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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166677
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082919
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大羽 圭介
(72)【発明者】
【氏名】道下 恭弘
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA17
2H200FA18
2H200GA18
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA45
2H200GA47
2H200GB12
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA03
2H200JA25
2H200JA26
2H200JA27
2H200JA28
2H200JB13
2H200JB45
2H200JB46
2H200JB47
2H200JB48
2H200JC03
2H200JC09
2H200JC15
2H200JC16
2H200JC17
2H200JC18
2H200MA02
2H200MA03
2H200MA08
2H200MA14
2H200MB04
2H200MB06
2H200MC01
2H200MC02
2H200MC20
2H200NA08
(57)【要約】
【課題】放電による転写不良を防止するとともに、表面の粗い記録媒体に対しても二次転写性の低下を抑制することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、複数の像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、中間転写ベルトと、を備える。像担持体は、表面にアモルファスシリコン感光層が形成される。中間転写ベルトは、表面抵抗率が9.5~10.5[LogΩ/□]の樹脂ベルトである。一次転写ローラーの像担持体に対するオフセット量が0~2[mm]、像担持体と中間転写ベルトの接触面圧力が0.5~1.5[gf/mm]、一次転写ローラーに一次転写電圧を印加したときに流れる一次転写電流の電荷密度が0.016~0.040[μC/cm]である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にアモルファスシリコン感光層が形成された複数の像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置と、
トナーを含む現像剤を用いて、前記像担持体の表面に形成された前記静電潜像をトナー像に現像する現像装置と、
前記像担持体に形成された前記トナー像が順次一次転写される中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを介して前記像担持体に圧接される複数の一次転写ローラーと、
前記一次転写ローラーに前記トナー像と逆極性の一次転写電圧を印加する転写電圧電源と、
前記中間転写ベルトに一次転写された前記トナー像を記録媒体上に二次転写する二次転写ローラーと、
を備えた画像形成装置において、
前記中間転写ベルトは、表面抵抗率が9.5~10.5[LogΩ/□]の樹脂ベルトであり、
前記一次転写ローラーの前記像担持体に対するオフセット量が0~2[mm]、
前記像担持体と前記中間転写ベルトの接触面圧力が0.5~1.5[gf/mm]、
前記一次転写ローラーに前記一次転写電圧を印加したときに流れる一次転写電流の電荷密度が0.016~0.040[μC/cm]、
であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記中間転写ベルトは、ポリイミド樹脂を主成分とし、厚みが40~100[μm]、ヤング率が3000~6000[MPa]であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像装置は、前記トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる二成分現像方式であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラム等の像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に転写する中間転写方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定方向に回動される無端状の中間転写ベルトと、中間転写ベルトに沿って設けられた複数の画像形成部とを備え、各画像形成部により中間転写ベルト上に各色のトナー像を順次重ね合わせて一次転写した後、二次転写ローラーにより用紙等の記録媒体上にトナー像を二次転写する中間転写方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
中間転写方式の画像形成装置では、樹脂製の中間転写ベルトを使用する場合、弾性ベルトと比べてベルトが硬質であるため、二次転写において用紙の凹み部分とベルトとを密着させることが難しい。用紙の凹み部分では用紙とベルトとの空隙が大きくなり転写電界が弱くなるため、二次転写性が低下する。
【0004】
