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  • 特開-電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166697
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 W
H02M3/155 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082985
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】村里 拓弥
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB82
5H730DD04
5H730XX02
5H730XX13
5H730XX22
5H730XX33
5H730XX41
5H730ZZ04
5H730ZZ12
(57)【要約】
【課題】電源が接続されていない電力変換回路の入力端子間に電位差が生じてしまう。
【解決手段】電力変換装置10は、入力された電圧を変換して出力可能な第1電力変換回路20と、入力された電圧を変換して出力可能な第2電力変換回路30と、短絡部材40と、を備える。第1電力変換回路20は、一対の第1入力端子21と、一対の第1出力端子29と、第1インダクタ25と、を有する。第2電力変換回路30は、一対の第2入力端子31と、一対の第2出力端子39と、第2インダクタ35と、を有する。一対の第1入力端子21には、電源が接続されている。一対の第2入力端子31には、短絡部材40が接続されている。これにより、一対の第2入力端子31が電気的に短絡している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電圧を変換して出力可能な第1電力変換回路と、
入力された電圧を変換して出力可能な第2電力変換回路と、
短絡部材と、を備え、
前記第1電力変換回路は、一対の第1入力端子と、一対の第1出力端子と、前記第1入力端子及び前記第1出力端子の間に直列接続される第1インダクタと、を有し、
前記第2電力変換回路は、一対の第2入力端子と、一対の第2出力端子と、前記第2入力端子及び前記第2出力端子の間に直列接続される第2インダクタと、を有し、
一対の前記第1入力端子には、電源が接続され、
一対の前記第2入力端子には、前記短絡部材が接続されており、前記短絡部材により一対の前記第2入力端子が電気的に短絡している
電力変換装置。
【請求項2】
前記短絡部材は、導電性の配線と、前記配線の外表面を覆う絶縁体と、を有するケーブルである
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタは、同一の基板上に実装されている
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線を有し、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線を有し、
前記基板を平面視したとき、前記第1配線が巻き回されている方向と、前記第2配線が巻き回されている方向とは、交差する
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線を有し、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線を有し、
前記第1配線が巻き回されている方向と、前記第2配線の巻き回されている方向は、同一である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタの両方が共有する磁性コアをさらに備え、
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線と、前記第1配線が巻き回された前記磁性コアと、を含み、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線と、前記第2配線が巻き回された前記磁性コアと、を含む
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
一対の前記第2入力端子に接続されたコンデンサをさらに備える
