IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両搬送装置 図1
  • 特開-車両搬送装置 図2
  • 特開-車両搬送装置 図3
  • 特開-車両搬送装置 図4
  • 特開-車両搬送装置 図5
  • 特開-車両搬送装置 図6
  • 特開-車両搬送装置 図7
  • 特開-車両搬送装置 図8
  • 特開-車両搬送装置 図9
  • 特開-車両搬送装置 図10
  • 特開-車両搬送装置 図11
  • 特開-車両搬送装置 図12
  • 特開-車両搬送装置 図13
  • 特開-車両搬送装置 図14
  • 特開-車両搬送装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166756
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/34 20060101AFI20241122BHJP
   B60P 3/075 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04H6/34
B60P3/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083077
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和久
(57)【要約】
【課題】前輪を車両搬送装置に搭載し、後輪を接地した状態で車両を搬送する際に、ホイールベースが異なる複数種の車両を所定の走行経路に沿って搬送する。
【解決手段】車両Cの前輪W1を車両搬送装置1に搭載し、車両Cの後輪W2を接地した状態における、車両搬送装置1の前方の車輪9Aの中心O3と車両Cの後輪W2の中心O2との間の水平方向距離である搭載時ホイールベースLを取得する。この搭載時ホイールベースLに基づいて、車両搬送装置1の車輪9の切れ角を設定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転舵輪と、車両の一部の車輪を搭載する搭載部とを有し、前記搭載部に前記車両の一部の車輪を搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態で前記車両を搬送する車両搬送装置であって、
前記搭載部に前記車両の一部の車輪を搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態における、前記転舵輪と前記車両の他の車輪との間の搭載時ホイールベースを取得する搭載時ホイールベース取得手段と、前記搭載時ホイールベース取得手段で取得した前記搭載時ホイールベースに基づいて前記転舵輪の切れ角を設定する制御部とを有する車両搬送装置。
【請求項2】
前記搭載時ホイールベース取得手段が、前記搭載部に前記車両の一部の車輪を搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態における、前記車両のボデーの水平方向に対する傾斜角を用いて、前記搭載時ホイールベースを算出する請求項1に記載の車両搬送装置。
【請求項3】
車両の一部の車輪を車両搬送装置に搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態で、前記車両搬送装置の転舵輪と前記車両の他の車輪との間の搭載時ホイールベースを取得する工程と、
前記搭載時ホイールベースに基づいて前記車両搬送装置の転舵輪の切れ角を設定する工程とを有する車両搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で車両が完成したら、完成車両をストックする車両待機場まで搬送される。このような車両の搬送は、通常、複数の車両を搭載可能なトレーラーを用いて行われるが、この場合、トレーラーを運転する作業者が必要になるため、コストアップを招く。
【0003】
そこで、下記の特許文献1には、車両を自動で搬送する車両搬送装置が示されている。このような車両搬送装置を用いれば、トレーラーを運転する作業者が不要となるため、低コスト化が図られる。
【0004】
また、下記の特許文献2には、搬送すべき車両の前輪のみを搭載し、後輪は接地した状態で搬送する車両搬送装置が示されている。このように、車両の前輪のみを搭載することで、特許文献1のように全ての車輪を搭載する場合と比べて、車両搬送装置を小型化できると共に、車両搬送装置への車両の搭載が容易化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-78099号公報
