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特開2024-166678現像装置およびそれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166678
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】現像装置およびそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G03G15/08 390B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082922
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉木 友浩
(72)【発明者】
【氏名】石野 正人
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AB03
2H077AB14
2H077AC03
2H077AC04
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD17
2H077AD23
2H077AE03
2H077BA08
2H077CA12
2H077EA15
2H077FA01
2H077GA04
(57)【要約】
【課題】現像剤担持体の端部からのトナー漏れ、および規制ブレードへのトナー融着を簡易な構成で抑制可能な現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置は、現像容器と、現像剤担持体と、規制ブレードと、シール部材と、を有する。現像容器は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する。現像剤担持体は、回転軸と、回転軸の外周面に積層され、トナー層が形成されるローラー部と、を備える。規制ブレードは、トナー層の層厚を規制する。シール部材は、ローラー部の軸方向両端部の外周面に接触する。ローラー部のシール部材に接触する領域を端部領域とし、端部領域の軸方向の外側領域を第1領域、内側領域を第2領域とするとき、端部領域の動摩擦係数が0.2以下であり、第1領域および第2領域の周方向における十点平均粗さRz1、Rz2が、Rz1≦2.0[μm]、Rz2≧5.0[μm]を満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する現像容器と、
回転軸と、前記回転軸の外周面に積層され、像担持体に所定の押圧力で圧接されるローラー部と、を備え、前記ローラー部の外周面に前記トナーを担持することによりトナー層が形成される現像剤担持体と、
前記ローラー部の外周面に接触して前記ローラー部の外周面に形成される前記トナー層の層厚を規制する規制ブレードと、
前記ローラー部の軸方向両端部の外周面に接触して前記現像容器と前記現像剤担持体との隙間からの前記トナーの漏れを防止するシール部材と、
を有し、静電潜像が形成された前記像担持体に前記トナーを供給する現像装置において、
前記ローラー部の前記シール部材に接触する領域を端部領域とし、前記端部領域を前記軸方向の外側および内側に区画したときの外側領域を第1領域、内側領域を第2領域とするとき、
前記端部領域の動摩擦係数が0.2以下であり、前記第1領域および前記第2領域の周方向における十点平均粗さRz1、Rz2が、Rz1≦2.0[μm]、Rz2≧5.0[μm]を満たすことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
Rz2≦15.0[μm]を満たすことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1領域および前記第2領域の軸方向長さが2.5[mm]以上であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナーの中心粒径d50が3[μm]以上10[μm]以下であり、円形度が0.93~0.97であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナーは、粉砕法により製造されたものであることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
表面に感光層が形成される像担持体と、
前記像担持体を所定の表面電位に帯電させる帯電装置と、
前記帯電装置により帯電された前記像担持体の表面を露光して帯電を減衰させた静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像が形成された前記像担持体に前記トナーを供給する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の現像装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを用いた画像形成装置に関し、特に、非磁性一成分現像方式の現像装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置において使用される現像装置は、現像剤にトナーとキャリアとを使用した二成分現像方式、キャリアを使用せずにトナーのみを使用した一成分現像方式のものが知られている。
【0003】
非磁性トナーを用いる非磁性一成分現像方式の現像装置では、現像剤規制部材としての規制ブレードが現像剤担持体である現像ローラーの表面に接触するように配置されている。そしてトナーが現像ローラーの表面に設けられた微細な凹凸によって搬送され、余分なトナーは規制ブレードですり切られることでトナー薄層が形成される。また、規制ブレードの下をトナーが通過する際にトナーが規制ブレードおよび現像ローラーの表面と摩擦して帯電する。そして、感光体と現像ローラーを接触回転させ、現像ローラーの表面のトナーは電界により感光体に現像される。
【0004】
