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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166725
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】バイオマス乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/06 20060101AFI20241122BHJP
   F26B 25/08 20060101ALI20241122BHJP
   F23K 3/02 20060101ALI20241122BHJP
   F23K 3/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F26B9/06 H
F26B25/08
F23K3/02 Z
F23K3/16 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083028
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】前川 亘
(72)【発明者】
【氏名】宮内 真紀
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB03
3L113AC03
3L113AC51
3L113AC69
3L113BA05
3L113CB03
3L113CB24
3L113DA16
(57)【要約】
【課題】バイオマスからなる燃料を燃料庫に供給する際の供給効率を向上させたバイオマス乾燥システムを提供する。
【解決手段】バイオマスからなる燃料C2を貯留する燃料庫31と、前記乾燥のために利用する熱を生じさせるべく、前記燃料庫31から供給された前記燃料を燃焼するボイラと、前記燃料庫31に前記燃料を供給する燃料供給装置36と、前記燃料庫31、前記ボイラ、前記燃料供給装置36の各々における少なくとも一部を収容する筐体30と、を備え、前記燃料供給装置36は、前記筐体30が載置される載置面の上方近傍において、上方に開口した開口部を有する燃料取入部361と、前記筐体30の上部において前記燃料庫に対して開口した燃料取出部362と、前記燃料取入部361、前記燃料取出部362の間を連結して前記燃料C2を下方から上方に移動させる燃料搬送部363と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いられ、
バイオマスからなる燃料を貯留する燃料庫と、
前記乾燥のために利用する熱を生じさせるべく、前記燃料庫から供給された前記燃料を燃焼するボイラと、
前記燃料庫に前記燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃料庫及び前記ボイラにおける少なくとも一部を収容する筐体と、
を備え、
前記燃料供給装置は、
前記筐体が載置される載置面の上方近傍において、上方に開口した開口部を有する燃料取入部と、
前記筐体の上部において前記燃料庫に対して開口した燃料取出部と、
前記燃料取入部、前記燃料取出部の間を連結して前記燃料を下方から上方に移動させる燃料搬送部と、
を有する、バイオマス乾燥システム。
【請求項2】
前記燃料搬送部は、少なくともスクリュー搬送装置またはエア搬送装置を有する、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項3】
前記燃料搬送部は、前記スクリュー搬送装置、前記エア搬送装置の両方を有し、
前記燃料搬送部における、前記燃料の、水平移動方向について前記スクリュー搬送装置が用いられ、上下移動方向について前記エア搬送装置が用いられる、請求項2に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項4】
前記燃料搬送部は、前記開口部に対応した位置に前記スクリュー搬送装置を有し、
前記開口部には、前記開口部が有する開口を開閉可能なガイド板が設けられ、
前記ガイド板は、閉じた際には前記開口を上方から覆い、開いた際には落下する前記燃料を受けて前記開口に導くガイドとして機能する、請求項2または3に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項5】
