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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166767
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20241122BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083095
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】金田 数馬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 聖治
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604CC01
5H604CC05
5H604PB03
5H604QB01
5H611AA01
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】製造コストの低減および小型化を図ることが可能な固定子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、固定子は、第1端面と第2端面とを有するヨークと複数のティースとを具備する固定子鉄心と、ティースに捲回され、ヨークの第1端面の側に延出したコイル端部を有する複数のコイル14と、コイルの上に配置された温度センサ50と、温度センサに重ねてコイルに装着されたセンサホルダ52であって、温度センサを収容する開口55を有する本体54aと、温度センサをコイルの側に押圧する弾性変形可能な押圧部54dと、を有するセンサホルダと、それぞれ複数の接続端子を有する複数本のバスバーリングと、バスバーリングを保持したシールドケース36と、を有し、複数の接続端子がそれぞれコイル端部に接続され、シールドケースによりセンサホルダの本体をコイルの側に押圧した状態で、固定子鉄心に取り付けられたバスバーアッセンブリ30と、を有している。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端に位置する第1端面と軸方向の他端に位置する第2端面とを有する円筒状のヨークと前記ヨークの内周側に設けられ前記ヨークの周方向に間隔を置いて並んだ複数のティースと、を具備する固定子鉄心と、
それぞれインシュレータを介して前記ティースに捲回され、前記第1端面の側に延出したコイル端部を有する複数のコイルと、
前記第1端面の側で前記コイルの上に配置された温度センサと、
前記温度センサに重ねて前記コイルに装着されたセンサホルダであって、前記温度センサを収容する開口を有する本体と、前記軸方向に弾性変形可能に前記本体に支持され前記温度センサを前記コイルの側に押圧する押圧部と、を有するセンサホルダと、
それぞれ複数の接続端子を有する複数本のバスバーリングと、前記バスバーリングを保持したシールドケースと、を有し、前記第1端面の側で前記複数のコイルに対向して配置され、前記複数の接続端子がそれぞれ前記コイル端部に接続され、前記シールドケースにより前記センサホルダの前記本体を前記コイルの側に押圧した状態で、前記固定子鉄心に取り付けられたバスバーアッセンブリと、
を備える固定子。
【請求項2】
前記センサホルダは、それぞれ前記本体から延出し、前記周方向に隣り合う2つのコイルの間に差し込まれた一対の脚部を有している、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記温度センサは、検温部を有するセンサ本体と前記センサ本体から二股状に延出した少なくとも2本のハーネスとを含み、前記本体の一方の脚部は、前記ハーネスの二股部分に挿通されている、請求項2に記載の固定子。
【請求項4】
前記センサホルダは、前記本体から延出した係合凸部を有し、
前記バスバーアッセンブリの前記シールドケースは、前記係合凸部が係合する係合孔を有している、請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
前記係合凸部は、二股状に突出した一対の係合爪と、前記係合爪の間に形成された係合溝と、を有し、前記一対の係合爪が前記係合孔に係合され、前記バスバーリングの一部が前記係合溝に係合している、請求項4に記載の固定子。
【請求項6】
前記シールドケースは、前記周方向に離間して設けられた複数本の支持脚を有し、前記インシュレータは、前記支持脚が嵌合可能な係合凹所を有している、請求項1に記載の固定子。
