(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166759
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】紙製バリア材料
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20241122BHJP
D21H 19/40 20060101ALI20241122BHJP
D21H 19/62 20060101ALI20241122BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20241122BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20241122BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241122BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B32B29/00
D21H19/40
D21H19/62
D21H27/30 C
D21H27/10
B65D65/40 D
B65D65/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083080
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】松宮 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】早川 聡美
(72)【発明者】
【氏名】浜村 政博
(72)【発明者】
【氏名】紺屋本 博
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
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3E086AD01
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3E086DA08
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4L055EA14
4L055EA16
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4L055EA32
4L055FA14
(57)【要約】
【課題】新規な紙製バリア材料を提供すること。
【解決手段】紙基材上に水蒸気バリア層を有し、
前記水蒸気バリア層が、ポリウレタン系樹脂と膨潤性マイカを含有し、
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、前記ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有する紙製バリア材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に水蒸気バリア層を有し、
前記水蒸気バリア層が、ポリウレタン系樹脂と膨潤性マイカを含有し、
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、前記ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有することを特徴とする紙製バリア材料。
【請求項2】
前記ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度が、-20℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料。
【請求項3】
前記膨潤性マイカのアスペクト比が、300以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【請求項4】
前記膨潤性マイカの体積50%平均粒子径が、10μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【請求項5】
前記水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、前記膨潤性マイカを5重量部以上35重量部以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【請求項6】
前記水蒸気バリア層上に、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【請求項7】
前記ガスバリア層が、水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項6に記載の紙製バリア材料。
【請求項8】
前記水蒸気バリア層の塗工量(乾燥重量)が3g/m2以上8g/m2以下、前記ガスバリア層の塗工量(乾燥重量)が4g/m2以上10g/m2以下であることを特徴とする請求項6に記載の紙製バリア材料。
【請求項9】
前記紙製バリア材料の40℃、90%RH条件下における水蒸気透過度が、0.1g/m2・day以上15g/m2・day以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製バリア材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の材料、特に紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。
従来から、紙製の包装材料へのガスバリア性の付与には、紙基材上にガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、さらに酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を紙基材に押し出しラミネートする、または貼合する方法が主に用いられてきた。
紙製の包装材料に耐水性(特に、水蒸気バリア性)を付与することも、包装される各種製品を水蒸気による劣化から守るために重要である。
【0003】
本出願人は、ガスバリア性と水蒸気バリア性を備えた紙製の包装材料として、紙基材上に、水蒸気バリア性樹脂と顔料を含む水蒸気バリア層と、ポリビニルアルコール系樹脂と顔料を含むガスバリア層を有する紙製バリア包装材料を提案している(特許文献1)。
また、このような紙製バリア包装材料において、少なくとも一方の最外層にシーラント層を設けることにより、ヒートシール加工を可能としたものが知られている。例えば、特許文献2には、溶融押し出しラミネート法、ドライラミネート法、直接溶融コート法によりラミネート層(シーラント層に相当)を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/069788号