上述したような非磁性一成分現像方式においては、現像剤がトナーのみからなるために、非常に飛散し易く、現像装置の筐体(ハウジング)の開口部に設けられた現像ローラー(現像剤担持体)や規制ブレード周辺からのトナー漏れが発生し易い。そのため、現像ローラーの軸方向両端部の領域に、不織布やブラシ、スポンジ等の弾性体からなるシール部材を圧入や接触させることで隙間を埋め、現像装置からのトナー漏れを抑制するなどの対策が一般的である。
【0005】
一方、現像ローラーの軸方向両端部では、規制ブレードおよびシール部材と接触しながら回転し、且つトナー薄層も形成されていないために摩擦熱が大きく、軸方向中央部よりも温度が上昇し易い。温度が上昇し過ぎると画像領域のトナーに熱が回り込み、規制ブレードにトナーが固着(融着)するといった問題がある。トナーが規制ブレードに固着すると、固着したトナーによって現像ローラー上のトナー層の形成が阻害され、白筋画像が発生することがある。長時間の使用において高品質な画像を実現するためには、現像装置からのトナー漏れと温度上昇の両方を抑制する必要がある。
【0006】
そこで、規制ブレードへのトナー融着を抑制する方法が提案されており、例えば特許文献1には、現像ローラーの両端部のトナー薄層形成が行われない領域と、これに対向する現像装置の筐体との間にトナーシール部材を設け、トナーシール部材と筐体との間に熱伝導材をシート状に形成した伝熱シートを設けた画像形成装置が開示されている。特許文献2には、現像ローラーの端部の動摩擦係数を0.1以下、表面粗さRzを1.8μm以下とすることで、トナーのシール性を高めた現像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-176022号公報
【特許文献2】国際公開第2022/158139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成では、現像ローラーに接触させた伝熱シートの端部を現像装置の外部へ露出させることで、現像ローラーとシール部材との摩擦熱を現像装置の外部へ放出する構成であるが、必要な部材点数が多くなるという問題点があった。また、特許文献2の構成では、温度上昇を抑制するという観点からは、動摩擦係数を小さくすることは有効であるが、現像ローラーの表面粗さを小さくし過ぎると、シール部材と現像ローラーの表面の密着性が高くなるため、摩擦熱が大きくなるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、非磁性一成分現像方式を用いる構成において、現像剤担持体の端部からのトナー漏れ、および規制ブレードへのトナー融着を簡易な構成で抑制可能な現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、現像容器と、現像剤担持体と、規制ブレードと、シール部材と、を有し、静電潜像が形成された像担持体にトナーを供給する現像装置である。現像容器は、トナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容する。現像剤担持体は、回転軸と、回転軸の外周面に積層され、像担持体に所定の押圧力で圧接されるローラー部と、を備え、ローラー部の外周面にトナーを担持することによりトナー層が形成される。規制ブレードは、ローラー部の外周面に接触してローラー部の外周面に形成されるトナー層の層厚を規制する。シール部材は、ローラー部の軸方向両端部の外周面に接触して現像容器と現像剤担持体との隙間からのトナーの漏れを防止する。ローラー部のシール部材に接触する領域を端部領域とし、端部領域を軸方向の外側および内側に区画したときの外側領域を第1領域、内側領域を第2領域とするとき、端部領域の動摩擦係数が0.2以下であり、第1領域および第2領域の周方向における十点平均粗さRz1、Rz2が、Rz1≦2.0[μm]、Rz2≧5.0[μm]を満たす。
【0011】
本発明の第1の構成によれば、現像剤担持体のローラー部の端部領域の動摩擦係数が0.2以下、第1領域および第2領域の周方向における十点平均粗さRz1、Rz2が、それぞれRz1≦2.0[μm]、Rz2≧5.0[μm]を満たすことにより、現像剤担持体の軸方向両端部におけるトナーシール性を確保しつつ、ローラー部の温度上昇を抑制して規制ブレードへのトナー融着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の現像部33が搭載される画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図
図2】本発明の一実施形態に係る現像部33を含む画像形成部30の概略構成を示す側面断面図
図3】感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図
図4】現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の断面拡大図
図5】現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分の断面拡大図
図6】画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図
図7】現像部33の現像ローラー331、規制ブレード334、シール部材336の位置関係を示す平面図
図8図7における現像ローラー331の一端側の拡大図
図9】現像部33における現像ローラー331の表面温度とトナー融着発生時間との関係を示すグラフ
図10】現像部33における現像ローラー331の第2領域R2の動摩擦係数μと現像ローラー331の表面温度との関係を示すグラフ
図11】現像部33における現像ローラー331の第2領域R2の表面粗さRz2と現像ローラー331の表面温度との関係を示すグラフ
図12】現像部33における現像ローラー331の第2領域R2の軸方向長さx2と現像ローラー331の表面温度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.画像形成装置1の全体構成)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す側面断面図である。なお、図1において右側を画像形成装置1の前側、左側を後側とする。
