(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166745
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】カップ付き衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/12 20060101AFI20241122BHJP
A41C 3/00 20060101ALI20241122BHJP
A41C 3/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A41C3/12 A
A41C3/00 B
A41C3/12 C
A41C3/08
A41C3/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083065
(22)【出願日】2023-05-19
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】上原 千尋
(72)【発明者】
【氏名】中橋 侑紀
(72)【発明者】
【氏名】堀川 徹
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA12
3B131AA17
3B131AA22
3B131AB03
3B131AB06
3B131AB10
3B131BA04
3B131BA08
3B131BA11
3B131BA12
3B131BA14
3B131BA21
3B131BA41
3B131BB01
3B131BB12
3B131CA02
3B131CA28
3B131DA25
(57)【要約】
【課題】着用時の快適性を損なうことなく、装着位置のずれが抑制できる安価でファッション性の高いカップ付き衣類を提供する。
【解決手段】前面生地2Aと前記前面生地2Aに接合されカップ収容部5を構成する切替え生地2Bとを備えた前身頃2と、後身頃3とが脇部で接合された筒状のカップ付き衣類1であって、前記前身頃2を構成する身生地の身幅方向の伸縮率が、前記後身頃3を構成する身生地の身幅方向の伸縮率より大に設定されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面生地と前記前面生地に接合されカップ収容部を構成する切替え生地とを備えた前身頃と、後身頃とが脇部で接合された筒状のカップ付き衣類であって、
前記前身頃を構成する身生地の身幅方向の伸縮率が、前記後身頃を構成する身生地の身幅方向の伸縮率より大に設定されているカップ付き衣類。
【請求項2】
互いに交差する二方向の伸縮率が異なる身生地で前記前身頃と前記後身頃が構成され、前記前身頃を構成する身生地は身幅方向の伸縮率が大きくなるように配され、前記後身頃を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなるように配されている請求項1記載のカップ付き衣類。
【請求項3】
前記切替え生地の下端縁はバージスラインに沿って前記前面生地に接合され、前記切替え生地の上端縁は前記前面生地から遊離した状態で前記前面生地の上端縁の近傍まで延在する請求項1記載のカップ付き衣類。
【請求項4】
肩紐を装着または離脱するため、前記前身頃に取付けた左右一対の前側タブの取付け間隔が、前記後身頃に取付けた左右一対の後ろ側タブの取付け間隔よりも広くなるように設定され、
前記前側タブが、前記前面生地と前記切替え生地の重畳部位に取付けられている請求項1記載のカップ付き衣類。
【請求項5】
前記身生地は、裁断端縁が解れ防止処理不要の切放し生地で構成されている請求項1から4の何れかに記載のカップ付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面生地と前記前面生地に接合されカップ収容部を構成する切替え生地とを備えた前身頃と、後身頃とが脇部で接合された筒状のカップ付き衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジャーやハーフトップといったカップ付き衣類において、ファッション性を考慮し、肩紐の取り外しが可能なカップ付き衣類が提案されている。
しかし、肩紐をなくしてチューブトップタイプにすると、着用時や動作時に装着位置がずれるという不具合が発生する。
【0003】
