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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166791
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/18 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B60N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083132
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎士郎
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA17
3B087BB25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡素な構造によって車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な構成を提供する。
【解決手段】ライザー25aとサイドブラケット12aとの間に介在されて床面Sに対する車両用シートの座面11aの座面高さ及び座面角度θを調整可能なリンク機構は、サイドブラケット及びライザーの前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、サイドブラケット及びライザーの後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部50aと、をそれぞれ左右一対備えている。そして、前側リンク部は、サイドブラケットの前側に傾動可能に連結される傾動部41と、ライザーの前側に傾動可能に連結される傾動部42と、傾動部41に対して回転自在に支持されるスクリュー43と、傾動部に対して固定されてスクリューに噛合するナットと、スクリューを回転させるギヤボックス及びモータと、を備えている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートが支持されるブラケットと、
前記ブラケットの下方となる床面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材と前記ブラケットとの間に介在されて前記床面に対する前記車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構と、
前記リンク機構を駆動するための傾倒用モータと、
を備える車両用シート装置であって、
前記リンク機構は、
前記ブラケット及び前記ベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、前記ブラケット及び前記ベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備え、
前記前側リンク部は、
前記ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、
前記ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記前側スクリューに噛合する前側ナットと、
前記前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、
を備えることを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
車両用シートが支持されるブラケットと、
前記ブラケットの下方となる床面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材と前記ブラケットとの間に介在されて前記床面に対する前記車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構と、
を備える車両用シート装置であって、
前記リンク機構は、
前記ブラケット及び前記ベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、前記ブラケット及び前記ベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備え、
前記前側リンク部は、
前記ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、
前記ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記前側スクリューに噛合する前側ナットと、
前記前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、
を備え、
前記後側リンク部は、
前記ブラケットの後側に傾動可能に連結される後側第1傾動部と、
前記ベース部材の後側に傾動可能に連結される後側第2傾動部と、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される後側スクリューと、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記後側スクリューに噛合する後側ナットと、
前記後側スクリューを回転させる後側伸縮用モータと、
を備えることを特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの姿勢を調整可能な車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの姿勢を調整可能な車両用シート装置として、例えば、下記特許文献1に開示される車両用シートリフタ及び車両用クラッチユニットが知られている。車両用シートリフタは、車両用クラッチユニットのピニオンギヤに噛合するセクターギヤとリンク機構とを備え、ピニオンギヤの回転に応じてセクターギヤが回転することでリンク機構の各リンク部材が傾動するように構成されており、各リンク部材の傾動に応じて車両用シートの高さが調整される。車両用クラッチユニットは、ピニオンギヤが形成される出力軸部材に加えて、操作レバーや入力側クラッチ及び出力側クラッチなどの各種の機構部材を備えるように構成されている。入力側クラッチは、操作レバーの回転に伴って入力側内輪部材、入力側外輪部材及び入力側伝達部材が回転することにより、操作レバーの回転を出力側クラッチに伝達し、操作レバーを中立位置から駆動する駆動動作時には、操作レバーの回転を出力側クラッチに入力し、かつ、操作レバーを駆動した後に中立位置へ復帰する復帰動作時には、出力軸部材の回転位置を保持したまま操作レバーを中立位置に復帰させるように構成されている。出力側クラッチは、車両用シート側から出力軸部材に入力された力による出力軸部材の回転を規制しつつ、入力側クラッチにより操作レバーの回転が伝達されると出力軸部材の回転を許容するように構成されている。
