(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166682
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
H04W 36/30 20090101AFI20241122BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20241122BHJP
H04W 36/08 20090101ALI20241122BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241122BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W4/40
H04W36/08
G05D1/02 P
G05D1/02 G
B65G1/04 551A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082931
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】木村 康佑
(72)【発明者】
【氏名】小川 大介
(72)【発明者】
【氏名】平尾 雄也
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
5K067
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022BB09
3F022CC02
3F022EE05
3F022HH04
3F022LL12
3F022LL14
3F022MM08
3F022QQ03
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE02
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5H301EE16
5H301FF08
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5H301KK08
5H301KK18
5K067BB03
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図り易くすることができる物品搬送設備を実現する。
【解決手段】搬送車は、経路を移動しながら接続先のアクセスポイントを切り替えて、制御装置と通信可能な状態を維持するように構成されている。搬送車とアクセスポイントとの電波の通信強度が、予め定められた切替しきい値未満となった場合に、搬送車は、通信強度がより強い他のアクセスポイントに接続先を切り替える切替処理を行う。切替しきい値は、搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記搬送車と前記アクセスポイントとの電波の通信強度が、予め定められた切替しきい値未満となった場合に、前記搬送車は、前記通信強度がより強い他の前記アクセスポイントに接続先を切り替える切替処理を行い、
前記切替しきい値は、前記搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている、物品搬送設備。
【請求項2】
前記経路には、第1エリアと第2エリアとが少なくとも設定され、
前記第2エリアは、前記第1エリアに比べて、前記搬送車の平均移動速度が高いエリアであり、
前記移動条件は、前記搬送車が前記第1エリアと前記第2エリアとの間を移動することであり、
前記第2エリアを移動中の前記搬送車の前記切替しきい値は、前記第1エリアを移動中の前記搬送車の前記切替しきい値よりも高い値に設定される、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記移動条件は、前記搬送車の移動速度が変化することであり、
前記搬送車の移動速度が高くなることに応じて、前記切替しきい値が連続的又は段階的に高くなるように設定される、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記搬送車は、さらに、予め定められた設定周期で前記切替処理を行うように構成され、
前記設定周期は、前記移動条件に応じて変更される、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2014-192577号公報(特許文献1)には、無線通信に関する発明が開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示された符号は、特許文献1のものである。
【0003】
