(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166683
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】搬送設備
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241122BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G05D1/02 G
G05D1/02 P
B65G1/00 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082932
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】池戸 賢吾
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022KK01
3F022LL12
3F022MM04
3F022NN31
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE02
5H301EE12
5H301FF02
5H301FF06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG12
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK18
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備の実現が望まれる。
【解決手段】搬送設備は、搬送車1と案内レール7と制御システムとを備え、搬送車1は、案内レール7に案内される被案内部21,22を備える。第1分岐経路41へ進入するための被案内部21,22の幅方向の位置を第1位置D1とし、第2分岐経路42へ進入するための被案内部21,22の幅方向の位置を第2位置とする。制御システムは、第1分岐経路41にある搬送車1を後退させた後に第2分岐経路42に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、第1分岐経路41での後退中に、第1位置D1にある被案内部21,22を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部を制御し、被案内部21,22が第2位置に移動したことを条件として搬送車1を前進させる分岐折り返し制御を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、
前記走行経路には、1つの経路から第1分岐経路と第2分岐経路とに分岐する分岐部があり、
前記分岐部には前記案内レールが設けられ、前記分岐部の上流側の区間である分岐上流区間には前記案内レールが設けられておらず、
前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、
前記第1分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記第2分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、
前記制御システムは、前記第1分岐経路にある前記搬送車を後退させた後に前記第2分岐経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1分岐経路での後退中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を前進させる分岐折り返し制御を実行する、搬送設備。
【請求項2】
複数の前記搬送車を備え、
前記制御システムは、複数の前記搬送車のうちの1つが前記分岐部にいる場合に、前記分岐部に進入しようとする他の前記搬送車を、予め定められた分岐待機位置で待機させる分岐待機制御を実行し、
前記折り返し走行中の前記搬送車の前記被案内部が前記第1位置から前記第2位置に移動する位置を分岐折り返し位置として、
前記制御システムは、前記分岐待機位置を、前記分岐折り返し位置にある前記搬送車よりも上流側であって、前記分岐待機位置にある前記搬送車が、前記分岐折り返し位置にきた前記搬送車と干渉しない位置に設定する、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、
前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、
前記走行経路には、第1合流経路と第2合流経路とが1つの経路に合流する合流部があり、
前記合流部には前記案内レールが設けられ、前記合流部の下流側の区間である合流下流区間には前記案内レールが設けられておらず、
前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、
前記搬送車が前記第1合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記搬送車が前記第2合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、
前記制御システムは、前記第1合流経路にある前記搬送車を前進させた後に前記第2合流経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1合流経路での前進中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を後退させる合流折り返し制御を実行する、搬送設備。
【請求項4】
複数の前記搬送車を備え、
前記制御システムは、複数の前記搬送車のうちの1つが前記合流部にいる場合に、前記合流部に進入しようとする他の前記搬送車を、予め定められた合流待機位置で待機させる合流待機制御を実行し、
前記折り返し走行中の前記搬送車の前記被案内部が前記第1位置から前記第2位置に移動する位置を合流折り返し位置として、
前記制御システムは、前記合流部にいる前記搬送車が前記合流部から出たと判定する位置である退出判定位置を、前記合流折り返し位置よりも下流側に設定する、請求項3に記載の搬送設備。
【請求項5】
前記制御システムは、複数の前記搬送車の中から目的地に向かわせる前記搬送車である選択搬送車を選択する場合に、それぞれの前記搬送車の位置から前記目的地までの距離とそれぞれの前記搬送車の走行条件とに応じて定まるコストが最も小さい前記搬送車を前記選択搬送車として選択するように構成され、
前記選択搬送車の候補には、前記折り返し走行を行うことで前記目的地に到達する前記搬送車が含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送設備。
【請求項6】
前記コストは、前記搬送車が後退する場合の方が、前記搬送車が前進する場合よりも大きく設定される、請求項5に記載の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に沿って走行する搬送車と、走行経路に沿って設けられた案内レールと、搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送設備の一例が、国際公開第2022/014116号(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。特許文献1に開示されている搬送設備は、軌道(11)に沿って走行して物品を搬送する走行車(5)と、走行車(5)を制御する走行車コントローラ(3)と、を備えている。走行車コントローラ(3)が備える走行制御部(41)は、搬送指令が発生すると、搬送指令に含まれるステーション(ST)までの走行経路を探索し、当該走行経路に沿って走行車(5)を走行させるように構成されている。
【0003】
特許文献1の搬送設備では、走行制御部(41)は、走行車(5)を一方向に走行させる一方向制御に加えて、走行車(5)を一方向とは逆方向に走行させる折返走行制御を実行するように構成されている。例えば、特許文献1の
図3(A)に示される状況では、走行車(5A)は、現在位置から特定ポイント(SP)まで前進した後、当該特定ポイント(SP)からステーション(ST1)まで後退するように制御される。また、特許文献1の
