(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166761
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】筒端子、同軸コネクタ及び筒端子の固定構造
(51)【国際特許分類】
H01R 24/40 20110101AFI20241122BHJP
【FI】
H01R24/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083084
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】石榑 浩之
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA16
5E223AA21
5E223AB26
5E223AC12
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CA13
5E223CB07
5E223CB21
5E223CB22
5E223CB25
5E223CB26
5E223CC09
5E223CD01
5E223CD05
5E223DB08
5E223EB02
5E223GA08
5E223GA19
5E223GA52
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、筒端子を寸法精度よく加工できるようにすることを目的とする。
【解決手段】筒状に形成される筒端子40であって、筒部42と、筒部の一端から外周側に延出する複数の延出片44と、筒部の一端であって複数の延出片44のうちの隣り合う2つの延出片44aの間の位置から延出する突出片48と、を備え、突出片は、筒部の中心軸Xに沿った方向において、複数の延出片よりも外側に突出している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成される筒端子であって、
筒部と、
前記筒部の一端から外周側に延出する複数の延出片と、
前記筒部の前記一端であって前記複数の延出片のうちの隣り合う2つの前記延出片の間の位置から延出する突出片と、
を備え、
前記突出片は、前記筒部の中心軸に沿った方向において、前記複数の延出片よりも前記一端側に突出している、筒端子。
【請求項2】
請求項1に記載の筒端子であって、
前記突出片は、前記筒部の中心軸に沿って延びている、筒端子。
【請求項3】
請求項2に記載の筒端子であって、
前記突出片の先端に切断痕が形成されている、筒端子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒端子であって、
前記複数の延出片のそれぞれは、前記筒部の中心軸に対して直交する方向に延びる直交部を含む、筒端子。
【請求項5】
請求項4に記載の筒端子であって、
前記複数の延出片のそれぞれは、前記筒部の前記一端から前記筒部の中心軸に対して外向き傾斜するように延びる傾斜部と、前記傾斜部の先端から前記筒部の中心軸に対して直交する方向に延びる前記直交部とを含み、
前記複数の延出片は、それぞれの前記直交部が前記筒部の中心軸に対して直交する同一平面上に沿って延在している、筒端子。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒端子であって、
前記複数の延出片は、前記筒部の中心軸を基準に、前記突出片を除き、等角度間隔で設けられている、筒端子。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒端子と、
前記筒端子内に位置する内導体と、
前記筒端子と前記内導体との間に位置する誘電体と、
を備える同軸コネクタ。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筒端子と、
取付導電板部を有する取付対象部材と、
を備え、
前記取付導電板部に凹部が形成され、
前記突出片の少なくとも一部が前記凹部に配置された状態で、前記筒端子が前記取付導電板部に取付けられている、筒端子の固定構造。
【請求項9】
請求項8に記載の筒端子の固定構造であって、
前記複数の延出片のそれぞれが前記取付導電板部に取付けられることで、前記筒端子が前記取付導電板部に取付けられている、筒端子の固定構造。
【請求項10】
請求項8に記載の筒端子の固定構造であって、
前記凹部のうち前記筒部側の開口縁は、外側に向かって徐々に拡がるガイド面を含む、筒端子の固定構造。
【請求項11】
