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特開2024-166686斜角電磁超音波探触子とこれを用いたき裂探傷装置と方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166686
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】斜角電磁超音波探触子とこれを用いたき裂探傷装置と方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082966
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】常田 萌斗
(72)【発明者】
【氏名】大森 征一
(72)【発明者】
【氏名】鳩 昌洋
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA07
2G047BB02
2G047BC07
2G047CA02
2G047GC01
2G047GC04
2G047GF18
(57)【要約】
【課題】リフトオフを最小限に維持でき、表面の検査位置から斜め位置にあるき裂に対し超音波を集束させて照射することができ、これにより微細なき裂を検出することができる斜角電磁超音波探触子とこれを用いたき裂探傷手段を提供する。
【解決手段】斜角電磁超音波探触子10が、被検材1に静磁界Hを発生させるための磁石12と、磁石と被検材の間に位置し被検材に近接可能であり同一平面上に配置された半円弧状コイル14と、を備える。半円弧状コイル14は、円弧角が90°以上、180°未満の同心かつ複数の円弧部分16と、円弧部分の両端部を半径方向に交互に接続する複数の接続部分17とを有し、円弧部分16の半径方向の軸間距離ΔRが、内方から外方に順に狭くなっている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検材に超音波を発生させる送信用探触子、又は、前記被検材のき裂で反射した前記超音波の反射エコーを検出する受信用探触子であって、
前記被検材に静磁界を発生させるための磁石と、該磁石と前記被検材の間に位置し前記被検材に近接可能であり同一平面上に配置された半円弧状コイルと、を備え、
前記半円弧状コイルは、円弧角が90°以上、180°未満の同心かつ複数の円弧部分と、前記円弧部分の両端部を半径方向に交互に接続する複数の接続部分とを有し、
前記円弧部分の半径方向の軸間距離が、内方から外方に順に狭くなっている、斜角電磁超音波探触子。
【請求項2】
前記半径方向に隣接する少なくとも1対の前記円弧部分は、それぞれ前記同一平面上に配置され前記半径方向に間隔を隔てた複数のループ線からなり、
前記接続部分は、複数の前記ループ線で構成される前記円弧部分のそれぞれを同一方向に電流が流れるように前記ループ線の両端部を前記半径方向に交互に接続する複数の中間接続線を有し、
これにより、少なくとも1対の前記円弧部分の間で、前記電流がループ状に流れる、請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子。
【請求項3】
前記送信用探触子は、前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させる、請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子。
【請求項4】
前記受信用探触子は、前記超音波の前記反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子。
【請求項5】
互いに連結された前記送信用探触子と前記受信用探触子とを備え、
前記送信用探触子の前記円弧部分は、円弧の中心である送信用中心と、平面視で前記送信用中心を通る中心線である送信用中心線とを有し、
前記受信用探触子の前記円弧部分は、円弧の中心である受信用中心と、平面視で前記受信用中心を通る中心線である受信用中心線とを有し、
前記送信用中心と前記受信用中心が一致又は近接して位置し、前記送信用中心線と前記受信用中心線が一致又は60°未満の鋭角で交叉する、請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子。
【請求項6】
請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子を複数備え、
第1の前記斜角電磁超音波探触子は、前記送信用探触子であり、
第2の前記斜角電磁超音波探触子は、前記受信用探触子であり、
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させ、
前記超音波の反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、き裂探傷装置。