図5に示される状況では、走行車(5B)は、ステーション(ST2)から特定ポイント(SP)まで後退した後、当該特定ポイント(SP)から前進するように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1の搬送設備では、折返走行制御を実行する場合に、折り返し位置(特許文献1では、特定ポイント)において折り返すように搬送車(特許文献1では、走行車)の走行が制御される。物品の搬送効率の向上の観点から、このような折り返し走行における搬送車の走行距離は、できるだけ短く抑えられることが望ましい。しかしながら、特許文献1にはこの点についての記載はない。
【0006】
そこで、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様として、本開示に係る搬送設備は、走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、前記走行経路には、1つの経路から第1分岐経路と第2分岐経路とに分岐する分岐部があり、前記分岐部には前記案内レールが設けられ、前記分岐部の上流側の区間である分岐上流区間には前記案内レールが設けられておらず、前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、前記第1分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記第2分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、前記制御システムは、前記第1分岐経路にある前記搬送車を後退させた後に前記第2分岐経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1分岐経路での後退中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を前進させる分岐折り返し制御を実行する。
【0008】
分岐部には案内レールが設けられ、分岐上流区間には案内レールが設けられない構成において、第1分岐経路にある搬送車を後退させた後に第2分岐経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合、被案内部の幅方向の位置を第1位置から第2位置へ切り替えるために、第1分岐経路にある搬送車を分岐上流区間まで後退させる必要がある。本構成によれば、搬送車に上記の折り返し走行を行わせる場合に、第1分岐経路での後退中、第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部が制御される。そのため、搬送車が分岐上流区間に進入して案内レールが存在しなくなると、被案内部は第1位置から第2位置へ移動する。すなわち、第1分岐経路での後退中に第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部を制御するという比較的簡素な構成で、分岐上流区間における下流側の端部の近傍で、被案内部を第2位置へ移動させることができる。そして、このように被案内部が第2位置に移動したことを条件として、搬送車が前進するように制御される。従って、搬送車が走行する向きが後退から前進に切り替わる位置を、分岐上流区間における下流側の端部の近傍の位置としやすく、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい。このように、本構成によれば、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備を実現することができる。
【0009】
別の1つの態様として、本開示に係る搬送設備は、走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、前記走行経路には、第1合流経路と第2合流経路とが1つの経路に合流する合流部があり、前記合流部には前記案内レールが設けられ、前記合流部の下流側の区間である合流下流区間には前記案内レールが設けられておらず、前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、前記搬送車が前記第1合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記搬送車が前記第2合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、前記制御システムは、前記第1合流経路にある前記搬送車を前進させた後に前記第2合流経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1合流経路での前進中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を後退させる合流折り返し制御を実行する。
【0010】
合流部には案内レールが設けられ、合流下流区間には案内レールが設けられない構成において、第1合流経路にある搬送車を前進させた後に第2合流経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合、被案内部の幅方向の位置を第1位置から第2位置へ切り替えるために、第1合流経路にある搬送車を合流下流区間まで前進させる必要がある。本構成によれば、搬送車に上記の折り返し走行を行わせる場合に、第1合流経路での前進中、第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部が制御される。そのため、搬送車が合流下流区間に進入して案内レールが存在しなくなると、被案内部は第1位置から第2位置へ移動する。すなわち、第1合流経路での前進中に第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部を制御するという比較的簡素な構成で、合流下流区間における上流側の端部の近傍で、被案内部を第2位置へ移動させることができる。そして、このように被案内部が第2位置に移動したことを条件として、搬送車が後退するように制御される。従って、搬送車が走行する向きが前進から後退に切り替わる位置を、合流下流区間における上流側の端部の近傍の位置としやすく、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい。このように、本構成によれば、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備を実現することができる。
【0011】
搬送設備の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
搬送設備の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に簡略化して示すように、搬送設備100は、走行経路30に沿って走行する搬送車1と、走行経路30に沿って設けられた案内レール7(
図2参照)と、搬送車1を制御する制御システム2と、を備えている。本実施形態では、搬送設備100は、複数の搬送車1を備えている。走行経路30は、搬送車1の走行する経路の全体を意味し、走行経路30は、複数の経路(部分経路)の集合により構成される。
【0014】
制御システム2の各機能は、例えば、演算処理装置等のハードウェアと、当該ハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により実現される。制御システム2は、その全てが搬送車1に設けられていてもよく、一部が搬送車1に設けられ、一部が外部制御装置(搬送車1の外部に設けられて搬送車1と通信可能な制御装置)に設けられていてもよい。また、制御システム2は、その全てが外部制御装置に設けられていてもよい。ここで、外部制御装置は、1つの装置ではなく、互いに通信可能な複数の装置の集合であってもよい。
【0015】
搬送車1は、後述する走行駆動部13や案内駆動部20を制御するコントローラ(機器コントローラ)を備えている。制御システム2の少なくとも一部が外部制御装置に設けられる場合、搬送車1が備えるコントローラは、当該外部制御装置からの指令に応じて動作する。また、制御システム2の少なくとも一部が搬送車1に設けられる場合、搬送車1が備えるコントローラが、制御システム2における当該少なくとも一部を構成してもよい。