【請求項7】
前記押圧部は、前記本体に連結された一端を有する片持ち梁を構成している、請求項1に記載の固定子。
【請求項8】
前記押圧部は、前記本体に連結された一端および他端を有する両持ち梁を構成している、請求項1に記載の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子は、固定子鉄心と、固定子鉄心に巻装された複数のコイルと、を有している。回転電機では、固定子のコイルに電流が流れることにより、コイルの温度が上昇する。コイルの過大な温度上昇を避けて回転電機を安定して動作させるため、温度センサ(例えば、サーミスタ)を用いてコイルの温度を検出している。
安定した温度検出を行うためには、温度センサは、コイルの表面に接触して設けられていることが望ましい。コイルの捲回形状にバラツキがある場合、温度センサを安定して設置することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-254628号公報
【特許文献2】特開2010-71708号公報
【特許文献3】特許第6484334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の課題は、温度センサにより安定してコイルの温度を検出することが可能な固定子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、固定子は、軸方向の一端に位置する第1端面と軸方向の他端に位置する第2端面とを有する円筒状のヨークと前記ヨークの内周側に設けられ前記ヨークの周方向に間隔を置いて並んだ複数のティースと、を具備する固定子鉄心と、それぞれインシュレータを介して前記ティースに捲回され、前記第1端面の側に延出したコイル端部を有する複数のコイルと、前記第1端面の側で前記コイルの上に配置された温度センサと、前記温度センサに重ねて前記コイルに装着されたセンサホルダであって、前記温度センサを収容する開口を有する本体と、前記軸方向に弾性変形可能に前記本体に支持され前記温度センサを前記コイルの側に押圧する押圧部と、を有するセンサホルダと、それぞれ複数の接続端子を有する複数本のバスバーリングと、前記バスバーリングを保持したシールドケースと、を有し、前記第1端面の側で前記複数のコイルに対向して配置され、前記複数の接続端子がそれぞれ前記コイル端部に接続され、前記シールドケースにより前記センサホルダの前記本体を前記コイルの側に押圧した状態で、前記固定子鉄心に取り付けられたバスバーアッセンブリと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る固定子のバスバーアッセンブリの側を示す固定子の斜視図。
図2図2は、前記固定子の固定子鉄心、コイルおよび保持リングを示す分解斜視図。
図3図3は、前記固定子およびバスバーアッセンブリを示す分解斜視図。
図4図4は、前記固定子の分割鉄心部を示す斜視図。
図5図5は、前記分割鉄心部の鉄心および巻線ホルダ(インシュレータ)を示す分解斜視図。
図6図6は、センサホルダの斜視図。
図7図7は、前記センサホルダの背面図。
図8図8は、前記センサホルダの断面図。
図9図9は、前記センサホルダおよび温度センサを示す斜視図。
図10図10は、前記固定子の一部および装着前のセンサホルダおよび温度センサを示す斜視図。
図11図11は、前記固定子の一部および装着されたセンサホルダおよび温度センサを示す斜視図。
図12図12は、前記固定子の一部および装着されたセンサホルダおよび温度センサを外周側から見た側面図。
図13図13は、前記バスバーアッセンブリの背面側を示す斜視図。
図14図14は、前記バスバーアッセンブリの一部拡大および破断して示す斜視図。
図15図15は、前記バスバーアッセンブリが装着および接続された状態の固定子の一部を示す斜視図
図16図16は、前記分割鉄心部、装着された温度センサ、センサホルダおよびバスバーアッセンブリを示す側面図。
図17図17は、前記分割鉄心部、温度センサ、センサホルダおよびバスバーアッセンブリを示す断面図。
図18A図18Aは、第1変形例に係るセンサホルダの斜視図。
図18B図18Bは、第1変形例に係るセンサホルダの平面図。
図18C図18Cは、第1変形例に係るセンサホルダの側面図。
図19A図19Aは、第2変形例に係るセンサホルダの斜視図。
図19B図19Bは、第2変形例に係るセンサホルダの平面図。
図19C図19Cは、一部破断して示す第2変形例に係るセンサホルダの側面図。
