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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166722
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20241122BHJP
   H01Q 3/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01Q13/02
H01Q3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083025
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津▲崎▼ 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】牛嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇嗣
(72)【発明者】
【氏名】河合 正浩
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA07
5J021AB07
5J021CA03
5J021HA04
5J045AA21
5J045DA01
5J045HA02
5J045JA03
5J045LA01
5J045NA07
(57)【要約】
【課題】複数のホーンアンテナが鉛直方向に配置された、小型なアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】導電層を有する誘電体基板と、この誘電体基板に固定された、高周波信号を発生する送受信機と、誘電体基板に基端部が固定され、基端部から反対側の先端部に向けて誘電体基板から離れるよう傾斜する、複数の導電性平板と、を備え、複数の導電性平板のそれぞれの基端部からそれぞれの先端部に向かう方向は全て同じであり、複数の導電性平板のそれぞれの導電性平板と誘電体基板との傾きは全て異なっており、少なくとも隣り合う導電性平板は、誘電体基板の垂直方向から見て重なり部分を有し、それぞれの導電性平板の誘電体基板側の空間に、それぞれ送受信機から給電線路を介して給電される高周波信号を放射する波源を備えたアンテナ装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有する誘電体基板と、
この誘電体基板に固定された、高周波信号を発生する送受信機と、
前記誘電体基板に基端部が固定され、前記基端部から反対側の先端部に向けて前記誘電体基板から離れるよう傾斜する、複数の導電性平板と、を備え、
前記複数の導電性平板のそれぞれの前記基端部からそれぞれの前記先端部に向かう方向は全て同じであり、複数の前記導電性平板のそれぞれの導電性平板と前記誘電体基板との傾きは全て異なっており、少なくとも隣り合う前記導電性平板は、前記誘電体基板の垂直方向から見て重なり部分を有し、それぞれの導電性平板の前記誘電体基板側の空間に、それぞれ前記送受信機から給電線路を介して給電される高周波信号を放射する波源を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
前記複数の導電性平板は、全て前記誘電体基板の同じ側の面である第一面に固定された請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記導電層は、前記誘電体基板の前記第一面とは反対側の面である第二面、または前記誘電体基板の内部に形成され、少なくとも一つの前記導電性平板の前記基端部に接する前記誘電体基板の部分に前記高周波信号の伝搬を遮蔽する構造を有する請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記高周波信号の伝搬を遮蔽する構造は、前記基端部から前記導電層に接続するスルーホールの列、前記基端部と前記導電層の間を埋める金属、電磁バンドギャップ構造、のいずれかである請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
一の導電性平板の前記誘電体基板側の空間に高周波信号を放射する前記波源に給電する前記給電線路が他の導電性平板と交差する部分の前記他の導電性平板に切り欠きを設けた請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
隣り合う導電性平板が、屈曲した一枚の導電性平板により形成され、それぞれの導電性平板の基端部が一つの共通基端部により構成されている請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
