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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166751
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20241122BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/01 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083071
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】西岸 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏友
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良基
(72)【発明者】
【氏名】城戸 悠介
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA11
4C267BB09
4C267BB12
4C267BB40
4C267CC04
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG10
(57)【要約】
【課題】2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテルの限られたルーメン内において、多くの併用デバイスを使用可能とする。
【解決手段】医療デバイスは、第1ルーメンを有する第1チューブと、第2ルーメンを有する第2チューブと、第3ルーメンを有する第3チューブと、を備える。前記第1チューブの外周面と前記第2チューブの外周面とは接合されており、前記医療デバイスの長手方向の所定位置における横断面において、前記医療デバイスの外周によって囲まれた領域の面積である第1面積は、前記第1チューブと前記第2チューブとの1本の共通外接線と、前記第1チューブ及び前記第2チューブの外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第2面積以下である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスであって、
第1ルーメンを有する第1チューブと、
第2ルーメンを有する第2チューブと、
第3ルーメンを有する第3チューブと、
を備え、
前記第1チューブの外周面と前記第2チューブの外周面とは接合されており、
前記医療デバイスの長手方向の所定位置における横断面において、前記医療デバイスの外周によって囲まれた領域の面積である第1面積は、前記第1チューブと前記第2チューブとの1本の共通外接線と、前記第1チューブ及び前記第2チューブの外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第2面積以下である、医療デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の医療デバイスであって、
前記横断面において、前記共通外接線と、前記第1及び第2チューブの外周との間には、空隙が形成されている、医療デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の医療デバイスであって、
前記所定位置は第1の所定位置であって、
前記医療デバイスの長手方向の第2の所定位置における横断面であって、前記第3チューブが存在する横断面において、前記1本の共通外接線と、前記第1及び第2チューブの外周との間には空隙が形成され、当該空隙は、前記医療デバイスの内腔である、医療デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医療デバイスであって、
前記横断面において、前記共通外接線を第1共通外接線としたとき、前記第1面積は、前記第1共通外接線とは異なる、前記第1チューブと前記第2チューブとの第2共通外接線と、前記第1チューブ及び前記第2チューブの外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第3面積以下である、医療デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医療デバイスであって、
前記第1ルーメンは、画像情報を取得するセンサ用のルーメンである、医療デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医療デバイスであって、
前記第1チューブと前記第2チューブと前記第3チューブとは、互いの外周面同士が接合されている、医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
CTO開通のための手技は複雑であることから、超音波によって生体組織の画像情報を取得するセンサのガイド下で手技を行う場合がある。このような場合、2つ以上のルーメンを有するカテーテルを用い、一方のルーメンにセンサを挿入し、他方のルーメンに治療用デバイスを挿入することで、センサと治療用デバイスとを併用しつつ手技が行われる。このようなカテーテルは、安全性と操作性とを向上させるため、先端側は細く柔軟で、基端側は太く剛性の高い構造とされることが一般的である。例えば、特許文献1~3には、このような手技において使用可能なデバイスが開示されている。特許文献4には、ガイドワイヤルーメンと吸引ルーメンとを有する吸引カテーテルが開示されている。特許文献5には、マルチルーメン型潅注チュービングを利用して潅注流を実現する潅注式カテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-033507号公報
【特許文献2】特開2015-180275号公報
【特許文献3】特開2013-34652号公報
【特許文献4】特開2010-57831号公報
【特許文献5】特開2016-5641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、PCIの手技においては、上述したカテーテルのほか、ガイドワイヤや、マイクロカテーテルといった、手技に使用される複数のデバイスをまとめてCTO病変の位置へと導くためのガイディングカテーテルが使用される場合がある。以降、ガイディングカテーテルに挿入される他のデバイスを「併用デバイス」とも呼ぶ。ガイディングカテーテルは、複数のデバイスを収容可能な太いルーメンを有するものの、血管内に挿入するという制約上、ルーメンの太さは限られている。このため、医療デバイスには、ガイディングカテーテルの限られたルーメン内において、なるべく多くの併用デバイスを使用可能とすることが求められていた。しかし、特許文献1~5に記載のデバイスでは、この点について何ら考慮されていない。
