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  • 特開-画像形成装置 図1
  • 特開-画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166776
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41J2/01 501
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083112
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宜宏
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB04
2C056EB13
2C056EB29
2C056EC03
2C056EC07
2C056EC28
2C056FA13
2C056FB02
2C056HA42
2C056HA46
(57)【要約】
【課題】印刷基材の特性に応じたプレコート処理を行うことのできるインクジェット方式の画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、所定の搬送方向に沿って搬送される印刷基材Mにインクを吐出するインク用ヘッドユニット13B、13C、13M、13Yと、前記インク用ヘッドユニット13B、13C、13M、13Yよりも前記搬送方向の上流側に配置されて、前記印刷基材Mにプレコート液を吐出するプレコート液用ヘッドユニット11と、前記プレコート液用ヘッドユニット11を制御して前記プレコート液を吐出させる制御部19と、を備え、前記制御部19は、前記印刷基材Mの光沢度が所定の値よりも高い場合に、所定量の前記プレコート液を吐出するように前記プレコート液用ヘッドユニット11を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に沿って搬送される印刷基材にインクを吐出するインク用ヘッドユニットと、
前記インク用ヘッドユニットよりも前記搬送方向の上流側に配置されて、前記印刷基材にプレコート液を吐出するプレコート液用ヘッドユニットと、
前記プレコート液用ヘッドユニットを制御して前記プレコート液を吐出させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記印刷基材の光沢度が所定の値よりも高い場合に、所定量の前記プレコート液を吐出するように前記プレコート液用ヘッドユニットを制御することを特徴とするインクジェット式画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記印刷基材の光沢度を入力する入力部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記印刷基材の20度光沢度が25以上の場合に、所定量の前記プレコート液を吐出するように前記プレコート液用ヘッドユニットを制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷基材はプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット式画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷基材にインクジェット方式によって画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置においては、印刷基材とインクとの密着性を高めるために、プレコート液を塗布するプレコート処理が行われるのが一般的である。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置は、インクの種類及び印刷基材に吐出されるインクの単位面積当たりの付着量に基づいてプレコート液の吐出量を決定している。これにより画像が形成された印刷基材の耐擦過性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-172218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印刷基材とインクとの密着性は、上記特許文献1に記載されているようなインクの種類や吐出されるインクの単位面積当たりの付着量以外に、印刷基材の特性にも依存すると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、印刷基材の特性に応じたプレコート処理を行うことのできるインクジェット方式の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、所定の搬送方向に沿って搬送される印刷基材にインクを吐出するインク用ヘッドユニットと、前記インク用ヘッドユニットよりも前記搬送方向の上流側に配置されて、前記印刷基材にプレコート液を吐出するプレコート液用ヘッドユニットと、前記プレコート液用ヘッドユニットを制御して前記プレコート液を吐出させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記印刷基材の光沢度が所定の値よりも高い場合に、所定量の前記プレコート液を吐出するように前記プレコート液用ヘッドユニットを制御することを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記制御部は、前記印刷基材の光沢度を入力する入力部を備えていることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明において、前記制御部は、前記印刷基材の20度光沢度が25以上の場合に、所定量の前記プレコート液を吐出するように前記プレコート液用ヘッドユニットを制御することを特徴としてもよい。
