(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166705
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】養生ユニット構造
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20241122BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G21/16
E04G21/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082999
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】陳 雨青
(72)【発明者】
【氏名】小谷 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】関 希望
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 大揮
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA12
2E174EA05
(57)【要約】
【課題】外周梁を構築する際に柱前養生ユニットの間から物が飛散することを防止できる養生ユニット構造を提供する。
【解決手段】建物外周方向Xに並ぶ複数の外周柱2の夫々に支持される状態で外周柱2の建物外側に設置される柱前養生ユニット3と、建物外周方向Xに並ぶ一対の柱前養生ユニット3の間に設置される梁前養生ユニット4とを備え、柱前養生ユニット3と梁前養生ユニット4とを各別にクライミング可能に構成し、梁前養生ユニット4を、一対の外周柱2に亘る状態で一対の外周柱2に支持すると共に、平面視において外周柱2における柱前養生ユニット3の取り付け位置とは異なる位置に取り付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外周方向に並ぶ複数の外周柱の夫々に支持される状態で前記外周柱の建物外側に設置される柱前養生ユニットと、前記建物外周方向に並ぶ一対の前記柱前養生ユニットの間に設置される梁前養生ユニットとを備え、
前記柱前養生ユニットと前記梁前養生ユニットとを各別にクライミング可能に構成されている養生ユニット構造であって、
前記梁前養生ユニットが、一対の前記外周柱に亘る状態で一対の前記外周柱に支持されると共に、平面視において前記外周柱における前記柱前養生ユニットの取り付け位置とは異なる位置に取り付けられている養生ユニット構造。
【請求項2】
前記柱前養生ユニットが、柱前用支持材を介して前記外周柱の前記建物外側を向く面に取り付けられ、
前記梁前養生ユニットが、梁前用支持材を介して前記外周柱の前記建物外周方向を向く面に取り付けられている請求項1に記載の養生ユニット構造。
【請求項3】
前記梁前用支持材が、一対の前記外周柱に連結される一対の連結材を備え、
前記梁前養生ユニットが、一対の前記連結材に亘る架設材と、前記架設材から立ち上がる縦材と、一対の前記外周柱に亘る外周梁の外側を覆う梁前用飛散防止膜とを備え、
前記梁前用飛散防止膜が、前記縦材の上端部に連結されて吊り下げ支持されている請求項2に記載の養生ユニット構造。
【請求項4】
前記外周柱が、その前記建物外周方向を向く両面に柱側被連結部を備え、
一対の前記連結材の夫々が、その建物内側の端部に前記柱側被連結部に連結する柱側連結部を備え、
前記柱側被連結部と前記柱側連結部との双方に、上下方向に貫通し且つ建物内外方向に長い長孔に形成されている柱側貫通孔が複数備えられ、
前記柱側被連結部の前記柱側貫通孔と前記柱側連結部の前記柱側貫通孔とのうちの何れか一方に、ボルト及びナットで構成された柱側締結部材におけるボルトの頭部とナットとのうちの少なくとも一方を挿通可能な大孔部が形成され、
前記柱側連結部は、複数の前記柱側貫通孔に挿通された前記柱側締結部材によって前記柱側被連結部に締結固定されている請求項3に記載の養生ユニット構造。
【請求項5】
前記架設材が、その前記建物外周方向の両端部にユニット側被連結部を備え、
一対の前記連結材の夫々が、その前記建物外側の端部に前記ユニット側被連結部に連結するユニット側連結部を備え、
前記ユニット側被連結部と前記ユニット側連結部とのうちの少なくとも何れか一方に、上下方向に貫通するユニット側貫通孔が1か所にのみ備えられ、前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とは、これら前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とを連結するユニット側連結部材を前記ユニット側貫通孔に挿通させた状態で上下方向に沿う軸心周りに揺動可能に構成され、
