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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166707
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20241122BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241122BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20241122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/92
A61K8/39
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083001
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 弓子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC682
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD532
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC03
4C083DD33
4C083EE05
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】肌への密着感に優れ、しっとり感やハリ感を与え、ハリ感が持続する水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状の油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(B)25℃で固体状の炭化水素を含む油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(C)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20~24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5~4であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル、
(D)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状の油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(B)25℃で固体状の炭化水素を含む油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(C)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20~24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5~4であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル、
(D)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)が、1~160である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~10である請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
さらに、(E)高重合シリコーン油を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
成分(E)に対する成分(A)の質量割合(A)/(E)が、1~20である請求項4記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保湿効果が高く、使用感に優れた水中油型乳化組成物が検討されている。
例えば、特許文献1には、水相中に特定のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、多価アルコール及び水溶性高分子を含有するとともに、特定のIOB値を有する油性成分を含有する水中油型乳化組成物が、水分蒸散抑制効果が高く、経時安定性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-256117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水中油型乳化組成物は、肌への密着感や、しっとり感が十分ではなく、ハリ感やその持続効果も得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、液状の油剤及び特定の固体状の油剤とともに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルを組合わせて用いることにより、肌への密着感に優れ、しっとり感やハリ感を与え、ハリ感が持続する水中油型乳化組成物が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)25℃で液状の油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(B)25℃で固体状の炭化水素を含む油剤((E)高重合シリコーン油を除く)、
(C)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20~24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5~4であるポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル、
(D)水
を含有する水中油型乳化組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水中油型乳化組成物は、渇き際に感触の変化(抵抗感)があり、なじませたときの肌への密着感に優れ、塗布の肌にしっとり感やハリ感を与え、ハリ感が持続するものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)は、25℃で液状の油剤である。
成分(A)には、後述の成分(E)高重合シリコーン油は含まれない。
液状とは、流動性があることをいい、融点が28℃未満のものが含まれる。
成分(A)の油剤としては、例えば、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0009】
より具体的には、炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。
炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、スクワラン、流動イソパラフィンから選ばれる1種以上を含むのがさらに好ましく、スクワランを含むのがよりさらに好ましい。
【0010】
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油及びテトラエステル油が挙げられる。
モノエステル油としては、炭素数2~24の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸のモノエステルが挙げられ、具体例としては、2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-ヘキシルデシルステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソデシルベンゾエート、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、安息香酸アルキル(C12~C15)等が挙げられる。
