(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016676
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】衛生陶器、水洗大便器、および、衛生陶器の製造方法
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20240131BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20240131BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20240131BHJP
C04B 33/24 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
B28B11/24
C04B33/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118972
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖司
(72)【発明者】
【氏名】西脇 伸明
(72)【発明者】
【氏名】柴山 暁史
【テーマコード(参考)】
2D039
4G055
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039AD04
4G055AA07
4G055AC00
4G055BA14
(57)【要約】
【課題】トラップ部の流路断面形状の変形を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る衛生陶器は、ボウル部と、トラップ部と、凸部とを備える。トラップ部は、ボウル部と排水管とを接続する。凸部は、トラップ部の外壁から下方に向けて突出する。凸部は、トラップ部の溜水面よりも下方側に設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部と、
前記ボウル部と排水管とを接続するトラップ部と、
前記トラップ部の外壁から下方に向けて突出する凸部と
を備え、
前記凸部は、前記トラップ部の溜水面よりも下方側に設けられる、衛生陶器。
【請求項2】
前記凸部は、前記トラップ部の封水面よりも前記トラップ部の下方側に設けられる、請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項3】
前記凸部は、前記トラップ部の底部に設けられる、請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項4】
前記凸部は、前記トラップ部の幅方向における仮想中心線の両側に設けられる、請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の衛生陶器を有する水洗大便器。
【請求項6】
ボウル部と、
前記ボウル部と排水管とを接続するトラップ部と、
前記トラップ部の外壁から下方に向けて突出する凸部とを有する衛生陶器の製造方法であって、
前記衛生陶器の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を焼成する焼成工程と
を有し、
前記焼成工程では、前記トラップ部の溜水面よりも下方側に設けられる前記凸部が台座によって下方から支持された状態で前記成形体が焼成される、衛生陶器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、衛生陶器、水洗大便器、および、衛生陶器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラップ部を有する衛生陶器を焼成する場合に、台座を用いて焼成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記する衛生陶器では、トラップ部が自重によって変形した状態、具体的にはトラップ部が垂れ下がったような変形をし、トラップ部の流路が変形した状態で焼成されるおそれがある。
【0005】
実施形態の一態様は、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制する衛生陶器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る衛生陶器は、ボウル部と、トラップ部と、凸部とを備える。トラップ部は、ボウル部と排水管とを接続する。凸部は、トラップ部の外壁から下方に向けて突出する。凸部は、トラップ部の溜水面よりも下方側に設けられる。
【0007】
これにより、衛生陶器は、焼成時に凸部を台座によって支持した状態で焼成することができ、自重によるトラップ部の流路断面形状の変形を抑制することができる。また、衛生陶器は、焼成時に、トラップ部の自重を、台座に支持される凸部が受けて、凸部が変形を吸収することで、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制することができる。したがって、衛生陶器は、トラップ部の流路断面形状の変形による、排出性能への影響を抑制することができる。
【0008】
また、凸部は、トラップ部の封水面よりもトラップ部の下方側に設けられる。
【0009】
これにより、衛生陶器は、焼成時に、トラップ部の下方側を、凸部を介して台座によって支持することができ、トラップ部の流路断面形状の変形をさらに抑制することができる。
