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特開2024-166795水面計測センサのソフトウェア更新システム、ソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166795
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】水面計測センサのソフトウェア更新システム、ソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 13/00 20060101AFI20241122BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01C13/00 E
G01W1/00 Z
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083139
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】西村 友香
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA12
5C086AA15
5C086CA25
5C086CB31
5C086DA10
(57)【要約】
【課題】水面計測センサでの水位の計測を妨げずに、従来に比して作業者の負担を軽減しながら複数の水面計測センサにおけるソフトウェアの更新を行うことができる水面計測センサのソフトウェア更新システムを得ること。
【解決手段】水面計測センサのソフトウェア更新システムは、取得部、判定部および更新部を備える。取得部は、水面計測センサの稼働状況およびソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と水位変動影響情報とを取得する。判定部は、センサ状態情報からソフトウェアの更新が可能な更新対象候補を抽出し、水位変動影響情報に基づいて水面計測センサでの計測が中断してもよい更新対象を決定する。更新部は、更新対象についてソフトウェアの更新を実行する。判定部は、水面計測センサの稼働状況およびバージョン情報から更新対象候補を抽出し、更新対象候補のうち水位変動影響情報が水位計測条件を満たすものを更新対象から外す。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得部と、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定部と、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新部と、
を備え、
前記判定部は、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記センサ状態情報として前記水面計測センサの設置位置を示す設置位置情報およびバッテリ残量を示すバッテリ残量情報と、前記水面計測センサの前記設置位置における降雨量の実績値および予測値と、をさらに取得し、
前記判定部は、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たさないもののうち、前記降雨量の実績値および予測値が決められた基準値以下であり、前記バッテリ残量情報が前記ソフトウェアの更新可能な値以上である前記水面計測センサを前記更新対象として決定することを特徴とする請求項1に記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
【請求項3】
前記水位変動影響情報は、降雨に関する注意情報が複数の段階で地域毎に示される情報である降雨注意情報と、地震の震度に関して地域毎に出される情報である地震情報と、監視対象の前記水域の前記水位を示す水位情報と、を含み、
前記判定部は、前記降雨注意情報が決められた段階にある場合、前記地震情報が決められた震度以上である場合、または前記水位情報が前記水位を複数に分類した段階のうち決められた段階にある場合に、前記水位計測条件を満たすと判定することを特徴とする請求項1に記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
【請求項4】
前記判定部で前記更新対象候補として抽出されなかった前記水面計測センサおよび判定の内容、並びに前記更新対象とされなかった前記水面計測センサおよび判定の内容と、前記更新部での前記水面計測センサでの前記ソフトウェアの更新結果と、を更新結果情報として記録する結果記録部と、
前記更新結果情報を用いて生成された結果通知情報を前記ソフトウェアの更新を指示した管理者が所持する管理者端末に通知する通知部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
【請求項5】
前記取得部による前記センサ状態情報および前記水位変動影響情報の取得と、前記判定部による前記更新対象の決定と、前記更新部による前記ソフトウェアの更新と、が周期的に実行されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
【請求項6】
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサで実行されるソフトウェアの更新をソフトウェア更新システムが行う水面計測センサのソフトウェア更新方法であって、
前記水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得工程と、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定工程と、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新工程と、
を含み、
前記判定工程では、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新方法。
【請求項7】
コンピュータに、
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得ステップと、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定ステップと、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新ステップと、
を実行させ、
前記判定ステップでは、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ため池、河川等の水域の水位を計測する水面計測センサのソフトウェアの更新を行う水面計測センサのソフトウェア更新システム、ソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ため池、河川等を含む水域の水位を水面計測センサで計測し、計測したデータを用いて水域の監視を行うことによって、水害による人的被害の発生を抑制するシステムが知られている。このシステムに使用される水面計測センサの動作を制御するソフトウェアであるファームウェアは更新されることがある。従来では、ファームウェアの更新を行うタイミングを目視によって水面計測センサ毎に判断し、更新作業を行った後に、システムの利用者に通知するという手順を、水面計測センサの数だけ行う必要があった。水面計測センサは、降雨時の水位を計測することが主目的のため、ファームウェアの更新は、水位の計測を妨げないタイミングで行われることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、車両の制御プログラムを更新するプログラム更新装置が開示されている。特許文献1に記載のプログラム更新装置は、車両のバッテリ残量と、車両の停車位置における天気、気温、湿度等を含む天気情報と、車両の停車位置と、を用いて、制御プログラムの更新を完遂することができるかを判定し、制御プログラムの更新を完遂することができると判定された場合に、車両の制御プログラムを更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-004245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、水滴による漏電、雷による電源瞬断等による制御プログラムの更新の失敗を防止するために、天気情報が晴れまたは曇りかつ湿度が閾値以下の場合に制御プログラムの更新を行うことになる。一方、水面計測センサは、水域の水位を計測するためのものであり、降雨時には水位を計測することが要求される。このため、水面計測センサに特許文献1に記載の技術を適用した場合には、天気情報を用いてファームウェアの更新が可能であると判定した結果、ファームウェアの更新を行っているときに、降雨があり、水位の計測が必要な状況が生じても水位の計測ができなくなってしまうという問題がある。また、特許文献1に記載の技術は、車両の制御プログラムの更新に関するものであるため、ため池の決壊の可能性などについては全く考慮されていない。さらに、特許文献1に記載の技術を水面計測センサに適用したとしても、個々の水面計測センサに対して作業者がファームウェアの更新作業を行わなければならず、作業者の負担を軽減することができない。