【0014】
画像形成装置1(ここではモノクロプリンター)は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10、本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30および定着部40を含む。本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。画像形成部30の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10の後面側から出し入れ可能となる。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。尚、以下の説明において、「シート」との用語は、コピー用紙、コート紙、OHPシート、厚紙、葉書、トレーシングペーパーや画像形成処理を受ける他のシート材料を意味する。
【0015】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面から更に前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、シートの束が収容される用紙収容空間、シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には用紙繰出部21Aが設けられている。この用紙繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0016】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー像(現像剤像)を形成する画像形成動作を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電部32、露光部35、現像部33および転写ローラー34を含む。
【0017】
感光体ドラム31(像担持体)は、回転軸と、回転軸周りに回転する外周面(ドラム本体)と、を備える。感光体ドラム31の外周面には、例えば公知の有機(OPC)感光体で構成され、外周面に電荷発生層、電荷輸送層等で構成される感光層が形成される。感光層は、後述する帯電部32により均一に帯電された後、露光部35により光照射されて帯電を減衰させた静電潜像が形成され、現像部33により静電潜像を顕在化したトナー像が担持される。
【0018】
帯電部32(帯電装置)は、感光体ドラム31の外周面に対して所定の間隔を置いて配置され、感光体ドラム31の外周面を非接触の状態で均一に帯電させる。具体的には、帯電部32は、チャージワイヤー321およびグリッド電極322(いずれも図2参照)を有する。チャージワイヤー321は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる線状の電極であり、感光体ドラム31との間でコロナ放電を発生させる。グリッド電極322は、感光体ドラム31の回転軸方向に延びる格子状の電極であり、チャージワイヤー321と感光体ドラム31との間に配設される。帯電部32は、チャージワイヤー321に所定の電流値の電流を流すことでコロナ放電を発生させ、且つ、グリッド電極322に所定電圧を印加することで、グリッド電極322に対向する感光体ドラム31の外周面を、所定の表面電位に均一に帯電させる。
【0019】
露光部35(露光装置)は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の外周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づき変調された光を照射する。これにより、露光部35は、感光体ドラム31の外周面に、画像データに基づく画像に対応する静電潜像を形成する。
【0020】
現像部33(現像装置)は、本体ハウジング10に着脱可能であり、感光体ドラム31の外周面に非磁性一成分のトナー(現像剤)を供給することにより、感光体ドラム31の外周面に形成された静電潜像を現像する。静電潜像を現像するとは、静電潜像を顕在化したトナー像(現像剤像)を形成することを示す。現像部33の詳細な構成については後述する。
【0021】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。具体的には、転写ローラー34は、軸周りに回転し、感光体ドラム31の回転方向における現像ローラー331よりも下流側の位置で、感光体ドラム31の外周面と対向する外周面を有する。転写ローラー34は、感光体ドラム31の外周面との間のニップ部を通過するシートに、感光体ドラム31の外周面に担持されているトナー像を転写する。当該転写の際、転写ローラー34にはトナーと逆極性の転写電圧が印加される。
【0022】
定着部40は、シートに転写されたトナー像を、シート上に定着させる定着処理を行う。定着部40は、定着ローラー41と加圧ローラー42とを有する。定着ローラー41は、加熱源を内部に備え、シートに転写されたトナーを所定温度で加熱する。加圧ローラー42は、定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する。トナー像が転写されたシートが定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱、および加圧ローラー42による加圧によりシート上に定着される。