前記ユニット側貫通孔は、前記ユニット側連結部材を挿通させた状態で、前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とが相対的に前記建物外周方向に移動可能な形状に形成されている請求項3又は4に記載の養生ユニット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外周方向に並ぶ複数の外周柱の夫々に支持される状態で前記外周柱の建物外側に設置される柱前養生ユニットと、前記建物外周方向に並ぶ一対の前記柱前養生ユニットの間に設置される梁前養生ユニットとを備え、
前記柱前養生ユニットと前記梁前養生ユニットとを各別にクライミング可能に構成されている養生ユニット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物外周法方向に並ぶ複数の外周柱(1)の夫々に支持される状態で外周柱の外側に設置される柱前養生ユニット(柱側養生ユニット10)と、建物外周方向に並ぶ一対の柱前養生ユニットの間に設置される梁前養生ユニット(梁側養生ユニット20)とを備え、柱前養生ユニットと梁前養生ユニットとを各別にクライミング可能に構成されている養生ユニット構造が示されている。
【0003】
特許文献1の養生ユニット構造では、梁前養生ユニットは、外周柱に取り付けられ、梁前養生ユニットは、一対の外周柱に亘る外周梁(2)に取り付けられている。そして、外周柱を構築した後、当該外周柱の外側を覆うように柱前養生ユニットをクライミングさせた状態で外周柱に支持させ、その後、外周梁を構築し、当該外周梁の外側を覆うように梁前養生ユニットをクライミングさせた状態で外周梁に支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外周梁を構築する際は、建物外周方向に並ぶ柱前養生ユニットの間が空いており外周梁の外側が解放されているため、柱前養生ユニットの間から物が敷地外に飛散してしまう虞があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、外周梁を構築する際に柱前養生ユニットの間から物が飛散することを防止できる養生ユニット構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、建物外周方向に並ぶ複数の外周柱の夫々に支持される状態で前記外周柱の建物外側に設置される柱前養生ユニットと、前記建物外周方向に並ぶ一対の前記柱前養生ユニットの間に設置される梁前養生ユニットとを備え、
前記柱前養生ユニットと前記梁前養生ユニットとを各別にクライミング可能に構成されている養生ユニット構造であって、
前記梁前養生ユニットが、一対の前記外周柱に亘る状態で一対の前記外周柱に支持されると共に、平面視において前記外周柱における前記柱前養生ユニットの取り付け位置とは異なる位置に取り付けられている点にある。
【0008】
本構成によれば、梁前養生ユニットは、平面視において外周柱における柱前養生ユニットの取り付け位置とは異なる位置に取り付けられているため、柱前養生ユニットと梁前養生ユニットとを各別にクライミング可能に構成できながら梁前養生ユニットを外周柱に支持させることができるので、複数の外周柱を構築した後、建物外周方向に並ぶ一対の外周柱に亘る外周梁を構築する前に、梁前養生ユニットを設置することができ、外周梁を構築する際に一対の柱前養生ユニットの間を梁前養生ユニットによって覆っておくことで柱前養生ユニットの間から物が飛散することを防止することができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記柱前養生ユニットが、柱前用支持材を介して前記外周柱の前記建物外側を向く面に取り付けられ、
前記梁前養生ユニットが、梁前用支持材を介して前記外周柱の前記建物外周方向を向く面に取り付けられている点にある。
【0010】
本構成によれば、外周柱の建物外側に設置する柱前養生ユニットを外周柱の建物外側を向く面に取り付け、一対の柱前養生ユニットの間に設置する梁前養生ユニットを外周柱の建物外周方向を向く面に取り付けることで、これら柱前養生ユニットと梁前養生ユニットとの双方を、各別にクライミングさせる際に互いに干渉しない状態で同じ外周柱に効率よく取り付けることができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記梁前用支持材が、一対の前記外周柱に連結される一対の連結材を備え、