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、水面計測センサでの水位の計測を妨げずに、従来に比して作業者の負担を軽減しながら複数の水面計測センサにおけるソフトウェアの更新を行うことができる水面計測センサのソフトウェア更新システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る水面計測センサのソフトウェア更新システムは、取得部と、判定部と、更新部と、を備える。取得部は、監視対象の水域に設けられ、水域の水位を計測する水面計測センサの稼働状況および水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する。判定部は、センサ状態情報からソフトウェアの更新が可能な水面計測センサである更新対象候補を抽出し、更新対象候補について、水位変動影響情報に基づいて水面計測センサでの計測が中断してもよい水面計測センサである更新対象を決定する。更新部は、更新対象についてソフトウェアの更新を実行する。判定部は、水面計測センサの稼働状況およびバージョン情報から更新対象候補を抽出する。また、判定部は、更新対象候補のうち水面計測センサの設置位置での水位変動影響情報が水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、水位変動影響情報が水位計測条件を満たすものを更新対象から外す。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水面計測センサでの水位の計測を妨げずに、従来に比して作業者の負担を軽減しながら複数の水面計測センサにおけるソフトウェアの更新を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新システムを備える水面監視システムの構成の一例を模式的に示す図
図2】ブイ型水面センサの構成の一例を模式的に示す図
図3】ブイ型水面センサを実現する専用の処理回路の一例を示すブロック図
図4】水面監視装置の構成の一例を模式的に示す図
図5】水位表示画面の一例を示す図
図6】実施の形態1に係るソフトウェア更新装置の構成の一例を模式的に示す図
図7】実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新方法の手順の一例を示すフローチャート
図8】実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新方法の手順の一例を示すフローチャート
図9】実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新方法の手順の一例を示すフローチャート
図10】更新結果情報の一例を示す図
図11】実施の形態1に係るソフトウェア更新装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態に係る水面計測センサのソフトウェア更新システム、ソフトウェア更新方法およびソフトウェア更新プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新システムを備える水面監視システムの構成の一例を模式的に示す図である。ここでは、水面計測センサがブイ型水面センサ10である場合を例に挙げるが、他の形態を有する水面計測センサであってもよい。水面監視システム1は、ブイ型水面センサ10と、測位衛星30a-30cと、準天頂衛星35と、水面監視装置40と、管理者端末50と、ユーザ端末55と、気象関係情報提供装置60と、ソフトウェア更新装置70と、を備える。ブイ型水面センサ10と、水面監視装置40と、管理者端末50と、ユーザ端末55と、気象関係情報提供装置60と、ソフトウェア更新装置70と、は図示しないネットワークを介して接続される。ネットワークは、一例では、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)および無線基地局などを含む。
【0012】
ブイ型水面センサ10は、水位の監視対象となる水域に設けられ、水域の水面21の基準位置からの高さである水位を計測する。水域の一例は、ため池、湖沼、ダム湖、河川または海洋である。以下では、水域がため池20である場合を例に挙げる。ブイ型水面センサ10は、ため池20の規模が大きい場合には複数設けられることがある。また、ブイ型水面センサ10は、複数のため池20に設けられることもある。ブイ型水面センサ10は、一例では、ため池20に設置される錘、杭等にロープを介して接続される。ブイ型水面センサ10は、複数の測位衛星30a-30cから送信される複数の測位信号PSを受信し、受信した複数の測位信号PSを水面監視装置40へネットワークを介して送信する。
【0013】
図2は、ブイ型水面センサの構成の一例を模式的に示す図である。ブイ型水面センサ10は、フロート部11と、筐体部12と、測位信号受信部13と、通信部14と、太陽光パネル15と、バッテリ16と、処理部17と、を備える。
【0014】
フロート部11は、浮力を有する樹脂部材によって構成される。樹脂部材は、発泡樹脂、またはウレタン樹脂であり、発泡樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはスチロールを発泡させた部材である。なお、フロート部11は、浮力を有する部材により構成されていればよく、フロート部11を構成する部材は樹脂部材に限定されない。
【0015】
筐体部12は、測位信号受信部13、通信部14、太陽光パネル15、バッテリ16および処理部17を収納する収納空間121を有している。この収納空間121に水が浸入しないように、筐体部12は防水構造を有している。
【0016】
なお、フロート部11および筐体部12の構成は、図2に示される例に限定されない。図2に示される筐体部12は、環状に形成されたフロート部11の中空部に挿入されてフロート部11に取り付けられているが、フロート部11に中空部を設けずにフロート部11上に筐体部12が配置される構成であってもよいし、フロート部11と一体構造でもよい。一体構造の場合には、フロート部11および筐体部12が浮力を有するように構成されていればよく、フロート部11は樹脂部材に限られない。図2の例では、収納空間121に太陽光パネル15が配置されているので、筐体部12の上面は、太陽光を透過させる透明な材料によって構成される。
【0017】
測位信号受信部13は、複数の測位衛星30a-30cから送信される複数の測位信号PSを受信する図示しない受信アンテナと、受信アンテナによって受信された複数の測位信号PSを処理する信号処理部と、を有する。信号処理部は、受信アンテナによって受信された複数の測位信号PSをデジタル信号へ変換して処理部17へ出力する。
【0018】
通信部14は、ネットワークを介して水面監視装置40およびソフトウェア更新装置70との間で情報の送受信を行う。通信部14は、無線通信用のアンテナを有する。ブイ型水面センサ10は、通信部14を介して、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線信号を送受信することができる。なお、通信部14の通信方式は、無線LANおよびBluetoothに限定されるものではなく、その他の無線通信方式であってもよい。
【0019】
太陽光パネル15は、太陽光を電力に変換し、バッテリ16に出力する。なお、バッテリ16の残量が予め決められた値よりも大きい場合には、太陽光パネル15の電力を処理部17へ直接出力してもよい。図2に示す例では、太陽光パネル15は、筐体部12の収納空間121に配置されるが、太陽光パネル15が防水構造を有する場合、筐体部12の収納空間121外に配置されてもよい。
【0020】
バッテリ16は、太陽光パネル15からの電力によって充電され、処理部17へ電力を供給する。バッテリ16は、一例では、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の蓄電池である。
【0021】
処理部17は、複数の測位衛星30a-30cから送信される複数の測位信号PSを測位信号受信部13に周期的に受信させる。処理部17は、測位信号受信部13によって周期的に受信された複数の測位信号PSを通信部14へ出力し、複数の測位信号PSの通信部14から水面監視装置40への送信を通信部14に周期的に実行させる。
【0022】
ブイ型水面センサ10は、専用の処理回路によって実現される。図3は、ブイ型水面センサを実現する専用の処理回路の一例を示すブロック図である。図3に示した専用の処理回路950は、プロセッサ951、メモリ952および通信回路953を備える。
【0023】
演算装置であるプロセッサ951は、一例では、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSP(Digital Signal Processor)等である。記憶部であるメモリ952は、一例では、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの半導体メモリ、磁気ディスク等が該当する。通信回路953は、通信を行うことが可能な送受信機である。なお、図3は、一例であり、専用の処理回路950の構成は図3の例に限定されない。
【0024】