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているパワーコンディショナは、第1直流変換部と、第2直流変換部と、を備えている。第1直流変換部及び第2直流変換部は、それぞれ太陽電池に接続可能である。第1直流変換部及び第2直流変換部は、太陽電池から入力された直流電力の電圧を調整して出力する。第1直流変換部は、第1コイルを備えている。第2直流変換部は、第2コイルを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-162963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているようなパワーコンディショナにおいて、一方の変換回路を太陽電池等の電源に接続し、他方の変換回路を電源に接続しない場合がある。この場合、一方の変換回路のコイルに生じた磁束によって他方の変換回路のコイルに誘導起電力が生じる。そのため、他方の変換回路に接続される一対の入力端子間に電位差が生じる。このように、電源が接続されていない変換回路の入力端子間に電位差が生じることは、パワーコンディショナの誤作動等の原因になり得るという問題があった。そこで本発明は、電源が接続されていない変換回路の入力端子間に電位差が生じることを抑制できるパワーコンディショナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、入力された電圧を変換して出力可能な第1電力変換回路と、入力された電圧を変換して出力可能な第2電力変換回路と、短絡部材と、を備え、前記第1電力変換回路は、一対の第1入力端子と、一対の第1出力端子と、前記第1入力端子及び前記第1出力端子の間に直列接続される第1インダクタと、を有し、前記第2電力変換回路は、一対の第2入力端子と、一対の第2出力端子と、前記第2入力端子及び前記第2出力端子の間に直列接続される第2インダクタと、を有し、一対の前記第1入力端子には、電源が接続され、一対の前記第2入力端子には、前記短絡部材が接続されており、前記短絡部材により一対の前記第2入力端子が電気的に短絡している電力変換装置である。
【0006】
上記構成によれば、第2高電位入力端子及び第2低電位入力端子の電位差は略ゼロとなる。したがって、第1インダクタに生じた磁束によって第2インダクタに電流が流れた場合でも、第2入力端子間に生じた電位差は速やかに解消される。
【発明の効果】
【0007】
電源が接続されていない電力変換回路の入力端子間に電位差が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、電力変換装置の回路構成の説明図である。
図2図2は、短絡部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電力変換装置の一実施形態>
以下、電力変換装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(全体構成について)
図1に示すように、電力変換装置10は、第1電力変換回路20と、第2電力変換回路30と、出力コンデンサ51と、インバータ52と、を備えている。第1電力変換回路20は、入力された電力の電圧を変換して出力可能である。第2電力変換回路30は、入力された電力の電圧を変換して出力可能である。
【0011】
第1電力変換回路20は、一対の第1入力端子21と、一対の第1出力端子29と、を備えている。一対の第1入力端子21には、直流電源70が接続されている。一対の第1出力端子29には、出力コンデンサ51及びインバータ52が接続されている。なお、直流電源70は、例えば太陽光発電パネルである。
【0012】
一対の第1入力端子21は、第1高電位入力端子21Aと、第1低電位入力端子21Bと、である。第1高電位入力端子21Aは、直流電源70の高電位端子に接続している。第1低電位入力端子21Bは、直流電源70の低電位端子に接続している。
【0013】
一対の第1出力端子29は、第1高電位出力端子29Aと、第1低電位出力端子29Bと、である。第1高電位出力端子29Aは、出力コンデンサ51の第1端及びインバータ52の第1端に接続している。第1低電位出力端子29Bは、出力コンデンサ51の第2端及びインバータ52の第2端に接続している。
【0014】
第1電力変換回路20は、第1前段コンデンサ22と、第1コモンモードチョークコイル23と、を備えている。
第1前段コンデンサ22は、一対の第1入力端子21に接続されている。具体的には、第1前段コンデンサ22の第1端は、第1高電位入力端子21Aに接続している。第1前段コンデンサ22の第2端は、第1低電位入力端子21Bに接続している。
【0015】