【特許文献2】特開2021-161703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、車両の全ての車輪を車両搬送装置に搭載する場合、車両の種類が搬送時の旋回性能に影響することはない。一方、上記特許文献2の車両搬送装置に車両の前輪を搭載した状態では、車両搬送装置の車輪と車両の後輪とが接地した状態となる。この場合、車両搬送装置の車輪と車両の後輪との中心間距離が、車両を車両搬送装置に搭載した状態での実質的なホイールベース(以下、「搭載時ホイールベース」と言う。)となる。この場合、車両の種類(ホイールベース)によって、搭載時ホイールベースが異なるため、搬送時の旋回性能(特に、旋回時の回転半径)が異なる。そのため、車両の種類によっては、搬送時の実際の走行経路が、予め設定した所定の走行経路を外れてしまい、無理な旋回になって車両の搬送が不安定になったり、車両が周辺の障害物に接触して損傷したりする恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、車両の一部の車輪(例えば前輪)を車両搬送装置に搭載し、他の車輪(例えば後輪)を接地した状態で搬送する際に、複数種の車両を所定の走行経路に沿って搬送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、転舵輪と、車両の一部の車輪を搭載する搭載部とを有し、前記搭載部に前記車両の一部の車輪を搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態で前記車両を搬送する車両搬送装置であって、
前記搭載部に前記車両の一部の車輪を搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態における、前記転舵輪と前記車両の他の車輪との間の搭載時ホイールベースを取得する搭載時ホイールベース取得手段と、前記搭載時ホイールベース取得手段で取得した前記搭載時ホイールベースに基づいて前記転舵輪の切れ角を設定する制御部とを有する車両搬送装置を提供する。
【0009】
このように、本発明では、車両の一部の車輪を車両搬送装置に搭載し、他の車輪を接地させた状態における搭載時ホイールベースを取得し、この搭載時ホイールベースに基づいて転舵輪の切れ角を設定する。これにより、ホイールベースが異なる複数種の車両を搬送する場合でも、所定の走行経路に沿って搬送することができる。
【0010】
搭載時ホイールベースは、例えば、車両のホイールベースを用いて算出することができる。あるいは、車両の一部の車輪を搭載し、他の車輪を接地した状態における、車両のボデーの水平方向に対する傾斜角を用いて、搭載時ホイールベースを算出することもできる。
【0011】
本発明は、車両の一部の車輪を車両搬送装置に搭載し、前記車両の他の車輪を接地した状態で、前記車両搬送装置の転舵輪と前記車両の他の車輪との間の搭載時ホイールベースを取得する工程と、前記搭載時ホイールベースに基づいて前記車両搬送装置の転舵輪の切れ角を設定する工程とを有する車両搬送方法としても特徴づけることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の車両搬送装置によれば、ホイールベースが異なる複数種の車両を、所定の走行経路に沿って搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】工場からコンテナヤードまで車両を自動で搬送する自動搬送システムを示す平面図である。
図2】車両搬送装置の側面図である。
図3】上記車両搬送装置の斜視図である。
図4】上記車両搬送装置の正面図である。
図5】上記車両搬送装置の平面図である。
図6】上記車両搬送装置の側面図である。
図7】車両を搭載位置に配置してから搬送を開始するまでの手順を示すフロー図である。
図8】車両のホイールベースを取得する方法の一例を示す平面図である。
図9】車両搬送装置の車輪と車両の車輪との幾何学的関係を示す側面図である。
図10】車両搬送装置が旋回する様子を示す平面図である。
図11】車両のホイールベースを取得する方法の他の例を示す平面図である。
図12】車両のホイールベースを取得する方法のさらに他の例を示す平面図である。
図13】他の実施形態に係る車両搬送装置の側面図である。
図14図13の実施形態において、車両を搭載位置に配置してから搬送を開始するまでの手順を示すフロー図である。
