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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166798
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/14 20060101AFI20241122BHJP
   H01C 1/148 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01C1/14 Z
H01C1/148
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083144
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【テーマコード(参考)】
5E028
【Fターム(参考)】
5E028AA10
5E028BA04
5E028BB01
5E028CA02
5E028DA01
5E028JA12
5E028JC02
5E028JC03
5E028JC06
5E028JC07
(57)【要約】
【課題】耐硫化性を維持しつつTCR特性の悪化を防止することができるチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】チップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の裏面の長手方向両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3巻を導通する抵抗体5と、抵抗体5を覆うガラス層6と、ガラス層6上に積層された絶縁樹脂層(保護膜)7と、絶縁樹脂層7の両端部上に形成された導電性樹脂からなる中間導電層8と、表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9と、端面電極9を覆う一対の外部メッキ層10とを備えており、中間導電層8は表電極3と接触しておらず、端面電極9は、表電極3に重なる第1電極部9aと、中間導電層8に重なる第2電極部9bとを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、
前記絶縁基板の表面に所定間隔を存して形成された一対の表電極と、
一対の前記表電極間を導通するように前記絶縁基板の表面に形成された抵抗体と、
前記抵抗体を覆う樹脂材料からなる保護層と、
前記保護層の両端部に形成された導電性樹脂からなる中間導電層と、
前記絶縁基板の裏面に所定間隔を存して形成された一対の裏電極と、
前記絶縁基板の相対向する両端面に形成されて前記表電極と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、
一対の前記端面電極を覆う一対の外部メッキ層と、
を備え、
前記中間導電層は、前記保護層の両端部における前記表電極から離間した位置に形成されており、
前記端面電極は、前記表電極に重なる第1電極部と、前記中間導電層に重なる第2電極部と、を有している
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ抵抗器において、
前記端面電極の前記第2電極部は、前記中間導電層の内方側の端部を除く部位に接触しており、
前記外部メッキ層は、前記端面電極の前記第2電極部を超えて前記中間導電層の内方側の端部に接触している、
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項3】
請求項1に記載のチップ抵抗器において、
前記中間導電層における前記絶縁基板の表面からの最大高さは、前記保護層における前記絶縁基板の表面からの最大高さ以上である、
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項4】
請求項3に記載のチップ抵抗器において、
前記端面電極は、前記絶縁基板の端面に向けて金属粒子をスパッタして形成された金属薄膜からなり、
前記金属薄膜は、前記表電極から前記中間導電層の内方側の端部を除く部位に亘って連続的に形成されている、
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、これら対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う2層構造の保護膜(ガラス層と絶縁樹脂層)と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、対応する表電極と裏電極間を導通する一対の端面電極と、これら各電極を覆う一対の外部メッキ層等によって主に構成されている。
【0003】
この種のチップ抵抗器において、通常、表電極には比抵抗の低いAg(銀)系の金属材料が用いられており、この表電極を順次覆うように端面電極と外部メッキ層が形成された構成となっているが、外部メッキ層と保護膜の境界部分となる隙間から腐食性の強い硫化ガス等が侵入しやすいため、表電極と保護膜の境界位置における表電極部分が硫化ガス等によって腐食されて抵抗値変化や断線等の不具合を招来する虞がある。
【0004】
そこで、導電性樹脂からなる補助電極を絶縁樹脂層と表電極の双方に接続するように形成すると共に、端面電極を表電極と補助電極に重なるように形成し、かつ、外部メッキ層を補助電極と端面電極の境界位置を超えて絶縁樹脂層の端部まで覆うように形成することにより、耐硫化性の向上を図るようにしたチップ抵抗器が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示されたチップ抵抗器では、絶縁樹脂層の両端部に表電極と接続する補助電極が形成されており、この補助電極が樹脂に導電性粒子を含有した硫化しにくい材料で形成されているため、硫化ガスが表電極に到達するのを抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-123832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された従来技術のように、表電極に導通する補助電極を絶縁樹脂層の両端部に形成したチップ抵抗器においては、導電性樹脂からなる補助電極の比抵抗が表電極よりも高くなっている。そのため、低抵抗(例えば1Ω未満)のチップ抵抗器になるほど、チップ抵抗器の全体に占める電極部の抵抗値成分が大きくなり、TCR(抵抗温度係数)が増大してしまうという課題がある。また、チップ抵抗器が自動車のエンジン周辺等の高温環境下で使用された場合、補助電極が熱膨張率を異にする表電極と絶縁樹脂層に接触しているため、補助電極が熱応力によって下地から剥離してしまい、耐硫化性が低下してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、耐硫化性を維持しつつTCR特性の悪化を防止することができるチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明によるチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面に所定間隔を存して形成された一対の表電極と、一対の前記表電極間を導通するように前記絶縁基板の表面に形成された抵抗体と、前記抵抗体を覆う樹脂材料からなる保護層と、前記保護層の両端部に形成された導電性樹脂からなる中間導電層と、前記絶縁基板の裏面に所定間隔を存して形成された一対の裏電極と、前記絶縁基板の相対向する両端面に形成されて前記表電極と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、一対の前記端面電極を覆う一対の外部メッキ層と、を備え、前記中間導電層は、前記保護層の両端部における前記表電極から離間した位置に形成されており、前記端面電極は、前記表電極に重なる第1電極部と、前記中間導電層に重なる第2電極部と、を有していることを特徴としている。
