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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166723
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】バイオマス乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/06 20060101AFI20241122BHJP
   F26B 3/06 20060101ALI20241122BHJP
   F26B 25/06 20060101ALI20241122BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F26B9/06 H
F26B3/06
F26B25/06 Z
F23K1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083026
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】則武 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】前川 亘
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB03
3L113AC03
3L113AC52
3L113AC69
3L113BA05
3L113CB02
3L113CB24
3L113DA07
3L113DA16
(57)【要約】
【課題】設置現場におけるシステム構築を効率化することができるバイオマス乾燥システムを提供する。
【解決手段】バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いられ、筐体2と、筐体2の内部に設けられ、バイオマスからなる燃料を貯留する燃料庫6と、筐体2の内部に設けられ、燃料庫6から供給された燃料を燃焼するボイラ7と、筐体2の内部に設けられ、ボイラ7の燃焼により生じた熱を、貯留した水に蓄積する第1水タンク8,9と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いられ、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、バイオマスからなる燃料を貯留する燃料庫と、
前記筐体の内部に設けられ、前記燃料庫から供給された前記燃料を燃焼するボイラと、
前記筐体の内部に設けられ、前記ボイラの燃焼により生じた熱を、貯留した水に蓄積する第1水タンクと、
を備えたバイオマス乾燥システム。
【請求項2】
前記第1水タンクで蓄熱した熱エネルギを空気に伝達する熱交換器を備え、
前記熱交換器が有する空気取り入れ口は、前記筐体の内部に開口している、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項3】
前記熱交換器で暖められた空気を、前記乾燥対象物を前記乾燥させるための温風とする送風機を備える、請求項2に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項4】
前記乾燥対象物は、複数の乾燥コンテナに収容されており、前記温風の経路は複数の前記乾燥コンテナに接続されており、
前記送風機は、複数の前記乾燥コンテナの各々に対して温風を送るよう設けられており、
前記熱交換器と前記送風機との間での前記温風の経路に、前記温風が向かう対象の前記乾燥コンテナを切り替えることのできる切り替え弁を備える、請求項3に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項5】
前記燃料庫は、平面視で四角形状とされており、
前記燃料庫は、内部の前記燃料を撹拌する撹拌装置を備え、
前記撹拌装置は、上下方向に延びる回転軸周りで、前記燃料庫の底面に対して沿う位置で、前記四角形の対角寸法よりも小さい直径で回転する、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項6】
前記第1水タンクで蓄熱した熱エネルギを空気に対して連続的に伝達する、請求項2または3に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項7】
