(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016675
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】衛生陶器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20240131BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118971
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖司
(72)【発明者】
【氏名】西脇 伸明
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰斗
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
(57)【要約】
【課題】製造工程において平坦部の変形を抑制することができる衛生陶器を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る衛生陶器は、表面が略平坦面となった平坦部と、表面が湾曲面となった湾曲部とを有する壁部を備える衛生陶器であって、壁部は、衛生陶器の外装を形成する外壁と、外壁の内側に形成される内壁と、外壁および内壁の間に形成される中空部とを有し、平坦部には外部から隠れた位置に所定方向に沿って延びたリブ状の補強部が設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が略平坦面となった平坦部と、表面が湾曲面となった湾曲部とを有する壁部を備える衛生陶器であって、
前記壁部は、前記衛生陶器の外装を形成する外壁と、前記外壁の内側に形成される内壁と、前記外壁および前記内壁の間に形成される中空部とを有し、前記平坦部には外部から隠れた位置に所定方向に沿って延びたリブ状の補強部が設けられる
ことを特徴とする衛生陶器。
【請求項2】
前記補強部は、荷重を受ける方向に沿って延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項3】
前記補強部は、該補強部が延びている方向と直交する断面がR形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項4】
前記補強部は、中空形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項5】
前記補強部は、前記中空部と連通している
ことを特徴とする請求項4に記載の衛生陶器。
【請求項6】
前記補強部は、前記衛生陶器が載置面に載置される場合に該載置面と接触しないように設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項7】
前記衛生陶器は、ボウル部の外側に設けられるスカート部を有する大便器である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の衛生陶器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、衛生陶器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大便器のスカート部が外壁、内壁、外壁および内壁の間の中空部を有する、いわゆる二重構造の大便器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、大便器などの衛生陶器は、原料(泥漿)を調製する泥漿調製工程、型に泥漿を注入する注入工程、泥漿の水分を取り除いて着肉させる着肉工程、着肉していない泥漿を排出する排泥工程、型から成形体を取り出す離型工程、各部位を接着し、所望の形状を形成する接合工程、成形体を乾燥させる乾燥工程、成形体に釉薬を塗布する施釉工程、成形体を焼成する焼成工程を経て製造される。
【0004】
衛生陶器の製造工程のうち、たとえば、焼成工程において発生する反りの発生を抑制するために、上記したような壁部を二重構造とする技術の他、台座部に補強部を設ける技術がある(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3952883号公報
【特許文献2】特開2000-104320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような従来技術では、依然として、乾燥工程および焼成工程において自重を受けやすい大便器のスカート部のような平坦部の変形を抑制することが困難であった。