【請求項7】
請求項5に記載の斜角電磁超音波探触子を備え、
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させ、
前記超音波の反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、き裂探傷装置。
【請求項8】
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流す探触子制御器と、
前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出するデータ解析装置と、を備える、請求項6又は7に記載のき裂探傷装置。
【請求項9】
請求項1に記載の斜角電磁超音波探触子を複数用い、
第1の前記斜角電磁超音波探触子は、前記送信用探触子であり、
第2の前記斜角電磁超音波探触子は、前記受信用探触子であり、
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させ、
前記超音波の反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、き裂探傷方法。
【請求項10】
前記送信用探触子の前記円弧部分はその中心である送信用中心を有し、
前記受信用探触子の前記円弧部分はその中心である受信用中心を有し、
前記被検材の前記き裂に対し、前記送信用探触子と前記受信用探触子を同一線上に位置決めし、かつ前記送信用中心と前記受信用中心を前記き裂に近接して位置決めする、請求項9に記載のき裂探傷方法。
【請求項11】
請求項5に記載の斜角電磁超音波探触子を用い、
前記被検材の前記き裂に対し、前記送信用中心と前記受信用中心を前記き裂に近接して位置決めする、き裂探傷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なき裂を検出するための斜角電磁超音波探触子とこれを用いたき裂探傷手段に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁超音波探触子(Electromagnetic Acoustic Transducer,以下「EMAT」)とは、磁石とコイルを組み合わせた探触子である。また、EMATを用いたき裂探傷法は、磁石によるバイアス磁場とコイルに印加する高周波電流により発生する渦電流との相互作用により、検査対象の表層部に直接超音波を発生させる非破壊検査法である。
EMATは超音波の発生に電磁波を用いることから、試験体に非接触でき裂探傷が可能であり、接触媒質(カプラント)を必要としない。また、EMATは電磁波によって試験体表面に直接超音波を発生させるため、超音波の周波数が探触子の固有振動数に依存しない。そのため、EMATはピエゾ素子を用いる超音波探触子(以下「ピエゾ探触子」)と比較して広い周波数域での使用が可能である。
【0003】
種々のEMATのうち、斜角電磁超音波探触子(以下、「斜角EMAT」)は、例えば蛇行コイルの上に永久磁石を載せ、蛇行コイルに交流電流を流すことで、横波(SV波)を試料内部に斜め方向に放射するEMATである。
斜角EMATは、例えば特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1の「欠陥位置推定法」は、斜角EMATの超音波指向性を有する範囲について、各点毎に受信波形を検出し、その信号レベルを用いて、送信及び受信の分割した微少面全ての組合せについて加算する処理を行い、値の大きい範囲を欠陥とする。
【0005】
特許文献2の「電磁超音波探傷装置」は、静磁界発生用の磁石と発信コイルと受信コイルとを備える。磁石は、被検材に静磁界を発生させる。発信コイルは、パルス電流を流すことにより被検材内に渦電流を発生させる。静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力が誘起され、被検材の表面を加振して斜角の超音波が発生する。受信コイルは、超音波の探傷部に対する反射エコーを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-305245号公報
【特許文献2】特開平11-248688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
橋梁などの大型構造物の溶接部(例えば、図17に示す鋼床版のUリブ溶接部)は、安全性の確保及び信頼性の向上のために、完成後に定期的に非破壊検査をすることが求められる。
しかしかかる大型構造物の溶接部の総面積は大きく、かつその表面は厚い塗膜に覆われている。そのため、ピエゾ素子を用いる従来の超音波探触子(ピエゾ探触子)は、塗膜の除去と接触媒質(カプラント)を必要とするため能率が低く適用が困難である。
