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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166718
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】多層配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241122BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K1/03 610B
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083018
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 典子
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC16
5E316CC18
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC36
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH22
5E316HH25
5E316JJ14
(57)【要約】
【課題】優れた特性のMIMキャパシタを備える多層配線基板を提供する。
【解決手段】実施形態の多層配線基板は、基板10と導電体層20、40、60a及び80aと誘電体層30とを含む。基板10は絶縁性を有する。導電体層20は基板10上に設けられる。誘電体層30は導電体層20の一部分の上に設けられる。導電体層40は誘電体層30上に設けられる。導電体層60aは、底部が導電体層40に接したビア部V1aと、ビア部V1aの上部に設けられたランド部L1aとを含む。導電体層80aは、底部がランド部L1aに接したビア部V2aと、ビア部V2aの上部に設けられたランド部L2aとを含む。導電体層20の一部分と誘電体層30と導電体層40とは、MIMキャパシタの一方電極、絶縁膜、及び他方電極にそれぞれ対応する。平面視においてランド部L1aは、導電体層40と重なっており、導電体層40と重ならない部分を有しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する基板と、
前記基板上に設けられた第1の導電体層と、
前記第1の導電体層の一部分の上に設けられた誘電体層と、
前記誘電体層上に設けられた第2の導電体層と、
底部が前記第2の導電体層に接した第1のビア部と、前記第1のビア部の上部に設けられた第1のランド部とを有する第3の導電体層と、
底部が前記第1のランド部に接した第2のビア部と、前記第2のビア部の上部に設けられた第2のランド部とを有する第4の導電体層と、
前記第1の導電体層の前記一部分と、前記誘電体層と、前記第2の導電体層とは、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタの一方電極、絶縁膜、及び他方電極にそれぞれ対応し、
平面視において、前記第1のランド部は、前記第2の導電体層と重なっており、前記第2の導電体層と重ならない部分を有しない、
多層配線基板。
【請求項2】
平面視において、前記第1のランド部の外縁部は、前記第2の導電体層の外縁部よりも内側に配置される、
請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記基板上に回路層と絶縁体層とが交互に積層されたビルドアップ層をさらに備え、
前記ビルドアップ層は、前記第1の導電体層を含む第1の回路層と、前記第1のビア部が貫通した部分を含む第1の絶縁体層と、前記第1のランド部を含む第2の回路層と、前記第2のビア部が貫通した部分を含む第2絶縁体層と、前記第2のランド部を含む第3の回路層とを含む、
請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記基板は、前記第1の導電体層と接した第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面と、少なくとも1つの貫通孔とを有し、前記第1の面側に設けられた回路と前記第2の面側に設けられた回路とは、前記少なくとも1つの貫通孔を介して電気的に接続される、
請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記基板は、ガラスからなる、
請求項1に記載の多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の回路層(配線層)を備える多層配線基板が知られている。多層配線基板に対しては、電子機器の高機能化及び小型化に伴い、回路の高密度化や高周波特性への要求が高まっている。回路を高い周波数で動作させるためには、インダクタンス及びキャパシタンスのそれぞれが小さく、且つ高いQ値を有する受動素子を用いることが好ましい。Q値は、素子のインピーダンスから素子の寄生抵抗成分を差し引いた数値に対応する。
【0003】
また、多層配線基板に形成される受動素子の一つとして、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタが知られている。MIMキャパシタは、容量(単位:F)を得ることができる容量素子の一種である。MIMキャパシタは、2つの電極により絶縁膜(誘電体)が挟まれた構造を有する。多層配線基板に形成された回路は、MIMキャパシタの素子特性が改善されることによって、高い周波数で動作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-200911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた素子特性を有するMIMキャパシタを備える多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によると、絶縁性を有する基板と、上記基板上に設けられた第1の導電体層と、上記第1の導電体層の一部分の上に設けられた誘電体層と、上記誘電体層上に設けられた第2の導電体層と、底部が上記第2の導電体層に接した第1のビア部と上記第1のビア部の上部に設けられた第1のランド部とを有する第3の導電体層と、底部が上記第1のランド部に接した第2のビア部と前記第2のビア部の上部に設けられた第2のランド部とを有する第4の導電体層とを含み、上記第1の導電体層の上記一部分と上記誘電体層と上記第2の導電体層とはMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタの一方電極、絶縁膜、及び他方電極にそれぞれ対応し、平面視において上記第1のランド部は上記第2の導電体層と重なっており上記第2の導電体層と重ならない部分を有しない多層配線基板が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によると、平面視において、上記第1のランド部の外縁部は、上記第2の導電体層の外縁部よりも内側に配置される第1の態様に係る多層配線基板が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によると、上記基板上に回路層と絶縁体層とが交互に積層されたビルドアップ層をさらに含み、上記ビルドアップ層は、上記第1の導電体層を含む第1の回路層と、上記第1のビア部が貫通した部分を含む第1の絶縁体層と、上記第1のランド部を含む第2の回路層と、上記第2のビア部が貫通した部分を含む第2絶縁体層と、上記第2のランド部を含む第3の回路層とを含む第1の態様に係る多層配線基板が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によると、上記基板は、上記第1の導電体層と接した第1の面と、上記第1の面の反対側の第2の面と、少なくとも1つの貫通孔とを有し、上記第1