モノエステル油としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上を含むのがより好ましい。
【0011】
ジエステル油としては、炭素数3~18のジカルボン酸のジエステル、多価アルコールのジ脂肪酸エステル等が挙げられ、具体例としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
ジエステル油としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上を含むのが好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールを含むのがより好ましい。
【0012】
トリエステル油としては、3価以上の多価アルコールのトリ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、トリミリスチン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、さらに、オリブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油等の植物油などが挙げられる。
トリエステル油としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、植物油から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、オリブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、オリブ油から選ばれる1種又は2種以上を含むのがさらに好ましく、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルを含むのがよりさらに好ましい。
【0013】
テトラエステル油としては、4価以上の多価アルコールのテトラ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットが挙げられる。
エステル油としては、ジエステル油、トリエステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、トリエステル油を含むのがより好ましい。
【0014】
エーテル油としては、ジアルキルエーテルが挙げられ、具体的には、ジヘキシルエーテル、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル等が挙げられる。
【0015】
高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。
【0016】
成分(A)の油剤としては、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、炭化水素油、エステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、炭化水素油、ジエステル油、トリエステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、炭化水素油、トリエステル油から選ばれる1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0017】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、含有量は、全組成物中に1~30質量%であるのが好ましく、5~25質量%がより好ましく、9~16質量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いる成分(B)は、25℃で固体状の炭化水素を含む油剤である。
成分(B)には、後述の成分(E)高重合シリコーン油は含まれない。
25℃で固体状の油剤は、融点28℃以上であるのが好ましく、30℃以上がより好ましく、32℃以上がさらに好ましく、40℃以上がよりさらに好ましい。また、融点155℃以下が好ましく、融点125℃以下がより好ましく、115℃以下がさらに好ましく、105℃以下がよりさらに好ましい。なお、本発明において、融点は、医薬部外品原料規格(2006)、一般試験法、融点測定法に記載の第2法により、測定されるものである。
【0019】
成分(B)の油剤として、具体的には、固形パラフィン(融点:50~70℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点:54~102℃)、セレシン(融点:61~95℃)、オゾケライト(融点61~90℃)、ワセリン(融点38~60℃)、ポリエチレンワックス(融点:103~120℃)、フィッシャートロプシュワックス(融点108~120℃)等の炭化水素;カルナウバロウ(融点:80~86℃)、ミツロウ(融点:64℃)、キャンデリラロウ(融点:68~72℃)、コメヌカロウ(融点:70~83℃)、ジョジョバロウ(融点:55℃)、モクロウ(融点:55℃)、ホホバ脂(融点:46~54℃)、ラノリン(融点37~43℃)、水添ホホバ油(融点:68℃)、硬化ヒマシ油(融点:84℃)、水添パーム油(融点:65℃)、硬化ヤシ油(融点:70℃)、パルミチン酸セチル(融点:50℃)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル(融点:66℃)、トリステアリン、トリベヘニン、シア脂(融点:36~45℃)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(融点:38℃)、トリ(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)グリセリル(融点:40℃)、ラウリン酸硬化ヒマシ油(融点:51℃)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油(融点:47℃)、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油(融点:55~63℃)等のエステル油;バチルアルコール(融点:60~70℃)、キミルアルコール(融点:60.5~61.5℃)等のエーテル油;セトステアリルアルコール(融点:51~54℃)、ステアリルアルコール(融点:58.0℃)、ベヘニルアルコール(融点:70.5℃)等の高級アルコール;パルミチン酸(融点:63℃)、ステアリン酸(融点:69℃)等の高級脂肪酸;モノステアリン酸ポリエチエレングリコール(融点:47~52℃)、コレステロール(融点:147~150℃)などが挙げられる。
【0020】
成分(B)のうち、炭化水素としては、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、マイクロクリスタリンワックス、セレシンから選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、マイクロクリスタリンワックスを含むのがさらに好ましい。
また、炭化水素以外の成分(B)の油剤としては、高級アルコール、高級脂肪酸、モノステアリン酸ポリエチエレングリコール、コレステロールから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、セトステアリルアルコール、ステアリン酸、モノステアリン酸ポリエチエレングリコール、コレステロールから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
【0021】
成分(B)は、25℃で固体状の炭化水素を含むが、炭化水素の含有量は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、0.3~7質量%がより好ましく、2~4.3質量%がさらに好ましい。
また、炭化水素に対する成分(B)の質量割合(炭化水素の総量)/(B総量)は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、0.03~3であるのが好ましく、0.05~1がより好ましく、0.25~0.5がさらに好ましい。