特許文献1に記載された発明では、移動体としての携帯端末(2)に搭載された無線通信装置が、アクセスポイント(60)と無線通信を行う。この無線通信装置は、接続中のアクセスポイント(60)との無線通信における電波強度(X1)を検出する電波強度検出部(50)を備えており、電波強度(X1)がローミング閾値(Xth)を下回っているか否かの判定を、所定の時間間隔で行う。そして、電波強度(X1)がローミング閾値(Xth)を下回っていると判定されると、接続先のアクセスポイント(60)を切り替えるローミング処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような無線通信技術を、移動体としての搬送車と制御装置との無線通信がアクセスポイントを介して行われる物品搬送設備に適用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載された発明のように、電波強度がローミング閾値を下回っているか否かの判定を所定の時間間隔で行う場合には、搬送車の移動条件によっては、適切なタイミングでローミング処理を行うことができない場合がある。例えば、搬送車が高速で移動している場合には、それよりも低速で移動している場合に比べて、同じ時間で進む距離が長くなる。搬送車が高速で移動しているために、接続中のアクセスポイントとの距離が著しく長くなると、比較的通信強度の弱いアクセスポイントとの接続状態が維持されることがある。不適切なアクセスポイントとの接続状態が維持されることは、通信不良が生じる要因となり得る。
【0006】
上記実状に鑑みて、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図り易くすることができる物品搬送設備の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記搬送車と前記アクセスポイントとの電波の通信強度が、予め定められた切替しきい値未満となった場合に、前記搬送車は、前記通信強度がより強い他の前記アクセスポイントに接続先を切り替える切替処理を行い、
前記切替しきい値は、前記搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている。
【0008】
本構成によれば、搬送車が切替処理(ローミング処理)を行うための基準となる切替しきい値が、搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている。そのため、切替しきい値を、搬送車の移動条件に応じて設定することができる。従って、本構成によれば、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図り易くなる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】エリア毎に設定された搬送車の平均移動速度と切替しきい値との関係を示す図
【
図7】その他の実施形態における、複数のエリアに区画された経路を示す図
【
図8】その他の実施形態における、搬送車の移動速度と切替しきい値との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、物品搬送設備の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、物品搬送設備100は、規定の経路8を移動して物品(不図示)を搬送する搬送車1と、搬送車1を制御する制御装置2(
図2等参照)と、を備えている。
【0013】
図3に示すように、本実施形態では、経路8は、天井付近に設置されたレール80を用いて構成されている。そして、搬送車1は、このようなレール80に支持されながら走行する、いわゆる天井搬送車として構成されている。本実施形態では、搬送車1は、本体部10と、レール80に沿って走行する走行部11と、物品を保持する保持部12と、を備えている。本体部10は、保持部12及び保持部12に保持された物品を収容可能に構成されている。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、物品搬送設備100は、経路8に沿って設けられた複数の移載対象箇所9を備えている。移載対象箇所9は、経路8よりも下方に配置されている。本例では、経路8は、インターベイと、インターベイに接続された複数のイントラベイと、を備えている。各イントラベイに、複数の移載対象箇所9が設けられている。インターベイは、搬送車1が主に移動を行うための移動エリアと言い換えることができる。イントラベイは、搬送車1が主に物品の移載作業を行うための移載エリアと言い換えることができる。搬送車1は、保持部12(
図3参照)を昇降させることにより、移載対象箇所9との間で物品を移載するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、物品搬送設備100は、搬送車1を複数備えている。複数の搬送車1のそれぞれは、制御装置2(
図2等参照)から搬送指令を受けて、当該搬送指令に応じたタスクを実行するように構成されている。例えば搬送指令には、物品の搬送元と搬送先との情報が含まれる。搬送指令を受けた搬送車1は、搬送元から搬送先まで物品を搬送する。搬送元や搬送先には、移載対象箇所9が含まれる。
【0016】
物品搬送設備100で取り扱われる物品としては、様々なものがある。本例では、物品搬送設備100は、半導体製造工場に用いられる。そのため、基板(ウェハやパネル等)を収容する基板収容容器(いわゆるFOUP:Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクル収容容器(いわゆるレチクルポッド)などが、物品とされる。この場合、搬送車1は、基板収容容器やレチクル収容容器などの物品を、経路8に沿って各工程間に亘って搬送する。
【0017】