の面側に設けられた回路と上記第2の面側に設けられた回路とは、上記少なくとも1つの貫通孔を介して電気的に接続される第1の態様に係る多層配線基板が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様によると、上記基板はガラスからなる第1の態様に係る多層配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた特性のMIMキャパシタを備える多層配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る多層配線基板の断面構造の一例を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る多層配線基板の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図7図7は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図8図8は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図9図9は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図10図10は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図11図11は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図12図12は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図13図13は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図14図14は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図15図15は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図16図16は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図17図17は、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。
図18図18は、比較例に係る多層配線基板の一部の断面構造の一例を示す断面図である。
図19図19は、第1変形例に係る多層配線基板の一部の断面構造の一例を示す断面図である。
図20図20は、第2変形例に係る多層配線基板の一部の断面構造の一例を示す断面図である。
図21図21は、電磁界シミュレーションに利用した多層配線基板のモデルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において変更され得る。図面は、模式的又は概念的なものである。図面に示された構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、実施形態は、図面で開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0014】
以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素には、同一の符号が付加される。以下の説明では、互いに交差する2種類の水平方向のことを、それぞれ「X軸方向」及び「Y軸方向」と呼ぶ。以下の説明では、X軸方向とY軸方向とのそれぞれと平行な平面のことを、「XY平面」と呼ぶ。以下の説明では、水平に載置された板状部材や層などの構成要素に対する垂直方向のことを、「Z軸方向」と呼ぶ。
【0015】
本明細書において、「上方」とは、水平に載置された板状部材や層などの構成要素に対する垂直上方のことを意味する。本明細書において、「下方」とは、水平に載置された構成要素に対する垂直下方のことを意味する。本明細書において、「平面視」とは、例えば、水平に載置された構成要素を上方から視認することを意味する。本明細書において、「平面形状」とは、平面視における形状のことを意味する。本明細書において、「断面視」とは、例えば、構成要素が特定の方向で切断された場合に、切断面を水平方向から視認することを意味する。本明細書において、「断面形状」とは、断面視における形状のことを意味する。
【0016】
本明細書において、「面」とは、例えば、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層のうち、板状部材の面と略平行な層の界面のことを示してもよい。本明細書において、「上面」とは、例えば、板状部材や板状部材に含まれる層の断面が図示された場合に、図面の上側に配置された面のことを意味する。本明細書において、「下面」とは、例えば、板状部材や板状部材に含まれる層の断面が図示された場合に、図面の下側に配置された面のことを意味する。本明細書において、「側面」とは、例えば、板状部材における面の厚みの部分や、板状部材に含まれる層における層の厚みの部分のことを意味する。本明細書において、「径」とは、平面視において、真円形状の場合に直径を意味し、楕円形状の場合に短径及び長径の中間値を意味する。
【0017】
<1>多層配線基板1の構成
まず、実施形態に係る多層配線基板1の構成について説明する。なお、本明細書において、「多層配線基板」は、基板と、この基板の上面及び下面の少なくとも一方に設けられた積層体とを含む構造のことを意味する。基板に設けられた積層体は、絶縁体層及び導電体層を含み、配線として用いられる部分や電子部品(例えば、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタ)として用いられる部分を含む。基板の表面に順次形成される回路層及び絶縁体層の集合は、「ビルドアップ層」と呼ばれてもよい。多層配線基板は、例えば、配線のデザインルールが互いに異なる集積回路(IC)チップやプリント配線基板のように、端子間距離が異なる部品を中継するインターポーザとして利用可能である。
【0018】
図1は、実施形態に係る多層配線基板1の断面構造の一例を示す断面図である。図1は、多層配線基板1のうち一部を抽出して示している。図1に示すように、多層配線基板1は、例えば、コア基板10、導電体層20、誘電体層30、上部電極層40、絶縁体層50、導電体層60a及び60b、絶縁体層70、並びに導電体層80a及び80bを含む。また、多層配線基板1は、MIMキャパシタ100として機能する部分を含む。
【0019】
コア基板10は、回路の支持体として用いられる。コア基板10の材料としては、電気絶縁性を有し、且つシリコンの線膨張係数に近い材料が用いられることが好ましい。また、コア基板10の材料としては、1GHzを超える周波数帯域において70×10-4以下の損失係数(tanδ)を有し、且つ40GHz以下の周波数帯域において50×10-4以下の損失係数(tanδ)を有する材料が用いられることが好ましい。コア基板10の材料としては、例えば、ガラスやセラミックなどの無機材料や、絶縁性有機樹脂などが用いられる。以下では、コア基板10がガラス基板である場合について説明する。ガラスからなるコア基板10は、表面の平坦性及び平滑性と、電気絶縁性と、寸法安定性との点で、高周波で用いられる多層配線基板1に適している。なお、コア基板10の表面には、所定の表面処理が施されていてもよい。例えば、コア基板10の表面には、フッ酸処理が施されていてもよいし、シリコン処理が施されていてもよい。本明細書において、コア基板10は、単に「基板」と呼ばれてもよい。
【0020】