請求項10に記載のガイド面は、前記開口縁のうち対向する2つの縁に形成された一対のガイド面と、前記2つの縁の間に位置する少なくとも1つの縁に形成されたガイド面とを含む、筒端子の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筒端子、同軸コネクタ及び筒端子の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、円筒部と、第一湾曲部と、第二湾曲部とを有するシールド部材を開示している。第一湾曲部は、円筒部から径方向外側に湾曲しており、第二湾曲部は、第一湾曲部から径方向内側に湾曲している。円筒部は、円筒本体と、円筒本体の一端から径方向外側に屈曲した複数の屈曲片とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒端子は、キャリアに繋がった状態でプレス加工され、所定形状にプレス加工された後、キャリアに対し切断されることが想定される。ここで、屈曲部の先端をキャリアに繋げた状態でプレス加工することを想定する。この場合、円筒部に対して曲げられた屈曲部の先端を位置決め基準として、円筒部がプレス加工されるので、円筒部の寸法精度が悪くなる可能性がある。複数の屈曲片の基端近くを、キャリアに繋げた状態でプレス加工することを想定すると、屈曲部の間でキャリアカット用の刃が入り込める複雑な形状を設計する必要が生じる。これにより、円筒端子の構造が複雑化し、コストアップ要因となる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、簡易な構造で、筒端子を寸法精度よく加工できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の筒端子は、筒状に形成される筒端子であって、筒部と、前記筒部の一端から外周側に延出する複数の延出片と、前記筒部の前記一端であって前記複数の延出片のうちの隣り合う2つの前記延出片の間の位置から延出する突出片と、を備え、前記突出片は、前記筒部の中心軸に沿った方向において、前記複数の延出片よりも前記一端側に突出している、筒端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡易な構造で、筒端子を寸法精度よく加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係る同軸コネクタを備える機器を示す斜視図である。
【
図3】
図3は同軸コネクタと取付対象部材50とを示す斜視図である。
【
図4】
図4は同軸コネクタと取付対象部材とを示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は同軸コネクタと取付対象部材との固定箇所を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の筒端子は、次の通りである。
【0011】
(1)筒状に形成される筒端子であって、筒部と、前記筒部の一端から外周側に延出する複数の延出片と、前記筒部の前記一端であって前記複数の延出片のうちの隣り合う2つの前記延出片の間の位置から延出する突出片と、を備え、前記突出片は、前記筒部の中心軸に沿った方向において、前記複数の延出片よりも前記一端に突出している、筒端子である。
【0012】
本開示によると、突出片がキャリアに繋がったまま、筒部をプレス加工することができる。このため、筒部の一端から外周側に延出する複数の延出片がキャリアに繋がったまま筒部をプレス加工する場合と比較して、筒部を寸法精度よく加工し易い。また、突出片は、筒部の中心軸に沿った方向において、複数の延出片よりも外側に突出しているため、当該突出片を、キャリアから切断し易い。この場合、複数の延出片に、キャリアカットのための特別な形状を設定しなくてもよい。よって、簡易な構造で、筒端子を寸法精度よく加工できる。
【0013】
(2)(1)の筒端子であって、前記突出片は、前記筒部の中心軸に沿って延びていてもよい。
【0014】
この場合、突出片が、筒部の中心軸に沿って延びているため、加工時の基準位置を当該筒部の中心軸に沿わせた状態で、筒部を寸法精度よく加工し易い。
【0015】
(3)(2)の筒端子であって、前記突出片の先端に切断痕が形成されていてもよい。
【0016】
これにより、突出片の先端をキャリアに繋げたまま筒部を加工できる。また、切断痕が筒部及び複数の延出片に残らない。
【0017】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの筒端子であって、前記複数の延出片のそれぞれは、前記筒部の中心軸に対して直交する方向に延びる直交部を含んでもよい。
【0018】
これにより、当該複数の延出片を、シールド部材等の取付対象部分に取付け易い。
【0019】