第1コモンモードチョークコイル23は、第1コイル23Aと、第2コイル23Bと、図示しない磁性コアと、を有している。第1コイル23Aの第1端は、第1前段コンデンサ22の第1端に接続している。第2コイル23Bの第1端は、第1前段コンデンサ22の第2端に接続している。
【0016】
第1電力変換回路20は、第1後段コンデンサ24と、第1インダクタ25と、第1整流ダイオード27と、を備えている。また、電力変換装置10は、第1インダクタ25及び第2インダクタ35の両方が共有する磁性コアCを備えている。第1後段コンデンサ24の第1端は、第1コモンモードチョークコイル23の第1コイル23Aの第2端に接続している。第1後段コンデンサ24の第2端は、第1コモンモードチョークコイル23の第2コイル23Bの第2端に接続している。且つ、第1後段コンデンサ24の第2端は、第1低電位出力端子29Bに接続している。
【0017】
第1インダクタ25は、第1配線25Aと、磁性コアCと、を含む。磁性コアCは、フェライト等の磁性材料を含んでいる。第1配線25Aは、当該磁性コアCに巻き回されている。第1配線25Aは、第1入力端子21及び第1出力端子29に接続している。具体的には、第1配線25Aの第1端は、第1コモンモードチョークコイル23の第1コイル23Aの第2端に接続している。つまり、第1配線25Aの第1端は、第1コイル23Aを介して第1高電位入力端子21Aに接続している。また、第1配線25Aの第2端は、第1整流ダイオード27のアノード端子に接続している。第1整流ダイオード27のカソード端子は、第1高電位出力端子29Aに接続している。つまり、第1配線25Aの第2端は、第1整流ダイオード27を介して、第1高電位出力端子29Aに接続している。したがって、第1インダクタ25は、第1入力端子21及び第1出力端子29の間に直列接続されている。なお、第1整流ダイオード27は、第1インダクタ25側から第1高電位出力端子29A側へ電流が流れることを許容する。その一方で、第1整流ダイオード27は、第1高電位出力端子29A側から第1インダクタ25側へ電流が流れることを許容しない。
【0018】
第1電力変換回路20は、第1スイッチング素子26を備えている。第1スイッチング素子26は、nチャネル型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。第1スイッチング素子26のドレイン端子は、第1インダクタ25の第2端に接続している。且つ、第1スイッチング素子26のドレイン端子は、第1整流ダイオード27のアノード端子に接続している。第1スイッチング素子26のソース端子は、第1後段コンデンサ24の第2端に接続している。且つ、第1スイッチング素子26のソース端子は、第1低電位出力端子29Bに接続している。第1スイッチング素子26のゲート端子は、後述する制御装置53に接続されている。制御装置53は、例えばMicro Controller Unit(MCU)である。
【0019】
第1電力変換回路20は、第1電圧検出部28を備えている。第1電圧検出部28は、第1コモンモードチョークコイル23と第1後段コンデンサ24との間で、一対の第1入力端子21に対して並列接続している。具体的には、第1電圧検出部28の第1端は、第1コモンモードチョークコイル23の第1コイル23Aの第2端に接続している。且つ、第1電圧検出部28の第1端は、第1後段コンデンサ24の第1端に接続している。第1電圧検出部28の第2端は、第1コモンモードチョークコイル23の第2コイル23Bの第2端に接続している。且つ、第1電圧検出部28の第2端は、第1後段コンデンサ24の第2端に接続している。したがって、第1電圧検出部28は、第1高電位入力端子21Aと、第1低電位入力端子21Bと、の端子間の電位差に略等しい第1電圧値V1を検出可能である。
【0020】
第2電力変換回路30は、一対の第2入力端子31と、一対の第2出力端子39と、を備えている。一対の第2入力端子31は、第2高電位入力端子31Aと、第2低電位入力端子31Bと、である。一対の第2入力端子31には、後述する短絡部材40が接続されている。
【0021】
一対の第2出力端子39は、第2高電位出力端子39Aと、第2低電位出力端子39Bと、である。第2高電位出力端子39Aは、出力コンデンサ51の第1端及びインバータ52の第1端に接続している。第2低電位出力端子39Bは、出力コンデンサ51の第2端及びインバータ52の第2端に接続している。
【0022】
第2電力変換回路30は、第2前段コンデンサ32と、第2コモンモードチョークコイル33と、を備えている。