運送時において、システム運用時に前記筐体の内部に配置される各部品に加え、システム運用時に少なくとも一部が前記筐体の外部に配置される各部品が、前記筐体の内部に収容される、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項8】
前記筐体とは異なる副筐体が用いられ、
前記副筐体の内部には、前記第1水タンクと並列的に設けられ、前記ボイラの燃焼により生じた熱により生成した温水を蓄積する第2水タンクが設けられる、請求項7に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項9】
燃焼時の前記ボイラで生じた焼却灰を前記筐体の外部に排出する焼却灰処理装置を備える、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項10】
前記筐体の上面にソーラーパネルを備える、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いるバイオマス乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動体の荷台にコンテナを設け、そのコンテナの内部に、移動体の外部に設けられたバイオマス原料を内部に搬送するための原料供給ユニットと、原料供給ユニットで搬送されたバイオマス原料が投入されて発電を行うエネルギ生成ユニットと、を備えた発電システムが公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の構成では、コンテナへ供給するバイオマス原料を保管するための保管庫がコンテナ内に設けられていないため、保管庫を設置現場で組み立てる必要がある。そのため、システムの運用を開始するまでに多くの時間がかかり、設置現場におけるシステム構築の効率化を図ることができないという不都合が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-155519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、設置現場におけるシステム構築を効率化することができるバイオマス乾燥システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイオマス乾燥システムは、バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いられ、筐体と、前記筐体の内部に設けられ、バイオマスからなる燃料を貯留する燃料庫と、前記筐体の内部に設けられ、前記燃料庫から供給された前記燃料を燃焼するボイラと、前記筐体の内部に設けられ、前記ボイラの燃焼により生じた熱を、貯留した水に蓄積する第1水タンクと、を備えている。
【0007】
上記構成により、筐体の内部で燃料の保管及び燃焼並びに燃焼により生じた熱の蓄熱が可能となるため、設置現場において筐体を設置することで、各要素を別々に組み立てることに比べるとシステム構築にかかる時間を短縮できる。
【0008】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記第1水タンクで蓄熱した熱エネルギを空気に伝達する熱交換器を備え、前記熱交換器が有する空気取り入れ口は、前記筐体の内部に開口していてもよい。
【0009】
上記構成により、ボイラの燃焼に伴い温められている筐体内の空気を利用して、熱交換器における熱交換の効率を上げられる。
【0010】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記熱交換器で暖められた空気を、前記乾燥対象物を前記乾燥させるための温風とする送風機を備えていてもよい。
【0011】
上記構成により、空気を温風とすることで、乾燥対象物に対して熱を効率的に供給できる。
【0012】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記乾燥対象物が、複数の乾燥コンテナに収容されており、前記温風の経路は複数の前記乾燥コンテナに接続されており、前記送風機は、複数の前記乾燥コンテナの各々に対して温風を送るよう設けられており、前記熱交換器と前記送風機との間での前記温風の経路に、前記温風が向かう対象の前記乾燥コンテナを切り替えることのできる切り替え弁を備えていてもよい。
【0013】
