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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166730
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083036
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 竜弥
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA24
2C056EB12
2C056EB14
2C056EB30
2C056EC03
2C056EC12
2C056EC14
2C056EC26
2C056EC31
2C056EC67
2C056HA45
2C056HA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストで、上ベルトが異常により停止した場合でも各ヒータへの電力供給を停止できる構成を提供する。
【解決手段】回転検知センサ100は、上ベルト21の回転を検知する。温調用温度センサ310は、検知した上ベルト21の温度が目標温度となるようにCPUが各ヒータ110、120、130への電力供給を制御するためのセンサである。保護用温度センサ210は、検知した上ベルト21の温度が閾値以上となった場合に各ヒータ110、120、130への電力供給を停止するためのセンサである。保護用温度センサ210により検知された温度が閾値未満であって、CPUが上ベルト21を駆動するモータに上ベルト21を回転駆動させる指示を出しても回転検知センサ100が上ベルト21の回転停止を検知した場合には、各ヒータ110、120、130への電力供給が停止される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出してシートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像が形成されたシートを加熱して、該シートに画像を定着させる定着装置と、
制御部と、を備え、
前記定着装置は、
回転する無端状の第1ベルトと、
前記第1ベルトとの間でシートを挟持搬送するためのニップ部を形成し、回転する無端状の第2ベルトと、
前記第1ベルトを回転駆動する駆動部と、
前記第1ベルトの回転を検知する回転検知部と、
前記第1ベルトの内側に前記第1ベルトに対し非接触に、且つ、前記第1ベルトの回転方向に交差する前記第1ベルトの幅方向に沿って配置され、熱を放射することで前記第1ベルトを加熱するヒータと、
前記ヒータに電力を供給するための電源と、
前記第1ベルトの温度を検知する第1温度検知部であって、検知した温度が目標温度となるように前記制御部が前記ヒータへの電力供給を制御するための第1温度検知部と、
前記第1ベルトの温度を検知する第2温度検知部であって、検知した温度が閾値以上となった場合に前記ヒータへの電力供給を停止するための第2温度検知部と、を有し、
前記第2温度検知部により検知された温度が前記閾値未満であって、前記制御部が前記駆動部に前記第1ベルトを回転駆動させる指示を出しても前記回転検知部が前記第1ベルトの回転停止を検知した場合には、前記ヒータへの電力供給が停止される
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2温度検知部により検知された温度が前記閾値未満であって、前記制御部が前記駆動部に前記第1ベルトを回転駆動させる指示を出しても前記回転検知部が前記第1ベルトの回転停止を検知した場合に、前記定着装置の異常に関する情報を報知する報知部を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記幅方向に沿って配置され、前記第1ベルトを張架し、且つ、前記第1ベルトに従動して回転する張架ローラを更に備え、
前記回転検知部は、前記張架ローラの回転を検知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記閾値は第1閾値であり、
前記ヒータの温度を検知する第3温度検知部であって、検知した温度が第2閾値以上となった場合に前記ヒータへの電力供給を停止するための第3温度検知部を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記幅方向に沿って配置され、前記第1ベルトを張架する第1ローラ及び第2ローラと、
前記幅方向に沿って配置され、前記第2ベルトを張架する第3ローラ及び第4ローラと、を更に備え、
前記ニップ部は、前記第1ベルトのうちの前記第1ローラと前記第2ローラで張架された部分と、前記第2ベルトのうちの前記第3ローラと前記第4ローラで張架された部分とで形成されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ヒータは、前記第1ベルトの回転方向に関し、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に複数配置され、
複数の前記ヒータのうち、最も前記ニップ部の入口側に位置するヒータを第1ヒータ、最も前記ニップ部の出口側に位置するヒータを第2ヒータとした場合に、前記第1ベルトの回転方向に関して、前記第2ヒータの下流側から前記第1温度検知部と前記第2温度検知部のうちの上流側の温度検知部までの間に、前記第1ベルトの温度を検知するための温度検知部がないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ヒータは、前記第1ベルトの回転方向に関し、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に複数配置され、
複数の前記ヒータのうち、最も前記ニップ部の入口側に位置するヒータを第1ヒータ、最も前記ニップ部の出口側に位置するヒータを第2ヒータとした場合に、前記第1ベルトの回転方向に関して、前記第1温度検知部と前記第2温度検知部のうちの下流側の温度検知部から前記第1ヒータまでの間に、前記第1ベルトの温度を検知するための温度検知部がないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ヒータは、前記第1ベルトの回転方向に関し、前記第1ローラと前記第2ローラとの間に複数配置され、
