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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166765
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20241122BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/209
H01M50/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083093
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】田口 佑介
(72)【発明者】
【氏名】刑部 友敬
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA14
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
(57)【要約】
【課題】電池セルの膨張収縮を吸収できるとともに、電池セルの膨張時に当該電池セルに加えられる荷重を緩和できる電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である電池モジュールは、積層状に配列される複数の電池セルと、シート状のベース部と、前記ベース部から前記複数の電池セルの配列方向に突出する突起部とを有し、前記複数の電池セルによって前記配列方向に挟まれる弾性体シートと、を備える。前記突起部は、前記ベース部から前記配列方向に延在する環状壁部を備える。前記環状壁部は、前記配列方向から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するオーバル形の環状に形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層状に配列される複数の電池セルと、
シート状のベース部と、前記ベース部から前記複数の電池セルの配列方向に突出する突起部とを有し、前記複数の電池セルによって前記配列方向に挟まれる弾性体シートと、
を備え、
前記突起部は、前記配列方向から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するオーバル形の環状に形成され、前記ベース部から前記配列方向に延在する環状壁部を備える、
ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記ベース部は、前記配列方向から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するシート状に形成され、
前記弾性体シートは、複数の前記突起部を有し、
複数の前記突起部には、前記環状壁部の長手方向と前記ベース部の短手方向とが同じ方向の突起部と、前記環状壁部の長手方向と前記ベース部の長手方向とが同じ方向の突起部との少なくとも一方が含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記弾性体シートは、複数の前記突起部を有し、
複数の前記突起部には、前記環状壁部同士が連結された状態の突起部と、前記環状壁部同士が離間した状態の突起部との少なくとも一方が含まれる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記突起部は、前記突起部の底部から前記配列方向に延在する中実柱部を前記環状壁部の内側に備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに隣り合うように配列(積層)された複数の電池セルを備える電池モジュールが提案されている。例えば、特許文献1には、スペーサーを介して積層される複数の電池セルの積層体と、当該積層体の積層方向の両側から複数の電池セルを挟持(拘束)する一対の支持板と、これら複数の電池セルの各間に介在する弾性体とを備えた電池モジュールが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電池モジュールにおいて、弾性体は、その厚み方向から見た平面視で、例えば楕円形をなし、複数の電池セルの各間、または電池セルと支持板との間に配置される。電池セルは、充放電が可能な二次電池であり、充放電に伴って膨張収縮する。また、電池セルが充放電の繰り返しによって劣化した場合、電池セルの充電時の膨張は、放電時に元の形状まで収縮しないため、徐々に増大する傾向にある。上記弾性体は、このような電池セルの膨張収縮に伴って変形することにより、電池セルの膨張収縮を吸収している。
【0004】
なお、電池セルの膨張収縮を吸収する弾性体としては、上記のように厚み方向から見た平面視で楕円形をなす弾性体の他に、例えば、円柱形状に形成された弾性体が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-111561号公報
【特許文献2】特開2017-152338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の楕円形状または円柱形状の弾性体は、電池セルの積層方向に潰れにくい(圧縮し難い)ため、電池セルの膨張を吸収する際において弾性体から電池セルに加えられる荷重が過度に増大する恐れがある。この過度な荷重により、電池セルのセパレータ等の内部部品が破損して短絡する場合がある。