【0005】
なお、このような課題は、CTO開通といったPCIの手技に限らず、経皮的手技において使用される医療デバイスの全般に共通する。また、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入される医療デバイスに共通する。
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテルの限られたルーメン内において、多くの併用デバイスを使用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、医療デバイスが提供される。この医療デバイスは、第1ルーメンを有する第1チューブと、第2ルーメンを有する第2チューブと、第3ルーメンを有する第3チューブと、を備え、前記第1チューブの外周面と前記第2チューブの外周面とは接合されており、前記医療デバイスの長手方向の所定位置における横断面において、前記医療デバイスの外周によって囲まれた領域の面積である第1面積は、前記第1チューブと前記第2チューブとの1本の共通外接線と、前記第1チューブ及び前記第2チューブの外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第2面積以下である。
【0009】
この構成によれば、所定位置における医療デバイスの断面積を小さくできる。従って、2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテルの限られたルーメン内において、多くの併用デバイスを使用できる。
【0010】
(2)上記形態の医療デバイスでは、前記横断面において、前記共通外接線と、前記第1及び第2チューブの外周との間には、空隙が形成されていてもよい。この構成によれば、医療デバイスをガイディングカテーテルに挿入した際に、空隙部分に併用デバイスを位置させることができる。
【0011】
(3)上記形態の医療デバイスにおいて、前記所定位置は第1の所定位置であって、前記医療デバイスの長手方向の第2の所定位置における横断面であって、前記第3チューブが存在する横断面において、前記1本の共通外接線と、前記第1及び第2チューブの外周との間には空隙が形成され、当該空隙は、前記医療デバイスの内腔であってもよい。この構成によれば、1本の共通外接線と、第1及び第2チューブの外周との間に形成された空隙によって、第3チューブが存在する場合であっても、医療デバイスを柔軟にできる。
【0012】
(4)上記形態の医療デバイスでは、前記横断面において、前記共通外接線を第1共通外接線としたとき、前記第1面積は、前記第1共通外接線とは異なる、前記第1チューブと前記第2チューブとの第2共通外接線と、前記第1チューブ及び前記第2チューブの外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第3面積以下であってもよい。この構成によれば、医療デバイスを、その横断面において、第1チューブと第2チューブとの隣接部分の両側に、それぞれくびれ(凹部)を有する構造とできる。この結果、本構成によれば、2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテルの限られたルーメン内において、より一層多くの併用デバイスを使用可能とでき、併用デバイスの制限幅をより一層広げることができる。
【0013】
(5)上記形態の医療デバイスにおいて、前記第1ルーメンは、画像情報を取得するセンサ用のルーメンであってもよい。この構成によれば、超音波によって生体組織の画像情報を取得するセンサのガイド下での手技を行うことができる。
【0014】
(6)上記形態の医療デバイスでは、前記第1チューブと前記第2チューブと前記第3チューブとは、互いの外周面同士が接合されていてもよい。この構成によれば、術者が手元において付加した押込み力をさらに効率的に先端側へと伝達できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、医療デバイス、カテーテル、及びこれらの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】医療デバイスとしてのカテーテルの構成を例示した説明図である。
図2】医療デバイスとしてのカテーテルの構成を例示した説明図である。
図3】カテーテルの横断面図である。
図4】カテーテルの使用方法について説明する図である。
図5】カテーテルの使用方法について説明する図である。
図6】共通外接線について説明する図である。
図7】第1面積と第2面積について説明する図である。
図8】第1面積と第3面積について説明する図である。
図9】ガイディングカテーテル挿入時の様子を説明する図である。
図10】第2実施形態のカテーテルの横断面図である。
図11】第3実施形態のカテーテルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1及び図2は、医療デバイス1の構成を例示した説明図である。本実施形態の医療デバイス1は、例えば、血管に生じたCTOのような、生体管腔内の病変部を治療するために用いられるカテーテルである。以降、医療デバイス1を「カテーテル1」とも呼ぶ。図1及び図2に示すように、カテーテル1は、センサ用チューブ10と、OTW(Over The Wire)用チューブ20と、RX(Rapid Exchange)用チューブ30と、先端チップ40と、第1マーカ41と、第2マーカ42と、被覆部50と、分岐コネクタ60と、第1補強部材61~第3補強部材63と、筒状部材64と、コネクタ65と、コネクタ25と、センサ70と、を備えている。
【0018】
図1では、チューブ及びチューブ内のルーメンの構成を説明するため、センサ70の図示を省略している。図2では、センサ用チューブ10内のセンサルーメン10Lに内蔵されたセンサ70を、破線で表し、斜線ハッチングを付している。
【0019】
図1及び図2では、説明の便宜上、各構成部材の大きさの相対比が実際とは異なる部分を含んでいる。また、各構成部材の一部が誇張されている部分を含んでいる。また、図1及び図2には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸はカテーテル1の長手方向に対応し、Y軸はカテーテル1の高さ方向に対応し、Z軸はカテーテル1の幅方向に対応する。図1及び図2の左側(-X軸方向)をカテーテル1及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1及び図2の右側(+X軸方向)をカテーテル1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、カテーテル1及び各構成部材の長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。また、先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、図3以降においても共通する。