【0022】
また、炭化水素以外の成分(B)としては、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、少なくとも融点が35℃以上155℃以下のものから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、少なくとも融点が50℃以上90℃以下のものから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
【0023】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、含有量は、全組成中に1~15質量%であるのが好ましく、3~12質量%がより好ましく、6.5~8.8質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、0.1~10であるのが好ましく、0.5~8がより好ましく、1.1~6がさらに好ましく、1.5~3がよりさらに好ましい。
【0025】
成分(C)のポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルは、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が20~24で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1.5~4である。
【0026】
成分(C)のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、その構造は制限されないが、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数は20~24であり、炭素数21~23が好ましく、炭素数が22のベヘニル基がより好ましい。
【0027】
また、成分(C)のエチレンオキシドの平均付加モル数は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、1.5~4であり、1.5~3が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。一般的に入手可能なポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルは、エチレンオキシドの付加モル数が、所望の重合度を中心として極めて幅広く分布した混合物であるが、平均付加モル数が上記範囲内であることが本発明においては重要である。
【0028】
成分(C)としては、例えば、ポリオキシエチレン(2)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(3)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(4)アラキルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(2)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(3)カルナービルエーテル、ポリオキシエチレン(4)カルナービルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレン(2)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ベヘニルエーテルが好ましい。なお、用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテルの平均付加モル数が上記範囲内であれば、これら例示されたポリオキシエチレンアルキルエーテル以外のものを併用することもできる。
【0029】
成分(C)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.05~5質量%であるのが好ましく、0.07~4質量%がより好ましく、0.3~1.7質量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、1~160であるのが好ましく、8~140がより好ましく、20~33がさらに好ましい。
【0031】
本発明において、成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、なじませたときの肌への密着感を向上させ、塗布後の肌のしっとり感を向上させ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、0.1~100であるのが好ましく、1~50がより好ましく、6~18がさらに好ましい。
【0032】
本発明において、成分(D)の水の含有量は、渇き際に感触の変化(抵抗感)を向上させ、水中油型乳化組成物の安定性を向上させる観点から、全組成中に20~90質量%であるのが好ましく、35~85質量%がより好ましく、40~75質量%がさらに好ましい。
【0033】
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに、(E)高重合シリコーン油を含有することができ、ハリ感をより持続することができる。
成分(E)の高重合シリコーン油は、-SiO-の繰り返しからなるセグメントを主鎖とする直鎖状の高重合ポリマーであり、ポリシロキサンの側鎖及び末端がすべてメチル基であるもの、並びに側鎖の一部がフェニル基又は水素であるものを包含する概念である。
また、成分(E)の高重合シリコーン油は、成分(A)及び(B)には含まれない。
成分(E)の高重合シリコーン油としては、1気圧下25℃で不揮発性液体の直鎖状高重合シリコーン油が好ましい。
【0034】
高重合シリコーン油の25℃における動粘度は、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、1000mm2/s以上100000mm2/s以下であるのが好ましく、5000mm2/s以上80000mm2/s以下がより好ましく、10000mm2/s以上50000mm2/s以下がさらに好ましい。
【0035】
高重合シリコーン油の上記25℃における動粘度は、毛細管式粘度計を使って、一定容量の液体が25℃、一気圧下で粘度計の毛細管を流れる時間を測定し、この流出時間と粘度計定数から次式を用いて算出される。毛細管式粘度計には、一般にウベローデやキャノン-フェンスケなどの型式が用いられる。
<動粘度の算出方法>
動粘度(mm2/s)=流出時間(秒)×粘度計定数
なお、高重合シリコーン油を2種以上用いる場合は、混合した際の動粘度が上記範囲内であればよい。
【0036】
高重合シリコーン油としては、例えば、ジメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、ジメチコンが好ましい。
高重合ジメチコンの市販品としては、KF-96A-5000CS(25℃における動粘度:5000mm2/s)、KF-96A-10000CS(25℃における動粘度:10000mm2/s)、KF-96H-30000CS(25℃における動粘度:30000mm2/s)(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。メチルフェニルポリシロキサンの市販品としては、DOWSIL FZ-209(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0037】
成分(E)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.1~7質量%であるのが好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明において、成分(E)に対する成分(A)の質量割合(A)/(E)は、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、1~20であるのが好ましく、2~10がより好ましく、3~8がさらに好ましく、4.5~7がよりさらに好ましい。
【0039】