(5)(4)の筒端子であって、前記複数の延出片のそれぞれは、前記筒部の前記一端から前記筒部の中心軸に対して外向き傾斜するように延びる傾斜部と、前記傾斜部の先端から前記筒部の中心軸に対して直交する方向に延びる前記直交部とを含み、前記複数の延出片は、それぞれの前記直交部が前記筒部の中心軸に対して直交する同一平面上に沿って延在していてもよい。
【0020】
複数の延出片のそれぞれが、傾斜部と、傾斜部の先端から延びる直交部とを含むため、複数の直交部を、筒部の中心軸Xに対して直交する同一平面上に沿って延在させるように配置し易い。そして、突出片を、隣り合う2つの傾斜部の間を通って、複数の直交部から延び出るように配置できる。
【0021】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの筒端子であって、前記複数の延出片は、前記筒部の中心軸を基準に、前記突出片を除き、等角度間隔で設けられていてもよい。
【0022】
これにより、複数の延出片を、シールド部材等の取付対象部分に取付けた状態で、筒端子が取付対象部分にしっかりと保持され易い。
【0023】
また、本開示の同軸コネクタは次の通りである。
【0024】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの筒端子と、前記筒端子内に位置する内導体と、前記筒端子と前記内導体との間に位置する誘電体と、を備える同軸コネクタである。
【0025】
これにより、簡易な構造で、寸法精度よく加工された筒端子を用いて、同軸コネクタを製造できる。筒端子の寸法精度がよいため、同軸コネクタの通信性能の向上が期待される。
【0026】
また、本開示の筒端子の固定構造は次の通りである。
【0027】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの筒端子又は同軸コネクタと、取付導電板部を有する取付対象部材と、を備え、前記取付導電板部に凹部が形成され、前記突出片の少なくとも一部が前記凹部に配置された状態で、前記筒端子が前記取付導電板部に取付けられている、筒端子の固定構造である。
【0028】
これにより、筒端子を取付対象部材に取付けつつ、取付導電板部に突出片を逃す空間を設けることができる。
【0029】
(9)(8)の筒端子の固定構造であって、前記複数の延出片のそれぞれが前記取付導電板部に取付けられることで、前記筒端子が前記取付導電板部に取付けられていてもよい。
【0030】
これにより、複数の延出片を利用して筒端子を取付対象部材に取付けつつ、取付導電板部に突出片を逃す空間を設けることができる。
【0031】
(10)(8)又は(9)の筒端子の固定構造であって、前記凹部のうち前記筒部側の開口縁は、外側に向かって徐々に拡がるガイド面を含んでもよい。
【0032】
これにより、突出片が凹部内に容易に入り込むことができ、筒端子が取付対象部材に容易に取付けられる。
【0033】
(11)(10)の筒端子の固定構造であって、前記ガイド面は、前記開口縁のうち対向する2つの縁に形成された一対のガイド面と、前記2つの縁の間に位置する少なくとも1つの縁に形成されたガイド面とを含んでもよい。
【0034】
これにより、突出片をより確実に凹部内にガイドできる。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の筒端子、同軸コネクタ及び筒端子の固定構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
[実施形態]
以下、実施形態に係る筒端子、同軸コネクタ及び筒端子の固定構造について説明する。
図1は同軸コネクタ30を備える機器10を示す斜視図である。
図2は
図1のII-II線断面図である。
【0037】
<機器の全体構成について>
機器10は、例えば、カメラ機器である。カメラ機器は、例えば、車載用の機器である。機器10は、カメラ機器でなくてもよい。
【0038】
機器10は、ケース12と、電気部品20と、同軸コネクタ30とを備える。ケース12内に電気部品20が収容されている。同軸コネクタ30は、電気部品20と、外部の電気部品とを接続するためのコネクタである。例えば、同軸コネクタ30は、外部の電気部品に接続されたケーブルが接続されるコネクタである。
【0039】
ケース12は、第1ケース13と、第2ケース14とを備えている。第1ケース13及び第2ケース14は、例えば、樹脂によって形成される。第1ケース13と第2ケース14とが合体することで、電気部品20を収容する直方体箱状のケース12が構成される。機器10がカメラ機器である場合、第1ケース13は撮像用のレンズ又は窓を有しており、第2ケース14が同軸コネクタ30を有していることが想定される。
【0040】