なお、上記弾性体は、特に中実構造である場合、厚み方向から見た平面視の形状(楕円形または円形等)によらず、圧縮し難い傾向にある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電池セルの膨張収縮を吸収することができるとともに、電池セルの膨張時に当該電池セルに加えられる荷重を緩和することができる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電池モジュールは、積層状に配列される複数の電池セルと、シート状のベース部と、前記ベース部から前記複数の電池セルの配列方向に突出する突起部とを有し、前記複数の電池セルによって前記配列方向に挟まれる弾性体シートと、を備え、前記突起部は、前記配列方向から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するオーバル形の環状に形成され、前記ベース部から前記配列方向に延在する環状壁部を備える、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記ベース部は、前記配列方向から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するシート状に形成され、前記弾性体シートは、複数の前記突起部を有し、複数の前記突起部には、前記環状壁部の長手方向と前記ベース部の短手方向とが同じ方向の突起部と、前記環状壁部の長手方向と前記ベース部の長手方向とが同じ方向の突起部との少なくとも一方が含まれる、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記弾性体シートは、複数の前記突起部を有し、複数の前記突起部には、前記環状壁部同士が連結された状態の突起部と、前記環状壁部同士が離間した状態の突起部との少なくとも一方が含まれる、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記突起部は、前記突起部の底部から前記配列方向に延在する中実柱部を前記環状壁部の内側に備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電池モジュールによれば、電池セルの膨張収縮を吸収することができるとともに、電池セルの膨張時に当該電池セルに加えられる荷重を緩和することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る電池モジュールの一構成例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る電池モジュールの一構成例を示す上視図である。
図3図3は、図2に示す電池モジュールのA-A線断面の一構成例を示す断面図である。
図4図4は、図3に示す電池モジュールの断面の拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態1における電池セルの一構成例を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態1における弾性体シートの一構成例を示す斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態1における弾性体シートの一構成例を示す正面図である。
図8図8は、図7に示す弾性体シートのB-B線断面の一構成例を示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部の一構成例を示す断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部による電池セルの位置ずれを抑制する機能を説明するための模式図である。
図11図11は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部による電池セルへの過度な荷重を防止する機能を説明するための模式図である。
図12図12は、電池セル間に介在する弾性体シートの突起部の圧縮率と電池セルに加えられる荷重との相関を示す図である。
図13図13は、本発明の実施形態2に係る弾性体シートの一構成例を示す斜視図である。
図14図14は、図13に示す弾性体シートを積層方向から見た図である。
図15図15は、図14に示す弾性体シートのC-C線断面の一構成例を示す断面図である。
図16図16は、図15に示す弾性体シートの断面の拡大図である。
図17図17は、本実施形態2の電池セル間に介在する弾性体シートの突起部の圧縮率と電池セルに加えられる荷重との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る電池モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0015】
<実施形態1>
(電池モジュール)
まず、本発明の実施形態1に係る電池モジュールの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る電池モジュールの一構成例を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る電池モジュールの一構成例を示す上視図である。図3は、図2に示す電池モジュールのA-A線断面の一構成例を示す断面図である。図4は、図3に示す電池モジュールの断面の拡大図である。図1~4に示すように、本実施形態1に係る電池モジュール1は、複数の電池セル11を含むセル積層体10と、セル積層体10の各電池セル11の膨張収縮を吸収する弾性体シート20と、セル積層体10を拘束した状態に維持するためのエンドプレート31、32および拘束バンド33~36とを備える。
【0016】
セル積層体10は、複数の電池セル11の積層体である。詳細には、図1~3に示すように、複数の電池セル11は、弾性体シート20を挟んで積層状に配列される。セル積層体10は、このように配列された複数の電池セル11を含む。例えば、図1~3に示すセル積層体10には、24個の電池セル11が含まれる。
【0017】
電池セル11は、充放電可能な二次電池であり、例えば、金属膜が形成されたフィルムの巻回体または積層体を外装ケース内に備える。図5は、本発明の実施形態1における電池セルの一構成例を示す斜視図である。図5に示すように、電池セル11は、外装ケース12と、蓋部16と、一対の電極端子17、18とを備える。外装ケース12は、腹面部13a、13bと側面部14a、14bと底部15とを有する有底の箱状体であり、電池セル11を構成する内部電極等(図示せず)を収容する。この外装ケース12において、腹面部13a、13bは電池セル11の厚さ方向に対向する端面部であり、側面部14a、14bは電池セル11の幅方向に対向する端面部である。また、腹面部13a、13bの各面積は、側面部14a、14bおよび底部15に比べて大きい。蓋部16は、外装ケース12の開口部に溶接等によって取り付けられており、当該開口部を閉じる。蓋部16には、一対の電極端子17、18が設けられている。例えば、一対の電極端子17、18のうち、一方はプラス極の端子であり、他方はマイナス極の端子である。電極端子17、18の構成材料として、例えば、アルミニウム等の金属が挙げられる。また、上述した外装ケース12および蓋部16の各構成材料として、例えば、金属または樹脂等が挙げられる。