導電体層20は、コア基板10上に設けられる。導電体層20は、対応付けられた回路層の配線として用いられる。また、導電体層20の一部分は、MIMキャパシタ100の下部電極として用いられる。導電体層20の材料としては、例えば、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などの導電材料が用いられる。導電体層20の材料としては、好ましくは銅が用いられる。導電体層20は、複数層で構成されてもよい。本例において、導電体層20は、下方から順に、シード層21、シード層22、及びめっき層23が積層された構造を有する。シード層21は、コア基板10上にシード層22を形成するための薄膜である。シード層22は、シード層21上にめっき層23を形成するための薄膜である。シード層21及び22の組は、めっきのための密着層として用いられる。めっき層23は、電界めっきにより形成された導電部材である。めっき層23の材料としては、例えば、銅が用いられる。この場合、例えば、シード層21の材料としてチタンが用いられ、シード層22の材料として銅が用いられる。
【0021】
誘電体層30は、導電体層20上に設けられる。誘電体層30は、MIMキャパシタ100の絶縁膜として用いられる。誘電体層30の材料としては、例えば、SiN、SiO、TaOxなどの誘電材料が用いられる。誘電体層30の誘電率は、6以上であることが好ましい。
【0022】
上部電極層40は、誘電体層30上に設けられる。上部電極層40は、MIMキャパシタ100の上部電極として用いられる。上部電極層40の材料としては、例えば、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などの導電材料が用いられる。上部電極層40の材料としては、好ましくは銅が用いられる。上部電極層40は、複数層で構成されてもよい。本例において、上部電極層40は、下方から順に、シード層41及びめっき層43が積層された構造を有する。シード層41は、誘電体層30上にめっき層42を形成するための薄膜である。シード層41は、めっきのための密着層として用いられる。めっき層42は、電界めっきにより形成された導電部材である。めっき層42の材料としては、例えば、銅が用いられる。この場合、シード層41の材料としては、例えば、チタン、又はチタンと銅との組み合わせが用いられる。なお、上部電極層40は、「導電体層」と呼ばれてもよい。
【0023】
絶縁体層50は、コア基板10の上方に設けられる。絶縁体層50は、層間絶縁膜として用いられる。絶縁体層50は、コア基板10上に設けられた導電体層20、誘電体層30、及び上部電極層40の組と、導電体層60a及び60bのそれぞれの一部とを覆う部分を有する。絶縁体層50の材料としては、例えば、エポキシ樹脂系材料、エポキシアクリルレート系樹脂、ポリイミド系樹脂などの絶縁性材料が用いられる。絶縁体層50として用いられるこれらの絶縁性材料は、充填剤を含んでいてもよい。材料特性と入手性との観点からは、絶縁体層50の材料として、線膨張係数が7ppm/K以上130ppm/K以下の範囲に含まれるエポキシ配合樹脂が用いられることが好ましい。絶縁体層50の誘電率は、4以下であることが好ましい。なお、絶縁体層50の材料としては、層間絶縁樹脂層を形成できる感光性樹脂組成物やフォトビア材料などであってもよい。このような感光性樹脂組成物やフォトビア材料は、導電材料との密着性を有し、且つ優れた絶縁信頼性を有する。
【0024】
導電体層60a及び60bのそれぞれは、層間接続に用いられる部分を有する配線である。導電体層60aは、ビア部V1aと、ビア部V1aの上部に設けられたランド部L1aとを有する。ビア部V1aは、Z軸方向に延伸し且つ絶縁体層50を貫通して設けられる。ビア部V1aの底部は、上部電極層40に接している。ビア部V1aの高さをhとした場合に、ビア部V1aの径は、ビア部V1aの底部からh/3以下の高さにおいて、45um以下となるように設計されることが好ましい。ランド部L1aは、ビア部V1a上に設けられた部分と、絶縁体層50上に設けられた部分とを有する。導電体層60bは、ビア部V1bと、ビア部V1bの上部に設けられたランド部L1bとを有する。ビア部V1bは、Z軸方向に延伸し且つ絶縁体層50を貫通して設けられる。ビア部V1bの底部は、導電体層20に接している。ランド部L1bは、ビア部V1b上に設けられた部分と、絶縁体層50上に設けられた部分とを有する。
【0025】
導電体層60a及び60bの材料としては、例えば、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などの導電材料が用いられる。導電体層60a及び60bの材料としては、好ましくは銅が用いられる。導電体層60a及び60bは、複数層で構成されてもよい。本例において、導電体層60a及び60bのそれぞれは、下方から順に、シード層61及びめっき層62が積層された構造を有する。シード層61は、上部電極層40又は導電体層20上にめっき層62を形成するための薄膜である。シード層61は、めっきのための密着層として用いられる。めっき層62は、電界めっきにより形成された導電材料である。めっき層62の材料としては、例えば、銅が用いられる。この場合、シード層61の材料としては、例えば、銅が用いられる。なお、導電体層60a及び60bのそれぞれは、コンフォーマルビアを構成してもよい。
【0026】
絶縁体層70は、絶縁体層50の上方に設けられる。絶縁体層70は、層間絶縁膜として使用される。絶縁体層70は、導電体層60aのランド部L1aと、導電体層60bのランド部L1bと、導電体層80a及び80bとのそれぞれの一部を覆う部分を有する。絶縁体層70の材料としては、例えば、絶縁体層50と同様に、エポキシ樹脂系材料、エポキシアクリルレート系樹脂、ポリイミド系樹脂などの絶縁性材料が用いられる。なお、絶縁体層70の材料としては、絶縁体層50と同様に、層間絶縁樹脂層を形成できる感光性樹脂組成物やフォトビア材料などが用いられてもよい。
【0027】
導電体層80a及び80bのそれぞれは、層間接続に用いられる部分を有する配線である。導電体層80aは、ビア部V2aと、ビア部V2aの上部に設けられたランド部L2aとを有する。ビア部V2aは、Z軸方向に延伸し且つ絶縁体層70を貫通して設けられる。ビア部V2aの底部は、導電体層60aのランド部L1aに接している。ランド部L2aは、ビア部V2a上に設けられた部分と、絶縁体層70上に設けられた部分とを有する。導電体層80bは、ビア部V2bと、ビア部V2b上のランド部L2bとを有する。ビア部V2bは、Z軸方向に延伸し且つ絶縁体層70を貫通して設けられる。ビア部V2bの底部は、導電体層60bのランド部L1bに接している。ランド部L2bは、ビア部V2b上に設けられた部分と、絶縁体層70上に設けられた部分とを有する。なお、上部電極層40とランド部L1aとのそれぞれのサイズによっては、ビア部V1aの上方にビア部V2aが配置されていなくてもよい。すなわち、平面視において、ビア部V1aとビア部V2aとは重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。また、導電体層80a及び80bのそれぞれは、コンフォーマルビアを構成してもよい。導電体層60a及び60bと導電体層80a及び80bとのそれぞれがコンフォーマルビアで構成される場合、導電体層60a及び80aの組と、導電体層60b及び80bの組とのそれぞれは、スタックビアを構成してもよい。また、コンフォーマルビアを構成する導電体層60aのランド部L1a上に、導電体層80aのビア部V2aが設けられてもよい。
【0028】
導電体層80a及び80bの材料としては、例えば、銅、銀、すず、金、タングステン、導電性樹脂などの導電材料が用いられる。導電体層80a及び80bの材料としては、好ましくは銅が用いられる。導電体層80a及び80bは、複数層で構成されてもよい。本例において、導電体層80a及び80bのそれぞれは、下方から順に、シード層81及びめっき層82が積層された構造を有する。シード層81は、導電体層80a又は80b上にめっき層82を形成するための薄膜である。めっき層82は、電界めっきにより形成された導電部材である。めっき層82の材料としては、例えば、銅が用いられる。この場合、シード層81の材料としては、例えば、銅が用いられる。本例において、導電体層80aのランド部L2aと導電体層80bのランド部L2bとのそれぞれは、多層配線基板1の最上層に配置されるため、「電極パッド」と呼ばれてもよい。