【0003】
このように構成されることで、車両用シートの高さを高く(低く)する方向に操作レバーを回転させると、その回転方向に回転するピニオンギヤの回転に応じてセクターギヤが回転してリンク機構の各リンク部材が車両用シートの高さを高く(低く)するように傾動する。このような高さ調整後に、操作レバーに入力していた力を開放すると、操作レバーが中立位置に戻り、この状態では、車両用クラッチユニットによって出力軸部材の回転が規制されるため、車両用シートに上下方向の力が加わっても車両用シートの上下方向への移動が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-128820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のリンク構造では、車両用シートの座面の高さを調整することはできても、車両用シートの座面の傾斜角度を自由に調整することができないという問題がある。このため、座面の傾斜角度を調整するための機構を別途設けることもできるが、シート構造が複雑になるため、車両用シート装置の小型化が妨げられるだけでなく、車両用シート装置の軽量化が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡素な構造によって車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
車両用シート(11)が支持されるブラケット(12a,12b)と、
前記ブラケットの下方となる床面(S)に配置されるベース部材(25a,25b)と、
前記ベース部材と前記ブラケットとの間に介在されて前記床面に対する前記車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構(30)と、
前記リンク機構を駆動するための傾倒用モータ(31)と、
を備える車両用シート装置(10)であって、
前記リンク機構は、
前記ブラケット及び前記ベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部(40a,40b)と、前記ブラケット及び前記ベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部(50a,50b)と、をそれぞれ左右一対備え、
前記前側リンク部は、
前記ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部(41)と、
前記ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部(42)と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリュー(43)と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記前側スクリューに噛合する前側ナット(44)と、
前記前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータ(46)と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、
車両用シートが支持されるブラケットと、
前記ブラケットの下方となる床面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材と前記ブラケットとの間に介在されて前記床面に対する前記車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構と、
を備える車両用シート装置であって、
前記リンク機構は、
前記ブラケット及び前記ベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、前記ブラケット及び前記ベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備え、
前記前側リンク部は、
前記ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、
前記ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記前側スクリューに噛合する前側ナットと、
前記前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、
を備え、
前記後側リンク部は、
前記ブラケットの後側に傾動可能に連結される後側第1傾動部と、
前記ベース部材の後側に傾動可能に連結される後側第2傾動部と、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される後側スクリューと、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記後側スクリューに噛合する後側ナットと、