第2前段コンデンサ32は、一対の第2入力端子31に接続されている。具体的には、第2前段コンデンサ32の第1端は、第2高電位入力端子31Aに接続している。第2前段コンデンサ32の第2端は、第2低電位入力端子31Bに接続している。
【0023】
第2コモンモードチョークコイル33は、第3コイル33Aと、第4コイル33Bと、図示しない磁性コアと、を有している。第3コイル33Aの第1端は、第2前段コンデンサ32の第1端に接続している。第4コイル33Bの第1端は、第2前段コンデンサ32の第2端に接続している。
【0024】
第2電力変換回路30は、第2後段コンデンサ34と、第2インダクタ35と、第2整流ダイオード37と、を備えている。第2後段コンデンサ34の第1端は、第2コモンモードチョークコイル33の第3コイル33Aの第2端に接続している。第2後段コンデンサ34の第2端は、第2コモンモードチョークコイル33の第4コイル33Bの第2端に接続している。且つ、第2後段コンデンサ34の第2端は、第2低電位出力端子39Bに接続している。
【0025】
第2インダクタ35は、第2配線35Aと、磁性コアCと、を含む。第2インダクタ35の磁性コアCは、第1インダクタ25の磁性コアCと同一のものである。第2配線35Aは、当該磁性コアCに巻き回されている。すなわち、1つの磁性コアCに、第1配線25A及び第2配線35Aが巻き回されている。なお、図1では、第1インダクタ25の磁性コアCと、第2インダクタ35の磁性コアCとを、便宜的に別の箇所に記載している。また、第1インダクタ25の第1配線25Aが磁性コアCに巻き回されている方向と、第2インダクタ35の第2配線35Aが磁性コアCに巻き回されている方向は、同一である。なお、配線が巻き回されている方向とは、巻き回された配線の中心軸に平行な方向のことである。換言すると、配線は、当該中心軸を中心として螺旋状に巻き回されている。そして、配線が巻き回されている方向が同一であるということは、配線を電流が流れる方向に沿って辿っていった場合に、極性が同一となり、且つ巻回された各配線の中心軸が略平行であるということである。なお、各配線の中心軸は、各配線が巻き回される磁性コアCの内部を通過する仮想線としても良い。本実施形態において、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、1つのチップ型インダクタに具備される、2つのインダクタである。したがって、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、同一の基板上に実装されている。そのため、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、電磁的に結合している。
【0026】
第2配線35Aは、第2入力端子31及び第2出力端子39に接続している。具体的には、第2配線35Aの第1端は、第2コモンモードチョークコイル33の第3コイル33Aの第2端に接続している。つまり、第2配線35Aの第1端は、第3コイル33Aを介して第2高電位入力端子31Aに接続している。また、第2配線35Aの第2端は、第2整流ダイオード37のアノード端子に接続している。第2整流ダイオード37のカソード端子は、第2高電位出力端子39Aに接続している。つまり、第2配線35Aの第2端は、第2整流ダイオード37を介して、第2高電位出力端子39Aに接続している。したがって、第2インダクタ35は、第2入力端子31及び第2出力端子39の間に直列接続されている。なお、第2整流ダイオード37は、第2インダクタ35側から第2高電位出力端子39A側へ電流が流れることを許容する。その一方で、第2整流ダイオード37は、第2高電位出力端子39A側から第2インダクタ35側へ電流が流れることを許容しない。
【0027】
第2電力変換回路30は、第2スイッチング素子36を備えている。第2スイッチング素子36は、nチャネル型のMOSFETである。第2スイッチング素子36のドレイン端子は、第2インダクタ35の第2端に接続している。且つ、第2スイッチング素子36のドレイン端子は、第2整流ダイオード37のアノード端子に接続している。第2スイッチング素子36のソース端子は、第2後段コンデンサ34の第2端に接続している。且つ、第2スイッチング素子36のソース端子は、第2低電位出力端子39Bに接続している。第2スイッチング素子36のゲート端子は、後述する制御装置53に接続されている。
【0028】