そこで、特許文献1には、肩紐を着脱可能に構成しながらも、動作等によるズレを防止し、着用中にズレを直す手間なく、バストシルエットを美しく保つことができる、カップ部を有する衣類が提案されている。
【0004】
当該カップ部を有する衣類は、一対のカップ部およびバック布を備え、前記バック布は、前記カップ部の脇側に配置され、前記カップ部は、伸縮部材と線状もしくは帯状の芯材とを含み、前記芯材の端部の少なくとも一方が前記カップ部のバージスラインに対応する部分にあり、前記芯材と前記カップ部の下縁部との間の領域に、前記伸縮部材が配置されており、前記芯材が、前記カップ部の前中心側および脇側の2箇所に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたカップ付き衣類は、肩紐が着脱可能に配され、ずれを抑制すべく、カップ部に特有の伸縮部材と芯材が配されているため、ハーフトップタイプのブラジャーのような着用時の快適性が損なわれ、芯材などの部品点数の増加により製品コストが上昇するという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、着用時の快適性を損なうことなく、装着位置のずれが抑制できる安価でファッション性の高いカップ付き衣類を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるカップ付き衣類の第一の特徴構成は、前面生地と前記前面生地に接合されカップ収容部を構成する切替え生地とを備えた前身頃と、後身頃とが脇部で接合された筒状のカップ付衣類であって、前記前身頃を構成する身生地の身幅方向の伸縮率が、前記後身頃を構成する身生地の身幅方向の伸縮率より大に設定されている点にある。
【0009】
着用者のバストを被覆する前身頃は、カップ収容部に収容されたカップによってバストの保形性を保ちながら、バストの膨出の程度に応じて適度に身幅方向に伸長することで良好にフィットする。そして、着用者の背部を被覆する後身頃は、身幅方向に然程伸長することなく、背部にフィットした状態を保ちながら前身頃の身幅方向への伸長または収縮を許容することとなり、快適性を損なうことなく着用位置のずれが抑制できる。そして、このようなカップ付き衣類は、別途の芯材などの部品を用いる必要が無いので安価に製造できる。
【0010】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、互いに交差する二方向の伸縮率が異なる身生地で前記前身頃と前記後身頃が構成され、前記前身頃を構成する身生地は身幅方向の伸縮率が大きくなるように配され、前記後身頃を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなるように配されている点にある。
【0011】
着用者のバストを被覆する前身頃は、カップ収容部に収容されたカップによってバストの保形性を保ちながら、バストの膨出の程度に応じて適度に身幅方向に伸長することで良好にフィットする。そして、着用者の背部を被覆する後身頃は、身幅方向に然程伸長することなく、背部にフィットした状態を保ちながら前身頃の身幅方向への伸長または収縮を許容することとなり、快適性を損なうことなく着用位置のずれが抑制できる。さらに、後身頃を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなるように配されているため、着用者に背中を丸めたり伸ばしたりする姿勢変動があっても、それに伴って着丈方向に後身頃が伸縮するため、当該姿勢変動が生じても着用状態がずれることが抑制される。
【0012】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記切替え生地の下端縁はバージスラインに沿って前記前面生地に接合され、前記切替え生地の上端縁は前記前面生地から遊離した状態で前記前面生地の上端縁の近傍まで延在する点にある。
【0013】
切替え生地の下端縁はバージスラインに沿って前面生地に接合されているので、カップがカップ収容部に保持された状態で着用者のバストが安定的に保持される。さらに、切替え生地の上端縁が前面生地から遊離した状態で前面生地の上端縁の近傍まで延在するので、着用者のバストの上部領域が、前面生地と切替え生地とで重畳配置された前身頃で安定的に押圧被覆される。