本実施形態では、移載対象箇所9は、物品に対する処理を行う処理装置90と、処理装置90に隣接して配置された載置台91と、を備えている。本明細書において「物品に対する処理」とは、収容容器としての物品に収容された被収容物(基板やレチクル)に対する処理を意味する。搬送車1は、処理装置90による処理を終えた物品を載置台91から受け取り、又は、処理装置90による処理が済んでいない物品を載置台91に引き渡す。なお、処理装置90は、例えば、薄膜形成、フォトリソグラフィー、エッチングなどの種々の処理を行う。
【0018】
図2に示すように、物品搬送設備100は、それぞれが搬送車1との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントAP(
図2では1つのアクセスポイントAPのみを示す。)を備えている。
図1に示される複数の円形範囲のそれぞれの中央に、アクセスポイントAPが配置されている。これらの円形範囲は、各アクセスポイントAPの通信可能範囲の目安を示している。但し、これはあくまでも目安であり、円形範囲外であっても通信可能な場合がある。
【0019】
制御装置2と搬送車1とは、複数のアクセスポイントAPのうち何れかを介して、双方向に通信可能に構成されている。詳細は後述するが、制御装置2は、搬送車1に対して設定周期で確認信号Scを繰り返し送信するように構成されている。搬送車1は、確認信号Scを受信したことに応じて、制御装置2に対して受領信号Srを送信するように構成されている。このような構成により、制御装置2は、搬送車1との通信状態を定期的に確認することができる。
【0020】
本実施形態では、制御装置2は、処理部20と記憶部21とを備えている。処理部20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。記憶部21は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の当該演算処理装置が参照可能な記憶装置を用いて構成されている。そして、記憶部21に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置2の各機能部が機能する。制御装置2が備える処理部20は、各プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0021】
本実施形態では、搬送車1は、搬送車制御部13と無線通信機14とを備えている。搬送車制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。無線通信機14は、制御装置2と通信することが可能に構成されている。本例では、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPのそれぞれと無線で通信するように構成されている。そして、複数のアクセスポイントAPのそれぞれは、制御装置2と有線で通信するように構成されている。すなわち、無線通信機14は、複数のアクセスポイントAPの何れかを介して、制御装置2と通信することが可能に構成されている。
【0022】
図3に示すように、制御装置2は、操作端末に接続されている。作業者は、操作端末を操作することによって各種指令を制御装置2に入力することができ、また、操作端末を用いて制御状況を参照することができる。
【0023】
アクセスポイントAPは、無線アクセスポイント機器を用いて構成されている。アクセスポイントAPは、無線の電波を発するように構成されている。アクセスポイントAPと搬送車1との通信強度は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)で表される。その単位は、例えばデシベルミリワット(dBm)とされる。
【0024】
図4に示すように、搬送車1は、経路8を移動しながら接続先のアクセスポイントAPを切り替えて、制御装置2と通信するように構成されている。
図4に示す例では、経路8に沿って互いに隣接するように、第1のアクセスポイントAP1と第2のアクセスポイントAP2と第3のアクセスポイントAP3とが配置されている。この場合、搬送車1は、第1のアクセスポイントAP1に接続された状態から、接続先を第2のアクセスポイントAP2に切り替える。そして、搬送車1は、第2のアクセスポイントAP2に接続された状態から、接続先を第3のアクセスポイントAP3に切り替える。このようにして、搬送車1は、経路8を移動しながら接続先のアクセスポイントAPを切り替える。
【0025】
搬送車1とアクセスポイントAPとの電波の通信強度が、予め定められた切替しきい値X未満となった場合に、搬送車1は、通信強度がより強い他のアクセスポイントAPに接続先を切り替える切替処理を行う。上述のように、電波の通信強度はRSSIで表される。搬送車1は、接続中のアクセスポイントAPとのRSSIが切替しきい値X未満となった場合に、切替処理を行う。
【0026】
通常、アクセスポイントAPに近いほど、通信強度は強くなる。