電気部品20は、例えば、基板に電子部品が実装された実装基板である。機器10がカメラ機器である場合、電気部品20は、回路基板21と、当該回路基板21に実装された撮像素子22であることが想定される。撮像素子22は、第1ケース13の撮像用のレンズ又は窓に対向し、当該レンズ又は窓を回して外側景色を撮像する。以下、撮像素子22が向く第1ケース13側を前側、それとは反対側の第2ケース14側を後側という場合がある。
【0041】
本実施形態では、電気部品20は、回路基板21のうち撮像素子22とは反対側の面に位置する基板側コネクタ24を備える。基板側コネクタ24は、例えば、基板側内導体25と、基板側誘電体26と、基板側外導体27とを備える。基板側内導体25の周囲を基板側誘電体26が囲んでいる。基板側誘電体26は、絶縁体によって形成されている。基板側誘電体26の周囲を基板側外導体27が囲んでいる。基板側コネクタ24は、回路基板21から同軸コネクタ30に向けて突出している。
【0042】
基板側コネクタ24に中継コネクタ90が接続される。中継コネクタ90は、例えば、可動側内導体91と、可動側誘電体92と、可動側外導体93とを備える。可動側内導体91の周囲を可動側誘電体92が囲んでいる。可動側誘電体92は、絶縁体によって構成されている。可動側誘電体92の周囲を可動側外導体93が囲んでいる。可動側内導体91が基板側内導体25に挿入接続されると共に、基板側外導体27が可動側外導体93に挿入接続された状態で、中継コネクタ90が基板側コネクタ24に接続されている。中継コネクタ90は、基板側コネクタ24からさらに同軸コネクタ30に向けて突出している。中継コネクタ90が、基板側コネクタ24と同軸コネクタ30とを中継接続する。中継コネクタ90は、基板側コネクタ24及び同軸コネクタ30に対して姿勢変更可能に接続される。
【0043】
同軸コネクタ30は、第2ケース14側、即ち、ケース12の後側に設けられる。ケース12内で、中継コネクタ90が同軸コネクタ30に接続されている。外部からのケーブルが、当該同軸コネクタ30に接続されることで、当該ケーブルの接続先である外部の電気部品と、ケース12内の電気部品20とが電気的に接続される。
【0044】
<同軸コネクタについて>
同軸コネクタ30についてより具体的に説明する。
図3は同軸コネクタ30と当該同軸コネクタ30が固定される取付対象部材50とを示す斜視図である。
図4は同軸コネクタ30と取付対象部材50とを示す分解斜視図である。
図5は
図3の拡大図であり、
図6は同軸コネクタ30と取付対象部材50との固定箇所を示す部分拡大断面図であり、
図7は
図4の拡大図である。
【0045】
同軸コネクタ30は、内導体34と、誘電体36と、筒端子40とを備える。誘電体36は、内導体34の周りを囲んでいる。誘電体は、絶縁体によって形成されている。筒端子40は、誘電体36の周りを囲んでいる。筒端子40は、同軸コネクタ30における外導体であると把握されてもよい。
【0046】
内導体34は、細長い棒状に形成されており、金属等の導電材料によって形成されている。
【0047】
誘電体36は、円柱状に形成されている。誘電体36の長さは、内導体34の長さよりも短い。誘電体36の中心に、その延在方向に沿って貫通孔36hが形成されている。内導体34が貫通孔36hに挿入され、内導体34の長手方向中間部が貫通孔36h内に保持される。内導体34が誘電体36に保持された状態で、内導体34の両端部が誘電体36の両端面外方に突出している。内導体34に、貫通孔36hの内周面に引っ掛る係止突起が形成されていてもよい。
【0048】
筒端子40は、筒状に形成されている。上記内導体34は、筒端子40内に位置している。誘電体36は、筒端子40と内導体34との間に位置している。
【0049】
筒端子40は、筒部42と、複数の延出片44と、突出片48とを備える。筒端子40は、例えば、金属板をプレス加工等することによって形成される。
【0050】
筒部42は、誘電体36の周りを囲む筒状に形成されている。より具体的には、筒部42は、円筒状に形成されている。筒部42の長さは、誘電体36の長さよりも大きい。誘電体36は、筒部42の長手方向中間部に保持されており、筒部42の両端が、誘電体36の両端よりも外方向に突出している。筒部42に、誘電体36の外周面及び各端面のいずれかに引っ掛る係止突起が形成されていてもよい。
【0051】
複数の延出片44は、筒部42の一端から外周側に延出している。より具体的には、複数の延出片44のそれぞれは、傾斜部45と、直交部46とを含む。傾斜部45は、筒部42の一端の開口縁から筒部42の中心軸Xに対して外向き傾斜するように延びている。直交部46は、当該傾斜部45の先端から筒部42の中心軸Xに対して直交する方向に沿って外周側に延びている。直交部46は、平板状に形成されている。複数の延出片44のそれぞれの直交部46は、筒部42の中心軸Xに対して直交する同一平面上に沿って延在している。ここで、直交とは、例えば、中心軸Xに対して直交する方向に対して公差範囲内で同じである場合を含み、例えば、中心軸Xに対して90度±10度、好ましくは、±5度の公差範囲内で同じである場合を含む。