【0014】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、肩紐を装着または離脱するため、前記前身頃に取付けた左右一対の前側タブの取付け間隔が、前記後身頃に取付けた左右一対の後ろ側タブの取付け間隔よりも広くなるように設定され、前記前側タブが、前記前面生地と前記切替え生地の重畳部位に取付けられている点にある。
【0015】
前側タブと後ろ側タブに肩紐を装着した状態では、カップ付き衣類の着用状態のずれが良好に抑制されるばかりでなく、左右一対の前側タブの取付け間隔が、後身頃に取付けた左右一対の後ろ側タブの取付け間隔よりも広くなるように設定されているのでファッション性が向上する。例えばジャケット着用時に肩紐がジャケットに隠れるため見栄えの良い状態となる。また、前側タブが前面生地と切替え生地の重畳部位に取付けられるので、安定した状態で肩紐が保持される。
【0016】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記身生地は、裁断端縁が解れ防止処理不要の切放し生地で構成されている点にある。
【0017】
身生地に切放し生地を用いることで、裁断端縁にパイピング処理などの後加工を施す必要がなくなるので、シンプルで着心地の良いカップ付き衣類を実現できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明によれば、着用時の快適性を損なうことなく、装着位置のずれが抑制できる安価でファッション性の高いカップ付き衣類を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は本発明によるカップ付き衣類の表側正面視の説明図、(b)は同表側背面視の説明図である。
【
図2】(a)は同裏側正面視の説明図、(b)はカップの形状の説明図である。
【
図3】(a)は前身頃の前面生地の裁断図、(b)は前身頃の切替え生地の裁断図、(c)は後身頃の身生地の裁断図、(d)は前身頃の前面生地と後身頃の身生地とを接合した状態の説明図である。
【
図4】(a)は肩紐を取り外してチューブトップタイプとした本発明によるカップ付き衣類の表側正面視の説明図、(b)は同表側背面視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるカップ付き衣類を説明する。
図1(a)にはカップ付き衣類の表側正面視の説明図、
図1(b)には同表側背面視の説明図が示されている。また、
図2(a)には同裏側正面視の説明図、
図2(b)にはカップの説明図が示されている。
【0021】
図1(a),(b)および
図2(a)には、カップ付き衣類1の一例であるハーフトップブラジャー1が示されている。ハーフトップブラジャー1は、略矩形形状の前身頃2(
図3(a)参照。)と後身頃3(
図3(c)参照。)と、が脇部の接合部6で接合された筒状(
図3(d)参照。)に形成されている。従って、着用者のバスト周りの締付力は、前身頃2と後身頃3の生地の伸縮性に委ねられ、多段のホック金具などを用いた特段の締付力の調整機構は備えていない。
【0022】
前身頃2は、前面生地2Aと前面生地2Aに接合されることによりカップ収容部5を構成する切替え生地2Bとを備えている。切替え生地2Bの下端縁21はカップ4の下端の形状であるバージスラインに沿う形状に裁断されて、当該下端縁21が前面生地2Aの下部領域の接合部6Lで接合される。さらに、切替え生地2Bの上部領域はカップ4の上端に沿う二つに連なる山形状となるように前面生地2Aの上部領域に接合部6Uで接合されている。
【0023】
切替え生地2Bの左右端部には、カップ収容部5にカップ4を挿入し、或いは、引抜くために前面生地2Aから遊離した開口5R,5Lが形成されている。さらに、切替え生地2Bの上端縁22は、前面生地2Aから遊離した状態で前面生地2Aの上端縁23の近傍まで延在している。
【0024】
前身頃2と後身頃3は、互いに交差(直交)する二方向の伸縮率が異なる身生地で構成され、前身頃2を構成する身生地は身幅方向の伸縮率が大きくなるように配され、後身頃3を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなるように配されている。
【0025】
具体的に、身生地はナイロン糸とポリエステル糸とポリウレタン糸とで編成したフライス編の切放し生地で構成されている。フライス編を含むヨコ編地は、コース方向への伸縮率がコース方向と交差(直交)するウェール方向への伸縮率より大きな伸縮率を示す。
【0026】