第2電力変換回路30は、第2電圧検出部38を備えている。第2電圧検出部38は、第2コモンモードチョークコイル33と第2後段コンデンサ34との間で、一対の第2入力端子31に対して並列接続している。具体的には、第2電圧検出部38の第1端は、第2コモンモードチョークコイル33の第3コイル33Aの第2端に接続している。且つ、第2電圧検出部38の第1端は、第2後段コンデンサ34の第1端に接続している。第2電圧検出部38の第2端は、第2コモンモードチョークコイル33の第4コイル33Bの第2端に接続している。且つ、第2電圧検出部38の第2端は、第2後段コンデンサ34の第2端に接続している。したがって、第2電圧検出部38は、第2高電位入力端子31Aと、第2低電位入力端子31Bと、の端子間の電位差に略等しい第2電圧値V2を検出可能である。
【0029】
インバータ52は、各電力変換回路から出力された直流電力を、交流電力に変換して出力可能である。インバータ52の第1端は、出力コンデンサ51の第1端に接続している。インバータ52の第2端は、出力コンデンサ51の第2端に接続している。インバータ52の第3端及び第4端は、電力線90を介して、電力系統100に接続している。電力線90は、分電盤、電力量計、コンセント(アウトレット)などの図示しない電気設備を含む。また、電力線90は、任意の負荷80に接続している。負荷80は、例えば、電力線90からの交流電力により動作する電気機器である。
【0030】
電力変換装置10は、制御装置53を備えている。制御装置53は、第1電力変換回路20及び第2電力変換回路30を制御可能である。具体的には、制御装置53は、第1スイッチング素子26のゲート端子に、第1スイッチング信号S1を出力する。第1スイッチング信号S1はPWM信号であり、周期的に第1スイッチング素子26をオンオフ制御する。同様に、制御装置53は、第2スイッチング素子36のゲート端子に、第2スイッチング信号S2を出力する。第2スイッチング信号S2も、PWM信号である。
【0031】
制御装置53は、第1入力端子21に直流電源70が接続されているか否かを判定可能である。また、制御装置53は、第1入力端子21に接続されている直流電源70に異常が生じているか否かを判定可能である。具体的には、制御装置53は、第1電圧検出部28が検出した第1電圧値V1を取得する。次いで、第1電圧値V1と、所定の第1閾値及び所定の第2閾値と、を比較する。なお、第2閾値は、第1閾値よりも大きい値である。また、第2閾値は、直流電源70が正常に動作していれば当該直流電源70が出力するであろう電圧値よりも、やや小さな値に設定されている。第1電圧値V1が、所定の時間、継続して第1閾値より小さい場合に、制御装置53は、第1入力端子21に直流電源70が接続されていないと判定する。第1電圧値V1が、所定の時間、継続して第1閾値以上第2閾値以下である場合に、制御装置53は、第1入力端子21に直流電源70が接続されており、且つ、当該直流電源70に異常が生じていると判定する。第1電圧値V1が、所定の時間、継続して第2閾値より大きい場合に、制御装置53は、第1入力端子21に直流電源70が接続されており、且つ、当該直流電源70は正常であると判定する。
【0032】
制御装置53は、第2入力端子31に直流電源70が接続されているか否かを判定可能である。また、制御装置53は、第2入力端子31に接続されている直流電源70に異常が生じているか否かを判定可能である。判定の方法は、第1入力端子21に対する判定と同様である。すなわち、第2電圧値V2が、所定の時間、継続して第1閾値より小さい場合に、制御装置53は、第2入力端子31に直流電源70が接続されていないと判定する。第2電圧値V2が、所定の時間、継続して第1閾値以上第2閾値以下である場合に、制御装置53は、第2入力端子31に直流電源70が接続されており、且つ、当該直流電源70に異常が生じていると判定する。第2電圧値V2が、所定の時間、継続して第2閾値より大きい場合に、制御装置53は、第2入力端子31に直流電源70が接続されており、且つ、当該直流電源70は正常であると判定する。
【0033】
(短絡部材について)
図2に示すように、短絡部材40は、導電性の配線41と、配線41の外表面を覆う絶縁体としての絶縁被膜42と、を有するケーブルである。前述したように、短絡部材40は、一対の第2入力端子31に接続している。具体的には、短絡部材40の配線41の第1端は、第2高電位入力端子31Aに接続している。短絡部材40の配線41の第2端は、第2低電位入力端子31Bに接続している。したがって、一対の前記第2入力端子31は、短絡部材40により電気的に短絡している。
【0034】
(本実施形態の作用について)