【0007】
実施形態の一態様は、製造工程において平坦部の変形を抑制することができる衛生陶器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る衛生陶器は、表面が略平坦面となった平坦部と、表面が湾曲面となった湾曲部とを有する壁部を備える衛生陶器であって、前記壁部は、前記衛生陶器の外装を形成する外壁と、前記外壁の内側に形成される内壁と、前記外壁および前記内壁の間に形成される中空部とを有し、前記平坦部には外部から隠れた位置に所定方向に沿って延びたリブ状の補強部が設けられる。
【0009】
このような構成によれば、衛生陶器の製造工程のうち乾燥工程および焼成工程において自重によって変形しやすい平坦部に補強部が設けられることで、平坦部の強度を高めることができる。これにより、乾燥工程および焼成工程において平坦部の変形を抑制することができる。
【0010】
また、上記した衛生陶器において、前記補強部は、荷重を受ける方向に沿って延びている。
【0011】
このような構成によれば、乾燥工程および焼成工程において変形しやすい荷重を受ける方向(上下方向)に沿って補強部が延びているため、荷重を受ける方向の強度を高めることができる。これにより、平坦部の変形を抑制することができる。
【0012】
また、上記した衛生陶器において、前記補強部は、該補強部が延びている方向と直交する断面がR形状である。
【0013】
このような構成によれば、補強部が角ばった形状であると、離型工程において脱型しにくく、キレなどが生じやすくなるが、補強部の断面がR形状であるため、すなわち、補強部が丸みを帯びた形状であるため、脱型しやすく、かつ、平坦部の強度を高めることができる。
【0014】
また、上記した衛生陶器において、前記補強部は、中空形状である。
【0015】
このような構成によれば、補強部によって平坦部の強度を高めることができ、これにより、平坦部の変形を抑えることができる。また、衛生陶器の重量化を抑えることができる。
【0016】
また、上記した衛生陶器において、前記補強部は、前記中空部と連通している。
【0017】
このような構成によれば、補強部および平坦部で荷重を分散することができる。すなわち、変形しにくい構造となる。また、製造工程においては、1つの型で平坦部(内壁)および補強部の成形が可能となる。また、衛生陶器の重量化を抑えることができる。
【0018】
また、上記した衛生陶器において、前記補強部は、前記衛生陶器が載置面に載置される場合に該載置面と接触しないように設けられる。
【0019】
このような構成によれば、乾燥工程および焼成工程において衛生陶器が載置面に載置される場合に載置面と接触しないように補強部が設けられることで、平坦部が受ける荷重が低減され、平坦部の変形を抑制することができる。
【0020】
また、上記した衛生陶器において、前記衛生陶器は、ボウル部の外側に設けられるスカート部を有する大便器である。
【0021】
このような構成によれば、大便器において、スカート部の平坦部に補強部を設けるため、乾燥工程および焼成工程において自重によるスカート部の変形を抑制することができる。これにより、スカート部の表面にうねりが生じるのを抑制することができ、大便器の意匠性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様に係る衛生陶器によれば、製造工程において平坦部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、衛生陶器の製造工程の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施形態に係る衛生陶器の一例を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は、スカート部を示す概略底面図である。
【
図6】
図6は、スカート部を形成する型の説明図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る衛生陶器の一例を示す概略側断面図である。
【
図8】
図8は、
図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する衛生陶器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
<衛生陶器の製造工程>
まず、
図1を参照して衛生陶器の製造工程について説明する。
図1は、衛生陶器の製造工程の手順を示すフローチャートである。
