(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166768
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】厚さ計測装置、厚さ計測方法及び厚さ計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01B15/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083096
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】相浦 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 知将
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB16
2F067DD01
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067LL16
2F067RR12
2F067RR24
2F067RR27
(57)【要約】
【課題】部材の厚さを計測することが可能な厚さ計測装置、厚さ計測方法及び厚さ計測プログラムを提供する。
【解決手段】厚さ計測装置は、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際の透過X線の第1画像情報と、当該積層体に第2エネルギでX線を照射した際の透過X線の第2画像情報とを取得する取得部と、第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及び第1重み係数と、第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及び第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際の当該積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、当該積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の前記積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得部と、
前記取得部で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及び当該第1輝度値に乗算する第1重み係数と、前記取得部で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及び当該第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、
前記第1算出部で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、
を備える厚さ計測装置。
【請求項2】
前記第1算出部の算出で用いる第1重み係数及び第2重み係数は、第1材質部材のX線吸収係数に依存した値である
請求項1に記載の厚さ計測装置。
【請求項3】
前記第1算出部は、第1エネルギで取得した画像の重み係数としての第1重み係数をKH、第1画像情報に基づく画像の第1輝度値をDH、第2エネルギで取得した画像の重み係数としての第2重み係数をKL、第2画像情報に基づく画像の第2輝度値をDLとすると、下式(1)により第3輝度値Dsubを算出する
Dsub=KHDH-KLDL・・・(1)
請求項2に記載の厚さ計測装置。
【請求項4】
前記第2算出部の算出で用いるX線吸収係数は、部材の厚さに依存する輝度吸収係数、及び、部材の厚さに依存しない吸収係数のうちの一方である
請求項1~3のいずれか1項に記載の厚さ計測装置。
【請求項5】
前記第2算出部は、第1エネルギに対応する第1材質部材の吸収係数をμ
1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材の吸収係数をμ
1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ
2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ
2(L)とすると、下式(2)により第2材質部材の厚さt
2を算出する
【数1】
請求項4に記載の厚さ計測装置。
【請求項6】
前記第2算出部は、第1エネルギに対応する第1材質部材の輝度吸収係数をμ
1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材の輝度吸収係数をμ
1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材の輝度吸収係数をμ
2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ
2(L)とすると、下式(3),(4)により表される第2材質部材の輝度吸収係数μ
2(H),μ
2(L)に基づいて、下式(5)により第2材質部材の厚さt
2を算出する
μ
2(H)=a
2(H)t
2+b
2(H)・・・(3)
μ
2(L)=a
2(L)t
2+b
2(L)・・・(4)
a
2,b
2:係数
【数2】
・・・(5)
請求項4に記載の厚さ計測装置。
【請求項7】
第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギで電磁波を照射した際の当該積層体を透過した透過電磁波の第1画像情報と、前記積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギで電磁波を照射した際の前記積層体を透過した透過電磁波の第2画像情報と、を取得する取得部と、
