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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166687
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】処分構造
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20241122BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20241122BHJP
   B09B 3/10 20220101ALI20241122BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B09B1/00 A ZAB
B09B5/00 Z
B09B3/10
B01D15/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082967
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐麻
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅
【テーマコード(参考)】
4D004
4D017
【Fターム(参考)】
4D004AA50
4D004AB03
4D004BB05
4D004CA47
4D004CC11
4D017AA01
4D017BA13
4D017CA04
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA10
(57)【要約】
【課題】重金属等含有岩石の埋立処分において、重金属等を確実に封じ込めることができる処分構造を提供する。
【解決手段】処分構造10Aは、岩石を埋立処分する処分場の容積内において重金属等含有岩石5を処分する構造体である。処分構造10Aは、重金属等を吸着する吸着材及び第一の粒子材料を含有する吸着層4と、吸着層4の上方に盛られた重金属等含有岩石5と、第二の粒子材料を含有し重金属等含有岩石5の周囲を囲う拡散防止壁6Aと、を備える。吸着層4と拡散防止壁6Aとは互いに接触しており、第二の粒子材料の粒子径は第一の粒子材料の粒子径よりも小さい。汚染水が吸着層4の上面を這うように水平方向へ流れたとしても、拡散防止壁6Aが汚染水の流れを堰き止める。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石を埋立処分する処分場の容積内において重金属等含有岩石を処分する処分構造であって、
重金属等を吸着する吸着材、及び、第一の粒子材料を含有する吸着層と、
前記吸着層の上方に盛られた前記重金属等含有岩石と、
第二の粒子材料を含有し、前記重金属等含有岩石の周囲を囲う拡散防止壁と、を備え、
前記吸着層と前記拡散防止壁とは互いに接触しており、
前記第二の粒子材料の粒子径は、前記第一の粒子材料の粒子径よりも小さい、処分構造。
【請求項2】
前記第一の粒子材料は、山砂である、請求項1記載の処分構造。
【請求項3】
前記第二の粒子材料は、前記岩石を分級して得られた粒子のうち、一定粒度以下のものである、請求項1記載の処分構造。
【請求項4】
前記拡散防止壁は、前記吸着層の上方にあり、
前記拡散防止壁の下端部が前記吸着層の上部に接触している、請求項1記載の処分構造。
【請求項5】
前記拡散防止壁の下端部は、前記吸着層の上面よりも下方に位置しており、
前記拡散防止壁は、前記吸着層の周囲を囲っている、請求項1記載の処分構造。
【請求項6】
前記処分場に処分された前記岩石の上に形成されている、請求項1記載の処分構造。
【請求項7】
岩石を埋立処分する処分場の容積内において重金属等含有岩石を処分する処分構造であって、
重金属等を吸着する吸着材、及び、第一の粒子材料を含有する吸着層と、
前記吸着層の上方に盛られた前記重金属等含有岩石と、
第二の粒子材料又は高分子材料を含有し、前記重金属等含有岩石の周囲を囲う拡散防止壁と、を備え、
前記吸着層と前記拡散防止壁とは互いに接触しており、