ブイ型水面センサ10は、ブイ型水面センサ10が実行する処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが専用の処理回路950で実行されることによって実現される。具体的には、プログラムがメモリ952、より具体的にはEEPROM等の不揮発性メモリにインストールされる。そして、プログラムの実行時に、メモリ952から読み出されたプログラムがメモリ952の一次記憶領域に格納される。この状態で、プロセッサ951は、メモリ952に格納されたプログラムに従って、ブイ型水面センサ10としての処理を実行する。なお、上記プログラムは記録媒体により提供されてもよいし、通信回路953を経由して伝送媒体により提供されてもよい。以下では、ブイ型水面センサ10が実行する処理が記述されたプログラムは、ファームウェアと称され、ソフトウェアに対応する。実施の形態1では、後述するように、ブイ型水面センサ10のファームウェアの更新は、ソフトウェア更新装置70によって行われる。
【0025】
図2に示したブイ型水面センサ10の処理部17は、図3に示したメモリ952に記憶されたファームウェアがプロセッサ951によって実行されることにより実現される。また、処理部17の実現にはメモリ952も用いられる。図2に示した測位信号受信部13および通信部14は、図3に示した通信回路953によって実現される。
【0026】
図1に戻り、測位衛星30a-30cは、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星であり、測位信号PSを送信する。測位衛星30a-30cは複数設けられる。
【0027】
準天頂衛星35は、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)の衛星であり、誤差補正信号ECSを送信する。
【0028】
水面監視装置40は、ブイ型水面センサ10の3次元的な設置位置を算出し、ブイ型水面センサ10の地理的な設置位置での水面21の高さである水位を示す水位情報を提供する。図4は、水面監視装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、図4では、実施の形態1の処理に関係する機能のみを説明し、他の機能については省略している。水面監視装置40は、水位算出部41と、水位情報記憶部42と、水位表示画面生成部43と、水位情報提供部44と、通信部45と、を有する。
【0029】
水位算出部41は、ブイ型水面センサ10からの複数の測位信号PSと、準天頂衛星35からの誤差補正信号ECSと、を用いてブイ型水面センサ10の設置位置と、設置位置における水位を算出する。設置位置は、地図上の位置であり、一例では緯度および軽度である。また、水位は、上記したように設置位置での基準位置からの水面21の高さである。つまり、水位算出部41は、設置位置と水位とを合わせた3次元的な設置位置を算出する。測位信号PSと誤差補正信号ECSとを用いて3次元的な設置位置を算出することで、センチメートル単位で誤差補正を行うことができる。このとき、水位算出部41は、ブイ型水面センサ10における測位信号受信部13の受信アンテナと水面21との間の高さを補正する補正値を用いて、算出したブイ型水面センサ10の3次元的な設置位置から水位を算出する。
【0030】
水位情報記憶部42は、水位算出部41で算出されたブイ型水面センサ10の設置位置および水位を計測日時に対応付けた水位情報を記憶する。一例では、水位情報記憶部42は、ため池20毎にまたはため池20のブイ型水面センサ10毎に水位情報を記憶する。
【0031】
水位表示画面生成部43は、ブイ型水面センサ10の設置位置での水位を示す水位表示画面を生成し、ユーザ端末55からの指示にしたがって水位表示画面をユーザ端末55に提供する。水位表示画面は、ユーザが管理しているため池20の水位の一覧を表示する一覧表示画面、一覧表示画面の中から選択されたため池20の水位の詳細を表示する詳細表示画面等を有する。図5は、水位表示画面の一例を示す図である。図5に示される水位表示画面430は、詳細表示画面の一例であり、ため池名表示領域431と、水位表示領域432と、水位監視レベル表示領域433と、水位グラフ表示領域434と、を有する。ため池名表示領域431には、水位グラフ表示領域434での表示対象となるため池20の名称が表示される。水位表示領域432には、最新の水位が表示される。水位監視レベル表示領域433には、最新の水位がユーザが定めた水位監視レベルのどのレベルに該当するのかが示される。水位グラフ表示領域434には、決められた期間における水位の経時変化がグラフ表示される。また、水位グラフ表示領域434には、ユーザによって決められた4段階の水位監視レベル4341a-4341dに対応する水位に横軸に平行な補助線が引かれている。水位監視レベル4341a-4341dは、任意に設定することができる。この例では、水位監視レベル4341aから水位監視レベル4341dに向かって、水位が高くなり、警戒度が高くなることを示している。この例では、水位監視レベルは4段階であるが、複数段階であればよい。水位表示画面生成部43は、水位情報記憶部42から水位情報を取得し、図5に示される水位表示画面430を生成する。
【0032】
図4に戻り、水位情報提供部44は、ソフトウェア更新装置70からの水位の取得要求に応じて、水位情報記憶部42から対象となるブイ型水面センサ10の水位情報を取得し、ソフトウェア更新装置70に取得した水位情報を提供する。
【0033】
通信部45は、ネットワークに接続される管理者端末50、ユーザ端末55、ソフトウェア更新装置70等との間で情報の送受信を行う。
【0034】
このような水面監視装置40は、一例ではクラウド環境に構築される。クラウド環境は、クラウドサービスプラットフォームにおいて提供されるコンピュータ資源を含む。クラウドサービスプラットフォームは、クラウドサービスプロバイダによって提供され、一例では、PaaS(Platform as a Service)などを含む。水面監視装置40は、クラウド環境に構築されるため、クラウドサーバとも呼ばれることがある。
【0035】
図1に戻り、管理者端末50は、水面監視システム1を管理する管理者が所持する情報処理装置である。管理者端末50の一例は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末である。管理者端末50は、管理者からの指示にしたがってソフトウェア更新装置70にブイ型水面センサ10のファームウェアの更新を指示し、ファームウェアの更新の結果を表示部に表示する。
【0036】
ユーザ端末55は、水面監視システム1を利用してため池20の管理を行うユーザが所持する情報処理装置である。ユーザ端末55の一例は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末である。ユーザ端末55は、ユーザからの指示にしたがってネットワークを介して水面監視装置40から水位表示画面を取得し、表示部に表示する。
【0037】
気象関係情報提供装置60は、ソフトウェア更新装置70からの要求に応じて、気象に関係する情報である気象関係情報を提供する。実施の形態1では、気象関係情報は、ブイ型水面センサ10が設置されるため池20での水位の変動に影響を与える情報である。気象関係情報は、一例では、降雨に関係する情報である降雨注意情報、地震の発生に関係する情報である地震情報および降雨量に関係する情報である降雨量情報を含む。
【0038】
降雨注意情報は、一例では、気象庁が発表する特別警報、警報、注意報および気象情報を含み、ため池20の水位の変動に影響を与える情報である。具体的には、降雨注意情報は、大雨特別警報、大雨警報、洪水警報、大雨注意報、洪水注意報、記録的短時間大雨情報等である。また、降雨注意情報は、地域名を含む。
【0039】
地震情報は、一例では、気象庁が発表する地震についての震度情報である。震度情報は、地震の揺れを観測した地域名と震度と地震の揺れの検知時刻とを含む。ブイ型水面センサ10がため池20に設置されている場合には、地震によってため池20が決壊する可能性があり、決壊によって、決壊したため池20と、決壊したため池20の下流にある地域と、に水位の変動が生じる。このように、地震情報は、間接的にではあるが、ため池20の水位の変動に影響を与える情報であるので、実施の形態1では、地震情報を気象関係情報に含めている。また、地震情報のほかに、水域の水位の変動が生じる他の災害情報を用いてもよい。
【0040】
降雨量情報は、ブイ型水面センサ10の設置位置での降雨量の実績値および降雨量の予測値を含む情報である。降雨量情報も、ため池20の水位の変動に影響を与える情報である。
【0041】
ソフトウェア更新装置70は、ブイ型水面センサ10で実行されるソフトウェアであるファームウェアの更新を行う装置である。具体的には、ソフトウェア更新装置70は、ブイ型水面センサ10の設置位置における気象関係情報を参照して、ファームウェアの更新が可能なブイ型水面センサ10を抽出し、抽出したブイ型水面センサ10に対して、ファームウェアの更新を指示する装置である。ソフトウェア更新装置70は、一例ではクラウド環境に構築される。クラウド環境は、クラウドサービスプラットフォームにおいて提供されるコンピュータ資源を含む。クラウドサービスプラットフォームは、クラウドサービスプロバイダによって提供され、一例では、PaaSなどを含む。ソフトウェア更新装置70は、クラウド環境に構築されるため、クラウドサーバとも呼ばれることがある。図1の例では、ソフトウェア更新装置70は、1つのサーバ装置で構成される例を示しているが、上記したようにクラウド環境に構築されるため、複数のサーバ装置で構成されるものである。ソフトウェア更新装置70は、ソフトウェア更新システムに対応する。
