(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166736
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16D 27/02 20060101AFI20241122BHJP
H01F 7/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16D27/02 A
H01F7/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083048
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 秀之
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB06
5E048CB00
(57)【要約】
【課題】軽量化でき、低コスト化することができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】潤滑油が収容されたハウジングと、ハウジングに収容され、相対回転可能な一対の回転部材3,17と、一対の回転部材3,17の間に伝達される動力を断続する断続機構7と、電磁ソレノイド49を有し、断続機構7を作動させるアクチュエータ9とを備えた動力伝達装置1において、電磁ソレノイド49が、磁性材料で形成されたコア51と、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャ53と、表面が絶縁材で覆われコア51の内部に周回状に配置されたアルミニウム材のコイル55とを有した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油が収容されたハウジングと、
前記ハウジングに収容され、相対回転可能な一対の回転部材と、
一対の前記回転部材の間に伝達される動力を断続する断続機構と、
電磁ソレノイドを有し、前記断続機構を作動させるアクチュエータと、
を備え、
前記電磁ソレノイドは、磁性材料で形成されたコアと、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャと、表面が絶縁材で覆われ前記コアの内部に周回状に配置されたアルミニウム材のコイルとを有する動力伝達装置。
【請求項2】
前記コイルは、前記コアの内部に対して、周回状の全体を樹脂材で覆われて配置されている請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記樹脂材の厚さは、前記コイルの厚さの2倍以下に設定されている請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記コアの一部は、一対の前記回転部材のうち少なくともいずれか一方に対して、支持部を介して径方向に支持されている請求項1から3のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記コイルと前記支持部とは、少なくとも一部が径方向に重なり合って配置されている請求項4に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
一対の前記回転部材のうち少なくともいずれか一方は、軸方向の両側が一対のベアリングを介して回転可能に配置され、
一方の前記回転部材の軸方向一側には、駆動力が伝達される伝達部が設けられ、
前記電磁ソレノイドは、一方の前記回転部材の軸方向他側に配置され、
前記断続機構は、前記伝達部と前記電磁ソレノイドとの軸方向の間に配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力伝達装置としては、潤滑油が収容されたハウジングとしてのキャリアと、キャリアに収容され、相対回転可能な一対の回転部材としてのデフケースとサイドギヤとを備えている。また、デフケースとサイドギヤとの間に伝達される動力を断続する断続機構と、電磁ソレノイドを有し、断続機構を作動させるアクチュエータとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この動力伝達装置では、電磁ソレノイドが、磁性材料で形成されたコアと、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャとしてのプランジャとを有する。また、電磁ソレノイドは、表面が絶縁材で覆われコアの内部に周回状に配置されたコイルを有する。
【0004】
このような動力伝達装置では、電磁ソレノイドのコイルへ通電することにより、コアとプランジャとを透過する磁束によって、磁束ループが形成される。磁束ループが形成されると、プランジャが、断続機構の接続方向に移動され、断続機構が接続状態となる。断続機構が接続されると、デフケースとサイドギヤとが一体回転可能に接続され、デフケースとサイドギヤとの間の動力伝達が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1のような動力伝達装置では、コイルの表面が、コイル間の絶縁性を保持するために絶縁材で覆われている。コイルには、導電性がよく、容易に周回成形が可能な銅材が用いられている。銅材は、潤滑油中の極圧添加剤の硫黄やリン成分などの因子、揮発したオイルミストなどによって、表面に化学的な影響を受けやすい。このため、経時的な銅材表面の腐食による磁力特性の低下を防止するために、銅材のコイルの表面を覆う絶縁材の厚さを厚くする必要があり、重量化していた。加えて、銅材は、高価であり、高コスト化していた。
