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特開2024-166738カーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166738
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/168 20170101AFI20241122BHJP
【FI】
C01B32/168
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083052
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】501016733
【氏名又は名称】中谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 修七
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏史
(72)【発明者】
【氏名】折田 直樹
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146BA04
4G146BB01
4G146BB03
4G146BB07
4G146BC02
(57)【要約】
【課題】触媒等の金属不純物の含有量が低く、かつ解れ易いカーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)凝集体は、不純物含有量が0.1質量%以下、嵩密度が0.1~0.2g/cm以下及び有効解繊指数EDIが50以上であり、有効解繊指数EDIは、CNT凝集体の総質量AT、CNT凝集体のうちの粒径2000μm以上のCNT凝集体の第1質量A1、粒径1000μm以上2000μm未満のCNT凝集体の第2質量A2、粒径500μm以上1000μm未満のCNT凝集体の第3質量A3、粒径1000μm以上2000μm未満のCNT凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1、粒径500μm以上1000μm未満のCNT凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2を用いて、下記式(1)により算出される値である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ凝集体であって、
前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、
前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cm以下の嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、
前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体。
【数1】
【請求項2】
前記有効解繊指数EDIが、90以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ凝集体の分散度が、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項4】
前記総質量ATに対する前記第1質量A1の比が、10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項5】
カーボンナノチューブ凝集体を製造する方法であって、
カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を調製する工程と、
前記凝集物に熱処理を施す工程と
を含み、
前記熱処理は、前記凝集物を2400~3000℃の温度条件下で加熱する処理であり、
前記凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、
前記凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であり、
前記有効解繊指数EDIは、前記凝集物の総質量ATと、前記凝集物のうちの粒径2000μm以上の凝集物の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満の凝集物の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。
【数2】
【請求項6】
前記カーボンナノチューブを凝集させる工程は、前記カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる工程と、前記水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させた前記カーボンナノチューブを乾燥させる工程とを含むことを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下「CNT」という場合がある。)は次世代材料として注目されており、帯電防止剤、導電性付与材料としての活用の他、タイヤ、キャパシタ、リチウムイオン電池の正極材料及び負極材料や導電助剤、繊維強化プラスチック等、種々の技術分野における活用に向けて開発が進められている。
【0003】
CNTは、数nm~500nm程度の直径、10μm~1000μm程度の長さであって、大きなアスペクト比を有し、チューブ状構造の炭素結晶である。CNTとしては、単層構造のシングルウォールCNT(Single-Walled CNT,SWCNT)、2層構造のダブルウォールCNT(Double-Walled CNT,DWCNT)を含む多層構造のマルチウォールCNT(Multi-Walled CNT,MWCNT)等の様々な構造を有するものが知られている。
【0004】