本発明において、成分(C)に対する成分(E)の質量割合(E)/(C)は、ハリ感を向上させ、ハリ感の持続を向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、0.1~100であるのが好ましく、0.5~50がより好ましく、2.5~12がさらに好ましい。
【0040】
本発明の水中油型乳化組成物は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油成分、前記以外の界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤、着色剤等を含有することができる。
【0041】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常の方法に従って製造することができる。
例えば、成分(A)、(B)、(C)、(D)及びその他成分を加熱混合した後、冷却することにより、水中油型乳化組成物を得ることができる。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、水中油型乳化化粧料として好適であり、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料;スキンケア乳液、スキンケアクリーム、BBクリーム、美容液等のスキンケア化粧料などの皮膚化粧料として適用することができる。
【実施例0043】
実施例1~9、比較例1~2
表1に示す組成の水中油型乳化組成物を製造し、渇き際の感触の変化、なじむときの密着感(ストップ感)、なじんだ後のしっとり感、被膜感(ハリ感)、被膜感の持続を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0044】
(製造方法)
成分(A)、(B)、(C)、(D)及びその他の成分を80℃以上で加熱混合し、溶解を確認した後、卓上ホモジナイザーで5000rpm・5分処理し、25℃まで冷却して、水中油型乳化組成物を得た。
【0045】
(評価方法)
(1)渇き際の感触の変化:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を、手の甲に0.1g塗布してマッサージしながら、肌を触ったときの水中油型乳化組成物の渇き際の感触の変化について、以下の基準で評価した。結果を、専門評価者3名の合計点で示した。
なお、渇き際の感触の変化とは、肌に水中油型乳化組成物がなじむまでの間に最初の伸びとは異なり抵抗感が高くなることを示す。
5;抵抗感が非常に高い。
4;抵抗感が高い。
3;抵抗感がやや高い
2;抵抗感があまりない。
1;抵抗感がない。
【0046】
(2)なじむときの密着感(ストップ感):
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を、手の甲に0.1g塗布してマッサージし、なじむときに肌を触ったときの密着感を評価した。結果を、専門評価者3名の合計点で示した。
なお、なじむときの密着感とは、肌に水中油型乳化組成物がなじむとき、肌と水中油型乳化組成物が密着して、指がストップする感じを示す。
5;密着感が非常に高い。
4;密着感が高い。
3;密着感がやや高い
2;密着感があまりない。
1;密着感がない。
【0047】
(3)なじんだ後のしっとり感:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を、手の甲に0.1g塗布してマッサージし、肌に水中油型乳化組成物がなじんだ直後の肌を触り、しっとり感を評価した。結果を、専門評価者3名の合計点で示した。
5;非常にしっとり感がある。
4;しっとり感がある。
3;ややしっとり感がある。
2;しっとり感があまりない。
1;しっとり感がない。
【0048】
(4)被膜感(ハリ感):
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を、手の甲に0.1g塗布してマッサージし、なじんだ後の肌を触り、被膜感を評価した。結果を、専門評価者3名の合計点で示した。
なお、被膜感とは、塗布後の肌を指で触ったときに、肌に均一に広がってる残留した水中油型乳化組成物の塗膜のハリ感を示す。
5;被膜感が非常に高い。
4;被膜感が高い。
3;被膜感がやや高い
2;被膜感があまりない。
1;被膜がない。
【0049】
(5)被膜感の持続:
専門評価者3名が、各水中油型乳化組成物を、手の甲に0.1g塗布してマッサージし、直後の肌と1時間後の肌を触り、被膜感の持続について、以下の基準で官能評価した。結果を、専門評価者3名の合計点で示した。
5;被膜感が非常に持続する。
4;被膜感が持続する。
3;被膜感がやや持続する
2;被膜感があまり持続しない。
1;被膜が持続しない。
【0050】
【表1】
【0051】
*1:シュガースクワラン:NIKKOL シュガースクワラン(日本サーファクタント工業社製)、
*2:トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル:T.I.O(日清オイリオグループ社製)、
*3:マイクロクリスタリンワックス;マルチワックス W-445 S(Sonneborn, LLC製)、
*4:セトステアリルアルコール;NAA-48 ビナソール(日油社製)、
*5:ステアリン酸;ステアリン酸(POFAC 1855)(SOUTHERN ACIDS INDUSTRIES SDN. BHD.製)、
*6:モノステアリン酸ポリエチレングリコール;NIKKOL MYS-2V(日本サーファクタント工業社製)、
*7:高重合メチルポリシロキサン;KF-96H-30000CS(信越化学工業社製)
【0052】
以下に示す組成の水中油型乳化組成物は、実施例1~9と同様にして製造され、渇き際に感触の変化(抵抗感)があり、なじませたときの肌への密着感に優れ、塗布の肌にしっとり感やハリ感を与え、ハリ感が持続するものである。
【0053】
処方例1
(成分) 含有量(質量%)
1.シュガースクワラン 4.0
2.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 2.0
3.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 3.0
4.オリブ油 1.0
5.親油型モノステアリン酸グリセリル 2.0
6.マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 0.1
7.自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 0.5
8.イソステアリン酸硬化ヒマシ油 1.5
9.マイクロクリスタリンワックス 3.0
10.ミツロウ 0.5
11.セトステアリルアルコール 1.0
12.ベヘニルアルコール 1.5
13.ステアリン酸 1.0
14.イソステアリン酸 0.5
15.コレステロール 0.4
16.モノステアリン酸ポリエチレングリコール 1.0
17.ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(2E.O.) 0.5
18.高重合メチルポリシロキサン 2.0
19.メチルポリシロキサン 1.0
20.マルチトール液 6.0
21.N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 1.0
22.グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
23.エデト酸二ナトリウム 0.05
24.フェノキシエタノール 0.5
25.濃グリセリン 3.0
26.キサンタンガム 0.1
27.ポリアクリル酸アミド・イソパラフィン混合物 1.0
28.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
29.クロルフェネシン 0.2
30.N-メチル-L-セリン 0.06
31.ジプロピレングリコール 5.0
32.ワレモコウエキス 0.1
33.アルカリゲネス産生多糖体 0.1
34.精製水 残部
合計 100