上記構成により、切り替え弁により、送風機を介して乾燥を行う乾燥コンテナを選択可能にできる。
【0014】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記燃料庫が、平面視で四角形状とされており、前記燃料庫は、内部の前記燃料を撹拌する撹拌装置を備え、前記撹拌装置は、上下方向に延びる回転軸周りで、前記燃料庫の底面に対して沿う位置で、前記四角形の対角寸法よりも小さい直径で回転する構成であってもよい。
【0015】
上記構成により、燃料庫の底面のうち平面視における四角形の隅部では、撹拌装置が届かない領域ができるため、前記領域(デッドスペース)にバイオマス乾燥システムの他部品を配置することで、筐体の内部空間を有効利用できる。
【0016】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記第1水タンクで蓄熱した熱エネルギを空気に対して連続的に伝達する構成であってもよい。
【0017】
上記構成により、第1水タンクの熱エネルギを連続的に取り出せることから、過剰な蓄熱によるボイラや第1水タンクの故障を防止でき、また、ボイラを基準として要求される容積よりも、第1水タンクの実際の容積を小さくできる。
【0018】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、運送時において、システム運用時に前記筐体の内部に配置される各部品に加え、システム運用時に少なくとも一部が前記筐体の外部に配置される各部品が、前記筐体の内部に収容される構成であってもよい。
【0019】
上記構成により、各部品の運送を、筐体と共にまとめて行うことができ、運送負担を小さくできる。
【0020】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記筐体とは異なる副筐体が用いられ、前記副筐体の内部には、前記第1水タンクと並列的に設けられ、前記ボイラの燃焼により生じた熱により生成した温水を蓄積する第2水タンクが設けられる構成であってもよい。
【0021】
上記構成により、筐体に加えて副筐体を運送するだけで、種々の用途に利用可能な温水を発生するシステムを構築できる。
【0022】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、燃焼時の前記ボイラで生じた焼却灰を前記筐体の外部に排出する焼却灰処理装置を備えてもよい。
【0023】
上記構成により、焼却灰を筐体の外部に排出することを自動的に行える。
【0024】
また、本発明のバイオマス乾燥システムは、前記筐体の上面にソーラーパネルを備えてもよい。
【0025】
上記構成により、ソーラーパネルで発電した電力をシステムで利用できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、筐体の内部に、燃料庫と、ボイラと、第1水タンクとを備えることによって、設置現場におけるシステム構築を効率化することができるバイオマス乾燥システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るバイオマス乾燥システムの概略を示す斜視図である。
図2】バイオマス乾燥システムを構成する海上コンテナの内部を示す横断平面図である。
図3】同海上コンテナの内部を示す側面図である。
図4】海上コンテナの正面図である。
図5】海上コンテナの左側面図である。
図6】海上コンテナの右側面図である。
図7】海上コンテナへ燃料を供給する燃料供給装置を示す側面図である。
図8】燃料搬送車からの燃料を燃料供給装置を介して海上コンテナへ投入している状態を示す説明図である。
図9】熱交換器の空気取り入れ口を海上コンテナの内部に開口した海上コンテナの内部を示す平面図である。
図10】熱交換器を海上コンテナの内部に配置した海上コンテナの内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係るバイオマス乾燥システム1について、添付図面を参照しつつ説明する。本発明において用いる「バイオマス」とは、動植物に由来する物質であり、一定の形態を有する固体であって、乾燥して含有水分量を減少させることで燃焼可能な材料である。例えば木材(廃材、おがくず等)、植物残渣(わら、除去された雑草等)、可燃性の廃棄物(食品廃棄物等)、動物の排泄物、下水汚泥である。本実施形態では、木材(間伐材、剪定された樹木、建築廃材等)をチップ状にした木質チップを用いる。このため、本実施形態のバイオマスは、複数(多数)が集合した状態で流動性を有しており、流動性を利用した移送が可能である。なお、以下の「乾燥対象物(C1)」と「燃料(C2)」は、含有水分量が異なるが、物としては同じである。なお、説明の都合上、以下の方向の表現は、図1に示す方向を基準とする。