複数の前記ヒータのうち、最も前記ニップ部の入口側に位置するヒータを第1ヒータ、最も前記ニップ部の出口側に位置するヒータを第2ヒータとし、前記第1ベルトの前記ニップ部の領域のうち前記第1ヒータの中心を通る垂線が交わる位置と前記第2温度検知部との前記第1ベルトの回転方向に関する距離をL[mm]、前記第1ベルトの回転速度をα[mm/sec]、前記目標温度をT1[℃]、前記閾値をT2[℃]、前記第1ベルトの表面の温度上昇率をβ[℃/sec]とした場合に、前記Lは、
L<α×(T2-T1)/β
を満たすことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1ベルトの内側に前記幅方向に沿って配置され、前記ヒータの輻射熱を反射して前記第1ベルトの前記ニップ部の領域に向けて照射する反射部材を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記電源と前記ヒータとの間に配置されて、前記制御部による制御に基づいて前記電源から前記ヒータに印加する電圧を調整する電圧調整部と、
前記電圧調整部を前記電源から前記ヒータに通電可能な通電状態と、前記電源と前記ヒータとの間を遮断する遮断状態とを切り替え可能な第1切替部及び第2切替部と、を有し、
前記第1切替部は、前記第2温度検知部により検知された温度が前記閾値未満であって、前記制御部が前記駆動部に前記第1ベルトを回転駆動させる指示を出しても前記回転検知部が前記第1ベルトの回転停止を検知した場合に、前記通電状態から前記遮断状態に切り替わり、
前記第2切替部は、前記第2温度検知部により検知された温度が前記閾値以上となった場合に、前記通電状態から前記遮断状態に切り替わる請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクにより形成された画像をシートに定着させる定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート及び画像を加熱して画像をシートに定着させる定着装置として、定着ローラの表面温度を検知する第1サーミスタと、定着ローラを加熱するヒータの温度を検知する第2サーミスタとを備えたものが従来から知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、第1サーミスタにより検知した温度に基づいて定着ローラの温度を目標温度に制御すると共に、第2サーミスタにより検知温度が閾値以上となった場合にヒータへの電力供給を停止する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-53310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一対のベルトによりシートを挟持搬送しつつ、このシートをヒータにより加熱する定着装置において、片側のベルトをハロゲンヒータなどの放射熱で非接触に加熱する構成がある。この構成において、制御部がベルトを回転駆動させる指示を出しているにも拘らずベルトが停止する異常が発生した場合、ベルトはヒータにより直接加熱されているため、ベルトのヒータにより加熱されている部分の温度が急激に上がってしまう。すると、ベルトが変形する虞がある。
【0005】
このため、ベルトが異常により停止した場合にはヒータへの電力供給を直ちに停止することが求められる。この場合、ヒータにより加熱されるベルトの領域の温度を検知する温度検知部を配置することが考えられる。しかしながら、この場合には温度検知部の数が増えてしまう。特に、ベルトを非接触に加熱するヒータを複数配置した場合、ヒータ毎に温度検知部を配置する必要があり、装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
本発明は、低コストで、ベルトが異常により停止した場合でもヒータへの電力供給を停止できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、インクを吐出してシートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部により画像が形成されたシートを加熱して、該シートに画像を定着させる定着装置と、制御部と、を備え、前記定着装置は、回転する無端状の第1ベルトと、前記第1ベルトとの間でシートを挟持搬送するためのニップ部を形成し、回転する無端状の第2ベルトと、前記第1ベルトを回転駆動する駆動部と、前記第1ベルトの回転を検知する回転検知部と、前記第1ベルトの内側に前記第1ベルトに対し非接触に、且つ、前記第1ベルトの回転方向に交差する前記第1ベルトの幅方向に沿って配置され、熱を放射することで前記第1ベルトを加熱するヒータと、前記ヒータに電力を供給するための電源と、前記第1ベルトの温度を検知する第1温度検知部であって、検知した温度が目標温度となるように前記制御部が前記ヒータへの電力供給を制御するための第1温度検知部と、前記第1ベルトの温度を検知する第2温度検知部であって、検知した温度が閾値以上となった場合に前記ヒータへの電力供給を停止するための第2温度検知部と、を有し、前記第2温度検知部により検知された温度が前記閾値未満であって、前記制御部が前記駆動部に前記第1ベルトを回転駆動させる指示を出しても前記回転検知部が前記第1ベルトの回転停止を検知した場合には、前記ヒータへの電力供給が停止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで、ベルトが異常により停止した場合でもヒータへの電力供給を停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の画像形成システムの概略構成断面図。
図2】実施形態に係る定着ベルトユニットの概略構成断面図。
図3】実施形態に係る上ベルトユニットのヒータ制御に関するブロック図。
図4】上ベルトのヒータにより加熱される領域の表面温度の推移を示すグラフ。
図5】実施形態に係る定着ベルトユニットにおいて、温度センサの配置を説明するための模式図。
図6】実施形態に係る上ベルトユニットの異常検知に関する制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成システムの概略構成について、図1を用いて説明する。
【0011】
[画像形成システム]