【0026】
大便器、小便器および洗面器などの衛生陶器は、陶器素地の原料を含む泥漿を調製し、泥漿を用いて鋳込み成形することで成形体を形成し、成形体を乾燥させ、乾燥させた成形体に釉薬を塗布し、釉薬を塗布した成形体を焼成することによって製造される。
【0027】
具体的には、
図1に示すように、衛生陶器の製造工程では、まず、泥漿調製工程において、陶器素地の原料を含む泥漿を調製する(ステップS101)。この場合、泥漿は、水分を多量に含む粘性の低いものである。次いで、注入工程において、型に泥漿を注入する(ステップS102)。この場合、型には、たとえば、樹脂型または石膏型が用いられる。
【0028】
次いで、着肉工程において、泥漿の水分を取り除いて、型の成形面に泥漿を着肉させる(ステップS103)。なお、石膏型の場合には、石膏型自体に水分を吸収する力があるため、石膏が含んだ水分を乾燥させる。一方、樹脂型の場合には、加圧して水分を押し出す必要があり、着肉の様子を見ながら着肉時間で調整する。なお、着肉厚さが異なるように作製したい場合は、部位(パーツ)ごとに作製する。
【0029】
次いで、排泥工程において、着肉していない液状の泥漿を排出する(ステップS104)。次いで、離型工程において、型から成形体を取り出す、すなわち、型から成形体を離脱させる(ステップS105)。ここで、注入工程であるステップS102から排泥工程であるステップS104までを所望の形状の成形体を成形するための成形工程とする(ステップS110)。次いで、接合工程において、各部位(パーツ)の成形体を接着し、所望の形状を形成する(ステップS106)。この場合、たとえば、水洗大便器であれば、胴部とリム部とを接着して大便器の便器本体を形成する。
【0030】
次いで、乾燥工程において、成形体を乾燥させる(ステップS107)。乾燥工程では、成形体は、乾燥することで、3%程度収縮する。次いで、施釉工程において、乾燥させた成形体に釉薬を塗布する(ステップS108)。
【0031】
次いで、焼成工程において、釉薬を塗布した成形体を、1000~1300℃の温度で焼成する(ステップS109)。焼成工程では、成形体は、焼成することで、10%程度収縮する。また、乾燥工程および焼成工程においては、成形体は、自重によって、乾燥工程および焼成工程における静止状態で重力を受ける方向(上下方向)に大きく収縮する。
【0032】
このように、乾燥工程および焼成工程において成形体に収縮や曲がりが発生し、乾燥工程および焼成工程において、たとえば、大便器のスカート部のような、荷重を受けやすい平坦部が変形することがある。このため、以下で説明する実施形態は、製造工程において平坦部の変形を抑制することができる構成を有する。
【0033】
<実施形態>
次に、
図2~6を参照して実施形態に係る衛生陶器1について説明する。
図2は、第1実施形態に係る衛生陶器1の一例を示す概略側面図である。
図3は、
図2におけるII-II線断面図である。
図4は、スカート部13を示す概略底面図である。なお、
図4は、衛生陶器(大便器)1の内部構造を省略している。
図5は、
図3におけるIV-IV線断面図である。
図6は、スカート部13を形成する型141,142の説明図である。
【0034】
なお、各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0035】
図2および3に示すように、衛生陶器1は、トイレ室の床面FSなどに設置される、いわゆる床置き式の大便器である。また、衛生陶器である大便器1は、後述するボウル部11へ洗浄水を供給することで洗浄する水洗式である。なお、大便器1が水洗式の場合、洗浄方式は、たとえば、サイホン式でもよいし、洗い落とし(ウォッシュダウン)式でもよいし、他の方式でもよい。
【0036】
図2および3に示すように、大便器1は、ボウル部11と、リム部(図示せず)と、導水路(図示せず)と、トラップ部12と、壁部(スカート部)13とを備える。
【0037】
ボウル部11は、汚物を受ける部位であり、ボウル状に形成される。なお、ボウル部11の底部は、所定量の溜水を溜める溜水部(図示せず)となる。ボウル部11の底部には、後述するトラップ部12が接続される。
【0038】
リム部は、ボウル部11の上縁部に設けられ、ボウル部11の上縁部において環状に形成される。導水路は、たとえば、大便器1の洗浄水の供給口(図示せず)から前方へと延びており、リム部のリム通水路(図示せず)に接続される。
【0039】