【0023】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するための主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20の用紙繰出部21Aから画像形成部30および定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0024】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで転写ニップ部に送り出される。主搬送路22Fおよび反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されている。排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0025】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。尚、反転ユニット25の内側面には、転写ローラー34およびレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12および反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてジャム(紙詰まり)が発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像部33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0026】
(2.画像形成部30の構成)
図2は、本実施形態の画像形成装置1における画像形成部30の断面図である。図3は、感光体ドラム31と現像部33の現像ローラー331との接触部周辺を上方から見た平面図である。図4は、現像部33における現像ローラー331と規制ブレード334との接触部分周辺の断面拡大図である。図5は、現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分の断面拡大図である。
【0027】
図2および図3に示すように、現像部33は、現像ハウジング330(現像容器)と、現像ローラー331(現像剤担持体)と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334と、を備える。
【0028】
現像ハウジング330は、内部にトナーのみからなる非磁性一成分現像剤を収容すると共に、現像ローラー331、供給ローラー332、規制ブレード334等を収容する。現像ハウジング330は、攪拌された状態の現像剤(トナー)を収容する攪拌室335を備える。攪拌室335には攪拌パドル333が配置される。攪拌パドル333は、攪拌室335内のトナーを攪拌する。
【0029】
現像ローラー331は、回転軸331aと、ローラー部331bを備える。回転軸331aは、現像ハウジング330の軸受部(不図示)に回転可能に支持される。ローラー部331bは、回転軸331aの外周面に積層される円筒状の部材であり、基材ゴム(例えばシリコーンゴム)の表面にウレタン等の凹凸のあるコーティング材によってコート層を積層した構成である。ローラー部331bは、回転軸331aの回転に伴って回転軸331aと一体的に回転する。ローラー部331bの表面には、所定厚さのトナー層(現像剤層)が形成される。トナー層は、後述する規制ブレード334により層厚が規制(所定厚さに均一に調整)される。トナー層は、規制ブレード334とローラー部331bとの当接(摩擦)により生じる静電気により帯電する。
【0030】
現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置において、感光体ドラム31の回転方向(図2の時計回り方向)における上流側から下流側に向かう方向(図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、現像ローラー331は、感光体ドラム31と対向する位置では、感光体ドラム31と同方向に回転する。
【0031】
供給ローラー332は、現像ローラー331に対向して配置される。供給ローラー332は、攪拌室335に収容された現像剤を外周面に保持する。また、供給ローラー332は、外周面に保持した現像剤を現像ローラー331に供給する。
【0032】
供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置において、現像ローラー331の回転方向(図2の反時計回り方向)における下流側から上流側に向かう方向(図2の反時計回り方向)に回転する。つまり、供給ローラー332は、現像ローラー331と対向する位置では、現像ローラー331と逆方向に回転する。供給ローラー332から現像ローラー331にトナーを移動させるために、供給ローラー332に所定の供給電圧(直流電圧)が印加される。
【0033】
現像ローラー331は、供給ローラー332から現像剤の供給を受けると共に、外周面にトナー層を保持する。そして、現像ローラー331は、感光体ドラム31に現像剤を供給する。現像ローラー331および供給ローラー332の軸方向(図2の紙面と直交する方向)の長さは、感光体ドラム31の軸方向長さと略同一である。現像ローラー331から感光体ドラム31にトナーを移動させるために、現像ローラー331に所定の現像電圧(直流電圧)が印加される。
【0034】
画像形成部30には、現像ハウジング330を挟んで感光体ドラム31と反対側(図2の右下側、図3の下側)に、押圧部材361と押圧バネ362から成る押圧機構36が配置されている。押圧機構36は、現像ハウジング330の長手方向の2箇所(感光体ドラム31の軸方向中央からそれぞれ85mmの位置)に配置されている。画像形成部30に現像部33を装着すると、現像ハウジング330に押圧部材361が圧接されて感光体ドラム31に近づく方向(図2の左上方向、図3の上方向)に押圧され、現像ローラー331が感光体ドラム31に所定の押圧力で押圧される。なお、本実施形態では、現像部33および感光体ドラム31には現像ローラー331と感光体ドラム31との間の距離を規制する機構、即ち、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を規制する機構は存在しない。但し、感光体ドラム31に対する現像ローラー331の押圧力を規制する機構を設けてもよい。
【0035】