弱い転写電界でもトナーの転写性を向上させるためには、ベルトとトナーの非静電付着力を弱めてベルトからのトナーの離型性を向上する必要がある。ベルトとトナーの非静電付着力を弱める手段としては、一次転写ローラー位置を感光体ドラムの直上位置からベルトの進行方向の下流側にオフセットさせて、押圧力の集中を弱めてトナーの非静電付着力を弱める方法が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、像担持体(感光体ドラム)の半径、一次転写ローラーの半径、ベルト厚みの和が像担持体と一次転写ローラーの軸間距離とを規定するとともに、像担持体の間隔との比率にてオフセット量を限定し、転写性を確保する画像形成装置が開示されている。特許文献2には、ベルトの張力と一次転写ローラーの押圧力とオフセット量を限定することで、ローラーの振動やベルトの波打ちなどの転写ムラの影響を回避する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-310024号公報
【特許文献2】特開2004-271943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、一次転写ローラーが形成する感光体ドラムへの圧力の定義が記載されていないため、圧力が強くなる条件下においては、トナーの非静電付着力が増加し転写が困難になる可能性があった。また、実施例において転写ニップ近傍での放電について述べられているが、感光体の種類については特に考慮されていない。そのため、アモルファスシリコン感光体ドラムに適用すると画像に放電模様が形成される懸念があった。
【0008】
特許文献2の構成では、主に機械的な振動やトナー散りについて言及されており、ニップ周辺での放電や、下流側の画像形成部の通過時におけるトナー帯電量の上昇については考慮されていない。そのため、アモルファスシリコン感光体ドラムを搭載した場合であって、転写電流やベルト抵抗が一定条件下にある場合において、放電模様やパサツキ画像が発生するという懸念があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、放電による転写不良を防止するとともに、表面の粗い記録媒体に対しても二次転写性の低下を抑制することができ、長期間に亘って高画質な画像を形成可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、複数の像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、中間転写ベルトと、複数の一次転写ローラーと、転写電圧電源と、二次転写ローラーと、を備えた画像形成装置である。像担持体は、表面にアモルファスシリコン感光層が形成される。帯電装置は、像担持体の表面を帯電させる。露光装置は、帯電装置により帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する。現像装置は、トナーを含む現像剤を用いて、像担持体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像する。中間転写ベルトは、像担持体に形成されたトナー像が順次一次転写される。一次転写ローラーは、中間転写ベルトを介して像担持体に圧接される。転写電圧電源は、一次転写ローラーにトナー像と逆極性の一次転写電圧を印加する。二次転写ローラーは、中間転写ベルトに一次転写されたトナー像を記録媒体上に二次転写する。中間転写ベルトは、表面抵抗率が9.5~10.5[LogΩ/□]の樹脂ベルトである。一次転写ローラーの像担持体に対するオフセット量が0~2[mm]、像担持体と中間転写ベルトの接触面圧力が0.5~1.5[gf/mm]、一次転写ローラーに一次転写電圧を印加したときに流れる一次転写電流の電荷密度が0.016~0.040[μC/cm]である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、像担持体としてアモルファスシリコン感光体ドラムを用い、中間転写ベルトとして樹脂ベルトを用いた構成において、中間転写ベルトに対するトナー像の一次転写性、表面の凹凸が大きいラフ紙に対するトナー像の二次転写性を確保し、且つ、ゴーストや白紋、黒斑等の画像不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の全体構成を示す概略断面図
図2図1における画像形成部Pa周辺の部分拡大図
図3】画像形成装置100に搭載される中間転写ユニット30の側面断面図
図4】中間転写ユニット30の一次転写ローラー6dおよび二次転写ニップ部N周辺の部分拡大図
図5】画像形成装置100の制御経路の一例を示すブロック図
図6】中間転写ベルト8として弾性ベルトを用いた場合(図6(a))と樹脂ベルトを用いた場合(図6(b))での転写性の違いを説明する模式図
図7】感光体ドラム1a~1dに対して一次転写ローラー6a~6dがオフセット配置された状態を示す側面図
図8】感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の間に異物粒子Cが進入した状態を示す側面断面図
図9】一次転写ローラー6a~6dのオフセット量、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力を変化させたときの二次転写性との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置100の構成を示す概略図である。図2は、図1における画像形成部Pa付近の拡大図である。なお、画像形成部Pb~Pdについても基本的に同様の構成であるため説明を省略する。
【0014】