【0007】
そこで、この発明は、軽量化でき、低コスト化することができる動力伝達装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る動力伝達装置は、潤滑油が収容されたハウジングと、前記ハウジングに収容され、相対回転可能な一対の回転部材と、一対の前記回転部材の間に伝達される動力を断続する断続機構と、電磁ソレノイドを有し、前記断続機構を作動させるアクチュエータとを備え、前記電磁ソレノイドは、磁性材料で形成されたコアと、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャと、表面が絶縁材で覆われ前記コアの内部に周回状に配置されたアルミニウム材のコイルとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化でき、低コスト化することができる動力伝達装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る動力伝達装置の電磁ソレノイドの断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る動力伝達装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
図1~
図5を用いて第1実施形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置1は、例えば、4輪駆動車において、後輪側に配置される。前輪側は、エンジンや電動モータなどの駆動源からトランスミッション(不図示)により駆動される動力伝達装置を備える。動力伝達装置1は、例えば、エンジンや電動モータなどの駆動源(不図示)から駆動力が伝達され、左右の後輪(不図示)の間に配置されている。駆動源からの駆動力は、駆動機構(不図示)を介して動力伝達装置1に伝達され、一対の出力軸(不図示)を介して左右の後輪に駆動力が配分される。動力伝達装置1には、後輪に伝達される駆動力を断続する断続機構7が設けられている。断続機構7を接続することにより、駆動源からの駆動力が後輪に伝達され、車両が前後輪駆動の4輪駆動状態となる。一方、断続機構7の接続を解除することにより、駆動源から後輪に伝達される駆動力が遮断され、車両が前輪駆動の2輪駆動状態となる。
【0014】
図1~
図3に示すように、動力伝達装置1は、ハウジング(不図示)と、アウタケース3と、差動機構5と、断続機構7と、アクチュエータ9とを備えている。
【0015】
ハウジングは、内部に、アウタケース3と差動機構5と断続機構7とアクチュエータ9などを収容可能な形状に形成されている。ハウジングには、ギヤの噛み合い部や回転部材の摺動部などを、潤滑、冷却させる潤滑油が収容されている。
【0016】
アウタケース3は、軸方向の両側に設けられたボス部11,13の外周でそれぞれ一対のベアリング(不図示)を介してハウジングに回転可能に支持されている。アウタケース3の軸方向一側には、入力ギヤ(不図示)が固定されるフランジ状の伝達部15が設けられている。伝達部15に固定された入力ギヤは、例えば、駆動機構と一体回転可能に設けられた動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、アウタケース3に駆動源からの駆動力が伝達される。アウタケース3には、相対回転可能に差動機構5のインナケース17が収容され、後述する断続部33が接続状態であると、入力ギヤに入力された駆動力がインナケース17を介して差動機構5に伝達される。
【0017】
差動機構5は、インナケース17と、ピニオンシャフト19と、ピニオンギヤ21と、一対のサイドギヤ23,25とを備えている。
【0018】
インナケース17は、回転軸心がアウタケース3と同軸的に平行に配置され、アウタケース3内にアウタケース3と相対回転可能に収容されている。インナケース17には、ピニオンシャフト19と、ピニオンギヤ21と、一対のサイドギヤ23,25とが収容され、インナケース17に入力された駆動力が伝達される。
【0019】
ピニオンシャフト19は、2つの短尺のピニオンシャフトと長尺の1つのピニオンシャフトとからなる。2つの短尺のピニオンシャフトは、外端部をインナケース17に係合してピンで抜け止め及び回り止めされ、インナケース17と一体に回転駆動される。長尺の1つのピニオンシャフトは、中間に設けられた孔に2つの短尺のピニオンシャフトの内端部が係合されて抜け止め及び回り止めがなされ、インナケース17と一体に回転駆動される。ピニオンシャフト19のそれぞれの外端側には、複数のピニオンギヤ21がそれぞれ支承されている。
【0020】
複数のピニオンギヤ21は、インナケース17の周方向等間隔に4つ配置され、それぞれピニオンシャフト19の外端側に支承されてインナケース17の回転によって公転する。ピニオンギヤ21は、一対のサイドギヤ23,25に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ23,25に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト19に自転可能に支持されている。