【0052】
突出片48は、筒部42の一端であって複数の延出片44のうちの隣り合う2つの延出片44の間の位置から延出している。複数の延出片44のうち突出片48を介して隣合う2つの延出片を延出片44aとして区別する場合がある。
【0053】
複数の延出片44は、筒部42の中心軸Xを基準に、突出片48を除き、等角度間隔で設けられていてもよい。つまり、突出片48を介することなく隣合う延出片44は、中心軸Xを基準に等間隔で儲けられる。換言すれば、筒部42の中心軸を基準とする複数の延出片44のそれぞれの間の角度θは、上記突出片48が形成された間を除いて同じ角度に設定されている。ここで、同じ角度とは、例えば、2つの角度を比較したとき±10度、好ましくは、±5度の範囲内で実質的に同じ場合を含む。
【0054】
より具体的には、筒部42の一端の開口縁周りにおいて、複数の延出片44の傾斜部45が、突出片48が形成された間を除いて均等間隔で延出している。複数の傾斜部45のそれぞれの先端から上記直交部46が外周側に延出している。中心軸Xに沿って見ると、複数の延出片44は、中心軸Xから放射状に延出している。中心軸Xを基準として複数の直交部46の間の角度θは、突出片48が形成された間を除いて同じ角度である。
【0055】
中心軸Xを基準とする2つの延出片44a間の角度は、他の延出片44の間の角度θよりも大きい。当該大きく開いた2つの延出片44aの間に突出片48が位置する。
【0056】
上記直交部46に取付孔46hが形成されていてもよい。取付孔46hは、取付対象部材50への取付のために利用される孔である。
【0057】
突出片48は、筒部42の中心軸Xに沿う方向において、複数の延出片44よりも筒部42の一端の外側に突出している。つまり、突出片48は、直交部46の外向き面よりも突出している。
【0058】
突出片48の先端に、切断痕49が形成されてもよい。切断痕49は、筒端子40を金型成形する際にキャリア100(
図6参照)から剪断された剪断痕である。すなわち、筒端子40を金型成形する際には、金属板を、筒端子40を形成するための端子展開形状に打抜いた後、所定形状に曲げ加工することが想定される。筒端子40を連続的に加工するため、複数の端子展開形状部分がキャリア100に繋がったまま連続的に打抜かれる。そして、キャリア100に繋がったまま複数の端子展開形状部分が順次所定形状に曲げ加工されて、筒端子40に形成される。この後、キャリア100から筒端子40が剪断される。切断痕49は、キャリア100からの剪断痕であることが想定される。剪断痕は、だれ面、剪断面、破断面又はバリを含んでいてもよい。
【0059】
突出片48の先端が研磨加工され、上記切断痕49が無くなっていてもよい。
【0060】
突出片48は、筒部42の中心軸Xに沿って延びていることが好ましい。ここで、突出片48が筒部42の中心軸Xに対して±5度の公差範囲内で延びている場合を含む。もっとも、突出片48は、中心軸Xに対して傾いていてもよい。この場合でも、突出片48の先端は、延出片44の先端よりも中心軸Xの近くに位置するとよい。
【0061】
取付対象部材50は、筒端子40の取付先となる部分である。本実施形態では、取付対象部材50は、筒端子40の電気的な接続先となる導体でもある。取付対象部材50は、金属等によって形成されている。本実施形態では、取付対象部材50は、電気部品20と外部との間を電磁的にシールドするシールド導体である。より具体的には、取付対象部材50は、一方側が開口する直方体箱状に形成されており、第2ケース14の内側面に沿って配置される。取付対象部材50が、電気部品20の後方に位置することで、電気部品20とその後方外部との間を電磁的にシールドすることができる。取付対象部材50が基板側コネクタ24及び中継コネクタ90の周りを囲みかつ後方に位置することで、基板側コネクタ24及び中継コネクタ90と、それらの周り及び後方の外部との間を電磁的にシールドすることができる。
【0062】
取付対象部材50が上記形状であることは必須ではなく、例えば、取付対象部材は、第2ケース14の底部の内面に沿って広がる板状に形成されていてもよい。取付対象部材は、第1ケース13側に延長されていてもよい。取付対象部材は、第1ケース13側のシールド導体に電気的に接続されてもよい。
【0063】
同軸コネクタ30は、第2ケース14の底部15に支持されている。取付対象部材50も第2ケース14内に支持されている。第2ケース14が同軸コネクタ30及び取付対象部材50を支持する構成について説明する。