前記後側スクリューを回転させる後側伸縮用モータと、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ベース部材とブラケットとの間に介在されて床面に対する車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構は、ブラケット及びベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、ブラケット及びベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備えている。そして、前側リンク部は、ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、前側第1傾動部及び前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、前側第1傾動部及び前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前側スクリューに噛合する前側ナットと、前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、を備えている。
【0010】
これにより、回転する前側スクリューと前側ナットとが前側スクリューの軸方向に沿って相対移動するため、この相対移動によって前側スクリューが回転自在に支持される一方の傾動部と前側ナットが固定される他方の傾動部との前側スクリューの軸方向に沿う距離が変化する。すなわち、前側第1傾動部が連結されるブラケットの前側と前側第2傾動部が連結されるベース部材の前側との距離を、前側スクリューの回転に応じて変化させることができる。このため、前側スクリューの回転に応じてブラケットの前側とベース部材の前側との距離を変化させることで車両用シートの座面の傾斜角度を変化させることができ、傾倒用モータの回転に応じて前側リンク部及び後側リンク部を前後に傾倒させることで車両用シートの座面の高さを変化させることができる。したがって、簡素な構造によって車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な車両用シート装置を実現することができる。
【0011】
請求項2の発明では、ベース部材とブラケットとの間に介在されて床面に対する車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構は、ブラケット及びベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、ブラケット及びベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備えている。そして、前側リンク部は、ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、前側第1傾動部及び前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、前側第1傾動部及び前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前側スクリューに噛合する前側ナットと、前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、を備えている。後側リンク部は、ブラケットの後側に傾動可能に連結される後側第1傾動部と、ベース部材の後側に傾動可能に連結される後側第2傾動部と、後側第1傾動部及び後側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される後側スクリューと、後側第1傾動部及び後側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて後側スクリューに噛合する後側ナットと、後側スクリューを回転させる後側伸縮用モータと、を備えている。
【0012】
これにより、すなわち、前側第1傾動部が連結されるブラケットの前側と前側第2傾動部が連結されるベース部材の前側との距離を、前側スクリューの回転に応じて変化させることができ、さらに、後側第1傾動部が連結されるブラケットの後側と後側第2傾動部が連結されるベース部材の後側との距離を、後側スクリューの回転に応じて変化させることができる。このため、前側スクリューの回転に応じてブラケットの前側とベース部材の前側との距離を変化させるとともに後側スクリューの回転に応じてブラケットの後側とベース部材の後側との距離を変化させることで、車両用シートの座面の傾斜角度と車両用シートの座面の高さとをそれぞれ変化させることができる。したがって、簡素な構造によって車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な車両用シート装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る車両用シート装置を示す斜視図である。
図2図1の車両用シート装置の平面図である。
図3図1の車両用シート装置の側面図である。
図4図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
図5】前側リンク部の斜視図である。
図6】前側リンク部の平面図である。
図7】前側リンク部の側面図である。
図8】前側リンク部の分解斜視図である。
図9図9(A)は、前側リンク長が後側リンク長に等しい等長伸縮状態であって座面が低い状態でのリンク機構を概略的に説明する説明図であり、図9(B)は、図9(A)の状態から各リンク部を立ち上げてシート高さを高くした状態を説明する説明図である。
図10図10(A)は、前側リンク長が後側リンク長に等しい等長伸縮状態でのリンク機構を概略的に説明する説明図であり、図10(B)は、図10(A)の状態から前側リンク長を長くして座面の前側を高くした状態を説明する説明図であり、図10(C)は、図10(A)の状態から前側リンク長を短くして座面の前側を低くした状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る車両用シート装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る車両用シート装置10は、車両用シート11を、床面(車体)に対して前後方向に相対移動(スライド)可能であって、床面に対する車両用シート11の座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な装置である。この車両用シート装置10は、図1図4に示すように、主に、車両用シート11と、車両用シート11を床面に対してスライド可能に支持するシートスライド機構20と、リンク機構30及び傾倒用モータ31と、各機構等を操作するための操作部(図示略)とを備えている。