【0029】
以上のように、多層配線基板1に含まれたMIMキャパシタ100は、導電体層20、誘電体層30、及び上部電極層40により構成される。なお、絶縁体層50及び70のそれぞれは、単層で構成されてもよいし、複数層で構成されてもよい。図1には、多層配線基板1の上方に3層の回路層が設けられる場合が例示されているが、これに限定されない。多層配線基板1が備える回路層の積層数は、任意の積層数に変更され得る。
【0030】
なお、多層配線基板1には、コア基板10上に、受動素子であるキャパシタ(記号C)やコイル(記号L)を設けることによって、所望の周波数応答特性を有する機能が付加され得る。その結果、多層配線基板1は、LC回路を有する高周波用部品として機能し得る。このような高周波用部品としては、例えば、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、アンテナ・カップラ、ダイプレクサ、バランなどが挙げられる。コイルは、ソレノイド、ヘリカル、又はスパイラル形状の導電体が、コア基板10にパターニングされることにより形成される。コイルは、コア基板10に設けられた絶縁体層との位置関係などに応じて任意のインダクタンス値(単位:H)に設計され得る。コア基板10が備える回路には、配線自身による自己インダクタンスが使用されてもよい。高周波回路の設計では、LC回路が他の受動部品や能動部品と組み合わされてもよい。LC回路は、インピーダンスマッチングや、同調回路や、共振回路としても使用され得る。
【0031】
図2は、実施形態に係る多層配線基板1の平面レイアウトの一例を示す平面図である。図2は、多層配線基板1のうち図1に示された部位をコア基板10の上方から見た場合の各構成の配置を示している。図2に示すように、平面視において、導電体層20は、コア基板10の上面の一部に設けられる。平面視において、導電体層60a及び60bのそれぞれは、導電体層20と重なっている。
【0032】
平面視において、誘電体層30の外周縁は、導電体層20の外周縁よりも内側に配置される。平面視において、上部電極層40の外周縁は、誘電体層30の外周縁よりも内側に配置される。すなわち、誘電体層30のうち、上部電極層40の外縁部よりも外側にはみ出している部分の上面及び側面は、絶縁体層50により覆われている。
【0033】
平面視において、導電体層60aのランド部L1aの外周縁は、上部電極層40の外周縁よりも内側に配置される。平面視において、導電体層60bのビア部V1bの底部の外周縁は、ランド部L1bの外周縁よりも内側に配置される。なお、ビア部V1aの底部の径(面積)は、MIMキャパシタ100の上部電極層40の径(面積)よりも小さい。この理由は、レーザビア加工時の上下層間の位置ずれを許容するために、ビア部V1aの底部の上部電極層40に対するレジストレーション間隔が考慮されているためである。
【0034】
以上のように、多層配線基板1において、導電体層60aのランド部L1aは、同じ回路層内で独立した状態で設けられている。そして、ランド部L1aの一辺の長さ(幅)は、上部電極層40の一辺の長さ(幅)よりも小さい。具体的には、例えば、Z軸方向とX軸方向とのそれぞれに平行な断面において、ランド部L1aのX軸方向に沿った幅は、上部電極層40のX軸方向に沿った幅よりも小さい。なお、上部電極層40aと導電体層60aのそれぞれの平面形状は、矩形に限定されず、任意の形状に設計され得る。
【0035】
なお、平面視において、誘電体層30の外周縁の一部又は全てが、上部電極層40の外周縁と重なっていてもよい。また、平面視において、導電体層60aのランド部L1aの外周縁の一部又は全てが、上部電極層40の外周縁と重なっていてもよい。平面視において、導電体層60aのランド部L1aは、上部電極層40と重なり、且つ上部電極層40と重ならない部分を有しない。平面視において、導電体層60aのランド部L1aの面積は、上部電極層40の面積よりも可能な範囲で小さく設計されることが好ましい。
【0036】
本明細書において、多層配線基板の構造の観察には、X線構造解析装置や3次元X線顕微鏡(X線CT)を使用することが考えられる。X線構造解析装置やX線CTは、対象物の内部を非破壊で観察することができる。例えば、3次元X線顕微鏡を用いた対象物の観察では、まず、上部電極層40、ビア部V1a、及びランド部L1aに対応する部位の位置関係が確認される。そして、該当する部位の断面が、樹脂埋め処理及び研磨処理後に、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)により観察されることによって確認される。なお、「樹脂埋め処理」は、該当する部位が含まれる基板片をエポキシ樹脂で包埋する処理に対応する。「研磨処理」は、観察対象面(断面)を機械研磨した上で、バフ研磨などで表面を平滑に整える処理に対応する。
【0037】
<2>多層配線基板1の製造方法
以下に、図3乃至図17を参照して、実施形態に係る多層配線基板1の製造方法について説明する。図3乃至図17のそれぞれは、実施形態に係る多層配線基板の製造途中の断面構造の一例を示す断面図である。図3乃至図17のそれぞれは、図1に示された多層配線基板1の一部分に対応する領域を抽出して示している。
【0038】
まず、図3に示すように、コア基板10が用意される。コア基板10の厚さは、製造時のハンドリングを鑑みて、0.08mm以上0.8mm以下であることが好ましい。多層配線基板1は、コア基板10が他の支持基板に貼り合わされた状態で製造されてもよい。支持基板の材料は、特定のものに限定されない。
【0039】
次に、図4に示すように、コア基板10上にシード層21及び22が順に形成される。本処理では、シード層21及び22のそれぞれの膜厚が100nm以上500nm以下の範囲に含まれるように、シード層21及び22が成膜される。シード層21及び22の形成には、例えば、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、又は無電解めっき法が用いられる。シード層21及び22の材料としては、例えば、クロム、モリブデン、チタン、銅などが用いられる。
【0040】
次に、図5に示すように、フォトレジスト90が形成され、めっき層23が形成される。具体的には、まず、シード層22上に、フォトレジスト90が形成される。フォトレジスト90としては、例えば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストが用いられる。そして、露光処理により、フォトレジスト90に対して導電体層20に対応するパターンが描画(露光)される。その後、現像処理により、描画されたパターンに基づいて、フォトレジスト90の一部が除去される。すると、導電体層20に対応する部分において、シード層22の表面が露出する。続いて、電界めっき処理によりシード層22に電力が供給され、シード層22の表面の露出部分にめっき層23が形成される。本処理では、めっき層23の厚さが2um以上10um以下の範囲に含まれるように、めっき層23が形成される。本処理で形成されるめっき層23は、MIMキャパシタ100の下部電極として用いられる部分を含む。めっき層23の材料としては、例えば、銅が用いられる。
【0041】
次に、図6に示すように、フォトレジスト90が除去される。具体的には、めっき層23が形成された後に、不要になったフォトレジスト90の溶解剥離が実行される。
【0042】
次に、図7に示すように、誘電体層30及びシード層41が形成される。具体的には、まず、めっき層23の上面及び側面が覆われるように、誘電体層30が形成される。言い換えると、誘電体層30は、めっき層23のパターン上に設けられる。本処理で形成される誘電体層30は、MIMキャパシタ100の絶縁膜として用いられる部分を含む。誘電体層30の形成には、任意の公知の方法が適用可能であり、例えば、プラズマCVD法が用いられる。誘電体層30の材料としては、例えば、SiN、SiO、TaOxなどが用いられる。その後、誘電体層30上に、シード層41が形成される。シード層41の形成には、例えば、スパッタ法、CVD法、又は無電解めっき法が用いられる。シード層41の材料としては、例えば、クロム、モリブデン、チタン、銅などが用いられる。