図4に示す例のように、搬送車1がアドレス1001からアドレス1017に経路8を移動する場合を考える。搬送車1と第1のアクセスポイントAP1との通信強度が最も強くなるのは、搬送車1が第1のアクセスポイントAP1に最も接近するアドレス1004にいる状態である。搬送車1は、アドレス1004を通過後は、第1のアクセスポイントAP1から遠ざかっていくため、通信強度は次第に弱くなっていく。そして、通信強度が切替しきい値X未満になった場合に、搬送車1は、切替処理を行って、他のアクセスポイントAPに接続先を切り替える。図示の例では、搬送車1は、第2のアクセスポイントAP2に接続先を切り替える。同じようにして、搬送車1は、第2のアクセスポイントAP2から第3のアクセスポイントAP3への接続先の切り替えも行う。
【0027】
本実施形態では、搬送車1は、アクセスポイントAPとの通信強度を検出する通信強度検出部(不図示)を備えている。通信強度検出部による通信強度の検出は、一定の検出周期で行われる。この検出周期は、予め設定されたものであってもよいし、所定の制御フローの実行によって必然的に生じるような周期であってもよい。
【0028】
搬送車1は、通信強度検出部による検出結果に基づいて、通信強度が切替しきい値X未満となった場合に切替処理を実行する。すなわち本実施形態では、切替処理は、搬送車1自らの判断によって行われる。
【0029】
切替しきい値Xは、搬送車1の移動条件に応じて異なる値に設定されている。「移動条件」には、搬送車1の移動速度Vや、移動速度Vに関連する条件が含まれる。例えば、「移動条件」は、搬送車1の移動速度Vが変化することである。この場合、切替しきい値Xは、搬送車1の移動速度Vに応じて異なる値に設定される。また、「移動条件」は、搬送車1が経路8における複数のエリア間を移動することである。この場合、切替しきい値Xは、複数のエリア毎に設定された搬送車1の平均移動速度に応じて異なる値に設定されるとよい。後述する例では、「移動条件」は、搬送車1が第1エリアA1と第2エリアA2との間を移動することである。
【0030】
「移動条件」が搬送車1の移動速度Vとされる場合、搬送車1の移動速度Vが高くなることに応じて、切替しきい値Xが高くなるように設定される。搬送車1の移動速度Vが高いほど、上記検出周期、すなわち通信強度検出部による通信強度の検出の周期の間に、搬送車1が移動する距離が長くなる。すなわち、一度通信強度の検出が行われてから次の通信強度の検出が行われるまでの間に、搬送車1と、当該搬送車1と接続中のアクセスポイントAPと、の相対距離が長くなる。この場合、次に通信強度が検出されたときには、適切な通信ができないくらい通信強度が弱くなり過ぎていることがある。しかしながら、移動速度Vが高くなることに応じて切替しきい値Xを高く設定することで、比較的高速で移動している搬送車1に対して切替処理を促すことができる。これにより、搬送車1は、アクセスポイントAPとの通信強度が弱くなり過ぎる前に、他のアクセスポイントAPへの切替処理を行うことが可能となる。
【0031】
詳細な図示は省略するが、搬送車1は、自らの移動速度Vを検出する速度検出部を備え、速度検出部による検出結果に基づいて、切替処理を実行する。速度検出部は、例えば、ロータリエンコーダを用いて構成される。なお、本実施形態では、搬送車1の移動速度Vの情報は、制御装置2には送信されない。そのため、制御装置2は、搬送車1の移動速度Vを把握することができず、搬送車1の移動速度Vに基づいて切替処理を実行する構成では、制御装置2から搬送車1に対して切替処理を実行する旨の指令を送信することはできない。
【0032】
図5に示すように、本実施形態では、経路8には、第1エリアA1と第2エリアA2とが少なくとも設定されている。第2エリアA2は、第1エリアA1に比べて、搬送車1の平均移動速度Vaが高いエリアである。本例では、第2エリアA2は、第1エリアA1に比べて、搬送車1の制限速度が高く設定されたエリアである。第2エリアA2では、制限速度が高く設定されている結果、当該第2エリアA2内を移動する搬送車1の平均移動速度Vaが高くなる。
【0033】
本実施形態では、経路8における各イントラベイが、第1エリアA1とされる。すなわち、搬送車1が主に物品の移載作業を行うための移載エリアであるイントラベイが、第1エリアA1とされる。イントラベイでは、搬送車1による物品の移載作業が行われるため、制限速度が比較的低く設定され易い。従って、第1エリアA1を移動する搬送車1の平均移動速度Vaである第1平均移動速度Va1は、第2エリアA2を移動する搬送車1の平均移動速度Vaである第2平均移動速度Va2よりも低くなる(
図6参照)。
【0034】
本実施形態では、経路8におけるインターベイが、第2エリアA2とされる。すなわち、搬送車1が主に移動を行うための移動エリアであるインターベイが、第2エリアA2とされる。インターベイでは、原則的に搬送車1による物品の移載作業などは行われず、主に搬送車1の移動が行われる。そのためインターベイでは、制限速度を比較的高く設定することができる。従って、第2エリアA2を移動する搬送車1の第2平均移動速度Va2は、第1エリアA1を移動する搬送車1の第1平均移動速度Va1よりも高くなる(
図6参照)。
【0035】
詳細な図示は省略するが、第2エリアA2よりも搬送車1の平均移動速度Vaが高いエリア(例えば第3エリアA3)が設定されていてもよい。このような第3エリアA3は、第2エリアA2に比べて、搬送車1の制限速度が高く設定されたエリアである。従って、第3エリアA3を移動する搬送車1の平均移動速度Vaである第3平均移動速度Va3は、第2エリアA2を移動する搬送車1の第2平均移動速度Va2よりも高くなる(