【0021】
一対のサイドギヤ23,25は、それぞれに形成されたボス部でアウタケース3に相対回転可能に支持され、ピニオンギヤ21と噛み合っている。一対のサイドギヤ23,25は、内周側にスプライン形状の連結部27,29がそれぞれ設けられている。連結部27,29には、例えば、左右後輪に一体回転可能に接続される一対の出力軸がそれぞれサイドギヤ23,25と一体回転可能に連結され、インナケース17に入力された駆動力を後輪に出力する。
【0022】
このようなアウタケース3から差動機構5に伝達される駆動力は、一対の回転部材としてのアウタケース3とインナケース17との間に設けられた断続機構7によって断続される。このようにアウタケース3とインナケース17との間の動力伝達を断続する断続機構7を有する動力伝達装置1は、いわゆるフリーランニングデフとなっている。
【0023】
断続機構7は、断続部材31と、断続部33とを備えている。
【0024】
断続部材31は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部35がアウタケース3の壁部37とインナケース17との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。断続部材31のアウタケース3の壁部37側には、アウタケース3と一体回転可能に係合する係合部39が設けられ、断続部材31のインナケース17側には、断続部33が設けられている。
【0025】
係合部39は、断続部材31の基部35に周方向等間隔に設けられた複数の凸部41と、アウタケース3の壁部37に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔部43とからなる。凸部41と孔部43とが回転方向に係合することにより、断続部材31がアウタケース3に回り止めされ、断続部材31とアウタケース3とが一体回転可能となる。
【0026】
係合部39には、断続部材31を断続部33の接続方向に移動させるカムが設けられている。カムは、凸部41と孔部43との周方向両側の対向面にそれぞれ形成された同一傾斜のカム面となっている。カムは、断続部材31が断続部33の接続方向に移動され、アウタケース3とインナケース17との間の断続部33に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、それぞれのカム面が係合する。カム面が係合することにより、断続部材31をさらに断続部33の接続方向に移動させ、断続部33の接続を強化させる。
【0027】
断続部33は、断続部材31の基部35の係合部39と軸方向反対側の側面で断続部材31とインナケース17側との軸方向間に設けられている。断続部33は、断続部材31とインナケース17とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯からなる噛み合いクラッチとなっている。断続部33は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、断続部材31とインナケース17とが一体可能に接続、すなわちアウタケース3とインナケース17とが一体回転可能に接続される。このため、断続部33の接続により、アウタケース3とインナケース17との間の動力伝達が可能となる。
【0028】
一方、断続部材31の複数の凸部41には、それぞれボルトを介して連動部材45が固定されている。連動部材45とアウタケース3の側面との軸方向間には、付勢部材47が配置されている。付勢部材47は、連動部材45を介して断続部材31を断続部33の接続解除方向に、常時、付勢している。付勢部材47によって、断続部材31が断続部33の接続解除方向に移動され、断続部33の接続が解除される。断続部33の接続解除により、断続部材31とインナケース17とが相対回転可能、すなわちアウタケース3とインナケース17とが相対回転可能となる。このため、断続部33の接続解除により、アウタケース3とインナケース17との間の動力伝達が遮断される。断続部33は、アクチュエータ9によって作動される。
【0029】
アクチュエータ9は、電磁ソレノイド49を有する。電磁ソレノイド49は、軸方向に断続機構7を挟んで伝達部15と軸方向の反対側であるアウタケース3の軸方向の他側に配置されている。電磁ソレノイド49は、コア51と、アーマチャ53と、コイル55とを備えている。
【0030】
コア51は、磁性材料からなり、中空の環状に形成されている。コア51には、ハウジングに係合される回り止め部(不図示)が設けられ、コア51がハウジングに回り止めされている。コア51の内径側には、支持部材57が一体に設けられている。支持部材57には、アウタケース3のボス部13の外周に径方向に支持される支持部59が設けられている。このため、コア51は、支持部59を介してアウタケース3に径方向に支持されている。
【0031】
支持部59の軸方向の一端側は、アウタケース3のボス部13に形成された段差部61に当接されている。支持部59の軸方向の他端側は、アウタケース3のボス部13に固定された規制部材63に当接されている。このため、コア51は、支持部59を介して軸方向の移動が規制されている。コア51の軸方向一側の端面には、アーマチャ53と当接可能な当接部材65が固定されている。
【0032】