【0010】
本発明において、前記印刷基材はプラスチックフィルムであることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷基材の光沢度が一定以上の場合のみ、プレコート処理を行うこで、印刷基材とインクの密着性を高めることができると共にプレコート処理を効率的に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、プリントヘッドを示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、インクの密着性の評価試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0014】
図1を参照して、画像形成装置1の全体の構成について説明する。図1は画像形成装置1の内部構成を模式的に示す正面図である。
【0015】
画像形成装置1は、長尺の印刷基材Mが巻き回された供給ローラー3と、供給ローラー3から供給された印刷基材Mにインクジェット方式で画像を形成する画像形成部5と、画像形成部5で形成された画像を乾燥する乾燥部7と、乾燥部7で乾燥した印刷基材Mを巻き取る巻取ローラー9と、を備えている。
【0016】
供給ローラー3には、印刷基材Mが巻き回されて装着されている。供給ローラー3が回転することで、所定の搬送方向に印刷基材Mが送り出される。
【0017】
画像形成部5は、搬送方向において供給ローラー3の下流側に配置されている。画像形成部5は、1つのプレコート液用ヘッドユニット11と、4つのインク用ヘッドユニット13B、13C、13M、13Y(総称して13とする)と、表面に沿って印刷基材Mが搬送される搬送板15と、を備えている。
【0018】
1つのプレコート液用ヘッドユニット11は、、4つのインク用ヘッドユニット13よりも搬送方向の上流側に配置されている。プレコート液用ヘッドユニット11と、4つのインク用ヘッドユニット13とは同じ構造を有している。ヘッドユニット11、13は制御部19と電気的に接続されている。
【0019】
プレコート液用ヘッドユニット11と、4つのインク用ヘッドユニット13は、図2に示されるように、それぞれ3個のプリントヘッド21と、3個のプリントヘッド21を支持するプレート23と、を備えている。図2は各ヘッドユニットを示す平面図である。
【0020】
図2に示されるように、3個のプリントヘッド21は、印刷基材Mの幅(搬送方向Xと交差する幅方向Yに沿った長さ)と同程度となるように、幅方向Yに沿って千鳥状に配置されて(ラインヘッド方式)、プレート23に支持されている。各プリントヘッド21は、多数のノズル(図示省略)を備えている。ノズルの吐出口は、プリントヘッド21の下面に開口している。
【0021】
プレコート液用ヘッドユニット11の各プリントヘッド21には、プレコート液が供給される。供給されたプレコート液は、各プリントヘッド21の吐出口から下方に吐出される。プレコート液の成分は、例えば、ポリエステル樹脂(商品名ぺスレジンA-640、高松樹脂社製)10%、界面活性剤(商品名サーフィノール440、日信化学工業社製)0.04%、プロピレングリコール25%、水64.96%である。
【0022】
4つのインク用ヘッドユニット13B、13C、13M、13Yは、搬送方向Xに沿って順に並んで配置され、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクが供給される。供給されたインクは、各プリントヘッド21の吐出口から下方に吐出される。
【0023】
再度図1を参照して、搬送板15は、1つのプレコート液用ヘッドユニット11と、4つのインク用ヘッドユニット13の下方に配置されている。搬送板15の上面は平坦に形成されている。また、図2に示されるように、搬送板15の幅は、印刷基材M及び全てのヘッドユニット11、13の幅よりも広い。搬送板15は、例えば金属で作成される。
【0024】
供給ローラー3から送り出された印刷基材Mは、プレコート液用ヘッドユニット11及びインク用ヘッドユニット13の下方を、搬送板15の上面に沿って搬送される。
【0025】
乾燥部7は、搬送方向において画像形成部5の下流側に配置されている。乾燥部7は、ヒートドラム31と、ヒートドラム31の上流側と下流側とに配置された上流側及び下流側テンションローラー33、35と、を備えている。画像形成部5を通過した印刷基材Mは上流側及び下流側テンションローラー33、35の間でヒートドラム31に巻き掛けられている。ヒートドラム31は、加熱されることで、表面に沿って搬送される印刷基材Mを乾燥させる。
【0026】
巻取ローラー9は、搬送方向において乾燥部7の下流側に配置されている。印刷基材Mの一端は、巻取ローラー9に固定されている。巻取ローラー9は、モーター(図示省略)と接続されて回転する。モーターによって巻取ローラー9を所定方向に所定の回転速度で回転させることで、供給ローラー3から印刷基材Mが送り出される。送り出された印刷基材Mは、画像形成部5と乾燥部7とを通過して、巻取ローラー9に巻き取られる。
【0027】
制御部19は、前述のように、ヘッドユニット11、13を制御する。さらに、制御部19には、ディスプレイパネル等の入力部19aが備えられている。入力部19aは、印刷基材Mの光沢度(例えば、20度光沢度)を入力する光沢度入力部を含んでいる。
【0028】
上記構成を有する画像形成装置1の画像形成動作について説明する。画像形成動作時、まず、ユーザーは、制御部19の入力部19aに、印刷基材Mの光沢度(20度光沢度)を入力する。制御部19は、入力された光沢度が25以上の場合、所定量のプレコート液を吐出するようにプレコート液用ヘッドユニット11を制御する。
【0029】