前記ガイド板は開いた際、落下させる前記燃料を搭載した車両が有する車体の一部に当接する、請求項4に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項6】
前記乾燥対象物を収容し、前記ボイラの熱が供給されることで前記乾燥対象物を乾燥する乾燥コンテナを備え、
前記開口部は、前記乾燥コンテナから落下する乾燥後の前記乾燥対象物を受けるように構成されていて、前記乾燥対象物の前記乾燥コンテナからの落下範囲よりも長い寸法で水平方向に延びている、請求項1に記載のバイオマス乾燥システム。
【請求項7】
前記乾燥コンテナを傾斜または上下反転させることで、前記乾燥コンテナから前記開口部に前記乾燥対象物を落下させる姿勢変化装置を備える、請求項6に記載のバイオマス乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス燃料を燃焼させて生成した熱エネルギを利用してバイオマスを乾燥させるバイオマス乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、木質チップ等のバイオマスを乾燥する(含有水分量を減少させる)ことで、バイオマス燃料として燃料化するバイオマス乾燥システムを構想している。乾燥のための燃料には、乾燥後のバイオマスの一部を用い、それに用いられない他のバイオマスは、別用途の燃料として用いられる。
【0003】
ここで従来、木質チップ等を用いるシステムとして、例えば、特許文献1に記載の発電システムが知られている。この発電システムは、木質チップをトラック等の移動体内に原料供給ユニットを介して投入し、移動体内に設けられた炉及び発電装置で、燃焼を行って発電するように構成されている。前記システムでは、野積み状態の木質チップを、ベルトコンベアを用い、移動体に向けて搬送している。
【0004】
ここで木質チップは、コンテナ等の箱状物に多量をまとめて収容した状態として搬送されることが多い。本願の発明者が構想しているシステムにおいても、基本的にはコンテナに収容して搬送されてきた状態で、前記コンテナをそのまま乾燥のための「乾燥コンテナ」として使用し、温風を乾燥コンテナの内部空間に供給することで、コンテナ内部のバイオマスを乾燥させるように構成されている。温風は例えばボイラの熱により生じさせることができるが、ボイラの燃料として乾燥後のバイオマスを用いる場合には、ボイラの近傍にバイオマスを貯留する燃料庫を設けておくことができる。
【0005】
乾燥コンテナで乾燥させたバイオマスを燃料庫に供給しようとする際、特許文献1に記載されているように、一旦地面に降ろして野積み状態としてしまうことは、供給効率の点で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-155519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、バイオマスからなる燃料を燃料庫に供給する際の供給効率を向上させたバイオマス乾燥システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の一つは、バイオマスからなる乾燥対象物を乾燥するために用いられ、バイオマスからなる燃料を貯留する燃料庫と、前記乾燥のために利用する熱を生じさせるべく、前記燃料庫から供給された前記燃料を燃焼するボイラと、前記燃料庫に前記燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃料庫、前記ボイラ、前記燃料供給装置の各々における少なくとも一部を収容する筐体と、を備え、前記燃料供給装置は、前記筐体が載置される載置面の上方近傍において、上方に開口した開口部を有する燃料取入部と、前記筐体の上部において前記燃料庫に対して開口した燃料取出部と、前記燃料取入部、前記燃料取出部の間を連結して前記燃料を下方から上方に移動させる燃料搬送部と、を有する、バイオマス乾燥システムである。
【0009】
前記構成によれば、燃料供給装置を用いて、燃料庫に燃料を安定的に供給できる。
【0010】
また更に、前記燃料搬送部は、少なくともスクリュー搬送装置またはエア搬送装置を有するものとできる。
【0011】
この構成によれば、燃料搬送部における部分ごとに適切な搬送装置を配置できる。
【0012】