【0018】
上記のような構成の電池セル11は、図4に示すように、電池セル11の厚さ方向に腹面部13a、13bを対向させるように、弾性体シート20を挟んで積層状に複数配列される。すなわち、複数の電池セル11を含むセル積層体10の積層方向D1は、これら複数の電池セル11の配列方向であり、電池セル11の厚さ方向と同じである。また、本実施形態1において、電池モジュール1の幅方向D2は、セル積層体10に含まれる電池セル11の幅方向と同じである。当該幅方向D2は、上述した積層方向D1に対して垂直な方向の一つである。電池モジュール1の高さ方向D3は、上述した積層方向D1および幅方向D2に対して垂直な方向である。例えば、電池モジュール1が車両等の可動体に搭載された場合において、高さ方向D3は、当該可動体の上下方向に相当する。なお、上述した積層方向D1、幅方向D2および高さ方向D3は、電池モジュール1の各構成部においても同様である。
【0019】
弾性体シート20は、弾性体によって構成されるシートであり、電池セル11の充放電に伴う膨張収縮を吸収する機能と、電池セル11に掛かる荷重を緩和する機能とを兼ね備える。詳細には、図1~3に示すように、弾性体シート20は、複数の電池セル11によって積層方向D1に挟まれるように、これら複数の電池セル11の各間に介在する。また、セル積層体10における積層方向D1の両端部において、一方のエンドプレート31と電池セル11bとの間には弾性体シート20bが介在し、他方のエンドプレート32と電池セル11aとの間には弾性体シート20aが介在する。すなわち、本実施形態1において、複数の弾性体シート20は、複数の電池セル11の各々を積層方向D1に挟むように配置されている。
【0020】
また、図4に示すように、弾性体シート20は、シート状のベース部21と、当該ベース部21から積層方向D1に突出する突起部22とを有する。突起部22は、積層方向D1から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するオーバル形の環状に形成されている。このような突起部22は、例えば図4に示すように、弾性体シート20のベース部21に複数設けられている。これら複数の突起部22のうち、突起部22-1、22-5は幅方向D2を長手方向とする突起部であり、突起部22-2~22-4は高さ方向D3を長手方向とする突起部である。なお、突起部22の詳細な構成については後述する。
【0021】
また、弾性体シート20のベース部21と電池セル11との間には、例えば図4に示すように、断熱材シート27が設けられている。断熱材シート27は、電池セル11の異常時において高温に発熱した当該電池セル11の熱が隣の電池セル11に伝わらないようにする。
【0022】
図1~3に示す複数の弾性体シート20の各々は、積層方向D1に隣り合う2つの電池セル11のうち、一方の電池セル11にベース部21を接触させるとともに、他方の電池セル11に突起部22を接触させる。例えば、図4に示すように、2つの電池セル11-1、11-2によって積層方向D1に挟まれた状態の弾性体シート20は、一方の電池セル11-1の腹面部13bに対して断熱材シート27を介してベース部21を接触させるとともに、他方の電池セル11-2の腹面部13aと突起部22とを接触させる。また、図2、3に示すように、エンドプレート32と電池セル11aとの間の弾性体シート20aは、エンドプレート32と上記ベース部21とを接触させるとともに、電池セル11aの腹面部と上記突起部22とを接触させる。エンドプレート31と電池セル11bとの間の弾性体シート20bは、電池セル11bの腹面部と上記ベース部21とを接触させるとともに、エンドプレート31と上記突起部22とを接触させる。
【0023】
これら複数の弾性体シート20の各々は、積層方向D1に拘束される複数の電池セル11の各々に対し、拘束に寄与する弾性力を突起部22の圧縮によって与える。また、これら複数の弾性体シート20の各々は、積層方向D1に対向する電池セル11の膨張または収縮に追従して突起部22を変形させ、これにより、当該電池セル11の膨張または収縮を吸収する。
【0024】
エンドプレート31、32は、複数の電池セル11の各間に弾性体シート20を介在させた状態で、セル積層体10を積層方向D1に挟むための部品である。詳細には、図1~3に示すように、エンドプレート31、32は、セル積層体10を積層方向D1の両側から挟むように配置される。例えば、図2、3に示すように、一方のエンドプレート31は、積層方向D1の一方側(本実施形態1では正側)から弾性体シート20bを介して電池セル11bと対向するように配置される。他方のエンドプレート32は、積層方向D1の他方側(本実施形態1では負側)から弾性体シート20aを介して電池セル11aと対向するように配置される。なお、エンドプレート31、32を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等、弾性体シート20の突起部22よりも硬質な樹脂、鉄またはアルミニウム等の金属が挙げられる。
【0025】
拘束バンド33~36は、一対のエンドプレート31、32によってセル積層体10が積層方向D1に拘束された状態を維持するための部品である。詳細には、拘束バンド33~36の各々は、例えば、鉄またはアルミニウム等の金属によって構成される。図1、2に示すように、拘束バンド33、34は、電池モジュール1の幅方向D2の両側から、セル積層体10を弾性体シート20とともに拘束するバンドである。一方の拘束バンド33は、幅方向D2の一方側(本実施形態1では正側)から、エンドプレート31、32に固定される。他方の拘束バンド34は、幅方向D2の他方側(本実施形態1では負側)から、エンドプレート31、32に固定される。また、図1、3に示すように、拘束バンド35、36は、電池モジュール1の高さ方向D3の両側から、セル積層体10を弾性体シート20とともに拘束するバンドである。一方の拘束バンド35は、高さ方向D3の一方側(本実施形態1では正側)から、エンドプレート31、32に固定される。他方の拘束バンド36は、高さ方向D3の他方側(本実施形態1では負側)から、エンドプレート31、32に固定される。特に図示しないが、これらの拘束バンド33~36とエンドプレート31、32との接合は、例えば、リベットまたはボルト等によって行われる。
【0026】