【0042】
図6は、実施の形態1に係るソフトウェア更新装置の構成の一例を模式的に示す図である。ソフトウェア更新装置70は、ネットワークを介して他の装置と通信を行う通信部71と、ファームウェアの更新に関係するデータを記憶するデータ記憶装置72と、ブイ型水面センサ10のファームウェアの更新処理を制御する制御装置73と、を備える。
【0043】
通信部71は、ネットワークに接続されるブイ型水面センサ10、水面監視装置40、管理者端末50、気象関係情報提供装置60等との間で情報の送受信を行う。
【0044】
データ記憶装置72は、水位変動影響情報と、降雨量情報と、センサ状態情報と、ファームウェアと、更新結果情報と、を記憶する。
【0045】
水位変動影響情報は、水域、この場合にはため池20の水位の変動に影響を与える情報である。水位変動影響情報は、ため池20での水位の計測が必要な環境であるかを判定するのに使用される情報である。水位変動影響情報は、気象関係情報である降雨注意情報および地震情報と、各ブイ型水面センサ10の最新の水位を示す水位情報と、を含む。降雨注意情報は、地域毎に降雨に関する注意情報が複数の段階で示される情報である。地震情報は、地震の震度に関して地域毎に出される情報である。水位情報は、水面監視装置40から取得される。
【0046】
降雨量情報は、ブイ型水面センサ10の設置位置における降雨量の実績値と、決められた期間における降雨量の予測値と、を含む情報である。降雨量情報は、気象関係情報の1つである。また、降雨量情報における降雨量は、雨だけではなく、雪、みぞれ、雹等の水が状態変化したものが降った量を含むものであってもよい。
【0047】
センサ状態情報は、ファームウェアの更新が可能か否かを判定する際に使用するブイ型水面センサ10の状態を示す情報である。センサ状態情報は、一例では、ブイ型水面センサ10を識別する情報であるセンサ識別情報と、ブイ型水面センサ10の稼働状況を示す稼働状況情報と、ファームウェアのバージョンを示すバージョン情報と、ブイ型水面センサ10の設置位置を示す設置位置情報と、ブイ型水面センサ10のバッテリ16の電力の残量を示すバッテリ残量情報と、を含む。センサ状態情報は、管理者によって管理されるブイ型水面センサ10についてのセンサ識別情報が予め登録されている。
【0048】
ファームウェアは、ブイ型水面センサ10にインストールする制御プログラムである。一例では、最新のバージョンのファームウェアがデータ記憶装置72に記憶される。
【0049】
更新結果情報は、制御装置73において各ブイ型水面センサ10のファームウェアの更新が可能かの判定の結果、および更新が可能な場合のファームウェアの更新の結果を含む情報である。
【0050】
制御装置73は、取得部731と、判定部732と、更新部733と、結果記録部734と、通知部735と、を有する。
【0051】
取得部731は、ファームウェアの更新に必要な情報を取得し、取得した情報をデータ記憶装置72に保存する。ファームウェアの更新に必要な情報は、一例では、ブイ型水面センサ10の稼働状況、およびブイ型水面センサ10を動作させるファームウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を含む。センサ状態情報は、ブイ型水面センサ10がファームウェアを更新することが可能な状態であるかを判定するための情報である。センサ状態情報は、稼働状況およびバージョン情報のほかに、センサ識別情報、設置位置情報およびバッテリ残量情報を含んでいてもよい。水位変動影響情報は、ブイ型水面センサ10の本来の機能である水位の計測が必要な環境か、つまりファームウェアの更新のために水位の計測を中断してはいけない環境かを判定するための情報である。水位変動影響情報は、降雨注意情報、地震情報および水位情報を含む。
【0052】
取得部731は、管理者端末50からファームウェアの更新の指示を受けると、あるいはファームウェアの更新の指示を受けてから決められた時間の経過後に、センサ状態情報を各ブイ型水面センサ10から取得し、データ記憶装置72に保存する。一例では、取得部731は、センサ状態情報に登録されているすべてのセンサ識別情報に対応するブイ型水面センサ10に対して、通信部71を介してセンサ状態情報の取得を要求するセンサ状態情報取得要求を送信する。ブイ型水面センサ10の処理部17は、センサ状態情報取得要求を受信すると、稼働している場合には、センサ識別情報と、稼働状況と、バージョン情報と、設置位置情報と、バッテリ残量情報と、を取得し、センサ状態情報取得要求に対する応答であるセンサ状態情報取得応答にこれらの情報を含めてソフトウェア更新装置70に送信する。取得部731は、通信部71を介して受信したセンサ状態情報取得応答からセンサ状態情報を取り出し、データ記憶装置72のセンサ状態情報の対応するセンサ識別情報に対応付けて保存する。
【0053】
なお、電源が入っていないブイ型水面センサ10は、センサ状態情報取得応答をソフトウェア更新装置70に送信することができない。このため、取得部731は、センサ状態情報取得要求を送信してから決められた時間内にセンサ状態情報取得応答を受信しなかったブイ型水面センサ10については、稼働状況情報は稼働していない旨を登録する。また、センサ状態情報取得応答を受信しなかったブイ型水面センサ10については、設置位置情報、バージョン情報およびバッテリ残量情報は登録されないこととなる。
【0054】
また、取得部731は、管理者端末50からファームウェアの更新の指示を受けると、あるいはファームウェアの更新の指示を受けてから決められた時間の経過後に、気象関係情報提供装置60から気象関係情報を取得し、データ記憶装置72に保存する。このとき、降雨注意情報および地震情報は、水位変動影響情報として保存し、降雨量情報は、そのまま降雨量情報として保存する。一例では、取得部731は、気象関係情報提供装置60に降雨注意情報、地震情報および降雨量情報を含む気象関係情報の取得を要求する気象関係情報取得要求を通信部71を介して送信する。気象関係情報提供装置60は、気象関係情報取得要求で要求された気象関係情報を含む気象関係情報取得応答をソフトウェア更新装置70に返すことになる。取得部731は、通信部71を介して受信した気象関係情報取得応答から気象関係情報を取り出し、データ記憶装置72に保存する。降雨注意情報および地震情報は、気象関係情報取得要求を受信した時点で発表されていない場合には、気象関係情報取得応答には含まれない。なお、取得部731は、センサ状態情報の設置位置情報を参照し、各ブイ型水面センサ10の設置位置に対応する地域の降雨量情報の取得を気象関係情報提供装置60に要求してもよい。また、取得部731は、ファームウェアの更新の指示を受けた時点から定められた期間に出された降雨注意情報および地震情報の取得を要求する。
【0055】
降雨量情報の降雨量の予測値の取得にあたって、取得部731は、ファームウェアのサイズからファームウェアの更新に要する時間である更新予測期間を算出し、ファームウェアの更新を行う時刻から更新予測期間における降雨量の予測値を最低限取得すればよいが、余裕を見た場合にはファームウェアの更新の指示を受けてから1日分の降雨量の予測値を取得すれば十分である。
【0056】
さらに、取得部731は、センサ状態情報に登録されているブイ型水面センサ10についての最新の水位情報を水面監視装置40から取得し、取得した水位情報をブイ型水面センサ10の設置位置に対応付けてデータ記憶装置72の水位変動影響情報に保存する。一例では、取得部731は、水面監視装置40に水位情報の取得を要求する水位情報取得要求を通信部71を介して送信する。水位情報取得要求には、水位情報を取得するブイ型水面センサ10を識別するセンサ識別情報も含まれている。水面監視装置40は、水位情報取得要求で要求された水位情報を含む水位情報取得応答をソフトウェア更新装置70に返すことになる。取得部731は、通信部71を介して受信した水位情報取得応答から水位情報を取り出し、データ記憶装置72に保存する。
【0057】
判定部732は、センサ状態情報からソフトウェアの更新が可能なブイ型水面センサ10である更新対象候補を抽出し、更新対象候補について、水位変動影響情報に基づいて、ブイ型水面センサ10での計測が中断してもよいブイ型水面センサ10である更新対象を決定する。つまり、判定部732は、ブイ型水面センサ10の稼働状況およびバージョン情報から、更新対象候補を抽出する。また、判定部732は、更新対象候補のうち、ブイ型水面センサ10の設置位置での水位変動影響情報がブイ型水面センサ10での計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、水位変動影響情報が水位計測条件を満たすものを更新対象から外す。具体的には、判定部732は、降雨注意情報が決められた段階にある場合、地震情報が決められた震度以上である場合、または水位情報が水位監視レベルの決められた段階にある場合に、水位計測条件を満たすと判定する。
【0058】