図20A図20Aは、第3変形例に係るセンサホルダの斜視図。
図20B図20Bは、第3変形例に係るセンサホルダの平面図。
図20C図20Cは、一部破断して示す第3変形例に係るセンサホルダの側面図。
図21A図21Aは、第4変形例に係るセンサホルダの斜視図。
図21B図21Bは、第4変形例に係るセンサホルダの平面図。
図21C図21Cは、一部破断して示す第4変形例に係るセンサホルダの側面図。
図22A図22Aは、第5変形例に係るセンサホルダの斜視図。
図22B図22Bは、第5変形例に係るセンサホルダの平面図。
図22C図22Cは、一部破断して示す第5変形例に係るセンサホルダの側面図。
図23図23は、一部破断して示す第6変形例に係るセンサホルダの側面図。
図24図24は、一部破断して示す第7変形例に係るセンサホルダの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る回転電機の固定子を第1端面の側から見た斜視図、図2は、固定子鉄心および保持リングを第2端面の側から見た分解斜視図、図3は、固定子鉄心、保持リング、バスバーアッセンブリを第1端面の側から見た分解斜視図である。
図1に示すように、固定子10は、例えば、3相(U相、V相およびW相)の交流電源によって駆動される回転電機の固定子10を構成している。固定子10は、複数個(24個)の分割鉄心部10Aを並べて構成された環状の固定子鉄心20と、複数本(24本)のコイル14と、固定子鉄心20の第1端面20aの側に配置された環状のバスバーアッセンブリ30と、固定子鉄心20の外周に嵌合された保持リングHRと、を有している。バスバーアッセンブリ30は、それぞれコイル14の延出端に接続された複数の接続端子32U、32V、32W、32Nと、電極端子(口出し端子)15U、15V、15Wと、を有している。
【0009】
図2に示すように、複数個(24個)の分割鉄心部10Aは、固定子10の周方向に並んで配置され中心軸線C1を有する円筒状の固定子鉄心20を構成している。周方向に隣り合う分割鉄心部10Aは、カシメあるいは凸部と凹部との係合により、互いに連結されている。固定子鉄心20は、軸方向の一端に位置する第1端面20aおよび軸方向の他端に位置する第2端面20bを有する円筒状のヨーク22とヨーク22の内周側に設けられヨーク22の周方向に間隔を置いて並んで位置する複数(24本)のティース11Qと、を具備している。各ティース11Qに絶縁性を有するインシュレータ(巻線ホルダ)を介してコイル14が巻装されている。
保持リングHRは、固定子鉄心20の外径とほぼ等しい内径を有する円筒形状に形成されている。保持リングHRは、固定子鉄心20の外周に嵌合され、固定子鉄心20の連結状態を保持する。
【0010】
図3に示すように、固定子鉄心20の第1端面20aの側で、1つのコイル14に温度センサ50、例えば、サーミスタ、およびセンサホルダ52が装着されている。
バスバーアッセンブリ30は、固定子鉄心20の第1端面20aの側で、複数のコイル14に対向して配置され、同時に、センサホルダ52に当接しセンサホルダ52をコイル14の側に押圧する。後述するように、バスバーアッセンブリ30は、U相、V相、W相、中性点に対応する4本のバスバーリングと、各バスバーリングから径方向の外側に延出する複数の接続端子32U、32V、32W、32Nと、U相、V相、W相のバスバーリングからそれぞれ導出した電極端子15U、15V、15Wと、4本のバスバーリングの周囲を囲んで支持するシールドケース34と、を有している。シールドケース34は、全体として、偏平な環状に成形されている。シールドケース34は、それぞれ軸方向に延出する複数本の支持脚35を有している。これらの支持脚35は、円周方向に所定の間隔を置いて設けられている。
図1に示すように、バスバーアッセンブリ30は、支持脚35を対応する巻線ホルダの係合凹所に係合させ、更に、接続端子32U、32V、32W、32Nをそれぞれ対応するコイル端部に溶接することにより、所定位置に位置決めされた状態で固定子鉄心20に取り付けられている。
【0011】
次に、各構成要素について詳細に説明する。
図4は、コイルが巻装された1つの分割鉄心部の斜視図、図5は、分割鉄心および巻線ホルダを示す分解斜視図である。
図示のように、各々の分割鉄心部10Aは、磁性を有する電磁鋼板を積層して構成された分割鉄心11と分割鉄心11に装着された絶縁性を有するインシュレータ(第1巻線ホルダ16および第2巻線ホルダ18)と、を備えている。第1、第2巻線ホルダ16、18にコイル14が巻装されている。
【0012】