それぞれの前記給電線路の、それぞれの幅方向の両脇に、前記導電層と電気的に接続されたスルーホールの列が形成された請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記送受信機は、前記誘電体基板の前記第一面に固定されている請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記送受信機は、前記誘電体基板の前記第一面とは反対側の第二面に固定されている請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記送受信機は、前記誘電体基板の面に対して垂直方向から見て、少なくとも一部がいずれかの前記導電性平板と重なる位置に固定されている請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記複数の導電性平板のうち少なくとも一つの導電性平板は、他の導電性平板が固定されている前記誘電体基板の面とは異なる面に固定されている請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、アンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、普及が進む先進運転支援システム(ADAS)などの自動車がドライバの運転技能を支援する機能、あるいはドライバを介さず走行する自動運転(AD)においては、自動車の周辺環境をセンシングするためにミリ波レーダが使用されている。
【0003】
ミリ波レーダは一台の自動車に複数台搭載されるケースが増えており、前方に加え、前側方、側方、後側方、後方等に適用されている。複数個数を車両に搭載する背景から、ミリ波レーダのサイズを小さくすることが求められている。他方、ミリ波レーダの機能においてはADAS、およびADの進化に伴い、より多くの周辺物のセンシングのため正確な測距が求められている。
【0004】
ところで、ミリ波レーダの測距においては、レーダのアンテナから周波数掃引の送信電波を発射し、対象物から反射してきた電波を受信することで、送信電波の周波数と受信電波の周波数との差を測定することで対象物までの距離を測定する。このとき、掃引する周波数範囲が広ければ、測距範囲を細かく分割して測定することできるため、距離解像度の高いミリ波レーダを実現することができる。したがってミリ波レーダのアンテナにおいては広帯域な周波数特性を有することが求められる。このような周波数特性を実現するアンテナとしては、ホーンアンテナが知られており、広帯域なインピーダンス特性により広帯域化を実現できる。
【0005】
ミリ波レーダに使用されるアンテナは、小型化、低コスト化を考慮して、基板上の銅箔をエッチングして形成される電子回路の一部として製作、集積化可能なマイクロストリップアンテナが多くなっているが、マイクロストリップアンテナはその形状の長さに対応した波長の周波数で共振しアンテナをなす原理上、周波数特性が狭域となる。このような事情から、ミリ波レーダに求められる距離分解性能によってはホーンアンテナが好適となる。
【0006】
ホーンアンテナを電子基板に集積して形成し小型化する手法として、送受信機が固着された電子基板にホーンアンテナを一体化した構成が提案されている。特許文献1はホーンアンテナを電子基板の表面を共有するように配置した構成とすることで小型化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-208726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レーダで周辺の物体を検知する場合、周囲物体までの方位を検知する必要がある。水平方向の測角を行う場合、複数のアンテナを水平方向に配置して、それぞれのアンテナが受信する反射波の位相差を測定することで対象物の方位を導出する。他方で車載レーダにおいては対象物の高さ方向のサイズの検知、あるいは障害物として検知するべきでない架空物等を地上物と区別するために垂直方向の測角が必要になる。垂直方向の測角を行うためには、複数のアンテナを鉛直方向に配置する必要がある。ホーンアンテナを縦方向に配置する必要があり、アンテナを支持する機構等を配置すると小型化に際しては支障となる。
【0009】
本願は、上記の課題を解決するものであり、複数のホーンアンテナが鉛直方向に配置された、小型なアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示されるアンテナ装置は、導電層を有する誘電体基板と、この誘電体基板に固定された、高周波信号を発生する送受信機と、前記誘電体基板に基端部が固定され、前記基端部から反対側の先端部に向けて前記誘電体基板から離れるよう傾斜する、複数の導電性平板と、を備え、前記複数の導電性平板のそれぞれの前記基端部からそれぞれの前記先端部に向かう方向は全て同じであり、複数の前記導電性平板のそれぞれの導電性平板と前記誘電体基板との傾きは全て異なっており、少なくとも隣り合う前記導電性平板は、前記誘電体基板の垂直方向から見て重なり部分を有し、それぞれの導電性平板の前記誘電体基板側の空間に、それぞれ前記送受信機から給電線路を介して給電される高周波信号を放射する波源を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示されるアンテナ装置によれば、複数のホーンアンテナが鉛直方向に配置された、小型なアンテナ装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である