【0020】
図3は、カテーテル1の横断面図である。図3(A)は、図1のA-A線におけるカテーテル1の横断面を示す。図3(B)は、図1のB-B線におけるカテーテル1の横断面を示す。図3(C)は、図1のC-C線におけるカテーテル1の横断面を示す。図3(D)は、図1のD-D線におけるカテーテル1の横断面を示す。図3(E)は、図1のE-E線におけるカテーテル1の横断面を示す。図3(F)は、図1のF-F線におけるカテーテル1の横断面を示す。以降、図1図3を用いて、カテーテル1の構成について説明する。
【0021】
センサ用チューブ10は、長尺状の外形を有する円筒形状の部材(管状体)である。センサ用チューブ10は、OTW用チューブ20及びRX用チューブ30と並行に、カテーテル1の長手方向(X軸方向)に沿って直線状に延びている。センサ用チューブ10の内側には、センサ70を収容するためのセンサルーメン10L(破線)が形成されている。センサルーメン10Lは、センサ70用のルーメンである。
【0022】
センサ用チューブ10の先端は、カテーテル1の長手方向において、RX用チューブ30の先端と、同一あるいはやや基端側に位置している。センサ用チューブ10の先端には、センサルーメン10Lの先端と外部とを連通する先端開口101が形成されている。先端開口101は、センサルーメン10L内を湿潤状態とするための流体放出口である。センサ用チューブ10の基端は、カテーテル1の長手方向において、OTWルーメン20Lの基端、及びRX用チューブ30の基端よりも基端側に位置している。センサ用チューブ10の基端側には、先端側から基端側に向かって、第1補強部材61、分岐コネクタ60、筒状部材64、及びコネクタ65が取り付けられている。詳細は後述する。コネクタ65には流体供給部66が取り付けられており、流体供給部66には、センサルーメン10Lの基端と外部とを連通する基端開口102が形成されている。基端開口102は、センサルーメン10Lへの流体供給口である。
【0023】
図1に示すように、センサ用チューブ10は、先端側に配置された先端側チューブ11と、先端側チューブ11よりも基端側に配置された基端側チューブ12と、を有している。先端側チューブ11と基端側チューブ12とは、いずれも、長尺状の外形を有する円筒形状の部材(管状体)である。先端側チューブ11と基端側チューブ12とは、長手方向において被覆部50が設けられた任意の箇所において接続されている。すなわち、先端側チューブ11と基端側チューブ12とは、それぞれ、センサルーメン10Lの一部を構成している。
【0024】
OTW用チューブ20は、長尺状の外形を有する円筒形状の部材(管状体)である。OTW用チューブ20は、分岐コネクタ60よりも先端側においては、センサ用チューブ10及びRX用チューブ30と並行に、カテーテル1の長手方向に沿って直線状に延びている。OTW用チューブ20の内側には、治療用デバイス(例えば、プラズマガイドワイヤや、貫通用ガイドワイヤ)を収容するためのOTWルーメン20L(破線)が形成されている。OTWルーメン20Lは、カテーテル1の使用時に生体管腔内に配置される部分に基端開口を有さない、いわゆるオーバーザワイヤ(OTW)型のルーメンである。
【0025】
OTW用チューブ20の先端は、カテーテル1の長手方向において、センサ用チューブ10の先端、及びRX用チューブ30の先端よりも基端側に位置している。OTW用チューブ20の先端には、OTWルーメン20Lの先端と外部とを連通する先端開口201が形成されている。先端開口201は、治療用デバイスを生体組織に向けて突出させるためのデバイス突出口である。OTW用チューブ20の先端部が斜めにカットされることにより、先端開口201は、カテーテル1の長手方向に対して交差する方向を向いている。これにより、カテーテル1の使用時において、カテーテル1の周囲に存在する生体組織に対して治療用デバイスを到達させやすくできる。OTW用チューブ20の基端は、カテーテル1の長手方向において、センサ用チューブ10の基端よりも先端側、かつ、RX用チューブ30の基端よりも基端側に位置している。OTW用チューブ20の基端側には、先端側から基端側に向かって、第1補強部材61、分岐コネクタ60、第2補強部材62、第3補強部材63、及びコネクタ25が取り付けられている。詳細は後述する。コネクタ25には、OTWルーメン20Lの基端と外部とを連通する基端開口202が形成されている。基端開口202は、OTWルーメン20Lに治療用デバイスを挿入するためのデバイス挿入口である。
【0026】
図1に示すように、OTW用チューブ20は、先端側に配置された先端側チューブ21と、先端側チューブ21よりも基端側に配置された基端側チューブ22と、を有している。先端側チューブ21と基端側チューブ22とは、いずれも、長尺状の外形を有する円筒形状の部材(管状体)である。先端側チューブ21と基端側チューブ22とは、長手方向において被覆部50が設けられた任意の箇所において接続されている。すなわち、先端側チューブ21と基端側チューブ22とは、それぞれ、OTWルーメン20Lの一部を構成している。
【0027】
RX用チューブ30は、長尺状の外形を有する円筒形状の部材(管状体)である。RX用チューブ30は、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20と並行に、カテーテル1の長手方向に沿って直線状に延びている。RX用チューブ30の内側には、ワークホースワイヤを収容するためのRXルーメン30L(破線)が形成されている。
【0028】
RX用チューブ30の先端は、カテーテル1の長手方向において、センサ用チューブ10の先端と、同一あるいはやや先端側に位置している。RX用チューブ30の先端部には、中空状の先端チップ40が接合されている。先端チップ40の先端には、RXルーメン30Lの先端と外部とを連通する先端開口301が形成されている。先端開口301は、ワークホースワイヤをRXルーメン30L内に挿入するためのワイヤ挿入口である。RX用チューブ30の基端は、カテーテル1の長手方向において、センサ用チューブ10の基端、及びOTW用チューブ20の基端よりも先端側に位置している。RX用チューブ30の基端には、RXルーメン30Lの基端と外部とを連通する基端開口302が形成されている。基端開口302は、ワークホースワイヤを外部に引き出すためのワイヤ引出口である。RX用チューブ30の基端が斜めにカットされることにより、基端開口302は、カテーテル1の長手方向に対して交差する方向を向いている。これにより、カテーテル1の使用時において、基端開口302からワークホースワイヤを引き出しやすくできる。