トラップ部12は、ボウル部11が受けた汚物を排出可能なように、ボウル部11から後方へと延設された管路である。トラップ部12は、たとえば、上昇管121と、下降管122とを備える。上昇管121は、上流側の端部(前端部)がボウル部11の底部に接続される。上昇管121は、ボウル部11の底部と連通するとともに、後方へ向かうにつれて上昇するように傾斜した管路である。
【0040】
下降管122は、上流側の端部(前端部)が上昇管121の下流側の端部(後端部)に接続される。下降管122は、上昇管121の後端部と連通するとともに、下方へ向かう管路である。また、下降管122は、たとえば、排水ソケット(図示せず)を介して、大便器1の外部の設備配管(図示せず)に接続される。
【0041】
図4に示すように、壁部13は、平坦部13aと、湾曲部13bとを備える。平坦部13aは、表面が略平坦面となった部位である。平坦部13aは、面積が比較的大きく、かつ表面にうねりの無い平面部位である。湾曲部13bは、表面が湾曲面となった部位である。大便器1において、壁部13はスカート部(以下では、壁部13をスカート部という)である。
【0042】
スカート部13は、ボウル部11の外側に設けられ、大便器1の外装(側周面)を形成する。すなわち、スカート部13は、大便器1の略全周にわたって形成される部位である。
図3に示すように、スカート部13は、外壁131と、内壁132と、中空部133と、補強部134とを備える。
【0043】
外壁131は、スカート部13のうち、大便器1の外装を形成する部位(壁)である。外壁131は、スカート部13が荷重を受ける方向、すなわち、上下方向へ立ち上がるように設けられる。内壁132は、外壁131の内側に設けられる。内壁132は、外壁131と同様、スカート部13が荷重を受ける方向、すなわち、上下方向へ立ち上がるように設けられる。
【0044】
中空部133は、外壁131および内壁132の間に形成される空間である。このため、スカート部13は、中空形状であるとともに、外壁131、内壁132および中空部133による二重構造を有する。
【0045】
図4に示すように、スカート部13として、外壁131は、たとえば、大便器1の左右いずれか一方の側部(たとえば、左側部)から、大便器1の前部を経て、大便器1のいずれか他方の側部(たとえば、右側部)へかけて全部に設けられる。このように、外壁131は、大便器1の左側部から(前部を経て)右側部までの略全周に延びている。
【0046】
内壁132は、たとえば、外壁131と同様、大便器1の左右いずれか一方の側部(たとえば、左側部)から、大便器1の前部を経て、大便器1のいずれか他方の側部(たとえば、右側部)へかけて全部に設けられる。このように、内壁132は、大便器1の左側部から(前部を経て)右側部までの略全周に延びている。
【0047】
図3および4に示すように、補強部134は、内壁132に設けられる。補強部134は、内壁132のうち平坦部13aとなる位置に設けられる。また、補強部134は、リブ状に形成され、所定方向に延びている。リブ状の補強部134は、上下方向に沿って延びている。
【0048】
ここで、大便器1は、乾燥工程および焼成工程において成形体が載置面に載置される場合は、大便器1が床面FS(
図2および3参照)などに設置される姿勢と略合致する。このため、補強部134が延びている方向は、乾燥工程および焼成工程において大便器1(スカート部13)が荷重を受ける方向となる上下方向である。
【0049】
また、補強部134は、内壁132の内側の面に設けられる。このように、補強部134は、外部から隠れた位置に設けられる。すなわち、補強部134は、大便器1の使用者などから見えない位置に設けられる。なお、補強部134は、内壁132の内側の面の他、外部から隠れた位置となる、たとえば、内壁132の外側の面(中空部133へ向けた面)に設けられてもよいし、外壁131の内側の面(中空部133へ向けた面)に設けられてもよい。
【0050】
図5に示すように、補強部134は、この補強部134が延びている方向、すなわち、上下方向と直交する方向(水平方向)の断面がR形状となるように形成されることが好ましい。さらに好ましくは、断面が半円形状である。また、補強部134は、中空部134aを有し、中空形状に形成される。また、補強部134は、スカート部13の中空部133と連通している。
【0051】
図6に示すように、補強部134が中空形状であるため、大便器1の製造工程においては、1つの型(内壁132を成形するための型142)による成形で補強部134を設けることができる。なお、外壁131は、型141によって成形される。
【0052】
また、
図3に示すように、補強部134は、大便器1が製造工程において載置面(