アーマチャ53は、磁性材料からなり、環状に形成されている。アーマチャ53は、コア51の内径側でコア51の軸方向に切り欠かれた部分に、軸方向移動可能に配置されている。アーマチャ53は、断続部材31側に移動されたときに、当接部材65と当接される。アーマチャ53と当接部材65との当接により、アーマチャ53の断続部材31側への移動が規制される。アーマチャ53の内径側には、非磁性材料からなるリング部材67が一体に設けられ、アウタケース3側へ磁束が漏れることが防止されている。
【0033】
リング部材67は、支持部59の外周に軸方向移動可能に配置されている。リング部材67の軸方向の一端側は、連動部材45に当接可能に配置されている。リング部材67の軸方向の他端側には、支持部材57との軸方向間に配置された接続付勢部材69が当接されている。接続付勢部材69は、付勢部材47より大きな付勢力を有し、リング部材67を、常時、断続部材31側に向けて付勢している。このため、リング部材67は、連動部材45を押圧し、断続部材31を断続部33の接続方向に移動させ、断続部33を接続させる。断続部33の接続は、コイル55への通電によって、アーマチャ53を断続部33の接続解除方向に移動させることによって、解除される。
【0034】
コイル55は、アルミニウム材からなり、断面円形状、或いは断面矩形状の線状に形成されている。コイル55の表面は、例えば、エナメル、ポリエステル、ポリウレタンなどの絶縁材で被覆、或いはコーティングされている。コイル55は、複数回巻き回しされた周回形状で、コア51の内部に配置される。コア51の内部に配置されたコイル55は、支持部材57の支持部59に対して、軸方向の全体が径方向に重なり合って配置されている。コイル55の両端部は、コア51から外部に引き出され、ハウジングの外部に配置された通電を制御するコントローラ(不図示)に電気的に接続される。
【0035】
このようなコイル55にアルミニウム材を用いることにより、銅材を用いた場合に比較して、軽量化でき、低コスト化することができる。加えて、アルミニウム材は、潤滑油中の極圧添加剤の硫黄やリン成分などの因子、揮発したオイルミストなどによって、表面に化学的な影響を受けにくい。このため、アルミニウム材のコイル55の腐食防止を考慮した表面の絶縁材の厚さを厚くする必要がなく、軽量化することができる。周回状のコイル55は、樹脂材71で覆われている。
【0036】
樹脂材71は、周回状に形成されたコイル55の全体を覆うように、コーティング、ラッピング、モールドなどによって形成される。樹脂材71で覆われた周回状のコイル55は、コア51の内部に配置される。周回状のコイル55の全体を樹脂材71で覆うことにより、コイル55内への潤滑油の浸入を防止し、励磁特性の劣化を抑制することができる。加えて、樹脂材71によって、コイル55の周回状の形状を保持することができる。
【0037】
図4に示すように、樹脂材71のコイル55の最外端73から表面75までの厚さTは、コイル55の厚さD(径)の2倍以下となるように設定されている。なお、コイル55の断面形状が矩形状である場合には、
図5に示すように、コイル55の薄い部分の板厚を、コイル55の厚さDとして、樹脂材71の厚さTを設定する。このように樹脂材71の厚さTを設定することにより、温度環境によってコイル55に膨張や収縮が生じても、樹脂材71の追従性に問題が生じないようにすることができる。このため、省スペース化しつつ、樹脂材71の破損を防止して、コイル55内への潤滑油の浸入を防止し、電磁ソレノイド49の特性を長期的に保持することができる。なお、配置スペースに余裕がある場合には、樹脂材71の厚さTが、コイル55の厚さDの2倍を超えてもよい。
【0038】
このような電磁ソレノイド49は、コントローラによるコイル55への通電により、コア51とアーマチャ53とを透過する磁束で自己完結型の磁束ループを形成する。形成された磁束ループは、アーマチャ53及びリング部材67を、接続付勢部材69の付勢力に抗して断続部33の接続解除方向に移動させる。リング部材67の移動により、付勢部材47の付勢力によって、連動部材45を介して断続部材31が、断続部33の接続解除方向に移動し、断続部33の接続が解除される。断続部33の接続解除により、インナケース17と断続部材31とが相対回転可能となり、インナケース17とアウタケース3とが相対回転可能となって、アウタケース3とインナケース17との間の動力伝達が遮断される。
【0039】
一方、電磁ソレノイド49は、コントローラによるコイル55への通電停止により、接続付勢部材69によってリング部材67が断続部材31側に向けて移動し、リング部材67が連動部材45を押圧する。リング部材67の押圧により、連動部材45を介して断続部材31が、付勢部材47の付勢力に抗して断続部33の接続方向に移動し、断続部33が接続される。断続部33の接続により、インナケース17と断続部材31とが一体回転可能に接続され、インナケース17とアウタケース3とが接続されて、アウタケース3とインナケース17との間の動力伝達が可能となる。
【0040】
このような動力伝達装置1では、潤滑油が収容されたハウジングと、ハウジングに収容され、相対回転可能な一対の回転部材としてのアウタケース3とインナケース17とを備えている。また、アウタケース3とインナケース17の間に伝達される動力を断続する断続機構7と、電磁ソレノイド49を有し、断続機構7を作動させるアクチュエータ9とを備えている。そして、電磁ソレノイド49は、磁性材料で形成されたコア51と、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャ53と、表面が絶縁材で覆われコア51の内部に周回状に配置されたアルミニウム材のコイル55とを有する。