本実施形態の画像形成装置としての画像形成システム1は、インクを吐出してシートに画像を形成するインクジェット記録方式を用いており、反応液とインクとの2液を用いてシートにインク像を形成する、所謂枚葉式のインクジェット記録装置である。シートは、例えば普通紙や厚紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、封筒やインデックス紙等の特殊形状のシート、並びに布など、インクを受容可能な記録材であればよい。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の画像形成システム1は、給送モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000を備える。給送モジュール1000から供給されるシートSは、各モジュール内を搬送経路に沿って搬送される際に各種処理が行われ、最終的に積載モジュール7000に排出される。
【0013】
なお、給送モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000はそれぞれが別々の筐体を有し、それら筐体が連結されて画像形成システム1を構成してよい。あるいは、1つの筐体に給送モジュール1000、プリントモジュール2000、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000、積載モジュール7000が配置されていてもよい。
【0014】
給送モジュール1000は、シートSを収容する収納庫1500a、1500b、1500cを有し、収納庫1500a~1500cはシートSを収容するために装置正面側へ引き出し可能に設けられている。シートSは、各収納庫1500a~1500cにおいて分離ベルト及び搬送ローラにより1枚ずつ給送されて、プリントモジュール2000へ搬送される。なお、収納庫1500a~1500cは3つであることに限定されず、1つや2つあるいは4つ以上を有していてよい。
【0015】
画像形成部としてのプリントモジュール2000は、作像前レジ補正部(不図示)、プリントベルトユニット2010、記録部2020を有する。給送モジュール1000から搬送されたシートSは、作像前レジ補正部により傾きや位置が補正されてプリントベルトユニット2010へ搬送される。搬送経路に対し、記録部2020はプリントベルトユニット2010と対向する位置に配置されている。記録部2020は、搬送されるシートSに対して上方から記録ヘッドによりシートS上にインクを吐出することにより画像を形成するインクジェット記録部である。インクを吐出する記録ヘッドは、搬送方向に沿って複数並べられている。本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の4色に加えて、反応液に対応した計5つのライン型記録ヘッドを有する。シートSは、プリントベルトユニット2010により吸着搬送されることにより、記録ヘッドとのクリアランスが確保されている。
【0016】
なお、インクの色数及び記録ヘッドの数は、上記した5つに限定されない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、不図示のインクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。インクはインク全質量を基準として、「0.1質量%~20.0質量%」の樹脂成分と水及び水溶性有機溶剤、色材、ワックス、添加剤等を含有するものである。
【0017】
記録部2020により画像形成されたシートSは、プリントベルトユニット2010により搬送される際に、シートSの搬送方向において記録部2020の下流側に配置されたインラインスキャナ(不図示)によりシートSに形成された画像のズレや色濃度の検知が行われる。この画像のズレや色濃度に基づき、シートSに形成する画像や濃度等の補正が行われる。
【0018】
乾燥モジュール3000は、デカップリング部3200、乾燥ベルトユニット3300、温風吹付部3400を有する。乾燥モジュール3000は、後続の定着モジュール4000によるシートSへのインクの定着性を高めるために、シートSに塗布されたインク及び反応液の液体分を減少させる。画像形成されたシートSは、乾燥モジュール3000内に配置されたデカップリング部3200に搬送される。デカップリング部3200では、上方から吹き付けられる風の風圧によりシートSとベルトとの間に摩擦力を生じさせ、ベルトによりシートSを搬送させている。こうして、ベルト上に載置されたシートSを摩擦力により搬送させることで、シートSがプリントベルトユニット2010とデカップリング部3200に亘って搬送される際のシートSのズレを防ぐようにしている。デカップリング部3200から搬送されたシートSは、乾燥ベルトユニット3300にて吸着搬送されて、ベルト上方に配置された温風吹付部3400から熱風が吹き付けられることにより、シートSに塗布されたインク及び反応液を乾燥させる。
【0019】
こうして、乾燥モジュール3000によりシートSに塗布されたインク及び反応液が加熱され水分の蒸発が促進されることで、シートSにインクが飛び散って周囲に縁取りのような線ができる所謂コックリングが生じるのを抑制できる。なお、乾燥モジュール3000は加熱乾燥できる装置であればどのような装置を用いてもよいが、例えば温風乾燥機やヒータが好ましい。ヒータとしては、例えば電熱線、赤外線ヒータによる加熱が安全性やエネルギー効率の点から好ましい。
【0020】
定着モジュール4000は、定着装置としての定着ベルトユニット4100を有する。定着ベルトユニット4100は、乾燥モジュール3000から搬送されたシートSを、加熱した上ベルトユニットと下ベルトユニットの間を通過させることによりインクをシートSに定着させる。定着ベルトユニット4100については、詳細な説明を後述する。
【0021】
冷却モジュール5000は冷却部5001を複数有し、冷却部5001により定着モジュール4000から搬送された高温のシートSを冷却する。冷却部5001は、例えば外気をファンで冷却ボックス内に取り込んで冷却ボックス内の圧力を高め、冷却ボックスから圧力によりノズルを介して噴き出す風をシートSに当ててシートSを冷却する。冷却部5001は、シートSの搬送経路に対し両側に配置され、シートSの両面を冷却する。
【0022】
冷却モジュール5000には、搬送経路切換え部5002が設けられている。搬送経路切換え部5002は、反転モジュール6000にシートSを搬送する場合と、シートSの両面に画像形成する両面印刷のために両面搬送経路にシートSを搬送する場合とに応じて、シートSの搬送経路を切り換える。