CNTを製造する方法としては、アーク放電法、レーザ蒸発法、CVD法等が知られており、金属等の触媒の存在下、炭素や炭素化合物等の炭素原料等を高温条件に置くことによりCNTが製造され得る。そのため、製造されるCNTには不純物としての触媒が残存している。CNTの用途や製品におけるCNTの使用量等によっては、CNTへの触媒の残存量が少ないことが求められ、CNTから触媒等の金属不純物等を除去する精製方法が必要となる。CNTから触媒等の金属不純物等を除去する方法として、カーボンナノチューブの嵩密度を高くするステップと、嵩密度の高いカーボンナノチューブに熱処理を施すことで金属不純物を除去するステップとを含むカーボンナノチューブの精製方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
その一方で、一般に、チューブ状のCNTは絡み合っているためにバラバラになり難く、分散性に欠けるとともに、飛散しやすく、取扱性に欠ける等の課題がある。このような問題を解決するために、従来、CNTが解れ易いCNT凝集体を製造する方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-515497号公報
【特許文献2】特開2021-31514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示された製造方法によれば、取扱性に優れ、かつCNTが解れ易く分散性に優れたCNT凝集体を製造することができる。この方法により製造されたCNT凝集体は、触媒等の金属不純物を含むものであるが、この金属不純物を上記特許文献1に開示された精製方法により除去しようとすると、CNTが解れ難くなってしまうという問題がある。
【0008】
上記課題に鑑みて、本開示は、触媒等の金属不純物の含有量が低く、かつカーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は、カーボンナノチューブ凝集体であって、前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cm以下の嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体を提供する。
【0010】
【数1】
【0011】
本開示は、カーボンナノチューブ凝集体を製造する方法であって、カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を取得する工程と、前記凝集物に熱処理を施す工程とを含み、前記熱処理は、前記凝集物を2400~3000℃の温度条件下で加熱する処理であり、前記凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、前記凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であり、前記有効解繊指数EDIは、前記凝集物の総質量ATと、前記凝集物のうちの粒径2000μm以上の凝集物の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満の凝集物の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体の製造方法を提供する。
【0012】
【数2】
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、触媒等の金属不純物の含有量が低く、かつカーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態について詳細に説明する。
本開示の第1態様は、カーボンナノチューブ凝集体であって、前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cm以下の嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体である。
【0015】
【数3】
【0016】
本開示の第2態様は、上記第1態様において、前記有効解繊指数EDIが、90%以上である。
本開示の第3態様は、上記第1又は第2態様において、前記カーボンナノチューブ凝集体の分散度が、100μm以下である。
本開示の第4態様は、上記第1~第3態様のいずれかにおいて、前記総質量ATに対する前記第1質量A1の比が、10%以下である。
【0017】
本開示の第5態様は、カーボンナノチューブ凝集体を製造する方法であって、カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を取得する工程と、前記凝集物に熱処理を施す工程と
を含み、前記熱処理は、前記凝集物を2400~3000℃の温度条件下で加熱する処理であり、前記凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、前記凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であり、前記有効解繊指数EDIは、前記凝集物の総質量ATと、前記凝集物のうちの粒径2000μm以上の凝集物の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満の凝集物の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とする凝集物凝集体の製造方法である。
【0018】
【数4】
【0019】
本開示の第6態様は、上記第5態様において、前記カーボンナノチューブを凝集させる工程は、前記カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる工程と、前記水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させた前記カーボンナノチューブを乾燥させる工程とを含む。
【0020】
[カーボンナノチューブ凝集体]
本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体は、0.1g/cm~0.2g/cmの嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有する。カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下である。