その後、モーターが駆動されて巻取ローラー9が回転し、供給ローラー3から印刷基材Mが画像形成部5に送り出される。画像形成部5において、印刷基材Mは、搬送板15の上面に沿って搬送される。印刷基材Mがプレコート液用ヘッドユニット11の下方に搬送さると、制御部19はプレコート液用ヘッドユニット11を制御し、画像データに基づいて、所定量のプレコート液を印刷基材Mに吐出する。一方で、入力された光沢度が25よりも低い場合、制御部19は、プレコート液を吐出しないようにプレコート液用ヘッドユニット11を制御する。つまり、入力された光沢度が25よりも低い場合は、プレコート処理は実行されない。
【0030】
その後、印刷基材Mは、インク用ヘッドユニット13の下方に搬送され、画像データに基づいて、所定の色のインクが対応するヘッドユニット13から吐出される。インクはプレコート液と反応して、着弾した位置から移動しにくくなる。このように画像が形成された印刷基材Mは、乾燥部7に搬送される。乾燥部7において、インクが完全に乾燥される。その後、印刷基材Mは巻取ローラー9に巻き取られる。
【0031】
上記説明したように、本発明によれば、印刷基材Mの光沢度が一定以上、具体的には、20度光沢度が25以上の場合のみ、プレコート処理を実行する。20度光沢度が25以上の印刷基材Mは、例えば、プラスチックフィルムである。このように光沢度が高い場合、インクと印刷基材Mとの密着性が低くなる。光沢度が低い印刷基材Mは表面に微細な凹凸があり、この凹凸にインクが入り込みやすくなって(アンカー効果)、インクと印刷基材Mとの密着性が高まる。例えば、20度光沢度が25よりも低い、紙などの印刷基材Mの場合は、プレコート処理を行う必要がない。
【0032】
しかし、20度光沢度が25以上のプラスチックフィルムや合成紙では、インクと印刷基材Mとの密着性を高めるプレコート処理が必要になる。そこで、20度光沢度が25以上の場合のみプレコート処理を行うことで、印刷基材Mとインクの密着性を高めることができると共にプレコート処理を効率的に実行できる。
【0033】
次に、本実施形態の画像形成装置1において、光沢度と密着性との関係を評価した試験について説明する。プレコート液としては、上記の成分(、ポリエステル樹脂(商品名ぺスレジンA-640、高松樹脂社製)10%、界面活性剤(商品名サーフィノール440、日信化学工業社製)0.04%、プロピレングリコール25%、水64.96%)のものを使用した。
【0034】
光沢度は、印刷基材Mを、隠ぺい率試験紙(TP技研社製)の白色部分に置き、光沢度計(商品面J480T-268、Elcometer社製)を用いて、20度光沢度を計測した。
【0035】
剥離試験は以下の方法で行った。ます、シアンのべた画像を600dpiで印刷基材Mに印字した。印字した画像を、JISK5600に基づいて剥離試験を行った(クロスカットは形成していない)。指先でしっかりとテープ(商品面CT、ニチバン社製)を画像に擦り付け、5分以内に、テープを引き剥がす、あるいは、60度に近い角度でテープの端をつかみ、0.5~1.0秒以内で確実に引き離した。
【0036】
未使用のテープと引き剥がしたテープとを、コピー用紙(商品面C2、富士フィルムビジネスイノベーション社製)に貼り付け、画像濃度計(商品面FD-5、コニカミノルタ社製)を用いて画像濃度を測定した。未使用のテープと引き剥がしたテープとの画像濃度の差が0.005未満の場合を〇、0.15未満の場合を△、0.15以上を×として評価した結果を図3の表に示す。実施例1~5においては、光沢度が25以上の場合にプレコート処理を実行し、光沢度が25よりも低い場合にはプレコート処理を実行しなかった。一方で、比較例1~3においては、光沢度に関わらずプレコート処理を実行しなかった
【0037】
表から、実施例においては、光沢度が25以上の場合、プレコート処理を実行することで良好な密着性が得られ、光沢度が25よりも低い場合は、プレコート処理を実行しなくても良好な密着性が得られることが確認された。つまり、実施例1、2と比較例1、2とに示されるように、光沢度が高い場合には、十分な密着性を得るためには、プレコート処理が必要であることが確認される。また、実施例3と比較例3とに示されるように、光沢度が比較的低い場合、プレコート処理を行わなくても(比較例3)、密着性の低下度合いは低い(△)が、プレコート処理を実行することで(実施例3)、良好な密着性(〇)が得られることが確認された。また、この評価結果より、光沢度がほぼ25以下の場合(実施例4、5)には、プレコート処理を行わなくても、良好な密着性が得られることが確認できた。
【0038】
なお、制御部19は、光沢度が高いほど、吐出するプレコート液の量を増加させるようにプレコート液用ヘッドユニット11を制御してもよい。この場合、光沢度が高くインクとの密着性が低い場合でも、プレコート処理の効果が高くなる。また、画像形成装置1に、印刷基材Mの光沢度を計測する計測部(図示省略)が設けられていてもよい。この場合、印刷基材Mをセットした後、計測部で印刷基材Mの光沢度が計測される。制御部19は、計測された値に基づいて、プレコート液の適切な吐出量を算定し、算定された吐出量のプレコート液を吐出するようにプレコート液用ヘッドユニット11を制御する。この場合、ユーザーが光沢度を入力する作業を省くことができる。
【0039】
上記の実施形態では、4色のヘッドユニット13を使用したが、本発明は4色に限定されず、4色よりも多くても少なくてもよい。また、ヘッドユニット11、13は、ラインヘッド方式に限らない。ただし、ラインヘッド方式は、印字速度を高速化できるので好ましい。また、印刷基材Mとして長尺のプラスチックフィルム(PETフィルム)を使用したが、カットしたフィルムでもよい。また、印刷基材Mは合成紙などでもよい。
【0040】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置
11 プレコート液用ヘッドユニット
13 インク用ヘッドユニット
19 制御部
19a 入力部

図1
図2
図3