【0043】
次に、図8に示すように、フォトレジスト91が形成され、めっき層42が形成される。具体的には、まず、シード層41上に、フォトレジスト91が形成される。フォトレジスト91としては、例えば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストが用いられる。そして、露光処理により、フォトレジスト91に対して上部電極層40に対応するパターンが描画(露光)される。その後、現像処理により、描画されたパターンに基づいて、フォトレジスト91の一部が除去される。すると、上部電極層40に対応する部分において、シード層41の表面が露出する。続いて、電界めっき処理によりシード層41に電力が供給され、シード層41の表面の露出部分にめっき層42が形成される。本処理で形成されるめっき層42は、MIMキャパシタ100の上部電極として用いられる。めっき層42の材料としては、例えば、銅が用いられる。なお、本処理で形成されるめっき層42の厚さは、0.2um以上30um以下の範囲に含まれることが望ましい。電解銅めっきの厚みが0.2um未満である場合、後のエッチング処理によって回路が消失するおそれや、回路の接続信頼性や電気伝導性が低下するおそれがある。一方で、電解銅めっき厚が30umを超える場合、30um厚以上のレジスト層(フォトレジスト91)の形成が要求される。この場合、製造コストが増大するとともに、レジスト解像性の低下により30um以下の微細なピッチの配線の形成が困難となる。このため、本処理で形成されるめっき層42の厚さは、より好ましくは0.3um以上25um以下であり、さらに好ましくは0.5um以上10um以下である。
【0044】
次に、図9に示すように、フォトレジスト91が除去された後に、フォトレジスト92が形成される。具体的には、まず、フォトレジスト91が除去される。それから、シード層41及びめっき層42それぞれの露出部分を覆うように、フォトレジスト92が形成される。フォトレジスト92としては、例えば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストが用いられる。そして、露光処理及び現像処理により、平面視においてめっき層42の全体と重なる部分を含む形状にフォトレジスト92が加工される。言い換えると、上部電極層40として残す部位を覆うように、フォトレジスト92が形成される。例えば、平面視において、現像処理後のフォトレジスト92の外周縁は、めっき層23の外周縁と、めっき層42の外周縁との間に位置する。
【0045】
次に、図10に示すように、シード層21、22及び41、並びに誘電体層30のそれぞれの一部が除去される。具体的には、図9に示されたフォトレジスト92をマスクとして、例えば、ドライエッチング処理が実行される。これにより、フォトレジスト92により覆われていない部分のシード層41及び誘電体層30が除去される。シード層41及び誘電体層30が除去された後に、フォトレジスト92は除去される。続けて、フラッシュエッチング処理によって、シード層21及び22のうち、平面視においてめっき層23と重ならない部分が除去される。フラッシュエッチング処理は、配線間に残ったシード層21及び22を除去する目的で実施される。フラッシュエッチングには、例えば、硫酸などの酸性溶液や、過酸化水素などの酸化性溶液が用いられる。本処理により、図1に示された導電体層20、誘電体層30、及び上部電極層40の構造が形成される。つまり、下部電極として導電体層20の一部分を利用し、絶縁膜として誘電体層30を利用し、上部電極として上部電極層40を利用したMIMキャパシタ100の構造が完成する。
【0046】
次に、図11に示すように、絶縁体層50が形成される。絶縁体層50は、コア基板10、導電体層20、誘電体層30、及び上部電極層40のそれぞれの露出部分を覆うように設けられる。絶縁体層50の材料としては、例えば、非感光性絶縁樹脂、又は感光性絶縁樹脂が用いられる。
【0047】
次に、図12に示すように、ホールH1a及びH1bが形成される。ホールH1a及びH1bは、それぞれビア部V1a及びV1bに対応して設けられる。ホールH1aの底部では、上部電極層40(具体的には、めっき層42)の一部が露出する。ホールH1bの底部では、導電体層20(具体的には、めっき層23)の一部が露出する。
【0048】
絶縁体層50が非感光性絶縁樹脂である場合、ホールH1a及びH1bは、例えば、レーザを用いて形成され得る。ホールH1a及びH1bの加工に用いることができるレーザは、例えば、COレーザ、MVレーザ、ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザからなる群から選択され得る。処理の簡便性の観点からは、MVレーザ、又はCOレーザが用いられることが好ましい。なお、レーザを用いてホールH1a及びH1bが形成された後に、非感光性絶縁樹脂の残渣を除去するために、デスミア処理が実行されてもよい。
【0049】
絶縁体層50が感光性絶縁樹脂である場合、絶縁体層50は、例えば、真空プレスラミネートにより形成される。そして、絶縁体層50に対して露光処理及び現像処理が実行されることによって、ホールH1a及びH1bが形成される。その後、ポストUVキュア及び/又は熱キュアによる後硬化処理によって、感光性絶縁樹脂が硬化する。これにより、感光性絶縁樹脂を用いた層間絶縁層(絶縁体層50)が形成される。なお、本工程の露光処理では、マスク露光法が採用されてもよいし、LDI(Laser Direct Imaging)露光法やDLP(Digital Light Processing)露光法などの直接描画露光法が採用されてもよい。本工程の現像処理では、ウェット現像処理と、ドライ現像処理とのいずれが採用されてもよい。ウェット現像処理が採用される場合、現像液の構成は、感光性絶縁樹脂の組成に応じて適宜選択される。現像液としては、例えば、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液などのアルカリ性水溶液が用いられる。
【0050】
次に、図13に示すように、シード層61及びフォトレジスト93が形成される。具体的には、まず、シード層61が、絶縁体層50の上面と、ホールH1a及びH1bのそれぞれの側面及び底面とに沿って形成される。それから、シード層61上に、フォトレジスト93が形成される。フォトレジスト93としては、例えば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストが用いられる。そして、露光処理及び現像処理により、平面視においてホールH1a及びH1bのそれぞれの上部が露出するようにフォトレジスト93が加工される。言い換えると、平面視において、導電体層60aのランド部L1aが形成される部分と、導電体層60bのランド部L1bが形成される部分とが開口するように、フォトレジスト93が形成される。なお、露光処理及び現像処理が実行されたフォトレジスト93は、その他の回路のパターンを含んでいてもよい。
【0051】
次に、図14に示すように、めっき層62が形成される。具体的には、電界めっき処理によりシード層61に電力が供給され、シード層61の表面の露出部分にめっき層62が形成される。本処理で形成されためっき層62は、ホールH1a及びH1bのそれぞれに埋め込まれる。ホールH1aに形成されたシード層61及びめっき層62の組は、導電体層60aのビア部V1aに対応する。ホールH1bに形成されたシード層61及びめっき層62の組は、導電体層60bのビア部V1bに対応する。また、めっき層62は、ホールH1a及びH1bの上部にも形成される。ホールH1a及びH1bの上部に形成されためっき層62は、フォトレジスト93と同じ高さに設けられる。めっき層62の材料としては、例えば、銅が用いられる。