図2】実施の形態1によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
図3】実施の形態2によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態2によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
図5】実施の形態3によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図6】実施の形態4によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図7】実施の形態4によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
図8】実施の形態5によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図9】実施の形態6によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図10】実施の形態6によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
図11】実施の形態6によるアンテナ装置の別の構成を示す断面図である。
図12】実施の形態7によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図13】実施の形態7によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
図14】実施の形態8によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図15】実施の形態8によるアンテナ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は実施の形態1によるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。図において、x、y、zは座標軸、すなわち方向を示しており、以下の各図においても、必要に応じて、座標軸を示す。なお、斜視図において、後ろに隠れている主要部材を透視して示している。以降の斜視図においても同様である。アンテナ装置1は、主要部材として、送受信機2が固着された誘電体基板5と二枚の導電性平板3および4で構成される。誘電体基板5はプリント基板であり、はんだ付け等により固着された送受信機2から引き出されたマイクロストリップラインによる第一給電線路6および第二給電線路7が形成されており、マイクロストリップラインの先端部には空間に電波を放射するための波源として、第一波源8および第二波源9が形成されている。誘電体基板5は二層基板であり、第一給電線路6および第二給電線路7は、誘電体基板5の誘電体層11の表面(第一面とも称する)の第一導電層に形成されており、誘電体層11の反対側の面である裏面(第二面とも称する)にはGND(接地電位)層として第二導電層12が形成されて、マイクロストリップラインを構成している。導電性平板3および4はアルミニウム、鉄、銅等で組成された金属板を板金加工することで形成することができる。送受信機2はMMIC等の半導体デバイスであり、任意の周波数の電波を送信することができる。
【0014】
二枚の導電性平板3および4は、誘電体基板5に対して傾斜して配置されている。二枚の導電性平板3および4はそれぞれ、誘電体基板5に近い方から第一導電性平板3、第二導電性平板4と呼ぶ。第一導電性平板3と第二導電性平板4の誘電体基板5に対する傾斜は、互いに異なっている。すなわち、第一導電性平板3の傾きよりも、第二導電性平板4の傾きの方が大きい。第一導電性平板3および第二導電性平板4は、誘電体基板5に固定されており、誘電体基板5の第一導電層に形成された導電パターンにはんだ付けなどで固定してもよいし、接着剤などで固定してもよいし、あるいは誘電体基板5にネジ止めしてもよい。
【0015】