規制ブレード334は、金属製の薄板状の部材である。規制ブレード334は、基端部334aが現像ハウジング330に固定され、先端部334bが自由端となるよう構成される。規制ブレード334は、感光体ドラム31と現像ローラー331とが対向する位置よりも現像ローラー331の回転方向における上流側の位置で現像ローラー331の外周面に接触する。
【0036】
規制ブレード334は撓み変形可能であり、現像ローラー331の周方向において規制ブレード334と現像ローラー331の接触部分(規制ニップ)が存在する。規制ブレード334は、所定の規制圧および規制ニップ幅Wで現像ローラー331(ローラー部331b)の外周面に当接する。なお、後述するように規制ブレード334に所定の規制電圧(直流電圧)を印加する構成としてもよい。
【0037】
規制ブレード334の材質は、例えばステンレス(SUS304)であり、本実施形態では自由長を10mmとしている。規制ブレード334の先端部334bには曲げ加工が施され、湾曲部分334cが形成される。この湾曲部分334cが現像ローラー331の外周面に当接する。湾曲部分334cの曲率半径は0.1mm以上である。
【0038】
図4に示すように、規制ブレード334が一定の規制圧(接触線圧)で現像ローラー331に当接するので、現像ローラー331の外周面に担持されたトナー層が均一な厚さに調整される。これにより、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面トナーの量を規制する。また、規制ブレード334は、現像ローラー331の外周面に担持されたトナーを摩擦することで、トナーを帯電させる。規制ブレード334の現像ローラー331に対する接触線圧とは、規制ブレード334と現像ローラー331の外周面との接触位置における規制ブレード334の単位長さ当たりの接触圧である。規制ブレード334の規制圧は10~60[N/m]が好ましく、20~45[N/m]がより好ましい。
【0039】
図5に示すように、現像ローラー331と供給ローラー332の当接部分(供給ニップN)では現像ローラー331が供給ローラー332に喰い込んだ構成となっている。また、現像ローラー331の回転方向に対し供給ニップNの下流側(図5の右上側)にはトナー溜まりTが形成されている。
【0040】
現像ローラー331と供給ローラー332が供給ニップNで線接触していると、トナー溜まりTが形成されずトナー供給性が著しく低下することが知られている。そこで、現像ローラー331と供給ローラー332が適度な喰い込み量になるように現像ローラー331と供給ローラー332の軸間距離、直径および硬度を設計する必要がある。現像ローラー331は感光体ドラム31という硬い部材と接触するためアスカーC硬度で50~80程度に設計する。そのため、現像ローラー331が供給ローラー332に喰い込んだ構成にするためには、供給ローラー332の硬度を現像ローラー331より下げる必要がある。
【0041】
供給ローラー332と現像ローラー331との間に電位差を発生させることで、トナーが供給ローラー332から現像ローラー331へ移動する方向の電界エネルギーが発生する。また、トナー粒子間には電位差に関係なくファンデルワールス力が作用する。この電界エネルギーやファンデルワールス力により供給ローラー332から現像ローラー331へトナーが供給される。ベタ画像の濃度追随性(画像の先端と後端の濃度差がないこと)を向上させるためには、供給ローラー332を現像ローラー331に押圧する力である圧縮荷重を最適な範囲にすることも重要である。
【0042】
(3.画像形成装置1の制御経路)
図6は、本実施形態の画像形成装置1に用いられる制御経路の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置1を使用する上で装置各部の様々な制御がなされるため、画像形成装置1全体の制御経路は複雑なものとなる。そこで、ここでは制御経路のうち、本発明の実施に必要となる部分を重点的に説明する。
【0043】
メインモーター50は、制御部90からの出力信号により給紙ローラー21B、感光体ドラム31、現像部33内の現像ローラー331、供給ローラー332、攪拌パドル333、定着部40内の定着ローラー41等を所定の回転速度で回転駆動する。
【0044】
電圧制御回路51は、帯電電圧電源52、現像電圧電源53、転写電圧電源54と接続され、制御部90からの出力信号によりこれらの各電源を作動させる。電圧制御回路51からの制御信号によって、帯電電圧電源52は帯電部32内のチャージワイヤー321に帯電電圧を印加する。現像電圧電源53は現像部33内の現像ローラー331に現像電圧を印加し、供給ローラー332に供給電圧を印加する。現像部33内の規制ブレード334に規制電圧を印加する場合、現像電圧電源は規制ブレード334に規制電圧を印加する。転写電圧電源54は転写ローラー34に転写電圧を印加する。
【0045】
画像入力部60は、画像形成装置1にパソコン等から送信される画像データを受信する受信部である。画像入力部60より入力された画像信号はデジタル信号に変換された後、一時記憶部94に送出される。
【0046】
機内温湿度センサー61は、画像形成装置1内部の温度および湿度、特に現像部33周辺の温度および湿度を検知するものであり、画像形成部30の近傍に配置される。
【0047】
操作部70には、液晶表示部71、各種の状態を示すLED72が設けられており、画像形成装置1の状態を示したり、画像形成状況や印刷部数を表示したりするようになっている。画像形成装置1の各種設定はパソコンのプリンタードライバーから行われる。
【0048】
制御部90は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)91、読み出し専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)92、読み書き可能な記憶部であるRAM(Random Access Memory)93、一時的に画像データ等を記憶する一時記憶部94、カウンター95、画像形成装置1内の各装置に制御信号を送信したり操作部70からの入力信号を受信したりする複数(ここでは2つ)のI/F(インターフェイス)96を少なくとも備えている。