前記拡散防止壁の透水係数は、前記吸着層の透水係数よりも小さい、処分構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処分構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事等の掘削で発生する岩石は、再利用先がない場合には埋立処分される。埋立処分の際には岩石に含まれる重金属等の濃度が問題となり(以下、重金属等を比較的多く含む岩石を「重金属等含有岩石」と呼ぶ。)、重金属等の濃度が高いと埋立てに特別な配慮が必要となる。例えば、重金属等が環境中へ拡散することを防止するため、遮水工を備える処分場に岩石を埋立てる。
【0003】
遮水工を備える処分場に埋立てる場合でも、岩石に含まれる重金属等の濃度が特に高い場合は、更なる配慮が必要となる。例えば、岩石から溶出した重金属等を吸着材によって吸着除去することが考えられる。これに関して従来、吸着材と砂等の母材との混合物を敷設して構成した重金属吸着層の上に、重金属等含有岩石又は重金属等を含有する土壌を盛る方法が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、吸着除去効果が高く処理コストが低い重金属吸着層が追求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6199078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重金属等が環境中へ拡散することを防止するためには、重金属吸着層の吸着除去効果を高めることのほか、重金属等が溶出した汚染水の流れにも留意する必要がある。つまり、汚染水の量や重金属吸着層の透水係数等の関係によっては、汚染水が重金属吸着層の表面で水平方向へ流れて重金属吸着層の領域外へ漏れ出すことが考えられる。
【0006】
そこで本発明は、重金属等含有岩石の埋立処分において、重金属等を確実に封じ込めることができる処分構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、岩石を埋立処分する処分場の容積内において重金属等含有岩石を処分する処分構造であって、重金属等を吸着する吸着材、及び、第一の粒子材料を含有する吸着層と、前記吸着層の上方に盛られた前記重金属等含有岩石と、第二の粒子材料を含有し、前記重金属等含有岩石の周囲を囲う拡散防止壁と、を備え、前記吸着層と前記拡散防止壁とは互いに接触しており、前記第二の粒子材料の粒子径は、前記第一の粒子材料の粒子径よりも小さい処分構造を提供する。
【0008】
また本発明は、岩石を埋立処分する処分場の容積内において重金属等含有岩石を処分する処分構造であって、重金属等を吸着する吸着材、及び、第一の粒子材料を含有する吸着層と、前記吸着層の上方に盛られた前記重金属等含有岩石と、第二の粒子材料又は高分子材料を含有し、前記重金属等含有岩石の周囲を囲う拡散防止壁と、を備え、前記吸着層と前記拡散防止壁とは互いに接触しており、前記拡散防止壁の透水係数は、前記吸着層の透水係数よりも小さい処分構造を提供する。
【0009】
この処分構造では、重金属等含有岩石から重金属等が溶出した場合、その汚染水は重力に従って吸着層を通過する。このとき重金属等が吸着材によって吸着除去される。また、汚染水が吸着層の上面を這うように水平方向へ流れたとしても、吸着層よりも粒子径が小さい、又は、透水係数が小さい拡散防止壁が汚染水の流れを堰き止めるので、汚染水が吸着層の領域外へ漏れ出さない。これらの作用によって、重金属等が環境中へ拡散することが防止される。
【0010】
第一の粒子材料は、山砂であってもよい。山砂は一般に透水性が高いながらも小径であるので、吸着材との混合性が優れている。
【0011】
第二の粒子材料は、上記岩石を分級して得られた粒子のうち、一定粒度以下のものであってもよい。当該岩石は元々当該処分場に埋立て予定だったものであるので、外部から持ち込んだ材料によって処分場の埋立容積を圧迫することにならず、都合がよい。
【0012】
本発明の処分構造として、拡散防止壁は、吸着層の上方にあり、拡散防止壁の下端部が吸着層の上部に接触していてもよい。あるいは、拡散防止壁の下端部は、吸着層の上面よりも下方に位置しており、拡散防止壁は吸着層の周囲を囲っていてもよい。いずれの構造であっても本発明の効果が奏される。
【0013】