画像形成装置100(ここではカラープリンター)の本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、PcおよびPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa~Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像および転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの画像を順次形成する。
【0015】
これらの画像形成部Pa~Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1cおよび1dがそれぞれ配設されている。さらに、駆動ローラー10とテンションローラー11とを含む複数のローラーに掛け回され、図1において反時計回り方向に回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa~Pdに隣接して設けられている。図2に示すように、感光体ドラム1aの周囲には、ドラム回転方向(図2の時計回り方向)に沿って帯電装置2a、現像装置3a、クリーニング装置7a、および除電ランプ20が配設され、中間転写ベルト8を挟んで一次転写ローラー6aが配置されている。
【0016】
感光体ドラム1a~1dは、導電性基体19aと、導電性基体19aの表面に形成される感光層19bとで構成される。本実施形態では、アルミニウム製の円筒状の導電性基体19aの表面に、感光層19bとしてアモルファスシリコン感光層を積層している。
【0017】
帯電装置2a~2dは、感光体ドラム1aに接触してドラム表面に帯電電圧(直流電圧+交流電圧)を印加する帯電ローラー21と、帯電ローラー21をクリーニングするための帯電クリーニングローラー24と、を有している。
【0018】
現像装置3a~3dは、2本の攪拌搬送スクリュー25と、現像ローラー29とを有する二成分現像式であり、それぞれシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色のトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤が所定量充填されている。二成分現像剤を用いて現像ローラー29の表面に磁気ブラシを形成し、現像ローラー29にトナーと同極性(ここでは正極性)の現像電圧を印加した状態で感光体ドラム1aの表面に磁気ブラシを接触させてトナーを付着させ、トナー像を形成する。なお、トナー像の形成によって各現像装置3a~3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a~4dから各現像装置3a~3dにトナーが補給される。
【0019】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、メインモーター40(図5参照)によって感光体ドラム1a~1dの回転駆動が開始される。また、ベルト駆動モーター41(図5参照)によって中間転写ベルト8の回転駆動が開始される。次に、帯電装置2a~2dによって感光体ドラム1a~1dの表面をトナーと同極性(ここでは正極性)に一様に帯電させる。次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a~1d上に画像データに応じて帯電を減衰させた静電潜像を形成する。そして、現像装置3a~3dにより感光体ドラム1a~1d上にトナーが供給され、静電的に付着することにより、静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0020】
そして、一次転写ローラー6a~6dにより一次転写ローラー6a~6dと感光体ドラム1a~1dとの間に所定の一次転写電界を付与することにより、感光体ドラム1a~1d上のイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留したトナー等はクリーニング装置7a~7dにより除去される。一次転写後に感光体ドラム1a~1dの表面に残留した残留電荷は除電ランプ20により除去される。
【0021】
トナー像が転写される転写紙Sは、画像形成装置100内の下部に配置された用紙カセット16内に収容されている。転写紙Sは、給紙ローラー12aおよびレジストローラー対12bを介して所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラー9と中間転写ベルト8のニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送される。二次転写ローラー9によって中間転写ベルト8上のトナー像が二次転写された転写紙Sは定着部13へと搬送される。
【0022】
定着部13に搬送された転写紙Sは、定着ローラー対13aにより加熱および加圧されてトナー像が転写紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Sは、そのまま(或いは分岐部14によって反転搬送路18に振り分けられ、両面に画像が形成された後)排出ローラー対15によって排出トレイ17に排出される。
【0023】
図3は、画像形成装置100に搭載される中間転写ユニット30の側面断面図である。図3に示すように、中間転写ユニット30は、駆動ローラー10とテンションローラー11とに掛け渡された中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1a~1dに接触する一次転写ローラー6a~6dと、押圧切換ローラー34と、を有する。
【0024】
中間転写ベルト8は、ポリイミド樹脂を主成分とする樹脂ベルトであり、厚みが40~100[μm]、ヤング率が3000~6000[MPa]である。