【0021】
カーボンナノチューブ凝集体の嵩密度は、0.1g/cm~0.2g/cmであり、好ましくは0.08g/cm~0.2g/cmであり、特に好ましくは0.12g/cm~0.15g/cmである。嵩密度が0.2g/cmを超えるものは、カーボンナノチューブが解れ難く、分散し難いという問題がある。嵩密度が0.1g/cm未満であると、取扱性に劣るとともに、当該カーボンナノチューブ凝集体の製造、特に触媒等の金属不純物等を除去する工程において処理量を増大させることが困難となり、カーボンナノチューブ凝集体の製造コストを増大させてしまうという問題がある。なお、カーボンナノチューブ凝集体の嵩密度は、JIS-K-6219に規定されるカーボンブラックの嵩密度の測定法に準拠して求められ得る。
【0022】
カーボンナノチューブ凝集体の有効解繊指数EDIは、50以上であり、好ましくは90以上であり、特に好ましくは95以上である。有効解繊指数EDIが50未満であると、解れ難く、分散性に劣ってしまう。
【0023】
カーボンナノチューブ凝集体の有効解繊指数EDIとは、カーボンナノチューブ凝集体の解繊し易さ(解き易さ)を示す指標であって、例えば、以下のようにして求められ得る。
【0024】
カーボンナノチューブ凝集体を目開き2000μmの篩にかけ、当該篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体(粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体)の質量(第1質量A1)を測定する。次に、目開き2000μmの篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体を目開き1000μmの篩にかけ、当該篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体(目開き2000μmの篩を通過するが目開き1000μmの篩を通過しないカーボンナノチューブ凝集体,粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体)の質量(第2質量A2)を測定する。続いて、目開き1000μmを通過したカーボンナノチューブ凝集体を目開き500μmの篩にかけ、当該篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体(目開き1000μmの篩を通過するが目開き500μmの篩を通過しないカーボンナノチューブ凝集体,粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体)の質量(第3質量A3)を測定する。最後に、目開き500μmの篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体の質量(残部質量AR)を測定し、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3及び残部質量ARを加算してカーボンナノチューブ凝集体の総質量AT(=A1+A2+A3+AR)を求める。
【0025】
目開き1000μmの篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体と、直径2mmのガラスビーズとを目開き1000μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体の質量AR2を測定する。同様に、目開き500μmの篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体と、直径2mmのガラスビーズとを目開き500μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体の質量AR3を測定する。そして、目開き1000μmの篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体の質量AR2の、第2質量A2に対する比(=AR2/A2)を、第1粉化率F1として求め、目開き500μmの篩を通過したカーボンナノチューブ凝集体の質量AR3の、第3質量A3に対する比(=AR3/A3)を、第2粉化率F2として求める。
【0026】
そして、上記のようにして求めた総質量AT、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3、第1粉化率F1及び第2粉化率F2を用い、下記式(1)により有効解繊指数EDI(質量%)を算出することができる。
【0027】
【数5】
【0028】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体においては、不純物含有量が0.1質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.02質量%以下である。カーボンナノチューブ凝集体に含まれ得る不純物としては、例えば、カーボンナノチューブ凝集体の製造過程で用いられるFe、Ni、Mn、Co、Cr、Mo、W、V、Ti、Ru、Ro、Rh、Pd、Pt、希土類元素等の金属触媒等が挙げられる。本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体によれば、金属触媒等の不純物が除去されて精製され、かつ解れ易いという効果が奏され得る。なお、カーボンナノチューブ凝集体における不純物含有量は、例えば、JIS-K-6218-2に規定されるカーボンブラックの灰分の測定法に準拠して求められ得る。