【0041】
コイル55にアルミニウム材を用いることにより、銅材を用いた場合に比較して、軽量化でき、低コスト化することができる。加えて、アルミニウム材は、潤滑油中の極圧添加剤の硫黄やリン成分などの因子、揮発したオイルミストなどによって、表面に化学的な影響を受けにくい。このため、アルミニウム材のコイル55の腐食防止を考慮した表面の絶縁材の厚さを厚くする必要がなく、軽量化することができ、耐久性の高い動力伝達装置1とすることができる。
【0042】
従って、このような動力伝達装置1では、軽量化でき、低コスト化することができる。
【0043】
また、コイル55は、コア51の内部に対して、周回状の全体を樹脂材71で覆われて配置されている。
【0044】
このため、コイル55内への潤滑油の浸入を防止し、励磁特性の劣化を抑制することができる。
【0045】
また、樹脂材71の厚さTは、コイル55の厚さDの2倍以下に設定されている。
【0046】
樹脂材71の厚さTを、コイル55の厚さDの2倍以下に設定することにより、温度環境によってコイル55に膨張や収縮が生じても、樹脂材71の追従性に問題が生じないようにすることができる。このため、省スペース化しつつ、樹脂材71の破損を防止して、コイル55内への潤滑油の浸入を防止し、電磁ソレノイド49の特性を長期的に保持することができる。
【0047】
また、コア51の一部は、一対の回転部材のうち少なくともいずれか一方としてのアウタケース3に対して、支持部59を介して径方向に支持されている。
【0048】
コア51の内部に配置されたコイル55は、軽量化されているので、支持部59への回転方向や径方向のモーメントの過大な入力を抑制できる。このため、コア51とアーマチャ53との配置位置の変動を抑制でき、電磁ソレノイド49の作動特性を長期的に安定化することができる。
【0049】
また、コイル55と支持部59とは、少なくとも一部が径方向に重なり合って配置されている。
【0050】
コイル55と支持部59とに径方向に重なり合う部分があるので、直接的なモーメントが支持部59に作用しても、支持状態の悪化を抑制できる。このため、電磁ソレノイド49の作動特性を長期的に安定化することができる。
【0051】
また、一対の回転部材のうち少なくともいずれか一方としてのアウタケース3は、軸方向の両側が一対のベアリングを介して回転可能に配置されている。さらに、アウタケース3の軸方向一側には、駆動力が伝達される伝達部15が設けられている。また、電磁ソレノイド49は、アウタケース3の軸方向他側に配置されている。そして、断続機構7は、伝達部15と電磁ソレノイド49との軸方向の間に配置されている。
【0052】
電磁ソレノイド49は、アウタケース3の軸方向において、駆動力の伝達部15から遠い位置に配置されている。このため、駆動力の伝達部15に入力する伝達振動が、電磁ソレノイド49に伝播することを緩和することができる。従って、軽量化されたアルミニウム材のコイル55の作動特性の変動が抑制され、電磁ソレノイド49の作動特性を長期的に安定化することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図6を用いて第2実施形態について説明する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態に係る動力伝達装置101は、例えば、エンジンや電動モータなどの駆動源(不図示)と、左右の車輪(不図示)との間に配置されている。駆動源からの駆動力は、トランスミッション(不図示)を介して動力伝達装置101に伝達され、一対の出力軸(不図示)を介して左右の車輪に駆動力が配分される。動力伝達装置101には、左右の車輪の差動を断続する断続機構105が設けられている。例えば、車両が悪路を走行するときに、断続機構105を接続することにより、左右の車輪の差動がロック状態となり、駆動源からの駆動力が左右の車輪に均等に配分され、車両が悪路を走破することができる。
【0055】
図6に示すように、動力伝達装置101は、ハウジング(不図示)と、差動機構103と、断続機構105と、アクチュエータ107とを備えている。
【0056】
ハウジングは、内部に、差動機構103と断続機構105とアクチュエータ107などを収容可能な形状に形成されている。ハウジングには、ギヤの噛み合い部や回転部材の摺動部などを、潤滑、冷却させる潤滑油が収容されている。
【0057】
差動機構103は、デフケース109と、ピニオンシャフト111と、ピニオンギヤ113と、一対のサイドギヤ115,117とを備えている。
【0058】
デフケース109は、軸方向の両側に設けられたボス部119,121の外周でそれぞれ一対のベアリング(不図示)を介してハウジングに回転可能に支持されている。デフケース109の軸方向一側には、入力ギヤ(不図示)が固定されるフランジ状の伝達部123が設けられている。伝達部123に固定された入力ギヤは、例えば、駆動源からの駆動力が伝達される動力伝達ギヤ(不図示)と噛み合い、デフケース109に駆動源からの駆動力が伝達される。デフケース109には、ピニオンシャフト111と、ピニオンギヤ113と、一対のサイドギヤ115,117などが収容され、デフケース109に入力された駆動力が伝達される。
