(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166733
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】データ分配装置
(51)【国際特許分類】
G06F 13/14 20060101AFI20241122BHJP
G06F 13/10 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G06F13/14 310F
G06F13/10 330A
G06F13/10 330C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083040
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健正
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信行
(72)【発明者】
【氏名】菅島 健司
(57)【要約】
【課題】既存ソフトウェアの処理速度が低下したり、既存ソフトウェアの変更に起因した不具合が発生したりする事態の発生を抑制する。
【解決手段】データ分配装置1はデータ記憶部12と分配先決定部26とデータ分配部27を備える。分配先決定部26およびデータ分配部27は複数の論理回路を含むデジタル回路である。データ記憶部12は、出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せと分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定する分配先設定テーブル25を記憶する。分配先決定部26は、取得データに付加されている出力元ハードウェアIDおよびデータIDの組合せと分配先設定テーブル25とに基づいて分配先を決定する。データ分配部27は、決定した分配先へ取得データを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得したデータである取得データの出力元となるハードウェアを示す出力元ハードウェア識別情報と、前記取得データの種別を示すデータ識別情報との組合せである識別情報組合せと、前記取得データの分配先となるハードウェアを示す分配先ハードウェア識別情報との対応関係を設定する分配先設定テーブル(25)を記憶するように構成されたデータ記憶部(12)と、
前記取得データに付加されている前記出力元ハードウェア識別情報および前記データ識別情報の前記組合せと、前記分配先設定テーブルとに基づいて、前記取得データの前記分配先を決定するように構成された分配先決定部(26)と、
前記分配先決定部で決定した前記分配先に対応するハードウェアである分配先ハードウェアへ前記取得データを出力するように構成されたデータ分配部(27)とを備え、
前記分配先決定部および前記データ分配部は、複数の論理回路を含むデジタル回路であるデータ分配装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先設定テーブルは、更に、複数の前記識別情報組合せと、前記分配先ハードウェア識別情報との対応関係を設定し、
前記分配先決定部は、取得した複数の前記取得データに対応する複数の前記識別情報組合せと、前記分配先設定テーブルとに基づいて、複数の前記取得データの前記分配先を決定するように構成されるデータ分配装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、前記分配先ハードウェアへ前記取得データを出力する出力経路に流れるデータ量を計測し、前記データ量が多いことを示す予め設定されたデータ圧縮条件が成立した場合には、前記取得データを圧縮して前記分配先ハードウェアへ出力するように構成されるデータ分配装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、複数の前記分配先ハードウェアへ前記取得データを出力する場合には、前記取得データを前記分配先の数だけ複製するように構成されるデータ分配装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、1つの前記分配先ハードウェアへ複数の前記取得データを出力する場合には、複数の前記取得データを1つにまとめて出力するように構成されるデータ分配装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先設定テーブルは、更に、複数の前記識別情報組合せのそれぞれについて優先度を設定し、
前記データ分配部は、複数の前記取得データを出力する場合には、前記優先度が高い順に前記取得データを出力するように構成されるデータ分配装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先ハードウェアへ出力される前記取得データにはタイムスタンプが付加されるデータ分配装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のデータ分配装置であって、