図15図13の車両搬送装置の車輪と車両の車輪との幾何学的関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係る車両搬送装置1により、車両Cを工場Fから車両待機場(コンテナヤードY)に搬送する自動搬送システムを概念的に示す。車両搬送装置1は、システム制御部Sからの無線指令(点線矢印)に従って、工場FとコンテナヤードYとの間を往復する。本実施形態では、車両Cが前輪駆動車であり、車両Cの前輪を車両搬送装置1に搭載し、車両の後輪を接地した状態で車両Cを搬送する場合を示す。
【0016】
車両搬送装置1は、図2~6に示すように、車両Cの前輪W1が搭載される搭載部としての本体2と、本体2の幅方向(本体2に搭載された車両Cの車幅方向)両側に設けられた駆動輪ユニット3とを有する。
【0017】
本体2には、車両Cの前輪W1の前後方向移動を規制する車輪止め5(図2参照)と、駆動輪ユニット3に電力を供給するバッテリー(図示省略)と、駆動輪ユニット3を制御する制御部(図示省略)とが搭載される。システム制御部Sからの指令が、車両搬送装置1に設けられたアンテナ(図示省略)を介して車両搬送装置1の制御部に伝達され、また、車両搬送装置1の制御部からの情報が、アンテナを介してシステム制御部Sに伝達される。
【0018】
駆動輪ユニット3は、車輪9と、車輪9を走行駆動する走行用モータ11(図4参照)と、転舵用モータ12により車輪9を転舵する転舵機構10(図3~6参照)と、車輪を制動する制動手段としてのブレーキ機構(図示省略)と、これらを収容するケーシング13(図2参照)とを備える。車輪9は、走行用モータ11で駆動される駆動輪であり、且つ、転舵機構10で転舵される転舵輪である。図示例では、各駆動輪ユニット3が、前後方向に並べて配された一対の車輪9を有する(以下、前方の車輪を「9A」、後方の車輪を「9B」とも言う。)。尚、図3~6では、一部の部品(ケーシング13の一部や、車輪止め5等)を省略している。
【0019】
走行用モータ11は、図4に示すように、各車輪9の内周に配されたインホイールモータで構成される。走行用モータ11の出力軸11aは、車輪9の軸心(金属ホイール)に固定される。図示例では、走行用モータ11の出力軸11aの先端が、軸受20を介してブラケット19に回転自在に取り付けられる。走行用モータ11及び転舵用モータ12は、本体2に搭載されたバッテリー及び制御部に接続され、制御部からの指令に基づいて回転駆動される。
【0020】
転舵機構10は、転舵用モータ12により各車輪9を鉛直方向の転舵軸14周りに回転させる機構である。本実施形態では、図3~6に示すように、各転舵軸14が車輪9の真上に配される。各転舵軸14には、ブラケット19を介して、走行用モータ11の本体(ステータ)11bが固定される(図4参照)。各転舵軸14は、ケーシング13に、軸受(図示省略)を介して回転自在に取り付けられる(すなわち、360°回転可能とされる)。
【0021】
図示例の転舵機構10では、一個の転舵用モータ12で、複数(図示例では2個)の転舵軸14を回転駆動する。具体的には、転舵用モータ12を駆動すると、転舵用モータ12の出力軸12aの回転駆動力が傘歯車やウォームギヤ等(図示省略)を介して中間軸15に伝達される(図5参照)。そして、中間軸15に設けられたプーリ16の回転駆動力が、ベルト18を介して各転舵軸14に設けられたプーリ17に伝達され、二個の転舵軸14が同方向(中間軸15の回転方向と反対方向)に同角度だけ回転駆動される。図示例では、中間軸15のプーリ17が転舵軸14のプーリ17よりも小径であるため、中間軸15の回転駆動力が減速されて(すなわち、トルクが増大されて)各転舵軸14に伝達される。
【0022】
転舵機構10には、車輪9の転舵角を検知する角度センサ21が設けられる(図6参照)。図示例では、角度センサ21としてのポテンショメータで、中間軸15の回転角度が検知される。中間軸15の回転角度、及び、転舵機構10の各部の減速比から、各転舵軸14の回転角度、すなわち車輪9の切れ角を算出する。尚、角度センサで、各転舵軸14の回転角度を直接検知してもよい。
【0023】
本実施形態の車両搬送装置1は、撮像部としてのカメラ40を有する(図2参照)。カメラ40は、車両Cを搬送する際の進行方向前方(図2の左側)を撮影する向きに設けられる。カメラ40はバッテリー及び制御部に接続される。カメラ40の撮影画像から、障害物の有無等を検知することができる。
【0024】
以下、上記の車両搬送装置1により車両Cを搬送する手順を説明する。
【0025】
まず、工場F(図1参照)で完成した車両Cを、工場F内の所定位置(搭載位置)に配置する。そして、車両Cの前部を図示しないリフト手段で上昇させ、この状態で、車両Cの下方に車両搬送装置1の本体2を潜り込ませる。そして、リフト手段で車両Cの前部を降下させ、左右の前輪W1を車両搬送装置1の本体2の上に搭載し、車輪止め5の間に嵌まり込ませる(図2参照)。