【0029】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体において、上記総質量ATに対する第1質量A1(カーボンナノチューブ凝集体を目開き2000μmの篩にかけ、当該篩に残ったカーボンナノチューブ凝集体(粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体)の質量)の比が、10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。カーボンナノチューブ凝集体における粒径2000μm以上のものの比が相対的に大きく、上記第1質量A1の比が10%を超えると、カーボンナノチューブが解れ難くなるおそれがある。
【0030】
本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体においては、分散度が100μm以下であればよく、好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下である。分散度が100μm以下であることで、解れ易く、分散性を良好にすることができる。なお、分散度は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒にカーボンナノチューブ凝集体を分散させ、ヘグマン式粒度計(エリクセン社製)を用いて測定され得る。
【0031】
[カーボンナノチューブ凝集体の製造方法]
本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体の製造方法について説明する。
まず、カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を調製する。当該凝集物を調製するにあたり、まず、カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させて湿潤物を調製する。
【0032】
カーボンナノチューブは、特に限定されるものではなく、六角網目状のグラファイトシートが円筒状をなした構造を有するものであればよく、例えば、単層構造を有するシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、2層構造を有するダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)等の多層構造を有するマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)等であればよい。また、カーボンナノチューブは、どのような製造方法により製造されたものであってもよく、例えば、アーク放電法、レーザ蒸発法、CVD法等により製造されたものであってもよい。
【0033】
カーボンナノチューブは、電気的特性、機械的特性、分散性等の物性の優位性を確保する観点から、繊維径が好ましくは1~200nm、より好ましくは1~150nm、特に好ましくは1~100nmのものであればよい。また、カーボンナノチューブの繊維長は、好ましくは0.1~2000μm、より好ましくは0.1~1000μm、特に好ましくは0.1~500μmであればよい。カーボンナノチューブのアスペクト比は、通常10~10000程度である。
【0034】
カーボンナノチューブを含浸させる水溶性ポリマーとしては、CNTを水中で分散安定化させ得るものであればよく、例えば、水溶性カチオン性ポリマー等を用いることができる。水溶性カチオンポリマーとしては、例えば、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物等であればよい。本開示において「第4級アンモニウム塩」とは、窒素原子の位置にプラス一価の電荷を有している化合物又は中和によって窒素原子の位置にプラス一価の電荷を生じさせる化合物を包含し、その具体例としては、第4級アンモニウムカチオンの塩、第3級アミンの中和塩、及び水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミン等が挙げられる。このような水溶性カチオンポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩(商品名:FPV1000L,センカ社製)等を用いることができる。
【0035】
カーボンナノチューブを含浸させる水としては、カーボンナノチューブ凝集体の品質維持の観点から、例えば、純水、蒸留水、イオン交換水等の精製水等が用いられ得る。
【0036】
カーボンナノチューブを水溶性ポリマーと水との混合溶媒(水溶性ポリマー水溶液)に含浸させる場合、水溶性ポリマー水溶液中の水溶性ポリマー濃度は、0.01~0.5質量%程度であればよい。水溶性ポリマー濃度が0.01質量%未満であると、得られるカーボンナノチューブ凝集体の凝集性が悪くなり、当該凝集体の崩壊や粉立ち(微粉化)による取扱い上の不具合が発生するおそれがあり、0.5質量%を超えると、当該凝集体が固くなり有効解繊指数の数値が悪化する(低下する)おそれがある。
【0037】
カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる方法としては、例えば、カーボンナノチューブに水溶性ポリマー及び/又は水を添加する方法であればよい。水溶性ポリマー及び/又は水の添加は、バッチ式により1工程で行ってもよいし、複数工程に分けて行ってもよいが、湿潤物を簡易に製造する観点からは、スクリューコンベアを用いて連続的に実施するのが好ましい。例えば、スクリューコンベアでカーボンナノチューブを輸送しながら、スクリューコンベアの途中から水溶性ポリマー及び/又は水を送液し、スクリューコンベア内でカーボンナノチューブと水溶性ポリマー及び/又は水とを混合してもよい。この混合方法は、連続的にかつ効率的にカーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる上で好ましく、カーボンナノチューブが実質的に均一に分散した湿潤物を得ることができる。スクリューコンベア内でカーボンナノチューブを輸送する速度は、特に限定されないが、例えば、0.25~1.0kg/minであればよい。
【0038】