前記データ記憶部に記憶される前記分配先設定テーブルは、当該データ分配装置へ電源が投入された後に更新されるデータ分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データを分配するデータ分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転送された画像データを複数の出力部に分配する際に、プリント速度が速い出力部の優先度を高くして画像データを分配するように構成されたデータ分配装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象装置に既に実装されているソフトウェア(以下、既存ソフトウェア)に、新しいソフトウェアを対象装置に実装する際に活用したいデータを取得するデータ取得機能が搭載されていない場合には、既存ソフトウェアに上記のデータ取得機能を追加する必要がある。
【0005】
発明者の詳細な検討の結果、既存ソフトウェアに上記のデータ取得機能を追加すると、既存ソフトウェアの処理速度が低下したり、既存ソフトウェアの変更に起因した不具合が発生したりするという課題が見出された。
【0006】
本開示は、既存ソフトウェアの処理速度が低下したり、既存ソフトウェアの変更に起因した不具合が発生したりする事態の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、データ記憶部(12)と、分配先決定部(26)と、データ分配部(27)とを備え、分配先決定部およびデータ分配部は、複数の論理回路を含むデジタル回路であるデータ分配装置(1)である。
【0008】
データ記憶部は、分配先設定テーブル(25)を記憶するように構成される。分配先設定テーブルは、出力元ハードウェア識別情報とデータ識別情報との組合せである識別情報組合せと、分配先ハードウェア識別情報との対応関係を設定する。出力元ハードウェア識別情報は、取得したデータである取得データの出力元となるハードウェアを示す。データ識別情報は、取得データの種別を示す。分配先ハードウェア識別情報は、取得データの分配先となるハードウェアを示す。
【0009】
分配先決定部は、取得データに付加されている出力元ハードウェア識別情報およびデータ識別情報の組合せと、分配先設定テーブルとに基づいて、取得データの分配先を決定するように構成される。
【0010】
データ分配部は、分配先決定部で決定した分配先に対応するハードウェアである分配先ハードウェアへ取得データを出力するように構成される。
このように構成された本開示のデータ分配装置は、複数の論理回路を含むデジタル回路である分配先決定部およびデータ分配部を用いることにより、ソフトウェアを用いることなくデータを分配することができる。このため、本開示のデータ分配装置は、新しいソフトウェアを実装する際に活用したいデータを取得するデータ取得機能を分配先決定部およびデータ分配部に搭載することにより、既存ソフトウェアの処理速度が低下したり、既存ソフトウェアの変更に起因した不具合が発生したりするという事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】データ分配装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】データ分配装置の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】分配回路が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
図1に示すように、本実施形態のデータ分配装置1は、制御部11と、データ記憶部12と、通信部13と、分配回路14とを備える。
【0013】
制御部11は、CPU21、ROM22およびRAM23等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM22が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU21が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部11を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0014】
ROM22は、記憶内容を書き換え可能な不揮発性メモリであり、後述するデータ分配プログラム24を記憶する。データ分配プログラム24は、データ分配装置1に予めインストールされていてもよいし、記録媒体またはネットワークを介してインストールされるようにしてもよい。データ分配プログラム24は、他の機能を実現する他プログラムとは独立して管理することができる記憶領域に格納される。これにより、データ分配プログラム24の更新がある場合であっても他プログラムに影響を与えることはない。
【0015】
データ記憶部12は、各種データを記憶するための記憶装置であり、後述する分配先設定テーブル25を記憶する。
通信部13は、バス15に接続された装置との間で、予め設定された通信プロトコル(例えば、CAN通信プロトコル)に従ってデータの送受信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。CANは登録商標である。
【0016】