上記の電力変換装置10において、直流電源70から第1電力変換回路20に電力が供給されると、第1インダクタ25に電流が流れる。それに伴い、第1インダクタ25において磁束が発生する。上述したとおり、第2電力変換回路30の第2インダクタ35は、第1インダクタ25と磁性コアCを共有している。また、第2インダクタ35は、第1インダクタ25と同一基板上に実装されている。したがって、第1インダクタ25において生じた磁束により、第2インダクタ35に電流が流れる。第2インダクタ35に電流が流れると、その電流が第2前段コンデンサ32に流れて、第2前段コンデンサ32に電荷が蓄積される。したがって、一対の第2入力端子31が電気的に短絡していない場合には、一対の第2入力端子31に電位差が生じるので、この電位差を第2電圧検出部38が第2電圧値V2として検出する。この第2電圧値V2が、第1閾値を超えた場合、制御装置53は、第2入力端子31に直流電源70が接続されていると誤検出し得る。
【0035】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態において、短絡部材40が一対の第2入力端子31に接続されることで、第2入力端子31は電気的に短絡している。これにより、第2高電位入力端子31A及び第2低電位入力端子31Bの電位差は略ゼロとなる。したがって、第1インダクタ25に生じた磁束によって第2インダクタ35に電流が流れた場合でも、第2入力端子31間に生じた電位差は速やかに解消される。
【0036】
(2)上記実施形態において、短絡部材40の配線41は、絶縁被膜42に覆われている。そのため、第2電力変換回路30の各第2入力端子31に新たに電源を接続しようとした場合に、誤って短絡部材40に電源を接続してしまっても、電源が短絡部材40内の配線41と電気的に接続してしまうことを防げる。
【0037】
(3)上記実施形態において、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、同一の基板上に実装されている。この場合、第1インダクタ25の磁束に起因して、第2インダクタ35が電磁誘導されやすい。このような構成は、第2高電位入力端子31A及び第2低電位入力端子31Bを短絡部材40で短絡させる構成として好適である。
【0038】
(4)上記実施形態において、第1インダクタ25の第1配線25A及び第2インダクタ35の第2配線35Aの巻き方向が同一であると、第1インダクタ25の磁束に起因して、第2インダクタ35が電磁誘導されやすい。このような構成は、第2高電位入力端子31A及び第2低電位入力端子31Bを短絡部材40で短絡させる構成として好適である。
【0039】
(5)上記実施形態において、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、1つの磁性コアCを共有している。複数のインダクタが磁性コアCを共有している場合、第1インダクタ25に電流が流れることに伴い第2インダクタ35が電磁誘導されやすい。このような構成は、短絡部材40により第2高電位入力端子31A及び第2低電位入力端子31Bを短絡させる構成として好適である。
【0040】
(6)上記実施形態において、第2電力変換回路30は、第2入力端子31に接続する第2前段コンデンサ32を有している。仮に、第2入力端子31同士を短絡部材40で短絡させていない場合、第2インダクタ35に電流が流れるたびに第2前段コンデンサ32に電荷が蓄積される。このため、一対の第2入力端子31間の電位差が解消されずに維持されやすい。このような構成は、第2高電位入力端子31A及び第2低電位入力端子31Bを短絡部材40で短絡させる構成として好適である。
【0041】
(7)上記実施形態において、制御装置53は、第2電圧値V2を用いて、一対の第2入力端子31に直流電源が接続されているか否かを判定可能である。また、制御装置53は、第2電圧値V2を用いて、第2入力端子31に接続されている直流電源に異常が生じているか否かを判定可能である。第2入力端子31には短絡部材40が接続されているため、第2入力端子31間の電位差は、略ゼロとなる。そのため、制御装置53が、第2入力端子31に直流電源が接続されていると誤って判定することを抑制できる。また、制御装置53が、第2入力端子31に直流電源が接続されており、且つ当該直流電源に異常が生じていると誤って判定することを抑制できる。
【0042】
(8)上記実施形態において、短絡部材40はケーブルである。これにより、短絡部材40は、専用の工具を必要としないため、比較的容易に着脱可能である。