【0052】
次に、図15に示すように、フォトレジスト93と、シード層61の一部とが除去される。具体的には、まず、フォトレジスト93が除去される。それから、例えば、フラッシュエッチング処理によって、シード層61のうち不要な部分(例えば、平面視においてめっき層62と重ならない部分)が除去される。これにより、図1に示された導電体層60a及び60bの構造が形成される。つまり、ビア部V1aの上部に形成されたシード層61及びめっき層62の組は、導電体層60aのランド部L1aに対応する。ビア部V1bの上部に形成されたシード層61及びめっき層62の組は、導電体層60bのランド部L1bに対応する。
【0053】
次に、図16に示すように、絶縁体層70が形成され、ホールH2a及びH2bが形成され、シード層81が形成される。具体的には、まず、絶縁体層70が、絶縁体層50と、導電体層60aのランド部L1aと、導電体層60bのランド部L1bとのそれぞれの露出部分を覆うように設けられる。絶縁体層70の材料としては、例えば、絶縁体層50と同様に、非感光性絶縁樹脂、又は感光性絶縁樹脂が用いられる。そして、ホールH2a及びH2bが、平面視においてランド部L1a及びL1bとそれぞれ重なるように形成される。ホールH2a及びH2bの形成方法は、例えば、ホールH1a及びH1bの形成方法と同様である。その後、シード層81が、絶縁体層50の上面と、ホールH1a及びH1bのそれぞれの側面及び底面とに沿って形成される。
【0054】
次に、図17に示すように、フォトレジスト94が形成され、めっき層82が形成される。具体的には、まず、シード層81上に、フォトレジスト94が形成される。フォトレジスト94としては、例えば、昭和電工マテリアルズ社製のドライフォトレジストが用いられる。そして、露光処理及び現像処理により、平面視においてホールH2a及びH2bのそれぞれの上部が露出するように、フォトレジスト94が加工される。その後、電界めっき処理により、シード層81の表面の露出部分にめっき層82が形成される。本処理で形成されためっき層82は、ホールH2a及びH2bのそれぞれに埋め込まれる。また、めっき層82は、ホールH2a及びH2bの上部にも形成される。
【0055】
次に、フォトレジスト94と、シード層81のうち不要な部分(例えば、平面視においてめっき層82と重ならない部分)が除去される。これにより、図1に示された導電体層80a及び80bの構造が形成される。つまり、ホールH2aに形成されたシード層81及びめっき層82の組は、導電体層80aのビア部V2aに対応する。ビア部V2aの上部に形成されたシード層81及びめっき層82の組は、導電体層80aのランド部L2aに対応する。ホールH2bに形成されたシード層81及びめっき層82の組は、導電体層80bのビア部V2bに対応する。ビア部V2bの上部に形成されたシード層81及びめっき層82の組は、導電体層80bのランド部L2bに対応する。
【0056】
なお、以上で説明された導電体層20、60a、60b、80a及び80bのそれぞれの形成方法は、その他の方法であってもよい。例えば、導電体層20、60a、60b、80a及び80bのそれぞれは、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、インクジェット法、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷などにより形成されてもよい。ビアの加工サイズを縮小することは、レーザ照射を用いる場合よりも、フォトリソグラフィ法を用いた場合の方が容易である。このため、パターンの高密度化に応じて、レーザ照射によるビア加工が困難なサイズのビアを形成する場合には、ビアの加工にフォトリソグラフィ法が利用されることが好ましい。つまり、小径のビアに設計された導電体層60a、60b、80a及び80bのそれぞれの形成には、フォトビア法によるセミアディティブ法が用いられることが好ましい。
【0057】
なお、以上で説明された絶縁体層50及び70の形成方法は、その他の方法であってもよい。絶縁体層50及び70を形成する工程において、液状又はフィルム状の絶縁性材料が使用されてもよいし、絶縁性材料の感光特性がネガ型及びポジ型のいずれであってもよい。絶縁性材料が液状である場合、絶縁体層50及び70は、スピンコート法、ダイコータ法、カーテンコート法、ルールコータ法、ドクターブレード法、スクリーン印刷などにより形成され得る。絶縁性材料がフィルム状である場合、絶縁体層50及び70は、例えば、真空ラミネート法により形成され得る。このように形成された絶縁体層50及び70のそれぞれは、加熱又は光照射により硬化させてもよい。
【0058】
なお、本明細書で説明されたセミアディティブ法は、以下の(1)、(2)及び(3)の処理を含む。
【0059】
(1)まず、導電体回路(例えば、導電体層20やMIMキャパシタ100)上に、絶縁膜(例えば、絶縁体層50)が形成される。その後、層間接続用のビア(例えば、ホールH1a及びH1b)が、レーザ照射により形成される。ビアが形成された後に、樹脂の残渣除去のために、デスミア処理が実行されてもよい。
【0060】
(2)次に、基板(例えば、コア基板10)に対してスパッタ処理や無電解銅めっき処理が施される。導電体層(例えば、導電体層60)の回路パターンは、ドライフィルムレジスト(例えば、フォトレジスト93)によりパターンが形成された後に、電解銅めっきを行うことにより形成される。
【0061】
(3)最後に、ドライフィルムレジストが剥離され、スパッタ層(例えば、シード層61)ないし無電解銅めっき層(例えば、めっき層62)のフラッシュエッチング処理が実行される。これにより、導電体層(例えば、導電体層60a及び60b)の回路パターンが形成される。
【0062】
<3>実施形態の効果
以上で説明された実施形態によれば、優れた素子特性を有するMIMキャパシタ100を備える多層配線基板1を提供することができる。以下に、実施形態の効果の詳細について、比較例を用いて説明する。
【0063】
図18は、比較例に係る多層配線基板1Zの一部の断面構造の一例を示す断面図である。図18は、図1に示された多層配線基板1と同様の領域を抽出して示している。図18に示すように、多層配線基板1Zは、多層配線基板1に対して、MIMキャパシタ100に接続された導電体層60aのランド部L1aが、ランド部L1zに置き換えられた構成を有する。具体的には、多層配線基板1Zでは、平面視において、導電体層60aのランド部L1zの外周縁が、上部電極層40の外周縁よりも外側に設けられている。このため、多層配線基板1Zのランド部L1zの面積は、多層配線基板1のランド部L1aの面積よりも大きい。多層配線基板1Zの導電体層60aは、回路の引き回しのために、ランド部L1zからXY平面内で延伸した配線部を有していてもよい。ランド部L1zから配線が引き回されることにより、小型且つ省スペースな回路が実現され得る。
【0064】
多層配線基板1Zでは、異なる回路層間が、層間ビア(例えば、導電体層60aや導電体層80a)を介して接続される。そして、上部電極層40のパターンの設計には、レーザビア加工時の位置ずれによる、ビア部V1aの上部電極層40からの脱落を抑制するために、レジストレーション間隔が考慮される。例えば、上部電極層40の径は、レーザビアの最小径よりも片側数十um大きく設計される。具体的には、MIMキャパシタ100の上部電極層40の寸法は、ビア部V1aの底部の直径が45umである場合に、60um以上で設けられる。同様に、導電体層60aのランド部L1zのパターンは、ランド部L1zに接続されるビア部V2aのレジストレーション間隔を確保するために、大きく設計されることが好ましいと考えられていた。
【0065】
しかしながら、MIMキャパシタ100の寄生成分は、上部電極層40の周囲に配置される配線の有無に応じて変化する。例えば、素子同士を接続するための引出配線や、パッドとビアとのレギュレーション部分は、MIMキャパシタ100の寄生成分となり得る。