【0016】
図2に示すように、走行経路30に沿う方向を走行方向Xとし、上下方向Z(鉛直方向)に沿う上下方向視で走行方向Xに直交する方向(ここでは、走行方向Xに直交する水平方向)を幅方向Yとする。
図1に示すように、走行経路30の各部には順方向Fが設定されている。順方向Fの反対方向を逆方向R(
図2参照)として、搬送車1は、基本的に、走行経路30を順方向Fに走行するが、後述する折り返し走行を行う場合には、走行経路30を逆方向Rに走行する。すなわち、搬送車1は、走行経路30を順方向Fに走行する前進と、走行経路30を逆方向Rに走行する後退(後進)と、を行うことができるように構成されている。
【0017】
図2に示すように、走行経路30に沿って順方向Fへ向かう側を下流側X1とし、走行経路30に沿って逆方向Rへ向かう側を上流側X2とする。走行方向Xは、搬送車1の前後方向と言い換え、下流側X1は、搬送車1の前方側と言い換え、上流側X2は、搬送車1の後方側と言い換えることができる。また、幅方向Yの一方側(ここでは、順方向Fを向いて右側)を幅方向第1側Y1とし、幅方向Yの他方側(ここでは、順方向Fを向いて左側)を幅方向第2側Y2とする。
【0018】
搬送車1は、走行経路30に沿って走行して物品3(
図2参照)を搬送する。物品3は、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)とされる。搬送車1は、無人搬送車である。走行経路30は、物理的に形成されても仮想的に形成されてもよい。本実施形態では、走行経路30は、走行レール6(ここでは、幅方向Yに間隔を空けて配置された一対の走行レール6)によって物理的に形成される。走行レール6は、例えば、天井から吊り下げ支持される。
【0019】
図2では、走行経路30が天井に沿って形成される場合を想定しているが、走行経路30は、床面等に形成されてもよい。走行経路30が床面に形成される場合、例えば、床面に設置されたレールによって走行経路30が物理的に形成され、或いは、床面に設置された2次元コードやRF(Radio Frequency)タグ等によって走行経路30が仮想的に形成される。なお、床面は、天井から吊り下げ支持された床面であってもよい。
【0020】
図2に示すように、搬送車1は、走行部として第1走行部11を備えている。第1走行部11は、走行レール6の走行面(ここでは、上側Z1を向く面)を転動する走行輪14と、走行輪14を回転させる走行駆動部13(例えば、サーボモータ等の電動モータ)と、を備えている。走行輪14が走行駆動部13により回転駆動されることで、第1走行部11が走行レール6に沿って走行する。本実施形態では、搬送車1は、第1走行部11に対して上流側X2に、第2走行部12を更に備えている。第2走行部12は、第1走行部11と同様に構成されており、走行輪14が走行駆動部13により回転駆動されることで、走行レール6に沿って走行する。
【0021】
搬送車1は、第1走行部11に連結された本体部10を備えている。物品3は、本体部10に収容された状態で、搬送車1によって搬送される。本実施形態では、本体部10は、第1走行部11に対して下側Z2に配置された状態で、第1走行部11に支持されている。本実施形態では、本体部10は、第1走行部11及び第2走行部12の双方に連結されており、第1走行部11及び第2走行部12に対して下側Z2に配置された状態で、第1走行部11及び第2走行部12に支持されている。
【0022】
図2に示す例では、搬送車1は、当該搬送車1に対して下流側X1に存在する他の搬送車1を検知する衝突防止センサ15を備えている。衝突防止センサ15が他の搬送車1を検知した場合には、当該衝突防止センサ15が搭載された搬送車1は、減速或いは停止する等して当該他の搬送車1との衝突を回避する。
【0023】
図2に示すように、本実施形態では、走行経路30における複数箇所に、2次元コードやRFタグ等の情報保持体8が設置されている。情報保持体8は、例えば、後述するステーション、分岐待機位置P1(
図3参照)、合流待機位置P3(
図4参照)等の、搬送車1の停止位置となり得る箇所や、後述する退出判定位置P5(
図4参照)等の、搬送車1の制御のための判定基準となる箇所に設置される。情報保持体8は、当該情報保持体8が設置された位置の情報である位置情報を保持している。搬送車1は、情報保持体8が保持する位置情報を読み取る読取装置16を備え、読取装置16により読み取った位置情報に基づいて自身の現在位置を認識する。搬送車1は、例えば、読取装置16に読み取られた位置情報と、読取装置16が位置情報を読み取ってからの走行距離とに基づき、自身の現在位置を認識する。搬送車1の走行距離は、例えば、ロータリエンコーダを用いて計測される。なお、搬送車1が、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の測位装置の出力に基づき、自身の現在位置を認識する構成とすることもできる。
【0024】
制御システム2は、複数の搬送車1のそれぞれの現在位置を把握している。本実施形態では、上述したように搬送車1が自身の現在位置を認識するように構成されており、制御システム2は、搬送車1の現在位置の情報を各搬送車1から取得することで、複数の搬送車1のそれぞれの現在位置を把握する。
【0025】
走行経路30上には複数のステーションが設定されており、搬送車1は、ステーションにおいて、当該ステーションに設けられた物品支持部との間で物品3を移載する。搬送車1の動作には、走行経路30に沿って走行する走行動作と、ステーションにおいて物品支持部から物品3を受け取る動作と、ステーションにおいて物品3を物品支持部に降ろす動作とが含まれる。搬送車1は、搬送元のステーションまで走行して当該ステーションにおいて物品3を受け取った後、搬送先のステーションまで走行して当該ステーションにおいて物品3を降ろす。
【0026】
物品支持部は、例えば、物品3(或いは物品3に収容された収容物)を処理対象とする処理装置4(
図1参照)のロードポート、物品3を保管する保管装置5(
図1参照)の入出庫ポート、物品3を一時的に保管する不図示の保管棚等とされる。物品支持部は、例えば、ステーションにおいて走行経路30の真下に配置される。
【0027】
図2に示すように、走行経路30における一部の区間に、案内レール7が設けられている。本実施形態では、案内レール7は、走行レール6に対して上側Z1に配置されている。また、本実施形態では、案内レール7は、上下方向視で、幅方向Yに間隔を空けて配置された一対の走行レール6の幅方向Yの間に配置されている。
【0028】
搬送車1は、案内レール7に対して幅方向Yのいずれかの側から接触することで案内レール7に案内される被案内部と、被案内部を幅方向Yに移動させる案内駆動部20(例えば、ソレノイドや電動モータ)と、を備えている。案内駆動部20による被案内部の幅方向Yの移動は、例えば、被案内部のみを幅方向Yに駆動することによって行われ、或いは、被案内部を支持する支持部と共に被案内部を幅方向Yに駆動することによって行われる。
【0029】
本実施形態では、第1走行部11は、上下方向Zに沿う軸心回りに回転する(ここでは、遊転する)第1案内輪21を被案内部として備えており、第1走行部11に設けられた案内駆動部20が、第1案内輪21を幅方向Yに移動させる。
図2に示す例では、第1走行部11は、走行方向Xに並ぶ2つの第1案内輪21を備えており、案内駆動部20は、これら2つの第1案内輪21を支持する支持部を幅方向Yに移動させることで、これら2つの第1案内輪21を幅方向Yに移動させる。
【0030】
また、本実施形態では、第2走行部12は、上下方向Zに沿う軸心回りに回転する(ここでは、遊転する)第2案内輪22を被案内部として備えており、第2走行部12に設けられた案内駆動部20が、第2案内輪22を幅方向Yに移動させる。
図2に示す例では、第2走行部12は、走行方向Xに並ぶ2つの第2案内輪22を備えており、案内駆動部20は、これら2つの第2案内輪22を支持する支持部を幅方向Yに移動させることで、これら2つの第2案内輪22を幅方向Yに移動させる。以下では、第1案内輪21と第2案内輪22とに共通の事項について述べる場合には、これらを区別せずに案内輪21,22と記載する。本実施形態では、第1案内輪21及び第2案内輪22のそれぞれが「被案内部」に相当する。