【0029】
バイオマス乾燥システム1は、図1に示すように、バイオマスからなる燃料C2を保管及び燃焼並びに燃焼により生じた熱の蓄積が行える機器類を収容するための筐体としての海上コンテナ2と、海上コンテナ2で燃焼させて蓄積した熱エネルギを温風にして海上コンテナ2外に設けられた乾燥コンテナ3内の木質チップ(乾燥対象物)C1を乾燥させる温風供給機構5と、を備えている。乾燥後の木質チップC1の少なくとも一部は、燃料C2として海上コンテナ2(詳しくは後述の燃料庫6)に供給される。この実施形態では、筐体として汎用の海上コンテナ(例えば、20フィートコンテナ)を用いているが、鋳造コンテナ等の他のコンテナを用いてもよいし、コンテナの機能が無い箱体として製作したものを用いてもよい。
【0030】
海上コンテナ2内には、図2及び図3に示すように、燃料を貯留するための燃料庫6と、燃料庫6から供給された燃料を燃焼させるボイラ7と、ボイラ7からの熱を貯留した水に蓄積するための2個(この実施形態では2個であるが、1個又は3個以上でもよい)の第1水タンク8,9と、を備えている。海上コンテナ2内に、燃料庫6と、ボイラ7と、第1水タンク8,9を備えているので、海上コンテナ2の内部で燃料の保管及び燃料の燃焼並びに燃焼により生じた熱の蓄熱が可能となるため、設置現場において海上コンテナ2を設置することで、各要素を別々に組み立てることに比べるとシステム構築にかかる時間を短縮できる。
【0031】
海上コンテナ2内に、ボイラ7、第1水タンク8,9を所定位置に固定して設置するだけでなく、ボイラ7と第1水タンク8,9とを連結する配管(図示せず)等も組み付けた状態にしておけば、海上コンテナ2を設置現場まで運送するだけで、海上コンテナ2内での組み付け等の作業が不要になり、システム構築にかかる時間を更に短縮できる。
【0032】
海上コンテナ2は、前後方向に長い略直方体形状に構成され、図2及び図3に示すように、底壁21、左右壁22,23、前後壁24,25、天壁26と、を備えている。後壁25には、観音開き式の一対の扉25A,25A(図2参照)を備えている。また、右壁23の後側寄りに観音開き式の一対の扉23A,23A(図6参照)を備えている。また、左壁22の後側寄りに1枚の開閉扉22A(図5参照)を備えている。また、前壁24の左右一方側(右側)には、燃料庫6の内部の燃料の量を透視するための上下方向に長い縦長の透明な窓24A(図4参照)が設けられている。
【0033】
バイオマス乾燥システム1を運用するシステム運用時には、海上コンテナ2に、ボイラ7で発生する煙の排気を行うための煙突10及びボイラ室内への吸排気を行うためのダクト11が取り付けられる。
【0034】
煙突10は、図4及び図6に示すように、右壁23の前後方向中央部よりも前寄りの位置に取り付けられ、上方へ真っ直ぐ延びる円筒状で長尺な本体部10Aと、本体部10Aの下端部から水平方向に延びる吸い込み部10Bと、を備えている。本体部10Aは、それの下端部が右壁23に固定された受け部材12に差し込まれて固定される。吸い込み部10Bは、右壁23の上端部に貫通された貫通孔(図示せず)に挿入された状態で右壁23に固定され、ボイラ室内の煙を吸い込み部10Bで吸い込んで本体部10Aの上端から外部へ排出する。
【0035】
ダクト11は、下端が開口された吸排気用の開口11aが形成され上方に延びる筒状の第1縦筒部11Aと、第1縦筒部11Aの上端から水平方向に延びる第2横筒部11Bと、を備えたダクト本体と、第2横筒部11B内に備えたファン(図示せず)と、を備えている。この第2横筒部11Bの端部の開口(図示せず)が、左壁22の上端部の位置で、かつ、前後方向中央部よりも前側の位置に形成された貫通孔(図示せず)に連通接続され、前記ファンを一方に駆動回転することにより、外気をボイラ室内へ供給し、前記ファンを他方に駆動回転することにより、ボイラ室内の空気を外部へ排出することができる。
【0036】