【0026】
こうして、車両Cの前輪W1(駆動輪)を車両搬送装置1に搭載し、後輪W2(従動輪)を接地した状態で、車両搬送装置1を駆動して車両Cを搬送する(図1の経路P1参照)。具体的には、システム制御部Sからの指令が、車両搬送装置1のアンテナを介して制御部に伝達され、この指令に従って制御部が各駆動輪ユニット3の走行用モータ11及び転舵用モータ12を回転駆動して車輪9の走行駆動及び転舵を行う。これにより、車両搬送装置1及び車両Cが所定の経路P1に沿って搬送される。
【0027】
ところで、図2に示すように、車両Cの前輪W1を車両搬送装置1に搭載した状態では、接地した車輪、すなわち、車両搬送装置1の車輪9と車両Cの後輪W2との間の水平方向距離が、実質的なホイールベース(搭載時ホイールベースL)となる。本実施形態では、車両搬送装置1の前方の車輪9Aの中心O3と車両Cの後輪W2の中心O2との間の水平方向距離を、搭載時ホイールベースLとする。
【0028】
本実施形態の車両搬送装置1には、搭載時ホイールベースLを取得する搭載時ホイールベース取得手段が設けられる。本実施形態の搭載時ホイールベース取得手段は、車両Cを撮像する撮像部としてのカメラ40と、駆動輪ユニット3を制御する制御部に設けられた算出部とを有する。
【0029】
ここで、図7を用いて、車両Cを搭載位置に配置してから、搬送を開始するまでの手順を説明する。まず、車両Cを工場内の所定位置(搭載位置)に配置する(ステップS0)。その後、図8に示すように、車両Cの幅方向一方側に車両搬送装置1を配置し、車両搬送装置1に設けられたカメラ40で車両Cを幅方向一方側から撮影する(ステップS1)。この撮影画像が制御部に伝達され、制御部は、この撮影画像から車両CのホイールベースL1を取得する(ステップS2)。
【0030】
図9に、車両搬送装置1の前方の車輪9Aと、車両Cの前輪W1及び後輪W2との幾何学的関係を示す。図9のHは、車両搬送装置1に搭載された前輪W1の下端の床面からの高さ(=前輪W1の中心O1と後輪W2の中心O3との高低差)であり、以下、「前輪W1の設置高さ」と言う。図9のEは、車両搬送装置1に搭載された前輪W1の中心O1と車両搬送装置1の前方の車輪9Aの中心O3との水平方向距離であり、以下、「車輪中心ズレ量」と言う。車両Cの前輪W1は本体2の上に搭載されるため、前輪W1の設置高さHは車種(前輪W1の外径等)によらず略一定である。また、車両Cの前輪W1は、一対の止め輪5により前後方向で位置決めされているため、車輪中心ズレ量Eは車種によらず略一定である。このように、前輪W1の設置高さH及び車輪中心ズレ量Eは、車両Cの種類によらず、車両搬送装置1の構成のみから定まる略一定の値である。
【0031】
そして、制御部が、搭載時ホイールベースLを算出する(ステップS3)。本実施形態では、車両搬送装置1の制御部に、車両Cの前輪W1の設置高さHと車輪中心ズレ量Eとを予め記憶させておく。そして、カメラ40の撮影画像から取得した車両CのホイールベースL1と、予め制御部に記憶された前輪W1の設置高さH及び車輪中心ズレ量Eとを、図9に示す幾何学的な関係から得られる下記の式(1)に代入することで、搭載時ホイールベースLを算出する。尚、図9のL2は、車両搬送装置1に搭載された車両Cの前輪W1の中心O1と、接地された後輪W2の中心O2との間の水平方向距離である。
【0032】
【数1】
【0033】
このとき、図10に示すように、車両搬送装置1で車両Cを搬送しながら旋回する際の外側の車輪9の切れ角をα、内側の車輪の切れ角をβ、車両Cの前輪W1のトレッド(左右車輪の車幅方向中心間距離)をTfとしたとき、車両搬送装置1で搬送される車両Cの旋回時の回転半径Rは以下の式(2)で表される。尚、図10では、車両搬送装置1の図示を簡略化して、左右一個ずつの車輪9のみを示している。
【0034】
【数2】
【0035】
制御部は、上記の旋回時の回転半径Rが、予め設定された経路P1のカーブの曲率半径と一致するように、各車輪の切れ角α、βを設定する(ステップS4)。これにより、ホイールベースL1が異なる複数種の車両Cを、常に所定の経路P1に沿って搬送することができる。
【0036】
ところで、車両搬送装置1で車両Cを搬送する際、車輪9の切れ角が大きすぎると、車両搬送装置1の走行が不安定となったり、車両搬送装置1と車両Cとが干渉したりする恐れがある。本実施形態では、これらの不具合が生じないように、車両Cを車両搬送装置1に搭載した状態での重心位置、搬送速度、及び搭載時ホイールベースL1等を考慮して、車両搬送装置1の車輪9の最大切れ角が設定され、この値に基づいて、車両Cを車両搬送装置1に搭載した状態での最小回転半径R0が設定される。経路P1のカーブの曲率半径は、上記の最小回転半径R0以上となるように設定される。