前記梁前養生ユニットが、一対の前記連結材に亘る架設材と、前記架設材から立ち上がる縦材と、一対の前記外周柱に亘る外周梁の外側を覆う梁前用飛散防止膜とを備え、
前記梁前用飛散防止膜が、前記縦材の上端部に連結されて吊り下げ支持されている点にある。
【0012】
本構成によれば、架設材から立ち上がる縦材の上端部に梁前用飛散防止膜が連結されて吊り下げ支持されているため、梁前用支持材の連結材が設置されている高さ(例えば、柱の上端側の高さ)より上方側を梁前用飛散防止膜で覆うことができるので、柱前養生ユニットの間から物が飛散することをより適切に防止することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記外周柱が、その前記建物外周方向を向く両面に柱側被連結部を備え、
一対の前記連結材の夫々が、その建物内側の端部に前記柱側被連結部に連結する柱側連結部を備え、
前記柱側被連結部と前記柱側連結部との双方に、上下方向に貫通し且つ建物内外方向に長い長孔に形成されている柱側貫通孔が複数備えられ、
前記柱側被連結部の前記柱側貫通孔と前記柱側連結部の前記柱側貫通孔とのうちの何れか一方に、ボルト及びナットで構成された柱側締結部材におけるボルトの頭部とナットとのうちの少なくとも一方を挿通可能な大孔部が形成され、
前記柱側連結部は、複数の前記柱側貫通孔に挿通された前記柱側締結部材によって前記柱側被連結部に締結固定されている点にある。
【0014】
本構成によれば、例えば、柱側被連結部に取り付けられている柱側締結部材のナットを緩めた状態で、柱側連結部と柱側被連結部とを上下方向に近づけて、柱側締結部材のナットを柱側被連結部における柱側貫通孔の大孔部に通過させた後、柱側締結部材を建物内外方向に移動させてボルトの軸部を長孔部に位置させ、その後、柱側締結部材を締め付けることで、柱側締結部材のナットを柱側被連結部から取り外すことなく柱側連結部を柱側被連結部に連結固定することができる。このように、柱側締結部材を外すことなく締結固定ができるため、柱側締結部材の脱落を防止しながら高所での締結固定の作業性を良好にできる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記架設材が、その前記建物外周方向の両端部にユニット側被連結部を備え、
一対の前記連結材の夫々が、その前記建物外側の端部に前記ユニット側被連結部に連結するユニット側連結部を備え、
前記ユニット側被連結部と前記ユニット側連結部とのうちの少なくとも何れか一方に、上下方向に貫通するユニット側貫通孔が1か所にのみ備えられ、前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とは、これら前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とを連結するユニット側連結部材を前記ユニット側貫通孔に挿通させた状態で上下方向に沿う軸心周りに揺動可能に構成され、
前記ユニット側貫通孔は、前記ユニット側連結部材を挿通させた状態で、前記ユニット側連結部と前記ユニット側被連結部とが相対的に前記建物外周方向に移動可能な形状に形成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、ユニット側貫通孔を建物外周方向に長い長孔やユニット側連結部材の挿通部分より十分大きな大孔に形成する等によって、ユニット側貫通孔が、ユニット側連結部材を挿通させた状態でユニット側連結部とユニット側被連結部とが相対的に建物外周方向に移動可能な形状に形成されているため、養生ユニットを支持する一対の外周柱の位置が建物外周方向に互いにずれていた場合でも、そのずれをユニット側連結部とユニット側被連結部とを建物外周方向にずらすことで吸収することができると共に、ユニット側連結部材を挿通させるユニット側貫通孔が1ヶ所にのみ備えられているため、養生ユニットを支持する一対の外周柱の位置が建物内外方向に互いにずれていた場合でも、そのずれをユニット側連結部とユニット側被連結部とを締結固定する箇所で互いに揺動させることで吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】柱側連結部及び柱側被連結部の縦断側面分解図
【
図10】ユニット側連結部及びユニット側被連結部の縦断側面分解図
【
図11】養生ユニット構造をクライミングさせる手順を示す図
【
図12】養生ユニット構造をクライミングさせる手順を示す図
【
図13】養生ユニット構造をクライミングさせる手順を示す図