前記取得部で取得した第1画像情報に基づく透過電磁波の第1輝度値及び当該第1輝度値に乗算する第1重み係数と、前記取得部で取得した第2画像情報に基づく透過電磁波の第2輝度値及び当該第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、
前記第1算出部で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応する電磁波吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応する電磁波吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応する電磁波吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応する電磁波吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、
を備える厚さ計測装置。
【請求項8】
コンピュータが、
第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際の当該積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、当該積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の前記積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及び当該第1輝度値に乗算する第1重み係数と、前記取得ステップで取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及び当該第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出ステップと、
前記第1算出ステップで算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出ステップと、
を実行する厚さ計測方法。
【請求項9】
コンピュータに、
第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際の当該積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、当該積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の前記積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得機能と、
前記取得機能で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及び当該第1輝度値に乗算する第1重み係数と、前記取得機能で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及び当該第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出機能と、
前記第1算出機能で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出機能と、
を実現させる厚さ計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、厚さ計測装置、厚さ計測方法及び厚さ計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線を被写体に照射して、その被写体を透過した放射線により画像を得る装置が存在する。その装置は、エネルギサブトラクションを行って差分画像を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、放射線を利用して部材の厚さを計測することが行われている。特許文献1に記載された発明は、差分画像を取得するのみで、部材の厚さを取得することができない。
【0005】
本開示は、部材の厚さを計測することが可能な厚さ計測装置、厚さ計測方法及び厚さ計測プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の厚さ計測装置は、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際の当該積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、当該積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得部と、取得部で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及び当該第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得部で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及び当該第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、第1算出部で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、部材の厚さを計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る厚さ計測装置について説明するための図である。
【
図2】一実施形態に係る厚さ計測装置(処理部)について説明するためのブロック図である。
【
図3】対象、X線源及び検出部の一例について説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係る厚さ計測方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
【0010】
[厚さ計測装置1の概要]