これに対し上述した斜角EMATは、試験体表面から探触子が離れた状態でき裂の非破壊検査ができるため、塗膜の除去とカプラントが不要であり、能率良く検査ができる。なお、この場合の、試験体表面と探触子との間隔を「リフトオフ」と呼ぶ。
【0008】
しかし、大型構造物の溶接部に発生するき裂は、その表面(検査位置)から斜めに深い位置に発生することが予想される。そのため、上述した斜角EMATを用いた場合でも、き裂で反射する超音波(「反射エコー」)が微弱であり、微細なき裂の検出が困難であった。
【0009】
例えば、特許文献1の「欠陥位置推定法」では、斜角EMATの超音波指向性を有する範囲について、各点毎に、受信波形を検出し、その信号レベルを用いるので、各点毎の信号レベルが微弱であり、微細なき裂の検出が困難である。
【0010】
また、特許文献2の「電磁超音波探傷装置」では、磁石と発信コイルにより、被検材の表面を加振して斜角の超音波を発生し、受信コイルにより超音波の探傷部に対する反射エコーを検出する。しかし、発生する斜角の超音波は、集束することなくき裂に照射されるので、微弱である。また受信コイルが発信コイルと磁石の間に位置するので、受信コイルのリフトオフが発信コイルより大きくなる。そのため、受信コイルで検出する超音波がさらに微弱であり、微細なき裂の検出が困難である。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、リフトオフを小さく維持でき、検査位置から斜め位置にあるき裂に対し超音波を集束させて照射することができ、これにより微細なき裂を検出することができる斜角電磁超音波探触子とこれを用いたき裂探傷手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、被検材に超音波を発生させる送信用探触子、又は、前記被検材のき裂で反射した前記超音波の反射エコーを検出する受信用探触子であって、
前記被検材に静磁界を発生させるための磁石と、該磁石と前記被検材の間に位置し前記被検材に近接可能であり同一平面上に配置された半円弧状コイルと、を備え、
前記半円弧状コイルは、円弧角が90°以上、180°未満の同心かつ複数の円弧部分と、前記円弧部分の両端部を半径方向に交互に接続する複数の接続部分とを有し、
前記円弧部分の半径方向の軸間距離が、内方から外方に順に狭くなっている、斜角電磁超音波探触子が提供される。
【0013】
また本発明によれば、上記の斜角電磁超音波探触子を複数備え、
第1の前記斜角電磁超音波探触子は、前記送信用探触子であり、
第2の前記斜角電磁超音波探触子は、前記受信用探触子であり、
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させ、
前記超音波の反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、き裂探傷装置が提供される。
【0014】
さらに本発明によれば、上記の斜角電磁超音波探触子を複数用い、
第1の前記斜角電磁超音波探触子は、前記送信用探触子であり、
第2の前記斜角電磁超音波探触子は、前記受信用探触子であり、
前記送信用探触子の前記半円弧状コイルに高周波電流を流すことにより前記被検材に発生した静磁界と渦電流との作用によりローレンツ力を誘起させ、前記被検材の表面を加振することで斜角の前記超音波を発生させ、かつ前記超音波を前記円弧部分の中心に集束させ、
前記超音波の反射エコーによる前記被検材の表面の振動と静磁界から前記受信用探触子の前記半円弧状コイルに発生する電圧変化又は電流変化を検出する、き裂探傷方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の構成によれば、斜角電磁超音波探触子(斜角EMAT)が、送信用探触子又は受信用探触子であり、磁石と被検材の間に位置し被検材に近接可能であり同一平面上に配置された半円弧状コイルを備える。これにより、被検材と半円弧状コイルの間隔であるリフトオフを最小限に維持できる。
【0016】
また、複数の円弧部分の半径方向の軸間距離が、内方から外方に順に狭くなっているので、半円弧状コイルに高周波電流を流して被検材の表面を加振することで発生する超音波(SV波)を一線上に集束させることができる。
さらに、半円弧状コイルの複数の円弧部分は、円弧角が90°以上、180°未満の同心であるので、発生した超音波を円弧部分の中心の真下の収束点に集束させて照射することができ、これにより微細なき裂を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の斜角電磁超音波探触子の第1実施形態図である。
図2】斜角EMATを用いたき裂探傷装置の全体構成図である。
図3】探触子制御器によるパルス波形の模式図である。
図4】斜角EMATを用いたき裂探傷方法の全体フロー図である。
図5】実施例1の試験方法の模式図である。
図6】テスト1で用いた半円弧状コイルの説明図である。