【0010】
また、凸部は、トラップ部の底部に設けられる。
【0011】
これにより、衛生陶器は、焼成時に、トラップ部の底部を、凸部を介して台座によって支持することができ、トラップ部の流路断面形状の変形をさらに抑制することができる。特に、トラップ部の底部は、トラップ部の自重の影響を受けやすく変形し易い。トラップ部の底部は、衛生陶器の排出性能に与える影響が大きく、設計通りに形成されることが望ましい。衛生陶器は、トラップ部の底部に凸部を設けることで、トラップ部の変形、特にトラップ部の流路断面形状の変形による排出性能への影響を抑制することができる。
【0012】
また、凸部は、トラップ部の幅方向における仮想中心線の両側に設けられる。
【0013】
これにより、衛生陶器は、焼成時にトラップ部の自重をトラップ部の幅方向に分散させて、凸部によって支持することができる。そのため、衛生陶器は、焼成時に、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制することができる。また、衛生陶器は、幅方向においてトラップ部の流路断面形状が不均一になることを抑制することができる。
【0014】
水洗大便器は、衛生陶器を有する。
【0015】
これにより、水洗大便器は、焼成時に、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制することができる。また、水洗大便器は、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制することで、洗浄性能の変化を抑制することができる。
【0016】
実施形態の一態様に係る衛生陶器の製造方法は、ボウル部と、ボウル部と排水管とを接続するトラップ部と、トラップ部の外壁から下方に向けて突出する凸部とを有する衛生陶器の製造方法である。衛生陶器の製造方法は、成形工程と、焼成工程とを有する。成形工程で、衛生陶器の成形体が形成される。焼成工程では、成形体が焼成される。焼成工程では、トラップ部の溜水面よりも下方側に設けられる凸部が台座によって下方から支持された状態で成形体が焼成される。
【0017】
これにより、衛生陶器の製造方法は、焼成時に、トラップ部の変形を抑制することができる。そのため、衛生陶器の製造方法は、トラップ部の流路断面形状の変形による排水性能への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
実施形態の一態様によれば、トラップ部の流路断面形状の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水洗大便器の平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る水洗大便器のトラップ部の一部を示す下面図である。
【
図4】
図4は、水洗大便器の便器本体の製造工程を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、焼成工程においてトラップ部の下方に台座が設けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する衛生陶器、水洗大便器、および、衛生陶器の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
以下では、衛生陶器として、水洗大便器の便器本体を一例として説明する。衛生陶器は、水洗大便器の便器本体に限定されず、汚物流しなどであってもよい。
【0022】
実施形態に係る水洗大便器1は、
図1~
図3を参照して説明される。
図1は、実施形態に係る水洗大便器1の平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。
図3は、実施形態に係る水洗大便器1のトラップ部5の一部を示す下面図である。
【0023】
また、
図1などには、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。直交座標系では、X軸正方向が左方、および、X軸負方向が右方として規定される。また、Y軸正方向が前方、および、Y軸負方向が後方として規定される。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。X軸方向は、水洗大便器1の幅方向でもある。
【0024】
水洗大便器1は、トイレ室に設置される。水洗大便器1は、便器本体2を備える。水洗大便器1は、便器本体2に取り付けられる機能部を備える。機能部は、たとえば、便座、衛生洗浄装置、貯水タンク、および、加圧ポンプなどを含む。
【0025】
便器本体2は、陶器製である。便器本体2は、ボウル部3と、リム部4と、トラップ部5と、凸部6とを備える。
【0026】
ボウル部3は、使用者の汚物を受ける。リム部4は、ボウル部3の上縁に形成される。リム部4には、ボウル部3に洗浄水を吐水する吐水口が形成される。
【0027】
トラップ部5は、ボウル部3の底部に連通する。トラップ部5は、ボウル部3の底部から延びて、ボウル部3内の汚物を排出する。トラップ部5は、排水ソケットを介して排水管に接続される。
【0028】
トラップ部5は、第1下降管5aと、上昇管5bと、第2下降管5cとを備える。第1下降管5aは、ボウル部3の底部に接続されて、斜め下方に延びる。第1下降管5aは、ボウル部3から後方に延びる。
【0029】
上昇管5bは、第1下降管5aの後端に接続されて、斜め上方に延びる。上昇管5bは、第1下降管5aから後方に延びる。