【0029】
先端チップ40は、放射線不透過性を有し、先端側から基端側に向かって外径が拡大した筒状の部材である。先端チップ40は、RX用チューブ30の先端部に接合されることによって、カテーテル1の先端に位置し、他の部材よりも先行して生体管腔内を進行する。先端チップ40の内腔は、RX用チューブ30のRXルーメン30Lと連通しており、先端チップ40の先端には、上述の通り、RXルーメン30Lの先端と外部とを連通する先端開口301が形成されている。
【0030】
第1マーカ41と第2マーカ42とは、放射線不透過性を有する円環状の部材である。第1マーカ41は、RX用チューブ30の外周面のうち、先端チップ40の基端に隣り合った位置に配置され、RX用チューブ30の外周面に接合されている。第2マーカ42は、RX用チューブ30の外周面のうち、OTW用チューブ20の先端開口201の先端に隣り合った位置に配置され、RX用チューブ30の外周面に接合されている。第1マーカ41及び第2マーカ42の接合には、例えば、熱溶融による樹脂同士の接合や、エポキシ系接着剤などの接着剤による接合を採用できる。なお、第1マーカ41及び第2マーカ42は、術者が直接目視することが可能なように着色が施されていてもよい。このように、第1マーカ41及び第2マーカ42をRX用チューブ30に配置することで、第1マーカ41や第2マーカ42によって、センサ70によるセンシング(画像情報の取得)が妨げられることを抑制できる。
【0031】
図3(A)に示すように、A-A線における横断面では、先端チップ40のみが存在している。図3(B)に示すように、B-B線における横断面では、センサ用チューブ10(具体的には先端側チューブ11)と、RX用チューブ30とが、互いの外周面同士が接合されている。図3(C)に示すように、C-C線における横断面では、センサ用チューブ10(具体的には先端側チューブ11)と、OTW用チューブ20(具体的には先端側チューブ21)と、RX用チューブ30とが、互いの外周面同士が接合されている。図3(D)に示すように、D-D線における横断面では、センサ用チューブ10(具体的には先端側チューブ11)と、OTW用チューブ20(具体的には先端側チューブ21)と、RX用チューブ30とが、互いの外周面同士が接合されている。また、D-D横断面では、被覆部50が、3本のチューブ10,20,30のうちの外側に面した部分を、3本のチューブ10,20,30の外周に沿って被覆することで、3本のチューブ10,20,30を固定している。図3(E)に示すように、E-E線における横断面では、センサ用チューブ10(具体的には先端側チューブ11)と、OTW用チューブ20(具体的には基端側チューブ22)と、RX用チューブ30とが、互いの外周面同士が接合されている。E-E横断面においても、被覆部50が、3本のチューブ10,20,30のうちの外側に面した部分を、3本のチューブ10,20,30の外周に沿って被覆することで、3本のチューブ10,20,30を固定している。図3(F)に示すように、F-F線における横断面では、センサ用チューブ10(具体的には基端側チューブ12)と、OTW用チューブ20(具体的には基端側チューブ22)とが、互いの外周面同士が接合されている。
【0032】
センサ用チューブ10、OTW用チューブ20、及びRX用チューブ30の接合は、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を用いて行われてもよく、熱により溶着されていてもよい。B-B横断面、C-C横断面、D-D横断面、及びE-E横断面においては、カテーテル1の高さLYは、カテーテル1の幅LZよりも大きい。一方、F-F横断面においては、カテーテル1の高さLYは、カテーテル1の幅LZよりも小さい。なお、図3(A)~(F)に示すように、3本のチューブ10,20,30の外径の大小関係は、センサ用チューブ10の外径>OTW用チューブ20の外径>RX用チューブ30の外径となっている。また、3本のチューブ10,20,30の内径(ルーメン)の大小関係は、センサルーメン10Lの内径>OTWルーメン20Lの内径>RXルーメン30Lの内径となっている。しかし、これら外径及び内径の大小関係は一例に過ぎず、任意に変更してよい。
【0033】
図1に戻り、説明を続ける。被覆部50は、3本のチューブ10,20,30(具体的には、センサ用チューブ10、OTW用チューブ20、及びRX用チューブ30)を固定するための樹脂の層である。被覆部50は、3本のチューブ10,20,30が並んで延びる区間内、換言すれば、先端開口201よりも基端側であって基端開口302よりも先端側の区間内に設けられている。なお、図1に示すように、被覆部50は、先端開口201よりも基端側に、換言すれば、先端開口201から基端側に離れた位置に設けられることが好ましい。そうすれば、センサルーメン10Lに挿入されたセンサ70によるセンシング(画像情報の取得)が、被覆部50によって妨げられることを抑制できる。図3(D)及び図3(E)に示すように、被覆部50は、3本のチューブ10,20,30のうちの外側に面した部分を、3本のチューブ10,20,30の外周に沿って薄く被覆している。これにより被覆部50は、カテーテル1の横断面において、各チューブ10,20,30の隣接部分に形成されているくびれ(凹部)を維持したまま、3本のチューブ10,20,30を固定できる。
【0034】
分岐コネクタ60は、二股に分岐した内腔を有する部材であり、カテーテル1の基端側に配置されている。分岐コネクタ60の一方の内腔には、OTW用チューブ20が挿通されている。分岐コネクタ60の他方の内腔には、センサ用チューブ10が挿通されている。第1補強部材61は、分岐コネクタ60よりも先端側に配置された円筒形状の部材である。第1補強部材61は、分岐コネクタ60に挿入されたセンサ用チューブ10とOTW用チューブ20との外周をそれぞれ覆うことで、分岐コネクタ60の先端側を補強している。
【0035】
第2補強部材62は、分岐コネクタ60の一方の枝よりも基端側に配置された円筒形状の部材である。第2補強部材62は、分岐コネクタ60に挿入されたOTW用チューブ20の外周を覆うことで、分岐コネクタ60の基端側を補強している。第3補強部材63は、コネクタ25よりも先端側に配置された円筒形状の部材である。第3補強部材63は、コネクタ25に挿入されたOTW用チューブ20の外周を覆うことで、コネクタ25の先端側を補強している。コネクタ25は、OTW用チューブ20の基端部に接合された部材である。コネクタ25は、術者が把持するための一対の羽根部を有している。コネクタ25の基端には、OTWルーメン20Lの基端と外部とを連通する基端開口202(デバイス挿入口)が形成されている。