誘電体基板5に対して傾斜している第一導電性平板3が誘電体基板5に固定される端部においては、第一導電性平板3が誘電体基板5に接触する部分で、誘電体基板5と平行になるように屈曲し、第一導電性平板3の基端部である第一基端部13bが形成され、この第一基端部13bが誘電体基板5に固定されている。第一波源8は第一導電性平板3と誘電体基板5が接触している第一基端部13bに接続するように設けられ、第一導電性平板3に接触している。ここで、誘電体基板5(電気的には第二導電層12)と誘電体基板5から傾斜して設けられた第一導電性平板3とで挟まれた空間は、第一波源8から空間に放射された電波が伝搬していく第一ホーンアンテナ21となる。
【0016】
一方、第二導電性平板4についても誘電体基板5に接触するように固定されており、接触部は第一導電性平板3の場合と同様に、誘電体基板5と平行となっている基端部である第二基端部14bにおいて誘電体基板5に固定されている。第二波源9は第一波源8と同様に、第二導電性平板4と誘電体基板5が接触している第二基端部14bに接続するように設けられており、第二導電性平板4の第二基端部14bに接触している。ここで、第一導電性平板3と第二導電性平板4とは、誘電体基板5に垂直な方向から見て、第一導電性平板3の第一基端部13bから第一基端部13bの反対側の先端部13aに向かう方向と、第二導電性平板4の第二基端部14bから第二基端部14bの反対側の先端部14aに向かう方向とは、同じ方向になっている。また、第一導電性平板3と第二導電性平板4とは、誘電体基板5の垂直方向から見て、少なくとも一部が重なっている。第二導電性平板4と第二波源9は、第一導電性平板3の第一基端部13bよりも送受信機2に近い側に設けられている。この構成により、第二波源9から空間に放射された電波は、前記第一導電性平板3と第二導電性平板4とで形成される空間を伝播することで第二ホーンアンテナ22となる。第一ホーンアンテナ21の開口部は、第一導電性平板3の先端部13aと誘電体基板5の端部15との間であり、第二ホーンアンテナ22の開口部は第一導電性平板3の先端部13aと第二導電性平板4の先端部14aの間である。
【0017】
図2は、実施の形態1によるアンテナ装置1の構成を示す断面図である。図2Aは、図1のA-A位置での断面図、図2BはB-B位置での断面図、図2Cは、図2Aの波源の部分を拡大した断面図を示している。誘電体基板5は、z方向から、すなわち表面から第一導電層10、誘電体層11、GND層としての第二導電層12が積層されたプリント基板で構成されている。誘電体基板5の表面に形成されている第一導電層10には、例えばエッチングなどで給電線路などの配線、およびGND電位となる導電パターンなどが形成されている。すなわち、第一導電層10には、第一波源8、送受信機2から第一波源8への第一給電線路6、第二波源9、送受信機2から第二波源への第二給電線路7などが形成されている。
【0018】
図2Aを用いて垂直方向の測角原理を説明する。第一ホーンアンテナ21、および第二ホーンアンテナ22の開口端においてz軸方向におけるそれぞれの位相中心をc1、c2として示す。ここで位相中心は送受信機2から一定の位相差の電界を第一給電線路6および第二給電線路7に入力したときに、アンテナから生じる電界の位相差φ[rad]が、送受信機2から第一給電線路6および第二給電線路7に入力された電界の位相差と等しくなる代表地点である。これは、アンテナ装置を受信機としてみた時、位相中心c1、c2に一定の位相差の電界が生じた時、受信機としてみた送受信機2が受信する電界の位相差が、位相中心c1とc2とで生じた電界の位相差と等しくなることを意味する。いま、第一ホーンアンテナ21と第二ホーンアンテナ22の開口部はz軸方向に偏位しており、位相中心c1、c2はz軸方向に一定距離L[m]離れている。アンテナ装置1の正面であるx軸方向から入射角θで平面波である到来波が入射した場合、最初に位相中心c2に電界面E2が到達し、その後、位相中心c1に電界面E1が至る。この時、位相中心c1はc2に対してl[m]到来波が進む方向に離れている。ここでlはL・cos(90°-θ)である。したがって、c1、c2に到来した電界の、位相中心c1とc2とにおける位相差φは2πl/λ[rad]となる。ここで、λは空間での電波波長であり、光速c[m/s]、送信周波数f[Hz]のときλはc/f[m]である。位相差φを測定することで到来波の方向θを導出することが可能になり、垂直方向の測角が実現する。
【0019】
本実施の形態1によると、二つのホーンアンテナを個別に用意してz軸方向に配置する場合と比較して、少ない部品点数で二つのホーンアンテナを形成することが可能になり、材料の低減、小型化が実現できる。
【0020】
本実施の形態1では導電性平板を金属板で形成するケースを例示したが、平面の表層部が金属であれば平板全体が金属である必要はない。例えば樹脂成形により平面を形成し、その表面に金属メッキすることでも実現でき、軽量化などを目的とした場合には好適である。
【0021】
実施の形態2.