【
図14】養生ユニット構造をクライミングさせる手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る養生ユニット構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、養生ユニット構造1は、建設中の建物の建物外側Y1(外周側)を覆う構造であり、建物外周方向Xに並ぶ複数の外周柱2の夫々に支持される状態で外周柱2の建物外側Y1に設置される柱前養生ユニット3と、建物外周方向Xに並ぶ一対の柱前養生ユニット3の間に設置される梁前養生ユニット4とを備えている。
【0019】
養生ユニット構造1は、外周柱2の建物外側Y1を柱前養生ユニット3によって覆い、建物外周方向Xに並ぶ一対の外周柱2に亘る外周梁6の建物外側Y1を梁前養生ユニット4によって覆うように構成されている。本実施形態では、外周柱2は、複数階層分(具体的には3階層分)に亘る角形鋼管によって構成されており、外周梁6は、建物外周方向Xに並ぶ一対の外周柱2に亘るH形鋼によって構成されている。外周柱2には、外周柱2に対して作業者が作業を行うための柱周り用の足場9が設置されている。
【0020】
図3に示すように、梁前養生ユニット4は、一対の外周柱2に亘る状態で一対の外周柱2に支持されると共に、平面視において外周柱2における柱前養生ユニット3の取り付け位置とは異なる位置に取り付けられている。説明を加えると、柱前養生ユニット3は、柱前用支持材7を介して外周柱2の建物外側Y1を向く面に取り付けられ、梁前養生ユニット4は、梁前用支持材8を介して外周柱2の建物外周方向Xを向く面に取り付けられている。
【0021】
柱前養生ユニット3は、柱前用支持材7との連結を解除することで、クレーン等を用いてクライミング可能に構成されている。そして、柱前養生ユニット3は、梁前養生ユニット4及び梁前用支持材8と平面視で重なっていないため、梁前養生ユニット4や梁前用支持材8と干渉することなくクライミングさせることが可能となっている。
また、梁前養生ユニット4は、梁前用支持材8との連結を解除することで、クレーン等を用いてクライミング可能に構成されている。そして、梁前養生ユニット4は、柱前養生ユニット3及び柱前用支持材7と平面視で重なっていないため、柱前養生ユニット3や柱前用支持材7と干渉することなくクライミングさせることが可能となっている。
このように、柱前養生ユニット3と梁前養生ユニット4とは各別にクライミング可能に構成されている。
【0022】
柱前養生ユニット3は、外周柱2の高さ寸法に対応して複数階層分を覆うことが可能な高さ寸法に構成されていると共に、外周柱2の建物外周方向Xの幅より広い幅寸法に構成されている。本実施形態では、柱前養生ユニット3は、建物躯体5の3階層分を覆うことが可能な高さ寸法(具体的には4階層分の高さ寸法)に構成されていると共に、外周柱2に足場9を加えた建物外周方向Xの幅より広い幅寸法に構成されている。
そして、柱前養生ユニット3は、建物外周方向Xに隣接する別の柱前養生ユニット3と間隔を空けた状態で設置されており、柱前養生ユニット3の幅寸法は、建物外周方向Xに隣接する一対の柱前養生ユニット3の間隔より小さい寸法となっている。
【0023】
柱前養生ユニット3は、上下方向Zに沿う複数本の枠材と建物外周方向Xに沿う複数本の枠材とで格子状に形成された枠体13と、枠体13の建物内側Y2に位置する上下方向Zに沿う複数本の縦枠材14と、枠体13と縦枠材14とを接続する接続材15と、外周柱2の建物外側Y1を覆うネットやシート等で構成される柱前用飛散防止膜16とを備えて構成されている。本実施形態では、柱前用飛散防止膜16は、ネットで構成されているネット部分16Aと、この部分より下方側に位置してシートで構成されているシート部分16Bとで構成されている。尚、
図2において、外周柱2や足場9等のシート部分16Bの建物内側Y2に位置しているものについては破線で示している。
【0024】
また、本実施形態では、縦枠材14として、柱前養生ユニット3の建物外周方向Xの両端部に位置する2本の端部縦枠材14Aと、これら2本の端部縦枠材14Aの中間に位置する2本の中間部縦枠材14Bとの計4本の縦枠材14が備えられている。柱前用飛散防止膜16は、枠体13の建物外側Y1に設置されていると共に、柱前用飛散防止膜16における枠体13から建物外周方向Xに飛び出す部分が建物内側Y2に折られて端部縦枠材14Aに連結されており、柱前養生ユニット3の建物外側Y1及び建物外周方向Xの両側の全域が垂直な柱前用飛散防止膜16によって被覆されている。
【0025】