また更に、前記燃料搬送部は、前記スクリュー搬送装置、前記エア搬送装置の両方を有し、前記燃料搬送部における、前記燃料の、水平移動方向について前記スクリュー搬送装置が用いられ、上下移動方向について前記エア搬送装置が用いられるものとできる。
【0013】
この構成によれば、水平移動方向について燃料をスクリューで押すこと、上下移動方向について燃料を気流で押し上げることで、効率的な燃料搬送が可能である。
【0014】
また更に、前記燃料搬送部は、前記開口部に対応した位置に前記スクリュー搬送装置を有し、前記開口部には、前記開口部が有する開口を開閉可能なガイド板が設けられ、前記ガイド板は、閉じた際には前記開口を上方から覆い、開いた際には落下する前記燃料を受けて前記開口に導くガイドとして機能するものとできる。
【0015】
この構成によれば、ガイド板により、燃料を漏れなく開口部で受けることができる。
【0016】
また更に、前記ガイド板は開いた際、落下させる前記燃料を搭載した車両が有する車体の一部に当接するものとできる。
【0017】
この構成によれば、開いたガイド板を車体で支持できるので、車両から燃料を落下させる際に、開いた状態を安定的に保つことができる。
【0018】
また更に、前記乾燥対象物を収容し、前記ボイラの熱が供給されることで前記乾燥対象物を乾燥する乾燥コンテナを備え、前記開口部は、前記乾燥コンテナから落下する乾燥後の前記乾燥対象物を受けるように構成されていて、前記乾燥対象物の前記乾燥コンテナからの落下範囲よりも長い寸法で水平方向に延びているものとできる。
【0019】
この構成によれば、乾燥コンテナから落下する乾燥対象物(すなわち燃料)を、漏れなく開口部で受けることができる。
【0020】
また更に、前記乾燥コンテナを傾斜または上下反転させることで、前記乾燥コンテナから前記開口部に前記乾燥対象物を落下させる姿勢変化装置を備えるものとできる。
【0021】
この構成によれば、姿勢変化装置により、乾燥コンテナから落下する乾燥対象物(すなわち燃料)を開口部に落下させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、燃料供給装置を用いて、燃料庫に燃料を安定的に供給できる。よって、バイオマスからなる燃料を燃料庫に供給する際の供給効率を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバイオマス乾燥システムの構成の概要図である。
図2図2は、前記バイオマス乾燥システムにおいて、筐体とその内部構成(ボイラ等)、及び、車載状態のコンテナ(乾燥コンテナ兼用)を示す図である。
図3図3は、前記バイオマス乾燥システムにおいて、筐体と燃料供給装置との関係を示す図である。
図4図4は、前記バイオマス乾燥システムにおいて、車載されたコンテナ(乾燥コンテナ兼用)から燃料供給装置に燃料(バイオマス)が移動させられる状態を示す図である。
図5】前記バイオマス乾燥システムでガイド板を設けた例において、ガイド板の開閉状態を示す図であり、図5(A)は閉じた状態、図5(B)は開いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るバイオマス乾燥システム1について、添付図面を参照しつつ説明する。本発明において用いる「バイオマス」とは、動植物に由来する物質であり、一定の形態を有する固体であって、乾燥して含有水分量を減少させることで燃焼可能な材料である。例えば木材(廃材、おがくず等)、植物残渣(わら、除去された雑草等)、可燃性の廃棄物(食品廃棄物等)、動物の排泄物、下水汚泥である。本実施形態では、木材(間伐材、剪定された樹木、建築廃材等)をチップ状にした木質チップを用いる。このため、本実施形態のバイオマスは、複数(多数)が集合した状態で流動性を有しており、流動性を利用した移送が可能である。なお、以下の「乾燥対象物(C1)」と「燃料(C2)」は、含有水分量が異なるが、物としては同じである。
【0025】
本実施形態に係るバイオマス乾燥システム1は、図1に示すように、バイオマスからなる乾燥対象物C1を収容し、収容した状態で乾燥を行う乾燥コンテナ2と、温水を作るボイラ設備3と、ボイラ設備3によって作られた温水が供給される熱交換器4であって、温水の熱エネルギを空気(外気)に伝達する熱交換器4と、ボイラ設備3と熱交換器4とに接続され、流体を流通させる流路を構成する配管構造5と、システム各部を制御する制御ユニット(図示しない)と、熱交換器4によって温められた空気を乾燥コンテナ2に送る送風設備7と、を備える。