図3(a)~(c)に示すように、本実施形態では、前身頃2を構成する前面生地2Aおよび切替え生地2Bはコース方向が身幅方向となるように配置され、後身頃3はウェール方向が身幅方向となるように配されている。その結果、前身頃2を構成する身生地は身幅方向の伸縮率が大きくなり、後身頃3を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなる。
【0027】
すなわち、着用者のバストを被覆する前身頃2は、カップ収容部5に収容されたカップ4によってバストの保形性を保ちながら、バストの膨出の程度に応じて適度に身幅方向に伸長することで良好にフィットする。そして、着用者の背部を被覆する後身頃3は、身幅方向に然程伸長することなく、背部にフィットした状態を保ちながら前身頃2の身幅方向への伸長または収縮を許容することとなり、快適性を損なうことなく着用位置のずれが抑制できる。さらに、後身頃3を構成する身生地は着丈方向の伸縮率が大きくなるように配されているため、着用者に背中を丸めたり伸ばしたりする姿勢変動があっても、それに伴って着丈方向に後身頃が伸縮するため、当該姿勢変動が生じても着用状態がずれることが抑制される。
【0028】
なお、本発明によるカップ付き衣類は、前身頃2を構成する身生地の身幅方向の伸縮率が、後身頃3を構成する身生地の身幅方向の伸縮率より大に設定されていればよく、前身頃2を構成する生地と後身頃3を構成する生地の双方のコース方向がともに身幅方向に沿うように配されていてもよい。
【0029】
この場合でも、着用者のバストを被覆する前身頃2は、カップ収容部5に収容されたカップ4によってバストの保形性を保ちながら、バストの膨出の程度に応じて適度に身幅方向に伸長することで良好にフィットする。そして、着用者の背部を被覆する後身頃3は、身幅方向に然程伸長することなく、背部にフィットした状態を保ちながら前身頃の身幅方向への伸長または収縮を許容することとなり、快適性を損なうことなく着用位置のずれが抑制できる。そして、このようなカップ付き衣類は、別途の芯材などの部品を用いる必要が無いので安価に製造できる。
【0030】
以上の説明で、「接合」との用語は、生地同士を接着剤で接着する態様を意味する。接着剤としてホットメルト接着剤、例えば湿気硬化性の反応型ホットメルト接着剤が好適に用いられる。この場合、接着剤の120℃溶融粘度は8000mPa・sから22000mPa・sであることが好ましく、13000mPa・sから19000mPa・sであることがさらに好ましい。
【0031】
例えば、120℃に加熱した液状のホットメルト接着剤を、ギアポンプを備えたノズルから生地に設定された幅数mmの帯状の塗布領域に、所定の塗布パターンで塗布した後、所定の温度に調節された押圧具を用いて所定圧力で押圧することにより接合される。所定塗布パターンは、特に限定されるものではなく、塗布領域に沿って鋸刃形状を含む三角波形状の塗布パターンやサイン波形状の塗布パターンが採用できる。また、これらのパターンは連続塗布であってもドット状の塗布であってもよい。
【0032】
なお、接着剤としては、湿気硬化型ホットメルト樹脂以外に、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。
【0033】
図2(b)に示すように、カップ収容部5に収容されるカップ4は、着用者の左右のバストに対応して平面視が略円形状の左右一対のカップ部4A,4Bを備え、左右のカップ部4A,4Bが中央部で連結された一体物で構成されている。
【0034】
保護用の生地で両面を挟み込んだ軟質の樹脂材を、成型用の凸型と凹型に挟んで加熱状態で加圧することで、中央部が膨出するカップ4に一体成型される。さらに、左右のカップ部4A,4Bの下端側に所定幅の芯材4Cが配され、芯材4Cによりカップ4で被覆されるバストの保形性が良好に保たれる。
【0035】
前身頃2のうち前面生地2Aを構成する身生地は両端部に比較して中央部が次第に幅広になるように裁断され、後身頃3を構成する身生地の身幅方向の長さより長くなるように裁断されている。また、後身頃3を構成する身生地の上下幅は、両端部に比較して中央部が次第に幅狭になるように裁断されている。前面生地2Aと後身頃3の左右端部は同一サイズの幅に裁断されている。
【0036】
そのため、前身頃2と後身頃3の左右の脇部の接合部6は、着用者の脇部よりも僅かに背中側に位置し(