【0059】
ピニオンシャフト111は、2つの短尺のピニオンシャフトと長尺の1つのピニオンシャフトとからなる。2つの短尺のピニオンシャフトは、外端部をデフケース109に係合してピンで抜け止め及び回り止めされ、デフケース109と一体に回転駆動される。長尺の1つのピニオンシャフトは、中間に設けられた孔に2つの短尺のピニオンシャフトの内端部が係合されて抜け止め及び回り止めがなされ、デフケース109と一体に回転駆動される。ピニオンシャフト111のそれぞれの外端側には、複数のピニオンギヤ113がそれぞれ支承されている。
【0060】
複数のピニオンギヤ113は、デフケース109の周方向等間隔に4つ配置され、それぞれピニオンシャフト111の外端側に支承されてデフケース109の回転によって公転する。ピニオンギヤ113は、一対のサイドギヤ115,117に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ115,117に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト111に自転可能に支持されている。
【0061】
一対のサイドギヤ115,117は、それぞれに形成されたボス部でデフケース109に相対回転可能に支持され、ピニオンギヤ113と噛み合っている。一対のサイドギヤ115,117は、内周側にスプライン形状の連結部125,127がそれぞれ設けられている。連結部125,127には、例えば、左右の車輪に一体回転可能に接続される一対の出力軸がそれぞれサイドギヤ115,117と一体回転可能に連結され、デフケース109に入力された駆動力を左右の車輪にそれぞれ出力する。
【0062】
このような差動機構103における一対のサイドギヤ115,117の差動は、一対の回転部材としてのデフケース109と一方のサイドギヤ115との間に設けられた断続機構105によって断続される。このように差動機構103の差動を断続する断続機構105を有する動力伝達装置101は、いわゆるデフロック機能を有するデファレンシャル装置となっている。
【0063】
断続機構105は、断続部材129と、断続部131とを備えている。
【0064】
断続部材129は、環状に形成され、周方向に連続する一部材で形成された基部133がデフケース109の壁部135と一方のサイドギヤ115との軸方向間に軸方向移動可能に配置されている。断続部材129のデフケース109の壁部135側には、デフケース109と一体回転可能に係合する係合部137が設けられ、断続部材129の一方のサイドギヤ115側には、断続部131が設けられている。
【0065】
係合部137は、断続部材129の基部133に周方向等間隔に設けられた複数の凸部139と、デフケース109の壁部135に周方向等間隔に軸方向に貫通して設けられた複数の孔部141とからなる。凸部139と孔部141とが回転方向に係合することにより、断続部材129がデフケース109に回り止めされ、断続部材129とデフケース109とが一体回転可能となる。
【0066】
係合部137には、断続部材129を断続部131の接続方向に移動させるカムが設けられている。カムは、凸部139と孔部141との周方向両側の対向面にそれぞれ形成された同一傾斜のカム面となっている。カムは、断続部材129が断続部131の接続方向に移動され、デフケース109と一方のサイドギヤ115との間の断続部131に回転方向の噛み合い作用が生じたときに、それぞれのカム面が係合する。カム面が係合することにより、断続部材129をさらに断続部131の接続方向に移動させ、断続部131の接続を強化させる。
【0067】
断続部131は、断続部材129の基部133の係合部137と軸方向反対側の側面で断続部材129と一方のサイドギヤ115側との軸方向間に設けられている。断続部131は、断続部材129と一方のサイドギヤ115とにそれぞれ周方向に複数形成されて互いに噛み合う噛み合い歯からなる噛み合いクラッチとなっている。断続部131は、互いの噛み合い歯が噛み合うことにより、断続部材129と一方のサイドギヤ115とが一体可能に接続、すなわちデフケース109と一方のサイドギヤ115とが一体回転可能に接続される。このため、断続部131の接続により、一対のサイドギヤ115,117の差動がロック状態となり、デフケース109に入力された駆動力が、一対のサイドギヤ115,117から均等に出力される。
【0068】
一方、断続部131の内径側で、断続部材129と一方のサイドギヤ115との軸方向間には、付勢部材143が配置されている。付勢部材143は、断続部材129を断続部131の接続解除方向に、常時、付勢している。付勢部材143によって、断続部材129が断続部131の接続解除方向に移動され、断続部131の接続が解除される。断続部131の接続解除により、断続部材129と一方のサイドギヤ115とが相対回転可能、すなわちデフケース109と一方のサイドギヤ115とが相対回転可能となる。このため、断続部131の接続解除により、一対のサイドギヤ115,117の差動がロック解除状態となり、デフケース109に入力された駆動力が、一対のサイドギヤ115,117から車両の走行状況に応じてそれぞれ出力される。
【0069】