【0015】
車両用シート11は、シートクッション及びシートバックに加えて、シートクッションを支持するためのシートブラケットとして機能する左右一対のサイドブラケット12a,12bやシートバックを支持するためのシートブラケットとして機能するバックブラケット13、リクライニング機構14等を備えている。2つのサイドブラケット12a,12bは、前側連結部15及び後側連結部16を介して互いに連結されている。リクライニング機構14は、操作部の操作に応じたリクライニング用モータ14aの回転を利用して、両サイドブラケット12a,12bに対するバックブラケット13の傾倒角度、すなわち、シートクッションに対するシートバックの傾倒角度を調整可能に構成されている。なお、図1図4では、シートクッション及びシートバックにおける表皮部分等の図示を省略している。
【0016】
シートスライド機構20は、フット21等を介して床面に固定されるロアレール22と、ロアレール22に対してその長手方向にスライド可能に組み付けられるアッパーレール23とを左右一対備えるとともに、スライド用モータ24等を備えている。このシートスライド機構20は、操作部の操作に応じたスライド用モータ24の回転を利用して、ロアレール22とアッパーレール23とが前後方向(ロアレール22及びアッパーレール23の長手方向)にスライドするように構成されている。
【0017】
両アッパーレール23のそれぞれ上面には、その長手方向に沿うように、ライザー25a,25bが固定されている。ライザー25a,25bは、リンク機構30の各リンクを介して車両用シート11とシートスライド機構20とを連結するベース部材(シートブラケット)として機能する。
【0018】
リンク機構30は、ライザー25a,25bとサイドブラケット12a,12bとの間に介在されて、床面やシートスライド機構20(ライザー25a,25b)に対する車両用シート11の座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な機構として構成されている。このリンク機構30は、左右一対の前側リンク部40a,40bと左右一対の後側リンク部50a,50bとを備えている。
【0019】
図4図8に示すように、前側リンク部40aは、傾動部41、傾動部42、スクリュー43、ナット44を備えている。傾動部41は、締結具47aによってサイドブラケット12aの前側に対して傾動可能に連結されている(図4参照)。傾動部42は、締結具47bによってライザー25aの前側に対して傾動可能に連結されている(図4参照)。スクリュー43は、ブラケット48a及びブッシュ48b,48cによって傾動部41に対して回転自在であって軸方向にずれないように支持されている。ナット44は、ブラケット49a及びねじ49b,49cによって傾動部42に対して固定された状態でスクリュー43に噛合するように配置されている。ブラケット49aは、スクリュー43に噛合した状態のナット44を弾性部材等を介して弾性的に保持するように形成されている。なお、傾動部41及び傾動部42は、「前側第1傾動部」及び「前側第2傾動部」の一例に相当し、スクリュー43及びナット44は、「前側スクリュー」及び「前側ナット」の一例に相当し得る。
【0020】
また、前側リンク部40aは、ギヤボックス45及びモータ46を備えており、ギヤボックス45及びモータ46は、ギヤボックス45に軸端が噛合されたスクリュー43を回転させるように、傾動部41に固定されている。なお、モータ46は、「前側伸縮用モータ」の一例に相当し得る。
【0021】
このように構成される前側リンク部40aでは、モータ46の駆動によってスクリュー43が回転することで、そのスクリュー43に噛合しているナット44とスクリュー43とが、スクリュー43の軸方向に沿って相対移動することになる。スクリュー43は、傾動部41に回転自在に支持されており、ナット44は、傾動部42に固定されているため、スクリュー43の回転に応じて、傾動部41と傾動部42とのスクリュー43の軸方向に沿う距離が変化する。すなわち、スクリュー43の回転に応じて、前側リンク部40aのスクリュー43の軸方向に沿う長さ(以下、前側リンク長ともいう)を伸縮させることができる。
【0022】
前側リンク部40bは、前側リンク部40aに対して左右対称形状となるように構成されている。前側リンク部40bも、前側リンク部40aと同様に、当該前側リンク部40bが備えるスクリュー43の回転に応じて、その前側リンク長を伸縮させるように機能する。
【0023】
後側リンク部50aは、その上端にてサイドブラケット12aの後側に対して傾動可能に連結され、その下端にてライザー25aの後側に対して傾動可能に連結されている。本実施形態では、後側リンク部50aは、上端にて連結するサイドブラケット12aの連結点と下端にて連結するライザー25aの連結点との距離(以下、後側リンク長ともいう)が一定であって伸縮しないように形成されている。
【0024】
後側リンク部50bは、後側リンク部50aに対して左右対称形状となるように構成されている。後側リンク部50bも、後側リンク部50aと同様に後側リンク長が一定であって、その上端にてサイドブラケット12bの後側に対して傾動可能に連結され、その下端にてライザー25bの後側に対して傾動可能に連結されている。
【0025】
傾倒用モータ31は、リンク機構30を駆動するためのギヤボックス付きのモータであって、ライザー25bの後側に組み付けられて、操作部の操作に応じた回転駆動によって後側リンク部50bをその連結される下端を基準に傾動させるように構成されている。後側リンク部50bの傾動に応じて、リンク機構30を構成する他のリンクである後側リンク部50aや前側リンク部40a,40bも傾動するため、傾倒用モータ31は、前側リンク部40a,40b及び後側リンク部50a,50bを傾動させるようにリンク機構30を駆動する駆動装置として機能する。
【0026】