【特許文献2】国際公開第2017/170462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規な紙製バリア材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.紙基材上に水蒸気バリア層を有し、
前記水蒸気バリア層が、ポリウレタン系樹脂と膨潤性マイカを含有し、
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、前記ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有することを特徴とする紙製バリア材料。
2.前記ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度が、-20℃以上150℃以下であることを特徴とする1.に記載の紙製バリア材料。
3.前記膨潤性マイカのアスペクト比が、300以上であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製バリア材料。
4.前記膨潤性マイカの体積50%平均粒子径が、10μm以上25μm以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
5.前記水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、前記膨潤性マイカを5重量部以上35重量部以下含有することを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
6.前記水蒸気バリア層上に、ガスバリア層を有することを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
7.前記ガスバリア層が、水溶性高分子を含有することを特徴とする6.に記載の紙製バリア材料。
8.前記水蒸気バリア層の塗工量(乾燥重量)が3g/m2以上8g/m2以下、前記ガスバリア層の塗工量(乾燥重量)が4g/m2以上10g/m2以下であることを特徴とする6.または7.に記載の紙製バリア材料。
9.前記紙製バリア材料の40℃、90%RH条件下における水蒸気透過度が、0.1g/m2・day以上15g/m2・day以下であることを特徴とする1.~8.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、新規な紙製バリア材料を提供することができる。本発明の紙製バリア材料は、水蒸気バリア性に優れている。ガスバリア層を備える本発明の紙製バリア材料は、さらにガスバリア性にも優れている。
本発明の紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れ、屈曲時のバリア性の低下が小さい。そのため、本発明の紙製バリア材料は、屈曲が起こりやすい軟包装袋に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「紙製バリア材料」
本発明の紙製バリア材料は、紙基材と、この紙基材上に水蒸気バリア層を有し、
水蒸気バリア層が、ポリウレタン系樹脂と膨潤性マイカとを含有し、水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有する。
【0009】
(紙基材)
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、これらの1種、または2種以上を配合して用いることができる。これらの中でも、紙基材中への異物混入が発生し難いこと、使用後に古紙原料に供してリサイクルする際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、木材繊維の化学パルプ、木材繊維の機械パルプを用いることが好ましく、木材繊維の化学パルプを用いることがより好ましい。
【0010】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を必要に応じて使用することができる。
また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0011】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上を混合して使用することができる。
【0012】
紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
この様にして得られる紙基材としては、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知のものが例示可能である。
【0013】
紙基材の坪量は、紙製バリア材料に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m2以上500g/m2以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、容器、カップなど、包装用途に使用する紙製バリア材料の場合は、25g/m2以上400g/m2以下のものがより好ましく、特に後述する軟包装袋用途に使用する紙製バリア材料の場合は、30g/m2以上110g/m2以下のものがより好ましい。
紙基材の厚さは、紙製バリア材料に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、30μm以上600μm以下であることが好ましく、45μm以上125μm以下であることがより好ましい。
【0014】
(水蒸気バリア層)
水蒸気バリア層は、ポリウレタン系樹脂と膨潤性マイカとを含有し、水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有する。
【0015】
[ポリウレタン系樹脂]
ポリウレタン系樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートと必要に応じて鎖延長剤等との反応により得ることができる。本発明のポリウレタン系樹脂は、ウレア結合を有するポリウレタンウレアでもよい。ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリウレタンの原料として用いられているものを特に制限することなく使用することができる。また、ポリイソシアネートも特に制限されず、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート等のポリウレタンの原料として用いられているものを特に制限することなく使用することができるが、水蒸気バリア性の観点から、環状イソシアネートが好ましく、具体的には、MDI、水添MDI、XDI、水添XDI等が挙げられる。本発明において、ポリウレタン系樹脂として、1種または2種以上を混合して使用することもできる。