上記のように拘束バンド33~36と接合されたエンドプレート31、32は、複数の電池セル11を拘束するに足る荷重(以下、拘束荷重という)を、積層方向D1の両側から複数の電池セル11の各々に対して加えた状態となっている。すなわち、エンドプレート31、32間の各弾性体シート20は、電池セル11に拘束荷重を加えた分、突起部22を積層方向D1に圧縮させた状態となっている。
【0027】
(弾性体シート)
つぎに、本発明の実施形態1における弾性体シート20について詳細に説明する。図6は、本発明の実施形態1における弾性体シートの一構成例を示す斜視図である。図7は、本発明の実施形態1における弾性体シートの一構成例を示す正面図である。図7には、積層方向D1から見た弾性体シート20が図示されている。図8は、図7に示す弾性体シートのB-B線断面の一構成例を示す断面図である。図6~8に示すように、弾性体シート20は、ベース部21と、突起部22とを備える。
【0028】
ベース部21は、図6、7に示すように、突起部22が形成されたシート状の構造体である。例えば図8に示すように、ベース部21には、複数の突起部22が一体形成されている。ベース部21を構成する材料としては、例えば、オレフィン系エラストマまたはシリコンゴム等の弾性樹脂、当該弾性樹脂に比べて弾性が低い低弾性樹脂、突起部22よりも硬質な樹脂等が挙げられる。例えば、当該低弾性樹脂としては可撓性樹脂等が挙げられ、当該硬質な樹脂としてはポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、電池セル11の膨張収縮を吸収し易いという観点から、弾性樹脂または低弾性樹脂が好ましい。また、弾性体シート20の成形し易さの観点から、ベース部21の構成材料は、突起部22と同じ樹脂(例えば弾性樹脂)であることが特に好ましい。
【0029】
突起部22は、ベース部21から複数の電池セル11の配列方向(すなわち積層方向D1)に突出し、電池セル11に対して拘束荷重を加えながら、電池セル11の膨張収縮を吸収する際に変形する構造体である。例えば、図6~8に示すように、突起部22は、ベース部21から積層方向D1の一方側(本実施形態1では正側)へ突出するように、ベース部21に複数形成されている。
【0030】
図9は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部の一構成例を示す断面図である。図9には、図8に示す弾性体シート20の断面の拡大図が図示されている。図6~9に示すように、突起部22は、環状壁部23と底部24とを備える。
【0031】
環状壁部23は、図6~9に示すように、積層方向D1から見た平面視で長手方向D4と短手方向D5とを有するオーバル形の環状に形成され、ベース部21から積層方向D1に延在する。すなわち、環状壁部23は、ベース部21側から積層方向D1の一方側(図9では正側)に突出し、その突出端部が開口した構造を有している。例えば、環状壁部23がなすオーバル形としては、楕円形、長円形、角丸長方形等が挙げられる。
【0032】
底部24は、図6~9に示すように、環状壁部23によって囲まれる内側に形成されている。すなわち、突起部22は、環状壁部23を備えた有底の弾性構造体である。なお、底部24は、ベース部21と一体に形成されてもよいし、ベース部21とは別体に形成されてもよい。
【0033】
上記のような構成を有する突起部22は、積層方向D1に対して垂直な方向(以下、せん断方向という)を環状壁部23の長手方向D4とするように、ベース部21に所定数(図6~8では複数)配置される。例えば、図6、7に示すように、ベース部21は、積層方向D1から見た平面視で長手方向と短手方向とを有するシート状に形成される。本実施形態1において、ベース部21の長手方向は弾性体シート20の幅方向D2であり、ベース部21の短手方向は弾性体シート20の高さ方向D3である。なお、積層方向D1に対して垂直な幅方向D2および高さ方向D3は、せん断方向の代表的な一例である。弾性体シート20が有する複数の突起部22には、環状壁部23の長手方向D4とベース部21の短手方向(高さ方向D3)とが同じ方向の突起部(以下、縦型の突起部という)と、環状壁部23の長手方向D4とベース部21の長手方向(幅方向D2)とが同じ方向の突起部(以下、横型の突起部という)と、の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
【0034】
例えば、図6、7に示すように、複数の突起部22のうち、突起部22aは縦型の突起部であり、突起部22bは横型の突起部である。縦型の突起部22aは、幅方向D2および高さ方向D3の各方向に並ぶよう複数配置されている。横型の突起部22bは、上記縦型の突起部22aの配列を高さ方向D3の両側から挟むように、複数配置されている。突起部22から電池セル11に加えられる荷重の集中を抑制するという観点から、複数の突起部22は、ベース部21において一様に配置されることが好ましい。また、突起部22毎に電池セル11から受ける荷重を低減するという観点から、ベース部21に配置される突起部22の数は、多い方が好ましい。
【0035】
なお、複数の突起部22の配列は、図6、7に図示されるものに限定されない。例えば、複数の突起部22として、縦型の突起部のみが配置されてもよいし、横型の突起部のみが配置されてもよいし、縦型の突起部および横型の突起部の両方が配置されてもよい。また、複数の突起部22は、幅方向D2および高さ方向D3の各方向において直線状に並ぶ等、規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。
【0036】
また、弾性体シート20が有する複数の突起部22には、環状壁部23同士が連結した状態の突起部(以下、連結型の突起部という)と、環状壁部23同士が離間した状態の突起部(以下、単一型の突起部という)と、の少なくとも一方が含まれることが好ましい。
【0037】
例えば、図6、7に示すように、複数の突起部22は、所定数の環状壁部23が連結された連結型の突起部を1セットにして、当該連結型の突起部を複数セット含むものであってもよい。なお、図6、7には、連結型の突起部の1セットとして、3つの環状壁部23をその長手方向D4に連結したものが例示されている。特に図示しないが、複数の突起部22は、上記以外に、単一型の突起部のみを複数含むものであってもよいし、連結型の突起部と単一型の突起部との両方を含むものであってもよい。
【0038】