まず、一実施形態に係る厚さ計測装置1の概要について説明する。
図1は、一実施形態に係る厚さ計測装置1について説明するための図である。
【0011】
厚さ計測装置1は、複数の材質の異なる部材を積層した積層体(対象20)に放射線等の電磁波を照射して、積層体(対象20)を構成する1つの部材の厚さを計測する装置等である。すなわち、厚さ計測装置1は、エネルギサブトラクションを応用して1つの積層体(対象20)につき複数の画像情報を取得し、各画像情報に記録される輝度値を利用して、積層体(対象20)を構成する1つの部材の厚さを計測する装置等である。
【0012】
厚さ計測装置1は、例えば、X線源2、X線検出部(検出部)3及び処理部10を備える。
【0013】
X線源2は、対象20(積層体)に対して照射するX線を発生させるX線発生装置である。X線源2は、例えば、固定陽極X線管を備える。X線管の陽極には、例えば、ターゲットとして、タングステン、モリブデン等の金属が使用される。
X線源2は、例えば、後述する処理部10の制御に基づいて、発生させるX線量(エネルギ量)を設定する。X線源2は、X線を照射する際の管電圧、管電流及び照射時間のうち少なくとも1つを変更可能であり、管電圧、管電流及び照射時間のうち少なくとも1つが変更されることにより、照射X線の強度又は照射時間(エネルギ量)を変更する。
X線源2には、例えば、公知のX線用の照射装置が使用されてもよい。
対象20は、例えば、金属部材を始めとする種々の材質からなる部材等であってもよい。
【0014】
検出部3は、例えば、X線源2から照射された後、対象20を透過したX線を検出する。検出部3は、例えば、対象20を透過した透過X線の強度を検出する。検出部3には、例えば、公知のX線用の検出装置が使用されてもよい。
なお、検出部3は、例えば、X線を利用した撮像が可能な撮像装置等であってもよい。この場合、検出部3(撮像装置)は、撮像を行うと画像情報(X線画像情報)を生成してもよい。X線源2と検出部3との間に対象20が存在する場合、検出部3は、対象20を透過したX線の画像(透過X線画像情報)を生成してもよい。
【0015】
処理部10は、例えば、X線源2及びX線検出部3それぞれとの間で情報の送受信を行ってもよい。処理部10は、例えば、サーバ、デスクトップ及びラップトップ等のコンピュータ(情報処理装置)等であってもよい。
【0016】
処理部10は、第1画像情報及び第2画像情報を取得する。
第1画像情報は、対象20としての積層体に対して、第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の画像情報である。
第2画像情報は、対象20としての上記と同一の積層体に対して、第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の画像情報である。
積層体(対象20)は、例えば、第1材質部材21と第2材質部材22とを積層した積層体であってもよい(
図3参照)。第1材質部材21と第2材質部材22とは、それぞれ材質の異なる部材等であってもよい。具体的な一例として、第1材質部材21は接着材等であり、第2材質部材22は金属部材等であってもよく、それら以外の種々の材質からなる部材であってもよい。
【0017】
処理部10は、第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する。
輝度値は、例えば、画像情報(透過X線画像情報)に記録される輝度値であってもよい。又は、輝度値は、例えば、検出部3によってX線の強度を取得した場合、その強度の値を輝度の値として置き換えてもよい。
第1重み係数及び第2重み係数は、第1材質部材21のX線吸収係数に依存した値である。
【0018】
処理部10は、上述した第3輝度値と、第1材質部材21の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材21の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材22の厚さを算出する。
この場合、処理部10は、上述したX線吸収係数として、透過X線の輝度が部材の厚さに依存する輝度吸収係数と、透過X線の輝度が部材の厚さに依存しない吸収係数とのうちの一方を利用して、第2材質部材22の厚さを算出することが可能である。
【0019】
[厚さ計測装置1の詳細]
次に、一実施形態に係る厚さ計測装置1について詳細に説明する。ここでは特に、処理部10について詳細に説明する。
図2は、一実施形態に係る厚さ計測装置1(処理部10)について説明するためのブロック図である。
図3は、対象20、X線源2及び検出部3の一例について説明するための図である。
【0020】
厚さ計測装置1(処理部10)は、例えば、通信部121、記憶部122、表示部123及び制御部110等を備える。通信部121、記憶部122及び表示部123は、出力部の一実施形態であってもよい。制御部110は、例えば、X線源制御部111、取得部112、第1算出部113、第2算出部114及び出力制御部115等を備える。制御部110は、例えば、処理部10(情報処理装置)の演算処理装置等によって構成されてもよい。制御部110(例えば、演算処理装置等)は、例えば、記憶部122等に記憶される各種プログラム等を適宜読み出して実行することにより、各部(例えば、X線源制御部111、取得部112、第1算出部113、第2算出部114及び出力制御部115等)の機能を実現してもよい。
【0021】
通信部121は、例えば、処理部10(情報処理装置)の外部にある装置(外部装置)等との間で種々の情報の送受信が可能な通信インターフェースである。通信部121は、例えば、X線源2及び検出部3と通信を行ってもよい。また、通信部121は、例えば、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等と通信を行ってもよい。ユーザ端末は、例えば、輝度取得装置のユーザが使用する端末であってもよく、デスクトップ、ラップトップ、タブレット及びスマートフォン等であってもよい。