図7】テスト2で用いた半円弧状コイルの説明図である。
図8】テスト3で用いた半円弧状コイルの説明図である。
図9】テスト4で用いた21弧の半円弧状コイルの説明図である。
図10】テスト1の試験結果を示す図である。
図11】テスト2の試験結果を示す図である。
図12】テスト3の試験結果を示す図である。
図13】テスト4の試験結果を示す図である。
図14】V型配置(A)とI型配置(B)の説明図である。
図15】探触子配置の試験結果を示す受信波形である。
図16】本発明の斜角電磁超音波探触子の第2実施形態図である。
図17】被検材である鋼床版のUリブ溶接部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の斜角電磁超音波探触子10の第1実施形態図であり、(A)は斜角電磁超音波探触子10が被検材1の表面1aに位置する際の平面図、(B)は(A)のB-B線における断面図である。
なお、図1(A)は、図1(B)を上方から見た図である。
【0020】
本発明の斜角電磁超音波探触子10(以下、「斜角EMAT10」)は、被検材1の内部に超音波2を発生させる送信用探触子10A、又は、被検材内のき裂4で反射した超音波2の反射エコー3を検出する受信用探触子10Bである。
すなわち、送信用探触子10Aと受信用探触子10Bは、詳細寸法を除き、基本的に同一の構造を有する。
以下、送信用探触子10Aと受信用探触子10Bを区別が不要な場合に、単に、斜角EMAT10と呼ぶ。
【0021】
図1(A)(B)に示すように、斜角EMAT10は、磁石12と半円弧状コイル14とを備える。
【0022】
磁石12は、被検材1の内部に静磁界Hを発生させるための磁石である。この例で、磁石12は、N極とS極を有する永久磁石12aであり、N極が被検材1の表面付近に位置し、S極が被検材1の表面から離れた位置に位置する。磁石12は、好ましくはネオジム磁石である。
なお、この例で、磁石12は単一の永久磁石12aであるが、本発明はこの例に限定されず、複数の永久磁石12aで構成してもよい。また、磁石12は永久磁石に限定されず、電磁石であってもよい。
【0023】
図1(B)に示すように、半円弧状コイル14は、同一平面上に配置されており、磁石12と被検材1の間に位置し被検材1に近接可能に構成されている。
【0024】
なお、この例で斜角EMAT10を適用する被検材1の表面1aは平面である。また、磁石12の表面(この図で下面)も被検材1の表面1aに対し平行に位置決め可能な平面である。
さらに半円弧状コイル14も被検材1の表面1aに近接可能な同一平面上に配置されている。
【0025】
また、図1(A)に示すように、半円弧状コイル14は、複数の円弧部分16と複数の接続部分17とを有する。
複数の円弧部分16は、円弧角が90°以上、180°未満の同心の導線からなる。また、円弧部分16は、半径方向に軸間距離ΔRを隔てている。
また、図1(B)に示すように、円弧部分16の軸間距離ΔRは、内方から外方に順に狭くなっている。
【0026】
複数の接続部分17は、複数の円弧部分16の両端部を半径方向に交互に接続する。
なお、円弧部分16と接続部分17は、一体かつ同一の単一導線であり、その端部14a,14bは、図示しない高周波電源に接続される。すなわち、半円弧状コイル14は全体として1本の導線(例えばエナメル線)からなる。
【0027】
図1において、斜角EMAT10が送信用探触子10Aである場合、送信用探触子10Aは、半円弧状コイル14に高周波電流を流すことにより被検材内に渦電流5を発生する。
この渦電流5と磁石12による静磁界Hとの作用によりローレンツ力6が誘起され、ローレンツ力6により被検材1の表面1aが加振されることで斜角の超音波2が発生する。
【0028】
また、複数の円弧部分16の軸間距離ΔRが、内方から外方に順に狭くなっているので、半円弧状コイル14に高周波電流を流して被検材1の表面を加振することで発生する超音波2(SV波)を一線上に集束させることができる。
この超音波2が集束する線は、図1において、円弧部分16の中心線CLに直交し、被検材1の表面1aに平行に位置する。
さらに、半円弧状コイル14の複数の円弧部分16が、円弧角が90°以上、180°未満の同心であるので、発生した超音波2を円弧部分16の中心Oの図で真下の収束点Oaに集束させて照射することができる。
【0029】
図1において、斜角EMAT10が受信用探触子10Bである場合、受信用探触子10Bは、超音波2の反射エコー3による被検材1の表面1aの振動と静磁界Hから半円弧状コイル14に発生する電圧変化又は電流変化を検出する。
【0030】
図2は、斜角EMAT10を用いたき裂探傷装置100の全体構成図である。
この図において、き裂探傷装置100は、複数の斜角EMAT10、探触子制御器20、及びデータ解析装置30を備える。
【0031】
複数(この例では2台)のうち、第1の斜角EMAT10は送信用探触子10Aであり、第2の斜角EMAT10は受信用探触子10Bである。
