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  • 特開-ガス系消火設備 図1
  • 特開-ガス系消火設備 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016674
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ガス系消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/00 20060101AFI20240131BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A62C37/00
A62C35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118970
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀晃
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB08
2E189BC01
2E189BD06
2E189GA01
(57)【要約】
【課題】安全なガス系消火設備を提供する。
【解決手段】防護区画1内の人の存在を認識する装置と、前記防護区画1内に消火剤ガスを放出する手段と、前記防護区画1内に人が存在するときには前記防護区画1内への消火剤ガスの放出を禁止する起動装置16とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス系消火設備の起動用スイッチを所定の秒以上の時間押すことで起動して防護区画に消火剤ガスを放出する、ガス系消火設備。
【請求項2】
前記所定の秒は2秒である、請求項1に記載のガス系消火設備。
【請求項3】
防護区画内の人の存在を認識する装置と、前記防護区画内に消火剤ガスを放出する手段と、前記防護区画内に人が存在するときには前記防護区画内への消火剤ガスの放出を禁止する起動装置とを備えた、ガス系消火設備。
【請求項4】
前記人の存在を認識する装置は、前記防護区画内に設けられたカメラ、前記防護区画内に設けられた人感センサ、前記防護区画の入退出管理システムである、請求項3に記載のガス系消火設備。
【請求項5】
火災感知器が火災を検知すると前記防護区画内に人が存在しても前記防護区画内に消火剤ガスを放出する、請求項3または4に記載のガス系消火設備。
【請求項6】
消火剤ガスは窒素を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス系消火設備。
【請求項7】
消火剤ガスは窒素と二酸化炭素の混合ガスであり、好ましくは窒素の体積割合が二酸化炭素の体積割合よりも大きい、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス系消火設備。
【請求項8】
防護区画からの人の退出を管理し、退出時に認証を求めるドアと、前記防護区画内に消火剤ガスを放出する手段と、を備え、前記防護区画内に消火剤が放出されると前記ドアは退出時認証を求めることなく人が前記防護区画から退出することが可能である、ガス系消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス系消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス系消火設備は、たとえば、特開2016-202734号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-202734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス系消火設備においては、誤放出を防ぐことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ガス系消火設備の起動用スイッチを所定の秒以上の時間押すことで起動して防護区画に消火剤ガスを放出する。
【0006】
好ましくは、前記所定の秒は2秒である。
【0007】
ガス系消火設備は、防護区画内の人の存在を認識する装置と、前記防護区画内に消火剤ガスを放出する手段と、前記防護区画内に人が存在するときには前記防護区画内への消火剤ガスの放出を禁止する起動装置とを備える。
【0008】
好ましくは、前記人の存在を認識する装置は、前記防護区画内に設けられたカメラ、前記防護区画内に設けられた人感センサ、前記防護区画の入退出管理システムである。
【0009】
好ましくは、火災感知器が火災を検知すると前記防護区画内に人が存在しても前記防護区画内に消火剤ガスを放出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。
図2図2は、図1中のII-II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従ったガス系消火設備の模式図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図である。
【0012】
ガス系消火設備は、防護区画1内へ消火剤ガスを送る配管3と、防護区画1に接続されて消火剤ガスを排出するためのダクト2とを備える。
【0013】