【0025】
駆動ローラー10およびテンションローラー11は、それぞれ中間転写ベルト8の搬送面(下面)の進行方向に対して下流側および上流側に配置されている。テンションローラー11に対向する位置には、中間転写ベルト8の表面に残存するトナーを除去するためのベルトクリーニングユニット37が配置されている。駆動ローラー10には中間転写ベルト8を介して二次転写ローラー9が圧接されており、二次転写ニップ部Nを形成している。
【0026】
中間転写ユニット30は、一次転写ローラー6a~6dおよび押圧切換ローラー34の回転軸の両端部を回転可能、且つ中間転写ベルト8の進行方向に対し垂直(図3の上下方向)に移動可能に支持する一対の支持部材(図示せず)と、一次転写ローラー6a~6dおよび押圧切換ローラー34を上下方向に往復移動させる駆動手段(図示せず)と、を有するローラー接離機構35を備えている。ローラー接離機構35は、4本の一次転写ローラー6a~6dを、それぞれ中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1a~1d(図1参照)に圧接するカラーモードと、一次転写ローラー6dのみを中間転写ベルト8を介して感光体ドラム1dに圧接するモノクロモードと、4本の一次転写ローラー6a~6dの全てを感光体ドラム1a~1dから離間させる退避モードとに切り換え可能である。
【0027】
図4は、中間転写ユニット30の一次転写ローラー6dおよび二次転写ニップ部N周辺の部分拡大図である。図4を用いてトナー像の一次転写および二次転写について説明する。なお、図4では帯電極性が正(プラス)である正帯電トナーについて説明する。
【0028】
図4に示すように、一次転写ローラー6a~6dには一次転写電圧電源54aが接続されている。駆動ローラー10(二次転写対向ローラー)には二次転写電圧電源54bが接続されている。制御部90(図5参照)が画像形成コマンドを受信すると、感光体ドラム1a~1dの表面に静電潜像が形成され、現像装置3a~3d(図2参照)によりトナーTが供給されてトナー像が形成される。感光体ドラム1a~1d上に形成されたトナー像は、感光体ドラム1a~1dの回転によって一次転写ローラー6a~6dとの対向部(一次転写ニップ部)に移動する。
【0029】
一次転写ローラー6a~6dには一次転写電圧電源54aによって負極性(マイナス)の一次転写電圧が印加されている。これにより、感光体ドラム1a~1d上のトナー像は一次転写ローラー6a~6dとの対向部(一次転写ニップ部)において一次転写ローラー6a~6d側に引き付けられ、中間転写ベルト8上に一次転写される。中間転写ベルト8上に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト8の回転によって二次転写ニップ部Nに移動する。
【0030】
駆動ローラー10には二次転写電圧電源54bによって正極性(プラス)の二次転写電圧が印加されている。これにより、中間転写ベルト8上のトナー像は、二次転写ニップ部Nに搬送されて、二次転写電圧を印加された駆動ローラー10とグランドに接地(アース)された二次転写ローラー9との電位差によって二次転写ニップ部Nを通過する転写紙Sに転写される。
【0031】
次に、本発明の画像形成装置100の制御経路について説明する。図5は、本発明の画像形成装置100に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置100を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置100全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0032】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、印字枚数を累積してカウントするカウンター95、画像形成装置100内の各装置に制御信号を送信したり操作部60からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。また、制御部90は、画像形成装置100の本体内部の任意の場所に配置可能である。
【0033】
ROM92には、画像形成装置100の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置100の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置100の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置100の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
【0034】
また、制御部90は、画像形成装置100における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部Pa~Pd、露光装置4、一次転写ローラー6a~6d、二次転写ローラー9、メインモーター40、ベルト駆動モーター41、画像入力部50、電圧制御回路51、操作部60等が挙げられる。
【0035】
画像入力部50は、パソコン等から画像形成装置100に送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部50より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、I/F96を介して一時記憶部94に送出される。