燃料庫6は、海上コンテナ2内の前側部分に仕切り壁13で仕切ることにより燃料を貯留するための平面視で略正四角形状の貯留空間が形成されている。燃料庫6内には、貯留された燃料を攪拌する攪拌装置としてのアジテータ14を備えている。アジテータ14は、先端部分が弾性材で構成された可撓性を有し、燃料庫6内において略中心に配置され上下方向(鉛直方向に対し傾斜した方向)に延びる回転軸X周りで燃料庫6の底面に対して沿う位置で回転する複数(図1では2枚)の羽根14A,14Aと、羽根14A,14Aを回転させるための電動モータ14Cと、を備えている。また、羽根14A,14Aの中心部分を覆う円形のカバー部材14Bを備えている。各羽根14Aは、回転中心から先端までの直径の長さが回転中心から左右壁22,23、前壁24、仕切り壁13までの距離よりも長く設定されている。そのため、電動モータ14Cを駆動することにより、羽根14A,14Aが、海上コンテナ2の壁面(側面)に当接して湾曲した状態のまま回転する。また、海上コンテナ2の四隅では、各羽根14Aの回転中心から先端までの直径の長さが、四角形の対角寸法よりも短い寸法(より詳しくは、四角形の短辺より長く対角寸法よりも短い寸法)に設定されているため、壁面に届かない(当接しない)領域(デッドスペース)Sが発生する。これにより、燃料庫6の四隅では、各羽根14Aは円弧を描きながら回転する。前記領域(デッドスペース)Sには、バイオマス乾燥システムに使用する他の部品、例えば、システム各部(例えば、後述のアジテータ14の電動モータ14Cの駆動及び停止、後述の搬送装置15の駆動及び停止、ボイラ7の燃焼制御及び燃焼停止、後述の第1水タンク8,9に備える電磁弁、後述の膨張タンク17の電磁弁、後述の熱交換器18の駆動及び停止)の制御を行うための制御装置(図示せず)を配置することができる。よって、海上コンテナ2の内部空間を有効利用できる。
【0037】
アジテータ14の下方、つまり燃料庫6の下部には、燃料庫6内の燃料をボイラ7の投入口7Aまで搬送するための搬送装置15を備えている。搬送装置15は、例えば幅の狭いベルトコンベア(スクリューコンベアでもよい)から構成されている。アジテータ14の羽根14A,14Aが回転することにより、搬送装置15の搬送方向始端部に燃料が供給される。また、アジテータ14の羽根14A,14Aが回転することにより燃料庫6内に貯留されている燃料を攪拌するので、燃料同士がブリッジを発生することがないようにしている。前記仕切り壁13には、搬送装置15をボイラ7側へ通すための貫通孔(図示せず)が形成されている。また、搬送装置15は、終端側ほど上方に位置する傾斜姿勢に配置されている。この傾斜姿勢の傾斜角度を変更するための角度調整手段16を設けている。角度調整手段16は、底壁21に固定され、前後方向に高さの異なる複数の貫通孔16aを有する固定部材16Aと、搬送装置15に固定され、前後方向に高さの異なる複数の貫通孔16bを有し、これら貫通孔16aの中の任意の1つの貫通孔16bと固定部材16Aの任意の1つの貫通孔16aとを重ね合わせてピン16cを挿通することで角度調整が可能な調整部材16Bと、を備えている。
【0038】
ボイラ7は、右壁23の近傍で、かつ、燃料庫6寄りに設置され、燃料庫6から搬送装置15により搬送される燃料をボイラ7の投入口7Aから燃焼室内に供給し、バーナー(着火部)により燃焼室内の燃料を燃焼させることで熱を発生させる。この熱で燃焼室内に導入される一方の第1水タンク8からの配管D3を加熱することで温められた配管D3内の温水を第1水タンク8,9へ戻し配管D4を介して戻す。これを繰り返すことにより第1水タンク8,9内の水温を設定温度まで高めることができる。ボイラ7の燃焼に伴いボイラ室内の空気が温められるため、その温められた空気で第1水タンク8,9が温められることで、第1水タンク8,9内の水を温度上昇させる効率を高めることができる。図示していないが、一方の第1水タンク8の配管D3,D4に他方の第1水タンク9からの配管がそれぞれ連結されている。
【0039】
2個の第1水タンク8,9は、後壁25寄りに左右に並んで配置され、前記のようにボイラ7へ配管(図示せず)を介して供給される水がボイラ7で発生する熱により温められ、その温められた温水が戻されて蓄積するためのタンクである。また、2個の第1水タンク8,9内の水がボイラ7で温められて体積変化(膨張)した時に、該体積変化を吸収するための膨張タンク17が2個の第1水タンク8,9に配管(図示せず)を介して接続されている。膨張タンク17は、左壁の近傍で、かつ、燃料庫6寄りに設置されている。図2に示すように、内部空間が限られている海上コンテナ2内において、ボイラ7と第1水タンク8,9とを近づけて配置することによって、ボイラ7と第1水タンク8,9とを連結する配管を短くできるため、ボイラ7からの熱を第1水タンク8,9へ伝達する時のエネルギーロスを小さく抑えることができる。