【0049】
ROM92には、画像形成装置1の制御用プログラムや、制御上の必要な数値等、画像形成装置1の使用中に変更されることがないようなデータ等が収められている。RAM93には、画像形成装置1の制御途中で発生した必要なデータや、画像形成装置1の制御に一時的に必要となるデータ等が記憶される。
【0050】
一時記憶部94は、パソコン等から送信される画像データを受信する画像入力部60より入力され、デジタル信号に変換された画像信号を一時的に記憶する。カウンター95は、印刷枚数を累積してカウントする。
【0051】
また、制御部90は、画像形成装置1における各部分、装置に対し、CPU91からI/F96を通じて制御信号を送信する。また、各部分、装置からその状態を示す信号や入力信号がI/F96を通じてCPU91に送信される。制御部90が制御する各部分、装置としては、例えば、画像形成部30、定着部40、メインモーター50、電圧制御回路51、画像入力部60、操作部70等が挙げられる。
【0052】
(4.現像部の現像ローラーの軸方向端部の動摩擦係数および表面粗さの設定)
以下、本実施形態の画像形成装置1の特徴部分である、現像部33の現像ローラー331の軸方向端部の動摩擦係数、表面粗さの設定について説明する。図7は、現像部33の現像ローラー331、規制ブレード334、シール部材336の位置関係を示す平面図である。図8は、図7における現像ローラー331の一端側の拡大図である。
【0053】
図7に示すように、現像ローラー331の軸方向の両端部にはシール部材336が配置されている。シール部材336は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)繊維等の不織布で形成されており、現像ローラー331の軸方向の両端部、より詳細にはローラー部331bの画像領域Gの軸方向外側においてローラー部331bの外周面に接触している。現像ハウジング330(図2参照)とローラー部331bとの隙間をシール部材336で埋めることによって、現像ハウジング330と現像ローラー331との隙間からのトナー漏れを防止する。
【0054】
現像ローラー331の軸方向の両端部では、ローラー部331bと規制ブレード334およびシール部材336とが接触しているために、現像ローラー331の回転時に発生する摩擦熱が大きくなる。摩擦熱を抑制するためには、ローラー部331bの動摩擦係数を低減させること、およびローラー部331bの表面粗さを大きくすることが有効である。一方、シール部材336に対するローラー部331bの密着性を高めてトナーのシール性を高めるためには、ローラー部331bの表面粗さを小さくすることが有利となる。即ち、摩擦熱の抑制とトナーのシール性の向上とはトレードオフの関係となる。
【0055】
そこで、本実施形態では、ローラー部331bとシール部材336とが重なる端部領域Rの動摩擦係数μを0.2以下としている。これにより、ローラー部331bとシール部材336との摩擦を低減して摩擦熱の発生を抑制することができる。
【0056】
また本実施形態では、ローラー部331bの端部領域Rを、軸方向外側の第1領域R1と軸方向内側の第2領域R2とに区画する。そして、ローラー部331bの軸方向の最先端部となる第1領域R1の周方向における十点平均粗さRz1がRz1≦2.0[μm]を満たすようにしている。なお、本明細書でいう十点平均粗さRzは、日本工業規格(JISB0601:1994)で規定されたものをいう。第1領域R1ではRz1≦2.0[μm]とすることで、シール部材336に対する密着性を高めてトナー漏れを抑制することができる。
【0057】
また本実施形態では、第1領域R1の軸方向内側に隣接する第2領域R2の周方向における十点平均粗さRz2がRz2≧5.0[μm]を満たすようにしている。第2領域R2ではRz2≧5.0[μm]とすることで、端部領域Rの動摩擦係数μの低減(0.2以下)と重畳して、更なる摩擦の低減が期待できる。さらに、第1領域R1と画像領域Gの間に第2領域R2が介在することで、第1領域R1で発生した摩擦熱が画像領域Gに及ぼす影響を軽減することができる。
【0058】
なお、第2領域R2のRz2が大きくなりすぎると、第2領域R2の表面に担持されるトナー量が多くなり過ぎるために、第2領域R2がトナーを担持しきれなくなり、トナー飛散が発生するおそれがある。第2領域R2は画像領域Gの軸方向外側であるが、第2領域R2にトナーが進入したときのトナー飛散対策として、Rz2≦15.0[μm]を満たすことが好ましい。
【0059】
現像ローラー331の製法は、大別すると研磨法と非研磨法がある。研磨法は、ローラー部331bを構成する基材ゴム(本実施形態ではシリコーンゴム)の外径を調整するために研磨機によって研磨する。研磨法では回転軸331aを中心として回転する現像ローラー331のローラー部331bに砥石を接触させてローラー部331bの外周面を研磨する。そのため、ローラー部331bの周方向に波状の研磨目が形成され、ローラー部331bの周方向と軸方向で表面粗さが異なる。具体的には、ローラー部331bの周方向の表面粗さ(十点平均粗さRz1)が大きくなる。端部領域Rの第1領域R1のRz1、第2領域R2のRz2は、研磨のみで所望の表面粗さに調整してもよいし、研磨後に粒子を含むコート層を積層して調整してもよい。
【0060】
後述する試験結果に示すように、第1領域R1のRz1を2.0μm以下、且つ第1領域R1の軸方向長さx1を2.5[mm]以上とすることで、現像ローラー331の軸方向の両端部からのトナー漏れを抑制できることが確認された。また、第2領域R2のRz2を5.0μm以上、且つ第2領域R2の軸方向長さx2を2.5[mm]以上とすることで、端部領域Rに隣接する画像領域Gの軸方向両端部における温度上昇も抑制できることが確認された。
【0061】
(6.現像部の設定によるトナー漏れ防止効果、温度上昇抑制効果の評価)