バス15には、例えば第1ハードウェア101、第2ハードウェア102および第3ハードウェア103が接続される。さらにバス15には、例えばSDRAM111、フラッシュメモリ112および通信装置113が接続される。SDRAMは、Synchronous Dynamic Random Access Memoryの略である。通信装置113は、例えばイーサネットを介してデータ通信を行う装置である。イーサネットは登録商標である。
【0017】
分配回路14は、多数の論理回路を含むデジタル回路であり、分配先決定部26とデータ分配部27とを備える。
図2に示すように、第1ハードウェア101、第2ハードウェア102および第3ハードウェア103はそれぞれ、互いに異なる所定の処理を実行し、第1データフレームDF1、第2データフレームDF2および第3データフレームDF3を出力するように構成される。
【0018】
第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3はそれぞれ、第1,2,3ハードウェア101,102,103が生成したデータに、出力元ハードウェア識別情報(以下、出力元ハードウェアID)およびデータ識別情報(以下、データID)が付加されて形成される。出力元ハードウェアIDは、データフレームの出力元のハードウェアを示す識別情報である。データIDは、生成したデータのデータ種別を示す識別情報である。
【0019】
第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3は、ハードウェアIDフィールドF1と、データIDフィールドF2と、データフィールドF3とを備える。
ハードウェアIDフィールドF1は、出力元ハードウェアIDを格納する。データIDフィールドF2は、データIDを格納する。
【0020】
第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3のデータフィールドF3はそれぞれ、第1,2,3ハードウェア101,102,103が生成したデータを格納する。
データ分配プログラム24は、分配先設定テーブル25を格納する。データ分配プログラム24は、データ分配装置1へ電源が投入されて制御部11が起動した後にCPU21により実行される。CPU21は、データ分配プログラム24を実行することにより、データ分配プログラム24に格納されている分配先設定テーブル25をデータ記憶部12に記憶させる。
【0021】
分配先設定テーブル25は、少なくとも1つの出力元ハードウェアIDおよび少なくとも1つのデータIDと少なくとも1つの分配先ハードウェア識別情報(以下、分配先ハードウェアID)との対応関係を設定した情報を含む。
【0022】
具体的には、分配先設定テーブル25は、1つの出力元ハードウェアIDおよび1つのデータIDと1つの分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定した情報を含む。
分配先設定テーブル25は、複数の出力元ハードウェアIDおよび複数のデータIDと1つの分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定した情報を含む。
【0023】
分配先設定テーブル25は、1つの出力元ハードウェアIDおよび1つのデータIDと複数の分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定した情報を含む。
分配先設定テーブル25は、複数の出力元ハードウェアIDおよび複数のデータIDと複数の分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定した情報を含む。
【0024】
次に、分配先設定テーブル25の具体例を説明する。
まず、出力元ハードウェアIDをOUT_HWIDと表記し、データIDをDataIDと表記し、出力元ハードウェアIDとデータIDとの組合せ(以下、ID組合せ)を(OUT_HWID,DataID)と表記する。
【0025】
また、分配先ハードウェアIDをDIS_HWIDと表記し、出力元ハードウェアIDおよびデータIDと分配先ハードウェアIDとの対応関係を(OUT_HWID,DataID)→DIS_HWIDと表記する。
【0026】
例えば、第1ハードウェア101の出力元ハードウェアIDは「1」、第2ハードウェア102の出力元ハードウェアIDは「2」、第3ハードウェア103の出力元ハードウェアIDは「3」であるとする。
【0027】
また、第1ハードウェア101が出力するデータのデータIDは、「1」,「2」の何れかであるとする。
第2ハードウェア102が出力するデータのデータIDは、「1」,「2」,「3」の何れかであるとする。
【0028】
第3ハードウェア103が出力するデータのデータIDは、「1」,「2」,「3」,「4」の何れかであるとする。
また、SDRAM111の分配先ハードウェアIDは「1」、フラッシュメモリ112の分配先ハードウェアIDは「2」、通信装置113の分配先ハードウェアIDは「3」であるとする。
【0029】
この場合には、第1データフレームDF1における出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せは、(1,1)、(1,2)である。