本発明の処分構造は、処分場に処分された上記岩石の上に形成されていてもよい。処分場の使用を開始した後、埋立てる岩石は重金属等が含まれていない、又は、ごく少量含まれている健全な岩石であるのが通常であるが、突発的に重金属等含有岩石を処分する必要に迫られる場合がある。本発明の処分構造は、埋立処分された健全な岩石の上にも形成することができるので、処分場の容積内においていつでも重金属等含有岩石を受け入れて処分することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重金属等含有岩石の埋立処分において、重金属等を確実に封じ込めることができる処分構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】処分場の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る処分構造とその周辺を含む断面図である。
図3】(a)及び(b)のいずれも、本実施形態の処分構造を構築する手順を示す図である。
図4】本実施形態の処分構造を構築する手順を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る処分構造とその周辺を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、岩石を埋立処分する処分場の容積内において、重金属等含有岩石を処分する処分構造である。重金属等は雨水等によって溶出して環境中に漏れる虞があるが、本発明の処分構造によれば、重金属等を確実に封じ込めることができる。以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
岩石には、重金属等の汚染物質が含有されている場合がある。本実施形態では便宜上、重金属等が環境基準値を超えて溶出し得る岩石を「重金属等含有岩石」と呼び、重金属等を含有していない又は重金属等が環境基準値を超えて溶出する虞の小さい岩石を「健全岩石」と呼んで区別する。ここで「重金属等」とは、土壌汚染対策法における特定有害物質のうち第二種特定有害物質に区分されているカドミウム、六価クロム、シアン、水銀、セレン、鉛、ヒ素、フッ素、ホウ素、及びこれらの化合物を指している。従って、「重金属等」はシアン、ヒ素、フッ素及びホウ素をも含む概念である。
【0018】
図1に示されているとおり、処分場1は、主に再利用先がない岩石3を投入して埋立てる施設であって、地山に掘られた穴の表面に遮水工2を敷設してなるものである。岩石3は、例えばトンネル工事のために掘削されて排出された岩石である。図1では、埋立てられた岩石3の内部に、処分構造10Aが形成された様子を示している。図2に示されているとおり、処分構造10Aは、健全岩石3A上に構築され、周囲を健全岩石3Bで包囲されている。なお、健全岩石3Aと健全岩石3Bとの違いについては後述する。
【0019】
(処分構造)
処分構造10Aは、略水平方向に敷設された吸着層4と、吸着層4の上に盛られた重金属等含有岩石5と、重金属等含有岩石5の周囲を囲うようにして設けられた拡散防止壁6Aとを有する構造体である。拡散防止壁6Aは、その全部が吸着層4の上方に位置しており、拡散防止壁6Aの下端部が吸着層4の上部に接触している。また、拡散防止壁6Aは重金属等含有岩石5の上部は覆っておらず、重金属等含有岩石5は上部から雨水等の水が浸入する恰好となっている。
【0020】
重金属等含有岩石5は、本来処分場1に埋立てることを予定していた岩石よりも重金属等の濃度が高い岩石である。ただし、重金属等含有岩石5の粒子径は、直前まで処分場1に埋立てていた健全岩石3Aの粒子径と比べて大差のないものであり、例えば、1mm~100mmであってもよく、5mm~50mmであってもよい。岩石は球形に限定されず、不定形であってもよい。岩石の粒子径は、例えば楕円状であれば短径部分を指し、篩に通過する目のサイズによって測定される。例えば、50mmの篩には全て通過して5mmの篩には全て残る場合には、当該岩石の粒子径は5~50mmと評価される。
【0021】
吸着層4は、重金属等を吸着する吸着材、及び、第一の粒子材料を含有してなる層である。吸着材は、重金属等を不溶化する不溶化材であり、三価の鉄化合物であってもよく、水と接触して二価の鉄イオンを生じる物質であってもよく、これら二種の混合物であってもよい。また、吸着材は、水と接触してカルシウムイオンを生じる物質(例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウム)を更に含んでいてもよい。吸着材は、吸着層4の透水性の確保、及び、第一の粒子材料との混合性の観点から、粉末状であることが好ましい。
【0022】
三価の鉄化合物は、酸化数が3となっている鉄を含む化合物である。三価の鉄化合物としては、酸化鉄(III)、水酸化鉄(III)、酸化水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)等が挙げられる。重金属類を捕捉して吸着(不溶化)する観点から、水溶性の低いものが好ましい。