さらに判定部732の処理の詳細について説明する。判定部732は、データ記憶装置72に記憶されたセンサ状態情報からセンサ識別情報と稼働状況情報とバージョン情報とを取得する。判定部732は、稼働状況情報で電源が入っているブイ型水面センサ10であり、かつファームウェアのバージョン情報がファームウェアの更新が必要なバージョン情報以下であるブイ型水面センサ10のセンサ識別情報を抽出する。ここで抽出されたセンサ識別情報に対応するブイ型水面センサ10が更新対象候補となる。
【0059】
判定部732は、抽出した更新対象候補のうち1つを選択し、センサ状態情報から選択したブイ型水面センサ10のセンサ識別情報に対応する設置位置情報を取得する。また、判定部732は、取得した設置位置情報を含む地域での水位変動影響情報、すなわち降雨注意情報、地震情報および水位情報を取得する。判定部732は、水位変動影響情報が水位の計測を中断してはいけない環境かを示す水位計測条件を満たしているかを判定する。
【0060】
具体的には、判定部732は、降雨注意情報が出されている場合には、ブイ型水面センサ10の設置位置における降雨注意情報が決められた段階以上の情報であるかを判定する。一例では、判定部732は、警報以上の情報が出されているかを判定する。判定部732は、地震情報が出されている場合には、ブイ型水面センサ10の設置位置における震度が決められた値以上であるかを判定する。一例では、判定部732は、震度3以上であるかを判定する。また、判定部732は、選択されたブイ型水面センサ10の設置位置の最新の水位情報がユーザによって設定された複数の水位監視レベルのうち、定められた水位監視レベルにあるかを判定する。
【0061】
水位変動影響情報が水位計測条件を満たしている場合には、水位が変動する可能性が高い環境にあると考えられるため、ブイ型水面センサ10での水位の計測を中断してファームウェアの更新を行うのは好ましくない。つまり、ブイ型水面センサ10はため池20の水位を計測するものであり、ブイ型水面センサ10の設置位置の地域に大雨警報、洪水警報または地震情報が発表されている場合、あるいはため池20の水位が水位監視レベルのユーザによって決められた段階にある場合、すなわちため池20の水位がユーザによって決められた値以上である場合に、ため池20の水位の計測が必要となる。このような場合に、ファームウェアの更新が実行された場合には、ため池20の水位を計測することができない期間が発生し、ユーザに必要な情報を提供することができない。このため、実施の形態1では、判定部732は、水位変動影響情報が水位計測条件を満たしている場合には、ファームウェアの更新を実施させない。つまり、判定部732は、水位変動影響情報が水位計測条件を満たしているブイ型水面センサ10を更新対象から外す。
【0062】
水位変動影響情報が水位計測条件を満たしていない場合には、判定部732は、降雨量情報およびセンサ状態情報が更新対象抽出条件を満たしているかを判定する。具体的には、判定部732は、降雨量情報およびバッテリ残量情報が更新対象抽出条件を満たすかを判定する。更新対象抽出条件は、ファームウェアの更新中に、ブイ型水面センサ10が水位の計測を中断してもよい降雨量であり、またバッテリ残量がファームウェアの更新に必要な電力以上であることである。水位の計測を中断してもよいという条件は、ブイ型水面センサ10が稼働しなくてもよい条件、すなわちファームウェアの更新開始時において降雨がなく、かつその後のファームウェアの更新予測期間においても降雨がないという条件である。判定部732は、これらの更新条件を同時に満たすブイ型水面センサ10を更新対象とする。
【0063】
降雨量情報およびセンサ状態情報が更新対象抽出条件を満たしていない場合には、ファームウェアの更新ができないため、あるいはファームウェアの更新の途中で更新ができなくなる可能性があるため、実施の形態1では、判定部732は、このようなブイ型水面センサ10を更新対象から外す。判定部732は、降雨量情報およびセンサ状態情報が更新対象抽出条件を満たしているブイ型水面センサ10をファームウェアの更新対象とする。
【0064】
更新部733は、判定部732で更新対象とされたブイ型水面センサ10に対して、データ記憶装置72に記憶されているファームウェアでブイ型水面センサ10にインストールされているファームウェアを更新する。この場合には、更新部733は、ネットワークを介してファームウェアをブイ型水面センサ10に送信した後、ファームウェアの更新処理を実行する。
【0065】
結果記録部734は、判定部732での更新対象を定める判定において、更新対象とされなかった理由を、ブイ型水面センサ10のセンサ識別情報および判定された日時と対応付けて更新結果情報としてデータ記憶装置72に保存する。また、結果記録部734は、更新部733でのファームウェアの更新が正常終了したかまたは異常終了したか取得し、ブイ型水面センサ10のセンサ識別情報および更新を行った日時と対応付けて更新結果情報としてデータ記憶装置72に保存する。つまり、結果記録部734は、判定部732で更新対象候補として抽出されなかったブイ型水面センサ10および判定の内容、並びに更新対象とされなかったブイ型水面センサ10および判定の内容と、更新部733でのブイ型水面センサ10でのファームウェアの更新結果と、を更新結果情報として記録する。
【0066】
通知部735は、更新結果情報を用いて生成された結果通知情報を管理者端末50に通知する。通知部735は、個々のブイ型水面センサ10におけるファームウェアの更新処理の結果を含む結果通知画面を生成し、管理者が保持する管理者端末50に通知する。一例では、通知部735は、データ記憶装置72に記憶された更新結果情報を用いて、それぞれのブイ型水面センサ10について、更新の実行の有無、更新の実行ができなかった場合の更新不可の理由、更新を実行した場合の更新結果を示した結果通知情報を生成し、結果通知情報を含む結果通知画面を管理者端末50に通信部71を介して送信する。これによって、管理者端末50に、結果通知画面が表示される。
【0067】
なお、取得部731によるセンサ状態情報、水位変動影響情報および降雨量情報の取得と、判定部732による更新対象の決定と、更新部733によるファームウェアの更新と、は周期的に実行される。
【0068】
次に、このような構成の水面監視システム1におけるソフトウェア更新方法について説明する。図7から図9は、実施の形態1に係る水面計測センサのソフトウェア更新方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、管理者は、ユーザ端末55からソフトウェア更新装置70に対してファームウェアの更新を指示する。ソフトウェア更新装置70の通信部71は、ファームウェアの更新の指示を受信すると(ステップS11)、取得部731は、ブイ型水面センサ10からセンサ状態情報を取得し、データ記憶装置72に保存する(ステップS12)。この例では、センサ状態情報は、ブイ型水面センサ10のセンサ識別情報、稼働状況情報、バージョン情報、設置位置情報およびバッテリ残量情報を含む。また、取得部731は、気象関係情報提供装置60から気象関係情報を取得し、データ記憶装置72に保存する(ステップS13)。この例では、気象関係情報は、降雨注意情報、地震情報および降雨量情報を含む。さらに、取得部731は、水面監視装置40から各ブイ型水面センサ10の最新の水位を示す水位情報を取得し、データ記憶装置72に保存する(ステップS14)。なお、ステップS12からステップS14までは順番が入れ替わってもよいし、同時に行われてもよい。
【0069】
ついで、判定部732は、データ記憶装置72に記憶されたセンサ状態情報を用いて、ファームウェアの更新対象候補となるブイ型水面センサ10を抽出する。具体的には、判定部732は、センサ状態情報から電源が入っているブイ型水面センサ10を抽出する(ステップS15)。また、判定部732は、抽出したブイ型水面センサ10のファームウェアのバージョン情報を用いてファームウェアの更新が必要なブイ型水面センサ10を更新対象候補として抽出する(ステップS16)。一例では、判定部732は、これから更新しようとするファームウェアのバージョン情報よりも古いバージョン情報を有するブイ型水面センサ10を抽出する。
【0070】
このとき、結果記録部734は、更新対象候補として抽出されなかったブイ型水面センサ10について、更新不可内容を更新結果情報に記録する(ステップS17)。図10は、更新結果情報の一例を示す図である。更新結果情報は、異常と判定されたブイ型水面センサ10のセンサ識別情報と、判定日時と、更新不可内容と、判定回数と、更新対象フラグと、更新実施結果と、を含む。センサ識別情報には、センサ状態情報に登録されているセンサ識別情報が入力される。すなわち、管理者による管理対象となっているすべてのブイ型水面センサ10のセンサ識別情報が入力される。判定日時は、ファームウェアの更新対象ではないと判定された日時である。更新不可内容は、ファームウェアの更新対象ではないとされた内容である。この例では、稼働状況情報で電源が入っていないために更新対象候補とならなかった場合には、更新不可内容には電源がオフである旨が入力され、バージョン情報が更新対象ないために更新対象候補とならなかった場合には、更新不可内容にはバージョン情報が更新対象ではない旨が入力される。判定回数は、更新対象ではないと連続して判定された回数である。記録されていた判定回数に1を加算した値が入力される。更新対象フラグは、更新対象であるか否かを示す情報であり、一例では、更新対象である場合にはフラグが立てられる。更新実施結果は、更新対象について更新部733による更新の結果が入力される。正常に更新が終了した場合には、正常終了の旨が入力され、更新が異常終了した場合には、異常終了の旨が入力される。