【0031】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、走行経路30には、1つの経路から第1分岐経路41と第2分岐経路42とに分岐する分岐部31がある。分岐部31において右側及び左側のいずれの側に分岐する経路を第1分岐経路41としてもよい。
図5及び
図6に示す例では、分岐部31において右側に分岐する経路を第1分岐経路41とし、分岐部31において左側に分岐する経路を第2分岐経路42としている。
【0032】
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、走行経路30には、第1合流経路51と第2合流経路52とが1つの経路に合流する合流部32がある。合流部32において右側及び左側のいずれの側から合流する経路を第1合流経路51としてもよい。
図7及び
図8に示す例では、合流部32において左側から合流する経路を第1合流経路51とし、合流部32において右側から合流する経路を第2合流経路52としている。
【0033】
上述した順方向Fは、分岐部31が分岐する経路となる走行方向であり(
図5、
図6参照)、合流部32が合流する経路となる走行方向である(
図7、
図8参照)。また、上述した逆方向Rは、分岐部31が合流する経路となる走行方向であり、合流部32が分岐する経路となる走行方向である。
図2に示すように、順方向Fに基づき、逆方向R、走行方向X、下流側X1、上流側X2、幅方向Y、幅方向第1側Y1(ここでは、右側)、幅方向第2側Y2(ここでは、左側)が定まるため、
図5~
図8では、これらの図示を省略して順方向Fのみ示している。
【0034】
図5及び
図6に示すように、分岐部31には案内レール7が設けられ、分岐部31の上流側X2の区間である分岐上流区間C1には案内レール7が設けられていない。第1分岐経路41及び第2分岐経路42のそれぞれにおける分岐部31の下流側X1の区間にも案内レール7は設けられていない。案内レール7は、下流側X1に向かって第1分岐経路41に沿う部分と第2分岐経路42に沿う部分とに分岐するように、分岐部31に設けられている。
【0035】
図7及び
図8に示すように、合流部32には案内レール7が設けられ、合流部32の下流側X1の区間である合流下流区間C2には案内レール7が設けられていない。第1合流経路51及び第2合流経路52のそれぞれにおける合流部32の上流側X2の区間にも案内レール7は設けられていない。案内レール7は、上流側X2に向かって第1合流経路51に沿う部分と第2合流経路52に沿う部分とに分岐するように、合流部32に設けられている。
【0036】
分岐部31において搬送車1が第1分岐経路41及び第2分岐経路42のいずれに進むかは、分岐部31に進入する際の案内輪21,22の幅方向Yの位置に応じて定まる。具体的には、分岐部31に進入する際の案内輪21,22の位置が、案内レール7に対して幅方向第1側Y1から接触する位置である場合には、搬送車1は幅方向第1側Y1の分岐経路(
図5に示す分岐部31では、第1分岐経路41)に進む。また、分岐部31に進入する際の案内輪21,22の位置が、案内レール7に対して幅方向第2側Y2から接触する位置である場合には、搬送車1は幅方向第2側Y2の分岐経路(
図5に示す分岐部31では、第2分岐経路42)に進む。案内駆動部20は、搬送車1が分岐部31に進入する前に、進行先の分岐経路に応じた幅方向Yの位置に案内輪21,22を移動させる。
【0037】
合流部32に進入する際の案内輪21,22の幅方向Yの位置は、搬送車1が第1合流経路51及び第2合流経路52のいずれから合流部32に進入するかに応じて定まる。具体的には、幅方向第1側Y1から合流する合流経路(
図7に示す合流部32では、第2合流経路52)から搬送車1が合流部32に進入する場合には、案内輪21,22は、案内レール7に対して幅方向第1側Y1から接触する位置に移動される。また、幅方向第2側Y2から合流する合流経路(
図7に示す合流部32では、第1合流経路51)から搬送車1が合流部32に進入する場合には、案内輪21,22は、案内レール7に対して幅方向第2側Y2から接触する位置に移動される。案内駆動部20は、搬送車1が合流部32に進入する前に、走行する合流経路に応じた幅方向Yの位置に案内輪21,22を移動させる。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、搬送車1が分岐部31において右側の分岐経路(ここでは、第1分岐経路41)に進む場合には左側の走行レール6が途切れ、搬送車1が分岐部31において左側の分岐経路(ここでは、第2分岐経路42)に進む場合には右側の走行レール6が途切れる。また、
図7に示すように、本実施形態では、搬送車1が右側の合流経路(ここでは、第2合流経路52)から合流部32に進入する場合には左側の走行レール6が途切れ、搬送車1が左側の合流経路(ここでは、第1合流経路51)から合流部32に進入する場合には右側の走行レール6が途切れる。
【0039】
搬送車1は、幅方向Yのいずれか一方側の走行輪14のみが走行レール6に接触する状態で、上記のように右側及び左側のいずれかの走行レール6が途切れる箇所を走行する。案内輪21,22は、幅方向Yにおける走行レール6が途切れない側から案内レール7に対して接触する位置に配置される。
【0040】
具体的には、搬送車1は、幅方向第1側Y1(ここでは、右側)の走行輪14が走行レール6に接触し、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第1側Y1から接触する位置に配置された状態で、幅方向第2側Y2(ここでは、左側)の走行レール6が途切れる箇所を走行する。この状態では、搬送車1の荷重は、幅方向第1側Y1の走行輪14が接触する走行レール6と、案内レール7とで受け止められる。また、搬送車1は、幅方向第2側Y2(ここでは、左側)の走行輪14が走行レール6に接触し、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第2側Y2から接触する位置に配置された状態で、幅方向第1側Y1(ここでは、右側)の走行レール6が途切れる箇所を走行する。この状態では、搬送車1の荷重は、幅方向第2側Y2の走行輪14が接触する走行レール6と、案内レール7とで受け止められる。
【0041】
本実施形態では、搬送車1は、案内輪21,22の幅方向Yの移動を検知する移動検知部を備えている。制御システム2は、移動検知部による案内輪21,22の幅方向Yの移動の検知結果を取得することで、後述する分岐折り返し制御や合流折り返し制御において、案内輪21,22が幅方向Yに移動したことを検知する。
【0042】
移動検知部は、例えば、案内輪21,22又は案内輪21,22を支持する支持部の幅方向Yの位置を検出することで、案内輪21,22の幅方向Yの移動を検知するように構成される。移動検知部が、案内輪21,22又は案内輪21,22を支持する支持部の動きを検出することで、案内輪21,22の幅方向Yの移動を検知するように構成されてもよい。この場合、移動検知部は、例えば、案内駆動部20を構成するモータのトルク変化を検出することで、案内輪21,22又は案内輪21,22を支持する支持部の動きを検出する。
【0043】
本実施形態では、搬送車1は、移動検知部として、第1案内輪21の幅方向Yの移動を検知する第1移動検知部21aと、第2案内輪22の幅方向Yの移動を検知する第2移動検知部22aと、を備えている。第1移動検知部21aは第1走行部11に設けられ、第2移動検知部22aは第2走行部12に設けられている。
【0044】
図5及び
図6に示すように、第1分岐経路41へ進入するための案内輪21,22の幅方向Yの位置を第1位置D1とし、第2分岐経路42へ進入するための案内輪21,22の幅方向Yの位置を第2位置D2とする。
図5及び