第2データフレームDF2における出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せは、(2,1)、(2,2)、(2,3)である。
【0030】
第3データフレームDF3における出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せは、(3,1)、(3,2)、(3,3)、(3,4)である。
そして、1つの出力元ハードウェアIDおよび1つのデータIDと1つの分配先ハードウェアIDとの対応関係の例として、「(1,1)→1」が挙げられる。「(1,1)→1」は、出力元ハードウェアIDが1でありデータIDが1であるデータは、SDRAM111へ出力されることを示す。
【0031】
複数の出力元ハードウェアIDおよび複数のデータIDと1つの分配先ハードウェアIDとの対応関係の例として、「(1,1)+(2,2)→3」が挙げられる。「(1,1)+(2,2)→3」は、出力元ハードウェアIDが1でありデータIDが1であるデータと、出力元ハードウェアIDが2でありデータIDが2であるデータとの組合せは、通信装置113へ出力されることを示す。
【0032】
1つの出力元ハードウェアIDおよび1つのデータIDと複数の分配先ハードウェアIDとの対応関係の例として、「(2,2)→2,3」が挙げられる。「(2,2)→2,3」は、出力元ハードウェアIDが2でありデータIDが2であるデータは、フラッシュメモリ112および通信装置113へ出力されることを示す。
【0033】
複数の出力元ハードウェアIDおよび複数のデータIDと複数の分配先ハードウェアIDとの対応関係の例として、「(2,1)+(3,4)→1,2」が挙げられる。「(2,1)+(3,4)→1,2」は、出力元ハードウェアIDが2でありデータIDが1であるデータと、出力元ハードウェアIDが3でありデータIDが4であるデータとの組合せは、SDRAM111およびフラッシュメモリ112へ出力されることを示す。
【0034】
また分配先設定テーブル25では、1つの出力元ハードウェアIDと1つのデータIDとのID組合せ毎に、データ出力の優先度が設定されている。すなわち、例えば、出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せの全て(すなわち、例えば、上記の(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、(3,3)、(3,4))について優先度が設定されている。
【0035】
分配先決定部26は、第1,2,3ハードウェア101,102,103から入力された第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3の出力元ハードウェアIDおよびデータIDと分配先設定テーブル25とに基づいて、第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3の分配先を決定する。
【0036】
データ分配部27は、第1,2,3ハードウェア101,102,103から入力された第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3を、分配先決定部26で決定した分配先へ出力する。
【0037】
次に、分配回路14が実行する処理の手順を説明する。
図3に示すように、分配回路14は、S10にて、第1,2,3ハードウェア101,102,103から新たにデータフレームを取得したか否かを判断する。ここで、新たにデータフレームを取得していない場合には、分配回路14は、処理を一旦終了する。一方、新たにデータフレームを取得した場合には、分配回路14は、S20にて、新たに取得したデータフレームが複数であるか否かを判断する。
【0038】
ここで、新たに取得したデータフレームが1つである場合には、分配回路14は、S30にて、取得した1つのデータフレームの出力元ハードウェアIDおよびデータIDを照会し、S60に移行する。具体的には、分配回路14は、取得した1つのデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが分配先設定テーブル25に含まれているか否かを判断する。そして、出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが分配先設定テーブル25に含まれている場合には、分配回路14は、対応する分配先ハードウェアIDを分配先設定テーブル25から抽出することにより、取得した1つのデータフレームの分配先を決定する。
【0039】
一方、新たに取得したデータフレームが複数である場合には、分配回路14は、S40にて、新たに取得した複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せを作成する。複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せとして、例えば、上記の「(2,1)+(3,4)」が挙げられる。
【0040】