この例で、平面視において、被検材内のき裂4から送信用探触子10Aと受信用探触子10Bがその順で同一線上に位置する。
以下、「平面視」とは、被検材1の表面1aをその外側から鉛直方向に見る状態を意味する。また、「同一線上」とは、図16に示すように、送信用探触子10Aの送信用中心線CL1と受信用探触子10Bが一致又は60°未満の鋭角で交叉する場合を含む。
【0032】
また、送信用探触子10Aの円弧部分16はその中心である送信用中心O1を有し、受信用探触子10Bの円弧部分16はその中心である受信用中心O2を有する。
さらに受信用探触子10Bの円弧部分16は、送信用探触子10Aの円弧部分16よりも半径が大きく設定され、送信用中心O1と受信用中心O2が一致又は近接して位置するようになっている。
【0033】
探触子制御器20は、送信用探触子10Aの半円弧状コイル14に高周波電流を流す。
図3は、探触子制御器20による入力波形の模式図である。この例で、入力波形は、振幅が2000V、1波長が0.5μsの正弦波であり、5波長が連続するパルス電圧である。なお、入力波形はこの例に限定されず、矩形パルス波であってもよい。
【0034】
図2において、データ解析装置30は、例えばコンピュータ(PC)であり、受信用探触子10Bの半円弧状コイル14に発生する電圧変化又は電流変化を検出する。
また、データ解析装置30は、図示しない画像表示装置と画像処理装置とを備え、受信用探触子10Bの半円弧状コイル14に発生する電圧変化(又は電流変化)を表示すると共に、好ましくは、き裂4の有無、及びその大きさを検出し出力する。
【0035】
上述したき裂探傷装置100において、探触子制御器20により、送信用探触子10Aの半円弧状コイル14に高周波電流を流し、送信用探触子10Aにより、斜角の超音波2を発生させ、かつ超音波2を円弧部分16の送信用中心O1に集束させる。
また、データ解析装置30により、超音波2の反射エコー3による被検材1の表面の振動と静磁界Hから受信用探触子10Bの半円弧状コイル14に発生する電圧変化又は電流変化を検出する。
【0036】
図4は、斜角EMAT10を用いたき裂探傷方法の全体フロー図である。
本発明のき裂探傷方法は、S1~S4の各ステップ(工程)を有する。
【0037】
準備ステップS1では、2台の斜角EMAT10(送信用探触子10Aと受信用探触子10B)を準備する。
【0038】
位置決めステップS2では、被検材1のき裂4に対し、平面視で送信用探触子10Aと受信用探触子10Bを順に同一線上に位置決めする。また同時に、送信用中心O1と受信用中心O2をき裂4に一致又は近接して位置決めする。
なお、「同一線上」とは、後述するI型配置(図14参照)を意味するが、上述したように送信用中心線CL1と受信用中心線CL2が一致又は60°未満の鋭角で交叉する状態であればよい。
また、同一線上の順は、被検材1のき裂4から受信用探触子10B、送信用探触子10Aの順であってもよい。
【0039】
送受信ステップS3では、探触子制御器20により送信用探触子10Aの半円弧状コイル14に高周波電流を流す。これにより被検材1に発生した静磁界Hと渦電流との作用によりローレンツ力6を誘起させ、被検材1の表面1aを加振することで斜角の超音波2を発生させる。また同時に超音波2を円弧部分16の中心O1に集束させる。
また、並行してデータ解析装置30により、超音波2の反射エコー3による被検材1の表面1aの振動と静磁界Hから受信用探触子10Bの半円弧状コイル14に発生する電圧変化又は電流変化を検出する。
【0040】
解析ステップS4では、データ解析装置30により、受信用探触子10Bの半円弧状コイル14に発生する電圧変化(又は電流変化)を表示すると共に、好ましくは、き裂4の有無、及びその大きさを検出し出力する。
【0041】
上述したように、平面視で被検材内のき裂4に対し送信用探触子10Aと受信用探触子10Bが同一線上に位置し、かつ送信用中心O1と受信用中心O2がき裂4に近接して位置するので、以下の効果が得られる。
【0042】
(1)送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの両方の半円弧状コイル14を被検材1の表面に近接することができるので、両方のリフトオフの影響を最小限に抑えることができる。
(2)平面視で送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの両方が、き裂4に正対しているので、き裂4で反射された反射エコー3のみが受信用探触子10Bで検出される。すなわち、送信用探触子10Aによる超音波2の大部分はき裂以外の箇所で反対側に飛散する。これにより、送信用探触子10Aの超音波2による受信用探触子10Bのノイズ(雑音)を低減することができる。