図3は実施の形態2によるアンテナ装置30の構成を示す斜視図である。本実施の形態2では第一導電性平板3の第一基端部13bにおいて、第一基端部13bに沿って列状に誘電体基板5にGND層である第二導電層12に接続するスルーホール列32を設けている。スルーホール列32は第一ホーンアンテナ21の波源である第一波源8を含まない様に列状に配置されている。スルーホール列32を設置することで、隣接する第二ホーンアンテナ22の波源である第二波源9に給電したときに生じた基板内を伝播する電界の一部が第一ホーンアンテナ21への伝搬を防止することができる。これにより所望のホーンアンテナからのみ電波を放射することができ、放射パターンの制御性を向上することができ、レーダにおいて良好な検知範囲、および測角精度を得ることができる。
【0022】
図4図3のアンテナ装置30の断面図である。図4Aは、第一波源8を含む、図3のA-A位置での断面図、図4Bは、第二波源9を含む、図3のB-B位置での断面図である。図4Bに示すように、第一導電性平板3の第一基端部13bにおいて第一導電層10に形成されているパターンとGND層である第二導電層12を電気的に金属部材により接続するスルーホール300を設置している。スルーホール300は紙面奥行方向に複数が列状に並べられている。隣り合うスルーホール300の間隔は電波波長より十分短い間隔で配置することで、図4のx軸方向に伝搬する電界を実質的に遮断することができる。これにより第二ホーンアンテナ22の第二波源9から生じた電界はスルーホール300を越えて第一ホーンアンテナ21に伝搬しない。なお、誘電体基板内の電波波長をλpとしたときに、λp/4以下の間隔になるようにスルーホールを配置することが電界の伝播を遮蔽には好適である。ただし、この間隔よりも大きい場合であっても一定の電界減衰効果は得られるため、スルーホール300の間隔は必ずしも上記寸法には限らない。
【0023】
本実施の形態2では、第一基端部13bに対応した位置の誘電体基板5にスルーホール300を列状に設置することにより、第二ホーンアンテナ22の波源から生じた電界が第一ホーンアンテナ21に伝搬することを防いでいるが、電界伝搬を遮蔽する構造であればスルーホールに限定しない。例えば、スルーホールを設置している第一基端部13bと第二導電層12を全部金属で接続して電波の伝搬を防いでも良い。この構成は、誘電体基板5に第二導電層12と接続する溝を形成して銅インレーすることなどで形成可能である。あるいは電磁バンドギャップ(Electromagnetic Band Gap、ESG)構造を用いて電界の伝搬を防いでも良い。
【0024】
以上は、第二波源9から第一ホーンアンテナ21への電波の漏出を防ぐケースを例示して説明したが、第二導電性平板4の第二基端部14bについても本実施の形態2で示した、電界伝搬を遮蔽する構造を適用して効果を得ることができる。図3では、例えば第二導電性平板4の第二基端部14bに対応した位置の誘電体基板5にもスルーホール列33を設けた場合を図示している。これによって、第二基端部14bにおいて、送受信機2が設置されている方向から到来する誘電体基板内を伝搬するノイズ等の電界が第二ホーンアンテナ22に漏出することを防ぐことが可能になる。これにより、外乱の影響を受けにくいホーンアンテナを形成することができ、レーダにおいて良好な検知範囲、および測角精度を得ることができる。
【0025】
実施の形態3.
図5は実施の形態3によるアンテナ装置50の構成を示す斜視図である。ここでは第一ホーンアンテナ21の第一波源8に接続する第一給電線路6が、第二導電性平板4が誘電体基板5の平面に固定される第二基端部14bと交差する箇所において、第二導電性平板4が第一給電線路6と接触しないように第二導電性平板4に切り欠き51を設けている。これにより、第一給電線路6から第二導電性平板4の第二基端部14bとの電磁的な結合を緩和でき、基板内に漏出する電界を低減することができる。これにより、第二ホーンアンテナ22において放射パターンの制御性を向上させることができ、レーダにおいて良好な検知範囲、および測角精度を得ることが可能になる。
【0026】
実施の形態4.