【0023】
水と接触して二価の鉄イオンを生じる物質は、水と接触したときに電離又はイオン化して二価の鉄イオンを生じる物質であればよく、水溶性の程度は問わない。当該物質としては、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、水酸化鉄(II)、硫酸鉄(II)、金属鉄等が挙げられる。中でも塩化鉄(II)及び金属鉄が好ましい。当該物質は、土壌との混合性の観点から粉末状であることが好ましく、特に、金属鉄の場合は比表面積が高く反応性が高い還元鉄粉(海綿鉄粉)であることが好ましい。還元鉄粉に表面処理をした特殊鉄粉であることがより好ましい。
【0024】
吸着材の粒子径は、2.0mm以下であってもよく、1.0mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよく、0.1mm以下であってもよい。吸着材は球形に限定されず、不定形であってもよい。吸着材の粒子径は、例えば楕円状であれば短径部分を指し、篩に通過する目のサイズによって測定される。例えば、2mmの篩を全て通過すれば2mm以下と評価される。
【0025】
第一の粒子材料は、礫、砂、シルト、粘土等様々なものを用いることができるが、吸着材との混合性を確保するため、粒子径が吸着材の粒子径と近いものが好ましい。例えば、第一の粒子材料の粒子径は0.05mm~5mmであってもよく、0.075mm~2mmであってもよく、0.1mm~1mmであってもよい。第一の粒子材料は球形に限定されず、不定形であってもよい。第一の粒子材料の粒子径は、例えば楕円状であれば短径部分を指し、篩に通過する目のサイズによって測定される。例えば、5mmの篩には全て通過して0.05mmの篩には全て残る場合には、0.05~5mmと評価される。
【0026】
吸着層4は、水を通過させながらその水に含まれている重金属等を吸着除去するものであるので、所定の透水性を有する。第一の粒子材料の粒子径は、重金属等含有岩石5の粒子径よりも小さくてもよい。また、吸着材と第一の粒子材料との混合物の粒子径は、重金属等含有岩石5の粒子径よりも小さくてもよい。第一の粒子材料の粒子径が重金属等含有岩石5の粒子径よりも小さい場合、又は、吸着材と第一の粒子材料との混合物の粒子径が重金属等含有岩石5の粒子径よりも小さい場合は、透水係数についても吸着層4の透水係数が重金属等含有岩石5の透水係数よりも小さくなる傾向がある。吸着層4の透水係数は、1×10-4cm/s~5×10-2cm/sであってもよく、5×10-4cm/s~1×10-2cm/sであってもよく、1×10-3cm/s~5×10-3cm/sであってもよい。
【0027】
第一の粒子材料は、粒子径と透水性とのバランスに優れるものとして、山砂であることが好ましい。山砂は一般に、透水性が比較的高いながらも小径であるので、吸着材との混合性に優れる。山砂は、処分場1に埋立てる岩石とは異なり、別途外部から持ち込んだものでもよい。あるいは、処分場1に埋立てる岩石(健全岩石3A)を所定の分級点で分級し、その細粒分を第一の粒子材料として用いてもよい。また、当該細粒分を山砂と混合して用いてもよい。
【0028】
拡散防止壁6Aは、重金属等含有岩石5の周囲を囲う壁であり、第二の粒子材料を含有してなっている。第二の粒子材料の粒子径は、第一の粒子材料の粒子径よりも小さい。ここで粒子径とは、不定形である粒子に対して、例えば楕円状であれば短径部分を指し、篩に通過する目のサイズによって測定されるものを指す。また、拡散防止壁6Aの透水係数は吸着層4の透水係数よりも小さい。拡散防止壁6Aの透水係数は、吸着層4の透水係数に対して相対的に1/100~3/4であってもよく、1/30~1/2であっても良く、1/10~1/4であってもよい。
【0029】
第二の粒子材料は、処分場1に埋立てる岩石(健全岩石3A)を所定の分級点で分級して得られた粒子のうち、一定粒度以下のものを用いてもよい。ここで分級点としては、粒子径の大きい方から10%重量分を除去できる点が挙げられ、例えば40mm、10mm、2mmである。
【0030】
(構築方法)
処分構造10Aは、次のようにして構築される。処分場1において健全岩石3Aを埋立てている最中に、重金属等含有岩石5を埋立てる必要が生じたとする。その際、埋立てた健全岩石3Aの表面を均して水平な領域を確保し、そこに吸着材と第一の粒子材料(例えば処分場1の外部から持ち込んだ山砂)とを混合した混合物を敷設して均し、吸着層4を形成する(図3(a))。