【0066】
そこで、実施形態に係る多層配線基板1では、平面視において、MIMキャパシタ100に接続される導電体層60aのランド部L1aが、MIMキャパシタ100の上部電極(上部電極層40)と同じ、若しくは上部電極層40よりも小さく設けられる。
【0067】
具体的には、多層配線基板1は、MIMキャパシタ100の上部電極にビア部V1aを介して接続されたランド部L1aが、同じ回路層内で周囲のパターンから独立した構造を有する。そして、平面視において、ランド部L1aの外縁部が、例えば、上部電極層40の外縁部よりも内側に形成される。つまり、ランド部L1aは、平面視において、MIMキャパシタ100の上部電極と重ならない領域に延伸して設けられた部分を有しない。
【0068】
このような多層配線基板1では、ランド部L1aと上部電極層40との間の寄生インダクタンスが、平面視においてランド部L1aが上部電極層40よりも小さいことにより低減される。また、多層配線基板1では、配線の引き回し部分における寄生インダクタンスが、ランド部L1aにおいて同じ回路層における配線の引き回しがないことにより低減される。これにより、多層配線基板1において、MIMキャパシタ100の上部電極の周囲における寄生容量は、比較例よりも低減され得る。
【0069】
以上のように、実施形態に係る多層配線基板1は、比較例よりも、MIMキャパシタ100の寄生成分が低減された構造を有している。その結果、多層配線基板1では、MIMキャパシタ100のQ値の低下が抑制される。つまり、実施形態によれば、コア基板10を備える多層配線基板1において、寄生成分が低減され、且つQ値の優れたMIMキャパシタ100を有する高周波回路を得ることができる。従って、実施形態によれば、優れた素子特性を有するMIMキャパシタ100を備える多層配線基板1が提供され得る。
【0070】
なお、周波数ばらつきが小さく且つ寄生成分の少ないビア部V1aを有した多層配線基板1を得るためには、MIMキャパシタ100の上部電極及び下部電極のばらつきが低減されることが好ましい。また、導電体層60aにおいて、ビア部V1aとランド部L1aとの接続部が省略されることによって、インピーダンスの不連続点が削減されることが好ましい。つまり、導電体層60aなどの層間接続に用いられる導電体層を構成するビア部とランド部との組では、導電体がビア部とランド部との間で連続的に形成されていることが好ましい。また、導電体層60aのビア部V1aとMIMキャパシタ100とは、コア基板10に垂直な方向(Z軸方向)に接続されることが好ましい。これらの施策により、MIMキャパシタ100のQ値が改善され得る。
【0071】
<4>変形例
実施形態に係る多層配線基板1は、種々の変形が可能である。以下に、多層配線基板1の変形例として、第1変形例と第2変形例について順に説明する。
【0072】
(第1変形例)
実施形態では、コア基板10の上面に導電体層及び絶縁体層が積層される場合について例示したが、これに限定されない。多層配線基板1は、コア基板10の上面及び下面のそれぞれに導電体層及び絶縁体層が積層された構造を有していてもよい。
【0073】
図19は、第1変形例に係る多層配線基板1Aの一部の断面構造の一例を示す断面図である。図19に示すように、第1変形例に係る多層配線基板1Aは、両面積層の多層配線基板である。そして、多層配線基板1Aでは、コア基板10の上面TSと、コア基板の下面BSとの少なくとも一方に、実施形態で説明されたMIMキャパシタ100及び導電体層60aが設けられる。本例では、コア基板10の上面TS側に、絶縁体層50a及び70aが積層され、コア基板10の下面BS側に、絶縁体層50b及び70bが積層されている。そして、コア基板10及び絶縁体層50aの間と、絶縁体層50a及び70aの間と、コア基板10及び絶縁体層50bの間と、絶縁体層50b及び70bの間とのそれぞれに、回路層が適宜設けられている。また、実施形態と同様のMIMキャパシタ100及び導電体層60aが、コア基板10の上面TSに設けられている。
【0074】
多層配線基板1Aでは、コア基板10の上面TS及び下面BSに導電体層が形成されるとともに、コア基板10に貫通電極が形成されることによって、コア基板10の上面TSに設けられた回路と、コア基板10の下面BSに設けられた回路とが接続される。
【0075】
具体的には、まず、コア基板10に貫通孔VHが形成される。貫通孔VHは、例えば、レーザ、薬品処理、放電加工、又はこれらを複数組み合わせた工法によって形成される。なお、貫通孔VHの形成後に、貫通孔VHの側面の平滑化を目的とした薬品処理が実行されてもよい。また、貫通孔VHの形成には、例えば、フォトレジスト材料が用いられる。この場合、パターニングされたフォトレジスト材料をマスクとして、サンドブラスト加工、ドライエッチング加工、フッ化水素酸などによるエッチング加工が実行される。貫通孔VHの形成には、プロセスの簡便性とスループットの観点から、レーザ加工又は放電加工が用いられることが好ましい。レーザ加工で用いるレーザは、例えば、COレーザ、MVレーザ、ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザから選択される。貫通孔VHの開口径は、貫通孔VHの直上に配置される導電体層20の配線幅よりも小さいことが好ましい。
【0076】
そして、貫通孔VHと、コア基板の上面TS及び下面BSとが覆われるように、導電体層20が形成される。例えば、シード層21及び22が形成され、電界めっきによりめっき層23が形成される。シード層21及び22は、例えば、スパッタ法、又はCVD法により形成される。導電体層20の材料としては、例えば、クロム、モリブデン、チタン、銅などが用いられる。これにより、コア基板10の上面TSに設けられた回路と、コア基板10の下面BSに設けられた回路とが電気的に接続される。その後、上面TS及び下面BSのそれぞれにおいて、サブトラクティブ法やセミアディティブ法により、各回路層の配線パターンが形成される。本例では、コア基板10の上面TS側に設けられた導電体層60a及び80aが、貫通孔VHを介して、コア基板10の下面BS側に設けられた導電体層60c及び80cに電気的に接続されている。
【0077】
以上で説明された第1変形例に係る多層配線基板1Aは、実施形態と同様に、導電体層60aのランド部L1aと上部電極層40とが構成されることによって、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
なお、コア基板10の厚さは、貫通孔VHを形成するプロセスや製造時のハンドリングを鑑みて、0.08mm以上0.8mm以下であることが好ましい。上面TSに設けられた回路と及び下面BSに設けられた回路との接続が不要である場合、多層配線基板1Aから貫通孔VHが省略されてもよい。図19では、コア基板10の上面TS及び下面BSのそれぞれに3層の回路層を有するビルドアップ層が設けられる場合について例示したが、これに限定されない。多層配線基板1Aが備える導電体層の積層数は、任意の数に変更され得る。コア基板10の上面TSに設けられる構造と、コア基板10の下面BSに設けられる構造とは、Z軸方向に対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0079】
(第2変形例)
実施形態では、導電体層60a、60b、80a及び80bのそれぞれが、電解めっきにより形成される場合について例示したが、これに限定されない。導電体層60a、60b、80a及び80bのそれぞれは、単一種類の材料により形成されてもよいし、3種類以上の材料を用いて形成されてもよい。なお、導電体層が単一種類の材料で構成されることは、微量の不純物を含むことを除外せず、主要な材料が単一種類の材料により構成されていればよい。
【0080】