柱前用支持材7は、建物内側Y2の端部が外周柱2の建物外側Y1を向く面に連結され、建物外側Y1の端部が柱前養生ユニット3に連結されている。
説明を加えると、
図3及び
図4に示すように、上下方向Zに間隔を空けた状態で複数の柱前用支持材7が、外周柱2の建物外側Y1を向く面から建物外側Y1に突出する状態で取り付けられており、その複数の柱前用支持材7の夫々が、柱前養生ユニット3における中間部縦枠材14Bに連結されており、この柱前用支持材7によって柱前養生ユニット3が1本の外周柱2に取り付けられている。
【0026】
梁前養生ユニット4は、柱前養生ユニット3と同様に建物躯体5の複数階層を覆うことが可能な高さ寸法に構成されていると共に、建物外周方向Xに隣接する一対の柱前養生ユニット3の間隔より広い幅寸法に構成されている。本実施形態では、梁前養生ユニット4は、建物躯体5の3階層を覆うことが可能な高さ寸法に構成されていると共に、建物外周方向Xに隣接する一対の梁前養生ユニット4の間隔より広く且つ建物外周方向Xに並ぶ一対の外周柱2の間隔より狭い幅寸法に構成されている。
そして、梁前養生ユニット4は、建物内外方向Yにおいて、外周柱2と柱前養生ユニット3との間に設置されている。
【0027】
図3に示すように、梁前用支持材8は、一対の外周柱2に連結される一対の連結材21を備えて構成されている。一対の連結材21のうちの建物外周方向Xの一方側X1にある連結材21は、一対の外周柱2のうちの建物外周方向Xの一方側X1にある外周柱2の上端部における建物外周方向Xの他方側X2を向く面に連結されている。また、一対の連結材21のうちの建物外周方向Xの他方側X2にある連結材21は、一対の外周柱2のうちの建物外周方向Xの他方側X2にある外周柱2の上端部における建物外周方向Xの一方側X1を向く面に連結されている。このように一対の連結材21によって梁前養生ユニット4が一対の外周柱2に取り付けられている。
【0028】
梁前養生ユニット4は、一対の連結材21に亘る架設材22と、架設材22から立ち上がる縦材23と、一対の外周柱2に亘る外周梁6の建物外側Y1を覆う梁前用飛散防止膜24とを備えている。梁前用飛散防止膜24は、縦材23の上端部に連結されて吊り下げ支持されている。
【0029】
架設材22から立ち上がる縦材23は、架設材22における建物外周方向Xの両端部と建物外周方向Xの中間部とに備えられており、梁前養生ユニット4には複数本の縦材23が備えられている。梁前用飛散防止膜24の上端部にはワイヤーが備えられており、そのワイヤーが複数本の縦材23に接続されている。
縦材23の上端は外周柱2の上端より上方側に位置しており、梁前用飛散防止膜24の上端も外周柱2の上端より上方に位置している。そのため、外周柱2に亘って外周梁6を構築する場合にその外周梁6よりも上方側まで梁前用飛散防止膜24によって覆うことが可能となっている。
【0030】
次に、梁前用支持材8を構成する連結材21と外周柱2との連結構造について説明する。
図3に示すように、外周柱2は、その建物外周方向Xを向く両面に柱側被連結部26を備え、一対の連結材21の夫々は、その建物内側Y2の端部に柱側被連結部26に連結する柱側連結部27を備えている。そして、
図5から
図7に示すように、柱側被連結部26と柱側連結部27との双方に、上下方向Zに貫通し且つ建物内外方向Yに長い長孔に形成されている柱側貫通孔28が複数備えられており、柱側連結部27は、複数の柱側貫通孔28に挿通された柱側締結部材29によって柱側被連結部26に締結固定されている。また、柱側被連結部26の柱側貫通孔28と柱側連結部27の柱側貫通孔28とのうちの何れか一方に、ボルト29A及びナット29Bで構成された柱側締結部材29におけるボルト29Aの頭部とナット29Bとのうちの少なくとも一方を挿通可能な大孔部28Aが形成されている。
【0031】
本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、柱側被連結部26と柱側連結部27とのうちの柱側被連結部26の柱側貫通孔28にのみ大孔部28Aが形成されている。
説明を加えると、連結材21は、H形鋼によって構成されており、
図6に示すように、連結材21の柱側連結部27の下側のフランジ21Aにおけるウェブ21Bの両側の夫々に2か所ずつ柱側貫通孔28が備えられている。また、
図5に示すように、柱側被連結部26には、柱側連結部27の柱側貫通孔28に対応する4か所に柱側被連結部26の柱側貫通孔28が備えられている。