図5に示すように、分割鉄心11は、磁性を有する複数枚の電磁鋼板11Sを軸方向Zに積層した積層体で構成されている。軸方向Zに隣合う電磁鋼板11Sは、外周面が溶接されて、互いに連結されている。分割鉄心11は、ヨークを構成する円弧状のヨーク部11Pと、ヨーク部11Pの内周から径方向R内側に延出した角柱形状のティース11Qと、を一体に有している。ヨーク部11Pおよびティース11Qは分割鉄心11の軸方向Zに延びている。分割鉄心11は、軸方向Zの一端に位置する平坦な第1端面20aと軸方向Zの他端に位置する平坦な第2端面20bとを有している。
ヨーク部11Pの一方の側面に軸方向Zに延びる凸部11cが形成され、他方の側面に軸方向Zに延びる凹部11dが形成されている。複数の分割鉄心11を周方向Sに並べて配置した際、ヨーク部11Pの凸部11cが隣接するヨーク部11Pの凹部11dに嵌合し、隣合うヨーク部11P同士を連結することができる。
【0013】
巻線ホルダは、分割鉄心11の軸方向Zの一方側に装着される第1巻線ホルダ(第1インシュレータ)16と分割鉄心11の軸方向Zの他方側に装着される第2巻線ホルダ(第2インシュレータ)18とを備えている。
第1巻線ホルダ16は、第1端面20aおよびティース11Qの側面を覆うように装着されるコイル装着部16aと、ヨーク部11Pに重なって位置するガイド部16bとを有し、絶縁性を有する合成樹脂等により成形されている。ガイド部16bは、コイル端部を保持する第1支持ポスト16c1および第2支持ポスト16c2と、前述したバスバーアッセンブリ30の支持脚35を係合可能な角筒形状の係合部16dと、を含んでいる。
第2巻線ホルダ18は、第2端面20bおよびティース11Qの側面を覆うように装着されるコイル装着部18aを有し、絶縁性を有する合成樹脂等により成形されている。
【0014】
図4に示すように、コイル14は、第1巻線ホルダ16のコイル装着部16aおよび第2巻線ホルダ18のコイル装着部18aに巻き付けられる。すなわち、コイル14は、第1巻線ホルダ16および第2巻線ホルダ18を介して、分割鉄心11のティース11Qに巻回されている。コイル14は、分割鉄心部10Aに対して、集中巻きで巻き付けられている。すなわち、1本のコイル14が、1つの分割鉄心部10Aに巻き付けられている。
コイル14は、断面が円形の長尺な導線、例えば、銅線、によって構成されている。銅線は、絶縁性の部材によって外周が被覆されている。
【0015】
コイル14は、第1および第2巻線ホルダ16、18に巻き付けられる巻線部14aと、巻線部14aの一端側から固定子鉄心20の第1端面20aの側に引き出されたリード側のコイル端部14bと、巻線部14aの他端側から固定子鉄心20の第1端面20aの側に引き出された中性点側のコイル端部14cと、を有している。コイル端部14b、14cの絶縁被覆は除去されている。
コイル端部14b、14cは、第1巻線ホルダ16の第1支持ポスト16C1および第2支持ポスト16C2にそれぞれ係合し、軸方向Zに起立した状態に保持されている。コイル端部14b、14cは、第1支持ポスト16C1および第2支持ポスト16C2から軸方向Zの上方に延出している。
【0016】
上記のように構成された24個の分割鉄心部10Aは、中心軸線C1の回りで周方向に並べて配置され、円筒形状の固定子鉄心20を構成している。周方向に隣り合う一方の分割鉄心11の凸部11cが他方の分割鉄心11の凹部11dに嵌合し、隣合う分割鉄心11同士が連結される。それぞれ分割鉄心11に巻装された24個のコイル14は、中心軸線C1の回りで周方向に並んで配置されている。コイル14は、U相コイル、V相コイル、W相コイルの順で交互に周方向に並んでいる。各コイル14のリード側のコイル端部14bおよび中性点側のコイル端部14cは、固定子鉄心20の第1端面20aの側に延出している。
【0017】
次に、温度センサ50およびセンサホルダ52について説明する。
図6は、センサホルダの斜視図、図7は、センサホルダの背面図、図8は、センサホルダの断面図である。図9は、温度センサおよびセンサホルダを示す分解斜視図である。
図9に示すように、温度センサ50は、例えば、サーミスタを用いている。温度センサ50は、例えば、角柱形状のセンサ本体50aと、センサ本体50a内に埋め込まれた検温部(検出素子)50bと、センサ本体50aから導出している2本のハーネス53と、を有している。検温部50bは、センサ本体50aの長手方向の一端部内に設けられている。ハーネス53は、検温部52bに電気的に接続されているとともに、センサ本体50aの長手方向の他端から外部に導出している。導出した2本のハーネス53は、絶縁チューブ53bにより纏めて被覆されている。センサ本体50aと絶縁チューブ53bとの間において、2本のハーネス53の端部は、二股状に分かれて延出している。