【0040】
また、海上コンテナ2の外部には、第1水タンク8,9からの温水の熱と熱交換して温風に変換する熱交換器18を備えている。この実施形態では、熱交換器18で熱交換する温風の温度を例えば、70℃に設定している。熱交換器18は、第1水タンク8,9からの温水を供給する供給側の伝熱管D1が螺旋状又は渦巻き状に巻かれた部分(管束という)18Aを備えている。尚、管束18Aの終端から第1水タンク8,9へ熱交換した温水が戻し側の伝熱管D2で戻される(図1参照)。図1では、熱交換器18の空気取り入れ口18Kに矢印Yで示すように外気(例えば20℃の外気)を取り入れている。これに対して、図9では、熱交換器18の空気取り入れ口18Kを、海上コンテナ2の左壁22に形成の貫通孔22aを介してボイラ室内に開口させている。これにより、ボイラ室内の温かい空気(例えば、50℃)が送風機19,20で吸い込まれて管束18Aを通過することで、熱交換器18における熱効率を上げることができる利点がある。熱交換器18からの温風は、後述の第1配管27により送風機19,20の吸込口(図示せず)まで案内される。また、図10では、熱交換器18を、海上コンテナ2内に設置すれば、ボイラ7の燃焼に伴い温められている海上コンテナ2内の空気(例えば、50℃)が送風機19,20で吸い込まれて管束18Aを通過することで、熱交換器18における熱効率を上げることができる。熱交換器18からの温風は、左壁22に形成の貫通孔22aから外部へ導出され後述の第1配管27により送風機19,20の吸込口(図示せず)まで案内される。前記のように50℃の空気を利用して70℃まで到達するまでの時間が、20℃の空気を利用して70℃まで到達するまでの時間よりも短くなり、その分、エネルギーロスを低減することができる。
【0041】
本実施形態では、第1水タンク8,9で蓄熱した熱エネルギが熱交換器18で熱交換される空気に対して連続的に伝達するように構成されている。これにより、第1水タンク8,9の熱エネルギを連続的に取り出せることから、過剰な蓄熱によるボイラ7や第1水タンク8,9の故障を防止でき、また、ボイラ7を基準として要求される容積よりも第1水タンク8,9の実際の容積を小さくできる。
【0042】
温風供給機構5は、前記熱交換器18と、乾燥対象物である木質チップC1が収容される複数(図1では1台のみ図示している)の乾燥コンテナ3と、前記熱交換器18で暖められた空気をそれぞれの乾燥コンテナ3,3(図1では1台のみ図示している)内の木質チップC1に温風として供給する複数(この実施形態では2台)の送風機(ブロワ)19,20と、を備えている。木質チップC1に供給する空気を温風とすることによって、木質チップC1に対して熱を効率的に供給できる。
【0043】
また、温風供給機構5は、海上コンテナ2外の熱交換器18からの温風を2台の送風機19,20の吸込口(図示せず)まで案内する第1配管27を備えている。第1配管27は、熱交換器18の出口(図示せず)と2台の送風機19,20の吸入口(図示せず)との間を連結するために用いられる。また、温風供給機構5は、2台の送風機19,20の吹出口(図示せず)からの温風を乾燥コンテナ3,3(図1では1台のみ図示している)まで案内する第2配管として可撓性を有する第2ホース28,28が設けられている。この第2ホース28,28が送風機19,20からの温風を乾燥コンテナ3,3へ案内するための温風の経路を形成する。また、第2ホース28,28は、送風機19,20の吹出口(図示せず)と乾燥コンテナ3,3の送風口(図示せず)との間を連結するために用いられ、乾燥コンテナ3,3の送風口には着脱可能に構成されている。図1では、1台の乾燥コンテナ3しか示されていないため、その乾燥コンテナ3に一方の第2ホース28が取り付けられ、他方の第2ホース28が取り外された状態である。第1配管27は、熱交換器18の出口から延びて他方(図1の右斜め下)の送風機20の吸入口に接続される管本体27Aと、管本体27Aの途中部分から分岐して一方(図1の左斜め上)の送風機19の吸入口に接続される分岐管27Bと、を備えている。管本体27A内の分岐管27Bに対応する位置、つまり熱交換器18と一方の送風機19との間の温風の経路に、温風が向かう対象の乾燥コンテナ3を切り替えることのできる切り替え弁29を備えている。この切り替え弁29は、両方の乾燥コンテナ3,3に温風を供給する状態と、2台の送風機19,20のうちのいずれか一方の乾燥コンテナ3にのみ温風を供給する状態とに切り替え可能に構成されている。