そして、柱側被連結部26の柱側貫通孔28は、柱側締結部材29を構成するボルト29Aの頭部及びナット29Bが通過可能な大きさに形成されている大孔部28Aと、ボルト29Aの軸部は挿通可能であるもののボルト29Aの頭部及びナット29Bが挿通不可能な幅に形成されている建物内外方向Yに長い長孔部28Bとが一連に形成されており、柱側貫通孔28における建物内外方向Yの端部に大孔部28Aが形成されている。尚、柱側連結部27の柱側貫通孔28は、その全体が長孔部28Bによって形成されている。
【0032】
そのため、
図7に示すように、柱側被連結部26に取り付けられている柱側締結部材29のナット29Bを緩めた状態で、柱側連結部27と柱側被連結部26とを上下方向Zに近づけて、柱側締結部材29のナット29Bを柱側被連結部26における柱側貫通孔28の大孔部28Aに通過させた後、柱側締結部材29を建物内外方向Yに移動させてボルト29Aの軸部を長孔部28Bに位置させ、その後、柱側締結部材29を締め付けることで、柱側締結部材29のナット29Bを柱側被連結部26から取り外すことなく柱側連結部27を柱側被連結部26に連結固定することができる。
【0033】
次に、梁前用支持材8を構成する連結材21と架設材22との連結構造について説明する。
図3に示すように、架設材22は、その建物外周方向Xの両端部にユニット側被連結部31を備え、一対の連結材21の夫々は、その建物外側Y1の端部にユニット側被連結部31に連結するユニット側連結部32を備えている。そして、
図8及び
図10に示すように、ユニット側被連結部31とユニット側連結部32とのうちの少なくとも何れか一方に、上下方向Zに貫通するユニット側貫通孔33が1か所にのみ備えられ、ユニット側連結部32とユニット側被連結部31とは、これらユニット側連結部32とユニット側被連結部31とを連結するユニット側連結部材34をユニット側貫通孔33に挿通させた状態で上下方向Zに沿う軸心周りに揺動可能に構成されている。ユニット側貫通孔33は、ユニット側連結部32とユニット側被連結部31とを連結固定するユニット側連結部材34を挿通させた状態で、ユニット側連結部32とユニット側被連結部31とが相対的に建物外周方向Xに移動可能な形状に形成されている。
【0034】
本実施形態では、ユニット側被連結部31とユニット側連結部32とのうちのユニット側被連結部31にのみユニット側貫通孔33が備えられている。ユニット側連結部32には、ユニット側連結部材34のボルト34Aが溶接等によって固定されており、ユニット側被連結部31の柱側貫通孔28が、挿通されたユニット側連結部材34のボルト34Aの軸部が建物外周方向Xへの移動を許容する長孔に形成されている。そして、ユニット側連結部材34のボルト34Aをユニット側被連結部31のユニット側貫通孔33に挿通させた状態で、ユニット側連結部材34によってユニット側連結部32がユニット側被連結部31に連結固定されている。尚、このようにユニット側連結部材34によってユニット側連結部32がユニット側被連結部31に連結固定されている状態では、ユニット側連結部材34のボルト34Aとナット34Bとは締結固定する場合に比べて比較的低いトルクで締め付けられており、ユニット側連結部材34によって連結固定されている状態でも、ユニット側連結部32とユニット側被連結部31とは比較的容易に上下方向Zに沿う軸心周りに互いに揺動可能となっている。また、
図9及び
図10に示すように、ユニット側連結部32には、ボルト34Aの頭部を覆うように設置された載置台35が設置されており、ユニット側被連結部31は載置台35上に載置された状態でユニット側連結部32に連結されている。載置台35は、溝形鋼によって構成されており、ボルト34Aが挿通される孔35Aが形成されている。
【0035】
そのため、
図10に示すように、ユニット側連結部32とユニット側被連結部31とを上下方向Zに近づけて、ユニット側連結部32に固定されているユニット側連結部材34のボルト34Aをユニット側被連結部31のユニット側貫通孔33に通過させた後、柱側締結部材29のボルト34Aにナット34Bを螺合させることで、ユニット側連結部32をユニット側被連結部31に連結固定することができる。
【0036】
そして、ユニット側貫通孔33が建物外周方向Xに長い長孔に形成されているため、梁前養生ユニット4を支持する一対の外周柱2の位置が建物外周方向Xに互いにずれていた場合でも、そのずれをユニット側連結部32とユニット側被連結部31とを建物外周方向Xにずらすことで吸収することができる。また、ユニット側連結部材34を挿通させるユニット側貫通孔33が1ヶ所にのみ備えられているため、梁前養生ユニット4を支持する一対の外周柱2の位置が建物内外方向Yに互いにずれていた場合でも、そのずれをユニット側連結部32とユニット側被連結部31とを締結固定する箇所で互いに揺動させることで吸収することができる。