水溶性ポリマー及び/又は水は、カーボンナノチューブ1質量部に対して0.1~10質量部の割合でカーボンナノチューブに添加されればよい。水溶性ポリマーの水溶液の添加割合が0.1質量部よりも少ないと、得られた湿潤物中に、カーボンナノチューブが水溶性ポリマー及び/又は水で含浸されていない箇所が存在するおそれがあり、後の剪断破砕工程において、適度な粒状物が得られなくなるおそれがある。一方、水溶性ポリマーの水溶液の添加割合が10質量部を超えると、カーボンナノチューブが水溶性ポリマー及び/又は水を吸収しきれずスラリー状態になってしまい、後の剪断破砕工程において破砕できなくなるおそれがある。好ましい水溶性ポリマー及び/又は水の添加割合は1.5~5質量部であり、より好ましくは2~5質量部であり、特に好ましくは2~3.7質量部である。
【0039】
カーボンナノチューブへの水溶性ポリマー及び/又は水の含浸により得られる湿潤物においては、室温における含水量がカーボンナノチューブ1質量部に対して1.5~5質量部であることが好ましく、より好ましくは2~3.7質量部である。湿潤物の含水量を上記範囲とすることにより、後述の剪断破砕工程において、所望の凝集体を得やすくなる。
【0040】
スクリューコンベアを用いてカーボンナノチューブに水溶性ポリマー及び/又は水を添加して含浸させる場合、その含浸に必要な時間は、通常、1~3分間程度であり、スクリューの回転数により適宜調整され得る。
【0041】
続いて、上記のようにして得られた湿潤物を剪断破砕して破砕物を得る。剪断破砕処理とは、剪断力を試料に加えて試料を微細化する処理をいう。剪断破砕に使用される装置としては、高速で回転する刃及び固定されたカッティングヘッドの刃によって、投入された湿潤物を細分化するものや、大きな相対速度を持つ2面のディスク間の間隙に起きる剪断力及び衝撃を利用して湿潤物の剪断と高速撹拌とを同時に行うような装置であればよい。剪断破砕に使用される具体的な装置としては、例えば、コミトロール、コロイドミル、電動ミル、マスコロイダー、フードプロセッサー、パルパーフィニッシャー、ロータリーカッターミル、ミクロマイスター、ナノチョッパー等が挙げられ、好ましくはロータリーカッターミルであり、より好ましくは多段式のロータリーカッターミルである。多段式のロータリーカッターミルは、湿潤物の破砕物の粒度やその凝集物の生成率等を勘案して、刃の枚数を適宜変更して切断効率を調節する上で有利に利用することができる。
【0042】
剪断破砕処理における装置の運転条件は、特に限定されないが、効率的な凝集物の生産の観点から設定することが好ましい。具体的には、剪断破砕処理時の装置中の温度は、例えば、20~90℃程度である。また、刃の回転速度は、350~600rpm程度、好ましくは500~600rpm程度である。
【0043】
次に、上記のようにして得られた破砕物を乾燥させて凝集物を得る。破砕物を乾燥する方法としては、例えば、蒸気乾燥、真空乾燥、熱風乾燥等の方法であればよいが、これらに限定されるものではない。乾燥時の温度としては、カーボンナノチューブを被覆する水溶性ポリマーの分解や変性を防止する観点から、蒸気乾燥の場合は200℃以下、真空乾燥の場合は150℃以下、熱風乾燥の場合は100℃以下であるのが好ましい。また、乾燥時の温度の下限値としては50℃が好ましい。乾燥温度が50℃未満になると、水の蒸発速度が著しく遅くなることで乾燥時間が長くなり、その結果として生産効率が低下してしまうおそれがある。また、乾燥工程を実施する前に、バット等に破砕物を広げドラフト等で常温、自然乾燥させると後の工程が容易となる。
【0044】
上述のようにして得られた凝集物に熱処理を施すことで、本実施形態に係るカーボンナノチューブ凝集体を製造することができる。凝集物に熱処理を施すことで、凝集物に含まれる金属触媒等の金属不純物等を除去することができ、精製されたカーボンナノチューブ凝集体を製造することができる。
【0045】
熱処理に付される凝集物の嵩密度は、0.1~0.2g/cmであり、好ましくは0.11g/cm~0.2g/cmであり、特に好ましくは0.12g/cm~0.15g/cmである。嵩密度が0.2g/cmを超えるものは、製造されるカーボンナノチューブ凝集体においてカーボンナノチューブが解れ難く、分散し難くなってしまうという問題がある。嵩密度が0.1g/cm未満であると、取扱性に劣るとともに、1回の熱処理に付される凝集物の量を増大させることが困難となり、カーボンナノチューブ凝集体の製造コストを増大させてしまうという問題がある。なお、凝集物の嵩密度は、JIS-K-6219に規定されるカーボンブラックの嵩密度の測定法に準拠して求められ得る。
【0046】
凝集物の有効解繊指数EDIは、50以上であり、好ましくは90以上であり、特に好ましくは95以上である。有効解繊指数EDIが50未満であると、製造されるカーボンナノチューブ凝集体においてカーボンナノチューブが解れ難く、分散性に劣ってしまう。
【0047】
凝集物の有効解繊指数EDIとは、カーボンナノチューブの解繊し易さ(解き易さ)を示す指標であって、例えば、以下のようにして求められ得る。
【0048】
凝集物を目開き2000μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(粒径2000μm以上の凝集物)の質量(第1質量A1)を測定する。次に、目開き2000μmの篩を通過した凝集物を目開き1000μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(目開き2000μmの篩を通過するが目開き1000μmの篩を通過しない凝集物,粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物)の質量(第2質量A2)を測定する。続いて、目開き1000μmを通過した凝集物を目開き500μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(目開き1000μmの篩を通過するが目開き500μmの篩を通過しない凝集物,粒径500μm以上1000μm未満の凝集物)の質量(第3質量A3)を測定する。最後に、目開き500μmの篩を通過した凝集物の質量(残部質量AR)を測定し、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3及び残部質量ARを加算して凝集物の総質量AT(=A1+A2+A3+AR)を求める。