図6は、実施の形態4によるアンテナ装置60の構成を示す斜視図である。本実施の形態4では、第一導電性平板3と第二導電性平板4が、折り曲げられた一枚の金属板によって形成されることを特徴としている。本実施の形態4では、一枚の長方形の金属板を短辺方向に二箇所で折り曲げることで誘電体基板5に対して傾斜が異なる第一導電性平板3と第二導電性平板4を形成する。長方形の金属板の二箇所の折り曲げ箇所に挟まれた領域が共通基端部65として誘電体基板5に固定されている。第二波源9は共通基端部65に設けられた穴部61から露出することで第一導電性平板3と第二導電性平板4で形成される第二ホーンアンテナ22への電波放射を可能としている。
【0027】
図7は実施の形態4によるアンテナ装置60の構成を示す断面図である。図7Aは、図6のA-A位置での断面図、図7Bは、図6のB-B位置での断面図である。図7Aに示すように、第一ホーンアンテナ21は、共通基端部65の下部に第一給電線路6および第一波源8が配線されて構成されている。第二ホーンアンテナ22は、図7Bに示すように、第二ホーンアンテナ22の開口部から見たときに第二波源9が露出するように共通基端部65に穴61が形成されており、この穴から電波が漏出することでアンテナとして機能する。
【0028】
本実施の形態4によれば、第一導電性平板3および第二導電性平板4を一枚の金属板で形成したので、第一導電性平板3、および第二導電性平板4を別個に製作して固定する場合に比較して、組み立て工数を削減することができる。更に第一導電性平板3と第二導電性平板4を接続する共通基端部65で誘電体基板5に強固に固定することが可能になるため、2つのホーンアンテナを構成する第一導電性平板3および第二導電性平板4を、一体で強固に固定できアンテナ装置の耐久性を向上することが可能になる。
【0029】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5によるアンテナ装置80の構成を示す斜視図である。本実施の形態5では、送受信機2から第一波源8への第一給電線路6、および送受信機2から第二波源9への第二給電線路7の延在方向に沿って、それぞれの給電線路の幅方向の両脇にスルーホール列81が設けられている。スルーホールには例えば裏面に形成されているGND層である第二導電層12と電気的に接続される導電体が形成されている。これにより給電線路を伝搬する電界が誘電体基板の面内方向に漏出することを防ぐことが可能になる。本実施の形態5によれば、第二導電性平板4の第二基端部14bで第一波源8への第一給電線路6と交差する箇所において、第一給電線路6から第一ホーンアンテナ21へ給電する電界が第二ホーンアンテナ22に漏出することを効果的に防止することができるため、それぞれのホーンアンテナにおいて放射パターンの制御性の向上が実現し、レーダにおいて良好な検知範囲と測角精度を得ることが可能になる。
【0030】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6によるアンテナ装置90の構成を示す斜視図である。また、図10は実施の形態6によるアンテナ装置90の構成を示す断面図であり、図10Aは、図9のA-A位置での断面図、図10Bは、図9のB-B位置での断面図である。本実施の形態6では、送受信機2は、誘電体基板5の表面(第一面)に形成されている第一導電層10ではなく、誘電体基板5の裏面(第二面)に形成されている第二導電層12に固着されている。
【0031】
送受信機2からは第一給電線路6および第二給電線路7が引き出されており、第一給電線路6は第一導電性平板3の第一基端部13bに位置する第一波源8まで、第二給電線路7は第二導電性平板4の第二基端部14bに位置する第二波源9まで、誘電体基板5の第二導電層12に配線パターンとして形成されている。第一給電線路6と第一波源8とは、誘電体基板5の第一導電層10側と第二導電層12側とを接続する変換部72aによって電気的に接続されている。同様に、第二給電線路7と第二波源9とは、誘電体基板5の第一導電層10側と第二導電層12側とを接続する変換部72bによって電気的に接続されている。これらの変換部はスルーホールで表裏が電気的に接続されていても良いし、誘電体基板内に導波管を形成することによって電磁的に接続されていても良い。誘電体基板5の内部には、第一導電層10側にGND層として第三導電層112が、第二導電層12側にGND層として第四導電層114が形成されている。第一導電層10に形成されている第一給電線路6および第二給電線路7は、それぞれ第三導電層112をGND層として、また第二導電層12に形成されている第一給電線路6および第二給電線路7は、それぞれ第四導電層114をGND層として、マイクロストリップラインとして機能する。本実施の形態6によれば、例えば第一波源8への第一給電線路6は、第二導電性平板4の第二基端部14bとの交差部において、裏面側の第二導電層12側を通るため、第一給電線路6から第二ホーンアンテナ22への電界の漏洩を低減することができ、アンテナ放射パターンの制御性を向上することができる。これによりレーダにおいては良好な検知範囲および測角精度を得ることができる。
【0032】
また、さらに本実施の形態6によれば送受信機2は第一導電性平板3および第二導電性平板4が固定されている誘電体基板5の面(第一面)とは反対側の面(第二面)に固定されているため、第一波源8を含む位置での断面図である図11に示すように、上面視において、送受信機2を、第一ホーンアンテナ21と第二ホーンアンテナ22が重なる位置に固定することが可能になる。このように、送受信機2を、誘電体基板の第二面であって、誘電体基板5の面に対して垂直方向から見て、少なくとも一部がいずれかの導電性平板と重なる位置に配置することで、図1、あるいは図9などに示す構成に比較して、x方向の長さを短縮することができるため、より小型なアンテナ装置およびレーダを実現することができる。
【0033】
実施の形態7.