【0026】
本実施形態のバイオマス乾燥システム1では、ボイラ設備3、熱交換器4、制御ユニット、送風設備7によって、乾燥コンテナ2に温風を供給するための温風設備が構成されている。
【0027】
乾燥コンテナ2は、バイオマスを保持できる構成であれば種々の構成を採用できる。例えば車載用のコンテナに似た形状であって、例えば出願人による特開2020-69680に記載された構成のものを用いることができる。乾燥コンテナ2は、運搬車両Mに対して着脱可能とされ、上端が開口したコンテナであって、内部空間に温風を通す(流す)ことができるよう構成されている。乾燥コンテナ2に収容されるバイオマス(本実施形態では多数の木質チップ)は、各チップ間に空間(連続した空間)が存在しており、集合状態で通気性を有している。前記空間を温風が通過することで、温風に触れたバイオマスの乾燥がなされる。乾燥はまず、個々のバイオマスの表面においてなされ、その後、温風に触れる時間の経過に従い、内部の乾燥もされていく。乾燥コンテナ2に通す温風の量や時間を調整することで、燃料C2として用いるのに適した含有水分量(本実施形態では、重量比で30~40%、乾燥対象物C1の当初段階では約50%)まで乾燥させることができる。この乾燥のため、乾燥コンテナ2には、送風設備7の連結管73が、温風を通せる状態で着脱可能とされている。図示はしていないが、例えば、乾燥コンテナ2の車載時に後端となる側壁に対して連結管73が取り付けられる。
【0028】
乾燥コンテナ2は、車載時に後端となる側壁に、図3に示すような観音開き式の扉が設けられている。この扉は全体または少なくとも下部が開放できるようにされている。この扉の開放は、図4に示すように、乾燥コンテナ2を傾斜させることにより、乾燥コンテナ2から乾燥後の乾燥対象物C1(すなわち燃料C2)を落下させて、外部燃料供給装置36に移動させる際になされる。
【0029】
乾燥コンテナ2は、ボイラ設備3の周囲に設置される。設置場所は、ボイラ設備3の直近であることが好ましいが、これに限定されず、設置場所の状況に応じて適宜設定できる。本実施形態のバイオマス乾燥システム1では、乾燥コンテナ2を2台並列して配置できるようにされている(図1には乾燥コンテナ2を1台だけ記載しており、乾燥コンテナ2が無い位置では、温風が通される連結管73が「遊んだ」状態となっている)。図1に示すように、乾燥コンテナ2の設置位置の地面にはロードセル20が設けられている。乾燥コンテナ2単体、または、乾燥コンテナ2を搭載した状態の運搬車両Mをロードセル20に荷重がかかる状態で配置して、重量を測定することにより、時間経過による重量変化から、乾燥対象物C1の含有水分量を計測できる。また、ロードセル20の測定値を検知することにより、制御ユニットが、乾燥コンテナ2への温風の供給量の変化、供給終了(乾燥終了)、複数台の乾燥コンテナ2への温風の供給切り替え等を自動で行ってもよい。ロードセル20の後方には車止めSが設けられており、乾燥コンテナ2が有する車輪や運搬車両Mの車輪が当たることによって、送風設備7に衝突しないようにされている。
【0030】
ボイラ設備3は、図2に示すように、内部に空間を有する筐体30と、筐体30の内部を区切ることで設けられ、バイオマスからなる燃料C2(後述するボイラ33で燃焼させる燃料C2)を貯留する燃料庫31と、燃料庫31の内部に設けられ、燃料庫31に貯留されている燃料C2を攪拌する攪拌装置32と、筐体30の内部(より具体的には、筐体30内において燃料庫31に隣接するように形成されているボイラ庫)に設けられ、バイオマスからなる乾燥対象物C1を乾燥させるために利用する熱を生じさせるべく、燃料庫31から供給された燃料C2を燃焼するボイラ33と、筐体30の内部(ボイラ庫)においてボイラ33から離れた位置に設けられ、ボイラ33で燃料C2を燃焼させることによって発生させた熱で温める(及び、温めた)水を貯える水タンク35と、燃料庫31の外部から燃料庫31の内部に燃料C2を供給する外部燃料供給装置36(請求項記載の「燃料供給装置」に対応、下記で詳述する)と、燃料庫31内の燃料C2をボイラ33に供給する内部燃料供給装置37と、を備える。燃料庫31、ボイラ33、水タンク35の全体は筐体30に収容されている。筐体30は、例えば海上輸送用のコンテナ(20フィートコンテナ等)を転用し、加工を行うことにより構成できる。なお、燃料庫31の底面は、ボイラ庫側が高く、筐体30の長手方向端部側が低い傾斜面とされている。