【0022】
記憶部122は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。記憶部122の一例は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であってもよい。なお、記憶部122は、例えば、クラウド上にある記憶領域及びサーバ等であってもよい。
【0023】
表示部123は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能なディスプレイである。
【0024】
X線源制御部111は、例えば、通信部121を介して、X線源2を制御する。
X線源制御部111は、例えば、厚さ計測装置1の入力部(図示せず)等を介して入力された情報に基づいて、X線を照射する際の管電圧、管電流及び照射時間のうち少なくとも1つを変更(X線のエネルギ量を変更)するようX線源2を制御してもよい。入力部は、例えば、キーボード及びマウス等であってもよい。X線源制御部111は、例えば、X線の照射エネルギ(エネルギ量)を変更して、複数回、対象20としての積層体にX線を照射するようX線源2を制御する。
一例として、X線源制御部111は、X線の照射エネルギを第1エネルギとして対象20に照射するように、X線源2を制御する(
図3参照)。
同様に、X線源制御部111は、上述した第1エネルギのX線を照射した際の対象20と同一の対象20に対して、X線の照射エネルギを第2エネルギ(第1エネルギ>第2エネルギ)として、照射するように、X線源2を制御する(
図3参照)。
なお、この場合、X線源2、検出部3及び積層体の位置を一定にすることが好ましい。
【0025】
検出部3は、例えば、対象20(積層体)を透過したX線(透過X線)を検出して、画像情報(透過X線画像情報)を生成する(
図3参照)。
この場合、検出部3は、例えば、X線の照射エネルギを第1エネルギとして対象20に照射した際の第1画像情報を生成する。
また、検出部3は、例えば、X線の照射エネルギを第2エネルギとして対象20に照射した際の第2画像情報を生成する。
【0026】
取得部112は、第1画像情報及び第2画像情報を取得する。第1画像情報は、第1材質部材21と第2材質部材22とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の画像情報である。第2画像情報は、上述した積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の画像情報である。
【0027】
取得部112は、例えば、通信部121を介して、第1画像情報及び第2画像情報を検出部3から取得してもよい。又は、取得部112は、例えば、第1画像情報及び第2画像情報が記憶された外部メモリ(図示せず)が処理部10のインターフェース(図示せず)に接続された場合、その外部メモリから第1画像情報及び第2画像情報を取得してもよい。又は、取得部112は、上述した例示の他に種々の方法により、第1画像情報及び第2画像情報を取得してもよい。
【0028】
第1算出部113は、取得部112で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得部112で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する。
第1輝度値及び第2輝度値は、例えば、画像情報(第1画像情報及び第2画像情報)に記録される輝度値であってもよい。
又は、第1輝度値及び第2輝度値は、例えば、検出部3によってX線の強度(透過X線強度)を取得した場合、その強度の値を輝度の値として置き換えることにより得られてもよい。すなわち一例として、制御部110は、検出部3によって第1エネルギに基づいた透過X線強度を取得した場合、そのX線強度の値を輝度値に変換して、第1輝度値(第1画像情報)を得てもよい。同様に一例として、制御部110は、検出部3によって第2エネルギに基づいた透過X線強度を取得した場合、そのX線強度の値を輝度値に変換して、第2輝度値(第2画像情報)を得てもよい。算出部は、上述した一例のように得られた第1輝度値及び第2輝度値を取得してもよい。
【0029】
第1算出部113は、第1エネルギで取得した画像の重み係数としての第1重み係数をKH、第1画像情報に基づく画像の第1輝度値をDH、第2エネルギで取得した画像の重み係数としての第2重み係数をKL、第2画像情報に基づく画像の第2輝度値をDLとすると、下式(1)により第3輝度値Dsubを算出してもよい。なお、下式(1)が基本式となる。
Dsub=KHDH-KLDL・・・(1)
【0030】
第1算出部113の算出で用いる第1重み係数KH及び第2重み係数KLは、第1材質部材21のX線吸収係数に依存した値であってもよい。ここで、第1エネルギで積層体にX線を照射する際の第1材質部材21のX線吸収係数をμ1(H)とし、第2エネルギで積層体にX線を照射する際の第1材質部材21のX線吸収係数をμ1(L)とすると、KH、KL、μ1(H)、μ1(L)には、下式(2)の関係がある。
KH×μ1(H)=KL×μ1(L)・・・(2)
したがって、第1重み係数KH及び第2重み係数KLは、上式(2)を変形した下式(3)のように、第1材質部材21のX線吸収係数μ1(H),μ1(L)に依存した値であってもよい。
【0031】
【0032】
第2算出部114は、第1算出部113で算出した第3輝度値と、第1材質部材21の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材21の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材22の厚さを算出する。第2算出部114の算出で用いるX線吸収係数は、部材の厚さに依存する(厚さ依存性がある)輝度吸収係数、及び、部材の厚さに依存しない(厚さ依存性がない)吸収係数のうちの一方であってもよい。