図6に示す分岐部31においては、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第1側Y1(ここでは、右側)から接触する位置が、第1位置D1であり、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第2側Y2(ここでは、左側)から接触する位置が、第2位置D2である。
【0045】
制御システム2は、第1分岐経路41にある搬送車1を後退させた後に第2分岐経路42に進入させる折り返し走行(以下、「分岐折り返し走行」という)を当該搬送車1に行わせる場合に、分岐折り返し制御を実行する。分岐折り返し制御は、第1分岐経路41での後退中に、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御し、案内輪21,22が第2位置D2に移動したことを条件として搬送車1を前進させる制御である。本実施形態では、分岐折り返し制御では、第1案内輪21及び第2案内輪22の双方が第2位置D2に移動したことを条件として、搬送車1を前進させる。ここで、「条件として前進させる」とは、その条件を満たした場合に前進させる構成と、その条件に加えて他の条件も満たした場合に前進させる構成との双方を含む。本実施形態では、制御システム2は、案内輪21,22(ここでは、第1案内輪21及び第2案内輪22の双方)が第2位置D2に移動した場合に搬送車1を前進させる。
【0046】
分岐折り返し走行を搬送車1に行わせる場合に、当該搬送車1が第1分岐経路41における案内レール7が設けられた区間よりも下流側X1に位置する場合には、制御システム2は、案内レール7が設けられた区間まで案内輪21,22が第1位置D1に位置する状態の搬送車1が後退した後、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御する。また、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御する処理は、案内輪21,22が第2位置D2に移動するまで継続される。
【0047】
図5及び
図6を参照して分岐折り返し制御について具体的に説明する。
図5は、搬送車1が第1分岐経路41において後退動作MRを行っている様子を示し、
図6は、
図5よりも後の時点において、搬送車1が前進動作MFを行って第2分岐経路42に進入する様子を示している。
図5及び
図6において案内輪21,22の内部に示す矢印は、案内輪21,22が案内駆動部20によって当該矢印の向きに付勢されていることを表している。また、
図5に示す分岐折り返し位置P2は、分岐折り返し走行中の搬送車1の案内輪21,22が第1位置D1から第2位置D2に移動する位置である。分岐折り返し位置P2において、第1分岐経路41の上流側X2の端部と第2分岐経路42の上流側X2の端部とが接続されている。
【0048】
図5に示すように、第1分岐経路41における案内レール7が設けられた区間を搬送車1が後退している間は、案内輪21,22が案内レール7に対して第1位置D1の側から接触している。そのため、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20が制御されても、案内輪21,22は、第2位置D2の側へ付勢されるものの、第2位置D2の側へは移動しない。なお、案内駆動部20によって案内輪21,22に付与される第2位置D2の側への付勢力は、案内輪21,22が案内レール7に対して第1位置D1の側から接触している状態では、案内輪21,22が第2位置D2の側へ移動しない大きさとされる。
【0049】
そして、
図6に示すように案内レール7が設けられていない分岐上流区間C1まで搬送車1が後退すると、言い換えれば、分岐折り返し位置P2まで搬送車1が後退すると、案内駆動部20によって案内輪21,22に付与される第2位置D2の側への付勢力によって、案内輪21,22が第2位置D2に移動する。制御システム2は、このように案内輪21,22が第2位置D2に移動したことを条件として、搬送車1を前進させる。本実施形態では、分岐折り返し位置P2において、搬送車1が走行する向きが後退から前進に切り替えられる。そして、搬送車1は、案内輪21,22が第2位置D2に位置する状態で前進するため、
図6に示すように、搬送車1は第2分岐経路42に進入する。
【0050】
図7及び
図8に示すように、搬送車1が第1合流経路51を走行中の案内輪21,22の幅方向Yの位置を第1位置D1とし、搬送車1が第2合流経路52を走行中の案内輪21,22の幅方向Yの位置を第2位置D2とする。
図7及び
図8に示す合流部32においては、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第2側Y2(ここでは、左側)から接触する位置が、第1位置D1であり、案内輪21,22が案内レール7に対して幅方向第1側Y1(ここでは、右側)から接触する位置が、第2位置D2である。
【0051】
制御システム2は、第1合流経路51にある搬送車1を前進させた後に第2合流経路52に進入させる折り返し走行(以下、「合流折り返し走行」という)を当該搬送車1に行わせる場合に、合流折り返し制御を実行する。合流折り返し制御は、第1合流経路51での前進中に、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御し、案内輪21,22が第2位置D2に移動したことを条件として搬送車1を後退させる制御である。ここで、「条件として後退させる」とは、その条件を満たした場合に後退させる構成と、その条件に加えて他の条件も満たした場合に後退させる構成との双方を含む。本実施形態では、制御システム2は、案内輪21,22(ここでは、第1案内輪21及び第2案内輪22の双方)が第2位置D2に移動した場合に搬送車1を後退させる。
【0052】
合流折り返し走行を搬送車1に行わせる場合に、当該搬送車1が第1合流経路51における案内レール7が設けられた区間よりも上流側X2に位置する場合には、制御システム2は、案内レール7が設けられた区間まで案内輪21,22が第1位置D1に位置する状態の搬送車1が前進した後、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御する。また、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20を制御する処理は、案内輪21,22が第2位置D2に移動するまで継続される。
【0053】
図7及び
図8を参照して合流折り返し制御について具体的に説明する。
図7は、搬送車1が第1合流経路51において前進動作MFを行っている様子を示し、
図8は、
図7よりも後の時点において、搬送車1が後退動作MRを行って第2合流経路52に進入する様子を示している。
図7及び
図8において案内輪21,22の内部に示す矢印は、案内輪21,22が案内駆動部20によって当該矢印の向きに付勢されていることを表している。また、
図7に示す合流折り返し位置P4は、合流折り返し走行中の搬送車1の案内輪21,22が第1位置D1から第2位置D2に移動する位置である。合流折り返し位置P4において、第1合流経路51の下流側X1の端部と第2合流経路52の下流側X1の端部とが接続されている。
【0054】
図7に示すように、第1合流経路51における案内レール7が設けられた区間を搬送車1が前進している間は、案内輪21,22が案内レール7に対して第1位置D1の側から接触している。そのため、第1位置D1にある案内輪21,22を第2位置D2の側へ移動させるように案内駆動部20が制御されても、案内輪21,22は、第2位置D2の側へ付勢されるものの、第2位置D2の側へは移動しない。なお、案内駆動部20によって案内輪21,22に付与される第2位置D2の側への付勢力は、案内輪21,22が案内レール7に対して第1位置D1の側から接触している状態では、案内輪21,22が第2位置D2の側へ移動しない大きさとされる。
【0055】
そして、
図8に示すように案内レール7が設けられていない合流下流区間C2まで搬送車1が前進すると、言い換えれば、合流折り返し位置P4まで搬送車1が前進すると、案内駆動部20によって案内輪21,22に付与される第2位置D2の側への付勢力によって、案内輪21,22が第2位置D2に移動する。制御システム2は、このように案内輪21,22が第2位置D2に移動したことを条件として、搬送車1を後退させる。本実施形態では、合流折り返し位置P4において、搬送車1が走行する向きが前進から後退に切り替えられる。そして、搬送車1は、案内輪21,22が第2位置D2に位置する状態で後退するため、