【0049】
目開き1000μmの篩に残った凝集物と、直径2mmのガラスビーズとを目開き1000μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過した凝集物の質量AR2を測定する。同様に、目開き500μmの篩に残った凝集物と、直径2mmのガラスビーズとを目開き500μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過した凝集物の質量AR3を測定する。そして、目開き1000μmの篩を通過した凝集物の質量AR2の、第2質量A2に対する比(=AR2/A2)を、第1粉化率F1として求め、目開き500μmの篩を通過した凝集物の質量AR3の、第3質量A3に対する比(=AR3/A3)を、第2粉化率F2として求める。
【0050】
そして、上記のようにして求めた総質量AT、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3、第1粉化率F1及び第2粉化率F2を用い、下記式(1)により有効解繊指数EDI(質量%)を算出することができる。
【0051】
【数6】
【0052】
本実施形態において、上記凝集物の総質量ATに対する第1質量A1(凝集物を目開き2000μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(粒径2000μm以上の凝集物)の質量)の比が、10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましい。凝集物における粒径2000μm以上のものの比が相対的に大きく、上記第1質量A1の比が10%を超えると、製造されるカーボンナノチューブ凝集体においてカーボンナノチューブが解れ難くなるおそれがある。
【0053】
凝集物に熱処理を施す際の温度条件としては、2400~3000℃であればよく、2400~2800℃であるのが好ましい。熱処理の温度条件が2400℃未満であると、得られるカーボンナノチューブ凝集体における不純物含有量を効果的に低減させることが困難となったり、得られるカーボンナノチューブ凝集体の有効解繊指数EDIを効果的に増大させたりすることが困難となるおそれがある。
【0054】
凝集物に熱処理を施す時間としては、例えば、2~6時間であればよく、好ましくは3~4時間であればよい。また、凝集物に熱処理を施す際の圧力条件としては、例えば、30~100Paであればよく、好ましくは30~50Paであればよい。
【0055】
上述した製造方法によれば、触媒等の金属不純物の含有量が低く(不純物含有量が0.1質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.02質量%以下)、かつカーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体を製造することができる。
【0056】
特に、本実施形態においては、触媒等の金属不純物を除去するための熱処理に供される凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、当該凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であることで、触媒等の金属不純物の含有量が低く、カーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体を製造することができる。したがって、凝集物の嵩密度及び有効解繊指数EDIを求め、当該嵩密度(0.1~0.2g/cm)及び有効解繊指数EDI(50以上)を熱処理に供される凝集物の指標として、当該凝集物の評価をすることもできる。同様に、カーボンナノチューブ凝集体の嵩密度及び有効解繊指数EDIを求め、当該嵩密度(0.1~0.2g/cm)及び有効解繊指数EDI(50以上)を指標として、カーボンナノチューブ凝集体の評価をすることもできる。すなわち、嵩密度が0.1~0.2g/cmの範囲内であり、かつ有効解繊指数EDIが50以上の凝集物であれば、当該凝集物に熱処理を施すことで、触媒等の金属不純物の含有量が低く、カーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体を製造可能と評価することができる。また、嵩密度が0.1~0.2g/cmの範囲内であり、かつ有効解繊指数EDIが50以上のカーボンナノチューブ凝集体であれば、触媒等の金属不純物の含有量が低く、カーボンナノチューブが解れ易いものであると評価することができる。
【0057】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0058】
以下、実施例等をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0059】
[Sample 1]
カーボンナノチューブ1kg(商品名:K-Nanos 100P,Kumho社製)を水溶性ポリマー(ポリメタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩,商品名:FPV1000L,センカ社製)の水溶液2kg(水溶性ポリマー濃度:10質量%)に含浸させ、湿潤物を得た。当該湿潤物に対しカッターミルにより剪断破砕処理を施して破砕物を得た。得られた破砕物を熱風乾燥することにより、凝集物を得た。
【0060】
得られた凝集物の嵩密度(g/cm)をJIS-K-6219に規定されるカーボンブラックの嵩密度の測定法に準拠して求めた。また、上記凝集物における不純物含有量(質量%)をJIS-K-6218-2に規定されるカーボンブラックの灰分の測定法に準拠して求めた。
【0061】
また、当該凝集物の有効解繊指数EDIを以下のようにして求めた。