【0023】
反転モジュール6000は、反転部6400を有する。反転部6400は搬送されるシートSの表裏を反転させて、積載モジュール7000に排出する際のシートSの表裏向きを変更する。積載モジュール7000は、トップトレイ7200と積載部7500を有し、反転モジュール6000から搬送されたシートSを積載する。
【0024】
両面印刷時、シートSは搬送経路切換え部5002により冷却モジュール5000の下方の搬送経路に搬送される。その後、シートSは定着モジュール4000、乾燥モジュール3000、プリントモジュール2000、給送モジュール1000の両面搬送経路を通って、プリントモジュール2000へ戻される。定着モジュール4000の両面搬送部には、シートSの表裏を反転させる反転部4200が設けられている。プリントモジュール2000へ戻されたシートSは、画像形成されていない他方の面にもインクにより画像が形成され、乾燥モジュール3000、定着モジュール4000、冷却モジュール5000、反転モジュール6000を経て積載モジュール7000に排出される。
【0025】
[定着ベルトユニット]
次に、本実施形態の定着ベルトユニット4100について、図2を用いて説明する。図2に示すように、定着装置としての定着ベルトユニット4100は、上ベルトユニット20と、下ベルトユニット30を備え、上ベルトユニット20の上ベルト21と下ベルトユニット30の下ベルト31とが圧接されることでニップ部Nが形成される。シートSは、ニップ部Nで挟持搬送され、その際に圧力及び熱が加えられることで、インクにより形成された画像がシートSに定着される。
【0026】
上ベルトユニット20は、第1ベルトとしての無端状の上ベルト21、上ベルト21を張架する複数の張架ローラ22、23、24、25、第1のヒータ110、第2のヒータ120、第3のヒータ130、反射部材(リフレクタ)としての第1反射板111、反射部材としての第2反射板121、反射部材としての第3反射板131、第1温度検知部としての温調用温度センサ310、第2温度検知部としての保護用温度センサ210、第3温度検知部としてのサーモスイッチ112、122、132、回転検知部としての回転検知センサ100などを有する。複数の張架ローラ22、23、24、25のうち少なくとも1つは、不図示のモータにより駆動され、無端状の上ベルト21を回転駆動する駆動ローラである。本実施形態では、張架ローラ22を駆動ローラとしている。
【0027】
また、複数の張架ローラ22、23、24、25のうち、第1ローラとしての張架ローラ24は、第2ローラとしての張架ローラ22の回転軸線方向に対して傾動することで、上ベルト21の幅方向の位置を制御するステアリングローラである。ここで、「幅方向」とは、上ベルト21の回転方向に交差する上ベルト21の幅方向(図2の表裏方向)であり、張架ローラ22の回転軸線方向と平行な方向である。
【0028】
下ベルトユニット30は、第2ベルトとしての無端状の下ベルト31、下ベルト31を張架する複数の張架ローラ32、33、34、35、ヒータ410、420、温度センサ510、520、610、サーモスイッチ511、521、回転検知センサ200などを有する。複数の張架ローラ32、33、34、35のうち少なくとも1つは、不図示のモータにより駆動され、無端状の下ベルト31を回転駆動する駆動ローラである。本実施形態では、張架ローラ32を駆動ローラとしている。
【0029】
また、複数の張架ローラ32、33、34、35のうち、第3ローラとしての張架ローラ34は、第4ローラとしての張架ローラ32の回転軸線方向に対して傾動することで、下ベルト31の幅方向の位置を制御するステアリングローラである。本実施形態では、上ベルト21のうちの張架ローラ24と張架ローラ22で張架された部分と、下ベルト31のうちの張架ローラ34と張架ローラ32で張架された部分とで、シートを挟持搬送するニップ部Nを形成している。
【0030】
上ベルトユニット20は、定着ベルトユニット4100に搬送されるシートに形成された画像面側に配置され、ニップ部Nを通過するシートの画像面を加熱する。下ベルトユニット30は、シートを画像面と反対側の面から加熱する。本実施形態では、上ベルトユニット20がニップ部Nに対して上側に、下ベルトユニット30がニップ部Nに対して下側にそれぞれ配置されている。
【0031】
本実施形態の場合、画像形成システム1は、インクジェット記録方式を用いており、上ベルト21と当接するシートの上面にインクが塗布されている。このため、インクを溶かすために上ベルト21側に第1、第2、第3のヒータ110、120、130が配置されている。即ち、本実施形態では、上ベルト21側にヒータが複数配置されている。また、インクが塗布されたシート自体を加熱するために、下ベルト31側にはヒータ410、420が配置されている。即ち、本実施形態では、下ベルト31側にもヒータが複数配置されている。上ベルト21と下ベルト31の両方でシートの搬送方向に関して長い距離でシートSをニップ(ロングニップ)し加熱することで、シートSに塗布されたインクがシートへ浸透し高い印刷品位を実現する。
【0032】
上ベルトユニット20が有する第1、第2、第3のヒータ110、120、130は、それぞれハロゲンヒータである。これらのハロゲンヒータは、上ベルト21の内側に上ベルト21に対し非接触に、且つ、上ベルト21の回転方向に交差する上ベルト21の幅方向に沿って配置され、熱を放射することで上ベルト21を加熱する。第1、第2、第3のヒータ110、120、130は、ベルトを直接加熱するため、熱応答性が良く、紙種切替時などに出力を切り替えることで待ち時間なく定着動作を続けることができる。
【0033】
第1、第2、第3反射板111、121、131は、それぞれ上ベルト21の内側に幅方向に沿って配置され、第1、第2、第3のヒータ110、120、130の輻射熱を反射して上ベルト21のニップ部Nの領域に向けて照射する。第1、第2、第3反射板111、121、131は、第1、第2、第3のヒータ110、120、130を挟んで、上ベルト21のニップ部N側と反対側に配置されている。また、第1、第2、第3反射板111、121、131は、第1、第2、第3反射板111、121、131の上ベルト21と対向する側以外の周囲及び第1、第2、第3反射板111、121、131の幅方向両端部を覆っており、第1、第2、第3反射板111、121、131の輻射熱が上ベルト21に向けて効率良く照射されるようになっている。