次に分配回路14は、S50にて、複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せを照会し、S60に移行する。具体的には、分配回路14は、取得した複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが分配先設定テーブル25に含まれているか否かを判断する。そして、出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが分配先設定テーブル25に含まれている場合には、分配回路14は、対応する分配先ハードウェアIDを分配先設定テーブル25から抽出することにより、取得した複数のデータフレームの分配先を決定する。例えば、取得した複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが上記の「(2,1)+(3,4)」であり、分配先設定テーブル25に上記の「(2,1)+(3,4)→1,2」が含まれている場合には、分配先ハードウェアIDとして「1,2」が抽出される。これにより、取得した複数のデータフレームの分配先は、SDRAM111およびフラッシュメモリ112に決定される。
【0041】
S60に移行すると、分配回路14は、S30またはS50での照会結果に基づいて、1または複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せが分配先設定テーブル25に含まれている出力元ハードウェアIDとデータIDとのID組合せと合致しているか否かを判断する。ここで、合致している場合には、分配回路14は、S80に移行する。一方、合致していない場合には、分配回路14は、S70にて、新たに取得したデータフレームを破棄し、処理を一旦終了する。
【0042】
S80に移行すると、分配回路14は、新たに取得したデータフレームに、現時点の日時を示すタイムスタンプを付加する。そして分配回路14は、S90にて、後述する分配処理を実行し、処理を一旦終了する。
【0043】
なお、分配回路14は、分配回路14の動作中において、S10~S90の処理を繰り返し実行する。
次に、S90で実行される分配処理の手順を説明する。
【0044】
分配処理が実行されると、分配回路14は、
図4に示すように、S210にて、分配先設定テーブル25に基づいて、S10で新たに取得した複数のデータフレームにおいて上記の優先度が相違しているか否かを判断する。なお、分配回路14は、S10で新たに取得したデータフレームが1つである場合には、優先度が相違していないと判断する。
【0045】
ここで、優先度が相違している場合には、分配回路14は、S220にて、S10で取得した複数のデータフレームのそれぞれを、優先度が高い順に、S50で決定した分配先へ出力し、分配処理を終了する。
【0046】
一方、優先度が相違していない場合には、分配回路14は、S230にて、S30またはS50で決定した分配先が複数であるか否かを判断する。
ここで、分配先が1つである場合には、分配回路14は、S250に移行する。一方、分配先が複数である場合には、分配回路14は、S240にて、S10で新たに取得した1または複数のデータフレームを、S30またはS50で決定した分配先の数だけ複製し、S250に移行する。
【0047】
S250に移行すると、分配回路14は、1つの分配先に対して複数のデータを出力するか否かを判断する。ここで、1つの分配先に対して1つのデータを出力する場合には、分配回路14は、S270に移行する。
【0048】
一方、1つの分配先に対して複数のデータを出力する場合には、分配回路14は、S260にて、データをパックし、S270に移行する。
具体的には、分配回路14は、S240の処理を実行していない場合には、S10で新たに取得した複数のデータフレームの出力元ハードウェアID、データIDおよびデータを格納する1つのデータフレームを生成する。すなわち、分配回路14は、取得した複数のデータフレームの出力元ハードウェアIDを、新たに生成するデータフレームのハードウェアIDフィールドF1に格納する。また分配回路14は、取得した複数のデータフレームのデータIDを、新たに生成するデータフレームのデータIDフィールドF2に格納する。また分配回路14は、取得した複数のデータフレームのデータを、新たに生成するデータフレームのデータフィールドF3に格納する。
【0049】
また分配回路14は、S240の処理を実行した場合には、分配先の数だけ複製されたデータフレームを用いて、分配先毎に、複数のデータフレームの出力元ハードウェアID、データIDおよびデータを格納する1つのデータフレームを生成する。
【0050】
S270に移行すると、分配回路14は、バス15に流れているデータ量が多いか否かを判断する。具体的には、分配回路14は、バス15上において単位時間当たりに流れているデータ量を計測し、計測したデータ量が予め設定された圧縮判定値以上である場合に、バス15に流れているデータが多いと判断する。
【0051】
ここで、バス15に流れているデータ量が多くない場合には、分配回路14は、S290に移行する。一方、バス15に流れているデータ量が多い場合には、分配回路14は、S280にて、分配先に出力するデータフレームを圧縮し、S290に移行する。
【0052】