凝集物を目開き2000μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(粒径2000μm以上の凝集物)の質量(第1質量A1)を測定した。次に、目開き2000μmの篩を通過した凝集物を目開き1000μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(目開き2000μmの篩を通過するが目開き1000μmの篩を通過しない凝集物,粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物)の質量(第2質量A2)を測定した。続いて、目開き1000μmを通過した凝集物を目開き500μmの篩にかけ、当該篩に残った凝集物(目開き1000μmの篩を通過するが目開き500μmの篩を通過しない凝集物,粒径500μm以上1000μm未満の凝集物)の質量(第3質量A3)を測定した。最後に、目開き500μmの篩を通過した凝集物の質量(残部質量AR)を測定し、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3及び残部質量ARを加算して凝集物の総質量AT(=A1+A2+A3+AR)を求めた。
【0062】
目開き1000μmの篩に残った凝集物と、直径2mmのガラスビーズとを目開き1000μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過した凝集物の質量AR2を測定した。同様に、目開き500μmの篩に残った凝集物と、直径2mmのガラスビーズとを目開き500μmの篩に入れて蓋をし、振幅0.5mm、振動時間1分の条件で当該篩を振とうさせ、篩を通過した凝集物の質量AR3を測定した。そして、目開き1000μmの篩を通過した凝集物の質量AR2の、第2質量A2に対する比(=AR2/A2)を、第1粉化率F1として求め、目開き500μmの篩を通過した凝集物の質量AR3の、第3質量A3に対する比(=AR3/A3)を、第2粉化率F2として求めた。
【0063】
そして、上記のようにして求めた総質量AT、第1質量A1、第2質量A2、第3質量A3、第1粉化率F1及び第2粉化率F2を用い、下記式(1)により有効解繊指数EDI(質量%)を算出した。
【0064】
【数7】
【0065】
さらに、上記凝集物の分散度を以下のようにして求めた。
自公転式ミキサー(商品名:あわとり練太郎ARV-310,シンキー社製)を用い、溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に上記凝集物を分散させ(自公転式ミキサーの運転条件:回転数;2000rpm,減圧設定;3.0hPa,分散時間;3.0min)、ヘグマン式粒度計(粒ゲージ232IV型,エリクセン社製)を用いて分散度(μm)を測定した。
【0066】
上記のようにして得られた凝集物を黒鉛るつぼに入れ、当該黒鉛るつぼを静止型リフロー炉に入れ、70℃/hrの昇温速度により2800℃に昇温し、2800℃で4時間加熱した。このようにして、カーボンナノチューブ凝集体を得た。
【0067】
このようにして得られたカーボンナノチューブ凝集体の嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を、上記凝集物と同様の方法により求めた。結果を表1に示す。
【0068】
[Sample 2]
カーボンナノチューブ1kg(商品名:TC-2000,戸田工業社製)を純水2kgに含浸させて湿潤物を得た以外は、Sample 1と同様にして凝集物及びカーボンナノチューブ凝集体を製造し、当該凝集物及びカーボンナノチューブ凝集体の嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
[Sample 3]
カーボンナノチューブ50g(商品名:K-Nanos 100P,Kumho社製)をそのまま黒鉛るつぼに入れ、当該黒鉛るつぼを静止型リフロー炉に入れて加熱した以外は、Sample 1と同様にして、加熱前及び加熱後のカーボンナノチューブの嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0070】
[Sample 4]
カーボンナノチューブ120g(商品名:TC-2000,戸田工業社製)をそのまま黒鉛るつぼに入れ、当該黒鉛るつぼを静止型リフロー炉に入れて加熱した以外は、Sample 1と同様にして、加熱前及び加熱後のカーボンナノチューブの嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0071】
[Sample 5]
黒鉛るつぼに入れた凝集物を、静止型リフロー炉にて70℃/hrの昇温速度により2000℃に昇温し、2000℃で4時間加熱した以外は、Sample 1と同様にして、凝集物及びカーボンナノチューブ凝集体の嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0072】
[Sample 6]
黒鉛るつぼに入れた凝集物を、静止型リフロー炉にて70℃/hrの昇温速度により2000℃に昇温し、2000℃で4時間加熱した以外は、Sample 2と同様にして、凝集物及びカーボンナノチューブ凝集体の嵩密度(g/cm)、有効解繊指数EDI(質量%)、不純物含有量(質量%)及び分散度(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示す結果から、嵩密度が0.1~0.2g/cmの範囲内であり、かつ有効解繊指数EDIが50以上の凝集物に所定条件(加熱温度:2800℃)の熱処理を施すことで、触媒等の金属不純物の含有量が低く、カーボンナノチューブが解れ易いカーボンナノチューブ凝集体を製造可能であることが確認された。また、Sample 1~Sample 4の結果から、カーボンナノチューブの凝集物に熱処理を施すことで、1回の熱処理に供される試料の量を3倍以上に増大させることができるため、カーボンナノチューブ凝集体を効率よく、低コストで製造することができると考察される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ凝集体であって、