図6参照)。
【0036】
図6に示すように、本実施形態では、各エリアA1~A3において、搬送車1の平均移動速度Va(制限速度)が定められると共に、切替しきい値Xが定められている。
【0037】
本実施形態では、第2エリアA2を移動中の搬送車1の第2切替しきい値X2は、第1エリアA1を移動中の搬送車1の第1切替しきい値X1よりも高い値に設定される。これにより、第2エリアA2では、搬送車1によるアクセスポイントAPの切替処理の頻度が高くなり易い。また、本例では、第3エリアA3を移動中の搬送車1の第3切替しきい値X3は、第2エリアA2を移動中の搬送車1の第2切替しきい値X2よりも高い値に設定される。これにより、第3エリアA3では、搬送車1によるアクセスポイントAPの切替処理の頻度がさらに高くなり易い。上記のような構成により、距離の離れたアクセスポイントAPとの接続状態が維持され難く、接続に適したアクセスポイントAPとの接続を搬送車1に促すことができる。
【0038】
詳細な図示は省略するが、搬送車1は、経路8に沿って設置された複数の情報保持体を順次読み取りながら走行するように構成されている。各情報保持体は、自らが設置されたアドレス情報を保持している。そのため、搬送車1は、情報保持体を読み取ることによって、自らの現在位置を把握可能となっている。本実施形態では、搬送車1は、自らの現在位置情報に基づいて、自らが第1エリアA1にいる場合には切替しきい値Xを第1切替しきい値X1に設定し、自らが第2エリアA2にいる場合には切替しきい値Xを第2切替しきい値X2に設定する。なお、搬送車1の現在位置情報は、制御装置2に送信される。そのため、制御装置2は、搬送車1の現在位置を把握可能となっている。従って、制御装置2は、搬送車1の現在位置情報に基づいて、切替しきい値Xを設定する旨の設定指令を搬送車1に行ってもよい。制御装置2から設定指令を受けた搬送車1は、設定指令の内容に応じて切替しきい値Xを設定する。
【0039】
本実施形態では、搬送車1は、さらに、予め定められた設定周期で切替処理を行うように構成されている。すなわち本実施形態では、搬送車1による切替処理は、搬送車1とアクセスポイントAPとの電波の通信強度が切替しきい値X未満となった場合、及び、設定周期で行われる。そのため、搬送車1は、通信強度が切替しきい値X以上であっても、設定周期がきていれば切替処理を行う。また、搬送車1は、設定周期がきていなくても、通信強度が切替しきい値X未満であれば切替処理を行う。このような構成により、搬送車1による切替処理をさらに促すことができる。
【0040】
本実施形態では、設定周期は、移動条件に応じて変更される。本例では、設定周期は、搬送車1が第1エリアA1にいる場合と第2エリアA2にいる場合とで、異なる周期に変更される。上述のように、第2エリアA2は、第1エリアA1に比べて、搬送車1の平均移動速度Vaが高いエリアであるため、切替処理の頻度が高いと好適である。そのため本例では、搬送車1が第2エリアA2にいる場合の設定周期は、搬送車1が第1エリアA1にいる場合の設定周期に比べて短い周期に変更される。これにより、第2エリアA2での切替処理を促し易い。
【0041】
上記構成とは別に、或いは、上記構成に加えて、設定周期は、搬送車1の移動速度が高くなることに応じて短い周期に変更されてもよい。この場合、搬送車1の移動速度が高いほど、搬送車1による切替処理の頻度が高くなる。従って、搬送車1の移動速度が高い状態での切替処理を促し易い。
【0042】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について説明する。
【0043】
(1)上記の実施形態では、経路8における各イントラベイが、搬送車1の平均移動速度Vaが比較的低い第1エリアA1とされ、経路8におけるインターベイが、搬送車1の平均移動速度Vaが比較的高い第2エリアA2とされる例について説明した。すなわち、ベイ単位でエリアが区画されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、経路8の各部の形状に応じてエリアが区画されていてもよい。例えば
図7に示すように、経路8におけるカーブ路81が第1エリアA1とされ、経路8における直線路82が第2エリアA2とされてもよい。カーブ路81では、搬送車1の平均移動速度Vaが比較的低い。直線路82では、搬送車1の平均移動速度Vaが比較的高い。
【0044】
(2)上記の実施形態では、搬送車1の移動速度Vが高くなることに応じて、切替しきい値Xが高くなるように設定される例について説明した。切替しきい値Xは、搬送車1の移動速度Vが高くなることに応じて、連続的に高くなるように設定されてもよいし、或いは、
図8に示すように、段階的に高くなるように設定されてもよい。
図8に示す例では、搬送車1の移動速度Vがゼロから第1速度V1の範囲では、切替しきい値Xは第1切替しきい値X1に設定されている。搬送車1の移動速度Vが第1速度V1から第1速度V1よりも高い第2速度V2の範囲では、切替しきい値Xは第1切替しきい値X1よりも高い第2切替しきい値X2に設定されている。搬送車1の移動速度Vが第2速度V2から第2速度V2よりも高い第3速度V3の範囲では、切替しきい値Xは第2切替しきい値X2よりも高い第3切替しきい値X3に設定されている。