【0044】
切り替え弁29の切り替えは、タイマーを用いて所定の乾燥時間になると自動で切り替えるようにしてもよいし、場合によっては手動で切り替えてもよい。自動で切り替える場合には、各乾燥コンテナ3に湿度を検出する検出手段を設けて、検出手段で一定以上の乾燥が完了したことを検出した場合に、他の乾燥コンテナ3に温風を供給するように切り替えてもよい。また、図1に示すように、乾燥コンテナ3の設置位置の地面に設けられたロードセル4からの重量変化から他の乾燥コンテナ3に温風を供給するように切り替えてもよい。つまり、乾燥コンテナ3単体、または、乾燥コンテナ3を搭載した状態の運搬車両Mをロードセル4に荷重がかかる状態で配置して、重量を測定することにより、時間経過による重量変化から、乾燥対象物C1の含水量を計測し、予め決められた含水量になった時点で切り替えるようにしてもよい。図1では、一方(図1の左斜め上)の送風機19にのみ温風を供給している状態を示している。
【0045】
各乾燥コンテナ3は、一般的な車載コンテナと同様の略直方体形状であって、上面が開口した箱状に構成され、外部からの温風を内部に供給する送風口(図示せず)を有するコンテナ本体3Aと、コンテナ本体3Aの底壁3Tの上面から一定高さを空けて設けられるデッキ(図示せず)と、を備えている。木質チップは、乾燥コンテナ3の上面から内部に投入される。デッキには、多数の貫通孔が形成されていて、それら貫通孔からデッキ上に収容された多数の木質チップに温風を当てることで木質チップを乾燥させる。尚、乾燥コンテナ3は、車載が可能に構成されていてもよいし、車載しないものであってもよい。
【0046】
バイオマス乾燥システムは、海上コンテナ2の燃料庫6に外部から燃料を供給する燃料供給装置30、燃焼時のボイラ7で生じた焼却灰を海上コンテナ2の外部に排出する焼却灰処理装置(図示せず)、システムに利用する電力を発電するためのソーラーパネル(図示せず)を更に備えている。
【0047】
燃料供給装置30は、図7及び図8に示すように、燃料搬送車の積載コンテナ31に積載されている燃料を受け取って海上コンテナ2側へ横搬送する横搬送装置(例えば、スクリューコンベア)30Aと、横搬送装置30Aの終端部に連結されて横搬送装置30Aからの燃料を上方へ搬送する縦搬送装置(例えば、エア搬送装置)30Bと、縦搬送装置30Bの上端に連結され縦搬送装置30Bからの燃料を海上コンテナ2の燃料庫6へ落下供給するための筒状の案内部材(例えば、シュート)30Cと、を備えている。海上コンテナ2の天壁26には、案内部材30Cの先端を挿入できる開口(図示せず)が形成されていて、案内部材30Cを挿入しない時には開口を閉じる閉塞部材(図示せず)を備えている。図8では、燃料搬送車の積載コンテナ31を後下がり傾斜状態にして積載コンテナ31の後端から燃料(図示せず)を横搬送装置30Aへ投入している状態を示している。図7及び図8では、燃料供給装置30を、海上コンテナ2の後方側に配置したものを示しているが、図1に示すように、海上コンテナ2の後端部の横一側に配置したものであってもよい。
【0048】
焼却灰処理装置は、図示していないが、ボイラ7の底部にボイラ7内で燃焼した後の焼却灰を収容するための収容部と、収容部の真下に配置され収容部に収容された焼却灰の量が予め設定された量になったときに収容された焼却灰を海上コンテナ2の外部まで搬送する搬送装置(例えば、スクリューコンベア)と、を備えている。搬送装置で海上コンテナ2の外部まで搬送された焼却灰は、例えば密閉容器に回収される。
【0049】
ソーラーパネルは、海上コンテナ2の天壁26の上面に設置され、バイオマス乾燥システムで利用する電力の一部または全部を発電することができる。
【0050】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。
【0051】