図8に示すように、搬送車1は第2合流経路52に進入する。
【0056】
図3は、
図1における一部のエリアAを拡大して示す図である。
図3には、第1搬送車1A、第2搬送車1B、及び第3搬送車1Cの3つの搬送車1が示されている。
図3は、第1搬送車1Aが、分岐部31において分岐折り返し走行を行う状況を示している。
図3では、第1搬送車1Aは、現在位置から分岐折り返し位置P2まで後退する第1走行動作M1、分岐折り返し位置P2から後述する目的地P0まで前進する第2走行動作M2、及び、目的地P0から前進する第3走行動作M3を、記載の順に行う。なお、第1搬送車1Aは、現在位置から目的地P0まで前進する第4走行動作M4を行うことで、前進のみで目的地P0まで走行することもできる。
【0057】
図3や後に参照する
図4では、搬送車1が前進する走行動作を実線の矢印で示し、搬送車1が後退する走行動作を破線の矢印で示している。また、
図3及び
図4では、分岐部31及び合流部32を含むエリアを分岐合流エリアBとしている。制御システム2は、例えば、分岐合流エリアB内に2台以上の搬送車1が同時に存在しないように複数の搬送車1を制御することで、分岐合流エリアBにおいて搬送車1同士が干渉しないようにする。
【0058】
制御システム2は、複数の搬送車1のうちの1つ(
図3では、第1搬送車1A)が分岐部31にいる場合に、当該分岐部31に進入しようとする他の搬送車1(
図3では、第3搬送車1C)を予め定められた分岐待機位置P1で待機させる分岐待機制御を実行する。そして、制御システム2は、分岐待機位置P1を、分岐折り返し位置P2にある搬送車1よりも上流側X2であって、分岐待機位置P1にある搬送車1が、分岐折り返し位置P2にきた搬送車1と干渉しない位置に設定する。本実施形態では、制御システム2は、分岐折り返し位置P2にきた搬送車1と干渉しない位置を予め分岐待機位置P1として設定しており、分岐待機制御を実行する場合には、予め設定された分岐待機位置P1に、分岐待機制御の対象となる搬送車1(
図3では、第3搬送車1C)を待機させる。なお、搬送車1が分岐部31にいるか否かの判定における分岐部31の範囲は、当該分岐部31を含む任意の範囲(例えば、当該分岐部31を含む分岐合流エリアB)とすることができ、分岐待機位置P1は、分岐部31の範囲の外側に設定される。
【0059】
図4は、
図3と同様に、
図1における一部のエリアAを拡大して示す図である。
図4には、第1搬送車1A、第2搬送車1B、第3搬送車1C、及び第4搬送車1Dの4つの搬送車1が示されている。
図4は、第1搬送車1Aが、分岐部31において分岐折り返し走行を行った後、合流部32において合流折り返し走行を行う状況を示している。
図4では、第1搬送車1Aは、現在位置から分岐折り返し位置P2まで後退する第5走行動作M5、分岐折り返し位置P2から合流折り返し位置P4まで前進する第6走行動作M6、合流折り返し位置P4から目的地P0まで後退する第7走行動作M7、及び、目的地P0から前進する第8走行動作M8を、記載の順に行う。なお、第1搬送車1Aは、現在位置から目的地P0まで前進する第9走行動作M9を行うことで、前進のみで目的地P0まで走行することもできる。
【0060】
制御システム2は、複数の搬送車1のうちの1つ(
図4では、第1搬送車1A)が合流部32にいる場合に、合流部32に進入しようとする他の搬送車1(
図4では、第3搬送車1C及び第4搬送車1D)を、予め定められた合流待機位置P3で待機させる合流待機制御を実行する。本実施形態では、制御システム2は、合流部32よりも上流側X2の位置(
図4では、2つの位置)を予め合流待機位置P3として設定しており、合流待機制御を実行する場合には、予め設定された合流待機位置P3に、合流待機制御の対象となる搬送車1(
図3では、第3搬送車1C及び第4搬送車1D)を待機させる。そして、制御システム2は、合流部32にいる搬送車1が合流部32から出たと判定する位置である退出判定位置P5を、合流折り返し位置P4よりも下流側X1に設定する。本実施形態では、制御システム2は、合流折り返し位置P4よりも下流側X1の位置を予め退出判定位置P5として設定している。なお、搬送車1が合流部32にいるか否かの判定における合流部32の範囲は、当該合流部32を含む任意の範囲(例えば、当該合流部32を含む分岐合流エリアB)とすることができ、合流待機位置P3及び退出判定位置P5は、合流部32の範囲の外側に設定される。
【0061】
制御システム2は、目的地P0が設定された場合に、複数の搬送車1の中から当該目的地P0に向かわせる搬送車1である選択搬送車を選択する。以下では、物品3の搬送元のステーションが目的地P0とされる場合を考える。この場合、目的地P0となる搬送元のステーションは、例えば、搬送元のステーションから搬送先のステーションへ物品3を搬送する搬送タスクで指定される。搬送タスクは、制御システム2によって生成され、或いは、制御システム2と通信可能な他の装置(例えば、制御システム2の上位の制御装置)によって生成される。
【0062】
制御システム2は、物品3を搬送していない状態の搬送車1(以下、「空搬送車」という)を、選択搬送車の候補とする。なお、物品3を搬送している状態の搬送車1(以下、「実搬送車」という)を選択搬送車の候補に含めることもできる。この場合において、実搬送車が選択搬送車として選択された場合、当該実搬送車は、搬送中の物品3を搬送先のステーションで降ろした後、目的地P0に向かう。
【0063】
本実施形態では、制御システム2は、複数の搬送車1の中から選択搬送車(目的地P0に向かわせる搬送車1)を選択する場合に、それぞれの搬送車1の位置から目的地P0までの距離とそれぞれの搬送車1の走行条件とに応じて定まるコスト(経路コスト)が最も小さい搬送車1を選択搬送車として選択するように構成されている。経路コストは、搬送車1が目的地P0まで走行するのに要する走行所要時間の予測値が短くなるに従って小さくなるように導出される。搬送車1のそれぞれの経路コストは、例えば、ダイクストラ法によって導出される。経路コストが最も小さい搬送車1を選択搬送車として選択することで、目的地P0に搬送車1を迅速に到達させることが可能となる。
【0064】
搬送車1の走行条件には、例えば、搬送車1の走行方向(前進と後退のいずれであるか)、経路の混雑度、経路の構造(例えば、直線区間、カーブ区間、分岐部31を通る分岐区間、合流部32を通る合流区間のいずれであるか)、経路上のステーション数、搬送車1の状態(例えば、空搬送車と実搬送車のいずれであるか)の少なくともいずれかが含まれる。例えば、搬送車1のメンテナンスのために搬送車1を天井側に形成された走行経路30から地上側に降ろすためのメンテナンスリフタが接続される区間では、メンテナンスリフタに向かう搬送車1やメンテナンスリフタから走行経路30に戻される搬送車1の存在によって、当該区間の混雑度が高くなり得る。
【0065】
経路コストは、搬送車1の位置(現在位置)から目的地P0までの距離が長くなるに従って大きくなるように導出される。また、経路コストは、搬送車1の走行条件が搬送車1の走行所要時間が長くなる条件である場合に大きくなるように導出される。例えば、搬送車1の走行条件に経路の混雑度が含まれる場合、経路コストは、経路の混雑度が高くなるに従って大きくなるように導出される。
【0066】
本実施形態では、搬送車1の位置(現在位置)から目的地P0までの経路に含まれる全ての区間の区間コストを加算した値を、経路コストとする。各区間の区間コストは、当該区間の距離に応じたコストである基本コストに、当該区間における搬送車1の走行条件に応じて定まる補正係数を乗算した値とすることができる。基本コストは、当該基本コストが設定される区間が長くなるに従って大きくなるように設定される。補正係数は、当該補正係数が設定される区間における搬送車1の走行条件が、搬送車1が当該区間を通過するのに要する通過所要時間が長くなる条件である場合に大きくなるように設定される。詳細は省略するが、走行経路30を、ノードと、ノード間を接続するリンクとを用いて表すことができる。ノードは、分岐部31や合流部32等の特定の地点に対応し、リンクは、特定の地点間を接続する経路部分に対応する。この場合、上記の区間コストを、リンクに対応する区間のコスト(リンクコスト)とすることができる。