【0016】
ポリウレタン系樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以上150℃以下であることが好ましく、-10℃以上140℃以下であることがより好ましく、0℃以上135℃以下がさらに好ましい。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7122:2012に準拠して測定される。
ポリウレタン系樹脂としては市販品を用いることもでき、たとえば、三井化学株式会社製の「タケラックW系」、「タケラックWPB系」、「タケラックWS系」等が挙げられ、具体的には、タケラックWPB-341(商品名)が挙げられる。
水蒸気バリア層は、水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、ポリウレタン系樹脂を65重量部以上88重量部以下含有する。ポリウレタン系樹脂の含有量がこの範囲内であれば、水蒸気バリア性に優れるとともに、塗布に適した粘度への調整が容易である。水蒸気バリア層は、水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、ポリウレタン系樹脂を70重量部以上含有することが好ましく、また、85重量部以下含有することが好ましい。
【0017】
[膨潤性マイカ]
マイカとは、SiO2、Al2O3、K2Oおよび結晶水が主成分の鉱物であり、耐熱性や電気絶縁性、耐水性等に優れている。マイカには、白雲母、金雲母、黒雲母などの雲母、マーガライト、テニオライト、合成マイカなどが存在するが、高いアスペクト比を有し、水蒸気バリア性を向上させることから、本発明は、マイカとして合成マイカの一種である膨潤性マイカを使用し、2種以上の膨潤性マイカを混合して使用することもできる。なお、合成マイカとは、人工的に合成されるマイカで、組成式が金雲母に近いことから、合成フッ素金雲母とも呼ばれる。
【0018】
本発明で使用する膨潤性マイカの体積50%平均粒子径(D50、メディアン径)(以下、「平均粒子径」ともいう。)は、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、50μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。また、膨潤性マイカのアスペクト比は、300以上が好ましく、400以上がより好ましく、450以上がさらに好ましい。ここで、アスペクト比とは、塗工層の断面の顕微鏡拡大写真から算出される値であり、マイカの平均粒子径を厚さで割った値の平均値である。アスペクト比は大きいほど、水蒸気バリア性が向上する。本発明で使用する膨潤性マイカのアスペクト比の上限は特に制限されないが、例えば1600以下である。
膨潤性マイカとしては、具体的には、トピー工業株式会社製の合成マイカ(商品名:NTS-10)や片倉コープアグリ株式会社製の合成マイカ(商品名:ME300B-4T)が挙げられる。
水蒸気バリア層中に含まれる膨潤性マイカの含有量は、水蒸気バリア性を向上させる観点から、水蒸気バリア層の総量100重量部に対して好ましくは5重量部以上35重量部以下であり、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上がさらに好ましい。
【0019】
水蒸気バリア層は、上記したポリウレタン系樹脂、膨潤性マイカの他に、水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料、架橋剤、撥水剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0020】
(ガスバリア層)
本発明の紙製バリア材料は、水蒸気バリア層上にガスバリア層を有することが好ましい。
ガスバリア層は、少なくともガスバリア性樹脂を含有する。ガスバリア性樹脂としては、水溶性樹脂、または、水懸濁性樹脂を用いることができ、水溶性樹脂が好ましい。ガスバリア性樹脂としては、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系樹脂、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、重合度が400~1700であるポリビニルアルコール系樹脂がさらに好ましく、重合度が800~1400であるポリビニルアルコール系樹脂がよりさらに好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は95.0以上が好ましく、97.0以上がより好ましく、99.0以上がさらに好ましい。
【0021】
ガスバリア層は、顔料を含むことができる。顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、顔料は、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料であることが好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の扁平顔料であることがより好ましい。
【0022】
ガスバリア層に顔料、特に扁平顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過するために移動する距離が長くなる。このため、顔料を含有するガスバリア層は、顔料を含有しないガスバリア層と比較して、ガスバリア性に優れ、特に高湿度雰囲気下で優れたガスバリア性を発揮する。
ガスバリア層における顔料の配合量は、乾燥重量で、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、顔料90重量部以下であることが好ましい。なお、顔料は、ガスバリア層の任意成分であり、含まない(0重量部)こともできる。ガスバリア層の顔料配合量をこの範囲内とすることにより、優れた耐屈曲性を発揮することができる。また、ガスバリア層が顔料を含有することにより、ガスバリア層と接する層との密着性が向上する。顔料の配合量が少なくなると、耐屈曲性は向上するが、ガスバリア性は低下する。そのため、顔料の配合量は、紙製バリア材料に求めるガスバリア性と耐屈曲性とのバランス等に応じて調整することができ、例えば、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、5重量部以上80重量部以下とすることができる。