【0031】
吸着層4の上に、重金属等含有岩石5を盛り立てる。盛り立ては、吸着層4を形成した領域の全部に盛り立てるのではなく、周縁部分を幾らか残した状態とする(図3(b))。そして、盛り立てた重金属等含有岩石5の側面を覆うようにして第二の粒子材料を盛り立てて、拡散防止壁6Aを形成する。このとき、拡散防止壁6Aの下端部が、重金属等含有岩石5を盛り立てるときに残しておいた吸着層4の領域に接触するように第二の粒子材料を盛り立てる(図4)。これにより処分構造10Aが完成する。
【0032】
処分構造10Aが完成した後、処分構造10Aの周囲を健全岩石3Bで埋立てることが好ましい。健全岩石3Bは、健全岩石3Aを所定の分級点で分級して得られた粒子のうち一定粒度を超えている岩石である。あるいは、健全岩石3Bは、健全岩石3Aを所定の分級点で分級して得られた粒子のうち一定粒度を超えている岩石と、元々埋立予定であった岩石とを混合したものである。
【0033】
(効果)
処分場1は、埋立てた岩石が降雨に晒され、雨水が流下する。このとき一般に、雨水に岩石中の成分が溶出する。処分構造10Aでは、重金属等含有岩石5から重金属等が溶出した場合、その重金属等により汚染された汚染水は重力に従って吸着層4を通過し、健全岩石3Aに至る。このとき重金属等が吸着材によって吸着除去される。ここで、第一の粒子材料が山砂である場合は、山砂は一般に透水性が高いながらも小径であるので、吸着材との混合性が優れながら水を適度に通過させる。
【0034】
吸着層4の透水性が重金属等含有岩石5の透水性よりも低い場合は、汚染水が吸着層4の上に滞留し、吸着層4の上面を這うように水平方向へ流れる。吸着層4の周縁には、吸着層4よりも粒子径が小さい、又は、透水係数が小さい拡散防止壁6Aが汚染水の流れを堰き止めるので、汚染水が吸着層4の領域外へ漏れ出さない。これらの作用によって、重金属等を処分構造10Aの内部に確実に封じ込めることができ、重金属等が環境中へ拡散することが防止される。
【0035】
ここで、拡散防止壁6Aを構成する第二の粒子材料が埋立て予定の岩石を分級して得られた粒子のうち一定粒度以下のものである場合は、当該岩石は元々埋立て予定だったものであるので、外部から持ち込んだ材料によって処分場1の埋立容積を圧迫することにならず、都合がよい。
【0036】
また、本実施形態の処分構造10Aは、処分場1に処分された健全岩石3Aを均した上に形成することができるので、健全岩石3Aの処分を主目的として処分場1の使用を開始した後、突発的に重金属等含有岩石5を処分する必要に迫られたときにも対応可能である。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、拡散防止壁6Aの全ての部分が吸着層4の上方にあり、かつ、拡散防止壁6Aの下端部が吸着層4の上部に接触している態様を示したが、これに代えて、図5に示されている処分構造10Bのように、拡散防止壁6Bの下端部が吸着層4の上面よりも下方に位置しており、かつ、拡散防止壁6Bが吸着層4の周囲を囲っている態様としてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、拡散防止壁6Aを形成する材料が第二の粒子材料である態様を示したが、第二の粒子材料に代えて、高分子材料を用いる態様であってもよい。高分子材料としては、遮水工のような樹脂製シートであってもよく、水に溶解又は懸濁させた液体であってもよい。後者の場合、含まれている高分子が重金属等含有岩石5に吹付けた後に皮膜を形成して遮水効果を発現するものであればよく、例えば、水とポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールとを含有する液体を用いることができる。この液体は、必要に応じて多糖類等の増粘剤を含有していてもよい。高分子材料で形成された皮膜は、透水係数が1×10-9cm/s以下であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、岩石を埋立てる処分場で利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…処分場、2…遮水工、3…岩石、3A,3B…健全岩石、4…吸着層、5…重金属等含有岩石、6A,6B…拡散防止壁、10A,10B…処分構造。

図1
図2
図3
図4
図5