上述した突起部22を有する弾性体シート20が複数の電池セル11によって積層方向D1に挟まれた場合、突起部22は、積層方向D1の正側の電池セル11(例えば図4に示す電池セル11-2)を、環状壁部23の延在端部(開口端部)で受ける。さらに、突起部22は、積層方向D1の負側の電池セル11(例えば図4に示す電池セル11-1)を、ベース部21を介して環状壁部23の基端部(上記延在端部とは反対側の端部)で受ける。この状態において、突起部22は、上述した電池セル11の拘束または膨張収縮に応じ、環状壁部23を適宜変形(弾性変形)させる。これにより、突起部22は、電池セル11に対して適度に拘束荷重を加えながら、せん断方向(例えば幅方向D2や高さ方向D3)への電池セル11の位置ずれを抑制する。さらに、突起部22は、電池セル11の膨張収縮を吸収するとともに、電池セル11に過度な荷重が加えられることを防止する。上記のように弾性変形する突起部22の構成材料としては、例えば、オレフィン系エラストマまたはシリコンゴム等の弾性樹脂が挙げられる。
【0039】
(突起部の機能)
つぎに、弾性体シート20が備える突起部22の機能について説明する。図10は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部による電池セルの位置ずれを抑制する機能を説明するための模式図である。弾性体シート20は、積層方向D1に配列(積層)される複数の電池セル11の各間に介在する(図1~3参照)。例えば、図4に示したように、積層方向D1に対向する2つの電池セル11-1、11-2の間に弾性体シート20が介在する場合、この弾性体シート20は、一方の電池セル11-1の腹面部13bにベース部21を接触(例えば断熱材シート27を介して接触)させるとともに、他方の電池セル11-2の腹面部13aに突起部22を接触させる。この場合、突起部22は、上述した複数の電池セル11の拘束に伴い、積層方向D1の両側の電池セル11-1、11-2から荷重を受ける。当該荷重を受けた突起部22は、せん断方向への倒れを抑制しながら積層方向D1に圧縮される。なお、図10では、説明の便宜上、断熱材シート27の図示は省略されている。
【0040】
詳細には、図10に示すように、突起部22は、一方の電池セル11-1を環状壁部23の基端部(ベース部21側の端部)によって受けるとともに、他方の電池セル11-2を環状壁部23の延在端部によって受ける。この際、突起部22は、これら電池セル11-1、11-2の積層方向D1の拘束により、積層方向D1の両側から押圧される。これに伴い、環状壁部23は、ベース部21を介して一方の電池セル11-1から荷重を受けるとともに、他方の電池セル11-2から荷重を受ける。これにより、環状壁部23は、積層方向D1に若干圧縮される。突起部22は、この環状壁部23の圧縮変形による反力(弾性力)を発生させ、この反力を拘束荷重として電池セル11-1、11-2に付与した状態(以下、初期状態という)になる。
【0041】
ここで、初期状態の突起部22には、図10に示すように、積層方向D1の圧縮変形とともに、せん断方向D6に倒れようとする変形(以下、傾倒変形という)が生じる場合がある。すなわち、突起部22の環状壁部23と積層方向D1に接触する電池セル11-2は、この突起部22の傾倒変形に伴い、せん断方向D6(例えば幅方向D2)に位置ずれする場合がある。
【0042】
これに対し、環状壁部23は、積層方向D1から見た平面視で長手方向D4と短手方向D5とを有するオーバル形の環状をなし(図6、7参照)、せん断方向D6の外力に対抗する抗力を有する。環状壁部23の短手方向D5の抗力は、例えば円柱形状の弾性突起に比べて強い。さらに、環状壁部23の長手方向D4の抗力は、短手方向D5の効力よりも強い。なお、ここでいう円柱形状の弾性突起は、その直径が環状壁部23の短手方向D5の外形寸法と同程度のものである。以下、当該円柱形状の弾性突起は、従来の突起部と称される。
【0043】
環状壁部23は、従来の突起部よりも強い抗力により、突起部22のせん断方向D6への傾倒変形に抗する。例えば、環状壁部23の短手方向D5が電池セル11の幅方向D2と同じ方向である場合、環状壁部23は、短手方向D5の抗力により、突起部22の幅方向D2の傾倒変形を、従来の突起部に比べて小さくなるように抑制する。突起部22は、このような環状壁部23の作用により、上記傾倒変形に伴う電池セル11のせん断方向D6(例えば幅方向D2)の位置ずれを抑制することができる。
【0044】
また、車両等の可動体に搭載された電池モジュール1において、積層方向D1に弾性体シート20を挟んで複数配列された状態にある電池セル11は、当該可動体の振動に伴い、せん断方向D6(例えば高さ方向D3)に位置ずれする場合がある。この電池セル11の位置ずれは、当該可動体の振動に伴い、弾性体シート20の突起部22が傾倒変形することによって生じる。
【0045】
これに対し、環状壁部23は、従来の突起部よりも強い抗力により、可動体の振動に伴う突起部22のせん断方向D6への傾倒変形に抗する。例えば、環状壁部23の長手方向D4が電池セル11の高さ方向D3と同じ方向である場合、環状壁部23は、長手方向D4の抗力により、突起部22の高さ方向D3の傾倒変形を、従来の突起部に比べて小さくなるように抑制する。突起部22は、このような環状壁部23の作用により、上記可動体の振動に伴う電池セル11のせん断方向D6(例えば高さ方向D3)の位置ずれを抑制することができる。
【0046】
一般に、可動体の振動に伴って突起部22に加わるせん断方向D6の外力は、上記初期状態において突起部22に加わるせん断方向D6の外力に比べて強い。また、せん断方向D6の外力に対する環状壁部23の長手方向D4の抗力は、短手方向D5の抗力に比べて強い。したがって、電池セル11のせん断方向D6の位置ずれを抑制するという観点から、弾性体シート20は、可動体の振動による外力の方向を環状壁部23の長手方向D4とする突起部22をより多く備えることが好ましい。例えば、可動体の振動による外力の方向が高さ方向D3である場合、弾性体シート20が有する複数の突起部22は、図6、7に例示した縦型の突起部22aを横型の突起部22bよりも多く含むことが好ましい。
【0047】
図11は、本発明の実施形態1における弾性体シートの突起部による電池セルへの過度な荷重を防止する機能を説明するための模式図である。弾性体シート20は、上述したように積層方向D1に配列される複数の電池セル11の各間に介在し、例えば図4に示したように、積層方向D1に対向する2つの電池セル11-1、11-2の間に挟まれる。この場合、突起部22は、上述した初期状態から、電池セル11-1、11-2の充放電に伴う膨張収縮を吸収しながら、積層方向D1に圧縮された状態になる。なお、図11では、説明の便宜上、断熱材シート27の図示は省略されている。