具体的な一例として、第2算出部114は、より正確な第2材質部材22の厚さを求めたい場合には厚さ依存性のある輝度吸収係数を用い、相対的に簡略的に第2材質部材22の厚さ求めたい場合には厚さ依存性のない吸収係数を用いてもよい。
【0033】
一例として、厚さ依存性のある輝度吸収係数は、第2材質部材22の厚さに応じて変わるX線吸収係数を利用するため、より正確に第2材質部材22の厚さを算出することが可能である。ここで、輝度吸収係数μAは、部材の厚さtに応じて変化し、下式(4)に一例を示すような相関が有ることが発明者の実験等によって判明した。なお、aは係数、bは定数である。式(4)は、部材の厚さtと輝度吸収係数μAとの関係を示すものであり、換言すると、部材の輝度吸収係数の厚さ依存性を示すものである。
μA=at+b・・・(4)
【0034】
一方で、輝度吸収係数を取得するためには予め実験及び計算等を行う必要があるが、厚さ依存性のない吸収係数は公知になっている場合がある。そこで一例として、吸収係数を用いることで、相対的に簡略的にまた輝度吸収係数を取得する際の実験及び計算等を行う場合よりも早く、第2材質部材22の厚さを算出することが可能である。また一例として、吸収係数を利用して第2材質部材22の厚さを求める際の演算量は、輝度吸収係数を利用して第2材質部材22の厚さを求める際の演算量よりも少なくなると考えられ、制御部110の処理負担を軽減することが可能である。
【0035】
以下、輝度吸収係数及び吸収係数それぞれを利用して、第1材質部材21と第2材質部材22とを積層した積層体のうち第2材質部材22の厚さt2を算出する例について説明する。
【0036】
(吸収係数)
まず、厚さ依存性のない吸収係数を用いて厚さt2を算出する例について説明する。
【0037】
上式(1)の基本式は、下式(5)のように変形可能である。
【0038】
【0039】
第1画像情報を構成する各ピクセルの第1輝度値をDH、第2画像情報を構成する各ピクセルの第2輝度値をDLとすると、DH,DLは下式(6),(7)で表される。
DH=-(μ1(H)t1+μ2(H)t2)・・・(6)
DL=-(μ1(L)t1+μ2(L)t2)・・・(7)
【0040】
上式(6),(7)を上式(5)に代入すると、下式(8)が得られる。式(8)における第1項のカッコ内は第1材質部材21の輝度を表し、同式の第2項のカッコ内は第2材質部材22の輝度を表す。
【0041】
【0042】
第1材質部材21の輝度(式(8)の第1項カッコ内)がゼロの場合、すなわち、第1材質部材21がないとする場合、上式(8)は下式(9)のようになる。
【0043】
【0044】
上式(9)は、下式(10)のようになる。
【0045】
【0046】
上式(10)に上式(3)を代入すると、下式(11)が得られる。
【0047】
【0048】
したがって、第2算出部114は、第1エネルギに対応する第1材質部材21の吸収係数をμ1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材21の吸収係数をμ1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材22の吸収係数をμ2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材22の吸収係数をμ2(L)とすると、上式(11)により第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。
【0049】
(輝度吸収係数)
次に、厚さ依存性のある輝度吸収係数を用いて厚さt2を算出する例について説明する。
【0050】
上式(4)に基づいて、第1エネルギに対応する第2材質部材22の輝度吸収係数をμ2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材22の吸収係数をμ2(L)とすると、厚さ依存性を有するμ2(H),μ2(L)は、下式(12),(13)により表される。
μ2(H)=a2(H)t2+b2(H)・・・(12)
μ2(L)=a2(L)t2+b2(L)・・・(13)
ここで、a2,b2は係数である。
【0051】
上述した場合と同様に、式(8)における第1項のカッコ内は第1材質部材21の輝度がゼロの場合、すなわち、第1材質部材21がないとする場合、上式(8)は上式(9)のようになる。さらに、式(9)に上式(12),(13)を代入すると、下式(14)のようになる。
【0052】
【0053】
上式(14)は、下式(15)のようになる。
【0054】
【0055】
上式(15)をt2について解くと、下式(16)のようになる。
【0056】
【0057】
したがって、第2算出部114は、第1エネルギに対応する第1材質部材21の輝度吸収係数をμ1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材21の輝度吸収係数をμ1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材22の輝度吸収係数をμ2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材22の吸収係数をμ2(L)とすると、上式(12),(13)により表される第2材質部材22の輝度吸収係数μ2(H),μ2(L)に基づいて、上式(16)により第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。
【0058】