【0064】
取付対象部材50の底部52が、第2ケース14の底部15の内面全体に広がる形状、ここでは、中央が円形土台状に隆起する方形板形状に形成されている。底部52のうち円形土台部分に孔部52hが形成されている。第2ケース14の底部15の内面に孔部52hに嵌込可能な固定用突部15pが突設されている(
図2参照)。固定用突部15pが孔部52hに嵌め込まれることで、取付対象部材50が第2ケース14内に支持される。例えば、固定用突部15pは、孔部52hに圧入されてもよい。例えば、固定用突部15pが孔部52hに挿入された状態で、固定用突部15pの先端部が熱等で溶かされ、溶かされて固化した部分が孔部52hの周縁に抜止め状態で引っ掛っていてもよい。
【0065】
上記底部52は、筒端子40が取付けられる取付導電板部の一例である。
【0066】
取付対象部材を第2ケース14に固定する構成は上記例に限られない。例えば、取付対象部材は、ねじ止、接着剤等によって、第2ケース14に固定されてもよい。
【0067】
底部15に保持筒部16が突設されている。保持筒部16は、円筒であり、底部15の中央部から外側に突出している。保持筒部16の内側開口は第2ケース14内に開口し、保持筒部16の外側開口は第2ケース14外に開口している。保持筒部16の中心軸Xの中間部に保持仕切部17が形成されている。保持仕切部17は、保持筒部16のうち内側開口側の空間と、外側開口側の空間とを仕切っている。保持仕切部17に保持孔17hが形成されている。
【0068】
筒部42が第2ケース14の内側から保持仕切部17の保持孔17hに挿入され、筒部42の長手方向中間部が保持孔17hによって保持される。筒部42の保持は、筒部42の外周面と保持孔17hの内周面との摩擦保持力によってなされてもよい。筒部42に保持孔17hの内周部に引っ掛る突起が形成されていてもよい。筒部42が保持孔17hに対して接着剤、ねじ止等によって固定されていてもよい。
【0069】
筒部42が保持仕切部17で保持された状態で、筒部42の一端は保持仕切部17よりも内側に突出し、取付対象部材50の底部52の外向き部分に対向して配置される。延出片44は、保持筒部16の内側開口よりも大きく広がり、第2ケース14の底部15の内向き面よりも内側に配置される。
【0070】
上記中継コネクタ90の可動側外導体93が筒部42の内側開口に挿入接続されると共に、内導体34の内側端部が可動側内導体91に挿入接続されることで、中継コネクタ90と同軸コネクタ30とがケース12内で接続される。
【0071】
本実施形態では、保持筒部16の外周部に、ケーブルの端部に取付けられたケーブルコネクタを保持するための係止突部18aが形成されている。係止突部18aが形成されることは必須ではない。
【0072】
<筒端子の固定構造について>
上記筒端子40の取付構造60を中心に説明する。
【0073】
筒端子40は、取付対象部材50に取付けられる。この取付対象部材50の底部52に開口54が形成されている。開口54は、筒部42の内側開口に対向する位置に形成されている。開口54の中心は、筒端子40の中心軸X上に位置する。開口54の大きさは、筒部42の内側開口の大きさと同じか当該開口よりも大きく、かつ、複数の延出片44の最小包含円よりも小さい。本実施形態では、開口は、筒部42の内径と同じ程度に設定されている。このため、筒部42を底部52側に延長すると、開口54の縁に達する。
【0074】
第2ケース14に取付対象部材50が固定された状態で、筒端子40の筒部42が保持筒部16の保持孔17hに挿入されて一定位置に保持されている。筒部42の一端側の開口縁から延び出る複数の延出片44の直交部46が、底部52の外向き面であって開口54周りの部分上に配置される。
【0075】
複数の延出片44の直交部46は、取付対象部材50の底部52に取付けられている。本実施形態では、延出片44と取付対象部材50とが相互に重ね合わされた状態で、取付対象部材50の底部52の嵌込凸部52Pが、直交部46の取付孔46hに嵌め込まれた状態とされるによって、筒端子40が取付対象部材50に取付けられる(
図5参照)。
【0076】
嵌込凸部52Pは、延出片44と底部52とが相互に重ね合わされた状態で、底部52の一部が取付孔46hに嵌り込むようにプレス加工された部分であってもよい。嵌込凸部52Pは、取付孔46hに圧入される凸部であってもよい。嵌込凸部52Pが凹部としての取付孔46hに挿入された後、嵌込凸部52Pの先端部がプレス加工等によって押潰されることによって、嵌込凸部52Pが取付孔46hから脱しないように加工されてもよい。すなわち、底部52に直交部46が重ね合わされた状態で、嵌込凸部52Pが取付孔46hに嵌り込み、嵌込凸部52Pと取付孔46hとの間に抜けを抑制する摩擦力が作用したり、嵌込凸部52Pが取付孔46hから抜け難い形状に塑性変形したりすることによって、嵌込凸部52Pが取付孔46hから抜出難くなればよい。金属の塑性変形を利用した凹凸の嵌り合い固定構造は、カシメ接合と呼ばれる接合方法による固定構造であってもよく、クリンチカシメと呼ばれる接合法による固定構造であってもよい。
