部分は、走行中において空気が流れる量が多い箇所であり、特に冷却され易い箇所となっており、金属層82のうち、その部分である空気流接触部82b,82cも、面状に形成されている。そして、それら熱源対向部82aと、空気流接触部82b,82cとは、格子状の格子部82dによって、互いに接続されている。
【0034】
変形例のフランクボックス80は、金属層82が上記のような形状とされていることで、熱源対向部82aがモータ16aからの輻射熱を吸収し易くされている。また、金属層82は、モータ16aから離間する方向に、格子部82dが熱源対向部82aから延び出しており、延出部として機能する。そのような構成から、熱源対向部82aから空気流接触部82b,82cや格子部82dに対して、効果的に熱を伝達することができるようになっている。さらに、空気流接触部82b,82cは、面状に形成されていることで、熱源対向部82aから受けた熱によって、その内側部分の冷却を確実に抑え、結露・凍結を効果的に抑えることができる。
【0035】
ただし、本実施形態において、金属層82は、輻射熱を吸収するものの、その保温効果は、圧縮不織布からなる保護層44が有する保温効果の方が高いものとなっている。そのため、面状に形成された熱源対向部82aおよび空気流接触部82b,82cは、空気流等によって冷やされ過ぎないよう、その形成範囲(面積)を、温度シミュレーションなどの結果に基づいて適切な範囲に設定することで、モータ16aの周囲の保温効果や、空気流接触部82b,82cにおける内部の保温効果を維持し、モータ16aの周囲やフランクボックス30の温度の適切化を図ることができる。
【0036】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0037】
上記実施形態においては、フランクボックスの外側全域に金属層が形成されていたが、吸音率の低下を抑えるという観点からすれば、金属層の形成面積は小さい方が良いため、結露や凍結が生じにくい箇所は、金属層が形成されないようにしてもよい。
【0038】
上記実施形態においては、金属層46を温める熱源体として、駆動用のモータ16aを例示したが、熱源体はそれに限定されない。例えば、車両10が、車室20の暖房のためにヒートポンプを備えている場合には、そのヒートポンプを金属層46の熱源体として利用する構成とすることも可能である。
【0039】
上記実施形態において、車両10は、電気自動車とされてフロントトランク22を有するものとされていたが、それに限定されない。例えば、車両には、エンジンが車体の中央部に配されるミッドエンジン車や、車体の後方部に配されるリアエンジン車においても、フランクが設けられる場合があり、そのフランクにも本発明のフロントトランク構造を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
16a…モータ〔熱源体〕、20…車室、22…フロントトランク(フランク)、30…フロントトランクボックス(フランクボックス)、46…金属層、80…フランクボックス〔トランクボックス〕、82…金属層、82a…熱源対向部、82d…格子部〔延出部〕