S290に移行すると、分配回路14は、S10で新たに取得した1または複数のデータフレーム、または、S230~S280の処理によって生成された1または複数のデータフレームを、S30またはS50で決定した分配先へ出力し、分配処理を終了する。但し、分配先へ出力されるデータフレームには、S80の処理によりタイムスタンプが付加されている。
【0053】
このように構成されたデータ分配装置1は、データ記憶部12と、分配先決定部26と、データ分配部27とを備える。そして、分配先決定部26およびデータ分配部27は、複数の論理回路を含むデジタル回路である。
【0054】
データ記憶部12は、分配先設定テーブル25を記憶するように構成される。分配先設定テーブル25は、出力元ハードウェアIDとデータIDとの組合せであるID組合せと、分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定する。出力元ハードウェアIDは、取得したデータ(以下、取得データ)の出力元となるハードウェアを示す。データIDは、取得データの種別を示す。分配先ハードウェアIDは、取得データの分配先となるハードウェアを示す。
【0055】
分配先決定部26は、取得データに付加されている出力元ハードウェアIDおよびデータIDの組合せと、分配先設定テーブル25とに基づいて、取得データの分配先を決定するように構成される。
【0056】
データ分配部27は、分配先決定部26で決定した分配先に対応するハードウェア(以下、分配先ハードウェア)へ取得データを出力するように構成される。
このようなデータ分配装置1は、複数の論理回路を含むデジタル回路である分配先決定部26およびデータ分配部27を用いることにより、ソフトウェアを用いることなくデータを分配することができる。このため、データ分配装置1は、新しいソフトウェアを実装する際に活用したいデータを取得するデータ取得機能を分配先決定部26およびデータ分配部27に搭載することにより、既存ソフトウェアの処理速度が低下したり、既存ソフトウェアの変更に起因した不具合が発生したりするという事態の発生を抑制することができる。
【0057】
また分配先設定テーブル25は、更に、複数のID組合せと、分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定する。そして分配先決定部26は、取得した複数の取得データに対応する複数のID組合せと、分配先設定テーブル25とに基づいて、複数の取得データの分配先を決定するように構成される。これにより、データ分配装置1は、分配先設定テーブル25を用いることにより、複数の取得データを同時に分配するときの分配先を簡便に決定することができる。
【0058】
またデータ分配部27は、分配先ハードウェアへ取得データを出力するバス15に流れるデータ量を計測し、データ量が多いことを示す予め設定されたデータ圧縮条件が成立した場合には、取得データを圧縮して分配先ハードウェアへ出力するように構成される。本実施形態のデータ圧縮条件は、計測したデータ量が予め設定された圧縮判定値以上であることである。これにより、データ分配装置1は、バス15に流れるデータ量が多いことに起因して取得データを出力することができなくなる事態の発生を抑制することができる。
【0059】
またデータ分配部27は、複数の分配先ハードウェアへ取得データを出力する場合には、取得データを分配先の数だけ複製するように構成される。これにより、データ分配装置1は、複製した取得データのそれぞれに対して必要な情報を付加して、複数の分配先ハードウェアへ分配するためのデータを生成することができる。
【0060】
またデータ分配部27は、1つの分配先ハードウェアへ複数の取得データを出力する場合には、複数の取得データを1つにまとめて出力するように構成される。これにより、データ分配装置1は、複数の取得データを出力する出力処理を実行する場合に、取得データの数に応じた複数の出力処理を実行する必要がなく、出力処理を1回にすることができるため、出力処理を実行するための処理負荷を低減することができる。
【0061】
また分配先設定テーブル25は、更に、複数のID組合せのそれぞれについて優先度を設定する。そしてデータ分配部27は、複数の取得データを出力する場合には、優先度が高い順に取得データを出力するように構成される。これにより、データ分配装置1は、取得データのID組合せに応じて出力順を設定することができる。
【0062】
また、分配先ハードウェアへ出力される取得データにはタイムスタンプが付加される。これにより、データ分配装置1は、取得データを分配する時刻を示す情報を分配先ハードウェアへ提供することができる。
【0063】
また、データ記憶部12に記憶される分配先設定テーブル25は、当該データ分配装置1へ電源が投入された後に更新される。これにより、データ分配装置1は、必要に応じて分配先設定テーブル25の内容を変更することができる。
【0064】
以上説明した実施形態において、第1,2,3データフレームDF1,DF2,DF3は取得データに相当し、ID組合せは識別情報組合せに相当し、バス15は出力経路に相当する。
【0065】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