【0031】
攪拌装置32は、燃料庫31の内部に上下方向(詳しくは、傾斜面である燃料庫31の底面に直交していて、鉛直方向に対して傾斜した方向)に沿って設けられた攪拌回転軸(図示しない)と、攪拌回転軸を中心とする周方向で回転可能な攪拌翼321と、を有する。燃料庫31の内部で攪拌翼321が回転することで、燃料庫31の下方であって、内部燃料供給装置37に通じる排出穴(図示しない)に燃料C2を送り込むことができる。内部燃料供給装置37は、排出穴の下方部分とボイラ33とを結ぶ搬送手段であって、例えばベルトコンベアが用いられる。内部燃料供給装置37は、燃料庫31の側が下方に位置し、ボイラ庫の側が上方に位置するように傾斜している。なお、傾斜角度は調整可能とされている。攪拌翼321によって排出穴に送り込まれた燃料C2は、内部燃料供給装置37を経由し、内部燃料供給装置37の上端部からボイラ33内に投入されて燃焼する。
【0032】
水タンク35は筐体30の内部に2基、並列的に設けられている。ただし、水タンク35の数量は特に限定されず、ボイラ33と熱交換器4との間で循環させるために適切な水量を保持できれば、数量は問わない。また、バイオマス乾燥システム1において、他のタンク(膨張タンク、薬液添加タンク、システム外に温水を供給するための温水タンク)を設けることもできる。水タンク35に貯留された水は、ボイラ33との間で循環することにより、温水となる。この温水は水タンク35に戻って一旦貯留された上で、配管構造5を経由して熱交換器4に送られる。本実施形態では、設計上、熱交換器4で熱交換される時点での温水温度が80℃に設定されている。なお、この温度は一例であって、乾燥対象物C1の乾燥に適した適宜の温度に設定できる。
【0033】
熱交換器4としては、空冷式の熱交換器が用いられている。熱交換器4は具体的に、水タンク35から供給された流体(具体的には温水)の熱エネルギを、周囲の空気に伝達する伝熱部40を少なくとも有する。熱交換によって伝熱部40で暖められた空気は、送風設備7によって流動され、乾燥コンテナ2に向かう温風となる。本実施形態では、設計上、温風温度が70℃に設定されている。なお、この温度は一例であって、乾燥対象物C1の乾燥に適した適宜の温度に設定できる。
【0034】
配管構造5は、水タンク35から熱交換器4に送る温水が往方向に流通する第1流路50と、熱交換器4から水タンク35に戻す流体(温度低下した温水)が復方向に流通する第2流路51と、を有する。また配管構造5は、内部の流体を流動させて循環させるためのポンプ(図示しない)を有する。
【0035】
送風設備7は、伝熱部40よりも乾燥コンテナ2に近い位置に設けられた送風管71と、送風管71に接続され、空気を流動させる送風装置72と、送風装置72と乾燥コンテナ2とに連結される連結管73と、を有する。乾燥コンテナ2を2台配置できるようにするため、送風管71は下流側で2系統に分岐している。図示していないが、送風管71には図示しない開閉弁が設けられていて、前記2系統を選択して送風できるようにされている。送風管71及び連結管73には温風が通され、この温風は、連結管73が連通状態で接続された乾燥コンテナ2の内部に供給される。
【0036】
次に外部燃料供給装置36について説明する。外部燃料供給装置36は、図2図3に示すように、筐体30の外部に設けられた燃料取入部361、燃料取出部362、燃料搬送部363を有する。燃料C2の供給方向で、入口側が燃料取入部361、出口側が燃料取出部362である。前記各部361~363は一体に組み立てられていて、周壁で囲まれた内部が長手方向(搬送方向)に連通している。このため、外部燃料供給装置36は、燃料C2をシステム外から受け入れて燃料庫31に至る一連の搬送経路を構成している。
【0037】
燃料取入部361は、筐体30が載置される載置面(地面)と同一面上に置かれ、車両Mの前後方向に対して直交して延びる、水平方向で細長い箱状体の一部として形成されている。本実施形態では、燃料取入部361が含まれる箱状体は、筐体30における燃料庫31の側方で、筐体30の長手方向に直交して延びる方向に配置されている。燃料取入部361が燃料庫31の側方に位置することから、乾燥後の乾燥対象物C1(すなわち燃料C2)を即座に燃料庫31に移動させることができる。この箱状体は、燃料搬送部363の一部を構成する。なお、システム設置領域の状況に応じ、筐体30に対する燃料取入部361の位置関係は適宜設定できる。また本実施形態では、筐体30の載置面と、燃料取入部361を含む箱状体の設置面とは同一高さとされているが、高低差があってもよい。燃料取入部361は、筐体30が載置される載置面の上方近傍で開口し、上方に開口した開口部3611を有する。開口の形状は長方形とされている。