【0067】
本実施形態では、コスト(経路コスト)は、搬送車1が後退する場合の方が、搬送車1が前進する場合よりも大きく設定される。具体的には、本実施形態では、上記の補正係数を、搬送車1が後退する場合の方が、搬送車1が前進する場合よりも大きくなるように設定することで、搬送車1が後退する場合の方が、搬送車1が前進する場合よりも経路コストが大きく設定されるようにしている。そのため、本実施形態では、他の条件が同じである場合には(例えば、走行距離が同じである場合には)、前進のみで目的地P0に到達する搬送車1が優先的に選択搬送車として選択される。例えば、上述した衝突防止センサ15(
図2参照)が搬送車1の下流側X1(前方側)にのみ設けられる場合、搬送車1が後退する場合の走行速度を、搬送車1が前進する場合の走行速度よりも低くする必要が生じ得る。このような場合に、搬送車1が後退する場合の方が、搬送車1が前進する場合よりも経路コストが大きく設定されるようにして、前進のみで目的地P0に到達する搬送車1が優先的に選択搬送車として選択される構成とすると好適である。
【0068】
本実施形態では、選択搬送車の候補には、折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1が含まれる。本実施形態では、折り返し走行には、分岐折り返し走行と合流折り返し走行との双方が含まれる。よって、選択搬送車の候補には、分岐折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1、合流折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1、及び、分岐折り返し走行及び合流折り返し走行の双方を行うことで目的地P0に到達する搬送車1が含まれる。
【0069】
このように選択搬送車の候補に折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1を含めることで、目的地P0まで迅速に搬送車1を到達させることができる可能性を高めることができる。例えば
図3に示す状況において、第1搬送車1Aと第2搬送車1Bとが空搬送車であるとする。この場合に、仮に選択搬送車の候補に折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1を含めない場合、第2搬送車1Bが選択搬送車として選択される。一方、選択搬送車の候補に折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1を含める場合には、第1搬送車1Aが分岐折り返し走行(第1走行動作M1及び第2走行動作M2)を行って目的地P0に到達する場合の経路コストが、第2搬送車1Bが目的地P0まで前進する場合の経路コストよりも小さい場合に、第1搬送車1Aが選択搬送車として選択される。この場合、第2搬送車1Bが選択搬送車として選択される場合に比べて迅速に、目的地P0に搬送車1(ここでは、第1搬送車1A)を到達させることが可能となる。
【0070】
また、例えば
図4に示す状況において、第1搬送車1Aと第2搬送車1Bとが空搬送車であるとする。この場合に、仮に選択搬送車の候補に折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1を含めない場合、第2搬送車1Bが選択搬送車として選択される。一方、選択搬送車の候補に折り返し走行を行うことで目的地P0に到達する搬送車1を含める場合には、第1搬送車1Aが分岐折り返し走行(第5走行動作M5、第6走行動作M6、及び第7走行動作M7)を行って目的地P0に到達する場合の経路コストが、第2搬送車1Bが目的地P0まで前進する場合の経路コストよりも小さい場合に、第1搬送車1Aが選択搬送車として選択される。この場合、第2搬送車1Bが選択搬送車として選択される場合に比べて迅速に、目的地P0に搬送車1(ここでは、第1搬送車1A)を到達させることが可能となる。
【0071】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、制御システム2が、分岐折り返し走行と合流折り返し走行との双方を搬送車1に行わせる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、制御システム2が、分岐折り返し走行と合流折り返し走行とのいずれか一方のみを搬送車1に行わせる構成とすることもできる。
【0072】
(2)上記の実施形態では、搬送車1が後退する場合の方が、搬送車1が前進する場合よりもコスト(経路コスト)が大きく設定される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、搬送車1が前進する場合と搬送車1が後退する場合とでコストに差を設けない構成とすることもできる。
【0073】
(3)上記の実施形態では、搬送車1が第1案内輪21及び第2案内輪22を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、搬送車1が第1案内輪21のみを備える構成(例えば、搬送車1が第2走行部12を備えない構成)とすることもできる。
【0074】
(4)上記の実施形態では、第1走行部11が、被案内部として第1案内輪21を備え、第2走行部12が、被案内部として第2案内輪22を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1走行部11や第2走行部12が、案内輪とは異なる形態の被案内部(例えば、案内レール7に摺動して案内される部材)を備える構成とすることもできる。
【0075】
(5)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0076】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した搬送設備の概要について説明する。
【0077】
1つの態様として、搬送設備は、走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、前記走行経路には、1つの経路から第1分岐経路と第2分岐経路とに分岐する分岐部があり、前記分岐部には前記案内レールが設けられ、前記分岐部の上流側の区間である分岐上流区間には前記案内レールが設けられておらず、前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、前記第1分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記第2分岐経路へ進入するための前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、前記制御システムは、前記第1分岐経路にある前記搬送車を後退させた後に前記第2分岐経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1分岐経路での後退中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を前進させる分岐折り返し制御を実行する。
【0078】
分岐部には案内レールが設けられ、分岐上流区間には案内レールが設けられない構成において、第1分岐経路にある搬送車を後退させた後に第2分岐経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合、被案内部の幅方向の位置を第1位置から第2位置へ切り替えるために、第1分岐経路にある搬送車を分岐上流区間まで後退させる必要がある。本構成によれば、搬送車に上記の折り返し走行を行わせる場合に、第1分岐経路での後退中、第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部が制御される。そのため、搬送車が分岐上流区間に進入して案内レールが存在しなくなると、被案内部は第1位置から第2位置へ移動する。すなわち、第1分岐経路での後退中に第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部を制御するという比較的簡素な構成で、分岐上流区間における下流側の端部の近傍で、被案内部を第2位置へ移動させることができる。そして、このように被案内部が第2位置に移動したことを条件として、搬送車が前進するように制御される。従って、搬送車が走行する向きが後退から前進に切り替わる位置を、分岐上流区間における下流側の端部の近傍の位置としやすく、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい。このように、本構成によれば、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備を実現することができる。