上記実施形態では、出力元ハードウェアとして第1,2,3ハードウェア101,102,103がデータ分配装置1に接続されている形態を示したが、出力元ハードウェアの数は1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0066】
[変形例2]
上記実施形態では、分配先ハードウェアとしてSDRAM111、フラッシュメモリ112および通信装置113がデータ分配装置1に接続されている形態を示したが、分配先ハードウェアの数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0067】
[変形例3]
上記実施形態では、ID組合せ毎にデータ出力の優先度が設定される形態を示したが、分配先ハードウェア毎(すなわち、例えば本実施形態のSDRAM111、フラッシュメモリ112および通信装置113)に優先度を設定するようにしてもよい。
【0068】
[変形例4]
上記実施形態では、複数のID組合せと分配先ハードウェアIDとの対応関係を設定する形態を示したが、複数のID組合せを単一のIDに変換するようにしてもよい。例えば、複数のID組合せと分配先ハードウェアIDとの対応関係として、分配先設定テーブル25に上記の「(2,1)+(3,4)→1,2」が設定されている場合に、「(2,1)+(3,4)」を「101」のように変換してもよい。この場合には、分配先設定テーブル25において、「(2,1)+(3,4)→1,2」を「101→1,2」のように変更する必要がある。
【0069】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
取得したデータである取得データの出力元となるハードウェアを示す出力元ハードウェア識別情報と、前記取得データの種別を示すデータ識別情報との組合せである識別情報組合せと、前記取得データの分配先となるハードウェアを示す分配先ハードウェア識別情報との対応関係を設定する分配先設定テーブル(25)を記憶するように構成されたデータ記憶部(12)と、
前記取得データに付加されている前記出力元ハードウェア識別情報および前記データ識別情報の前記組合せと、前記分配先設定テーブルとに基づいて、前記取得データの前記分配先を決定するように構成された分配先決定部(26)と、
前記分配先決定部で決定した前記分配先に対応するハードウェアである分配先ハードウェアへ前記取得データを出力するように構成されたデータ分配部(27)とを備え、
前記分配先決定部および前記データ分配部は、複数の論理回路を含むデジタル回路であるデータ分配装置(1)。
【0070】
[項目2]
項目1に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先設定テーブルは、更に、複数の前記識別情報組合せと、前記分配先ハードウェア識別情報との対応関係を設定し、
前記分配先決定部は、取得した複数の前記取得データに対応する複数の前記識別情報組合せと、前記分配先設定テーブルとに基づいて、複数の前記取得データの前記分配先を決定するように構成されるデータ分配装置。
【0071】
[項目3]
項目1または項目2に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、前記分配先ハードウェアへ前記取得データを出力する出力経路に流れるデータ量を計測し、前記データ量が多いことを示す予め設定されたデータ圧縮条件が成立した場合には、前記取得データを圧縮して前記分配先ハードウェアへ出力するように構成されるデータ分配装置。
【0072】
[項目4]
項目1~項目3の何れか1項に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、複数の前記分配先ハードウェアへ前記取得データを出力する場合には、前記取得データを前記分配先の数だけ複製するように構成されるデータ分配装置。
【0073】
[項目5]
項目1~項目4の何れか1項に記載のデータ分配装置であって、
前記データ分配部は、1つの前記分配先ハードウェアへ複数の前記取得データを出力する場合には、複数の前記取得データを1つにまとめて出力するように構成されるデータ分配装置。
【0074】
[項目6]
項目1~項目5の何れか1項に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先設定テーブルは、更に、複数の前記識別情報組合せのそれぞれについて優先度を設定し、
前記データ分配部は、複数の前記取得データを出力する場合には、前記優先度が高い順に前記取得データを出力するように構成されるデータ分配装置。
【0075】
[項目7]
項目1~項目6の何れか1項に記載のデータ分配装置であって、
前記分配先ハードウェアへ出力される前記取得データにはタイムスタンプが付加されるデータ分配装置。
【0076】
[項目8]
項目1~項目7の何れか1項に記載のデータ分配装置であって、
前記データ記憶部に記憶される前記分配先設定テーブルは、当該データ分配装置へ電源が投入された後に更新されるデータ分配装置。
【符号の説明】
【0077】
1…データ分配装置、12…データ記憶部、25…分配先設定テーブル、26…分配先決定部、27…データ分配部