【0038】
ここで開口部3611に関連する事項として、本実施形態のバイオマス乾燥システム1は、乾燥コンテナ2を傾斜(図4参照)または上下反転(図示しない)させることで、乾燥コンテナ2から開口部3611に乾燥対象物C1を落下させる姿勢変化装置8を備える。具体的に、乾燥コンテナ2から乾燥後の乾燥対象物C1(含有水分量の減少により燃料化されたもの)を取り出す際には、図4に示すように、運搬車両M(例えば脱着装置付コンテナ車)が備える荷台を傾斜させたり、重機を用いて乾燥コンテナ2を姿勢変化させたりできるが、これらの場合における前記荷台や重機が姿勢変化装置8に相当する。この姿勢変化装置8により、乾燥コンテナ2から落下する乾燥後の乾燥対象物C1(すなわち燃料C2)を、外部燃料供給装置36における開口部3611に落下させることができる。なお、開口部3611への乾燥対象物C1の投入は、前述した乾燥コンテナ2からの直接投入に限らず、例えばブルドーザーやパワーショベルでの投入、エア搬送ホース、また、人力での投入等、種々の手法で行うことができる。
【0039】
開口部3611の内方には後述するスクリュー搬送装置3634が位置している。燃料取入部361は、開口部3611が有する開口の周囲に設けられた開口部周壁3612を有する。本実施形態では長方形状の開口の四方に開口部周壁3612が設けられている。開口部周壁3612は、乾燥コンテナ2から落下させられる燃料C2の一部が当たることで、開口部3611の外にこぼれることを抑制する。
【0040】
燃料取出部362は、図3に示すように、筐体30の上部において燃料庫31に対して開口している。燃料取出部362から出た燃料C2は、落下して燃料庫31に貯留される。
【0041】
燃料搬送部363は、燃料取入部361(より詳しくは開口部3611)、燃料取出部362の間を連結して燃料C2を下方から上方に移動させるよう構成されている。本実施形態の燃料搬送部363は、燃料取入部361を有する箱状体(この部分も燃料搬送部363の一部を構成している)よりも下流側において、上下方向(本実施形態では鉛直方向)に延びる上流部3631と、上流部3631の上端に接続されていて、斜め下方に延び、先端の一部が筐体30の上部に入り込んで、筐体30の天面から下方に突出した下流部3632とを含むように構成されている。上流部3631及び下流部3632は中空の筒状体とされている。本実施形態の燃料搬送部363の周壁は鋼板製のパイプ状体とされているが、例えば通気用に用いられる大径ホースで周壁を構成することもできる。燃料搬送部363に周壁を設けることにより、搬送中の燃料C2を外部の風雨から守ることができる。上流部3631(及び下流部3632)の上端は、筐体30の上面よりも上方に位置している。図3に示すように、上流部3631と下流部3632の接続箇所3633は、反転した略V字状に屈曲しており、上流部3631の上端部分にはエア搬送を行うための送風機(ブロア)が外付けされていて、上流部3631にける内部の空気を上方に吸引している。このため、上流部3631では送風機による吸引によって燃料C2が下方から上方に移動させられる。一方、下流部3632では燃料C2は重力による落下によって下方に移動する。接続箇所3633が筐体30の上面よりも上方に位置しているため、高い位置から燃料C2を落下させることができるので、確実な落下が可能である。
【0042】
図3に示すように、下流部3632の燃料庫31への接続箇所は、平面視にて、筐体30の幅方向中央よりも手前側(上流部3631側)に設定されている。このため燃料C2は、燃料庫31の内部で、攪拌装置32の攪拌回転軸からずれた位置に落下するので、攪拌回転軸を直撃することを避けられる。なお、下流部3632が燃料庫31の中央からずれた位置に設定されているが、燃料庫31の中央近くに燃料C2を落下させるため、図示のように下流部3632の軸線方向は、鉛直方向に対してやや傾斜して設定されている。なお、燃料搬送部363の形態はこれに限定されず、種々の形態で実施できる。
【0043】