なお、上述した第2算出部114は、第1画像情報及び第2画像情報それぞれを構成するピクセル値の輝度値(第1輝度値及び第2輝度値)に基づいて、ピクセル毎に第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。厚さ計測装置1は、積層体平面方向(検出部3の検出面の沿う方向)の第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。換言すると、厚さ計測装置1は、平面状の第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。
【0059】
出力制御部115は、第2算出部114で算出した第2材質部材22の厚さt2を出力するよう出力部を制御してもよい。出力部は、例えば、通信部121、記憶部122及び表示部123等であってもよい。
すなわち、出力制御部115は、例えば、第2算出部114で算出した第2材質部材22の厚さt2の情報を外部装置に送信するよう通信部121を制御してもよい。ここで、外部装置は、サーバ及びユーザ端末(図示せず)等であってもよい。
出力制御部115は、例えば、第2算出部114で算出した第2材質部材22の厚さt2の情報を記憶するよう記憶部122を制御してもよい。
出力制御部115は、例えば、第2算出部114で算出した第2材質部材22の厚さt2を表示するよう表示部123を制御してもよい。
【0060】
[厚さ計測方法]
次に、一実施形態に係る厚さ計測方法について説明する。
図4は、一実施形態に係る厚さ計測方法について説明するためのフローチャートである。
【0061】
ステップST101において、取得部112は、第1画像情報及び第2画像情報を取得する。第1画像情報は、第1材質部材21と第2材質部材22とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の画像情報である。第2画像情報は、上述した積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の画像情報である。
【0062】
ステップST102において、第1算出部113は、ステップST101で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値DH及びその第1輝度値DHに乗算する第1重み係数KHと、ステップST101で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値DL及びその第2輝度値DLに乗算する第2重み係数KLとに基づいて、第3輝度値Dsubを算出する。
第1算出部113は、第1エネルギで取得した画像の重み係数としての第1重み係数をKH、第1画像情報に基づく画像の第1輝度値をDH、第2エネルギで取得した画像の重み係数としての第2重み係数をKL、第2画像情報に基づく画像の第2輝度値をDLとすると、上式(1)により第3輝度値Dsubを算出してもよい。
第1算出部113の算出で用いる第1重み係数KH及び第2重み係数KLは、第1材質部材21のX線吸収係数に依存した値であってもよい。
【0063】
ステップST103において、第2算出部114は、ステップST103で算出した第3輝度値Dsubと、第1材質部材21の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材21の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材22の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材22の厚さを算出する。第2算出部114の算出で用いるX線吸収係数は、部材の厚さに依存する(厚さ依存性がある)輝度吸収係数、及び、部材の厚さに依存しない(厚さ依存性がない)吸収係数のうちの一方であってもよい。
一例として、第2算出部114は、吸収係数を利用して上式(11)により第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。
又は一例として、第2算出部114は、上式(12),(13)により表される第2材質部材22の輝度吸収係数に基づいて、上式(16)により第2材質部材22の厚さt2を算出することが可能である。
【0064】
[機能及び回路について]
次に、上述した処理部10(情報処理装置)の機能及び回路について説明する。
処理部10(情報処理装置)の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置のX線源制御部111、取得部112、第1算出部113、第2算出部114及び出力制御部115(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等によるX線源制御機能、取得機能、第1算出機能、第2算出機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
情報処理プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。情報処理プログラムは、例えば、メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体等に記録されていてもよい。記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体と言い換えてもよい。
また、上述したように、情報処理装置の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、情報処理装置の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置のX線源制御部111、取得部112、第1算出部113、第2算出部114及び出力制御部115(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等を構成するX線源制御回路、取得回路、第1算出回路、第2算出回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、情報処理装置の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されてもよい。また、情報処理装置の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、情報処理装置の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【0065】