【0043】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例0044】
図1(A)に示した斜角EMAT10は、半円弧状コイル14を構成する導線(例えばエナメル線)の線径、高さ方向巻き数、平面方向巻き数、弧の数によって性能が大きく変化する可能性がある。
【0045】
そこで、半円弧状コイル14の最適条件を求めるために、表1に示すテスト1~4を実施した。
【0046】
【表1】
【0047】
図5は、実施例1の試験方法の模式図であり、(A)は送信用探触子10Aの試験方法、(B)は受信用探触子10Bの試験方法である。
テスト1~4では、ピエゾ素子を用いた斜角探触子(「ピエゾ探触子8」)を(A)では受信用、(B)では送信用に用いた。
また、この試験では、被検材1として板厚12mmの鋼板を用い、その裏面からの反射エコー3を検出した。
【0048】
(テスト1:線径)
図6は、テスト1で用いた半円弧状コイル14の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。なお、符号7は台座である。
台座7は、磁界により磁化しない非磁性体であるのがよい。また、台座7の厚さは、必要とするリフトオフよりも小さく、例えば0.5~1mmであるのがよい。
【0049】
この例で、半円弧状コイル14は、内側から10の円弧部分16を有する。図中の1~10の数字は、円弧部分16の内側からの順番を位置している。
以下、必要な場合に、内側からi番目の円弧部分16を「円弧部分16-i」とする。
【0050】
またこの例で、10の円弧部分16の両端部は内方から半径方向に交互に接続部分17により接続されている。
なお、この図において、接続部分17は直線で示しているが、導線の折れ曲がりを防ぐため図1(A)と同様に円弧であるのがよい。
【0051】
テスト1では、半円弧状コイル14を構成する導線(エナメル線)の線径が、0.05,0.1,0.2,0.32mmの場合を試験した。
なお、表1に示すように、高さ方向巻き数は1、平面方向巻き数は1、弧の数は10とした。
【0052】
図10は、テスト1の試験結果を示す図である。この図において、横軸は線径(mm)、左側の縦軸は図5(A)の送信用探触子10Aによる送信電圧(V)、右側の縦軸は図5(B)の受信用探触子10Bによる受信電圧(V)である。
また、図中の白丸は送信用探触子10Aによる送信電圧(V)、黒丸は受信用探触子10Bによる受信電圧(V)である。
なお、線径0.05mmの受信用探触子10Bは試験中に断線したためそのデータは欠落している。
【0053】
図10の試験結果から、受信電圧(V)は線径が0.1,0.2,0.3mmの範囲で差がほとんどなく、送信電圧(V)は線径が0.05,0.1,0.2,0.3mmの範囲で0.1mmが最も大きいことがわかる。
この結果から、0.1~0.3mmの線径が適用可能であり、特に0.1mmの線径が最適と考えられる。
【0054】
(テスト2:高さ方向巻き数)
図7は、テスト2で用いた半円弧状コイル14の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。
この例で、平面形状は、図6と同じであり、その内側から1~4の円弧部分16のみを示している。
【0055】
図7(A)(B)に示すように、この例では半円弧状コイル14を構成する導線を円弧部分16-1,16-2の間、及び円弧部分16-3,16-4の間でそれぞれ高さ方向にループ状に3段を重ねている。
図示しないその他の円弧部分16も同様である。
【0056】
テスト2では、半円弧状コイル14を構成する導線(エナメル線)の高さ方向巻き数が、1,5,10段の場合を試験した。
なお、表1に示すように、線径は0.1mm、平面方向巻き数は1、弧の数は10とした。
【0057】
図11は、テスト2の試験結果を示す図である。この図において、横軸は高さ方向巻き数である。その他の左側の縦軸、右側の縦軸、図中の白丸、及び黒丸は図10と同様である。
【0058】
テスト2の結果から、高さ方向巻き数は、1段から5,10段に増やしても送信電圧、受信電圧の両方の効果が小さいことがわかる。
この結果から、段数による効果は少なく、製作の容易性から高さ方向巻き数は1段が最適と考えられる。
【0059】
(テスト3:平面方向巻き数)
図8は、テスト3で用いた半円弧状コイル14の説明図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B矢視図である。
この例で、平面形状は、図6と同じであり、その内側から1~4の円弧部分16のみを示している。
【0060】
図8(A)(B)に示すように、この例では半円弧状コイル14を構成する導線を円弧部分16-1,16-2の間、円弧部分16-3,16-4の間でそれぞれ平面方向に3弧重ねている。なお、図の明確化のため線の太さを変えて示しているが、実際には同一である。
また図示しないその他の円弧部分16も同様である。