以下、本実施形態のように現像部33における現像ローラー331の端部領域Rの動摩擦係数、第1領域R1、第2領域R2の表面粗さおよび軸方向長さを設定した場合の、トナー漏れ防止効果と画像領域Gの温度上昇抑制効果の評価結果について説明する。試験機として、図1に示したような画像形成装置1(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。
【0062】
現像ローラー331は、シャフト径6mmの回転軸331aと、基材層として層厚3.5mmのシリコーンゴム層にウレタンコーティグを施した外径13mm、軸方向長さ232mmのローラー部331bとを有し、アスカーC硬度が70°、ローラー抵抗が7.1[logΩ]であるローラーを用いた。アスカーC硬度は定圧荷重器(CL-150、高分子計器社製)を用いて測定した。ローラー抵抗は、現像ローラー331を金属ローラーに接触させて回転させ、100Vの直流電圧を印加して測定した。
【0063】
規制ブレード334は、ステンレス(SUS304)製の板状部材を用い、自由長10mm、接触線圧40[N/m]とした。
【0064】
感光体ドラム31は、外径24mm、感光層膜厚22μmの正帯電単層OPC感光体ドラム(京セラドキュメントソリューションズ社製)を用いた。
【0065】
トナーは、粉砕法により製造した中心粒径8.0μm、円形度0.96のポリエステル樹脂製のトナーを用いた。
【0066】
(第1領域の表面粗さおよび軸方向長さとトナーシール性との関係)
先ず、第1領域R1の十点平均粗さRz1と軸方向長さを変化させたときのトナーシール性(トナー漏れ防止効果)について検証した。試験方法としては、ローラー部331bの第2領域R2の動摩擦係数μを0.2、Rz2を8.0[μm]、軸方向長さx2を2.5[mm]に固定し、第1領域R1のRz1を1.0[μm]、2.0[μm]、3.3[μm]、5.0[μm]、8.0[μm]の5段階、軸方向長さを2.0[mm]、2.5[mm]、3.0[mm]、5.0[mm]の4段階に変化させた現像ローラー331を作製した。各現像ローラー331を現像部33に搭載し、外部駆動治具を用いて392rpmで60分間駆動させた。駆動後の現像部33における現像ローラー331の端部からのトナー漏れの有無を目視により確認した。
【0067】
評価基準は、トナー漏れが無い場合を○、トナー漏れが僅かに認められる場合(現像ハウジング330の側面の汚れ程度)を△、トナー漏れが有る場合(画像形成装置の外部への落下)を×とした。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、第1領域R1の表面粗さRz1を小さく、且つ軸方向長さを大きくするほどトナーシール性が向上することがわかる。表1の結果より、良好なトナーシール性を確保するためには、Rz1を2.0[μm]以下、且つ軸方向長さx1を2.5[mm]以上とすることが望ましいことが確認された。
【0070】
(第2領域の動摩擦係数と画像領域の温度上昇との関係)
図9は、現像ローラー331の表面温度と規制ブレード334へのトナー固着発生時間の関係を示すグラフである。トナー固着発生時間は、外部駆動治具を用いて現像部33を392rpmで駆動させた際に、現像ローラー331の外周面にスジ(トナーが搬送されていない部分)が現れた時間とした。試験環境は23℃/50%RHで実施した。本試験での現像部33の目標寿命は300[min]であり、現像ローラー331のローラー部331bの表面温度の目標値は41・0℃以下とした。図9に示すように、現像ローラー331のローラー部331bの表面温度が高いほど、トナー固着が早期に発生することがわかる。
【0071】
そこで、第2領域R2の動摩擦係数μを変化させたときの現像ローラー331の温度上昇との関係について調査した。試験方法としては、第1領域R1のRz1を2.0[μm]、軸方向長さx1を2.5[mm]、第2領域R2のRz2を2.0[μm]、軸方向長さを2.5[mm]に固定した。そして、第2領域R2の動摩擦係数を0.1[μm]、0.2[μm]、0.4[μm]、0.8[μm]の4段階に変化させた現像ローラー331を作製した。
【0072】
各現像ローラー331を現像部33に搭載し、外部駆動治具を用いて392rpmで60分間駆動させた。駆動中の現像ローラー331の表面温度を赤外線サーモグラフィカメラ(R300SR、日本アビオニクス社製)で測定し、画像領域G内の軸方向端部G1と中央部G2(図7参照)の表面温度の最大値を記録した。結果を図10に示す。以下の図10図12中、軸方向端部G1の表面温度を○のデータ系列、軸方向中央部G2の表面温度を◇のデータ系列で示す。
【0073】
図10に示すように、画像領域Gの軸方向端部G1の表面温度は、端部領域Rで発生する摩擦熱により、中央部G2より高くなる傾向がある。軸方向端部G1の表面温度は第2領域R2の動摩擦係数μが小さくなるほど低下する傾向がある。一方、中央部G2の表面温度は第2領域R2の動摩擦係数μを変化させてもほとんど変化しなかった。軸方向端部G1の表面温度は、動摩擦係数μを小さくするだけでは目標値である41.0℃以下には到達できなかったが、動摩擦係数μが0.2以下で表面温度の低下が飽和傾向であることから、端部領域Rの動摩擦係数μは0.2以下が望ましいことが確認された。
【0074】
(第2領域の表面粗さと画像領域の温度上昇との関係)
次に、第2領域R2の表面粗さRz2を変化させたときの現像ローラー331の温度上昇との関係について調査した。試験方法としては、第1領域R1のRz1を2.0[μm]、軸方向長さx1を2.5[mm]、第2領域R2の動摩擦係数μを0.2、軸方向長さを2.5[mm]に固定した。そして、第2領域R2のRz2を2.0[μm]、3.3[μm]、5.0[μm]、8.0[μm]の4段階に変化させた現像ローラー331を作製した。
【0075】
各現像ローラー331を現像部33に搭載し、外部駆動治具を用いて392rpmで60分間駆動させた。駆動中の現像ローラー331の表面温度を赤外線サーモグラフィカメラ(R300SR、日本アビオニクス社製)で測定し、画像領域G内の軸方向端部G1と中央部G2の表面温度の最大値を記録した。結果を図11に示す。
【0076】