防護区画1は、ビルなどの建物に設けられる部屋である。電子機器が設けられている部屋では、消火のために水を用いることができず、消火剤ガスを用いて消火を行う。噴射ノズル4から消火ガス剤を防護区画1に放出して、不活性の消火剤ガスを防護区画1に充満させて酸素濃度を減少させることで消火することが可能である。消火剤ガスとしては、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスおよびハロゲン系のガスが用いられる。
【0014】
ダクト2は、防護区画1の消火剤ガスを防護区画1から放出するためのガス経路である。ダクト2は、中空であり角型および丸型のいずれであってもよい。防護区画1の避圧口1aでダクト2の端部には、ダンパ12が設けられており、ダンパ12が開閉することでダクト2と防護区画1とが連通および遮断される。ダンパ12は実線で記載されている位置から点線で記載されている位置まで回動可能である。この実施の形態では防護区画1に一本のダクト2のみが設けられているが、複数本のダクト2が設けられていてもよい。
【0015】
ダクト2は、入口(避圧口1a)から出口13まで延びている。配管3は、防護区画1外に配置されているガス貯蔵容器5から防護区画1へ消火剤ガスを送るための経路である。ガス貯蔵容器5には、減圧弁(圧力調整器)50が設けられており、容器弁としての減圧弁50を通過した消火剤ガスが集合管、配管3および噴射ノズル4を経由して防護区画1へ放出される。
【0016】
噴射ノズル4から防護区画1内に消火剤ガスが放出されると防護区画1内の消火剤ガスの濃度が高くなり、同時に防護区画1内の圧力も高くなる。防護区画1内の過剰な圧力を防止するために、所定の圧力以上となると避圧口1aのダンパ12が開いて過剰な圧力をダクト2へ逃がすことができる。
【0017】
複数のガス貯蔵容器5に集合管17が接続されている。集合管17には、各々のガス貯蔵容器5から消火剤ガスが供給される。集合管17、減圧弁50またはガス貯蔵容器5のいずれかには、ガス貯蔵容器5から集合管17への消火剤ガスの供給を制御する制御部15が接続されている。
【0018】
制御部15には、起動装置16が接続されている。起動装置16は、たとえば手動のスイッチを含む。たとえば押しボタンにより構成されるスイッチが操作されることで起動装置16が制御部15を起動する。
【0019】
制御部15は、複数の本のガス貯蔵容器5の減圧弁を同時に開弁してもよく、別々に開弁してもよい。起動装置16を人が操作して消火剤ガスの放出が行われるのは手動方式である。これに対して火災感知器21の作動により消火剤ガスの放出が行われるのは自動方式である。
【0020】
火災感知器21は、防護区画1内に設けられる。火災感知器21は防護区画1内の温度が高くなるか、さらには、煙を感知するか、少なくともいずれかによって起動する。その場合には火災感知器21は火災であることの信号を制御部15に伝達する。信号が伝達された制御部は、減圧弁50を開放することで噴射ノズル4から消火剤ガスを放出する。
【0021】
検出装置22は、防護区画1内に設けられる。検出装置22は、防護区画1内に人が存在することを検出するための装置である。検出装置22として、たとえば、カメラ(4Kカメラ、8Kカメラなど)、人感センサなどがある。
【0022】
防護区画1にはドア23が設けられている。ドア23から人が防護区画1内に入ることが可能である。ドア23には認証装置が設けられており、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1内に入ることができる。さらに、所定の認証手続を受けたものがドア23を経由して防護区画1から出ることができる。なお、ドア23の認証装置は無くてもよい。
【0023】
防護区画1内に人が残っている状態において噴射ノズル4から防護区画1内に消火剤ガスが放出されると防護区画1内の酸素が薄くなり人体に影響を与える。ガス系消火設備のメンテナンス時には火災で無い場合であっても防護区画1内に消火剤ガスを放出することがある。この場合には、安全を確認した上で起動装置16に設けられたボタンを押すことによって、制御部15を起動して消火剤ガスを防護区画1内に放出する。安全確認が不十分で、人が防護区画1内に存在する状態において消火剤ガスが放出されることがあり、これを防止するために、本発明者は、以下の方策を考えた。
【0024】
まず、警備システム、監視システムなどのセキュリティーと起動装置16とを連動される。たとえば、ドア23による入退出管理をして、人が防護区画1内に存在するときには起動装置16は制御部15に起動信号を伝達しない。これにより、人が防護区画1内に存在する場合には防護区画1内に消火剤ガスが放出されない。
【0025】
ドア23による入退出管理の方法として、カードキーを用いた方法、入室者の指紋を用いた方法、入室者の顔認証を用いた方法、ドア23に設けられたキーボードにパスワードを入力する方法がある。
【0026】
検出装置22を用いて防護区画1内に人が存在するかを検出して、人が存在するときには起動装置16は制御部15起動信号を伝達しない。これにより、人が防護区画1内に存在する場合には防護区画1内に消火剤ガスが放出されない。
【0027】
たとえば、火災時には火災感知器21が火災を検知する。その場合、以下のようにガス系消火設備の起動装置16を動作させることが可能である。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