【0061】
すなわちこの例で、半径方向に隣接する1対の円弧部分16-1,16-2は、それぞれ同一平面上に配置され半径方向に間隔を隔てた複数(この例で3本)のループ線15a,15b,15cからなる。
【0062】
また接続部分17は、複数の中間接続線17aを有する。
複数の中間接続線17aは、複数のループ線15a,15b,15cで構成される円弧部分16-1,16-2のそれぞれを同一方向に電流が流れるようにループ線15a,15b,15cの両端部を半径方向に交互に接続する。
なお、複数の中間接続線17aは、同一平面上にはなく、互いに干渉しないように立体的に交叉する。
この構成により、1対の円弧部分16-1,16-2の間で、電流がループ状に流れるようになっている。
【0063】
また、この場合、接続部分17の「円弧部分16の両端部を半径方向に交互に接続する機能」は、図中の端部接続線17bが有する。
【0064】
この例で、半径方向に隣接する1対の円弧部分16-3,16-4も同様である。
また、図示しないその他の円弧部分16も同様である。
【0065】
テスト3では、円弧部分16を構成するループ線15の数(すなわち平面方向巻き数)がそれぞれ1,2,3巻きの場合を試験した。
なお、表1に示すように、線径は0.1mm、高さ方向巻き数は1、弧の数は10とした。
【0066】
図12は、テスト3の試験結果を示す図である。この図において、横軸は平面方向巻き数である。平面方向巻き数は、それぞれの円弧部分16のループ数に相当する。
なおループ数(平面方向巻き数)が1の場合、ループ線15と円弧部分16は同一である。
その他の左側の縦軸、右側の縦軸、図中の白丸、及び黒丸は図10と同様である。
【0067】
テスト3の結果から、平面方向巻き数(ループ数)は、1巻から2巻,3巻に増やすほど送信電圧、受信電圧の両方が大きくなることがわかる。
この結果から、ループ数は複数であることが好ましく、この例では3巻が最適と考えられる。
【0068】
(テスト4:弧の数)
テスト4では、円弧部分16の数(以下、「弧の数」)が10弧と21弧の場合を試験した。
なお、表1に示すように、線径は0.1mm、高さ方向巻き数は1、平面方向巻き数は3とした。
【0069】
図9は、テスト4で用いた21弧の半円弧状コイル14の説明図である。なおこの図で、平面方向巻き数は、円弧部分16-1,16-2と円弧部分16-3,16-4のみを図示しているが、その他の円弧部分16も同様である。
また、10弧の半円弧状コイル14は、テスト3で用いたものを使用した。
【0070】
図13は、テスト4の試験結果を示す図である。この図において、横軸は弧の数である。
その他の左側の縦軸、右側の縦軸、図中の白丸、及び黒丸は図10と同様である。
【0071】
テスト4の結果から、円弧部分16の数(弧の数)は、21弧の方が10弧よりも送信電圧、受信電圧の両方が大きくなることがわかる。
この結果から、弧の数は多いほど効果が大きく、この例では21弧が最適と考えられる。
【0072】
上述したテスト1~4の結果から得られた、斜角EMAT10の半円弧状コイル14の最適条件は表2の通りである。
【0073】
【表2】
【実施例0074】
(探触子配置)
送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの探触子配置として、V型配置とI型配置が想定される。
図14は、V型配置(A)とI型配置(B)の説明図である。
被検材1として板厚12mmの鋼板を用い、その端面1bからの反射エコー3を検出した。
【0075】
図15は、探触子配置の試験結果を示す受信波形であり、(A)はV型配置の受信波形、(B)はI型配置の受信波形である。
この試験結果から、送受信効率はI型配置の方がV型配置よりも高いことが明らかとなった。
【0076】
(第2実施形態)
図16は、本発明の斜角EMAT10の第2実施形態図である。
この例で、斜角EMAT10は、互いに連結されI型配置に固定された送信用探触子10Aと受信用探触子10Bとを備える。
また、この例で、送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの半円弧状コイル14の高さ方向巻き数は1、平面方向巻き数は3、弧の数は4であるが、高さ方向巻き数(1)を維持する限りで、線径、平面方向巻き数、及び弧の数は任意である。
【0077】
図16において、送信用探触子10Aの円弧部分16は、円弧の中心である送信用中心O1と、平面視で送信用中心O1を通る中心線である送信用中心線CL1とを有する。
また、受信用探触子10Bの円弧部分16は、円弧の中心である受信用中心O2と、平面視で受信用中心O2を通る中心線である受信用中心線CL2とを有する。
【0078】
また、送信用中心O1と受信用中心O2は、一致又は近接して位置する。なお近接とは、対象とするき裂の最大寸法(例えば、10mm)より短い距離を意味する。また、送信用中心O1と受信用中心O2は平面視で一致することが好ましい。