【0036】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、および転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させるものであり、これらの各電源は電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電装置2a~2d内の帯電ローラー21に帯電電圧を印加する。現像電圧電源53は現像装置3a~3d内の現像ローラー29に現像直流電圧に現像交流電圧を重畳した現像電圧を印加する。転写電圧電源54は、一次転写ローラー6a~6dに所定の一次転写電圧を印加する一次転写電圧電源54a、および駆動ローラー10に所定の二次転写電圧を印加する二次転写電圧電源54b(いずれも図4参照)を有する。
【0037】
操作部60には、液晶表示部61、各種の状態を示すLED62が設けられており、ユーザーは操作部60のストップ/クリアボタンを操作して画像形成を中止し、リセットボタンを操作して画像形成装置100の各種設定をデフォルト状態にする。液晶表示部61は、画像形成装置100の状態を示したり、画像形成状況や印字部数を表示したりするようになっている。画像形成装置100の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0038】
次に、中間転写ユニット30が備える一次転写ローラー6a~6dおよび中間転写ベルト8について説明する。前述したように、中間転写ベルト8として樹脂ベルトを用いた場合に二次転写ニップ部Nでの二次転写不良が発生し易くなる。
【0039】
図6は、中間転写ベルト8として弾性ベルトを用いた場合と樹脂ベルトを用いた場合での二次転写性の違いを説明する模式図である。図6(a)は弾性ベルトを用いて転写紙Sに二次転写する場合を示しており、図6(b)は樹脂ベルトを用いて転写紙Sに二次転写する場合を示している。
【0040】
図6(a)に示すように、弾性ベルトである中間転写ベルト8は、ベルトの寸法を安定させるための樹脂製の基材層8aと、トナーTを担持する弾性層8bの積層構成となっている。二次転写ニップ部Nにおいて、トナーTを担持した中間転写ベルト8と転写紙Sを対向させて押圧した際、弾性層6bが転写紙Sの凹凸に追従して変形する。そのため、中間転写ベルト8上のトナーTと転写紙Sとの空隙が無くなり、転写電界が均一になって中間転写ベルト8から転写紙SにトナーTが移動し易い。
【0041】
図6(b)に示すように、樹脂ベルトである中間転写ベルト8では、トナーTを担持した中間転写ベルト8は、転写紙Sの凹凸に追従して変形しない。そのため、トナーTと転写紙Sとの間に空隙が形成される。空隙では転写電界が弱くなるため、中間転写ベルト8から転写紙SにトナーTが移動し難くなる。
【0042】
駆動ローラー10に印加する二次転写電圧を大きくすると二次転写ニップ部Nでの転写電界は強くなるが、トナーを担持する中間転写ベルト8の表面への放電も発生する。その結果、トナーが逆極性に帯電するため、二次転写効率が低下する。印加電圧を強めることなく弱い転写電界で二次転写効率を高めるためには、トナーと中間転写ベルト8との非静電付着力を弱めることが有効である。
【0043】
トナーと中間転写ベルト8との非静電付着力は、一次転写ニップ部における感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の面圧力が強い場合に強くなる。この理由としては、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の面圧力が強いとトナーと中間転写ベルト8の表面との距離が近くなり、トナーと中間転写ベルト8との間に作用するファンデルワールス力が強くなることが要因の一つであると考えられている。
【0044】
そこで、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の面圧力を下げる方法として、1一次写ローラー6a~6dの位置を、中間転写ベルト8の移動方向に対し感光体ドラム1a~1dの直上よりも下流側にオフセットして配置し、且つ一次転写ローラー6a~6dを感光体ドラム1a~1dに押圧するバネ荷重を低く設定する方法が採用される。
【0045】
図7は、感光体ドラム1a~1dに対して一次転写ローラー6a~6dがオフセット配置された状態を示す側面図である。図7を用いて本明細書中でいうオフセット量の定義について説明する。
【0046】
感光体ドラム1a~1dと一次転写ローラー6a~6dが接触していない状態で中間転写ベルト8が張架されたときのベルト進行面をLとする。また、ベルト進行面Lに対して直交し、且つ感光体ドラム1a~1dの軸中心O1を通る面をa、面aと平行で一次転写ローラー6a~6dの軸中心O2を通る面をbとする。このときの面a、b間の距離dをオフセット量と定義する。オフセット量dを所定値(例えば4mm)とすることにより、表面の凹凸の比較的大きい転写紙S(ラフ紙)においても良好な二次転写性を確保することができる。
【0047】
一方、感光層19bとしてアモルファスシリコン感光層を有する感光体ドラム1a~1dを用いた場合、感光体ドラム1a~1dに対して一次転写ローラー6a~6dをオフセット配置すると、ベタ画像に白点が発生するという問題点がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力、一次転写電流の電荷密度の範囲を規定することにより、アモルファスシリコン感光層を有する感光体ドラム1a~1dを用いた場合の一次転写における転写画像の不具合を抑制している。
【0049】