【0018】
図6図7図8に示すように、センサホルダ52は、細長い矩形状の本体54aと、本体の長手方向の両端部から同一方向(本体に対して垂直な方向Z)に延出した1対の脚部54bと、本体54aから脚部と反対の方向に延出した係合凸部54cと、弾性変形可能な押圧部54dと、を有し、構成樹脂等により一体に成形されている。本体54aは、平坦な押圧面S1とこれに対向する当接面S2とを有している。本体54aは、細長い矩形状の開口55を有し、この開口55は、本体を貫通して延び押圧面S1および当接面S2に開口している。開口55は、温度センサ50を収納可能な大きさ(寸法)を有している。詳細には、開口55は、温度センサ50のセンサ本体50aの幅よりも僅かに大きい幅、およびセンサ本体50aの長さよりもやや大きい長さを有している。
押圧部54dは、細長い棒状に形成され、開口55の内に位置している。本実施形態では、押圧部54dは、長手方向の一端が本体54aに固定された片持ち梁を構成している。押圧部54dの長手方向の他端は、本体54aに僅かな隙間を置いて対向している。押圧部54dの長手方向の他端部、すなわち延出端部、に、押圧突起56が設けられている。
【0019】
図8に示すように、押圧部54dは、開口55内において、本体54aの厚さ方向のほぼ中央部に設けられている。押圧部54dは、その基端部を中心として軸方向Zに弾性変形可能である。押圧突起56は、押圧部54dから当接面S2の側に突出しているとともに、温度センサ50の検温部50bに対向する位置に設けられている。一例では、押圧突起56は、半球形状に形成されている。
図6に示すように、一例では、係合凸部54cは、本体54aから方向Zに延出した一対の係合板58aを有している。一対の係合板(係合爪)58aはそれぞれX方向に延びているともに、所定の間隔を置いて互いに対向している。一対の係合板58aの間に、後述するバスバーリングが係合可能な係合溝58bが規定されている。
【0020】
図10は、コイルが巻装された固定子鉄心の一部、並びに、装着前の温度センサおよびセンサホルダを示す分解斜視図である。図11は、コイルが巻装された固定子鉄心の一部、並びに、装着前の温度センサおよびセンサホルダを示す分解斜視図、図12は、温度センサおよびセンサホルダが装着された分割鉄心部の側面図である。
図9および図10に示すように、温度センサの装着時、温度センサ50のセンサ本体50aをセンサホルダ52の開口55内に配置し、押圧部54dに対向させる。この際、センサホルダ52の一方の脚部54bを二股のハーネス53の間に差し込むことにより、センサホルダ52に対してセンサ本体50aを概略的に位置決めする。
【0021】
図10および図11に示すように、温度センサ50およびセンサホルダ52は、所望のコイル14の上に配置され、更に、センサ本体50aがコイル14に接触する位置までコイル14に向かって移動される。この際、一対の脚部54bは、それぞれ周方向に隣り合うコイル14の間の隙間に挿入される。ハーネス53は、隣りの分割鉄心部10Aの巻線ホルダ16に形成されたガイド溝を通して固定子鉄心の外側に引き出されている。
図11および図12に示すように、センサホルダ52は、一対の脚部54bによりコイル14を周方向の両側から挟み込んだ状態でコイル14に装着され、コイル14に対し周方向の位置決めがされている。温度センサ50のセンサ本体50aはコイル14の表面に接触しているとともに、センサホルダ52の押圧部54dの押圧突起56に当接し、押圧部54dによりコイル14の側に押圧される。押圧突起56は、検温部50bの位置で、センサ本体50aを押圧する。
なお、図12に示すように、温度センサ50およびセンサホルダ52をコイル14に装着した状態において、センサホルダ52の本体54aの背面(当接面S2)は、コイル14の表面と僅かな隙間を置いて対向している。すなわち、隙間分だけ、本体54aをコイル14の側へ押し込む余裕が残っている。
【0022】
次に、バスバーアッセンブリについて詳細に説明する。
図13は、バスバーアッセンブリの背面側を示す斜視図、図14は、バスバーアッセンブリの一部を拡大および破断して示す斜視図である。