【0030】
第2下降管5cは、上昇管5bの後端に接続されて、下方に延びる。第2下降管5cは、排水ソケットを介して排水管に接続される。
【0031】
トラップ部5には、洗浄水の一部が溜められることで封水が形成される。具体的には、トラップ部5には、上昇管5bの後端よりも下方側の第1下降管5a、および、上昇管5bに洗浄水が溜められる。ここでは、上昇管5bにおける後端よりも下方側の第1下降管5a、および、上昇管5bに溜められる洗浄水を「溜水」と称する。溜水は、ボウル部3の一部にも溜められる。
【0032】
封水は、排水管からの臭気などがボウル部3側へ逆流することを防止できればよい。そのため、洗浄水が封水として機能するためには、ボウル部3において、封水面P1よりも上方側まで洗浄水が溜められればよい。封水は衛生性を担保するため、その深さは建築基準法で準拠すべき基準がトラップ部5の底部5dから5cm以上であり、10cm以下であることが定められている。
【0033】
トラップ部5は、封水面P1よりも上方側まで溜水が溜められるように形成されており、溜水面P2は、封水面P1よりも上方側となる。トラップ部5は、溜水面P2と封水面P1との差である封水深が、予め設定された所定値よりも大きくなるように設計される。
【0034】
以下では、トラップ部5において、第1下降管5aと上昇管5bとが接続される箇所、すなわち、トラップ部5が前方から後方にかけて下り勾配から上り勾配に変化する箇所を、トラップ部5の底部5dと称し説明する。トラップ部5の底部5dは、トラップ部5を流れる洗浄水の流れ方向を下方側から上方側に変化させる変曲部でもある。
【0035】
凸部6は、トラップ部5の外壁から下方に向けて突出する。凸部6は、溜水面P2よりも下方側のトラップ部5の外壁から下方に向けて突出する。たとえば、凸部6は、封水面P1よりも下方側に設けられる。凸部6は、トラップ部5の底部5dに設けられる。なお、凸部6は、封水面P1、または、トラップ部5の底部5dよりも上方側に設けられてもよい。
【0036】
凸部6は、トラップ部5の底部5dよりも下方に突出する。具体的には、凸部6は、トラップ部5の底部5dの最下端よりも下方に突出する。なお、凸部6の下端と、トラップ部5の底部5dの最下端とは同じ高さであってもよい。
【0037】
凸部6は、複数設けられる。たとえば、凸部6は、2つ設けられる。凸部6は、トラップ部5の幅方向(左右方向)における仮想中心線Lの両側に設けられる。たとえば、2つの凸部6は、仮想中心線Lに対して対称となるように設けられる。
【0038】
凸部6は、トラップ部5の左右方向の側壁を下方に延長する仮想平面上に設けられてもよい。凸部6は、トラップ部5の前後方向に設けられてもよい。たとえば、凸部6は、トラップ部5の第1下降管5a、および、上昇管5bにそれぞれ設けられてもよい。凸部6は、トラップ部5の底部5dの最下端を囲むようにリング状に設けられてもよい。
【0039】
凸部6は、便器本体2の製造工程の焼成工程において、台座20(
図5参照)に支持される。これにより、焼成工程において、トラップ部5の自重による垂れ下がりが抑止され、洗浄性能に影響を与えるトラップ部5の流路断面形状の変形が抑止されることになる。
【0040】
次に、水洗大便器1の便器本体2の製造工程について、
図4のフローチャートを参照し説明する。
図4は、水洗大便器1の便器本体2の製造工程を説明するフローチャートである。
【0041】
ステップS100において、泥漿調製工程が行われる。泥漿調整工程では、便器本体2の原料である泥漿が調整される。
【0042】
ステップS101において、注入工程が行われる。注入工程は、複数の成形型によって形成される型内に泥漿が注入される。成形型は、樹脂によって構成される樹脂型、または、石膏によって構成される石膏型を含む。
【0043】
ステップS102において、着肉工程が行われる。着肉工程では、成形型の成形面において泥漿に含まれる水分が脱水されて、成形型の成形面に泥漿が着肉する。
【0044】
成形型が、樹脂型である場合、成形型を加圧することで、泥漿から水分が押し出されて脱水される。そして、水分が減少した泥漿が成形型の表面に着肉する。
【0045】
成形型が、石膏型である場合、泥漿の水分が石膏に吸われることで、泥漿から水分が脱水される。そして、水分が減少した泥漿が成形型の成形面に着肉する。
【0046】
ステップS103において、排泥工程が行われる。排泥工程では、成形型に着肉していない泥漿が成形型から排出される。
【0047】
ステップS104において、離型工程が行われる。離型工程では、成形型を離型し、成形体が脱型される。すなわち、離型工程では、成形型に着肉した泥漿が成形体として、成形型から外される。
【0048】
なお、ステップS101~ステップS104は、便器本体2を構成するパーツ毎に行われる。便器本体2は、複数のパーツを含む成形体として成形される。たとえば、ボウル部3、トラップ部5、および、凸部6を含む成形体と、リム部4とは異なる成形体として成形される。
【0049】
ステップS105において、接合工程が行われる。接合工程では、複数のパーツが接着されて、便器本体2の成形体が成形される。なお、複数のパーツが接着されない場合、つまり一つのパーツからなる場合、離型工程によって、便器本体2の成形体が成形される。ここで、注入工程であるステップS101から排泥工程であるステップS103までを所望の形状の成形体を成形するための成形工程とする(ステップS110)。
【0050】
ステップS106において、乾燥工程が行われる。乾燥工程では、便器本体2の成形体が乾燥される。