燃料搬送部363は、燃料取入部361から燃料取出部362まで、燃料C2となった乾燥後の乾燥対象物C1(木質チップ)を搬送するために、少なくともスクリュー搬送装置3634またはエア搬送装置3635を有する。この構成により、燃料搬送部363における部分ごとに適切な搬送装置を配置できる。スクリュー搬送装置3634は、螺旋状に突起が形成されたスクリュー(図2参照)を軸方向周りに回転させることで、前記突起が燃料C2を押して燃料取出部362に向けて搬送する。スクリューはモータにより駆動される。スクリュー搬送装置3634は、突起による押し出しを行うことから、スクリューの回転数に応じた定量搬送が可能である。エア搬送装置3635は、外部燃料供給装置36の内部を長手方向(軸方向)に流れる気流によって、燃料C2を燃料取出部362に向けて搬送する。
【0044】
スクリュー搬送装置3634とエア搬送装置3635は、燃料搬送部363においてそれぞれ単独で設けることもできるし(つまり、スクリュー搬送装置3634だけを設けたり、エア搬送装置3635だけを設けたりしてもよい)、外部燃料供給装置36の内部を長手方向で区分し、各区分でスクリュー搬送装置3634とエア搬送装置3635を別々に設けることもできる。本実施形態の燃料搬送部363は、スクリュー搬送装置3634、エア搬送装置3635の両方を有している。スクリュー搬送装置3634は、燃料搬送部363の一部でもある、燃料取入部361(開口部3611)を有する箱状体の内部に設けられている。燃料搬送部363における、燃料C2の、水平移動方向についてスクリュー搬送装置3634が用いられ、上下移動方向についてエア搬送装置3635が用いられる。この構成により、水平移動方向について燃料C2をスクリューで押すこと、上下移動方向について燃料C2を気流で押し上げることで、効率的な搬送が可能である。特にスクリュー搬送装置3634では、押し込みにより搬送を行うため、開口部3611からの飛び散りが起きにくいメリットがある。また、エア搬送装置3635では、迅速な搬送を行えるメリットがある。
【0045】
開口部3611には、それが有している開口を開閉可能なガイド板3613が設けられていてもよい。ガイド板3613は、固定式の開口部周壁3612とは別に設けられた可動式(可倒式)のものであって、開口部周壁3612の一部を変形したものとも言える。ガイド板3613は、図5(A)に示すように、閉じた際には開口を上方から覆い、図5(B)に示すように、開いた際には落下する燃料C2を受けて開口に導くガイドとして機能する。このガイド板3613により、閉じた際には降雨時の雨水が燃料搬送部363に入り込むことをある程度は抑制でき、開いた際には燃料C2を漏れなく開口部3611で受けることができる。このガイド板3613は、開いた際、落下させる燃料C2を搭載した運搬車両Mが有する車体の一部(具体的にはシャシフレームまたはバンパ)に当接するように構成することもできる。この場合、運搬車両Mは図示しない車止めや停止表示等により、燃料取入部361に対して一定位置に停止させられる。この構成では、開いたガイド板3613を車体で支持し、開いた状態を保持できる。また、運搬車両Mの荷台傾斜の影響をガイド板3613が受けない。このため、運搬車両Mから燃料C2を落下させる際に、開いた状態を安定的に保つことができる。
【0046】
開口部3611の開口は、乾燥コンテナ2から落下する乾燥後の乾燥対象物C1(すなわち燃料C2)を受けるように構成されていて、乾燥対象物C1(燃料C2)の乾燥コンテナ2からの落下範囲(乾燥コンテナ2において乾燥対象物C1(燃料C2)が落下する開口の幅寸法に一致)よりも長い寸法で水平方向に延びている。このように開口部3611が構成されたことにより、乾燥コンテナ2から落下する乾燥処理後の乾燥対象物C1(燃料C2)を、漏れなく開口部3611で受けることができる。以上のように構成された外部燃料供給装置36を用いることで、燃料庫31に燃料C2を安定的に供給できる。
【0047】
以上のように構成された本実施形態によれば、燃料供給装置(外部燃料供給装置36)を用いて、燃料庫31に燃料C2を安定的に供給できる。よって、バイオマスからなる燃料C2を燃料庫31に供給する際の供給効率を向上させられる。
【0048】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば、前記外部燃料供給装置36は、バイオマスからなる燃料C2に好適な「燃料供給システム」として、前記バイオマス乾燥システム1とは独立したシステムとして成立させることもできる。