以下、本実施形態のように一次転写ローラー6a~6dのオフセット量、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力、一次転写電流の電荷密度の範囲を規定した場合の、転写不良抑制効果について説明する。試験機として、図1に示したような中間転写式方式の画像形成装置100(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。
【0050】
中間転写ベルト8は、厚み65μmのポリイミド樹脂製であり、中間転写ベルト8の張架テンションとして、30[N]のバネによって両側を張架した。中間転写ベルト8の表面抵抗は可変とした。
【0051】
一次転写ローラー6a~6dは、外径14mmのEPDM製のスポンジローラーであり、ローラー幅(軸方向長さ)31.6[cm]、硬度40[°]、ローラー抵抗7.8[logΩ]とした。一次転写ローラー6a~6dの自重は140gであり、一次転写ローラー6a~6dの荷重は軸方向の両側にバネを設けることにより可変とした。一次転写ローラー6a~6dに流れる一次転写電流は-22[μA]とした。
【0052】
二次転写ローラー9は、外径23mmのエピクロルヒドリン製のスポンジローラーであり、硬度40[°]、ローラー抵抗7.0[logΩ]とした。二次転写ローラー9の荷重は30[N]のバネを軸方向の両側に設けた。二次転写電圧は駆動ローラー10(二次転対向側)から印加し、二次転写ローラー9に流れる二次転写電流は+90[μA]とした。
【0053】
感光体ドラム1a~1dは、感光層19bとしてアモルファスシリコン層を有するアモルファスシリコン感光体ドラムと、感光層19bとして正帯電単層OPC感光層を有するOPC感光体ドラム(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。感光体ドラム1a~1dの線速(プロセス速度)は32.2[cm/sec]とした。トナーは正帯電性トナーを用い、各色のトナーの帯電量は20~50[μC/g]とした。
【0054】
(一次転写ローラーのオフセット量およびベルト表面抵抗と画像不具合との関係)
先ず、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量および中間転写ベルト8の表面抵抗を変化させたときの放電模様の発生について検証した。試験方法としては、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量を0~6[mm]の7段階、中間転写ベルト8の表面抵抗を9~11[LogΩ/□]の5段階に変化させ、アモルファスシリコン感光体ドラムとOPC感光体ドラムを用いた場合に、放電模様が発生しない転写電圧(電流)を設定可能であるかどうかについて評価した。
【0055】
放電模様は、ベタ画像中にスポット状に発生する模様であり、放電によって放電模様が発生するメカニズムは感光体ドラム1a~1dの種類によって異なる。より詳細には、アモルファスシリコン感光体ドラムでは、放電によりトナーが逆帯電して転写不良となる白点が発生する。OPC感光体ドラムでは、放電により感光体ドラムの感光層が逆帯電し、帯電装置でその履歴を消しきれないために転写メモリーとしての黒紋が発生する。
【0056】
評価基準は、十分な一次転写が可能であり、放電模様が発生しない一次転写電圧(電流)を設定可能である場合を○とし、一次転写電圧を上げると放電が発生し、一次転写電圧を下げると転写不良となり、一次転写電圧(電流)の設定が不可である場合を×とした。アモルファスシリコン感光体ドラムを用いた場合の結果を表1に、OPC感光体ドラムを用いた場合の結果を表2に示す。
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1および表2から明らかなように、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量が3mm以上の場合において使用可能な中間転写ベルト8の表面抵抗の領域は、アモルファスシリコン感光体ドラムでは9~10[LogΩ/□]、OPC感光体ドラムでは9~10.5[LogΩ/□]であり、アモルファスシリコン感光体ドラムの方がOPC感光体ドラムに比べて狭いことが分かる。
【0059】
次に、一次転写電流と一次転写性および二次転写性の関係について説明する。プロセス線速32.2[cm/sec]、一次転写ローラー6a~6dのローラー幅31.6[cm]の条件下では、一次転写電流が16[μA]以上であるとき十分なトナー転写量が得られた。
【0060】
また、中間転写ベルト8に沿って画像形成部Pa~Pdが並列配置されるタンデム方式の画像形成装置100においては、一次転写電流が40[μA]より大きくなると、中間転写ベルト8上に一次転写されたトナーが下流側の画像形成部を通過する際にトナーの帯電量が過剰に上昇し、二次転写不良を発生させる。
【0061】
以上の関係から、一次転写電流を電荷密度に換算すると、電荷密度[μC/cm]=電流[μC]/(線速[cm/sec]×ローラー幅[cm])であるから、16[μA]/(32.2[cm/sec]×31.6[cm])=0.016[μC/cm]、40[μA]/(32.2[cm/sec]×31.6[cm])=0.040[μC/cm]となり、0.016~0.040[μC/cm]の電流密度領域が好ましいことが確認された。
【0062】
一方、中間転写ベルト8の表面抵抗の下限領域は、放電とは別の観点からも限定される。図8は、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の間(一次転写ニップ部)に異物粒子Cが進入した状態を示す側面断面図である。中間転写ベルト8として樹脂ベルトを用いる場合、トナーTよりも径が大きい異物粒子C(キャリア、トナー凝集物等)が一次転写ニップ部に進入すると、図8に示すように、異物粒子Cの周辺に空隙が形成される。空隙周辺では一次転写電界が弱まるため、画像に白い欠損(白紋)が発生する。