【0034】
第1温度検知部としての温調用温度センサ310は、上ベルト21の温度を検知し、検知した温度が目標温度となるように、後述する制御部としてのCPU1100(図3)が第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を制御するためのセンサである。即ち、第1、第2、第3のヒータ110、120、130の温度調整を行うためのセンサである。温調用温度センサ310は、第1、第2、第3のヒータ110、120、130より下流で、例えば90℃の温度になるように調整し高い印刷品位を実現する。この90℃の温度は、インクがシートに定着するための温度であり、インクの材料に応じて決められる温度であるためこの限りではない。
【0035】
第2温度検知部としての保護用温度センサ210は、上ベルト21の温度を検知し、検知した温度が閾値以上(第1閾値以上)となった場合に第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を停止するためのセンサである。保護用温度センサ210は、第1、第2、第3のヒータ110、120、130直下の上ベルト21の表面温度を直接検知可能な位置では無く、上ベルト21と下ベルト31のニップ部Nの出口近傍の上ベルト21の内側に配置する。この位置に保護用温度センサ210を配置可能な理由は、次述する回転検知センサ100を設ける事で上ベルト11が確実に駆動している事が検知可能だからである。したがって、上ベルト21が回転している際には、各ヒータ110、120、130により加熱した各ヒータ直下の上ベルト21の表面温度を間接的に検知することができ、これにより各ヒータの保護用のセンサとして機能することが可能である。
【0036】
本実施形態の場合、上ベルト21の温度を検知する温度センサは、温調用温度センサ310及び保護用温度センサ210のみである。ここで、複数のヒータである第1、第2、第3のヒータ110、120、130のうち、最もニップ部Nの入口側に位置するヒータ(第1ヒータ)は第1のヒータ110であり、最もニップ部Nの出口側に位置するヒータ(第2ヒータ)は第3のヒータ130である。
【0037】
この場合に、上ベルト21の回転方向に関して、第3のヒータ130の下流側から温調用温度センサ310と保護用温度センサ210のうちの上流側の温度センサ(温度検知部、本実施形態では、保護用温度センサ210)までの間に、上ベルト21の温度を検知するための温度センサがない。また、上ベルト21の回転方向に関して、温調用温度センサ310と保護用温度センサ210のうちの下流側の温度センサ(温度検知部、本実施形態では、温調用温度センサ310)から第1のヒータ110までの間に、上ベルト21の温度を検知するための温度センサがない。
【0038】
回転検知部としての回転検知センサ100は、上ベルト21の回転を検知するセンサである。本実施形態では、回転検知センサ100は、上ベルト21を張架し、且つ、上ベルト21に従動して回転する張架ローラ25の回転を検知することで、上ベルト21が回転しているかどうかを検知する。詳しくは後述するように、上ベルト21の回転が停止すると、回転検知センサ100が検知し、第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電源供給が遮断される。
【0039】
なお、回転検知センサ100が異常状態で、上ベルト21が回転していても、回転を検知できない場合、保護用温度センサ210で検知する温度は上昇する。そのような場合も、回転検知センサ100が異常である旨などのエラーを通知するようにしても良い。
【0040】
第3温度検知部としてのサーモスイッチ112、122、132は、それぞれ第1、第2、第3のヒータ110、120、130の温度を検知し、検知した温度が第2閾値以上となった場合に第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を停止するためのセンサである。本実施形態では、サーモスイッチ112、122、132は、第1、第2、第3反射板111、121、131の上部に配置されている。そして、第1、第2、第3のヒータ110、120、130の異常加熱を検知して各ヒータへの電源供給を遮断する。異常検知時の各ヒータの、遮断方法については後述する。
【0041】
下ベルトユニット30が有するヒータ410は、第3ローラとしての張架ローラ34の内側で幅方向に沿って配置され、張架ローラ34を介して下ベルト31を加熱する。また、ヒータ420は、張架ローラ33の内側で幅方向に沿って配置され、張架ローラ33を介して下ベルト31を加熱する。本実施形態では、ヒータ410、420をハロゲンヒータとしている。なお、下ベルトユニット30も上ベルトユニット20と同様にハロゲンヒータにより下ベルト31を直接加熱することも可能である。しかしながら、下ベルトユニット30は、シートSの画像面を加熱するわけではないため、上ベルトユニット20のような熱応答性は要求されない。したがって、本実施形態では、下ベルトユニット30の加熱源として、張架ローラ内に配置したハロゲンヒータを採用している。
【0042】
温度センサ510は、ヒータ410により加熱された張架ローラ34の表面温度を検知する。温度センサ520は、ヒータ420により加熱された張架ローラ33の表面温度を検知する。温度センサ510、520は、このように張架ローラ34、33の表面温度を検知し、所定の閾値(例えば150℃)以上の温度になるとヒータ410、420への電力供給を停止する保護用の温度センサである。この150℃の温度は、ベルトが変形しないために設定された温度であり、ベルトの材質に応じて決められる温度であるためこの限りではない。温度センサ610は、下ベルト31の温度を検知する。温度センサ610は、下ベルト31の温度調節を行う温調用のセンサであり、温度センサ610の検知温度に応じて、ヒータ410、420の制御を行うことでベルトの温度を調整する。なお、図示の例では、温度センサ610が下ベルト31の外側に配置されているが、内側に配置されていても良い。
【0043】
回転検知センサ200は、下ベルト31の回転を検知するセンサである。本実施形態では、回転検知センサ200は、下ベルト31を張架し、且つ、下ベルト31に従動して回転する張架ローラ35の回転を検知することで、下ベルト31が回転しているかどうかを検知する。上ベルトユニット20と同様に、下ベルト31の回転が停止すると、回転検知センサ200が検知し、ヒータ410、420への電源供給が遮断される。