図14に示すように、バスバーアッセンブリ30は、4本のバスバーリング、すなわち、U相バスバーリング34U、V相バスバーリング34V、W相バスバーリング34W、中性点バスバーリング34Nを有している。各バスバーリングは、帯状の導電板を環状に折り曲げて形成され、導電板の内面および外面がリングの中心軸線と平行に位置している。4本のバスバーリングは、U相バスバーリング34U、V相バスバーリング34V、W相バスバーリング34W、中性点バスバーリング34Nの順で所定長さだけ大きい径を有している。U相バスバーリング34U、V相バスバーリング34V、W相バスバーリング34W、中性点バスバーリング34Nは、同芯に並んで配置され、所定の間隔を置いて径方向に並んでいる。
【0023】
図13および図14に示すように、U相バスバーリング34Uは、それぞれ径方向の外側に延出した複数、ここでは、8つの接続端子32Uと、径方向の内方に延出した1つの電極端子15Uとを一体に有している。8つの接続端子32Uは、周方向に等間隔を置いて並んでいる。同様に、V相バスバーリング34Vは、それぞれ径方向の外側に延出した8つの接続端子32Vと、径方向の内方に延出した1つの電極端子15Vとを一体に有している。8つの接続端子32Vは、周方向に等間隔を置いて並んでいる。W相バスバーリング34Wは、それぞれ径方向の外側に延出した8つの接続端子32Wと、径方向の内方に延出した1つの電極端子15Wとを一体に有している。8つの接続端子32Wは、周方向に等間隔を置いて並んでいる。更に、中性点バスバーリング34Nは、それぞれ径方向の外側に延出した複数、ここでは、24個の接続端子32Nを一体に有している。24の接続端子32Nは、周方向に等間隔を置いて並んでいる。
接続端子32U、32V、32Wは、それぞれ周方向に隣り合う2つの中性点の接続端子32Nの間に位置し、32U、32N、32V、32N、32W、32Nの順で周方向に並んでいる。3本の電極端子15U、15V、15Wは、間隔を置いて周方向に並んで位置している。
【0024】
バスバーアッセンブリ30は、4本のバスバーリング34U、34V、34W、34Nの周囲を囲み、これらのバスバーリングを支持するシールドケース36を有している。シールドケース36は、全体として、偏平な環状に成形されている。一例では、シールドケース36は、合成樹脂によりバスバーリングをインサート成形されている。
シールドケース36は、平坦な環状の底壁(押圧面)36aを有している。シールドケース36は、底壁36aに貫通形成に貫通形成された複数の係合孔(抜き孔)38を有している。複数の係合孔38は、シールドケースの周方向に間隔を置いて設けられている。更に、複数の係合孔38は、それぞれバスバーリング34U、34V、34W、34Nと対向するように、互いに径方向にずれて位置している。一例では、各係合孔38は、矩形状を有している。
シールドケース36は、それぞれ底壁36aから径方向外側および軸方向に延出した複数本、例えば、6本の支持脚35を有している。これらの支持脚35は、周方向に所定の間隔を置いて設けられている。一例では、支持脚35は角柱形状を有している。
【0025】
図1および図3に示したように、上記のように構成されたバスバーアッセンブリ30は、シールドケース36の底壁36aが24本のコイル14に対向する向きで固定子鉄心20と同軸的に配置されている。バスバーアッセンブリ30は、6本の支持脚35を対応する第1巻線ホルダ16の係合部16dに係合させ、更に、接続端子32U、32V、32W、32Nをそれぞれ対応するコイル端部14c、14bに溶接することにより、所定位置に位置決めされた状態で固定子鉄心20に取り付けられている。シールドケース36の底壁36aは、センサホルダ52の押圧面S1に当接し、センサホルダ52をコイル14に向かって押圧している。
【0026】
図15は、バスバーアッセンブリが取り付けられた状態の固定子の一部を示す斜視図、図16は、分割鉄心部、温度センサ、センサホルダ、バスバーアッセンブリを一部破断して示す側面図、図17は、図16の線A-Aに沿った分割鉄心部、温度センサ、センサホルダ、バスバーアッセンブリの断面図である。
図15に示すように、バスバーアッセンブリ30の接続端子32U、32V、32W、32Nは、それぞれコイル端部14b、14cに溶接され、コイル14に電気的に接続されている。
図16および図17に示すように、バスバーアッセンブリ30が固定子鉄心20に取り付けられた状態において、センサホルダ52の係合凸部54cは、シールドケース36の何れかの係合孔38、例えば、W相バスバーリング34Wに対向する係合孔38、に挿入および嵌合されている。更に、本実施形態では、係合凸部54cの係合溝58bにW相バスバーリング34Wが係合されている。係合凸部54cを係合孔38に嵌合することにより、センサホルダ52および温度センサ50は、コイル14に対して、径方向および周方向の所定位置に位置決めされている。