【0071】
図7に戻り、その後、判定部732は、ステップS17で抽出したブイ型水面センサ10の1つを選択する(ステップS18)。判定部732は、水位変動影響情報が水位計測条件を満たすかを判定する(ステップS19からステップS21)。具体的には、判定部732は、降雨注意情報を参照し、選択したブイ型水面センサ10の設置位置に決められた段階以上の降雨注意情報が出ているかを判定する(ステップS19)。判定の基準となる決められた段階は、ユーザによって設定される。決められた段階は、一例では、警報とすることができる。
【0072】
決められた段階以上の降雨注意情報が出ていない場合(ステップS19でNoの場合)には、判定部732は、地震情報を参照し、選択したブイ型水面センサ10の設置位置に決められた震度以上の地震情報が出ているかを判定する(ステップS20)。判定の基準となる決められた震度は、ため池20の地盤、地質等に応じてユーザによって設定される。決められた震度は、一例では震度3とすることができる。
【0073】
決められた震度以上の地震情報が出ていない場合(ステップS20でNoの場合)には、判定部732は、選択したブイ型水面センサ10の設置位置の水位情報が決められた段階以上であるかを判定する(ステップS21)。判定の基準となる決められた段階は、ユーザによって設定される。一例では、水位が満水に近いほど段階が高くなるようにため池20の水位を4段階の水位監視レベルに分類した場合には、決められた段階は3段階目とすることができる。
【0074】
降雨注意情報が決められた段階未満であり(ステップS19でNoの場合)、地震情報が決められた震度未満であり(ステップS20でNoの場合)、かつ水位情報が決められた段階未満である場合(ステップS21でNoの場合)に、水位変動影響情報が水位計測条件を満たさない場合となる。なお、ステップS19からステップS21までの処理を行う順番は入れ替えてもよい。
【0075】
水位情報が決められた段階以上ではない場合(ステップS21でのNoの場合)には、判定部732は、降雨量情報およびセンサ状態情報が更新対象抽出条件を満たすかを判定する(ステップS22-ステップS24)。具体的には、判定部732は、降雨量情報の降雨量の実績値が決められた基準値以下であるかを判定する(ステップS22)。降雨量の実績値が基準値以下である場合(ステップS22でYesの場合)には、ファームウェアの更新開始予定時刻からファームウェアの更新予測期間における降雨量情報の降雨量の予測値が決められた基準値以下であるかを判定する(ステップS23)。ステップS22およびステップS23での判定の基準となる決められた基準値は、ユーザによって設定される。基準値が0の場合には、雨が降っていない状態または雨が降らない状態である。ステップS23における更新開始予定時刻は、一例では管理者によって設定される。ステップS22からステップS23までの判定処理において、判定部732は、降雨量実績が決められた閾値以下であるとともに、更新予測期間にわたって降雨量の予測値が決められた閾値以下であるかを判定する。
【0076】
更新予測期間における降雨量の予測値が基準値以下である場合(ステップS23でYesの場合)には、判定部732は、センサ状態情報のバッテリ残量情報がファームウェアの更新に必要な決められた基準値以上であるかを判定する(ステップS24)。
【0077】
降雨量の実績値が決められた基準値以下であり(ステップS22でYesの場合)、ファームウェアの更新予測期間における降雨量の予測値が決められた基準値以下であり(ステップS23でYesの場合)、かつバッテリ残量情報が決められた基準値以上である場合(ステップS24でYesの場合)に、降雨量情報およびセンサ状態情報が更新対象抽出条件を満たす場合となる。つまり、バッテリ残量情報が基準値以上である場合(ステップS24でYesの場合)には、判定部732は、選択したブイ型水面センサ10をファームウェアの更新対象とし、更新結果情報の更新対象フラグにフラグを立てる(ステップS25)。
【0078】
一方、ステップS19で決められた段階以上の降雨注意情報が出ている場合(ステップS19でYesの場合)、ステップS20で決められた震度以上の地震情報が出ている場合(ステップS20でYesの場合)、ステップS21で決められた段階以上の水位情報である場合(ステップS21でYesの場合)、ステップS22で降雨量の実績値が基準値よりも大きい場合(ステップS22でNoの場合)、ステップS23で降雨量の予測値が基準値よりも大きい場合(ステップS23でNoの場合)またはステップS24でバッテリ残量情報が基準値未満である場合(ステップS24でNoの場合)には、ファームウェアの更新ができない場合である。このため、結果記録部734は、更新結果情報の更新不可内容に判定処理の結果を示す情報を記録し、記録されていた判定回数に1を加算する(ステップS26)。
【0079】
一例では、結果記録部734は、決められた段階以上の降雨注意情報が出ていた場合には、更新不可内容を降雨注意情報の内容とし、決められた震度以上の地震情報が出ていた場合には、更新不可内容を地震情報の内容とすることができる。また、結果記録部734は、降雨量の実績値が基準値よりも大きい場合または降雨量の予測値が基準値よりも大きい場合には、更新不可内容を降雨量とすることができ、バッテリ残量情報が基準値未満である場合には、更新不可内容をバッテリ残量とすることができる。
【0080】
ステップS25の後またはステップS26の後、判定部732は、ステップS16で抽出したすべての更新対象候補について更新対象の判定を行ったかを判定する(ステップS27)。すべての更新対象候補について判定を行っていない場合(ステップS27でNoの場合)には、ステップS18に処理が戻る。
【0081】
すべての更新対象候補について判定を行った場合(ステップS27でYesの場合)には、更新部733は、更新対象と判定されたブイ型水面センサ10についてファームウェアの更新処理を実施する(ステップS28)。つまり、更新部733は、更新結果情報の更新対象フラグにフラグが付されたブイ型水面センサ10についてファームウェアの更新処理を実施する。その後、更新部733は、ファームウェアの更新が正常終了したかを判定する(ステップS29)。更新が正常終了した場合(ステップS29でYesの場合)には、結果記録部734は、更新結果情報の更新実施結果にファームウェアの更新が正常に終了したことを記録する(ステップS30)。また、更新が正常に終了しなかった場合(ステップS29でNoの場合)には、結果記録部734は、更新結果情報の更新実施結果にファームウェアの更新が異常終了したことを記録する(ステップS31)。
【0082】
ステップS30の後またはステップS31の後、通知部735は、更新結果情報から結果表示画面を生成する(ステップS32)。結果表示画面は、一例では、更新結果情報をリスト表示した画面である。このとき、通知部735は、結果表示画面の中で、決められた回数以上の更新不可内容が記録されたブイ型水面センサ10の結果を他の表示とは異なる表示、一例では強調表示または点滅表示させるようにしてもよい。あるいは、通知部735は、結果表示画面中で、判定回数が決められた回数以上の更新不可内容とブイ型水面センサ10を識別するセンサ識別情報とを抽出した異常通知画面を生成し、管理者端末50に表示してもよい。このような結果表示画面または異常通知画面を見た管理者は、ブイ型水面センサ10の不具合を把握することが可能となる。
【0083】
あるいは、通知部735は、更新結果情報の更新不可内容と更新不可内容の判定回数とから、異常の原因を示す異常原因情報を生成し、結果表示画面または異常通知画面に異常原因情報を合わせて表示させるようにしてもよい。異常の原因は、更新不可内容から取得することができる。一例では、バッテリ残量情報が基準値未満でファームウェアの更新ができない場合には、通知部735は、更新不可内容を参照して、「バッテリに異常がある可能性があります」という趣旨の異常原因情報を生成することができる。そして、この異常原因情報を結果表示画面または異常通知画面に表示することで、管理者はファームウェアの更新を行うことができないブイ型水面センサ10の異常の原因を知ることが可能となる。
【0084】
また、通知部735は、更新結果情報の更新不可内容または更新実施結果をブイ型水面センサ10を所持しているユーザのユーザ端末55に通知するようにしてもよい。
【0085】
その後、取得部731は、決められた回数の更新処理を実行したかを判定する(ステップS33)。決められた回数の更新処理を実行していない場合(ステップS33でNoの場合)には、取得部731は、前回、センサ状態情報、気象関係情報または水位情報を取得してから決められた期間が経過したかを判定する(ステップS34)。判定の基準となる決められた期間は一例では1日とすることができる。決められた期間が経過していない場合(ステップS34でNoの場合)には、決められた期間が経過するまで待ち状態となる。
【0086】