【0044】
サーモスイッチ511、521は、それぞれヒータ410、420の温度を検知し、検知した温度が或る閾値以上となった場合にヒータ410、420への電力供給を停止するためのセンサである。本実施形態では、サーモスイッチ511、521は、張架ローラ34、33の外側に配置されている。そして、ヒータ410、420の異常加熱を検知して各ヒータへの電源供給を遮断する。
【0045】
[上ベルトユニットのヒータ制御構成]
次に、図3を用いて、上ベルトユニット20が有する第1、第2、第3のヒータ110、120、130の制御構成について説明する。図3は、本実施形態の上ベルトユニット20のハードブロック図である。上ベルトユニット20の制御構成は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)1100、Relay1200、電源1300、駆動部としてのモータ1400、電圧調整部としてのFET(Field Effect Transistor)114、124、134、第1、第2切替部としての異常温度検知HW(ハードウェア)211、212、第1、第2、第3のヒータ110、120、130、保護用温度センサ210、温調用温度センサ310、サーモスイッチ112、122、132、回転検知センサ100で構成される。
【0046】
CPU1100は、モータ1400の駆動を制御する。モータ1400は、上ベルト21を回転駆動するモータであり、本実施形態では、不図示の駆動伝達経路を介して駆動ローラである張架ローラ22を駆動する。モータ1400は、CPU1100の指示により駆動の開始及び停止を行う。
【0047】
CPU1100は、FET114、124、134を駆動することで第1、第2、第3のヒータ110、120、130へ供給する電力を制御する。電力は、電源1300から各ヒータ110、120、130に供給される。FET114、124、134は、電源1300と第1、第2、第3のヒータとの間に配置されて、CPU1100による制御に基づいて電源1300から各ヒータに印加する電圧を調整する。CPU1100は、温調用温度センサ310の温度情報をフィードバックすることで、第1、第2、第3のヒータ110、120、130へ供給する電力を調整する。
【0048】
異常温度検知HW211、212は、FET114、124、134を電源1300から各ヒータ110、120、130に通電可能な通電状態と、電源1300と各ヒータ110、120、130との間を遮断する遮断状態とを切り替え可能である。第2切替部としての異常温度検知HW211は、保護用温度センサ210により検知された温度が閾値以上となった場合に、通電状態から遮断状態に切り替わる。即ち、異常温度検知HW211は、保護用温度センサ210の温度が閾値以上であると検知された場合、FET114、124、134の駆動を停止する。
【0049】
第1切替部としての異常温度検知HW212は、保護用温度センサ210により検知された温度が閾値未満であって、CPU1100がモータ1400に上ベルト21を回転駆動させる指示を出しても回転検知センサ100が上ベルト21の回転停止を検知した場合に、通電状態から遮断状態に切り替わる。即ち、異常温度検知HW212は、回転検知センサ100で上ベルト21が停止している事を検知した場合、FET114、124、134の駆動を停止する。異常温度の閾値は、ベルトの材質に応じて変形を防ぐために設定される温度であり、本実施形態では150℃に設定されるがこの限りではない。
【0050】
第3温度検知部としてのサーモスイッチ112、122、132は、電源1300と第1、第2、第3のヒータ110、120、130との間に配置されて、検知した温度が第2閾値以上となった場合、即ち、各ヒータ110、120、130の異常加熱温度を検知すると、各ヒータ110、120、130への電源供給を遮断する。
【0051】
なお、CPU1100には、報知部としての操作部1500が接続されている。操作部1500は、画像形成システム1を操作するためにもので、例えば、情報の入力および表示が可能なタッチパネルを有する操作パネルである。操作部1500には、タッチパネルに加えてスタートボタンなどの物理ボタンが設けられていても良い。本実施形態では、操作部1500が有する表示部は、各種情報をユーザに報知する機能を有する。例えば、CPU1100は、後述するように、上ベルト21の回転エラーや上ベルト21の過昇温エラーなどの定着ベルトユニット4100の異常に関する情報を、操作部1500に表示する。なお、CPU1100は、画像形成システム1に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部端末に定着ベルトユニット4100の異常に関する情報を通知しても良い。この場合、CPU1100が報知部として機能する。
【0052】
[上ベルトのヒータ直下の温度推移]
次に、上ベルト21の第1、第2、第3のヒータ110、120、130直下の温度推移について、図4を用いて説明する。図4は、上ベルトユニット20において、第1、第2、第3のヒータ110、120、130を80%dutyで点灯させた時のヒータにより加熱される上ベルト21の領域の温度推移(即ち、ヒータ直下の温度推移)を示す。なお、第1、第2、第3のヒータ110、120、130は、それぞれ同じヒータなので、それぞれのヒータ直下の温度推移は同じである。
【0053】
図4に実線で示すように、各ヒータ110、120、130を点灯後、Δt1=3.6secで上ベルト21の温調温度T1=90℃に達し、その後、温調制御を行う事で温調温度T1=90℃を維持する。
【0054】
一方、温調制御が異常状態にある場合、図4に破線で示すように、温調温度T1からΔt2=2.4sec後に異常検知温度T2=150℃に達し、異常温度検知HW211により各ヒータ110、120、130を停止する。
【0055】
温調制御が異常状態かつ異常温度検知HW211が異常状態にある場合、異常検知温度T2からΔt3=0.5sec後に上ベルト21のベルト耐熱温度T3=162.5に対し、上ベルト21が破損する。なお、T1~T3はベルトの材質に応じて変わるため、上記で記載している温度の限りではない。
【0056】
[保護用温度センサの配置]
次に、上述の図4のヒータ直下の上ベルト21の温度推移を基に、各ヒータ110、120、130の温度が上昇してベルト変形を防止するための保護用温度センサ210の最適な実装配置を、図5を用いて説明する。図5は、上ベルトユニット20において、保護用温度センサ210の具体的な配置を示すために定着ベルトユニット4100の断面模式図である。