ガスバリア層には、上記した水溶性樹脂、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0023】
ガスバリア層には多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は、ガスバリア層に含有される水溶性高分子と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られない場合がある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となる場合がある。
【0024】
ガスバリア層は、界面活性剤を含有することが、ガスバリア層と水蒸気バリア層との密着性が向上し、バリア性が向上するため好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものではなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でもよく、単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
水蒸気バリア層の上にガスバリア層を設ける場合、水蒸気バリア層との密着性の観点から、ガスバリア層用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することが好ましい。また、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して、ガスバリア層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性の観点から好ましい。
【0025】
(水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工)
本発明において、水蒸気バリア層、ガスバリア層は、塗工層であり、バリア塗工層形成用の塗料を各種の塗工装置で塗工し、乾燥することにより形成することができる。なお、塗工層であるか否かは、紙製バリア材料を裁断し、層の断面を顕微鏡等で観察することにより判別することができる。
水蒸気バリア層、ガスバリア層の形成用塗料の紙基材への塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられるが、水系塗工であることが好ましい。
水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0026】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で2g/m2以上50g/m2以下とすることが好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が2g/m2未満であると、紙基材を塗料が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、その上に塗工層を形成する場合に塗料が紙基材まで浸透して均一な塗工層の形成が困難となる場合がある。一方、水蒸気バリア層の塗工量が50g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で、3g/m2以上がより好ましく、また、40g/m2以下がより好ましく、30g/m2以下がさらに好ましく、20g/m2以下がよりさらに好ましく、10g/m2以下がよりさらに好ましく、8g/m2以下がよりさらに好ましい。
水蒸気バリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0027】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2g/m2未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなる場合がある。一方、20g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で、0.5g/m2以上がより好ましく、1g/m2以上がさらに好ましく、2g/m2以上がよりさらに好ましく、4g/m2以上がよりさらに好ましく、また、15g/m2以下がより好ましく、10g/m2以下がさらに好ましい。
ガスバリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0028】
(保護層)
本発明の紙製バリア材料は、少なくとも一方の面上に保護層を有することができる。保護層を一方の面のみに設ける場合は、紙基材の水蒸気バリア層を有する側の面上に設けることが好ましい。なお、保護層は、紙製バリア材料の両面に設けることもできる。
保護層は、空気中の水分などによる水蒸気バリア層、ガスバリア層の劣化を防ぐと共に、紙製バリア材料にさらなる水蒸気バリア性、ガスバリア性を付与する、あるいは耐油性、耐溶剤性、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐光性などを付与することができる。また、保護層が樹脂層である場合は、ヒートシール性を付与することもできる。
保護層としては、樹脂層、紙層、金属箔等が挙げられ、これらの中で樹脂層が好ましい。
【0029】
(樹脂層)
樹脂層の樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(LDPE、LLDPE等のポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート等の化石資源由来樹脂、ポリ乳酸(PLA)、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタン等の生物由来樹脂を含むことができる。これらの中で、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂が、ヒートシール強度の点から好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂が、ゴミとして流出した場合の環境負荷軽減の点から好ましい。なお、生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を原料とし、化学的または生物学的に合成することにより得られる、数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。また、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂をいう。
【0030】
本発明において、樹脂層としては樹脂ラミネート層が好ましい。樹脂ラミネート層としては、押し出しラミネート層や、バリアフィルム、蒸着フィルム等のフィルム貼合層を挙げることができる。
樹脂ラミネート層が押し出しラミネート層の場合は、紙製バリア材料の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂を押し出しラミネート法により樹脂ラミネート層として積層する。また、樹脂ラミネート層がフィルム貼合層の場合は、紙製バリア材料の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂製のフィルムをドライラミネート法、サンドラミネート法等により樹脂ラミネート層として貼合する。
【0031】
本発明において、フィルム貼合層に使用するフィルムとしては、上記した各種樹脂製のフィルムが挙げられる。これらのフィルムの中では、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂を主成分としたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにこれらポリビニルアルコール等の樹脂をコーティングしたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属からなる金属箔を貼合したフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属、または酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着させた蒸着フィルム等のバリアフィルムが好ましく、蒸着フィルムがより好ましい。目的に応じてこれらのフィルムを1層または複数層を貼合して使用することができる。
【0032】
ドライラミネート法で樹脂ラミネート層を貼合する場合は、接着剤としては、ドライラミネートに使用されている接着剤を特に制限することなく使用することができ、例えば、ポリウレタン系(ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等)、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等の接着剤を使用することができ、ポリウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。また、接着層には、接着剤のほかに、硬化剤、溶剤等を配合することもできる。これらの中で、水を溶剤とするものが、大気中への揮発性有機化合物の排出削減や作業環境の衛生性の改善の点から好ましい。
接着層の塗工量(固形分)は特に制限されないが、2.0g/m2以上4.5g/m2以下が好ましい。接着層の塗工量(固形分)が2.0g/m2未満では、密着性が不十分となり隙間が生じる場合がある。一方、接着層の塗工量(固形分)が4.5g/m2を超えると、塗工速度、乾燥速度が遅くなり生産性が低下する、残留溶媒が多くなり臭気等が生じる、材料の使用量が増えるため高コストとなる等の問題が生じやすくなる。
【0033】
本発明の紙製バリア材料は、40℃、90%RH条件下における水蒸気透過度が、0.1g/m2・day以上15g/m2・day以下であることが好ましい。この水蒸気透過度は、14g/m2・day以下がより好ましく、13g/m2・day以下がさらに好ましく、12g/m2・day以下がよりさらに好ましく、11g/m2・day以下がよりさらに好ましい。
また、ガスバリア層を有する本発明の紙製バリア材料は、23℃、0%RH条件下における酸素透過度が、0.1cc/m2・day・atm以上15cc/m2・day・atm以下であることが好ましい。この酸素透過度は、14cc/m2・day・atm以下がより好ましく、13cc/m2・day・atm以下がよりさらに好ましく、12cc/m2・day・atm以下がよりさらに好ましい。
【0034】
本発明の紙製バリア材料は、紙製バリア材料のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と貼合するなどして、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製包装材料、または産業用資材などに用いられる包装用積層体とすることが可能である。これらの中で、本発明の紙製バリア材料は、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装袋として特に好適に使用することができる。なお、軟包装袋とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。軟包装袋の形状としては、特に制限されず、縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋などが挙げられる。
【0035】
本発明の紙製バリア材料を食品などの包装材、特に軟包装袋として用いる場合は、保護層としてヒートシール性を有する樹脂を積層することにより、包装材料としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。また、軟包装材は、薄く柔軟であるため、製造時、運搬時、保管時、販売時等に屈曲が生じやすいが、本発明の紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れ、屈曲が生じてもバリア性の低下が抑えられているため、予期せぬ屈曲により、内容物の品質が損なわれることを防ぐことができる。
また、産業用資材などに用いられる積層体として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【実施例0036】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた紙基材、バリア原紙、紙製バリア材料について、以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。結果を表1に示す。
【0037】
・顔料
膨潤性マイカ1
トピー工業株式会社製、NTS-10、平均粒子径17μm、アスペクト比1500
膨潤性マイカ2
片倉コープアグリ株式会社製、ME300B-4T、平均粒子径15μm、アスペクト比500
モンモリロナイト
クニミネ工業株式会社製、クニピア-F、平均粒子径0.4μm、アスペクト比300
非膨潤性マイカ
キンセイマテック株式会社製、GP-1、平均粒子径30μm、アスペクト比40、天然マイカ
【0038】
・ポリビニルアルコール
PVA1