【0045】
(3)上記の実施形態では、切替処理が、搬送車1自らの判断によって行われる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、例えば、制御装置2からの切替指令に応じて、搬送車1は切替処理を実行するようにしてもよい。この場合、上述したように、制御装置2は、搬送車1の現在位置情報に基づいて、搬送車1に切替指令を行うことができる。
【0046】
(4)上記の実施形態では、経路8が、天井付近に設置されたレール80を用いて構成され、搬送車1が、レール80に支持されながら走行する天井搬送車として構成されている例について説明した。しかしながら、このような例に限定されることなく、搬送車1は、床面を走行する床面搬送車として構成されていてもよい。この場合、経路8は、床面に沿って設けられた磁気テープ等を用いて構成されていてもよいし、或いは、床面に沿って仮想的に設定されたものであってもよい。
【0047】
(5)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0048】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、本実施形態のまとめについて説明する。
【0049】
規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、
前記搬送車を制御する制御装置と、
それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備であって、
前記搬送車は、前記経路を移動しながら接続先の前記アクセスポイントを切り替えて、前記制御装置と通信するように構成され、
前記搬送車と前記アクセスポイントとの電波の通信強度が、予め定められた切替しきい値未満となった場合に、前記搬送車は、前記通信強度がより強い他の前記アクセスポイントに接続先を切り替える切替処理を行い、
前記切替しきい値は、前記搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている。
【0050】
本構成によれば、搬送車が切替処理(ローミング処理)を行うための基準となる切替しきい値が、搬送車の移動条件に応じて異なる値に設定されている。そのため、切替しきい値を、搬送車の移動条件に応じて設定することができる。従って、本構成によれば、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図り易くなる。
【0051】
前記経路には、第1エリアと第2エリアとが少なくとも設定され、
前記第2エリアは、前記第1エリアに比べて、前記搬送車の平均移動速度が高いエリアであり、
前記移動条件は、前記搬送車が前記第1エリアと前記第2エリアとの間を移動することであり、
前記第2エリアを移動中の前記搬送車の前記切替しきい値は、前記第1エリアを移動中の前記搬送車の前記切替しきい値よりも高い値に設定される、と好適である。
【0052】
本構成によれば、搬送車の平均移動速度が第1エリアよりも高い第2エリアでは、切替しきい値が比較的高い値に設定される。そのため第2エリアでは、搬送車によるアクセスポイントの切替処理の頻度が高くなり易い。従って、本構成によれば、距離の離れたアクセスポイントとの接続状態が維持され難く、接続に適したアクセスポイントとの接続を搬送車に促すことができる。
【0053】
前記移動条件は、前記搬送車の移動速度が変化することであり、
前記搬送車の移動速度が高くなることに応じて、前記切替しきい値が連続的又は段階的に高くなるように設定される、と好適である。
【0054】
本構成によれば、搬送車の移動速度が高いほど、切替しきい値が高い値に設定される。そのため、距離の離れたアクセスポイントとの接続状態が維持され難く、接続に適したアクセスポイントとの接続を搬送車に促すことができる。
【0055】
前記搬送車は、さらに、予め定められた設定周期で前記切替処理を行うように構成され、
前記設定周期は、前記移動条件に応じて変更される、と好適である。
【0056】
本構成によれば、搬送車は、アクセスポイントとの電波の通信強度が切替しきい値未満となった場合に加えて、設定周期で切替処理を行う。そして、設定周期は移動条件に応じて変更される。そのため、例えば、移動条件によっては設定周期を通常よりも短く変更することが可能となり、その結果、搬送車による切替処理を促すことができる。従って、本構成によれば、制御装置と搬送車との良好な通信状態の維持を図り易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示に係る技術は、規定の経路を移動して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御装置と、それぞれが前記搬送車との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントと、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
100 :物品搬送設備
1 :搬送車
2 :制御装置
8 :経路
A1 :第1エリア
A2 :第2エリア
AP :アクセスポイント
V :移動速度
Va :平均移動速度
X :切替しきい値