【0077】
延出片44を底部52に取付ける構成は上記例に限られない。例えば、延出片の直交部は、レーザ溶接、抵抗溶接又はろう接等によって底部52に固定されてもよい。
【0078】
複数の延出片44のそれぞれの直交部46が開口54の周りで底部52に取付けられることで、筒端子40が底部52に取付けられる。
【0079】
底部52のうちの開口54の周りの部分であって、上記2つの延出片44aの間には、他の延出片44の間よりも大きい間隔が空いている。突出片48は、当該2つの延出片44aの直交部46の間で、底部52に達する。
【0080】
底部52のうち突出片48が達する部分に凹部52gが形成されている。凹部52gは、上記2つの延出片44aの直交部46の間に位置している。本実施形態では、凹部52gは、開口54の外周縁に部分的に形成された凹みである。凹部52gは、開口54とは別に形成され、筒端子40側から見て凹む凹部であってもよい。本実施形態では、凹部52gは、底部52の両面側に開口している。凹部52gは、筒端子40側から見て凹んでいればよく、有底の凹みであってもよい。
【0081】
そして、2つの延出片44aの間に位置する突出片48が、当該2つの延出片44aの直交部46の間で、底部52に達し、突出片48の少なくとも一部が凹部52gに配置されている。突出片48の先端は、凹部52g内に位置していてもよいし、凹部52gを貫通して取付対象部材50の内側に位置していてもよい。本実施形態では、突出片48の先端は、凹部52g内に位置している。
【0082】
筒部42の周方向において凹部52gの幅W1は、突出片48の幅W2と同じか大きい(
図5参照)。幅W1は、底部52に対する筒端子40の回転方向の位置決め精度を確保できる程度で、幅W2よりも小さいことが好ましい。
【0083】
開口54の径方向における凹部52gの寸法、ここでは、開口54の縁部に対する凹部52gの凹み寸法は、突出片48を配置できる大きさ、例えば、突出片48の厚みと同じか大きく設定されている。
【0084】
凹部52gのうち筒部42側の開口縁は、外側に向って徐々に広がるガイド面52g1、52g2を有することが好ましい。本実施形態では、凹部52gのうち筒部42側の開口縁は、一対のガイド面52g1と、1つのガイド面52g2を含む。一対のガイド面52g1は、凹部52gの開口縁のうち筒部42の周方向において対向する一対の縁に沿って形成されている。ガイド面52g2は、凹部52gの開口縁のうち筒部42に対して外周側に位置する縁に沿って形成されている。ガイド面52g2は、上記一対の縁の間に位置する。
【0085】
このため、突出片48が凹部52gに対して開口54の周方向に位置ずれしつつ底部52に向けて押しつけられると、突出片48の先端が一対のガイド面52g1のいずれかに接触して、凹部52gに向けてガイドされる。このため、筒部42の周方向における凹部52gの寸法をなるべく小さくしつつ、突出片48を凹部52g内に配置し易い。凹部52gを小さくできることで、底部52に対する筒端子40の回転方向の位置決め精度を確保し易い。特に、少なくとも3つのガイド面52g1、52g2が形成されるため、突出片48が凹部52g内に配置され易い。
【0086】
同様に、突出片48が凹部52gに対して外周側に位置ずれしつつ底部52に向けて押しつけられると、突出片48の先端がガイド面52g2に接触して、凹部52gに向けてガイドされる。
【0087】
<効果等>
以上のように構成された筒端子40、同軸コネクタ30及び筒端子40の取付構造60によると、筒部42から突出片48が突出している。このため、突出片48がキャリア100に繋がったまま、筒部42をプレス加工することができる。例えば、筒部42を絞り加工して円筒形状にプレス加工できる。
【0088】
ここで、仮に、延出片44の先端がキャリア100に繋がったまま、筒部42をプレス加工する場合を考える。この場合、延出片44の先端は、筒部42に対して突出片48の先端よりも大きく離れている。また、延出片44は、突出片48よりも曲って筒部42の外周側に位置する。このため、キャリア100を位置決め基準として筒部42をプレス加工すると、筒部42を寸法精度よく加工し難い。
【0089】
突出片48の先端は、延出片44の先端よりも筒部42に近い。また、突出片48の曲げ量は、延出片44の曲げ量よりもが少ない。このため、キャリア100に対して筒部42を形成する場所が精度よく一定位置に支持される。このため、キャリア100を基準として、筒部42を寸法精度よく加工し易い。