【0057】
以下、図5を用いて、保護用温度センサ210から各ヒータ110、120、130までの距離を具体的に説明する。まず、第1、第2、第3のヒータ110、120、130は、張架ローラ22、24の間に配置されている。これら複数のヒータ110、120、130のうち、最もニップ部Nの入口側に位置するヒータ(第1ヒータ)は第1のヒータ110である。また、最もニップ部Nの出口側に位置するヒータ(第2ヒータ)は第3のヒータ130である。
【0058】
本実施形態の場合、温調用温度センサ310及び保護用温度センサ210は、張架ローラ22、24の間で、且つ、ニップ部Nでシートが搬送される方向(即ち、上ベルト21の回転方向)に関して、各ヒータ110、120、130の下流側に配置されている。具体的には、ニップ部Nの出口近傍で、張架ローラ22の上流側において、上ベルト21の内周面に対向して配置されている。
【0059】
したがって、各ヒータ110、120、130のうち、保護用温度センサ210に最も近いヒータが第3のヒータ130であり、最も遠いヒータが第1のヒータ110である。ここで、上ベルト21のニップ部Nの領域のうち第3のヒータ110の中心を通る垂線M1が交わる位置と保護用温度センサ210との上ベルト21の回転方向に関する距離をL1[mm]とする。また、上ベルト21のニップ部Nの領域のうち第1のヒータ110の中心を通る垂線M2が交わる位置と保護用温度センサ210との上ベルト21の回転方向に関する距離をL2[mm]とする。L2は、特許請求の範囲に記載の「L」に対応する。
【0060】
本実施形態では、L1=600mm、L2=900mmとしている。また、上ベルト21の回転速度をα[mm/sec]とする。本実施形態では、α=690mm/secである。更に、第3のヒータ130で加熱された上ベルト21の表面を表面部A、第1のヒータ110で加熱された上ベルト21の表面を表面部Bとする。
【0061】
図4で説明したように、温調制御を90℃で制御しているとき、温調用温度センサ310が故障し、上ベルト21の表面温度が検知できない状況や、上ベルト11を駆動するモータ1400(図3)が故障し、上ベルト21が停止状態を維持していると、表面部A、Bの表面温度は、Δt2=2.4secで異常検知温度T2=150℃に到達する。このため、保護用温度センサ210から最も遠い第1のヒータ110直下の上ベルト21の表面部Bの温度を保護用温度センサ210により2.4sec以内に検知できるように距離L2を設定することが求められる。このため、距離L2は、以下のように示す事が可能である。
L2<α×Δt2 ・・・式(1)
【0062】
本実施形態では、上ベルト21の回転速度α=690mm/secであるため、第1のヒータ110から保護用温度センサ210までの距離L2=900mm(<690mm/sec×2.4sec=1656mm)としている。
【0063】
また、Δt2は、上ベルト21の表面温度上昇率から算出する事が可能である。ここで、目標温度(温調温度)をT1[℃]、閾値(異常検知温度)をT2[℃]、上ベルト21の表面の温度上昇率をβ[℃/sec]とする。温度上昇率βは、図4のグラフにおける傾きである。この場合に、Δt2[sec]は、以下のように示すことができる。
Δt2=(T2-T1)/β ・・・式(2)
【0064】
式(1)を式(2)に代入することで、距離L2は以下の式で示すことができる。
L2<α×(T2-T1)/β ・・・式(3)
【0065】
したがって、距離L2が式(3)を満たすことで、保護用温度センサ210から最も遠い第1のヒータ110により加熱された上ベルト21の表面部Aが異常検知温度T2に達する前に、この表面部Aを保護用温度センサ210により検知することが可能となり、保護用温度センサ210に基づく各ヒータ110、120、130の停止をより確実に行え、上ベルト21が破損することを抑制できる。
【0066】
なお、式(2)におけるベルト表面の温度上昇率は、上ベルト21の材質や温調温度に応じて異なる。
【0067】
[上ベルトユニットの異常検知に関する制御]
次に、上ベルトユニット20の異常検知に関する制御について、図3を参照しつつ図6を用いて説明する。図6は、CPU1100で制御される本実施形態の上ベルトユニット20における異常時検知のフローチャートを示している。図6において、S101からS106は、初期設定時の処理を示す。また、S107からS109は、エラー検知処理を示し、S110、S111ではエラー検知後の処理を示す。
【0068】
[初期設定時の処理について]
上ベルトユニット20において、定着制御が開始されるとS101へ移行する。S101では、CPU1100が上ベルト21を回転駆動させる指示を出して上ベルト21の駆動を開始し、S102へ移行する。S102では、CPU1100が回転検知センサ100により上ベルト21が駆動しているかを判断する。上ベルト21が駆動と判断した場合(S102のN)、S103へ移行し、上ベルト11が停止していると判断した場合(S102のY)、S109へ移行する。
【0069】
S103では、CPU1100が上ベルト21の表面温度の目標温度を90℃に設定し、S104へ移行する。S104では、上ベルト21の表面温度が目標温度に到達するように、CPU1100がFET114、124、134を駆動することで第1、第2、第3のヒータ110、120、130へ供給する電力を制御し、S105へ移行する。
【0070】
S105では、CPU1100が温調用温度センサ310を200msec毎にモニタし、上ベルト21の表面温度をCPU1100内部のメモリ(不図示)に格納し、S106へ移行する。S106では、CPU1100が温調用温度センサ310により上ベルト21の表面温度を検知し、90℃に達したかを判断する。90℃以上と判断した場合(S106のY)、S107へ移行し、90℃以下の場合(S106のN)、S102へ移行しその後の処理を継続する。S102まで戻るのは、上ベルト21の回転検知を常時行うためである。
【0071】
[エラー検知処理について]
S107以降では、上ベルト11の表面温度が過昇温異常状態であるか否かを検知する。ここで、S107では、S102において上ベルト21が回転していると判断されているが、例えば、ソフトウェアが暴走していたり、温調用温度センサ310が故障している場合には、各ヒータ110、120、130の加熱により上ベルト21が過昇温となっている可能性がある。このため、本実施形態では、保護用温度センサ210により上ベルト21の過昇温状態を検知し、上ベルト21が破損することを抑制している。