日本酢ビ・ポバール株式会社製、VC-10、重合度1000、ケン化度99.3以上
PVA2
クラレ株式会社製、クラレポバールPVA117、重合度1700、ケン化度98.0~99.0
【0039】
評価法
〈水蒸気透過度(水蒸気バリア性)〉
MOCON社製、PERMATRAN W3/34を使用し、40℃-90%RH条件にて測定した。
〈酸素透過度(ガスバリア性)〉
MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃-0%RH条件にて測定した。
水蒸気透過度と酸素透過度の測定は、シートサンプルそのまま(折り目なし)と、バリア層側を外側として折り曲げたシートサンプルに対し、約400gのゴム製ローラーを5往復転がして十字の折り目をつけたサンプル(折り目あり)について行い、折り目ありのサンプルは、その十字が治具の中央に位置するようにして測定した。
【0040】
[実施例1]
(紙基材1の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を0.08%添加した後、ヤンキードライヤーを備えた長網式抄紙機(鈴木製機所製)を用いて、抄速300m/minの条件で、坪量50g/m2である紙基材1を得た。
【0041】
(水蒸気バリア層用塗工液の調製)
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、顔料20重量部、ポリウレタン系樹脂80重量部となるように、膨潤性マイカ1のスラリー中にポリウレタン系樹脂エマルジョン(三井化学株式会社製、WPB-341、Tg130℃)を配合し、固形分濃度22%の水蒸気バリア層用塗工液を得た。
(ガスバリア層用塗工液の調製)
ポリビニルアルコール1の固形分濃度12%の水溶液を調製し、ガスバリア層用塗工液とした。
【0042】
(紙製バリア材料1の作製)
得られた紙基材のヤンキードライヤーの鏡面に接触した面(艶面)に、水蒸気バリア層用塗工液を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液を乾燥重量で4.0g/m2となるよう片面塗工し、紙製バリア原紙を得た。
さらに得られた紙製バリア原紙のガスバリア層上にフィルム(フタムラ化学株式会社製、LLDPE、厚さ30μm)を、接着剤(2液硬化型ポリウレタン系接着剤、硬化剤:ポリイソシアネート、溶媒:酢酸エチル)を塗工量(固形分)4.0g/m2となるようにドライラミネート法にて貼合し、紙製バリア材料を得た。
【0043】
[実施例2]
(紙製バリア材料2の作製)
水蒸気バリア層用塗工液の塗工量を4.0g/m2とした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料2を得た。
[実施例3]
(紙製バリア材料3の作製)
水蒸気バリア層用塗工液の塗工量を7.5g/m2とした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料3を得た。
[実施例4]
(紙製バリア材料4の作製)
ガスバリア層用塗工液の塗工量を7.0g/m2とした以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料4を得た。
[実施例5]
(紙製バリア材料5の作製)
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、顔料15重量部、ポリウレタン系樹脂85重量部となるように配合した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料5を得た。
[実施例6]
(紙製バリア材料6の作製)
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、顔料30重量部、ポリウレタン系樹脂70重量部となるように配合した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料6を得た。
[実施例7]
(紙製バリア材料7の作製)
ガスバリア層用塗工液のポリビニルアルコールをPVA2を使用した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料7を得た。
[実施例8]
(紙製バリア材料8の作製)
膨潤性マイカ1に代えて膨潤性マイカ2を使用した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料8を得た。
[実施例9]
(紙製バリア材料9の作製)
ガスバリア層用塗工液を塗工しなかった以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料9を得た。
【0044】
[比較例1]
(紙製バリア材料10の作製)
膨潤性マイカ1に代えてモンモリロナイトを使用した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料10を得た。
[比較例2]
(紙製バリア材料11の作製)
膨潤性マイカ1に代えて非膨潤性マイカを使用した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料11を得た。
[比較例3]
(紙製バリア材料12の作製)
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、顔料50重量部、ポリウレタン系樹脂50重量部となるように配合した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料12を得た。
[比較例4]
(紙製バリア材料13の作製)
水蒸気バリア層用塗工液を塗工しなかった以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料13を得た。
[比較例5]
(紙製バリア材料14の作製)
水蒸気バリア層の総量100重量部に対して、顔料40重量部、ポリウレタン系樹脂60重量部となるように配合した以外は実施例1と同様にして、紙製バリア材料14を得た。
【0045】
【0046】
実施例1~9で得られた紙製バリア材料は、水蒸気バリア性に優れていた。また、ガスバリア層を有する実施例1~8で得られた紙製バリア材料は、ガスバリア性にも優れていた。
それに対し、比較例1~5で得られた紙製バリア材料は、水蒸気透過度の値が大きく、水蒸気バリア性に劣っていた。比較例1~3、5で得られた紙製バリア材料は、水蒸気透過度の値が水蒸気バリア層を有さない比較例4で得られた紙製バリア材料と同等であり、このことから、比較例1~5で得られた紙製バリア材料の水蒸気バリア性は、ラミネートで貼合したLLDPEに由来していると推測される。