図11に示すように、第2領域R2のRz2を大きくすると、更に画像領域の温度上昇が抑され、Rz2が5.0[μm]以上では、軸方向端部G1においても表面温度の目標値である41.0℃以下を達成できた。
【0077】
(第2領域の軸方向長さと画像領域の温度上昇との関係)
次に、第2領域R2の軸方向長さx2を変化させたときの現像ローラー331の温度上昇との関係について調査した。試験方法としては、第1領域R1のRz1を2.0[μm]、軸方向長さx1を2.5[mm]、第2領域R2の動摩擦係数μを0.2、Rz2を5.0[μm]に固定した。そして、第2領域R2の軸方向長さx2を1.5、2.0、2.5、3.0[μm]の4段階に変化させた現像ローラー331を作製した。
【0078】
各現像ローラー331を現像部33に搭載し、外部駆動治具を用いて392rpmで60分間駆動させた。駆動中の現像ローラー331の表面温度を赤外線サーモグラフィカメラ(R300SR、日本アビオニクス社製)で測定し、画像領域G内の軸方向端部G1の表面温度の最大値を記録した。結果を図12に示す。
【0079】
図12に示すように、第2領域R2の軸方向長さx2が小さいと、第1領域R1で発生する摩擦熱の影響を受けて、軸方向端部G1の温度が上昇してしまうことがわかる。図12の結果より、第2領域R2の軸方向長さx2は2.5mm以上とすることが望ましい。
【0080】
以上の結果より、現像ローラー331の端部領域Rの動摩擦係数μを0.2以下、端部領域Rのうち第1領域R1の表面粗さを2.0[μm]以下、軸方向長さx1を2.5[mm]以上、第2領域R2の表面粗さを5.0[μm]以上、軸方向長さx2を2.5[mm]以上とすることで、トナーシール性を確保するとともに、画像領域Gの軸方向端部G1の温度上昇を抑制できることが確認された。
【0081】
(8.その他の構成)
本実施形態では粉砕法により製造されたトナー(粉砕トナー)、重合法により製造されたトナー(重合トナー)の両方を使用することができる。重合トナーは円形度が高い真球形状のため付着力が低く、現像性が良いため使用可能領域が広い。本発明は、重合トナーに比べて低コストであるが、使用可能領域が狭い粉砕トナーを用いる非磁性一成分現像方式において特に有効である。
【0082】
また、本実施形態ではトナーの中心粒径d50が3[μm]≦d50≦10[μm]の範囲で良好な結果が得られることを確認している。中心粒径の範囲の選択理由は、中心粒径が3μmより小さくなるとトナーの製造コストアップにつながり、10μmより大きいとトナー消費量が増えて定着性が悪化し、好ましくないためである。
【0083】
また、本実施形態では円形度が0.93~0.97のトナーで良好な結果が得られることを確認している。円形度が0.93以下の場合は画像品質が低下する傾向にある。円形度が0.97以上である場合は製造コストが大幅にアップするため、それぞれ好ましくない。
【0084】
また、本実施形態では90℃における溶融粘度が100,000Pa・s以下のトナーで良好な結果が得られることを確認している。90℃における溶融粘度が100,000Pa・sを超える場合はトナーの定着性が悪くなるため、省エネルギーの観点から好ましくない。
【0085】
感光体ドラム31と現像ローラー331の線速差は、1.1~1.6倍(感光体ドラム31よりも現像ローラー331の方が速い)の範囲にて同様の結果を得られていることを確認している。線速差が1.1倍よりも小さくなると、白紙部にトナーが付着する画像カブリが発生し易くなるため好ましくない。線速差が1.6倍よりも大きくなると、現像部33の駆動トルクや振動、トナーに加わる物理的ストレスが増加するため、現像部33の寿命の観点から好ましくない。
【0086】
また、感光体ドラム31の表面電位V0は500~800V、露光後電位VLは70~200Vの範囲で同様の結果が得られることを確認している。
【0087】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、画像形成装置1の例として、モノクロプリンターについて説明したが、例えば、タンデム方式やロータリー式のカラープリンターにも適用できる。また、複写機、ファクシミリ或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置にも適用できる。ただし、感光体ドラム31と、非磁性一成分現像方式の現像部33を備える必要はある。また、上記実施形態では、現像部33の現像ハウジング330の内部に非磁性トナーを貯留する構成について説明したが、現像ハウジング330とは別に非磁性トナーを収容するトナーコンテナ、トナーカートリッジを有していてもよい。
【0088】
また、上記実施形態における感光体ドラム31は、支持体として円筒状の素管を利用したが、他の形状の支持体を利用しても良い。他の形状としては、板状、無端ベルト状であってもよい。また、上記実施形態における感光体ドラム31は、感光層としてアモルファスシリコンを利用したが、例えば、支持体からの電荷の注入を阻止する電荷注入阻止層を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、非磁性トナーを用いた非磁性一成分現像方式の現像装置に利用可能である。本発明の利用により、非磁性一成分現像方式を用いる構成において、現像剤担持体の端部からのトナー漏れ、および規制ブレードへのトナー融着を簡易な構成で抑制可能な現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成装置
30 画像形成部
31 感光体ドラム(像担持体)
32 帯電部(帯電装置)
33 現像部(現像装置)
330 現像ハウジング(現像容器)
331 現像ローラー(現像剤担持体)
331a 回転軸
331b ローラー部
332 供給ローラー
334 規制ブレード
336 シール部材
35 露光部(露光装置)
53 現像電圧電源
61 機内温湿度センサー
90 制御部
G 画像領域
R 端部領域
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12