図3においては、床面FS)に載置される場合に、この載置面と接触しないよう、内壁132よりも上下方向に短くなるように設けられる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、衛生陶器である大便器1の製造工程のうち乾燥工程および焼成工程において自重によって変形しやすい平坦部13aに補強部134が設けられることで、平坦部13aの強度を高めることができる。これにより、乾燥工程および焼成工程において平坦部13aの変形を抑制することができる。
【0054】
また、乾燥工程および焼成工程において変形しやすい荷重を受ける方向(上下方向)に沿って補強部134が延びているため、荷重を受ける方向の強度を高めることができる。これにより、平坦部13aの変形を抑制することができる。
【0055】
また、補強部134が角ばった形状であると、離型工程において脱型しにくく、キレなどが生じやすくなるが、補強部134の断面がR形状であるため、すなわち、補強部134が丸みを帯びた形状であるため、脱型しやすく、かつ、平坦部13aの強度を高めることができる。
【0056】
また、補強部134が中空形状であることで、補強部134によって平坦部13aの強度を高めることができる。これにより、平坦部13aの変形を抑えることができる。また、大便器1の重量化を抑えることができる。
【0057】
また、補強部134がスカート部の中空部133と連通していることで、補強部134および平坦部13aで荷重を分散することができる。すなわち、変形しにくい構造となる。また、製造工程においては、1つの型142で平坦部13a(内壁132)および補強部134の成形が可能となる。また、大便器1の重量化を抑えることができる。
【0058】
また、乾燥工程および焼成工程において大便器1が載置面に載置される場合に載置面と接触しないように補強部134が設けられることで、平坦部13aが受ける荷重が低減され、平坦部13aの変形を抑制することができる。
【0059】
また、大便器1において、スカート部13の平坦部13aに補強部134を設けるため、乾燥工程および焼成工程において自重によるスカート部13の変形を抑制することができる。これにより、スカート部13の表面にうねりが生じるのを抑制することができ、大便器1の意匠性の低下を抑えることができる。
【0060】
<変形例>
次に、
図7および8を参照して変形例に係る衛生陶器2について説明する。
図7は、変形例に係る衛生陶器2の一例を示す概略側断面図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII線断面図である。
【0061】
図7に示すように、変形例に係る衛生陶器2は、化粧室などに設置される洗面器である。衛生陶器である洗面器2は、たとえば、洗面台の上面などに設置される。洗面器2は、湯水を受けるボウル部21を有する。また、洗面器2には、たとえば、洗面器2の後部にボウル部21へ向けて湯水を吐出する水栓装置23が取り付けられる。洗面器2の使用者は、水栓装置23を操作して吐水口231から湯水を出して、手洗いや洗顔などを行う。
【0062】
また、ボウル部21の底部には、ボウル部21で受けた湯水を排水管(図示せず)へ排出するための排水口211が形成される。排水口211には、ボウル部21に湯水を溜めたり、ボウル部21から排水管へ湯水を排出したりすることを制御するための排水装置(図示せず)が設けられる。
【0063】
また、洗面器2は、壁部22を備える。壁部22は、平坦部22aを備える。平坦部22aは、表面が略平坦面となった部位である。壁部22は、ボウル部21の外側に設けられ、洗面器2の外装(側周面)を形成する。すなわち、壁部22は、洗面器2の略全周にわたって形成される部位である。
図7に示すように、壁部22は、外壁221と、内壁222と、中空部223と、補強部224とを備える。
【0064】
外壁221は、壁部22のうち、洗面器2の外装を形成する部位(壁)である。外壁221は、壁部22が荷重を受ける方向、すなわち、上下方向へ立ち上がるように設けられる。内壁222は、外壁221の内側に設けられる。内壁222は、外壁221と同様、壁部22が荷重を受ける方向、すなわち、上下方向へ立ち上がるように設けられる。
【0065】
中空部223は、外壁221および内壁222の間に形成される空間である。このため、壁部22は、中空形状であるとともに、外壁221、内壁222および中空部223による二重構造を有する。
【0066】
補強部224は、内壁222に設けられる。補強部224は、内壁222の平坦部22aとなる位置に設けられる。また、補強部224は、リブ状に形成され、所定方向に延びている。リブ状の補強部224は、上下方向に沿って延びている。