前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、
前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cm 嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、
前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体。
【数1】
【請求項2】
前記有効解繊指数EDIが、90以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ凝集体の分散度が、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項4】
前記総質量ATに対する前記第1質量A1の比が、10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ凝集体は、カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させた湿潤物を破砕し、乾燥させたカーボンナノチューブ凝集物を2400~3000℃の温度条件下加熱して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項6】
カーボンナノチューブ凝集体を製造する方法であって、
カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を調製する工程と、
前記凝集物に熱処理を施す工程と
を含み、
前記熱処理は、前記凝集物を2400~3000℃の温度条件下で加熱する処理であり、
前記凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、
前記凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であり、
前記有効解繊指数EDIは、前記凝集物の総質量ATと、前記凝集物のうちの粒径2000μm以上の凝集物の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満の凝集物の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。
【数2】
【請求項7】
前記カーボンナノチューブを凝集させる工程は、前記カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる工程と、前記水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させた前記カーボンナノチューブを乾燥させる工程とを含むことを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は、カーボンナノチューブ凝集体であって、前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cm 嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ凝集体であって、
前記カーボンナノチューブ凝集体の不純物含有量は、0.1質量%以下であり、
前記カーボンナノチューブ凝集体は、0.1~0.2g/cmの嵩密度及び50以上の有効解繊指数EDIを有し、
前記有効解繊指数EDIは、前記カーボンナノチューブ凝集体の総質量ATと、前記カーボンナノチューブ凝集体のうちの粒径2000μm以上のカーボンナノチューブ凝集体の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満のカーボンナノチューブ凝集体を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体。
【数1】
【請求項2】
前記有効解繊指数EDIが、90以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ凝集体の分散度が、100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項4】
前記総質量ATに対する前記第1質量A1の比が、10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ凝集体。
【請求項5】
カーボンナノチューブ凝集体を製造する方法であって、
カーボンナノチューブを凝集させて凝集物を調製する工程と、
前記凝集物に熱処理を施す工程と
を含み、
前記熱処理は、前記凝集物を2400~3000℃の温度条件下で加熱する処理であり、
前記凝集物の嵩密度が0.1~0.2g/cmであり、
前記凝集物の有効解繊指数EDIが50以上であり、
前記有効解繊指数EDIは、前記凝集物の総質量ATと、前記凝集物のうちの粒径2000μm以上の凝集物の第1質量A1と、粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物の第2質量A2と、粒径500μm以上1000μm未満の凝集物の第3質量A3と、前記粒径1000μm以上2000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第1粉化率F1と、前記粒径500μm以上1000μm未満の凝集物を粉化させて求められる第2粉化率F2とを用いて、下記式(1)により算出される値であることを特徴とするカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。
【数2】
【請求項6】
前記カーボンナノチューブを凝集させる工程は、前記カーボンナノチューブを水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させる工程と、前記水溶性ポリマー及び/又は水に含浸させた前記カーボンナノチューブを乾燥させる工程とを含むことを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブ凝集体の製造方法。