【0027】
バスバーアッセンブリ30のシールドケース36によりセンサホルダ52の押圧面S1を押圧することにより、センサホルダ52は、コイル14の側に押し込まれる。センサホルダ52は、例えば、本体52aの当接面S2がコイル14に当接する位置まで押し込まれた状態に保持されている。これにより、温度センサ50のセンサ本体50aは、センサホルダ52の開口55の内に一層深く入り、押圧部54dをコイル14から離れる方向に押し上げている。押圧部54dは、温度センサ50に押されて上方に弾性変形し、検温部50bが設けられた温度センサ50の端部を一層大きな押圧力でコイル14の表面に押し付けている。従って、温度センサ50は、所望の位置で、コイル14の表面に密着した状態に保持されている。
【0028】
以上のように構成された本実施形態に係る固定子10では、外部の電源から電極端子15U、15V、15Wに3相交流電流が入力されると、各相の電流は、バスバーリング34U、34V、34Wを通して、各相のコイル14に入力される。コイル14に電流が入力されると、分割鉄心11に所定の鎖交磁束が形成される。
固定子10のコイル14に電流が流れることにより、コイル14の温度が上昇する。コイル14の温度は、温度センサ50により検出される。検出温度に応じてコイル14への供給電流を制御することにより、コイル14の過度の温度上昇を回避している。これにより、固定子10を備える回転電機を安定して動作させることができる。
本実施形態によれば、センサホルダ52により温度センサ50をコイル14の表面に押し付けた状態で、所望の位置に装着および配置することができる。これにより、温度センサ50により、コイル14の温度を安定して、かつ、精度良く検出することが可能となる。
以上のことから、本実施形態によれば、温度センサにより安定してコイルの温度を検出することが可能な固定子を提供することができる。
【0029】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、固定子および巻線ホルダの寸法、材質、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。温度センサは、サーミスタに限らず、他の温度検出素子を用いてもよい。また、温度センサは、1つに限らず、複数設ける構成としてもよい。
【0030】
次に、変形例に係るセンサホルダについて説明する。以下に述べる変形例において、上述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
(第1変形例)
図18Aは、第1変形例に係るセンサホルダの斜視図、図18Bは、前記センサホルダの平面図、図18Cは、前記センサホルダの側面図である。
図示のように、第1変形例によれば、センサホルダ52の本体54aは、押圧面S1に突設された複数のボス60を有している。ボス60は、開口55の周囲に分散して配置されている。一例では、開口55の長手方向の両端側、および開口55の幅方向の両端側に、それぞれボス60が配置されている。ボス60は、一例では、矩形状の平坦な端面を有し、これらの端面は、前述したバスバーアッセンブリ30に当接する押圧面S1を構成している。すなわち、バスバーアッセンブリ30は、複数のボス60の端面に当接し、センサホルダ52をコイル14の方向に押圧することができる。
上記構成によれば、センサホルダ52の本体54aにおいて、ボス60を除く部分の板厚を薄くすることが可能となり、その分、センサホルダ52を形成する樹脂量を削減することができる。同時に、センサホルダ52の軽量化を図ることができる。
【0031】
(第2変形例)
図19Aは、第2変形例に係るセンサホルダの斜視図、図19Bは、前記センサホルダの平面図、図19Cは、一部破断して示す前記センサホルダの側面図である。
図示のように、第2変形例によれば、センサホルダ52の押圧部54dは、両持ちの梁状に形成されている。すなわち、押圧部54dは、細長い矩形棒状に形成され、長手方向Xの一端および長手方向Xの他端が本体54aに連結されている。
押圧部54dを両持ち構造とした場合、押圧部54dにより温度センサに印加する押圧力(圧接力)を増大することが可能となる。
【0032】
(第3変形例)
図20Aは、第3変形例に係るセンサホルダの斜視図、図20Bは、前記センサホルダの平面図、図20Cは、一部破断して示す前記センサホルダの側面図である。