【0048】
詳細には、図11に示すように、突起部22は、環状壁部23の圧縮変形による反力を拘束荷重として電池セル11-1、11-2に付与した初期状態になる。この初期状態において、環状壁部23は、殆ど湾曲せず、電池セル11-1を足場にして突っ張った状態を維持しつつ、積層方向D1に若干圧縮される。なお、図11に示す突起部22の初期状態は、図10に示した初期状態と同じである。
【0049】
その後、電池セル11は、充放電に伴い積層方向D1に膨張収縮する。突起部22は、電池セル11と接触した状態を維持しながら、積層方向D1に弾性変形することにより、電池セル11の充放電時の膨張収縮を吸収する。また、電池セル11は、充放電の繰り返しによって劣化し、これに起因して、充電時の膨張を放電時に元の状態まで収縮できなくなり、充放電による膨張の程度を徐々に増大させる。突起部22は、このように膨張する電池セル11を受けて積層方向D1に圧縮されつつ弾性変形し、これにより、上記電池セル11の膨張を吸収する。
【0050】
上記突起部22の圧縮において、環状壁部23は、上記突っ張った状態をある程度維持した後、図11に示すように、外側へ座屈するように弾性変形(以下、座屈変形という)しつつ、積層方向D1に圧縮される(圧縮状態)。ここで、上記突起部22の圧縮が進行するに伴い、突起部22から電池セル11に加えられる荷重は増加する。しかし、当該荷重の増加は、上記環状壁部23の座屈変形によって軽減される。この結果、突起部22が電池セル11の膨張を吸収する際において、突起部22から電池セル11に対し、電池セル11を破損させる程の過度な荷重が加わる事態を防止することができる。
【0051】
図12は、電池セル間に介在する弾性体シートの突起部の圧縮率と電池セルに加えられる荷重との相関を示す図である。図12において、線L1は、本実施形態1における弾性体シート20の突起部22の圧縮率Sと、突起部22の圧縮に伴って突起部22から電池セル11に加えられる荷重Fとの関係を示す。線L2は、弾性体シート20の突起部22を従来の突起部(図示せず)に置き換えた場合の圧縮率Sと荷重Fとの関係を示す。
【0052】
また、図12において、圧縮率Sは、弾性体シート20の突起部22が電池セル11を受けて積層方向D1に圧縮されたときの突起部22の圧縮度合いを示すものであり、例えば、下記の式(1)によって算出される。
圧縮率S[%]=圧縮量△H/基準突出量Ha×100 ・・・(1)
式(1)において、基準突出量Haは、突起部22の圧縮前におけるベース部21からの突出量である。突起部22の突出量は、ベース部21から突起部22の突出端部(すなわち環状壁部23の延在端部)までの高さによって表される。圧縮量△Hは、突起部22の積層方向D1の圧縮による潰れ量であり、例えば、突起部22の基準突出量Haと突起部22の圧縮後の突出量Hbとの差(Ha-Hb)によって算出される。なお、上記圧縮率Sの定義は、従来の突起部についても同様である。
【0053】
上述したように複数の電池セル11の各間に介在する弾性体シート20の突起部22は、初期状態において、積層方向D1に若干圧縮することにより、電池セル11に拘束荷重を付与する。この場合、図12の線L1、L2によって示されるように、突起部22の圧縮率SがS0からS1まで増加し、これに伴い、突起部22から電池セル11に加えられる荷重Fは、F1以上に増加する。なお、荷重F1は、積層方向D1に配列された複数の電池セル11を積層方向D1に拘束するために必要な拘束荷重である。
【0054】
また、突起部22は、電池セル11の膨張収縮を吸収する際において、図11に示したように積層方向D1に圧縮されつつ弾性変形する。この場合、図12に示すように、突起部22の圧縮率SがS1からS2まで増加し、これに伴い、突起部22から電池セル11に加えられる荷重Fは、F1以上F2未満の範囲内で増加する。なお、荷重F2は、電池セル11が耐え得る上限の荷重である。すなわち、電池セル11に加えられる荷重FがF2を超えた場合、電池セル11の破損(例えばセパレータ等の内部部品の破損)が生じる恐れがある。
【0055】
ここで、図12の線L2によって示されるように、従来の突起部では、電池セル11の膨張収縮の吸収時に圧縮率SがS1からS2に増加し、これに伴い、荷重Fは、略リニアに増加し、ついには上限の荷重(F2)を超えてしまう。したがって、従来の突起部では、電池セル11の膨張収縮の吸収時に電池セル11に過度な荷重が加えられる事態を防止することは困難である。
【0056】
これに対して、本実施形態1の突起部22では、電池セル11の膨張収縮を吸収する際において、環状壁部23が上記突っ張った状態から座屈変形しつつ積層方向D1に圧縮される。このため、図12の線L1によって示されるように、突起部22による電池セル11の膨張収縮の吸収時における荷重Fの増加が、従来の突起部に比べて軽減される。これにより、突起部22から電池セル11への荷重Fは、電池セル11の上限の荷重(F2)未満に低減される。したがって、突起部22は、電池セル11の膨張収縮を吸収する際において、電池セル11に過度な荷重が加えられる事態を防止することができる。
【0057】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る電池モジュール1は、積層状に配列される複数の電池セル11と、複数の電池セル11によって積層方向D1に挟まれる弾性体シート20と、を備え、弾性体シート20は、シート状のベース部21と、ベース部21から複数の電池セル11の積層方向D1に突出する突起部22と、を有するようにしている。また、突起部22は環状壁部23を備え、環状壁部23は、積層方向D1から見た平面視で長手方向D4と短手方向D5とを有するオーバル形の環状に形成され、ベース部21から積層方向D1に延在するようにしている。
【0058】