決められた期間が経過した場合(ステップS34でYesの場合)には、ステップS12に処理が戻る。この後、上記したステップS12からステップS34までの処理が実行されることになる。ただし、前回までの処理でファームウェアの更新が行われたブイ型水面センサ10については、更新対象となることはなく、更新されなかったブイ型水面センサ10について処理が行われることになる。ステップS12からステップS34までの処理が繰り返し行われることによって、一例ではファームウェアの更新を行うだけのバッテリ残量が前回の処理時にはなかったが、バッテリ残量が回復したブイ型水面センサ10、前回は電源が入っていなかったがその後に電源がオンにされたブイ型水面センサ10等についても、漏れなく更新処理を行うことが可能となる。つまり、決められた回数の更新処理を実行することで、更新対象とならなかったブイ型水面センサ10についても、可能な限り更新対象となるようにすることが可能となる。
【0087】
ステップS33で決められた回数の更新処理を実行した場合(ステップS33でYesの場合)には、更新処理が終了する。
【0088】
なお、上記した説明では、センサ状態情報、気象関係情報および水位情報をはじめに取得し、その後にファームウェアの更新対象を抽出する処理を行っていたが、実施の形態1がこの例に限定されるものではない。一例では、ファームウェアの更新対象を抽出した後に、各ブイ型水面センサ10の設置位置における気象関係情報を取得するようにしてもよい。このようにすることで、取得する気象関係情報の地域および降雨量予測データの期間を限定することができる。この結果、ネットワークを流れる情報の量を削減することができるという効果を有する。
【0089】
また、降雨量情報の降雨量の予測値を用いて更新予測期間における降雨量を予測する場合を示したが、降雨量の予測は、他の方法で行ってもよい。一例では、気象情報取得時の降雨量データを取得し、雨雲の移動速度とファームウェアの更新予測期間とから求められるファームウェアの更新予測期間中の雨雲移動距離を算出する。そして、ブイ型水面センサ10の設置位置を中心とし、雨雲移動距離を半径とした円形の領域内で降雨を観測している場合に、更新予測期間中に降雨があると予測するようにしてもよい。雨雲の移動速度は、平均的な雨雲の移動速度を予め計算によって取得してもよいし、過去の決められた期間における雨雲の移動速度の最大値を用いてもよいし、あるいは複数の降雨量データから算出した雨雲の移動速度を用いてもよい。
【0090】
さらに上記した例では、水位変動影響情報が降雨注意情報、地震情報および水位情報である場合を示したが、水位変動影響情報に他の情報を追加してもよい。一例では、水位変動影響情報は、各ブイ型水面センサ10の決められた期間の水位情報をさらに含んでいてもよい。水域であるため池20が決壊した場合に、ため池20およびため池20の下流にある水域では急激に水位が変動する。このような急激に水位が変動する場合には、水位の計測が必要であり、ファームウェアの更新を行わない方が望ましい。このため、単位時間当たりの水位変動量を用いて、ブイ型水面センサ10による水位計測が必要であるかを判定することができる。
【0091】
この場合には、判定部732は、決められた期間における水位情報を用いて単位時間当たりの水位変動量を算出し、単位時間当たりの水位変動量が決められた基準値以上であるかを判定する。基準値は、ため池20の位置、大きさ等によって定められるものである。単位時間当たりの水位変動量の絶対値が基準値以上である場合には、水位計測条件を満たすものとなり、このブイ型水面センサ10はファームウェアの更新対象とはしない。また、単位時間当たりの水位変動量が基準値未満である場合には、水位計測条件を満たさないので、ファームウェアの更新対象となり得るものとなる。
【0092】
次に、ソフトウェア更新装置70のハードウェア構成について説明する。実施の形態1のソフトウェア更新装置70は、コンピュータシステム上で、ソフトウェア更新装置70における処理が記述されたコンピュータプログラムであるプログラムが実行されることにより、コンピュータシステムがソフトウェア更新装置70として機能する。
【0093】
図11は、実施の形態1に係るソフトウェア更新装置を実現するコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図である。図11に示されるように、このコンピュータシステム900は、制御部901と、入力部902と、記憶部903と、表示部904と、通信部905と、出力部906と、を備え、これらはシステムバス907を介して接続されている。
【0094】
図11において、制御部901は、一例では、CPU等のプロセッサであり、ソフトウェア更新装置70における処理が記述されたプログラムを実行する。入力部902は、一例ではキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステム900のユーザが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部903は、RAM,ROMなどの各種メモリおよびハードディスク、SSD(Solid State Drive)などのストレージデバイスを含み、上記制御部901が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶する。また、記憶部903は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部904は、ディスプレイ、液晶表示パネルなどで構成され、コンピュータシステム900のユーザに対して各種画面を表示する。一例では、入力部902と表示部904とが一体的に形成されたタッチパネルで入力部902および表示部904が構成されていてもよい。通信部905は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部906は、プリンタ、スピーカなどである。なお、図11は、一例であり、コンピュータシステム900の構成は図11の例に限定されない。
【0095】
ここで、プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステム900の動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステム900には、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、プログラムが記憶部903にインストールされる。そして、プログラムの実行時に、記憶部903から読み出されたプログラムが記憶部903の主記憶領域に格納される。この状態で、制御部901は、記憶部903に格納されたプログラムに従って、ソフトウェア更新装置70としての処理を実行する。
【0096】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、ソフトウェア更新装置70における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステム900の構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部905を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0097】
図6に示したソフトウェア更新装置70の取得部731、判定部732、更新部733、結果記録部734および通知部735は、図11に示した記憶部903に記憶されたプログラムが図11に示した制御部901により実行されることによって実現される。取得部731、判定部732、更新部733、結果記録部734および通知部735の実現には、図11に示した記憶部903も用いられる。データ記憶装置72は、図11に示した記憶部903によって実現される。通信部71は、図11に示した通信部905によって実現される。
【0098】
また、制御装置73の各機能およびデータ記憶装置72が複数のコンピュータシステム900に分散されていてもよい。
【0099】
従来の技術では、水位変動影響情報を用いず、バッテリ残量情報と、晴、曇等の天候情報と、を用いてソフトウェアの更新の可否を判定しているので、ソフトウェアの更新の最中に降雨が生じる可能性を排除することができない。このため、ソフトウェアの更新時に降雨が生じた場合に、水面計測センサでの水域の水位を計測するという目的を達成することができず、ユーザに対して十分なサービスを提供することができない。
【0100】
一方、実施の形態1では、ソフトウェア更新装置70は、監視対象の水域に設けられ、水域の水面21の基準位置からの高さである水位を計測する水面計測センサの稼働状況および水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得部731と、センサ状態情報からソフトウェアの更新が可能な水面計測センサである更新対象候補を抽出し、更新対象候補について、水位変動影響情報に基づいて、水面計測センサでの計測が中断してもよい水面計測センサである更新対象を決定する判定部732と、更新対象について、ソフトウェアの更新を実行する更新部733と、を備える。判定部732は、水面計測センサの稼働状況およびバージョン情報から、更新対象候補を抽出し、更新対象候補のうち、水面計測センサの設置位置での水位変動影響情報が水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、水位変動影響情報が水位計測条件を満たすものを更新対象から外す。このように、水位変動影響情報が水位計測条件を満たす場合に、水面計測センサをソフトウェアの更新対象から外すようにしたので、水域の水位の変動が発生しそうな状況でソフトウェアの更新によって水位の計測が行えなくなってしまうことを抑制することができる。つまり、水域の水位の変動が生じる可能性がある場合に水位を計測するという水面計測センサの本来の目的を達成することができる。より具体的には、水位変動影響情報を用いた判定を行うことで、水位の変動の発生が生じないタイミングでソフトウェアの更新を完了させることができるので、降雨時または災害時の利用が必須である水面計測センサの信頼度を損なうことを抑制することができる。また、水位の計測が中断してもよい適切なタイミングでソフトウェアの更新を行うことができる。