図20は、第2変形例に係る多層配線基板1Bの一部の断面構造の一例を示す断面図である。図20に示すように、多層配線基板1Bは、多層配線基板1に対して、導電体層60a及び60bが単一種類の導電部材63により構成され、導電体層80a及び80bが単一種類の導電部材83により構成された構成を有する。第2変形例に係る多層配線基板1Bは、実施形態と同様に、導電体層60aのランド部L1aと上部電極層40とが構成されることによって、多層配線基板1Bは、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態及び各変形例は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【実施例0082】
以下に、本発明に関連して行った電磁界シミュレーションについて記載する。電磁界シミュレーションでは、MIMキャパシタ100に接続される導電体層60aのランド部L1aの大きさを可変としたモデルを作成し、Q値(1GHz)の評価を行った。電磁界シミュレーションには、ANSYS社製HFSS(ver.2022 R1)を使用した。電磁界シミュレーションにおいては、以下のように解析条件を設定した。
【0083】
図21は、電磁界シミュレーションに利用した多層配線基板1Cのモデルを示す断面図である。図21に示すように、多層配線基板1Cは、多層配線基板1と類似した構成を有する。多層配線基板1Cでは、誘電体層30を挟んで対向する2つの電極(導電体層20及び上部電極層40)の間で、コンデンサ(キャパシタ)が形成される。本シミュレーションでは、導電体層20、上部電極層40、導電体層60a及び80bのそれぞれの材料を、銅とした。誘電体層30の材料を、シリコンナイトライド(SiNx)とした。
【0084】
本シミュレーションでは、コア基板10の厚さを0.13mmとした。絶縁体層50の厚さを、20nmとした。絶縁体層70の厚さを、35nmとした。導電体層60aのランド部L1aの厚さを、15nmとした。導電体層80aのランド部L2aの厚さを、15nmとした。図示が省略されているが、コア基板10の表面に形成された1層の支持体の厚さを、1mmとした。
【0085】
本シミュレーションでは、平面視において、上部電極層40と、導電体層60aのランド部L1aと、導電体層80aのそれぞれの形状を矩形(正方形)にモデリングした。上部電極層40の一辺の長さを「上部電極辺W1」とした。導電体層60aのランド部L1aの一辺の長さを「ランド辺W2」とした。本シミュレーションでは、上部電極辺W1を、65um、80um、100umの3つの条件で変えて評価した。本シミュレーションでは、ランド辺W2を、60um、80um、100um、120umの4つの条件で変えて評価した。なお、導電体層80aのランド部L2aの形状は、円形、長方形、多角形などであってもよい。
【0086】
本シミュレーションでは、導電体層60aのビア部V1aの形状を、下側(ボトム側)が小径となるような円筒形(円錐台形)とした。導電体層60aのビア部V1aの上部の径を「ビア径トップD1」とした。導電体層60aのビア部V1aの底部の径を「ビア径ボトムD2」とした。本シミュレーションでは、ビア径トップD1を、60umとした。本シミュレーションでは、ビア径ボトムD2を、45um、20umの2つの条件で変えて評価した。
【0087】
以下では、ビア径ボトムD2が45umである場合の、上部電極辺W1及びランド辺W2のそれぞれの条件の組み合わせに応じたQ値を算出する電磁界シミュレーションを、第1実施例とした。また、ビア径ボトムD2が20umである場合の、上部電極辺W1及びランド辺W2のそれぞれの条件の組み合わせに応じたQ値を算出する電磁界シミュレーションを、第2実施例とした。つまり、第1実施例と第2実施例との間では、ビア径ボトムD2の数値のみ異なっている。
【0088】
(実施例1)
下記の表1は、第1実施例における電磁界シミュレーション結果を示している。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示されるように、上部電極辺W1が65umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が65um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0091】
同様に、上部電極辺W1が80umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が80um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0092】
同様に、上部電極辺W1が100umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が100um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0093】
(実施例2)
下記の表2は、第2実施例における電磁界シミュレーション結果を示している。
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示されるように、上部電極辺W1が65umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が65um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0096】
同様に、上部電極辺W1が80umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が80um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0097】
同様に、上部電極辺W1が100umである場合、ランド辺W2が小さいほど、Q値の値が大きくなっていることが確認された。この条件では、特に、ランド辺W2が100um以下であり、平面視においてランド部L1aが上部電極層40と重ならない部分を有しない場合に、Q値の低下が抑制されていることが確認された。
【0098】
以上で説明された第1実施例の電磁界シミュレーション結果と第2実施例の電磁界シミュレーション結果とを比較すると、上部電極辺W1とランド辺Wとビア径トップD1とが同じである場合、ビア径ボトムD2が45umから20umへ縮小されることによって、Q値の低下が1.0%以下に抑制されていることが確認された。このように、ビア部V1aの底部の径を小さくすることのQ値への影響は、限定的である。従って、ランド部L1aのサイズを小さくするためにビア部V1aの底部の径が小さく設計された場合にも、優れたQ値のMIMキャパシタ100を実現することができる。
【0099】
以上のように、実施形態で説明された多層配線基板1の構造により、寄生成分が小さく、Q値が大きいキャパシタ構造が得られることが確認された。従って、実施形態によれば、寄生成分の小さいMIMキャパシタ100を有し、高周波数で使用され得る回路を備える多層配線基板1を実現することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,1A,1B,1C,1Z…多層配線基板、10…コア基板、20…導電体層、21,22…シード層、23…めっき層、30…誘電体層、40…上部電極層、41…シード層、42…めっき層、50…絶縁体層、60a,60b,60c…導電体層、61…シード層、62…めっき層、63…導電部材、70…絶縁体層、80a,80b,80c…導電体層、81…シード層、82…めっき層、83…導電部材、90~95…フォトレジスト、100…MIMキャパシタ、V1a,V1b,V2a,V2b…ビア部、L1a,L1b,L2a,L2b…ランド部、H1a,H1b,H2a,H2b…ホール、OE1,OE2…外縁部、TS…上面、BS…下面、D1…ビア径トップ、D2…ビア径ボトム、W1…上部電極辺、W2…ランド辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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