【0037】
次に、
図11に示す状態から
図14に示すように外周柱2の建方を行った場合について、養生ユニット構造1をクライミングさせる手順について説明する。
図11に示す状態では、柱前養生ユニット3及び梁前養生ユニット4は、建物躯体5の上側4階層分を覆っている。また、建物躯体5の柱前養生ユニット3や梁前養生ユニット4が設置されている高さより下方側は、ネットやシート等で構成されている下側飛散防止膜36によって覆われているとともに、梁前養生ユニット4が設置されている範囲にも下側飛散防止膜36が設置されており、この範囲は梁前養生ユニット4と下側飛散防止膜36によって2重に覆われている。
【0038】
図11に示す状態から、
図12に示すように外周柱2の建方を行った後、当該外周柱2に亘る外周梁6を構築する前に、
図13に示すように、柱前養生ユニット3をクライミングさせてこの柱前養生ユニット3によって外周柱2の建物外側Y1を覆う。次に、
図14に示すように、柱前養生ユニット3が設置されていた箇所を下側飛散防止膜36で覆うと共に、下側飛散防止膜36の建物内側Y2に設置されていた梁前養生ユニット4をクライミングさせて新たに外周梁6を構築する箇所の建物外側Y1を覆う。
このように、外周柱2の建物外側Y1を柱前養生ユニット3によって覆うと共に新たに外周梁6を構築する箇所の建物外側Y1を梁前養生ユニット4によって覆った後、
図11に示すように、外周梁6を構築し、その構築した外周梁6に手すりを設置して当該手すりに下側飛散防止膜36を設置する。
【0039】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0040】
(1)上記実施形態では、柱前養生ユニット3を、柱前用支持材7を介して外周柱2の建物外側Y1を向く面に取り付け、梁前養生ユニット4を、梁前用支持材8を介して外周柱2の建物外周方向Xを向く面に取り付ける構成を例として説明した。しかし、柱前養生ユニット3を、柱前用支持材7を介して外周柱2の建物外側Y1を向く面における建物外周方向Xの中央部に取り付け、梁前養生ユニット4を、梁前用支持材8を介して外周柱2の建物外側Y1を向く面における建物外周方向Xの端部に取り付ける等、柱前養生ユニット3や梁前養生ユニット4を外周柱2に取り付ける位置は適宜変更してもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、梁前用飛散防止膜24を、架設材22から立ち上がる縦材23の上端部に連結して吊り下げ支持する構成を例として説明した。しかし、梁前用支持材8を、建物外側Y1ほど高くなる傾斜姿勢で備えて架設材22を上記実施形態より高い位置とし、梁前用飛散防止膜24をその架設材22に吊り下げ支持する構成とする等、梁前用飛散防止膜24を支持する構成は適宜変更してもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、連結材21をH形鋼で構成する例を説明したが、連結材21を溝形鋼で構成する等、連結材21の構成は適宜変更してもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、柱側被連結部26と柱側連結部27とのうちの柱側被連結部26にのみ柱側貫通孔28を備える構成を例として説明した。しかし、柱側被連結部26と柱側連結部27との双方に柱側貫通孔28を備える構成としてもよく、柱側被連結部26と柱側連結部27とのうちの柱側連結部27にのみ柱側貫通孔28を備える構成としてもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、ユニット側被連結部31とユニット側連結部32とのうちのユニット側被連結部31にのみユニット側貫通孔33を備える構成を例として説明した。しかし、ユニット側被連結部31とユニット側連結部32との双方にユニット側貫通孔33を備える構成としてもよく、ユニット側被連結部31とユニット側連結部32とのうちのユニット側連結部32にのみユニット側貫通孔33を備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 養生ユニット構造
2 外周柱
3 柱前養生ユニット
4 梁前養生ユニット
7 柱前用支持材
8 梁前用支持材
21 連結材
22 架設材
23 縦材
24 梁前用飛散防止膜
26 柱側被連結部
27 柱側連結部
28 柱側貫通孔
29 柱側締結部材
31 ユニット側被連結部
32 ユニット側連結部
33 ユニット側貫通孔
34 ユニット側連結部材
X 建物外周方向
Y1 建物外側