【0067】
ここで、洗面器2は、乾燥工程および焼成工程において成形体が載置面に載置される場合は、洗面器2が洗面台の上面などに設置される姿勢と略合致する。このため、補強部224が延びている方向は、乾燥工程および焼成工程において洗面器2(壁部22)が荷重を受ける方向となる上下方向である。
【0068】
また、補強部224は、内壁222の内側の面に設けられる。このように、補強部224は、外部から隠れた位置に設けられる。すなわち、補強部224は、洗面器2の使用者などから見えない位置に設けられる。なお、補強部224は、内壁222の内側の面の他、外部から隠れた位置となる、たとえば、内壁222の外側の面(中空部223へ向けた面)に設けられてもよいし、外壁221の内側の面(中空部223へ向けた面)に設けられてもよいし、外壁221の外側の面に設けられてもよい。
【0069】
図8に示すように、補強部224は、この補強部224が延びている方向、すなわち、上下方向と直交する方向(水平方向)の断面がR形状となるように形成される。また、補強部224は、中空部224aを有し、中空形状に形成される。また、補強部224は、壁部22の中空部223と連通している。
【0070】
このように、補強部224が中空形状であるため、洗面器2の製造工程においては、1つの型(内壁222を成形するための型)による成形で補強部224を設けることができる。
【0071】
また、
図7に示すように、補強部224は、製造工程において洗面器2が載置面に載置される場合に、この載置面と接触しないよう、内壁222よりも上下方向に短くなるように設けられる。
【0072】
このような変形例によれば、衛生陶器である洗面器2の製造工程のうち乾燥工程および焼成工程において自重によって変形しやすい平坦部22aに補強部224が設けられることで、平坦部22aの強度を高めることができる。これにより、乾燥工程および焼成工程において平坦部22aの変形を抑制することができる。
【0073】
また、乾燥工程および焼成工程において変形しやすい荷重を受ける方向(上下方向)に沿って補強部224が延びているため、荷重を受ける方向の強度を高めることができる。これにより、平坦部22aの変形を抑制することができる。
【0074】
また、補強部224が角ばった形状であると、離型工程において脱型しにくく、キレなどが生じやすくなるが、補強部224の断面がR形状であるため、すなわち、補強部224が丸みを帯びた形状であるため、脱型しやすく、かつ、平坦部22aの強度を高めることができる。
【0075】
また、補強部224が中空形状であることで、補強部224によって平坦部22aの強度を高めることができる。これにより、平坦部22aの変形を抑えることができる。また、洗面器2の重量化を抑えることができる。
【0076】
また、補強部224が壁部22の中空部223と連通していることで、補強部224および平坦部22aで荷重を分散することができる。すなわち、変形しにくい構造となる。また、製造工程においては、1つの型で平坦部22a(内壁222)および補強部224の成形が可能となる。また、洗面器の重量化を抑えることができる。
【0077】
また、乾燥工程および焼成工程において洗面器2が載置面に載置される場合に載置面と接触しないように補強部224が設けられることで、平坦部22aが受ける荷重が低減され、平坦部22aの変形を抑制することができる。
【0078】
また、洗面器2において、壁部22の平坦部22aに補強部224を設けるため、乾燥工程および焼成工程において自重による壁部22の変形を抑制することができる。これにより、壁部22の表面にうねりが生じるのを抑制することができ、洗面器2の意匠性の低下を抑えることができる。
【0079】
なお、衛生陶器は、たとえば、汚物流しユニットであってもよい。汚物流しユニットは、たとえば、公共施設のトイレ室に設置され、排泄物などの汚物を処理するための陶器製の器具である。汚物流しユニットが有する壁部の平坦面に上記したようなリブ状の補強部が設けられることで、乾燥工程および焼成工程において自重によって変形しやすい平坦部の強度を高めることができる。これにより、乾燥工程および焼成工程において平坦部の変形を抑制することができる。
【0080】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 衛生陶器(大便器)
11 ボウル部
13 壁部(スカート部)
13a 平坦部
13b 湾曲部
131 外壁
132 内壁
133 中空部
134 補強部