【0037】
こうして、車両搬送装置1の走行条件(特に、旋回時の車輪9の切れ角)を設定した後、走行を開始する(ステップS5)。尚、車両Cの前輪W1の車両搬送装置1への搭載は、車両CのホイールベースL1を取得(ステップS2)した後、走行開始(ステップS5)までの間の任意のタイミングで行えばよい。
【0038】
そして、車両搬送装置1で搬送された車両Cが、コンテナヤードY内の所定位置に配される(図1参照)。その後、コンテナヤードYに設けられたリフト手段で車両Cの前部を上昇させ、この状態で車両搬送装置1を前方に走行させて車両Cの下方から退避させる。その後、リフト手段で車両Cの前部を降下させ、前輪W1を接地させる。
【0039】
車両Cから分離された車両搬送装置1は、工場Fに向けて走行する(図1の経路P2、P3参照)。そして、空の車両搬送装置1が工場Fに到着したら、この車両搬送装置1に新たな車両Cを搭載して、コンテナヤードYまで搬送する。以上を繰り返すことにより、工場FからコンテナヤードYまで車両Cを自動で搬送することができる。
【0040】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0041】
上記の実施形態では、カメラ40の撮影画像に基づいて車両CのホイールベースL1を取得した場合を示したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、車両搬送装置1を車両Cの側方で前後方向に走行させながら、車両搬送装置1の下部(車輪W1、W2と同じ高さ)に設けられたセンサ41(光電センサ、近接センサ等)で車両Cの前輪W1と後輪W2の前後方向位置を検知することで、車両CのホイールベースL1を取得してもよい。
【0042】
あるいは、工場Fに設けられたカメラで車両Cを撮影し、この撮影画像から車両CのホイールベースL1を取得してもよい。この場合、図12に示すように、車両Cが配置される床面に、車体前後方向に離隔した複数の目安線42を設けておくことで、撮影画像からのホイールベースL1の取得が容易化される。また、車両Cを撮影するカメラとして、工場Fに既に設置されている監視カメラ等を利用してもよい。
【0043】
あるいは、予め、制御部(あるいはシステム制御部S)に、車種ごとのホイールベースL1のデータベースを記憶させ、このデータベースから、搬送する車両CのホイールベースL1を取得してもよい。例えば、各車両Cに車種の情報が埋め込まれたICタグを貼付しておき、このICタグを、車両搬送装置1に設けられた読取機で読み取ることで、搬送する車両Cの車種を特定する。そして、制御部等に記憶されたデータベースから、その車種に対応するホイールベースL1を取得することができる。
【0044】
また、上記の実施形態では、車両CのトレッドTfを用いて、搬送する車両Cの旋回時の回転半径Rを算出する場合{上記の式(2)参照}を示したが、車両Cを搬送する際には、車両CのトレッドTfだけでなく、車両搬送装置1の車輪9のトレッドも、旋回時の回転半径Rに影響する。従って、車両CのトレッドTfに代えて、あるいはこれに加えて、車両搬送装置1の車輪9のトレッドを用いて、搬送する車両Cの旋回時の回転半径Rを算出してもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、車両CのホイールベースL1を用いて搭載時ホイールベースLを算出する場合を示したが、これに限られない。図13に示す実施形態では、車両Cの前輪W1を車両搬送装置1に搭載したときの車両CのボデーC1の水平方向に対する傾斜角θ(以下、「ボデー傾斜角θ」と言う。)を用いて、搭載時ホイールベースLを算出する。
【0046】
本実施形態の車両搬送装置1は、搭載された車両CのボデーC1を車幅方向から撮像するカメラ44を有する。図示例では、カメラ44が、ボデーC1の下端に設けられた延びる直線部分を車幅方向から撮影する位置に設けられる。また、本実施形態の車両搬送装置1は、搭載された前輪W1を車幅方向から撮影するカメラ45を有する。図示例では、カメラ45が、前輪W1の外周部のうち、中心よりも上方部分を含む領域を撮影する位置に設けられる。
【0047】