このため、積層方向D1に拘束される複数の電池セル11の各々を弾性体シート20の突起部22によって受け、突起部22を積層方向D1に若干圧縮させることにより、突起部22から電池セル11に適度な拘束荷重を付与することができる。さらには、電池セル11の充放電時の膨張収縮に応じて突起部22を弾性変形させることにより、当該膨張収縮を吸収するとともに、環状壁部23を、複数の電池セル11の各間で積層方向D1に突っ張った状態から座屈した状態に弾性変形させ、これにより、当該膨張収縮の吸収時に突起部22から電池セル11に加えられる荷重Fの増加を軽減することができる。したがって、電池セル11の膨張収縮を吸収することができるとともに、電池セル11の膨張時に突起部22から電池セル11に加えられる荷重を緩和することができ、これにより、電池セル11に過度な荷重が加えられる事態を防止することができる。
【0059】
また、本発明の実施形態1に係る電池モジュール1では、突起部22が、積層方向D1に対して垂直な方向(せん断方向D6)を環状壁部23の長手方向D4とするように配置されている。このため、積層方向D1に拘束される複数の電池セル11の各々に対して突起部22から適度な拘束荷重を付与するとともに、せん断方向D6の外力に対する環状壁部23の抗力により、突起部22のせん断方向D6の傾倒変形を抑制することができる。したがって、突起部22の傾倒変形に伴う電池セル11のせん断方向D6の位置ずれ、例えば、積層方向D1の電池セル11の拘束に伴う電池セル11の幅方向D2の位置ずれと、電池モジュール1を搭載した可動体の振動に伴う電池セル11の高さ方向D3の位置ずれと、を抑制することができる。
【0060】
<実施形態2>
つぎに、本発明の実施形態2に係る電池モジュールが備える弾性体シートについて説明する。図13は、本発明の実施形態2に係る弾性体シートの一構成例を示す斜視図である。図14は、図13に示す弾性体シートを積層方向から見た図である。図15は、図14に示す弾性体シートのC-C線断面の一構成例を示す断面図である。図16は、図15に示す弾性体シートの断面の拡大図である。図13~16に示すように、本実施形態2に係る弾性体シート120は、上述した実施形態1に係る弾性体シート20の突起部22に代えて突起部122を備える。本実施形態2における突起部122は、上述した実施形態1における突起部22と同様の環状壁部23および底部24を備え、さらに中実柱部25を備える。特に図示しないが、本実施形態2に係る電池モジュールは、上述した実施形態1における弾性体シート20に代えて本実施形態2の弾性体シート120を備える。その他の構成は、上述した実施形態1と同じである。
【0061】
詳細には、図13~16に示すように、本実施形態2における突起部122は、環状壁部23の内側に中実柱部25を備える。中実柱部25は、突起部122の底部24から積層方向D1に延在するように形成される。すなわち、中実柱部25は、図16に示すように、ベース部21側から積層方向D1の一方側(環状壁部23と同じ側)に突出している。中実柱部25の突出端部(延在端部)は、充放電に伴って膨張収縮する電池セル11を受ける受面部となっている。本実施形態2において、中実柱部25は、例えば、底部24から環状壁部23と同じ方向に延在する中実の円柱状に形成される。
【0062】
上記のような中実柱部25は、環状壁部23とともに電池セル11を積層方向D1に受けて弾性変形し、これにより、環状壁部23と協同して電池セル11に拘束荷重を付与し且つ電池セル11の膨張収縮を吸収する。また、中実柱部25は、積層方向D1から見た平面視での面積(すなわち横断面積)が環状壁部23よりも小さい構造体であるため、環状壁部23に比べて積層方向D1に圧縮され易い。このような中実柱部25は、環状壁部23とともに電池セル11を積層方向D1に受けることにより、電池セル11に付与する荷重の、弾性変形率(圧縮率)に対する上昇度をより大きくすることができる。なお、中実柱部25の構成材料は、上述した実施形態1における突起部22と同じである。
【0063】
なお、本実施形態2における突起部122の配置は、上述した実施形態1における突起部の配置と同様である。例えば、図13、14に示すように、弾性体シート120が有する複数の突起部122には、縦型の突起部122aと横型の突起部122bとの少なくとも一方が含まれることが好ましい。また、弾性体シート120が有する複数の突起部122には、上述した実施形態1における弾性体シート20と同様に、連結型の突起部と単一型の突起部との少なくとも一方が含まれることが好ましい。
【0064】
図17は、本実施形態2の電池セル間に介在する弾性体シートの突起部の圧縮率と電池セルに加えられる荷重との相関を示す図である。図17において、線L3は、本実施形態2における弾性体シート120の突起部122の圧縮率Sと、突起部122の圧縮に伴って突起部122から電池セル11に加えられる荷重Fとの関係を示す。なお、図17において、線L1、L2および圧縮率Sの定義は、上述した実施形態1と同様である(図12参照)。
【0065】
本実施形態2において複数の電池セル11の各間に介在する弾性体シート120の突起部122は、初期状態において、環状壁部23と中実柱部25とを積層方向D1に若干圧縮させることにより、電池セル11に拘束荷重を付与する。この場合、図17の線L3によって示されるように、突起部122の圧縮率SがS0からS1まで増加し、これに伴い、突起部122から電池セル11に加えられる荷重Fは、F1以上に増加する。詳細には、図17の線L1、L3によって示されるように、突起部122による荷重Fは、初期状態において、中実柱部25が電池セル11へ荷重を加える分、上述した実施形態1における突起部22に比べ、より小さい圧縮率Sの変化で拘束荷重以上(荷重F1以上)に増加している。すなわち、初期状態の突起部122は、中実柱部25の作用により、上述した実施形態1における突起部22に比べ、簡易かつ効率よく電池セル11に拘束荷重を付与している。
【0066】
また、本実施形態2の突起部122は、電池セル11の膨張収縮を吸収する際において、環状壁部23および中実柱部25の双方を積層方向D1に圧縮させつつ弾性変形する。この場合、図17の線L3に示されるように、突起部122の圧縮率SがS1からS2まで増加し、これに伴い、突起部122から電池セル11に加えられる荷重Fは、F1以上F2未満の範囲内で増加する。なお、荷重F2は、上述したように、電池セル11が耐え得る上限の荷重である。
【0067】