火災感知器21が火災を検知した場合には、早期に火災を消火する必要があるため、防護区画1内に人が存在する場合であっても起動装置16の起動を可能とする。噴射ノズル4から消火剤ガスを放出させる。これにより防護区画1内の酸素濃度を低下させて鎮火する。防護区画1内の人は音響装置または鳴動装置などにより火災であることを知らされる。これによりドア23から防護区画1外へ退出することが可能である。
【0032】
火災時には速やかな避難が必要となるため、ドア23に設けられた退出のための認証手段を無効とすることができる。これにより、認証のための時間を使うことなく人が防護区画から退出することが可能となる。
【0033】
さらに、メンテナンス時であって防護区画1内に人が存在する場合であっても誤って防護区画1内に消火剤ガスが放出される場合がある。この場合でも早期に人が防護区画1から退出する必要があるため認証手段を無効とすることができる。
【0034】
メンテナンスによって噴射ノズル4から消火剤ガスを放出する場合には、火災感知器21によって火災は検出されない。その場合、たとえば、以下のようにガス系消火設備の起動装置16を動作されることが可能である。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
メンテナンス時には、防護区画1内に人が存在する場合には、噴射ノズル4から消火剤ガスを放出する必要(必然性)が無いため、起動装置16の起動を不可とする。これにより、防護区画1から人を退避させて安全を確保した上で、防護区画1内に消火剤ガスを放出することができる。
【0039】
さらに、安全を確保するために、起動装置16に設けられたスイッチおよび/またはボタンを2アクションとする、長押しさせる、回しボタンとする、などで安全性を高めることができる。長押しは2秒以上、好ましくは3秒以上押すことである。
【0040】
2アクションとは、ボタンを2つ設けて二つのボタンを同時に押すこと、または、ボタン2つ設けて一方のボタンを押してから、所定の時間内に他方のボタンを押すこと、等を意味している。
【0041】
長押しとは、所定の時間以上、ボタンを押すことをいう。まわしボタンとは、所定の角度回すことによってスイッチが入るボタンをいう。
【0042】
さらに、安全なガス(消火剤)への置き換えを行うことで、防護区画1内に消火剤ガスが放出されても人体への悪影響を防止できる。たとえば、消火剤ガスとしてのCOをN,FM200等の人体に対して安全なガスへ置き換える。ただし、Nの場合は、ガス量が増加する為、既存のボンベ庫に収まるよう大型容器(83Lから130L/150Lへの変更)、高圧化(30MPaから40/50MPaへの変更)が必要である。また、FM-200は、流量が多い為(配管サイズがUP為)、既存の配管が使用できるよう放出時間を延長することが必要である。たとえば、現在の10秒放射を30秒放射に変更することが可能である。
【0043】
の消火剤量を減らす為、新たなガスとしてNに消火性能を高める為、CO濃度を最大レベルまで高めたNとCOのブレンドガス、例えばIG-901等(N:90体積%、CO:10体積%等)を用いることが可能である。
【0044】
(請求項1)ガス系消火設備の起動装置16のスイッチを所定の秒以上の時間押すことで起動して防護区画1に消火剤ガスを放出する、ガス系消火設備。
【0045】
(請求項2)
前記所定の秒は2秒である、請求項1に記載のガス系消火設備。
【0046】
(請求項3)
防護区画1内の人の存在を認識する装置と、前記防護区画1内に消火剤ガスを放出する手段と、前記防護区画1内に人が存在するときには前記防護区画1内への消火剤ガスの放出を禁止する起動装置16とを備えた、ガス系消火設備。
【0047】
(請求項4)
前記人の存在を認識する装置は、前記防護区画1内に設けられたカメラ、前記防護区画1内に設けられた人感センサ、前記防護区画1の入退出管理システムである、請求項3に記載のガス系消火設備。
【0048】
(請求項5)
火災感知器が火災を検知すると前記防護区画内に人が存在しても前記防護区画内に消火剤ガスを放出する、請求項3または4に記載のガス系消火設備。
【0049】
(請求項6)
消火剤ガスは窒素を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のガス系消火設備。
【0050】
(請求項7)
前記消火剤ガスは窒素と二酸化炭素の混合ガスであり、好ましくは窒素の体積割合が二酸化炭素の体積割合よりも大きい、請求項1から6のいずれか1項に記載のガス系消火設備。
【0051】
(請求項8)
防護区画1からの人の退出を管理し、退出時に認証を求めるドアと、防護区画内に消火剤ガスを放出する手段と、を備え、防護区画内に消火剤が放出されると前記ドアは退出時認証を求めることなく人が防護区画1から退出することが可能である、ガス系消火設備。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 防護区画、1a 避圧口、2 ダクト、3 配管、4 噴射ノズル、5 ガス貯蔵容器、12 ダンパ、13 出口、15 制御部、16 起動装置、17 集合管、21 火災感知器、22 監視カメラ、23 ドア、50 減圧弁。
図1
図2