【0036】
筒状部材64は、分岐コネクタ60の他方の枝よりも基端側に配置された円筒形状の部材である。筒状部材64は、分岐コネクタ60に挿入されたセンサ用チューブ10の外周を覆うことで、分岐コネクタ60の基端側を補強している。コネクタ65は、センサ用チューブ10の基端部に接合された部材である。コネクタ65の基端側には、センサ70の接続端子75を収容するための筐体が設けられている。コネクタ65の外周面には、センサルーメン10Lの基端と外部とを連通する基端開口102が形成された流体供給部66が設けられている。
【0037】
センサ70(図2)は、画像情報を取得するためのイメージングセンサである。図2に示すように、センサ70は、本体部71と、プローブ72と、接続端子75とを備えている。本体部71は、カテーテル1の長手方向に沿って延伸する長尺状の部材である。本体部71の内側には、プローブ72と接続端子75とを電気的に接続するドライビングケーブル(同軸線)が内蔵されている。プローブ72は、生体組織に向けて超音波を発信し、生体組織を伝搬して反射した超音波を受信する超音波探触子(超音波振動子、圧電体、超音波送受信素子、超音波素子とも呼ばれる)を備えている。プローブ72は、イメージングコア、トランスデューサとも呼ばれる。接続端子75は、センサ70と、外部に設けられたコンソール端末とを電気的に接続する端子である。接続端子75は、本体部71の基端に設けられており、コネクタ65の筐体内に収容されている。
【0038】
センサ70は、接続端子75を介して外部のコンソール端末と電気的に接続され、コンソール端末から電力の供給を受けると共に、プローブ72による検出信号をコンソール端末へと出力する。これにより、コンソール端末では、プローブ72の検出信号に基づく画像情報を表示できる。図2に示すように、センサ70は、コネクタ65に固定されている。また、図2において白抜き矢印で示すように、術者がコネクタ65を把持して前後方向(白抜き矢印の方向)にスライドさせることによって、センサ70のプローブ72の位置を、センサルーメン10Lの先端から被覆部50の先端までの範囲MR、換言すれば、先端開口201を含む所定範囲MR内において移動させることができる。
【0039】
センサ用チューブ10の先端側チューブ11、OTW用チューブ20の先端側チューブ21、RX用チューブ30、及び被覆部50は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の柔軟性を有する材料により形成できる。センサ用チューブ10の先端側チューブ11、OTW用チューブ20の先端側チューブ21、RX用チューブ30、及び被覆部50は、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。
【0040】
センサ用チューブ10の先端側チューブ21と、OTW用チューブ20の基端側チューブ22とは、例えば、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂等の高剛性を有する樹脂により形成できる。センサ用チューブ10の先端側チューブ21と、OTW用チューブ20の基端側チューブ22とは、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。なお、センサ用チューブ10の先端側チューブ11及び基端側チューブ12、OTW用チューブ20の先端側チューブ21及び基端側チューブ22、RX用チューブ30のいずれか1つ以上は、材料が異なるチューブを重ねた複数層構成であってもよい。
【0041】
先端チップ40、第1マーカ41、及び第2マーカ42は、放射線不透過性を有する樹脂材料や金属材料により形成できる。例えば、放射線不透過性の樹脂材料を用いる場合、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等に対して、三酸化ビスマス、タングステン、硫酸バリウム等の放射線不透過材料を混ぜて形成できる。例えば、放射線不透過性の金属材料を用いる場合、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金)等で形成できる。先端チップ40、第1マーカ41、及び第2マーカ42は、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。
【0042】
分岐コネクタ60、第1補強部材61~第3補強部材63、筒状部材64、コネクタ65、及びコネクタ25は、周知の樹脂材料により形成できる。分岐コネクタ60、第1補強部材61~第3補強部材63、筒状部材64、コネクタ65、及びコネクタ25は、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料により形成されていてもよい。
【0043】
図4及び図5は、カテーテル1の使用方法について説明する図である。以降に示す手順a1~a6では、順方向アプローチで血管内に生じたCTO(病変部)の再開通を図る場合を例示する。しかし、カテーテル1は逆方向アプローチで使用されてもよく、CTOの再開通以外の手技のために使用されてもよい。
【0044】
(a1)術者は、ワークホースワイヤ200を血管内に挿入し、ワークホースワイヤ200の先端部をCTOの近くまでデリバリする。(a2)術者は、ワークホースワイヤ200の基端部を、カテーテル1の先端開口301から挿入し、RXルーメン30L内を通過させて、カテーテル1の基端開口302から外部へと引き出す(図4)。(a3)術者は、ワークホースワイヤ200に沿わせてカテーテル1を血管内に押し進め、カテーテル1の先端部をCTOの近くまでデリバリする。なお、手順a3では、ワークホースワイヤ200に沿わせて予め血管内に挿入されたガイディングカテーテル内を通すことで、カテーテル1をCTOの近くまでデリバリしてもよい。(a4)術者は、コネクタ65を把持して前後方向(図5:白抜き矢印の方向)にスライドさせることによって、センサ70のプローブ72の位置を範囲MR内において調整しつつ、コンソール端末に表示された画像を確認することで、CTOと先端開口201との位置及び向きを合わせる。位置とは、血管の延伸方向における位置を意味し、向きとは、血管の内壁周方向における向きを意味する。(a5)術者は、治療用デバイス300の先端部を、カテーテル1の基端開口202から挿入し、OTWルーメン20L内を挿通させて、カテーテル1の先端開口201から突出させる(図5)。(a6)術者は、必要に応じてセンサ70のプローブ72の位置を範囲MR内において調整しつつ、コンソール端末に表示された画像を確認しながら、治療用デバイス300を用いてCTOを治療する。上述の通り、治療用デバイス300としては、プラズマガイドワイヤや、貫通用ガイドワイヤ等の任意のデバイスを利用できる。
【0045】