【0051】
ステップS107において、施釉工程が行われる。施釉工程では、乾燥した便器本体2の成形体に釉薬が塗布される。
【0052】
ステップS108において、焼成工程が行われる。焼成工程では、釉薬が塗布された便器本体2の成形体が焼成される。
【0053】
焼成工程では
図5に示すように、トラップ部5の下方に台座20が設けられ、凸部6が台座20によって下方から支持された状態で成形体が焼成される。
図5は、焼成工程においてトラップ部5の下方に台座20が設けられた状態を示す図である。
【0054】
凸部6が下方から台座20に支持されることで、トラップ部5は、凸部6を介して台座20に支持された状態となる。
【0055】
トラップ部5は、下方に垂れ下がった構造であり、下方を支持するものがないため、自重によって変形しやすい。トラップ部5が変形した状態で焼成された場合、トラップ部5に溜められる洗浄水、および、洗浄水の流れが変化し、排出性能、および、洗浄水による洗浄性能に影響を与えるおそれがある。特に、少ない洗浄水によって洗浄することが求められている水洗大便器1では、トラップ部5の変形による影響が大きいため、トラップ部5は設計通りに製造されることが望ましい。
【0056】
実施形態に係る凸部6を設けない比較例に係る水洗大便器では、台座によってトラップ部を直接支持して成形体を焼成することも考えられる。
【0057】
しかし、この場合、トラップ部の底部が台座によって直接支持されるため、たとえば、トラップ部の底部が平らになるおそれがあり、排出性能、および、洗浄性能に影響を与えるおそれがある。
【0058】
実施形態に係る水洗大便器1は、凸部6が台座20に支持された状態で焼成されることで、トラップ部5の流路断面形状の変形が抑制される。また、トラップ部5の自重を、台座20に支持される凸部6が受けて、凸部6が変形を吸収することで、トラップ部5の流路断面形状の変形が抑制される。また、トラップ部5の流路断面形状の変形が抑制されることで、排出性能、および、洗浄性能の変化が抑制される。
【0059】
水洗大便器1は、ボウル部3と、トラップ部5と、凸部6とを備える。トラップ部5は、ボウル部3と排水管とを接続する。凸部6は、トラップ部5の外壁から下方に向けて突出する。凸部6は、トラップ部5の溜水面P2よりも下方側に設けられる。
【0060】
これにより、水洗大便器1は、焼成時に凸部6を台座20によって支持した状態で焼成することができ、自重によるトラップ部5の流路断面形状の変形を抑制することができる。また、水洗大便器1は、焼成時に、トラップ部5の自重を、台座20に支持される凸部6が受けて、凸部6が変形を吸収することで、トラップ部5の流路断面形状の変形を抑制することができる。したがって、水洗大便器1は、トラップ部5の流路断面形状の変形による、排出性能、および、洗浄性能への影響を抑制することができる。
【0061】
凸部6は、トラップ部5の封水面P1よりもトラップ部5の下方側に設けられる。
【0062】
これにより、水洗大便器1は、焼成時に、トラップ部5の下方側を、凸部6を介して台座20によって支持することができ、トラップ部5の流路断面形状の変形をさらに抑制することができる。そのため、水洗大便器1は、トラップ部5の流路断面形状の変形による排出性能、および、洗浄性能への影響を抑制することができる。
【0063】
凸部6は、トラップ部5の底部5dに設けられる。
【0064】
これにより、水洗大便器1は、焼成時に、トラップ部5の底部5d付近を、凸部6を介して台座20によって支持することができ、トラップ部5の流路断面形状の変形をさらに抑制することができる。特に、トラップ部5の底部5dは、トラップ部5の自重の影響を受けやすく変形し易い。トラップ部5の底部5dは、水洗大便器1の排出性能、および、洗浄性能に与える影響が大きく、設計通りに形成されることが望ましい。水洗大便器1は、トラップ部5の底部5dに凸部6を設けることで、トラップ部5の変形、特にトラップ部5の流路断面形状の変化による排出性能、および、洗浄性能への影響を抑制することができる。
【0065】
凸部6は、トラップ部5の幅方向における仮想中心線Lの両側に設けられる。
【0066】
これにより、水洗大便器1は、焼成時にトラップ部5の自重を幅方向に分散させて、凸部6によって支持することができる。そのため、水洗大便器1は、焼成時に、トラップ部5の流路断面形状の変形を抑制することができる。また、水洗大便器1は、幅方向においてトラップ部5の流路断面形状が不均一になることを抑制することができる。
【0067】
水洗大便器1の製造方法は、成形工程と、焼成工程とを有する。成形工程では、便器本体2の成形体が形成される。焼成工程では、成形体が焼成される。焼成工程では、トラップ部5の溜水面P2よりも下方側に設けられる凸部6が台座20によって下方から支持された状態で成形体が焼成される。
【0068】
これにより、水洗大便器1の製造方法は、焼成時に、トラップ部5の流路断面形状の変形を抑制することができる。そのため、水洗大便器1の製造方法は、トラップ部5の流路断面形状の変形による排水性能、および、洗浄性能への影響を抑制することができる。
【0069】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 水洗大便器
2 便器本体(衛生陶器)
3 ボウル部
4 リム部
5 トラップ部
5a 第1下降管
5b 上昇管
5c 第2下降管
5d 底部
6 凸部
20 台座
L 仮想中心線
P1 封水面
P2 溜水面