図12は、実施の形態7によるアンテナ装置100の構成を示す斜視図である。また、図13は実施の形態7によるアンテナ装置100の構成を示す断面図であり、図13A図12のA-A位置での断面図、図13Bは、図12のB-B位置での断面図である。実施の形態1~6によるアンテナ装置は誘電体基板5の一方の面に二つのホーンアンテナが配置された構成を示した。本実施の形態7によるアンテナ装置100は、第一導電性平板3が誘電体基板5の表面(第一面)に固定され、第二導電性平板4は第一導電性平板3が配置された側とは反対側の裏面(第二面)に固定されている。誘電体基板5は、表面に第一導電層10、裏面に第二導電層12、内部にGND層である第三導電層112および第四導電層114の2層のGND層を有している。この構成により、第一導電性平板3と第三導電層112により第一ホーンアンテナ21が形成され、第二導電性平板4と第四導電層114により第二ホーンアンテナ22が形成される。送受信機2は第一導電性平板3が固定された面に固着されている。第一ホーンアンテナ21の第一波源8へは、送受信機2から表面の第一導電層10に形成された第一給電線路6により給電される。一方、裏面に形成された第二ホーンアンテナ22の波源である第二波源9への給電は、送受信機2に接続され、表面の第一導電層10に形成された第二給電線路7が、表面と裏面を接続する接続部125により、裏面の第二導電層12に形成された第二給電線路7に接続され、第二波源9に接続されることで実現される。
【0034】
誘電体基板5は、表面から、第一導電層10、第一誘電体層111、第三導電層112、コア層113、第四導電層114、第二誘電体層115、および第二導電層12を有している。第一導電層10には、第一波源8、第一波源8と送受信機2を接続する第一給電線路6、および第二給電線路7が形成されている。第二導電層12には第二波源9、およびそれに接続する第二給電線路7が形成されている。第二導電層12に形成されている第二給電線路7は、第一導電層10と第二導電層12を接続する接続部125によって送受信機2から給電されている。第一導電層10に形成されている第一給電線路6および第二給電線路7は、それぞれ第三導電層112をGND層として、また第二導電層12に形成されている第二給電線路7は第四導電層114をGND層として、マイクロストリップラインを構成する。本実施の形態7では第三導電層112と第四導電層114の間にコア層113を配置しているが、第三導電層112と第四導電層114の間に、さらに配線パターンなどが形成される追加的な導電層があってもよい。
【0035】
実施の形態1~6によるアンテナ装置では、誘電体基板5の面に垂直な方向、すなわちz方向から見た場合に、第一導電性平板3と第二導電性平板4をホーンアンテナの開口の方向にずらして配置する必要があった。本実施の形態7によるアンテナ装置では、誘電体基板5の面に垂直な方向から見た場合に、第一導電性平板3と第二導電性平板4とは完全に重なるように配置することができる。これにより本実施の形態7のアンテナ装置100は、第一導電性平板3と第二導電性平板4とが誘電体基板5の一方の面に設置される場合と比較して、x方向に短くすることができ、より小型なアンテナ装置、およびレーダを実現することが可能になる。
【0036】
実施の形態8.