なお、センサ用チューブ10、OTW用チューブ20、及びRX用チューブ30を総称して「シャフト」とも呼ぶ。また、センサルーメン10Lは「第1ルーメン」に相当し、センサ用チューブ10は「第1チューブ」に相当する。OTWルーメン20Lは「第2ルーメン」に相当し、OTW用チューブ20は「第2チューブ」に相当する。RXルーメン30Lは「第3ルーメン」に相当し、RX用チューブ30は「第3チューブ」に相当する。なお、本実施形態において「同じ」及び「等しい」とは、厳密に一致する場合に限らず、製造誤差等に起因した相違を許容する意味である。また、「一定」とは「概ね一定」と同義であり、製造誤差等に起因したぶれを許容しつつ、概ね一定であることを意味する。
【0046】
図6は、共通外接線について説明する図である。図6(A)は、図1のD-D線におけるカテーテル1の横断面を示す。図6(B)は、図1のF-F線におけるカテーテル1の横断面を示す。図6(A),(B)には、センサ用チューブ10(第1チューブ)と、OTW用チューブ20(第2チューブ)の共通外接線EC1,EC2を、それぞれ破線で示す。共通外接線EC1を「第1共通外接線EC1」とも呼び、共通外接線EC2を「第2共通外接線EC2」とも呼ぶ。
【0047】
図6(A)に示すように、D-D線におけるカテーテル1の横断面では、第1共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周との間には、空隙SPが形成されている。図6(A)に示すように、D-D線におけるカテーテル1の横断面では、第2共通外接線EC2と、カテーテル1の外周(具体的には、被覆部50の外周)との間には、空隙SPが形成されている。D-D線におけるカテーテル1の横断面では、第1共通外接線EC1は、RX用チューブ30と交差する。第1共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周との間に形成された空隙SPは、カテーテル1内部に形成された内腔である。
【0048】
図6(B)に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面では、第1共通外接線EC1と、カテーテル1の外周との間には、空隙SPが形成されている。図6(B)に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面では、第1共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周との間には、空隙SPが形成されている。また、第2共通外接線EC2と、カテーテル1の外周との間には、空隙SPが形成されている。第2共通外接線EC2と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周との間には、空隙SPが形成されている。これらの空隙SPは、上述した「チューブ10,20の隣接部分に形成されているくびれ(凹部)」に相当する。
【0049】
さらに、図6(B)に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面では、カテーテル1の長軸方向における外径Lmax(最大外径)は、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20との外径、換言すれば、チューブ2本分の外径となる。一方で、カテーテル1の短軸方向における外径Lmin(最小外径)は、センサ用チューブ10の外径、換言すれば、チューブ1本分の外径とできる。ここで、外径Lmin(最小外径)は、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20とのうち、より大きい外径を有する一方の外径と等しくなる。
【0050】
なお、カテーテル1の長手方向において、RX用チューブ30が存在する部分(換言すれば、3本のチューブ10,20,30が並んで配置された部分)における任意の位置を「第2の所定位置」とも呼ぶ。また、第2の所定位置よりも基端側(換言すれば、2本のチューブ10,20が並んで配置された部分)における任意の位置を「第1の所定位置」または単に「所定位置」とも呼ぶ。
【0051】
図7は、第1面積S1と第2面積S2について説明する図である。図7は、図1のF-F線におけるカテーテル1の横断面を示す。ここで、カテーテル1の外周によって囲まれた領域の面積を「第1面積S1」と呼ぶ。図7では、第1面積S1を、太枠で囲むと共にドットハッチングを付して表す。図7に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面における第1面積S1は、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって囲まれた領域の面積である。
【0052】
また、第1共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成された輪郭線と、によって囲まれた領域の面積を「第2面積S2」と呼ぶ。図7では、第2面積S2を、破線枠で囲むと共に斜線ハッチングを付して表す。図7に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面における第2面積S2は、第1共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成された輪郭線であって、第1共通外接線EC1から外側に向かって延びる輪郭線(白抜きの破線で図示)とによって囲まれた領域の面積である。
【0053】
図7から明らかなように、第1面積S1(太線枠、ドットハッチング)は、第2面積S2(破線枠、斜線ハッチング)以下である。第1面積S1は、第2面積S2よりも小さい。
【0054】
図8は、第1面積S1と第3面積S3について説明する図である。図8は、図1のF-F線におけるカテーテル1の横断面を示す。ここで、図8にも、図7と同様に、カテーテル1の外周によって囲まれた領域の面積(第1面積S1)を太枠で囲むと共にドットハッチングを付して表す。
【0055】
また、第2共通外接線EC2と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成された輪郭線と、によって囲まれた領域の面積を「第3面積S3」と呼ぶ。図8では、第3面積S3を、破線枠で囲むと共に斜線ハッチングを付して表す。図8に示すように、F-F線におけるカテーテル1の横断面における第3面積S3は、第2共通外接線EC2と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成された輪郭線であって、第2共通外接線EC2から外側に向かって延びる輪郭線(白抜きの破線で図示)とによって囲まれた領域の面積である。
【0056】