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
・電力変換装置10の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、出力コンデンサ51、インバータ52を備えていなくてもよい。また、3つ以上の電力変換回路を備えていてもよい。この場合においても、電源が接続されている各電力変換回路は、第1電力変換回路20であり、短絡部材40が接続されている各電力変換回路は、第2電力変換回路30である。つまり、第1電力変換回路20及び第2電力変換回路30は、1つであるとは限らない。
【0044】
・第1電力変換回路20に接続される直流電源70は、太陽光発電パネルに限られない。例えば、風力、水力発電、燃料電池等であってもよい。
・第1電力変換回路20の第1入力端子21に接続される電源は、直流電源でなくてもよい。それに伴い、第1電力変換回路20の構成は、交流電力を直流電力に電力変換して出力可能なインバータの構成であってもよい。この場合でも、第2入力端子31に短絡部材40を接続することで、(1)に記載の効果が得られる。
【0045】
・第1電力変換回路20の構成及び第2電力変換回路30の構成は、上記実施形態の例に限られない。少なくとも、各電力変換回路は、入力された電力の電圧を変換して出力可能であり、且つ、一対の入力端子と、一対の出力端子と、インダクタと、を備えていればよい。例えば、上記実施形態において、第1電力変換回路20は第1コモンモードチョークコイル23を備えなくてもよいし、第1整流ダイオード27は、他の整流素子に変更してもよい。
【0046】
また、例えば、第2電力変換回路30は、第2前段コンデンサ32を備えていなくてもよい。この場合においても、第1インダクタ25に生じた磁束によって第2インダクタ35に電流が流れることで、第2入力端子31に電位差が生じ得る。そのため、第2入力端子31に短絡部材40を接続することで、(1)に記載の効果が得られる。
【0047】
また、第1電力変換回路20の構成及び第2電力変換回路30の構成は、同様の構成でなくてもよい。例えば、第1電力変換回路20がインバータ回路であり、第2電力変換回路30がコンバータ回路であってもよい。
【0048】
・第1インダクタ25及び第2インダクタ35の構成は、上記実施形態の例に限られない。例えば、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、独立した2つの部品として実装されていてもよい。すなわち、第1インダクタ25の磁性コアCと、第2インダクタ35の磁性コアCとは、同一でなくてもよい。また、第1インダクタ25及び第2インダクタ35は、同一の基板上に実装されていなくてもよい。これらの場合であっても、第1インダクタ25及び第2インダクタ35の距離が近い等、電磁的に結合する可能性があれば、第2入力端子31に短絡部材40を接続することで、(1)に記載の効果が得られる。
【0049】
・各電力変換回路は、複数のインダクタを備えていてもよい。例えば、第2電力変換回路30は、第3インダクタを備えてもよい。この場合において、第1電力変換回路20の第1インダクタ25と電磁的に結合し得る構成となっていても、第2入力端子31に短絡部材40を接続することで、第2入力端子31間の電位差を略ゼロにできる。
【0050】
・第1インダクタ25の構成は、上記実施形態の例に限られない。すなわち、第1配線25Aと、第1配線25Aが巻き回された磁性コアCと、で構成されていなくてもよい。例えば、第1インダクタ25は、磁性コアCを有さずに、コイル状の第1配線25Aのみを有していてもよい。この点、第2インダクタ35及び第2配線35Aについても同様である。この場合においても、第1インダクタ25及び第2インダクタ35の間で電磁的に結合する可能性がある。
【0051】
・第1インダクタ25の第1配線25Aが巻き回されている方向と、第2インダクタ35の第2配線35Aの巻き回されている方向は、同一でなくてもよい。各インダクタが互いに異なる巻き方向、例えば基板を平面視したときに、互いに交差する方向であっても、両インダクタが電磁的に結合する可能性がある。
【0052】
・各配線の中心軸は、互いに平行でなくてもよい。例えば、基板を平面視したときに、各配線の中心軸は、互いに交差していてもよい。