図14は、実施の形態7によるアンテナ装置140の構成を示す斜視図である。また、図15は実施の形態7によるアンテナ装置140の構成を示す、図14のC-C位置での断面図である。これまでの実施の形態では、導電性平板を2つ備えることにより、2つのホーンアンテナを構成するアンテナ装置を説明した。本願が開示する技術は、導電体性平板を3つ以上備え、3つ以上のホーンアンテナを構成するアンテナ装置にも適用することができる。図14に示すアンテナ装置140では、第一導電性平板3、第二導電性平板4に加えて、第三導電性平板41の3つの導電性平板を備えている。第三導電性平板41は、第二導電性平板4の傾きよりもさらに傾きが大きく、その基端部である第三基端部41bから反対側の先端部41aに向かう方向は、他の導電性平板の基端部から先端部に向かう方向と同じ方向となるよう設置されている。この構成により、第一ホーンアンテナ21、第二ホーンアンテナ22に加えて、第三導電性平板41と第二導電性平板4とで第三ホーンアンテナ23を構成している。第三ホーンアンテナ23では、第三導電性平板41の第三基端部41bに第三波源19を配置し、第三導電性平板41と第二導電性平板4の間の空間に、送受信機2から、第一導電層10に形成された第三給電線路17を介して給電される高周波信号を第三波源19から放射するよう構成されている。図14は第三波源19および第三給電線路17を含み、誘電体基板5に垂直な断面を示している。第一ホーンアンテナ21、および第二ホーンアンテナ22への高周波信号の放射は、実施の形態1で説明したのと同様である。さらに4つ以上の導電性平板を備え、4つ以上のホーンアンテナを構成することもできる。
【0037】
また、誘電体基板5の片面に一つの導電性平板、他の面に複数の導電性平板を配置することもでき、さらに、片面に複数の導電性平板、他の面にも複数の導電性平板を配置することもできる。
【0038】
以上のように、本願で開示するアンテナ装置は、表面または内部に導電層を有する誘電体基板と、この誘電体基板に固定された、高周波信号を発生する送受信機と、誘電体基板に基端部が固定され、基端部から反対側の先端部に向けて誘電体基板から離れるよう傾斜する複数の導電性平板と、を備え、複数の導電性平板のそれぞれの基端部からそれぞれの先端部に向かう方向は全て同じであり、複数の導電性平板のそれぞれの導電性平板と誘電体基板との傾きは全て異なっており、少なくとも隣り合う導電性平板は、誘電体基板の垂直方向から見て重なり部分を有し、それぞれの導電性平板の誘電体基板側の空間に、それぞれ送受信機から給電線路を介して給電される高周波信号を放射する波源を備えたアンテナ装置、ということになる。
【0039】
なお、図12図13で開示するアンテナ装置は、第一導電性平板3の誘電体基板5との傾き角度と、第二導電性平板4の誘電体基板5との傾き角度は同じとして示しているが、誘電体基板5の面を基準として第一導電性平板3の傾きを正とすると、第二導電性平板4の傾きは負であり、本願では、傾き角度が同じでも、誘電体基板5に対する傾きが正と負で異なれば、傾きが異なるとする。
【0040】
本願には、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0041】
例えば、図14の構成において、第一導電性平板3と第二導電性平板4とを、実施の形態図6および図7で示した、屈曲した一枚の導電性平板で構成する、あるいは第二導電性平板と第三導電性平板41とを屈曲した一枚の導電性平板で構成することができる。すなわち、実施の形態4によるアンテナ装置は、隣り合う導電性平板が、屈曲した一枚の導電性平板により形成され、それぞれの導電性平板の基端部が一つの共通基端部により構成されているアンテナ装置、ということになる。
【符号の説明】
【0042】
2 送受信機、3 第一導電性平板、4 第二導電性平板、41 第三導電性平板、5 誘電体基板、6 第一給電線路、7 第二給電線路、17 第三給電線路、8 第一波源、9 第二波源、19 第三波源、10 第一導電層、12 第二導電層、13b 第一基端部、14b 第二基端部、41b 第三基端部、13a、14a、41a 先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15