図8から明らかなように、第1面積S1(太線枠、ドットハッチング)は、第3面積S3(破線枠、斜線ハッチング)以下である。第1面積S1は、第3面積S3よりも小さい。
【0057】
図9は、ガイディングカテーテル挿入時の様子を説明する図である。図9(A)は、本実施形態のカテーテル1をガイディングカテーテル501に挿入した際の様子を示す。図9(B)は、比較例のカテーテル1xをガイディングカテーテル501に挿入した際の様子を示す。図9では、カテーテル1及びカテーテル1xのうち、全長に占める長さが最も長い、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20のみが並走する部分(F-F線)における横断面を示す。
【0058】
図9(A)に示すように、本実施形態のカテーテル1は、カテーテル1をガイディングカテーテル501に挿入した際に、ガイディングカテーテル501のルーメン内において、併用デバイス(図示の例では、マイクロカテーテル502、ガイドワイヤ503,504)を挿入するスペースを確保することができる。換言すれば、本実施形態のカテーテル1は、ガイディングカテーテル501のルーメン内における併用デバイスの挿入を阻害しない。これは、カテーテル1が、第1面積S1≦第2面積S2の関係を満たすことに起因する。換言すれば、カテーテル1は、本実施形態のカテーテル1は、第1共通外接線EC1とカテーテル1の外周との間の空隙SP(くびれ、凹部)や、第2共通外接線EC2とカテーテル1の外周との間の空隙SP(くびれ、凹部)を有するため、併用デバイス(特にマイクロカテーテル502等の太径のデバイス)を、図示のように、カテーテル1の空隙SPの部分に位置させることができ、ガイディングカテーテル501のルーメン内の空間を有効に利用できる。
【0059】
一方、図9(B)に示すように、比較例のカテーテル1xは、カテーテル1xをガイディングカテーテル501に挿入した際に、被覆部50xが妨げとなって、ガイディングカテーテル501のルーメン内に、マイクロカテーテル502を挿入することができない。すなわち、比較例のカテーテル1xでは、ガイディングカテーテル501のルーメン内に挿入できる併用デバイスの大きさや本数の制約が大きく、ガイディングカテーテル501のルーメン内の空間を有効に利用できない。
【0060】
以上のように、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)は、センサルーメン10L(第1ルーメン)を構成するセンサ用チューブ10(第1チューブ)と、OTWルーメン20L(第2ルーメン)を構成するOTW用チューブ20(第2チューブ)とを備え、センサ用チューブ10の外周面とOTW用チューブ20の外周面とは接合されているため、術者が手元において付加した押込み力を効率的に先端側へと伝達できる。また、カテーテル1の長手方向の所定位置における横断面において、カテーテル1の外周によって囲まれた領域の面積である第1面積S1は、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20との共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第2面積S2以下である。このため、カテーテル1の横断面において、長軸方向における外径Lmax(最大外径)はチューブ2本分の外径となる一方、短軸方向における外径Lmin(最小外径)はチューブ1本分の外径とできる。また、カテーテル1を、その横断面において、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20との隣接部分にくびれ(凹部)を有する構造とできる。この結果、第1実施形態のカテーテル1によれば、カテーテル1の横断面を、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20とを包含する円形状あるいは楕円形状とする従来の構成(例えば図9の構成)と比較して、図9(A)で説明した通り、ガイディングカテーテル501のルーメン内における併用デバイス502,503,504の挿入を阻害しづらい。従って、第1実施形態のカテーテル1によれば、2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテル501の限られたルーメン内において、多くの併用デバイス502,503,504を使用可能とでき、併用デバイスの制限幅を広げることができる。
【0061】
また、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)によれば、カテーテル1の横断面において、共通外接線EC1,EC2と、カテーテル1の外周との間には、空隙SPが形成されているため、カテーテル1をガイディングカテーテル501に挿入した際に、空隙SP部分に併用デバイス502,503,504を位置させることができる。さらに、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)によれば、図6(A)に示すように、1本の共通外接線EC1と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20(第1及び第2チューブ)の外周との間に形成された空隙SPによって、RX用チューブ30(第3チューブ)が存在する場合であっても、カテーテル1を柔軟にできる。
【0062】
さらに、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)は、長手方向の所定位置における横断面において、第1面積S1は、第1共通外接線EC1とは異なるセンサ用チューブ10とOTW用チューブ20との第2共通外接線EC2と、センサ用チューブ10及びOTW用チューブ20の外周によって形成される輪郭線と、によって囲まれた領域の面積である第3面積S3以下である。このため、カテーテル1を、その横断面において、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20との隣接部分の両側に、それぞれくびれ(凹部)を有する構造とできる。この結果、第1実施形態のカテーテル1によれば、2つ以上のルーメンを有する医療デバイスにおいて、ガイディングカテーテル501の限られたルーメン内において、より一層多くの併用デバイス502,503,504を使用可能とでき、併用デバイスの制限幅をより一層広げることができる。
【0063】
さらに、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)によれば、センサルーメン10Lは、画像情報を取得するセンサルーメン10Lであるため、カテーテル1を用いて、超音波によって生体組織の画像情報を取得するセンサ70のガイド下での手技を行うことができる。