図1(b)参照。)、前身頃2の身幅方向への良好な伸縮性が、より大きな範囲で発揮されるようになる。また、後身頃3を構成する身生地は着丈方向に最も幅狭となる部位が着用者の後中心に位置して、着用者の背部肌面に沿って上下方向に対して楔のように作用するので、後身頃3の上下方向への移動が効果的に抑制される。なお、前面生地2Aや後身頃3の形状は略矩形に形成されていればよく、必ずしも上述の構成に限定するものではない。
【0037】
切替え生地2Bの下端縁21はバージスラインに沿って前面生地2Aに接合されているので、カップ4がカップ収容部5に保持された状態で着用者のバストが安定的に保持される。さらに、切替え生地2Bの上端縁22が前面生地2Aから遊離した状態で前面生地2Aの上端縁23の近傍まで延在するので、着用者のバストの上部領域が、前面生地2Aと切替え生地2Bとで重畳配置された前身頃2で安定的に押圧被覆される。
【0038】
なお、切替え生地2Bの上端縁22は、前面生地2Aの上端縁23から10mm程度下方に位置することが好ましく、前面生地2Aの上端縁23から5mm程度下方に位置することがさらに好ましい。カップ4の上側バストが遊離状態の切替え生地2Bの上端縁22で被覆され、さらに前面生地2Aの上端縁23でも被覆されるので、着用者に締付感を与えることなく、不意に前面生地2Aが捲れるようなことがあっても切替え生地2Bで被覆状態が保持されるので着用者に安心感を与えることができる。なお、切替え生地2Bの上端縁22が前面生地2Aの上端縁23より上方に突出すると見栄えが悪くなる。
【0039】
図1(a),(b)および
図2(a)に示すように、肩紐9を装着または離脱するため、前身頃2および後身頃3の上端部には、其々一対の前側タブ7と後ろ側タブ8が縫着固定されている。前側タブ7と後ろ側タブ8の其々に肩紐9の端部に備えた金具9Aを挿通することで肩紐9が装着される。
【0040】
前身頃2に取付けた左右一対の前側タブ7,7の取付け間隔が、後身頃3に取付けた左右一対の後ろ側タブ8,8の取付け間隔よりも広くなるように設定され、前側タブ7,7が、前面生地2Aと切替え生地2Bの重畳部位に取付けられている。
【0041】
前側タブ7,7と後ろ側タブ8,8に肩紐9を装着した状態では、カップ付き衣類1の着用状態のずれが良好に抑制されるばかりでなく、左右一対の前側タブ7,7の取付け間隔Laが、後身頃3に取付けた左右一対の後ろ側タブ8,8の取付け間隔Lbよりも広くなるように設定されているのでファッション性が向上する。例えばジャケット着用時に肩紐9がジャケットに隠れるため見栄えの良い状態となる。また、前側タブ7,7が前面生地2Aと切替え生地2Bの重畳部位に取付けられるので、安定した状態で肩紐が保持される。
【0042】
図4(a),(b)には、肩紐9を取り外して着用したカップ付き衣類が示されている。肩紐9を取り外すことにより、肩に荷重がかかることが無くなり、より開放感を味わうことができ、しかも、身体の姿勢が変化しても、ずれを効果的に抑制できる。
【0043】
上述した切放し生地は、裁断後の裁断端縁が解れ防止処理不要の身生地であり、裁断端縁にパイピング処理などの後加工を施す必要がなくなるので、シンプルで着心地の良いカップ付き衣類を実現できる。
【0044】
当該切放し生地は、特開2005-113349号公報に記載されたような、生地であり、ポリウレタン糸のような熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工したヨコ編地である。
【0045】
それ以外の糸として、例えば綿糸とポリエステル糸の混紡糸などが選択でき、フライス編みまたはスムース編みなどで編成された編地を好適に用いることができる。この様な解れ止め加工したヨコ編地であれば、特段の解れ止め処理をしなくても裁断部をそのままヘム部として用いることができる。同様の解れ止め加工した編地であれば、ヨコ編地に限らずタテ編地を採用することもできる。また、上述した解れ防止機構以外の公知の解れ防止機構を採用した編地を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によるカップ付き衣類は、着用時の快適性を損なうことなく、装着位置のずれが抑制できる安価でファッション性の高いカップ付き衣類として女性に広く利用される。
【符号の説明】
【0047】
1:カップ付き衣類
2:前身頃
2A:前面生地
2B:切替え生地
3:後身頃
4:カップ
4C:芯材
5:カップ収容部
6:接合部(脇部)
7:前側タブ
8:後ろ側タブ
9:肩紐
9A:金具