厚さ計測装置1(情報処理装置)は、上述した複数の各部のうち1又は任意の複数を組み合わせることが可能である。
本開示では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0066】
[変形例]
上述した実施形態では、X線を利用した装置について説明した。しかしながら、本開示の厚さ計測装置1等では、X線を利用するばかりでなく、種々の波長(波長域)の光及び放射線(電磁波)を利用してもよい。この場合、厚さ計測装置1等は、例えば、赤外光、可視光及び紫外光等の光及び放射線(電磁波)を利用して透過画像を取得し、積層体を構成する一部の部材の厚さを算出してもよい。種々の波長(波長域)の電磁波を利用して透過画像を取得し、また厚さ等を算出する際の部材の一例は、金属、半導体、半導体作製基板用材質及びガラス等を始めとする種々の材質からなる部材であってもよい。
【0067】
[本実施形態の態様及び効果]
次に、本実施形態の一態様及び各態様が奏する効果について説明する。なお、以下に記載する各態様は出願時の一例であり、本実施形態は以下に記載する態様に限定されることはない。すなわち、本実施形態は以下に記載する各態様に限定されることはなく、上述した各部を適宜組み合わせて実現されてもよい。また、下位の態様は、それよりも上位の態様のいずれでも引用できる場合がある。
また、以下に記載する効果は一例であり、各態様が奏する効果は以下に記載するものに限定されることはない。また、各態様は、例えば、以下に記載する少なくとも1つの効果を奏してもよい。
【0068】
(態様1)
一態様の厚さ計測装置は、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、その積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得部と、取得部で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得部で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、第1算出部で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、を備える。
これにより、厚さ計測装置は、エネルギサブトラクションを応用して、第1材質部材の厚さにかかわらず、第2材質部材の厚さを計測することができる。
厚さ計測装置は、2つ(複数)のエネルギによる撮像画像を用いることで、第1材質部材(例えば、被接着物等)の厚さ及び形状のバラツキに因らない第2材質部材の厚さ算出を行うことができる。すなわち、厚さ計測装置は、エネルギサブトラクションを応用して、撮影方向に重なった2種類(複数種類)の部材のうち計測対象ではない部材の厚さ(サイズ)を必要とせずに、計測対象の部材の厚さを計測することができる。換言すると、厚さ計測装置は、エネルギサブトラクションを応用し、高低エネルギ画像から重み値(K)と輝度値(D)の情報を得て、計測対象ではない部材の厚さの情報を必要とせずに、計測対象の部材の厚さを算出することができる。
厚さ計測装置は、第1画像情報及び第2画像情報それぞれを構成するピクセル値の輝度値(第1輝度値及び第2輝度値)に基づいて、ピクセル毎に第2材質部材の厚さt2を算出することができる。したがって、厚さ計測装置は、積層体平面方向(検出部の検出面の沿う方向)の第2材質部材の厚さt2を算出することが可能である。換言すると、厚さ計測装置は、平面状の第2材質部材の厚さt2を算出することができる。
また、厚さ計測装置は、検出部の検出面全面にわたって輝度のムラが有る場合でも、検出部を構成するピクセル毎の輝度を利用して第2材質部材の厚さを計測できるため、より正確に厚さを計測することができる。すなわち、厚さ計測装置は、ピクセルを基準とした局所的な位置での輝度を利用してその位置の厚さを計測できるため、検出部全面(画像全面)にわたって輝度ムラがある場合でも、輝度ムラの影響を受けた場合に比べて、より精度の高い厚さを取得することができる。
【0069】
(態様2)
一態様の厚さ計測装置では、第1算出部の算出で用いる第1重み係数及び第2重み係数は、第1材質部材のX線吸収係数に依存した値であることとしてもよい。
これにより、厚さ計測装置は、積層体を透過したX線画像(第1画像情報及び第2画像情報)を利用する場合でも、第1材質部材のX線吸収係数を考慮して、第2材質部材の厚さt2を算出することができる。
【0070】
(態様3)
一態様の厚さ計測装置では、第1算出部は、第1エネルギで取得した画像の重み係数としての第1重み係数をKH、第1画像情報に基づく画像の第1輝度値をDH、第2エネルギで取得した画像の重み係数としての第2重み係数をKL、第2画像情報に基づく画像の第2輝度値をDLとすると、上式(1)により第3輝度値Dsubを算出することとしてもよい。
これにより、厚さ計測装置は、エネルギサブトラクションを利用する場合に、第2材質部材の厚さt2を算出する際の輝度値(第3輝度値)を得ることができる。
【0071】
(態様4)
一態様の厚さ計測装置では、第2算出部の算出で用いるX線吸収係数は、部材の厚さに依存する輝度吸収係数、及び、部材の厚さに依存しない吸収係数のうちの一方であることとしてもよい。
これにより、厚さ計測装置は、厚さ依存性のあるX線吸収係数(輝度吸収係数)及び厚さ依存性のないX線吸収係数(吸収係数)のうちの一方を利用して、第2材質部材の厚さt2を算出することができる。