【0101】
また、水位変動影響情報が水位計測条件を満たさない場合に、水面計測センサの設置位置の降雨量の実績値および予測値を用いて、水面計測センサをソフトウェアの更新対象とするかを判定するようにした。これによって、更新の途中で降雨が生じるような状況下でのソフトウェアの更新が行われないようにすることができる。このように、実施の形態1では、水位の計測が必要な場合に水位の計測が行われ、水位の計測が中断してもよいタイミングでソフトウェアの更新を行うので、ユーザに対して水位の計測についての十分なサービスを提供することが可能となる。
【0102】
さらに、バッテリ残量情報がファームウェアの更新を行うのに必要な電力以上である場合に、ソフトウェアの更新が行われるので、途中で更新ができなくなってしまうことのリスクを勘案して、ソフトウェアの更新完了の可能性を高めることができる。
【0103】
また、更新対象を抽出する際に、更新対象から外れた水面計測センサについて、外れた理由を更新不可内容として更新結果情報に記録し、更新の結果を管理者端末50に通知するようにした。これによって、水面計測センサで更新が行われなかった原因の管理者による解明を支援することが可能となる。
【0104】
さらに、周期的にソフトウェアの更新処理を実行するようにしたので、1回目の更新処理で電源がオフであったが、2回目の更新処理までに電源がオンになったり、バッテリ残量がソフトウェアの更新に必要な電力よりも小さかったが、2回目の更新処理までにバッテリ残量が回復したりした水面計測センサについても、ソフトウェアの更新を行うことが可能となる。つまり、ソフトウェアの更新が実施されない水面計測センサを少なくすることができるという効果を有する。
【0105】
また、各水面計測センサでソフトウェアの更新を行わせる場合には、個々の水面計測センサは、水位変動影響情報、降雨量情報およびセンサ状態情報を記憶していない。このため、特許文献1に記載の技術のように、個々の水面計測センサでソフトウェアの更新の可否を判断し、可能な場合に更新を実行させるのは難しい。しかし、実施の形態1では、複数の水面計測センサをクラウドサーバであるソフトウェア更新装置70で管理するようにした。これによって、複数の水面計測センサを一括管理することが可能となる。つまり、複数の水面計測センサについて、ソフトウェアの更新の可否および更新を一括して実行および制御することが可能となる。この結果、複数の水面計測センサを1個1個確認してソフトウェアの更新を行う場合に比して、管理者にかかる負荷を低減することが可能となる。
【0106】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0107】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0108】
[付記1]
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得部と、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定部と、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新部と、
を備え、
前記判定部は、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新システム。
[付記2]
前記取得部は、前記センサ状態情報として前記水面計測センサの設置位置を示す設置位置情報およびバッテリ残量を示すバッテリ残量情報と、前記水面計測センサの前記設置位置における降雨量の実績値および予測値と、をさらに取得し、
前記判定部は、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たさないもののうち、前記降雨量の実績値および予測値が決められた基準値以下であり、前記バッテリ残量情報が前記ソフトウェアの更新可能な値以上である前記水面計測センサを前記更新対象として決定することを特徴とする付記1に記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
[付記3]
前記水位変動影響情報は、降雨に関する注意情報が複数の段階で地域毎に示される情報である降雨注意情報と、地震の震度に関して地域毎に出される情報である地震情報と、監視対象の前記水域の前記水位を示す水位情報と、を含み、
前記判定部は、前記降雨注意情報が決められた段階にある場合、前記地震情報が決められた震度以上である場合、または前記水位情報が前記水位を複数に分類した段階のうち決められた段階にある場合に、前記水位計測条件を満たすと判定することを特徴とする付記1または2に記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
[付記4]
前記判定部で前記更新対象候補として抽出されなかった前記水面計測センサおよび判定の内容、並びに前記更新対象とされなかった前記水面計測センサおよび判定の内容と、前記更新部での前記水面計測センサでの前記ソフトウェアの更新結果と、を更新結果情報として記録する結果記録部と、
前記更新結果情報を用いて生成された結果通知情報を前記ソフトウェアの更新を指示した管理者が所持する管理者端末に通知する通知部と、
をさらに備えることを特徴とする付記1から3のいずれか1つに記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
[付記5]
前記取得部による前記センサ状態情報および前記水位変動影響情報の取得と、前記判定部による前記更新対象の決定と、前記更新部による前記ソフトウェアの更新と、が周期的に実行されることを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の水面計測センサのソフトウェア更新システム。
[付記6]
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサで実行されるソフトウェアの更新をソフトウェア更新システムが行う水面計測センサのソフトウェア更新方法であって、
前記水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得工程と、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定工程と、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新工程と、
を含み、
前記判定工程では、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新方法。
[付記7]
コンピュータに、
監視対象の水域に設けられ、前記水域の水位を計測する水面計測センサの稼働状況および前記水面計測センサを動作させるソフトウェアのバージョン情報を含むセンサ状態情報と、前記水位の変動に影響を与える情報である水位変動影響情報と、を取得する取得ステップと、
前記センサ状態情報から前記ソフトウェアの更新が可能な前記水面計測センサである更新対象候補を抽出し、前記更新対象候補について、前記水位変動影響情報に基づいて前記水面計測センサでの計測が中断してもよい前記水面計測センサである更新対象を決定する判定ステップと、
前記更新対象について前記ソフトウェアの更新を実行する更新ステップと、
を実行させ、
前記判定ステップでは、
前記水面計測センサの前記稼働状況および前記バージョン情報から前記更新対象候補を抽出し、
前記更新対象候補のうち前記水面計測センサの設置位置での前記水位変動影響情報が前記水面計測センサでの計測が必要とされる水位計測条件を満たすかを判定し、前記水位変動影響情報が前記水位計測条件を満たすものを前記更新対象から外すことを特徴とする水面計測センサのソフトウェア更新プログラム。
【符号の説明】
【0109】
1 水面監視システム、10 ブイ型水面センサ、11 フロート部、12 筐体部、13 測位信号受信部、14,45,71 通信部、15 太陽光パネル、16 バッテリ、17 処理部、20 ため池、21 水面、30a-30c 測位衛星、35 準天頂衛星、40 水面監視装置、41 水位算出部、42 水位情報記憶部、43 水位表示画面生成部、44 水位情報提供部、50 管理者端末、55 ユーザ端末、60 気象関係情報提供装置、70 ソフトウェア更新装置、72 データ記憶装置、73 制御装置、121 収納空間、731 取得部、732 判定部、733 更新部、734 結果記録部、735 通知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11