【0090】
また、突出片48は、中心軸Xにおいて、複数の延出片44よりも筒部42の一端の外側に突出している。このため、剪断用のカット刃101を、複数の延出片44の間に位置させることなく、複数の延出片44の外側で突出片48をキャリア100から切断できる(
図6参照)。このため、複数の延出片に、キャリアカットのための特別な形状を設定しなくてもよい。
【0091】
よって、なるべく簡易な構造で、筒端子40を寸法精度よく加工できる。
【0092】
また、突出片48が筒部42の中心軸Xに沿って延びていると、筒部42を、その中心軸Xに沿う軸周りで絞り加工等することが容易となり、筒部42を寸法精度よく加工し易い。
【0093】
また、突出片48の先端に切断痕49が形成されていれば、突出片48の先端をキャリア100に繋げたまま筒部42を加工できる。この場合に、切断痕49が筒部42及び複数の延出片44に残らない。筒部42に切断痕49が残っていなければ、当該筒部42を他のコネクタへの接続用に利用しても当該他のコネクタが剪断痕によって傷付け難い。また、延出片44に剪断痕が残っていなければ、延出片44を底部52にぴったりと面接触させた状態で、底部52に取付け易い。
【0094】
また、複数の延出片44のそれぞれが、中心軸Xに対して直交する方向に延びる直交部46を含むため、当該複数の延出片44を、取付対象部材50に安定して取付け易い。
【0095】
また、複数の延出片44のそれぞれが、傾斜部45と、傾斜部45の先端から延びる直交部46とを含むため、傾斜部45の角度、傾斜部45に対する直交部46の角度等を微調整することで、複数の直交部46を、筒部42の中心軸Xに対して直交する同一平面上に沿って延在させるように配置し易い。そして、突出片48を、隣り合う2つの延出片44aの傾斜部45の間を通って、複数の直交部46から延び出るように配置できる。
【0096】
また、中心軸Xを基準とする複数の延出片44のそれぞれの間の角度θは、突出片48が形成された間を除き、同じ角度に設定されているため、複数の延出片44を、取付対象部材50に取付けた状態で、筒端子40が取付対象部材50に安定してしっかりと保持され易い。
【0097】
また、筒端子40がなるべく簡易な構造で、寸法精度よく加工されるため、当該筒部42を備える同軸コネクタを低コストで製造できる。筒端子40の寸法精度がよいため、同軸コネクタ30の通信性能の向上が期待される。
【0098】
また、上記筒端子40の固定構造によると、取付対象部材50の底部52に凹部52gが形成されているため、筒端子40を取付対象部材50に取付けつつ、凹部52gによって取付対象部材50に突出片48を逃す空間を設けることができる。
【0099】
また、凹部52gによって底部52に対する筒端子40の回転方向の位置決め精度を確保し易い。
【0100】
この際に、複数の延出片44を利用して筒端子40を底部52に取付けることができる。
【0101】
凹部52gがガイド面52g1、52g2を有するため、突出片48がガイド面52g1、52g2を利用して凹部52g内に容易に入り込むことができる。これにより、筒端子40が取付対象部材50に容易に取付けられる。
【0102】
また、ガイド面52g1を利用して突出片48が凹部52g内に入り込めるため、底部52に対する筒端子40の回転方向の位置決め精度を担保できる範囲で、凹部52gを小さくできる。
【0103】
なお、筒端子40は、同軸コネクタ30の導体として適用される必要は無く、他のコネクタの端子として適用されてもよい。
【0104】
また、筒端子40は、上記シールドケースでは無い導電板部分へ固定されてもよい。
【0105】
なお、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0106】
10 機器
12 ケース
13 第1ケース
14 第2ケース
15 底部
15p 固定用突部
16 保持筒部
17 保持仕切部
17h 保持孔
18a 係止突部
20 電気部品
21 回路基板
22 撮像素子
24 基板側コネクタ
25 基板側内導体
26 基板側誘電体
27 基板側外導体
30 同軸コネクタ
34 内導体
36 誘電体
36h 貫通孔
40 筒端子
42 筒部
44 延出片
44a 突出片を介して隣合う2つの延出片
45 傾斜部
46 直交部
46h 取付孔
48 突出片
49 切断痕
50 取付対象部材
52 底部(取付導電板部)
52P 嵌込凸部
52g 凹部
52g1 ガイド面
52g2 ガイド面
52h 孔部
54 開口
60 取付構造
90 中継コネクタ
91 可動側内導体
92 可動側誘電体
93 可動側外導体
100 キャリア
101 カット刃
X 中心軸
θ 角度