一例として、厚さ計測装置は、厚さ依存性のある輝度吸収係数を利用する場合、第2材質部材の厚さに応じて変わるX線吸収係数を利用するため、より正確に第2材質部材の厚さを算出することができる。
また一例として、厚さ計測装置は、厚さ依存性のない吸収係数を利用する場合、相対的に簡略的に第2材質部材の厚さを算出することが可能である。一例として、吸収係数を利用して第2材質部材の厚さを求める際の演算量は、輝度吸収係数を利用して第2材質部材の厚さを求める際の演算量よりも少なくなると考えられ、厚さ計測装置は、制御部の処理負担を軽減することが可能である。
【0072】
(態様5)
一態様の厚さ計測装置では、第2算出部は、第1エネルギに対応する第1材質部材の吸収係数をμ1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材の吸収係数をμ1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ2(L)とすると、上式(11)により第2材質部材の厚さt2を算出することとしてもよい。
これにより、厚さ計測装置は、厚さ依存性のないX線吸収係数(吸収係数)を利用して、第2材質部材の厚さt2を算出することができる。
【0073】
(態様6)
一態様の厚さ計測装置では、第2算出部は、第1エネルギに対応する第1材質部材の輝度吸収係数をμ1(H)、第2エネルギに対応する第1材質部材の輝度吸収係数をμ1(L)、第1エネルギに対応する第2材質部材の輝度吸収係数をμ2(H)、第2エネルギに対応する第2材質部材の吸収係数をμ2(L)とすると、上式(12),(13)により表される第2材質部材の輝度吸収係数μ2(H),μ2(L)に基づいて、上式(16)により第2材質部材の厚さt2を算出することとしてもよい。
これにより、厚さ計測装置は、厚さ依存性のあるX線吸収係数(輝度吸収係数)を利用して、第2材質部材の厚さt2を算出することができる。
【0074】
(態様7)
一態様の厚さ計測装置は、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギ(例えば、強度等)で電磁波を照射した際のその積層体を透過した透過電磁波の第1画像情報と、その積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギ(例えば、強度等)で電磁波を照射した際の積層体を透過した透過電磁波の第2画像情報と、を取得する取得部と、取得部で取得した第1画像情報に基づく透過電磁波の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得部で取得した第2画像情報に基づく透過電磁波の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出部と、第1算出部で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応する電磁波吸収係数(例えば、吸収係数等)と、第1材質部材の第2エネルギに対応する電磁波吸収係数(例えば、吸収係数等)と、第2材質部材の第1エネルギに対応する電磁波吸収係数(例えば、吸収係数等)と、第2材質部材の第2エネルギに対応する電磁波吸収係数(例えば、吸収係数等)と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出部と、を備える。
これにより、厚さ計測装置は、上述した態様と同様の効果を奏することができる。
【0075】
(態様8)
一態様の厚さ計測方法では、コンピュータが、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、その積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得ステップと、取得ステップで取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得ステップで取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出ステップと、第1算出ステップで算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出ステップと、を実行する。
これにより、厚さ計測方法は、上述した一態様の厚さ計測装置と同様の効果を奏することができる。
【0076】
(態様9)
一態様の厚さ計測プログラムは、コンピュータに、第1材質部材と第2材質部材とを積層した積層体に第1エネルギでX線を照射した際のその積層体を透過した透過X線の第1画像情報と、その積層体に第1エネルギよりも低い第2エネルギでX線を照射した際の積層体を透過した透過X線の第2画像情報と、を取得する取得機能と、取得機能で取得した第1画像情報に基づく透過X線の第1輝度値及びその第1輝度値に乗算する第1重み係数と、取得機能で取得した第2画像情報に基づく透過X線の第2輝度値及びその第2輝度値に乗算する第2重み係数とに基づいて、第3輝度値を算出する第1算出機能と、第1算出機能で算出した第3輝度値と、第1材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第1材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第1エネルギに対応するX線吸収係数と、第2材質部材の第2エネルギに対応するX線吸収係数と、に基づいて、第2材質部材の厚さを算出する第2算出機能と、を実現させる。
これにより、厚さ計測プログラムは、上述した一態様の厚さ計測装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 厚さ計測装置
2 X線源
3 X線検出部(検出部)
10 処理部
110 制御部
111 X線源制御部
112 取得部
113 第1算出部
114 第2算出部
115 出力制御部
121 通信部
122 記憶部
123 表示部