【0079】
ここで、複数の前記搬送車を備え、前記制御システムは、複数の前記搬送車のうちの1つが前記分岐部にいる場合に、前記分岐部に進入しようとする他の前記搬送車を、予め定められた分岐待機位置で待機させる分岐待機制御を実行し、前記折り返し走行中の前記搬送車の前記被案内部が前記第1位置から前記第2位置に移動する位置を分岐折り返し位置として、前記制御システムは、前記分岐待機位置を、前記分岐折り返し位置にある前記搬送車よりも上流側であって、前記分岐待機位置にある前記搬送車が、前記分岐折り返し位置にきた前記搬送車と干渉しない位置に設定すると好適である。
【0080】
本構成によれば、分岐待機位置に待機している搬送車が妨げとなって、分岐部にある搬送車が折り返し走行を行うことができなくなる事態が生じ難いようにできる。
【0081】
別の1つの態様として、搬送設備は、走行経路に沿って走行する搬送車と、前記走行経路に沿って設けられた案内レールと、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた搬送設備であって、前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向として、前記搬送車は、前記案内レールに対して前記幅方向のいずれかの側から接触することで前記案内レールに案内される被案内部と、前記被案内部を前記幅方向に移動させる案内駆動部と、を備え、前記走行経路には、第1合流経路と第2合流経路とが1つの経路に合流する合流部があり、前記合流部には前記案内レールが設けられ、前記合流部の下流側の区間である合流下流区間には前記案内レールが設けられておらず、前記搬送車は、前記走行経路を順方向に走行する前進と、前記走行経路を逆方向に走行する後退と、を行うことができるように構成され、前記搬送車が前記第1合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第1位置とし、前記搬送車が前記第2合流経路を走行中の前記被案内部の前記幅方向の位置を第2位置として、前記制御システムは、前記第1合流経路にある前記搬送車を前進させた後に前記第2合流経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合に、前記第1合流経路での前進中に、前記第1位置にある前記被案内部を前記第2位置の側へ移動させるように前記案内駆動部を制御し、前記被案内部が前記第2位置に移動したことを条件として前記搬送車を後退させる合流折り返し制御を実行する。
【0082】
合流部には案内レールが設けられ、合流下流区間には案内レールが設けられない構成において、第1合流経路にある搬送車を前進させた後に第2合流経路に進入させる折り返し走行を行わせる場合、被案内部の幅方向の位置を第1位置から第2位置へ切り替えるために、第1合流経路にある搬送車を合流下流区間まで前進させる必要がある。本構成によれば、搬送車に上記の折り返し走行を行わせる場合に、第1合流経路での前進中、第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部が制御される。そのため、搬送車が合流下流区間に進入して案内レールが存在しなくなると、被案内部は第1位置から第2位置へ移動する。すなわち、第1合流経路での前進中に第1位置にある被案内部を第2位置の側へ移動させるように案内駆動部を制御するという比較的簡素な構成で、合流下流区間における上流側の端部の近傍で、被案内部を第2位置へ移動させることができる。そして、このように被案内部が第2位置に移動したことを条件として、搬送車が後退するように制御される。従って、搬送車が走行する向きが前進から後退に切り替わる位置を、合流下流区間における上流側の端部の近傍の位置としやすく、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい。このように、本構成によれば、折り返し走行における搬送車の走行距離を短く抑えやすい搬送設備を実現することができる。
【0083】
ここで、複数の前記搬送車を備え、前記制御システムは、複数の前記搬送車のうちの1つが前記合流部にいる場合に、前記合流部に進入しようとする他の前記搬送車を、予め定められた合流待機位置で待機させる合流待機制御を実行し、前記折り返し走行中の前記搬送車の前記被案内部が前記第1位置から前記第2位置に移動する位置を合流折り返し位置として、前記制御システムは、前記合流部にいる前記搬送車が前記合流部から出たと判定する位置である退出判定位置を、前記合流折り返し位置よりも下流側に設定すると好適である。
【0084】
本構成によれば、合流部にある搬送車(以下、「対象搬送車」という)が折り返し走行を行っている途中で、対象搬送車が合流部から退出したと判定されて他の搬送車が合流部に進入し、当該他の搬送車が妨げとなって、合流部にある対象搬送車が折り返し走行を行うことができなくなる事態が生じ難いようにできる。
【0085】
上記の各構成の搬送設備において、前記制御システムは、複数の前記搬送車の中から目的地に向かわせる前記搬送車である選択搬送車を選択する場合に、それぞれの前記搬送車の位置から前記目的地までの距離とそれぞれの前記搬送車の走行条件とに応じて定まるコストが最も小さい前記搬送車を前記選択搬送車として選択するように構成され、前記選択搬送車の候補には、前記折り返し走行を行うことで前記目的地に到達する前記搬送車が含まれると好適である。
【0086】
本構成によれば、複数の搬送車の中から目的地に向かわせる選択搬送車を選択する場合に、それぞれの搬送車の位置から目的地までの距離とそれぞれの搬送車の走行条件とに応じた適切な搬送車を、選択搬送車として選択することができる。また、本構成によれば、折り返し走行を行うことで目的地に到達できる可能性がある搬送車も、選択搬送車の候補となる。従って、折り返し走行を行う搬送車を選択搬送車の候補から除外する場合に比べて、目的地まで迅速に搬送車を到達させることができる可能性を高めることができる。
【0087】
上記のように、前記選択搬送車の候補に、前記折り返し走行を行うことで前記目的地に到達する前記搬送車が含まれる構成において、前記コストは、前記搬送車が後退する場合の方が、前記搬送車が前進する場合よりも大きく設定されると好適である。
【0088】
本構成によれば、搬送車が後退する場合のコストが、搬送車が前進する場合のコストよりも大きく設定されるため、例えば目的地までの距離が同じであれば、前進して目的地に到達する搬送車を優先的に選択搬送車として選択することができる。従って、搬送車が後退するための他の搬送車の待機や回避等の必要性を低減し、搬送設備全体での搬送効率を高めやすい。
【0089】
本開示に係る搬送設備は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0090】
1:搬送車
2:制御システム
7:案内レール
20:案内駆動部
21:第1案内輪(被案内部)
22:第2案内輪(被案内部)
30:走行経路
31:分岐部
32:合流部
41:第1分岐経路
42:第2分岐経路
51:第1合流経路
52:第2合流経路
100:搬送設備
C1:分岐上流区間
C2:合流下流区間
D1:第1位置
D2:第2位置
F:順方向
P0:目的地
P1:分岐待機位置
P2:分岐折り返し位置
P3:合流待機位置
P4:合流折り返し位置
P5:退出判定位置
R:逆方向
X:走行方向
X1:下流側
X2:上流側
Y:幅方向
Z:上下方向