【0064】
さらに、第1実施形態のカテーテル1(医療デバイス)はさらにRXルーメン30L(第3ルーメン)を構成するRX用チューブ30(第3チューブ)を備えるため、術者が手元において付加した押込み力をさらに効率的に先端側へと伝達できる。また、RXルーメン30Lを用いて、ワークホースワイヤ200等のデバイスをさらに併用できる。
【0065】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態のカテーテル1Aの横断面図である。図10は、図1のF-F線におけるカテーテル1Aの横断面を示す。第2実施形態のカテーテル1Aは、第1実施形態で説明した構成において、被覆部50に代えて被覆部50Aを備えている。
【0066】
被覆部50Aは、第1実施形態で説明した区間(3本のチューブ10,20,30が並んで延びる区間)に加えてさらに、センサ用チューブ10とOTW用チューブ20のみが並走する区間にも設けられている。換言すれば、被覆部50Aは、カテーテル1の基端開口302と第1補強部材61との間の区間にも設けられている。第2実施形態のカテーテル1Aにおいても、第1実施形態と同様に、第1面積S1≦第2面積S2の関係や、第1面積S1≦第3面積S3の関係が成立している。また、第2実施形態のカテーテル1Aにおいても、第1実施形態と同様に、第1共通外接線EC1とカテーテル1Aの外周との間には空隙SPが形成されており、第2共通外接線EC2とカテーテル1Aの外周との間には空隙SPが形成されている。
【0067】
このように、カテーテル1Aの構成は種々の変更が可能であり、被覆部50Aは、カテーテル1Aの任意の区間に設けられてよい。以上のような第2実施形態のカテーテル1Aにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態のカテーテル1Bの横断面図である。図11(A)は、図1のD-D線におけるカテーテル1Bの横断面を示す。図11(B)は、図1のF-F線におけるカテーテル1Bの横断面を示す。第3実施形態のカテーテル1Bは、第1実施形態で説明した構成において、被覆部50に代えて接合剤51を備えている。
【0069】
接合剤51は、センサ用チューブ10、OTW用チューブ20、及びRX用チューブ30の隣接部分に配置されて、3本のチューブ10,20,30を互いに接合している。接合剤51としては、例えば、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。第3実施形態のカテーテル1Bにおいても、第1実施形態と同様に、第1面積S1≦第2面積S2の関係や、第1面積S1≦第3面積S3の関係が成立している。また、第3実施形態のカテーテル1Bにおいても、第1実施形態と同様に、第1共通外接線EC1とカテーテル1Bの外周との間には空隙SPが形成されており、第2共通外接線EC2とカテーテル1Bの外周との間には空隙SPが形成されている。
【0070】
このように、カテーテル1Bの構成は種々の変更が可能であり、被覆部50に代えて、接合剤51によってセンサ用チューブ10、OTW用チューブ20、及びRX用チューブ30が固定されていてもよい。以上のような第3実施形態のカテーテル1Bにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
[変形例1]
上記第1~第3実施形態では、カテーテル1,1A~1Bの構成の一例を示した。しかし、カテーテル1,1A~1Bの構成は種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、被覆部50の外周面、あるいは、被覆部50を含むカテーテル1の外周面が、親水性樹脂や疎水性樹脂によってコーティングされていてもよい。例えば、センサ70は、センサ用チューブ10のセンサルーメン10Lに内蔵されており、カテーテル1から取り外し不可能な構成とした。しかし、センサ70は、カテーテル1から取り外し可能に構成されてもよい。すなわち、カテーテル1は、センサ70を構成要素として含んでいなくてもよい。
【0074】
例えば、先端チップ40と、第1マーカ41と、第2マーカ42とのうちの少なくとも1つ以上は、省略されてもよい。例えば、先端チップ40、第1マーカ41、及び第2マーカ42の形状は任意に変更可能である。先端チップ40は、先端から基端に向かって一定の外径を有していてもよく、横断面の形状が非円対称形状であってもよい。第1マーカ41や第2マーカ42は、円環状とは異なる形状(例えば、円環を任意の角度でカットした形状や、線状、素線を螺旋状に巻回したコイル状)であってもよい。
【0075】
例えば、先端チップ40、第1マーカ41、及び第2マーカ42の配置は任意に変更可能である。第1マーカ41は、先端チップ40の基端に隣り合った位置とは異なる位置(例えば、先端チップ40から離れた位置)に配置されてもよい。第2マーカ42は、OTW用チューブ20の先端開口201の先端に隣り合った位置とは異なる位置(例えば、先端開口201から離れた位置)に配置されてもよい。第1マーカ41や第2マーカ42は、RX用チューブ30とは異なるチューブ上(センサ用チューブ10や、OTW用チューブ20)に配置されてもよい。第1マーカ41と第2マーカ42とは、上述のように同一のチューブ上に配置されていてもよいし、異なるチューブ上に配置されていてもよい。
【0076】
例えば、センサ用チューブ10は、1本のチューブにより構成されてもよく、3本以上のチューブにより構成されてもよい。OTW用チューブ20についても同様に、1本のチューブにより構成されてもよく、3本以上のチューブにより構成されてもよい。RX用チューブ30についても同様に、2本以上のチューブにより構成されてもよい。
【0077】
例えば、上述した分岐コネクタ60、第1補強部材61~第3補強部材63、筒状部材64、コネクタ65、及びコネクタ25の形状はあくまで一例であり、任意に変更してよい。例えば、分岐コネクタ60、第1補強部材61、第2補強部材62、及び筒状部材64のうちの少なくとも一部分は、1つの部材として構成されてもよく、省略されてもよい。例えば、第3補強部材63とコネクタ25とは、1つの部材として構成されてもよい。例えば、筒状部材64において、センサ70の前後位置と、センサ70の周方向における向きと、の少なくとも一方の調整を補助する機構(例えば、長手方向における所定長さごとに設けられた目盛やストッパ、周方向における所定角度ごとに設けられた目盛やストッパ)を備えていてもよい。
【0078】
[変形例2]
上記第1~第3実施形態のカテーテル1,1A~1Bの構成、及び上記変形例1のカテーテル1,1A~1Bの構成は、適宜組み合わせてもよい。
【0079】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11