このように構成される車両用シート装置10では、傾倒用モータ31の駆動に応じて、前側リンク部40a,40b及び後側リンク部50a,50bが傾動する。前側リンク部40a,40bの前側リンク長が後側リンク部50a,50bの後側リンク長に等しくなる既定の長さに伸縮した状態(以下、等長伸縮状態ともいう)では、各リンク部40a,40b,50a,50bが傾動すると、車両用シート11の座面11aは、床面Sに対する傾斜角度(以下、座面角度θともいう)を変えることなく、床面Sからの高さ(以下、座面高さhともいう)を調整可能に上下移動する。
【0027】
例えば、図9(A)に例示する等長伸縮状態から、操作部に対して座面高さh(図9(A)の符号h1参照)を高くするための操作がなされることで、前側リンク長が変わることなく、各リンク部40a,40b,50a,50bが立ち上がるように傾動する場合を想定する。このような場合、図9(B)に例示するように、座面11aの床面Sに対する傾斜角度が変わることなく(座面角度θが変わることなく)座面高さh(図9(B)の符号h2参照)が高くなるように車両用シート11が上方へ移動する。なお、図9及び後述する図10では、便宜上、前側リンク部40a及び後側リンク部50a等を概略的に図示するとともに、座面11a及び床面Sを二点鎖線にて概略的に図示している。
【0028】
その一方で、等長伸縮状態と異なる状態(前側リンク長と後側リンク長との長さが異なる状態)で各リンク部40a,40b,50a,50bが傾動すると、座面高さhの変化に合わせて座面角度θも変化する。
【0029】
そして、操作部に対して座面11aの傾斜角度を変えるための操作がなされることで前側リンク部40a,40bの前側リンク長が伸縮すると、その前側リンク長の伸縮量に応じて座面角度θが調整される。このような座面角度θの調整時には、後側リンク長が一定の状態で前側リンク長が変化するため、車両用シート11の座面11aは、ライザー25aに対して傾動可能に連結される後側リンク部50a,50bの傾動中心を基準に変化する。
【0030】
例えば、図10(A)に例示する等長伸縮状態から、操作部に対して座面11aの前側を高くするように座面角度θを変えるための操作がなされることで前側リンク部40a,40bの前側リンク長が長くなる場合を想定する。このような場合、後側リンク部50a,50bがライザー25a,25bに対して傾動しないと、図10(B)に例示するθ1のように座面角度θが変化して、座面11aの前側が高くなるように車両用シート11が後傾する。このような後傾時に後側リンク部50a,50bがライザー25a,25bに対して傾動することで、その傾動に応じて座面角度θをさらに変えることができる。
【0031】
また、例えば、図10(A)に例示する等長伸縮状態から、操作部に対して座面11aの前側を低くするように座面角度θを変えるための操作がなされることで前側リンク部40a,40bの前側リンク長が短くなる場合を想定する。このような場合、後側リンク部50a,50bがライザー25a,25bに対して傾動しないと、図10(C)に例示するθ2のように座面角度θが変化して、座面11aの前側が低くなるように車両用シート11が前傾する。このような前傾時に後側リンク部50a,50bがライザー25a,25bに対して傾動することで、その傾動に応じて座面角度θをさらに変えることができる。
【0032】
このように、本実施形態では、4つのリンク部の傾動に応じた座面高さhの調整と前側の2つのリンク部の伸縮(前側リンク長の伸縮)に応じた座面角度θの調整とを、個別に実施することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート装置10では、ライザー25a,25bとサイドブラケット12a,12bとの間に介在されて床面Sに対する車両用シート11の座面11aの座面高さh及び座面角度θを調整可能なリンク機構30は、サイドブラケット12a,12b及びライザー25a,25bの前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部(40a,40b)と、サイドブラケット12a,12b及びライザー25a,25bの後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部(50a,50b)と、をそれぞれ左右一対備えている。そして、前側リンク部40a,40bは、サイドブラケット12a,12bの前側に傾動可能に連結される傾動部41と、ライザー25a,25bの前側に傾動可能に連結される傾動部42と、傾動部41に対して回転自在に支持されるスクリュー43と、傾動部42に対して固定されてスクリュー43に噛合するナット44と、スクリュー43を回転させるギヤボックス45及びモータ46と、を備えている。
【0034】
これにより、回転するスクリュー43とナット44とがスクリュー43の軸方向に沿って相対移動するため、この相対移動によってスクリュー43が回転自在に支持される傾動部41とナット44が固定される傾動部42とのスクリュー43の軸方向に沿う距離が変化する。すなわち、傾動部41が連結されるサイドブラケット12a,12bの前側と傾動部42が連結されるライザー25a,25bの前側との距離を、それぞれのスクリュー43の回転に応じて変化させることができる。このため、両スクリュー43の回転に応じてサイドブラケット12a,12bの前側とライザー25a,25bの前側との距離を変化させることで車両用シート11の座面11aの座面角度θを変化させることができ、傾倒用モータ31の回転に応じて前側リンク部40a,40b及び後側リンク部50a,50bを前後に傾倒させることで車両用シート11の座面高さhを変化させることができる。したがって、簡素な構造によって車両用シート11の座面高さhさ及び座面角度θを調整可能な車両用シート装置10を実現することができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用シート装置について説明する。
本第2実施形態では、後側リンク部がその後側リンク長を伸縮可能に構成される点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る車両用シート装置10は、上述した第1実施形態に係る車両用シート装置10に対して、傾倒用モータ31を廃止して、後側リンク部50a,50bがその後側リンク長を伸縮可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、前側リンク部40a,40b及び後側リンク部50a,50bのいずれもが前側リンク長及び後側リンク長をそれぞれ伸縮可能に構成されている。