本実施形態では、図14に示すように、車両Cを所定の搭載位置に配置した後(ステップS10)、車両Cの前輪W1を車両搬送装置1に搭載する(ステップS11)。その後、カメラ44でボデーC1を撮影すると共に、カメラ45で前輪W1を撮影する(ステップS12)。具体的に、カメラ44が、ボデーC1の下端に設けられた延びる直線部分を車幅方向から撮影し、カメラ45が、搭載された前輪W1を車幅方向から撮影する。制御部は、カメラ44、45の撮影画像から、ボデー傾斜角θ及び前輪W1の直径Dを取得する(ステップS13)。本実施形態では、カメラ44の撮影画像から、ボデーC1の下端の直線部分の水平方向に対する角度をボデー傾斜角θとして取得する。また、カメラ45の撮影画像から、前輪W1の外周の曲率を取得し、この曲率から前輪W1の直径Dを算出する。尚、本実施形態では、2つのカメラ44、45を用いたが、1つのカメラでボデーC1及び前輪W1を撮影し、この撮影画像を用いてボデー傾斜角θ及び前輪W1の直径Dを取得してもよい。
【0048】
制御部には、上記の実施形態と同様に、予め、前輪W1の設置高さHと、車輪中心ズレ量Eが記憶されている。そして、図14に示す幾何学的関係から、制御部が搭載時ホイールベースLを算出する。具体的には、まず、前輪W1の設置高さHと半径D/2とから、前輪W1の中心O1の高さ(側面視における座標)を算出する。そして、前輪W1の中心Oから、ボデー傾斜角θと平行な方向に延ばした線と、地面から後輪W2の半径(=前輪W1の半径D/2)の高さの水平線との交点を、後輪W2の中心O2とする。これにより、前輪W1の中心O1と後輪W2の中心O2との間の水平方向距離L2が取得でき、この距離L2と車輪中心ズレ量Eとの和が、搭載時ホイールベースLとなる(ステップS14)。
【0049】
こうして搭載時ホイールベースLを取得した後、これに基づいて車輪9の切れ角α、βを設定し(ステップS15)、車両搬送装置1による車両Cの搬送を開始する(ステップS16)。
【0050】
以上の実施形態では、車両Cの前輪W1を車両搬送装置1に搭載し、後輪W2を接地した状態で、車両Cを搬送する場合を示したが、これに限らず、車両Cの後輪W2を車両搬送装置1に搭載し、前輪W1を接地した状態で、車両Cを搬送してもよい。この場合、車両Cの後方が、搬送時の前方となる。
【0051】
また、以上の実施形態では、車両搬送装置1に設けられた前方の車輪9Aと、車両Cの後輪W2との中心間距離を搭載時ホイールベースLとしたが、これに限られない。例えば、車両搬送装置1に設けられた後方の車輪9Bの中心と、車両Cの後輪W2の中心との水平方向距離を搭載時ホイールベースLとしてもよい。あるいは、車両搬送装置1に設けられた前方の車輪9Aと後方の車輪9Bとの前後方向中央部と、車両Cの後輪W2の中心との間の水平方向距離を搭載時ホイールベースLとしてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、搭載時ホイールベースLの算出(図7のステップS3、図14のステップS14)や車輪の切れ角の設定(図7のステップS4、図14のステップS15)を、車両搬送装置1の制御部(算出部)で行う場合を示したが、これらの何れかあるいは双方を、車両搬送装置1の制御部ではなく、システム制御部Sで行ってもよい。
【0053】
また、車両Cを車両搬送装置1に搭載する際に、車両搬送装置1の車輪9の最大切れ角を設定してもよい。例えば、車両Cと駆動輪ユニット3との間の車幅方向の隙間を取得し、この隙間の値に基づいて、車輪9の最大切れ角を設定することができる。具体的には、例えば、左右の駆動輪ユニット3の車幅方向の間隔と、搭載する車両Cの車幅とから、駆動輪ユニット3と車両Cとの間の車幅方向の隙間を算出することができる。左右の駆動輪ユニット3の車幅方向の間隔は、各車両搬送装置1に固有の値であるため、例えば予め制御部に記憶しておく。搭載する車両Cの車幅は、例えば、カメラ40で車両Cを前後方向から撮影した画像から取得できる。この他、車両搬送装置1に距離センサを設け、この距離センサにより駆動輪ユニット3と車両Cとの間の車幅方向の隙間を測定してもよい。
【0054】
また、車両搬送装置1の構成は上記に限らず、例えば車輪9の数を上記と異ならせてもよい。例えば、車両搬送装置1に、幅方向両端に設けられた一対の転舵輪(且つ駆動輪)と、その前方の幅方向中央に設けられた1個の車輪(従動輪)とを設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 車両搬送装置
2 本体(搭載部)
3 駆動輪ユニット
9 車輪(転舵輪)
10 転舵機構
40 カメラ
C 車両
F 工場
L 搭載時ホイールベース
L1 車両のホイールベース
S システム制御部
W1 車両の前輪
W2 車両の後輪
Y コンテナヤード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15