なお、断続部材129の凸部139には、ボルトを介して検出部材145が断続部材129と一体移動可能に固定されている。検出部材145は、コントローラ(不図示)に電気的に接続されたポジションスイッチ(不図示)の検出部と対向して配置されている。ポジションスイッチは、検出部材145の位置を検出することにより、断続部材129の位置を検出し、断続部131の断続状態を検出する。断続部131は、アクチュエータ107によって作動される。
【0070】
アクチュエータ107は、電磁ソレノイド147を有する。電磁ソレノイド147は、コア149と、アーマチャ151と、コイル153とを備えている。
【0071】
コア149は、磁性材料からなり、デフケース109の壁部135側が開口された中空の環状に形成されている。コア149には、ハウジングに係合される回り止め部(不図示)が設けられ、コア149がハウジングに回り止めされている。コア149の外径側には、デフケース109の壁部135からコア149に向けて延出された延出部155が設けられている。延出部155には、コア149を径方向に支持する支持部157が設けられている。このため、コア149は、支持部157を介してデフケース109に径方向に支持されている。
【0072】
コア149の外径には、延出部155の軸方向の端部に当接される当接部159が設けられている。コア149の軸方向外側の端面は、デフケース109のボス部119に固定された規制部材161に当接されている。このため、コア149は、延出部155と当接部159との当接と、軸方向外側の端面と規制部材161との当接とによって、軸方向の移動が規制されている。
【0073】
アーマチャ151は、磁性材料からなり、環状に形成されている。アーマチャ151は、コア149の内径側に、軸方向移動可能に配置されている。アーマチャ151は、規制部材161と当接可能に配置され、軸方向外側への移動が規制されている。アーマチャ151の内径側には、非磁性材料からなるリング部材163が一体に設けられ、デフケース109側へ磁束が漏れることが防止されている。
【0074】
リング部材163は、デフケース109のボス部119の外周に軸方向移動可能に配置されている。リング部材163の軸方向の一端側は、規制部材161と当接可能に配置され、軸方向外側への移動が規制されている。リング部材163の軸方向の他端側には、断続部材129の凸部139と当接される押圧部165が設けられている。リング部材163は、コイル153への通電によって、アーマチャ151を断続部131の接続方向に移動させることによって、押圧部165を介して断続部材129を押圧し、断続部材129を移動させて断続部131を接続させる。
【0075】
コイル153は、アルミニウム材からなり、断面円形状、或いは断面矩形状の線状に形成されている。コイル153の表面は、例えば、エナメル、ポリエステル、ポリウレタンなどの絶縁材で被覆、或いはコーティングされている。コイル153は、複数回巻き回しされた周回形状で、コア149の内部に配置される。コア149の内部に配置されたコイル153は、延出部155の支持部157に対して、軸方向の一部が径方向に重なり合って配置されている。コイル153の両端部は、コア149から外部に引き出され、ハウジングの外部に配置された通電を制御するコントローラ(不図示)に電気的に接続される。
【0076】
このようなコイル153にアルミニウム材を用いることにより、銅材を用いた場合に比較して、軽量化でき、低コスト化することができる。加えて、アルミニウム材は、潤滑油中の極圧添加剤の硫黄やリン成分などの因子、揮発したオイルミストなどによって、表面に化学的な影響を受けにくい。このため、アルミニウム材のコイル153の腐食防止を考慮した表面の絶縁材の厚さを厚くする必要がなく、軽量化することができる。周回状のコイル153は、樹脂材167で覆われている。
【0077】
樹脂材167は、周回状に形成されたコイル153の全体を覆うように、コーティング、ラッピング、モールドなどによって形成される。樹脂材167で覆われた周回状のコイル153は、コア149の内部に配置される。周回状のコイル153の全体を樹脂材167で覆うことにより、コイル153内への潤滑油の浸入を防止し、励磁特性の劣化を抑制することができる。加えて、樹脂材167によって、コイル153の周回状の形状を保持することができる。
【0078】
樹脂材167のコイル153の最外端から表面までの厚さT(
図4参照)は、コイル153の厚さD(径)の2倍以下となるように設定されている。なお、コイル153の断面形状が矩形状である場合には、コイル153の薄い部分の板厚を、コイル153の厚さD(
図5参照)として、樹脂材167の厚さTを設定する。このように樹脂材167の厚さTを設定することにより、温度環境によってコイル153に膨張や収縮が生じても、樹脂材167の追従性に問題が生じないようにすることができる。このため、省スペース化しつつ、樹脂材167の破損を防止して、コイル153内への潤滑油の浸入を防止し、電磁ソレノイド147の特性を長期的に保持することができる。なお、配置スペースに余裕がある場合には、樹脂材167の厚さTが、コイル153の厚さDの2倍を超えてもよい。
【0079】