【0037】
このため、本実施形態では、後側リンク部50a,50bは、前側リンク部40a,40bを構成する傾動部41、傾動部42、スクリュー43、ナット44、モータ46等に相当する後側第1傾動部、後側第2傾動部、後側スクリュー、後側ナット、後側伸縮用モータ等を備えるように構成されている。
【0038】
このように構成される後側リンク部50a,50bでは、後側伸縮用モータの駆動によって後側スクリューが回転することで、その後側スクリューに噛合している後側ナットと後側スクリューとが、後側スクリューの軸方向に沿って相対移動する。後側スクリューは、後側第1傾動部に回転自在に支持されており、後側ナットは、後側第2傾動部に固定されているため、後側スクリューの回転に応じて、後側第1傾動部と後側第2傾動部との後側スクリューの軸方向に沿う距離が変化する。このため、後側スクリューの回転に応じて、後側リンク部50a,50bの後側リンク長を伸縮させることができる。
【0039】
すなわち、本実施形態に係る車両用シート装置10は、
車両用シートが支持されるブラケットと、
前記ブラケットの下方となる床面に配置されるベース部材と、
前記ベース部材と前記ブラケットとの間に介在されて前記床面に対する前記車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能なリンク機構と、
を備える車両用シート装置であって、
前記リンク機構は、
前記ブラケット及び前記ベース部材の前側に対してそれぞれ傾動可能に連結される前側リンク部と、前記ブラケット及び前記ベース部材の後側に対してそれぞれ傾動可能に連結される後側リンク部と、をそれぞれ左右一対備え、
前記前側リンク部は、
前記ブラケットの前側に傾動可能に連結される前側第1傾動部と、
前記ベース部材の前側に傾動可能に連結される前側第2傾動部と、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される前側スクリューと、
前記前側第1傾動部及び前記前側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記前側スクリューに噛合する前側ナットと、
前記前側スクリューを回転させる前側伸縮用モータと、
を備え、
前記後側リンク部は、
前記ブラケットの後側に傾動可能に連結される後側第1傾動部と、
前記ベース部材の後側に傾動可能に連結される後側第2傾動部と、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの一方に対して回転自在に支持される後側スクリューと、
前記後側第1傾動部及び前記後側第2傾動部のうちの他方に対して固定されて前記後側スクリューに噛合する後側ナットと、
前記後側スクリューを回転させる後側伸縮用モータと、
を備えることを特徴とする。
【0040】
このように構成される車両用シート装置10では、前側第1傾動部が連結されるブラケットの前側と前側第2傾動部が連結されるベース部材の前側との距離を、前側スクリューの回転に応じて変化させることができ、さらに、後側第1傾動部が連結されるブラケットの後側と後側第2傾動部が連結されるベース部材の後側との距離を、後側スクリューの回転に応じて変化させることができる。このため、前側スクリューの回転に応じてブラケットの前側とベース部材の前側との距離を変化させるとともに後側スクリューの回転に応じてブラケットの後側とベース部材の後側との距離を変化させることで、車両用シートの座面の傾斜角度(座面角度θ)と車両用シートの座面の高さ(座面高さh)とをそれぞれ変化させることができる。したがって、簡素な構造によって車両用シートの座面の高さ及び傾斜角度を調整可能な車両用シート装置を実現することができる。
【0041】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)前側リンク部40a,40bは、スクリュー43が傾動部41に対して回転自在に支持されるとともにナット44がスクリュー43に噛合した状態で傾動部42に対して固定されるように構成されることに限らず、スクリュー43が傾動部42に対して回転自在に支持されるとともにナット44がスクリュー43に噛合した状態で傾動部41に対して固定されるように構成されてもよい。さらに、スクリュー43が傾動部41及び傾動部42のうちの一方に対してブラケット48a等と異なる支持部材によって回転自在に支持されてもよいし、ナット44が傾動部41及び傾動部42のうちの他方に対してブラケット49a等と異なる支持部材によって固定されてもよい。上記第2実施形態における後側リンク部50a,50bについても同様である。
【0042】
(2)傾倒用モータ31は、後側リンク部50bを傾動させることで他のリンク部(50a,40a,40b)を傾動させるように設けられることに限らず、後側リンク部50aを傾動させることで他のリンク部(50b,40a,40b)を傾動させるように設けられてもよい。また、傾倒用モータ31は、前側リンク部40aを傾動させることで他のリンク部(40b,50a,50b)を傾動させるように設けられてもよいし、前側リンク部40bを傾動させることで他のリンク部(40a,50a,50b)を傾動させるように設けられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…車両用シート装置
11…車両用シート
11a…座面
12a,12b…サイドブラケット(ブラケット)
20…シートスライド機構
25a,25b…ライザー(ベース部材)
30…リンク機構
31…傾倒用モータ
40a,40b…前側リンク部
41…傾動部(前側第1傾動部)
42…傾動部(前側第2傾動部)
43…スクリュー(前側スクリュー)
44…ナット(前側ナット)
46…モータ(前側伸縮用モータ)
50a,50b…後側リンク部
h…座面高さ
S…床面
θ…座面角度(傾斜角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10