【0072】
S107では、CPU110が保護用温度センサ210で検知する上ベルト21の表面温度が150℃以上(閾値以上)であるかを判断する。S107において150℃以上と判断した場合(S107のY)、S108へ移行し、150℃未満(閾値未満)の場合(S107のN)、再びS102へ移行し、その後の処理を継続する。
【0073】
S108では、上ベルト21の表面が過昇温異常状態であるため、CPU1100は、過昇温エラーと認識し、S110へ移行する。一方、上述のように、S102において、CPU110がモータ1400に上ベルト21を回転駆動させる指示を出しても回転検知センサ100が上ベルト21の回転停止を検知した場合(S102のN)、S109に移行するが、S109では、CPU1100がベルト回転検知エラーと認識し、S110へ移行する。
【0074】
[エラー検知後の処理について]
S110では、CPU1100は、第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を強制的に停止するため、FET114、124、134を停止する信号を出力し、S111へ移行する。即ち、S107及びS108において、保護用温度センサ210が閾値以上の温度を検知した場合、上ベルト21が過昇温状態であるとして、CPU1100が第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を停止する。また、S102及びS109において、回転検知センサ100が上ベルト21の回転が停止していることを検知した場合、モータ1400などの不具合により上ベルト21が回転していない状態であると判断する。上ベルト21が回転していない状態で各ヒータ110、120、130が点灯していると、ヒータ直下の上ベルト21の表面が過昇温状態となる。このため、この場合にも、CPU1100が第1、第2、第3のヒータ110、120、130への電力供給を停止する。S111では、上ベルト11が駆動しないように強制的に停止信号を出力する。
【0075】
また、CPU1100は、S110で各ヒータ110、120、130を停止する際に、上ベルト21の回転エラーや上ベルト21の過昇温エラーなどの定着ベルトユニット4100の異常に関する情報を、操作部1500に表示するようにしても良い。即ち、CPU1100は、保護用温度センサ210により検知された温度が閾値未満であって、モータ1400に上ベルト21を回転駆動させる指示を出しても回転検知センサ100が上ベルト21の回転停止を検知した場合に、ベルト回転エラーなどの定着ベルトユニット4100の異常に関する情報を、操作部1500に表示部に表示(即ち、報知)するようにしても良い。同様に、保護用温度センサ210が閾値以上の温度を検知した場合にも、ベルト過昇温エラーなどの定着ベルトユニット4100の異常に関する情報を、操作部1500に表示部に表示(即ち、報知)するようにしても良い。
【0076】
なお、図6のフローチャートで説明した上ベルト21の表面温度の目標温度や、温調用温度センサ310で上ベルト21の表面温度を検出するタイミング、保護用温度センサ210で検出する上ベルト21の表面温度の閾値は、上ベルト21の材質や温調温度に応じて表面温度上昇率が変動するため、上記記載の限りでは無い。
【0077】
このような本実施形態の場合、低コストで、上ベルト21が異常により停止した場合でも各ヒータ110、120、130への電力供給を停止できる。即ち、以上のように複数のヒータ110、120、130で構成される定着ベルトユニット4100において、回転検知センサ100で上ベルト21が回転している事を検知し、上ベルト21が回転していない場合には各ヒータ110、120、130を停止するようにしている。
【0078】
これにより、各ヒータ110、120、130直下に各ヒータに対応する保護用温度センサを複数個配置しなくても、上ベルト21の保護用温度センサ210を1つ配置するだけで、上ベルト21の破損を抑制できる。本実施形態では、このように保護用温度センサの数を減らすことができるため、装置の低コスト化を図れる。
【0079】
また、本実施形態では、保護用温度センサ210をニップ部Nにおける下流側に配置し、且つ、保護用温度センサ210から最も離れた第1のヒータ110からの距離L2を、上ベルト21が過昇温となる前に上ベルト21の温度を検知できる距離に設定している。このため、上ベルト21の回転には異常がないが、ソフトウェア暴走や温調用温度センサ310の故障などの理由により各ヒータ110、120、130が適切に制御されていない場合でも、保護用温度センサ210により上ベルト21が過昇温となる前に各ヒータを停止することが可能である。このため、各ヒータ110、120、130直下に各ヒータに対応する保護用温度センサを複数個配置しなくても、上ベルト21の破損を抑制できる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・画像形成システム(画像形成装置)
21・・・上ベルト(第1ベルト)
22・・・張架ローラ(第2ローラ)
24・・・張架ローラ(第1ローラ)
31・・・下ベルト(第2ベルト)
32・・・張架ローラ(第4ローラ)
34・・・張架ローラ(第3ローラ)
100・・・回転検知センサ(回転検知部)
110・・・第1のヒータ
111・・・第1反射板(反射部材)
112、122、132・・・サーモスイッチ(第3温度検知部)
114、124、134・・・FET(電圧調整部)
120・・・第2のヒータ
121・・・第2の反射板(反射部材)
130・・・第3のヒータ
131・・・第3の反射板(反射部材)
210・・・保護用温度センサ(第2温度検知部)
211・・・異常温度検知HW(第2切替部)
212・・・異常温度検知HW(第1切替部)
310・・・温調用温度センサ(第1温度検知部)
1100・・・CPU(制御部)
1300・・・電源
1400・・・モータ(駆動部)
1500・・・操作部(報知部)
2000・・・プリントモジュール(画像形成部)
4100・・・定着ベルトユニット(定着装置)
N・・・ニップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6