【0063】
一次転写電圧(一次転写電流)を一定以上印加すれば、トナーは空隙を超えて飛翔するため、白紋は発生しない。ただし、中間転写ベルト8の表面抵抗が低いほど、印加した一次転写電流がベルト表面方向に漏洩するため、白紋が顕在化しやすくなる。そこで、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量および中間転写ベルト8の表面抵抗を変化させたときのキャリア付着による白紋の発生について検証した。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3から明らかなように、中間転写ベルト8の表面抵抗が9[LogΩ/□]以下になると、オフセット量に係わらず白紋の発生しない一次転写電圧(電流)の設定が不可であった。
【0066】
表1と表3の結果より、使用可能な中間転写ベルト8の表面抵抗の領域は、オフセット量が3~4mmのとき9.5~10.0[LogΩ/□]、オフセット量が0~2mmのとき9.5~10.5[LogΩ/□]となる。ここで、樹脂ベルトの製造時には1桁レンジ(1[LogΩ/□])の抵抗公差(マージン)を必要とする。そのため、オフセット量を3~4mmとすると抵抗公差を確保できないが、オフセット量を2mm以下とすると確保可能となる。
【0067】
(一次転写ローラーのオフセット量および一次転写ニップ部の接触面圧力と二次転写不具合との関係)
次に、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力と二次転写性との関係について調査した。試験方法としては、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量を0~4[mm]、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力を1~3.5[gf/mm]の範囲で変化させ、転写紙としてラフ紙を用いた場合に十分な二次転写性を有するかどうかについて評価した。転写紙Sは、坪量80[g/m]のA4サイズのラフ紙(Nautilus紙、Mondi社製)を用いた。結果を図9に示す。
【0068】
図9中の縦軸は、オフセット量とバネ圧を組み合わせたときの中間転写ベルト8と感光体ドラム1a~1dの間(一次転写ニップ部)の接触面圧力[gf/mm]である。接触面圧力の測定は、面圧分布測定システム(I-SCAN、ニッタ社製)を用いた。図9中の破線は、一次転写ローラー6a~6dの荷重に用いた片端のバネ圧(1.3、2.2、6、8[N])が同じ条件を結んだ線である。図9中の「〇」「×」はラフ紙への転写画像の評価レベルである。
【0069】
図9に示す結果より、ラフ紙への転写画像は接触面圧力が1.5[gf/mm]以下の領域で良好であり、接触面圧力が1.5[gf/mm]を超える領域では転写効率が低下し、パサつき感のある画像となった。また、接触面圧力が0.5[gf/mm]以下の領域では、一次転写ローラー6a~6dと中間転写ベルト8との接触が不安定となり、中抜け画像が発生した。
【0070】
以上より、感光体ドラム1a~1dとしてアモルファスシリコン感光体ドラムを用い、中間転写ベルト8として樹脂ベルトを用いた画像形成装置100においては、一次転写ローラー6a~6dのオフセット量を0~2[mm]、感光体ドラム1a~1dと中間転写ベルト8の接触面圧力を0.5~1.5[gf/mm]、一次転写電流の電荷密度を0.016~0.040[μC/cm]に設定することで、中間転写ベルト8に対するトナー像の一次転写性、ラフ紙に対するトナー像の二次転写性を確保し、且つ、ゴーストや白紋、黒斑等の画像不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0071】
また、中間転写ベルト8として安価で寸法安定性に優れた樹脂ベルトを、感光体ドラム1a~1dとして長寿命のアモルファスシリコン感光体ドラムを搭載可能となり、高画質で高速印刷が可能な画像形成装置100を提供することができる。
【0072】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明は図1に示したようなタンデム型のカラープリンターに限らず、カラー複写機やカラー複合機等、感光体ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に一次転写する中間転写方式を用いる種々の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、感光体ドラム等の像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト上に転写する中間転写方式の画像形成装置に利用可能である。本発明の利用により、放電による転写不良を防止するとともに、表面の粗い用紙に対しても二次転写性の低下を抑制することができ、長期間に亘って高画質な画像を形成可能な画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
Pa~Pd 画像形成部
1a~1d 感光体ドラム(像担持体)
2a~2d 帯電装置
3a~3d 現像装置
5 露光装置
6a~6d 一次転写ローラー
8 中間転写ベルト
9 二次転写ローラー
10 駆動ローラー
11 テンションローラー
19a 導電性基体
19b 感光層
30 中間転写ユニット
100 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9