本実施形態2において、突起部122が電池セル11の膨張収縮を吸収する際には、環状壁部23が上記突っ張った状態から座屈変形しつつ積層方向D1に圧縮され、これに並行して、中実柱部25が環状壁部23と同様に突っ張った状態から座屈変形しつつ積層方向D1に圧縮される。このため、図17の線L3によって示されるように、突起部122による電池セル11の膨張収縮の吸収時における荷重Fの増加が、従来の突起部に比べて軽減される。これにより、突起部122から電池セル11への荷重Fは、電池セル11の上限の荷重(F2)未満に低減される。したがって、突起部122は、電池セル11の膨張収縮を吸収する際において、電池セル11に過度な荷重が加えられる事態を防止することができる。
【0068】
以上、説明したように、本発明の実施形態2では、突起部122が、底部24から積層方向D1に延在する中実柱部25を環状壁部23の内側に備えるようにし、その他を上述した実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、中実柱部25の作用により、上述した実施形態1における突起部22および従来の突起部の双方に比べ、簡易かつ効率よく電池セル11に拘束荷重を付与することができる。
【0069】
なお、上述した実施形態1、2では、弾性体シートに複数の突起部を形成していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、弾性体シートには、上述した突起部22が1つまたは複数形成されてもよいし、上述した突起部122が1つまたは複数形成されてもよいし、互いに構成が異なる突起部22、122が各々1つまたは複数形成されてもよい。すなわち、本発明において、弾性体シートに形成される突起部の数は、特に問われない。
【0070】
また、上述した実施形態1、2では、24個の電池セル11が積層方向D1に配列された電池モジュールを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、電池モジュールに含まれる電池セル11の個数は、2個以上であってもよい。また、電池セル11と積層方向D1に対向する弾性体シートの個数は、電池セル11の拘束および膨張収縮の吸収に必要な個数であればよく、例えば1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態1、2では、弾性体シートが有する突起部として、上述した縦型の突起部と横型の突起部とを含む複数の突起部を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、弾性体シートが有する突起部は、縦型の突起部であってもよいし、横型の突起部であってもよいし、縦型の突起部および横型の突起部の両方であってもよい。また、上記突起部は、縦型の突起部および横型の突起部に限らず、積層方向D1に対して垂直な方向(せん断方向)であって幅方向D2および高さ方向D3に対して傾斜する方向を環状壁部23の長手方向D4とする傾斜型の突起部であってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態1、2では、弾性体シートが有する突起部として、3つの環状壁部を連結した連結型の突起部を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、連結型の突起部は、2つの環状壁部を連結した突起部であってもよいし、3つ以上の環状壁部を連結した突起部であってもよい。また、連結型の突起部は、環状壁部同士をその長手方向に連結した突起部であってもよいし、環状壁部同士をその短手方向に連結した突起部であってもよい。また、弾性体シートが有する突起部は、連結型の突起部であってもよいし、単一型の突起部であってもよいし、連結型の突起部および単一型の突起部の両方であってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態2では、弾性体シートの突起部が環状壁部の内側に有する中実柱部として、中実の円柱状に形成されたものを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、中実柱部は、中実の角柱状に形成されたものであってもよいし、中実の楕円柱等、円柱または角柱とは異なる中実の柱状に形成されたものであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態2では、弾性体シートが有する突起部として、環状壁部の内側に中実柱部を有する突起部を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、弾性体シートが有する突起部は、環状壁部の内側に中実柱部を有する突起部と、当該中実柱部を有しない突起部との両方であってもよい。
【0075】
また、上述した実施形態1、2では、弾性体シートが有する複数の突起部の各々を互いに同じサイズにしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。これら複数の突起部の各サイズは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態1、2では、弾性体シートのベース部と電池セルとの間に断熱材シートを介在させていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、断熱材シートは、インサート成形等の手法によって弾性体シートのベース部と一体化されてもよいし、弾性体シートの突起部と電池セルとの間に介在してもよいし、電池セルの配列方向(積層方向D1)に弾性体シートを挟むよう設けられてもよい。あるいは、断熱材シートは、電池セル間に設けられていなくてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態1、2によって本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 電池モジュール
10 セル積層体
11、11-1、11-2、11a、11b 電池セル
12 外装ケース
13a、13b 腹面部
14a、14b 側面部
15 底部
16 蓋部
17、18 電極端子
20、20a、20b、120 弾性体シート
21 ベース部
22、22-1~22-5、22a、22b、122、122a、122b 突起部
23 環状壁部
24 底部
25 中実柱部
27 断熱材シート
31、32 エンドプレート
33~36 拘束バンド
D1 積層方向
D2 幅方向
D3 高さ方向
D4 長手方向
D5 短手方向
D6 せん断方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17