このような電磁ソレノイド147は、コントローラによるコイル153への通電により、コア149とアーマチャ151とデフケース109の壁部135とを透過する最短の磁束で磁束ループを形成する。形成された磁束ループは、アーマチャ151及びリング部材163を、断続部131の接続方向に移動させる。リング部材163の移動により、押圧部165を介して断続部材129を押圧し、断続部材129が、付勢部材143の付勢力に抗して断続部131の接続方向に移動し、断続部131が接続される。断続部131の接続により、デフケース109と断続部材129とが一体回転可能に接続され、差動機構103の差動がロック状態となる。
【0080】
一方、電磁ソレノイド147は、コントローラによるコイル153への通電停止により、付勢部材143によって、断続部材129が断続部131の接続解除方向に移動され、断続部131の接続が解除される。断続部131の接続解除により、デフケース109と断続部材129とが相対回転可能となり、差動機構103の差動がロック解除状態となる。
【0081】
このような動力伝達装置101では、潤滑油が収容されたハウジングと、ハウジングに収容され、相対回転可能な一対の回転部材としてのデフケース109とサイドギヤ115とを備えている。また、デフケース109とサイドギヤ115の間に伝達される動力を断続する断続機構105と、電磁ソレノイド147を有し、断続機構105を作動させるアクチュエータ107とを備えている。そして、電磁ソレノイド147は、磁性材料で形成されたコア149と、磁性材料で形成され移動可能に配置されたアーマチャ151と、表面が絶縁材で覆われコア149の内部に周回状に配置されたアルミニウム材のコイル153とを有する。
【0082】
コイル153にアルミニウム材を用いることにより、銅材を用いた場合に比較して、軽量化でき、低コスト化することができる。加えて、アルミニウム材は、潤滑油中の極圧添加剤の硫黄やリン成分などの因子、揮発したオイルミストなどによって、表面に化学的な影響を受けにくい。このため、アルミニウム材のコイル153の腐食防止を考慮した表面の絶縁材の厚さを厚くする必要がなく、軽量化することができ、耐久性の高い動力伝達装置101とすることができる。
【0083】
従って、このような動力伝達装置101では、軽量化でき、低コスト化することができる。
【0084】
また、コイル153は、コア149の内部に対して、周回状の全体を樹脂材167で覆われて配置されている。
【0085】
このため、コイル153内への潤滑油の浸入を防止し、励磁特性の劣化を抑制することができる。
【0086】
また、樹脂材167の厚さTは、コイル153の厚さDの2倍以下に設定されている。
【0087】
樹脂材167の厚さTを、コイル153の厚さDの2倍以下に設定することにより、温度環境によってコイル153に膨張や収縮が生じても、樹脂材167の追従性に問題が生じないようにすることができる。このため、省スペース化しつつ、樹脂材167の破損を防止して、コイル153内への潤滑油の浸入を防止し、電磁ソレノイド147の特性を長期的に保持することができる。
【0088】
また、コア149の一部は、一対の回転部材のうち少なくともいずれか一方としてのデフケース109に対して、支持部157を介して径方向に支持されている。
【0089】
コア149の内部に配置されたコイル153は、軽量化されているので、支持部157への回転方向や径方向のモーメントの過大な入力を抑制できる。このため、コア149とアーマチャ151との配置位置の変動を抑制でき、電磁ソレノイド147の作動特性を長期的に安定化することができる。
【0090】
また、コイル153と支持部157とは、少なくとも一部が径方向に重なり合って配置されている。
【0091】
コイル153と支持部157とに径方向に重なり合う部分があるので、直接的なモーメントが支持部157に作用しても、支持状態の悪化を抑制できる。このため、電磁ソレノイド147の作動特性を長期的に安定化することができる。
【0092】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0093】
例えば、本実施形態においては、動力伝達装置が、デファレンシャル装置となっているが、これに限らず、例えば、差動機構を有さずに、車両の駆動輪を切換可能な2-4切換機構を有する動力伝達装置としてもよい。
【0094】
また、断続部は、噛み合いクラッチとなっているが、これに限らず、例えば、多板クラッチのような摩擦クラッチなど、断続部はどのような形態であってもよい。
【0095】
また、アクチュエータは、電磁ソレノイドのみとなっているが、これに限らず、例えば、アーマチャの移動によって締結されるパイロットクラッチ、パイロットクラッチの締結によって作動するカム機構など、アクチュエータが他の機構を有してもよい。
【0096】
また、伝達部は、ギヤ機構によって構成されているが、これに限らず、ベルトやチェーンを用いた機構、ポンプを用いた機構などであってもよい。このような場合においても、伝達部から遠い位置にコイルを配置することにより、ベルトやチェーンの周回振動やポンプの吸入吐出振動が伝播されることを緩和することができる。
【符号の説明】
【0097】
1,101 動力伝達装置
3 アウタケース(回転部材)
7,105 断続機構
9,107 アクチュエータ
15,123 伝達部
17 インナケース(回転部材)
49,147 電磁ソレノイド
51,149 コア
53,151 アーマチャ
55,153 コイル
59,157 支持部
71,167 樹脂材
109 デフケース(回転部材)
115 サイドギヤ(回転部材)