【0049】
また、乾燥対象物C1に対する乾燥は、前記実施形態のような温風を用いる構成に限定されるものではなく、バイオマスからなる燃料C2の燃焼熱(熱エネルギ)を利用して行うものであれば種々の構成で実施できる。例えば、ボイラ33により生じた温水を通す温水管(図示しない)に乾燥対象物C1を触れさせること等による加熱で乾燥を行ってもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、前記外部燃料供給装置36の供給経路がシステム内で、一対一対応するように固定的であった。しかしこれに限定されず、ボイラ33及び燃料庫31等を内蔵した筐体30が複数設けられたバイオマス乾燥システム1に適用する場合、燃料搬送部363を下流側で分岐させて、分岐ごとに燃料取出部362を複数設けておき、複数の燃料庫31に燃料C2を供給できるようにすることもできる。この場合、燃料搬送部363に開閉弁を設けておき、燃料C2の供給先を選択できるようにすることもできる。
【0051】
また、前記実施形態では、前記外部燃料供給装置36がシステム内で固定的に設けられていて、外部燃料供給装置36内に連続的に燃料C2を通すように構成されていたが、燃料C2の供給をバッチ的(間欠的)に行うよう構成することもできる。例えば、燃料供給装置を、筐体30に対して着脱可能な分離式小型コンテナとした構成である(図示はしていない)。この場合、筐体30における燃料庫31に、開放された際に分離式小型コンテナが通過できる開閉部が形成されている。開閉部は、フォークリフトによる分離式小型コンテナの移動を行う場合、筐体30の側方に設けられる。分離式小型コンテナは、フォークリフトのフォークを差し込み可能な荷役用パレットに載置して用いられる。燃料庫31の内部には、後述の係合部と係合可能な部分が備えられる。分離式小型コンテナは、燃料C2を収容できる空間を有する、上端部が開放された箱状の収容部と、収容部から外方に突出した腕状の係合部を備える。収容部の底面には燃料C2(個々の木質チップ)が通過可能な複数の貫通穴が設けられている。この貫通穴は、荷役用パレットの上面により塞がれている。
【0052】
このような構成とすることにより、筐体30の外部で、荷役用パレットに載置した分離式小型コンテナに燃料C2を収容した状態とし、フォークリフトを用いて荷役用パレットごと分離式小型コンテナを燃料庫31の内部に移動させる。係合部によって燃料庫31に分離式小型コンテナを上下方向で固定的に係合させた状態で、フォークリフトの操作により荷役用パレットのみを下方に移動させると、収容部の底面の貫通穴が開放された状態となって燃料C2が落下し、燃料庫31内に燃料C2を移動させることができる。
【0053】
なお、分離式小型コンテナを乾燥コンテナ2としても用いる場合、例えば、荷役用パレットに、乾燥対象物C1(木質チップ)は通過不能だが温風は通過可能な穴を設けておき、荷役用パレットをから分離式小型コンテナに対して温風を供給可能に構成することもできる。
【0054】
また、この例において収容部における側部については、鋼材等の硬質材料で形成することもできるし、シート状体等の軟質材料で構成することもできる。後者の場合、係合部は収容部における底部に設けるか、底部に連結された枠部を設けた上、その枠部に設けることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…バイオマス乾燥システム、2…乾燥コンテナ、3…ボイラ設備、4…熱交換器、5…配管構造、7…送風設備、8…姿勢変化装置、20…ロードセル、30…筐体、31…燃料庫、32…攪拌装置、33…ボイラ、35…水タンク、36…燃料供給装置(外部燃料供給装置)、37…内部燃料供給装置、40…伝熱部、50…第1流路、51…第2流路、71…送風管、72…送風装置、73…連結管、321…攪拌翼、361…燃料取入部、362…燃料取出部、363…燃料搬送部、3611…開口部、3612…開口部周壁、3613…ガイド板、3631…燃料搬送部の上流部、3632…燃料搬送部の下流部、3633…燃料搬送部の接続箇所、3634…スクリュー搬送装置、3635…エア搬送装置、C1…乾燥対象物(バイオマス、木質チップ)、C2…燃料(バイオマス、木質チップ)、M…運搬車両、S…車止め
図1
図2
図3
図4
図5