・制御装置53の構成は、上記実施形態の例に限られない。制御装置53は、第2入力端子31に電源が接続されているか否かを判定可能でなくてもよい。また、制御装置53は、第2入力端子31に接続されている電源の異常を判定可能でなくてもよい。この点、第1入力端子21に関しても同様である。なお、第2入力端子31に電源が接続されていないにも拘わらず第2入力端子31間に電位差が生じることは、実施形態で例示した制御装置53による判定以外にも、電力変換装置10の様々な誤作動等の原因になり得る。したがって、これらの場合であっても、第2入力端子31に短絡部材40を接続することで、上記誤作動等を抑制できる。
【0053】
・短絡部材40は、上記実施形態の構成に限られない。例えば、配線41の外表面を覆う絶縁被膜42を備えていなくてもよい。第2入力端子31を電気的に短絡させることができれば、(1)に記載の効果は得られる。また、短絡部材40は、ケーブルに限られない。例えば、短絡部材40は、第2入力端子31に押し込むだけで嵌合する部材、又はドライバーなどの簡易的な工具を用いて容易に着脱できる部材などでも良い。
【0054】
・絶縁被膜42の構成は、上記実施形態の例に限られない。配線41を覆う絶縁体であれば、絶縁被膜42の構成は、絶縁テープ、絶縁ケース等でも良い。
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
【0055】
[1]
入力された電圧を変換して出力可能な第1電力変換回路と、
入力された電圧を変換して出力可能な第2電力変換回路と、
短絡部材と、を備え、
前記第1電力変換回路は、一対の第1入力端子と、一対の第1出力端子と、前記第1入力端子及び前記第1出力端子の間に直列接続される第1インダクタと、を有し、
前記第2電力変換回路は、一対の第2入力端子と、一対の第2出力端子と、前記第2入力端子及び前記第2出力端子の間に直列接続される第2インダクタと、を有し、
一対の前記第1入力端子には、電源が接続され、
一対の前記第2入力端子には、前記短絡部材が接続されており、前記短絡部材により一対の前記第2入力端子が電気的に短絡している電力変換装置。
【0056】
[2]
前記短絡部材は、導電性の配線と、前記配線の外表面を覆う絶縁体と、を有するケーブルである[1]に記載の電力変換装置。
【0057】
[3]
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタは、同一の基板上に実装されている[1]又は[2]に記載の電力変換装置。
【0058】
[4]
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線を有し、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線を有し、
前記基板を平面視したとき、前記第1配線が巻き回されている方向と、前記第2配線が巻き回されている方向とは、交差する[3]に記載の電力変換装置。
【0059】
[5]
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線を有し、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線を有し、
前記第1配線が巻き回されている方向と、前記第2配線の巻き回されている方向は、同一である[1]~[4]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0060】
[6]
前記第1インダクタ及び前記第2インダクタの両方が共有する磁性コアをさらに備え、
前記第1インダクタは、前記第1入力端子及び前記第1出力端子に接続する第1配線と、前記第1配線が巻き回された前記磁性コアと、を含み、
前記第2インダクタは、前記第2入力端子及び前記第2出力端子に接続する第2配線と、前記第2配線が巻き回された前記磁性コアと、を含む[1]~[5]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0061】
[7]
一対の前記第2入力端子に接続されたコンデンサをさらに備える[1]~[6]のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0062】
10…電力変換装置
20…第1電力変換回路
21A…第1高電位入力端子
21B…第1低電位入力端子
25…第1インダクタ
25A…第1配線
29A…第1高電位出力端子
29B…第1低電位出力端子
30…第2電力変換回路
31A…第2高電位入力端子
31B…第2低電位入力端子
32…第2前段コンデンサ
35…第2インダクタ
35A…第2配線
39A…第2高電位出力端子
39B…第2低電位出力端子
40…短絡部材
41…配線
42…絶縁被膜
図1
図2