図示のように、第2変形例によれば、センサホルダ52の押圧部54dは、前述した実施形態における押圧部54dに比較して、長手方向Xの長さL1が短く形成されている。
押圧部54dの長さL1を短縮することにより、押圧部54dにより温度センサに印加する押圧力(圧接力)を増大することが可能となる。
【0033】
(第4変形例)
図21Aは、第4変形例に係るセンサホルダの斜視図、図21Bは、前記センサホルダの背面図、図21Cは、一部破断して示す前記センサホルダの側面図である。
図示のように、第4変形例によれば、センサホルダ52の係合凸部54cは、本体54aから脚部54bと反対の方向に延出した一対の係合板(係合爪)58aを有している。一対の係合板58aは、本体54aの長手方向Xの両側縁に設けられ、本体54aを間に挟んで、互いに対向している。一対の係合板58aは、前述したバスバーアッセンブリ30の異なる係合孔38に挿通され、異なるバスバーリングにそれぞれ係合可能に形成されている。
第4変形例によれば、押圧部54dの押圧突起56は、本体54aの幅方向に延びる柱状、例えば、半円柱形状を有している。この場合、押圧突起56は、温度センサ50に線接触する。そのため、押圧部54dは、一層安定して、また、広範囲に亘って、押圧力を温度センサに印加可能となる。
【0034】
(第5変形例)
図22Aは、第5変形例に係るセンサホルダの斜視図、図22Bは、前記センサホルダの背面図、図22Cは、一部破断して示す前記センサホルダの側面図である。
図示のように、第4変形例によれば、センサホルダ52の本体54aは、開口55の内に突出した複数本のリブ62を一体に有している。リブ62は、開口55の長辺側の内側面に突設され、本体54aの厚さ方向の全長に亘って延びている。一例では、各内側面に2本のリブ62が形成され、開口55の長手方向Xに間隔を置いて位置している。リブ62の突出高さは、リブ62が押圧部54dに接触せず、かつ、開口55内に温度センサ50を収納可能な高さに設定されている。
上記の第4変形例によれば、リブ62を設けることにより、開口55に収納される温度センサと本体54aの内側面との隙間が小さくなり、温度センサを一層安定して保持することが可能となる。同時に、温度センサと本体54aとの接触面積が減少するため、温度センサを開口55内に容易に収納可能となる。
【0035】
(第6変形例)
図23は、第6変形例に係るセンサホルダを一部破断して示す側面図である。
図示のように、センサホルダ52の押圧部54dは、2本に分割されていてもよい。すなわち、2本の押圧部54dは、本体54aと一体に形成され、それぞれ開口55の長手方向Xの一端および他端から開口55の長手方向Xの中央部に向かって長手方向Xに延出している。2本の押圧部54dの延出端は、隙間を置いて互いに対向している。
第6変形例によれば、2本の押圧部54dにより温度センサを安定して押圧することができる。
【0036】
(第7変形例)
図24は、第7変形例に係るセンサホルダを一部破断して示す側面図である。
第7変形例によれば、図示のように、センサホルダ52の押圧部54dは、本体54aと異なる材料、例えば、ゴム、フィルムシート等の本体54aよりも柔軟な材料、で形成されている。
第7変形例においても、センサホルダ52により温度センサを安定して保持および押圧することが可能である。
【0037】
以上のように構成された第1~第7変形例に係るセンサホルダ52を用いた場合でも、温度センサにより安定してコイルの温度を検出することが可能な固定子を提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…固定子、10A…分割鉄心部、11…分割鉄心、11Q…ティース、
14…コイル、14a…巻線部、14b…リード側のコイル端部、
14c…中性点側のコイル端部、15U、15V、15W…電極端子、
16…第1巻線ホルダ、18…第2巻線ホルダ、
20…固定子鉄心、20a…第1端面、20b…第2端面、22…ヨーク、
30…バスバーアッセンブリ、32U…U相接続端子、32V…V相接続端子、
32W…W相接続端子、32N…中性点接続端子、34U…U相バスバーリング、
34V…V相バスバーリング、34W…W相バスバーリング、
34N…中性点バスバーリング、35…支持脚、
36…シールドケース、36a…底壁、38…係合孔、50…温度センサ、
50a…センサ本体、50b…検温部、53…ハーネス、52…センサホルダ、
54a…本体、54c…係合凸部、54d…押圧部、S1…押圧面、S2…当接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
図23
図24