【0079】
さらに、送信用中心線CL1と受信用中心線CL2は互いに一致又は60°未満の鋭角で交叉する。
【0080】
なお、この図において、送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの磁石12は、一体でも、それぞれに分割されていてもよい。また、この例では、中心Oに近い側に送信用探触子10Aを配置し、遠い側に受信用探触子10Bを配置しているが、その逆であってもよい。
【0081】
第2実施形態の斜角EMAT10の構成により、送信用探触子10Aと受信用探触子10BをI型配置に固定して一体化することができる。
【0082】
また、第2実施形態の斜角EMAT10を用いる場合、図4の準備ステップS1において、1台の斜角EMAT10(互いに連結された送信用探触子10Aと受信用探触子10B)を準備する。
また、位置決めステップS2では、被検材1のき裂4に対し、平面視で送信用中心O1と受信用中心O2をき裂4に近接して位置決めする。
その他の方法は、第1実施形態と同様である。
【0083】
第2実施形態の斜角EMAT10を用いることのより、斜角EMAT10の位置決めが容易となり、能率良く非破壊検査することができる。
【0084】
図17は、被検材1である鋼床版のUリブ溶接部の断面図である。
この図において、5aは鋼床版、5bはUリブ、5cはその溶接部である。また符号9は、鋼床版5aの上面に位置するアスファルトである。
鋼床版5aは、高速道路又は橋梁に用いられ、アスファルト9の上を車両(例えば自動車)が通過する。そのため、溶接部5cに発生するき裂4は、鋼床版5aの下面に本発明の斜角EMAT10を上向きに当接させて、非破壊検査する。
【0085】
上述した本発明の実施形態によれば、斜角電磁超音波探触子(斜角EMAT)10が、送信用探触子10A又は受信用探触子10Bであり、磁石12と被検材1の間に位置し被検材1に近接可能であり同一平面上に配置された半円弧状コイル14を備える。これにより、被検材1と半円弧状コイル14の間隔であるリフトオフを最小限に維持できる。
【0086】
また、複数の円弧部分16の半径方向の間隔(軸間距離ΔR)が、内方から外方に順に狭くなっているので、半円弧状コイル14に高周波電流を流して被検材1の表面を加振することで発生する超音波2(SV波)の放射角度を一線上に集束させることができる。
さらに、半円弧状コイル14の複数の円弧部分16は、円弧角が90°以上、180°未満の同心であるので、発生した超音波2を円弧部分16の中心Oの真下の収束点Oaに集束させて照射することができ、これにより微細なき裂を検出することができる。
【0087】
また、図8に示したように、半径方向に隣接する少なくとも1対の円弧部分16が、それぞれ同一平面上に配置され半径方向に間隔を隔てた複数のループ線15a,15b,15cからなり、少なくとも1対の円弧部分16の間で、電流がループ状に流れる。
この構成により、それぞれの円弧部分16を同一方向に電流が流れるので、円弧部分16の電流が増加し、送受信効率を高めることができる。
【0088】
さらに、実施例2に示したように、送信用探触子10Aと受信用探触子10Bの探触子配置として、I型配置を採用することで、V型配置よりも送受信効率を高めることができる。
【0089】
また、図16に示したように、斜角電磁超音波探触子10を、互いに連結されI型配置に固定された送信用探触子10Aと受信用探触子10Bとすることで、斜角電磁超音波探触子10の位置決めが容易となる。これにより、作業性の悪い鋼床版のUリブ溶接部の検査であっても、単一の斜角電磁超音波探触子10を鋼床版5aの下面に上向きに当接させて、溶接部5cに発生するき裂4を能率良く非破壊検査することができる。
【0090】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0091】
CL1 送信用中心線、CL2 受信用中心線、H 静磁界、
O 円弧部分の中心、O1 送信用中心、O2 受信用中心、
Oa 収束点、ΔR 芯間距離、
1 被検材、1a 表面、1b 端面、2 超音波、3 反射エコー、
4 き裂、5a 鋼床版、5b Uリブ、5c 溶接部、6 ローレンツ力、
7 台座、8 ピエゾ探触子、9 アスファルト、
10 斜角電磁超音波探触子(斜角EMAT)、10A 送信用探触子、
10 受信用探触子B、12 磁石、12a 永久磁石、
14 半円弧状コイル、14a,14b 端部、
15,15a,15b,15c ループ線、16 円弧部分、16a 両端部、
17 接続部分、17a 中間接続線、17b 端部接続線、
20 探触子制御器、30 データ解析装置、100 き裂探傷装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17