例えば、前記実施形態では、1つの筐体である海上コンテナ2のみを設けたが、海上コンテナ2とは異なる(別の)副筐体を設けて実施することもできる。副筐体の内部には、第1水タンク8,9と並列的に設けられ、ボイラ7の燃焼により生じた熱により生成した温水を蓄積する単数又は複数の第2水タンク(図示せず)を設けて実施してもよい。第1水タンク8,9と並列的とは、第1水タンク8,9と第2水タンクとが配管で並列的に繋がっていることを言い、ボイラ7の燃焼により生じた熱により生成した温水を第1水タンク8,9及び第2水タンクに蓄積する。この場合、筐体に加えて副筐体を運送するだけで、種々の用途に利用可能な温水を発生するシステムを構築できる。第2水タンクは、ボイラ7の燃焼により生じた熱の他に、熱交換器18から第1水タンク8,9に戻る温水の伝熱管からの熱を伝達することもできる。これにより、温水の伝熱管の余熱を利用して熱効率のアップを図ることができる。また、前記第2タンクは、浄水タンクであってもよく、この場合、浄水を加熱した温水は、システム外に供給され、調理や入浴用として用いることができる。
【0052】
また、前記実施形態では、バイオマス乾燥システムを運用するシステム運用時において、海上コンテナ(筐体)2の内部に配置される各部品としては、燃料庫6、ボイラ7、第1水タンク8,9が含まれるが、熱交換器18、システム各部の制御を行う制御装置を含んでいてもよい。また、バイオマス乾燥システムを運用するシステム運用時において、海上コンテナ2の外部に配置される各部品としては、送風機19,20、煙突10、ダクト11、燃料供給装置30が含まれるが、前記制御装置も含んでいてもよい。そして、これらすべての部品を海上コンテナ2の内部に収容しておけば、システムを運用する設置場所まで海上コンテナ2を運送するだけですべての部品を纏めて運送することができる。
【0053】
また、前記実施形態では、送風機(ブロワ)19,20を海上コンテナ(筐体)2の外部に設けたが、送風機(ブロワ)19,20を海上コンテナ2内に設けてもよいし、送風機(ブロワ)19,20は、海上コンテナ2の外部に設け、送風機(ブロワ)19,20の空気取り入れ口を海上コンテナ2内と連通する状態に配置してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、送風機(ブロワ)19,20の台数が2台であったが、1台であってもよいし3台以上であってもよい。1台とした場合、第2ホース28を適宜分岐させることにより、複数の乾燥コンテナ3に送風可能である。この場合、乾燥コンテナ3に向かって第2ホース28が分岐する部分に切り替え弁29を設け、切り替え弁29よりも上流側に送風機を配置することができる。一方、送風機を3台以上とした場合には、前記実施形態の分岐管27Bに相当する管に切り替え弁29を設けることもできるし、送風機から乾燥コンテナ3に向かう第2ホース28に切り替え弁29を設けることもできる。すなわち、熱交換器18から乾燥コンテナ3に至る温風の経路に、適宜、送風機と切り替え弁29を配置することにより、乾燥コンテナ3で所望の乾燥操作を行うことができる。
【0055】
また、前記実施形態では、燃料供給装置30を、横搬送装置30Aと、縦搬送装置30Bの2台で構成したが、斜め上方に搬送する1台の斜め搬送装置で構成してもよい。尚、斜め搬送装置で上方まで搬送された燃料は、案内部材により落下供給される。
【符号の説明】
【0056】
1…バイオマス乾燥システム、2…海上コンテナ(筐体)、3…乾燥コンテナ、3A…コンテナ本体、3T…底壁、4…ロードセル、5…温風供給機構、6…燃料庫、7…ボイラ、7A…投入口、10…煙突、10A…本体部、10B…吸い込み部、11…ダクト、11a…開口、11A…第1縦筒部、11B…第2横筒部、12…受け部材、13…仕切り壁、14…アジテータ(攪拌装置)、14A…羽根、14B…カバー部材、14C…電動モータ、15…搬送装置、16…角度調整手段、16A…固定部材、16B…調整部材、16a,16b…貫通孔、16c…ピン、17…膨張タンク、18…熱交換器、18A…管束、18K…空気取り入れ口、19,20…送風機(ブロワ)、21…底壁、22,23…左右壁、22A…開閉扉、22a…貫通孔、23A…扉、24,25…前後壁、24A…窓、25A…扉、26…天壁、27…第1配管、27A…管本体、27B…分岐管、28…第2ホース(第2配管)、29…切り替え弁、30…燃料供給装置、30A…横搬送装置、30B…縦搬送装置、30C…案内部材、31…積載コンテナ、C1…木質チップ(乾燥対象物)、C2…燃料、D1,D2…伝熱管、D3,D4…配管、S…領域(デッドスペース)、X…回転軸
図1
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図10