【0010】
このように構成されたチップ抵抗器では、樹脂材料からなる保護層の両端部に導電性樹脂からなる中間導電層が形成されており、この中間導電層は表電極と接触していないため、中間導電層によって電極部の抵抗値成分が大きくなることはなく、TCRの増大を抑制することができる。また、中間導電層は樹脂に導電粒子を含有した材料からなるため、保護層に対する中間導電層の密着性を高めることができると共に、中間導電層に対する端面電極の密着性も高めることができる。
【0011】
上記構成において、端面電極の第2電極部が中間導電層の内方側の内方側の端部を除く部位に接触している。このように、端面電極が中間導電層の内方側に位置する保護層上に存在せず、外部メッキ層が端面電極の第2電極部を超えて中間導電層の内方側の端部に接触していると、端面電極が起点となって外部メッキ層が保護層から剥離してしまうことを抑制できて好ましい。
【0012】
また、上記構成において、中間導電層における絶縁基板の表面からの最大高さが、保護層における絶縁基板の表面からの最大高さ以上であると、端面電極が中間導電層の内方側へ回り込むことが抑制され、端面電極の第2電極部を中間導電層の内方側を除く部位に容易に形成することができる。
【0013】
この場合において、端面電極が絶縁基板の端面に向けて金属粒子をスパッタして形成された金属薄膜であると、金属薄膜を端面スパッタすることにより、表電極から中間導電層の内方側の端部を除く部位に亘って、第1電極部と第2電極部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチップ抵抗器によれば、耐硫化性を維持しつつTCR特性の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るチップ抵抗器の平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図5】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図6】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図7】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図8】該チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
図10】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図11】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図12】該チップ抵抗器の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態に係るチップ抵抗器の断面図、図2図1のII-II線に沿う断面図、図3図2のA部拡大図である。
【0018】
図1図3に示すように、第1実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の表面における長手方向の両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の裏面における長手方向の両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3に両端部を重ねるように設けられた平面視長方形状の抵抗体5と、表電極3と抵抗体5の接続部分を含めて抵抗体5の全体を覆うガラス層6と、ガラス層6上に積層された絶縁樹脂層(保護膜)7と、絶縁樹脂層7の両端部上に形成された中間導電層8と、絶縁基板2の両端面に延在して対応する表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9と、端面電極9を覆う一対の外部メッキ層10と、により主として構成されている。
【0019】
絶縁基板2はセラミックス等からなり、この絶縁基板2は、後述するシート状の大判基板を縦横に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割することにより多数個取りされたものである。なお、以下の説明では、絶縁基板2の長手方向(図1の左右方向)をX方向、絶縁基板2の短手方向(図1の上下方向)をY方向とする。
【0020】
一対の表電極3は、Pdを含有するAg-Pd系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。これら表電極3は、絶縁基板2の表面における長手方向の両端部に平面視矩形状に形成されている。ここで、表電極3のY方向に沿う両端は絶縁基板2の長辺に接しておらず、表電極3のY方向に沿う幅寸法は絶縁基板2の幅寸法よりも短くなっている。
【0021】
一対の裏電極4は、Ag系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。これら裏電極4は、絶縁基板2の裏面における長手方向の両端部に平面視矩形状に形成されており、裏電極4のY方向に沿う幅寸法も絶縁基板2の幅寸法よりも短くなっている。
【0022】
抵抗体5は、酸化ルテニウム等の抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたメタルグレーズ厚膜であり、この抵抗体5のX方向に沿う両端部は表電極3に重なっている。なお、抵抗体5には抵抗値を調整するためのトリミング溝5aが形成されている。
【0023】
ガラス層6は、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。ガラス層6は、トリミング溝5aを形成する前に抵抗体5の全体を覆うように形成されている。
【0024】
絶縁樹脂層7は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。絶縁樹脂層7は、トリミング溝5aを形成した後のガラス層6の全体を覆うように形成されており、絶縁樹脂層7のY方向に沿う両端は絶縁基板2の長辺に接している。
【0025】
中間導電層8は、AgやNi、Cu、カーボン等の導電性粒子を添加したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、絶縁樹脂層7の表面における表面における両端部の湾曲状部分に表電極3と接触しないように形成されている。なお、中間導電層8と絶縁樹脂層7の樹脂材料は別々のものであっても良いが、中間導電層8と絶縁樹脂層7が同系の樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0026】
ここで、図3に示すように、中間導電層8における絶縁基板2の表面からの最大高さをH1、絶縁樹脂層7における絶縁基板2の表面からの最大高さをH2とすると、本実施形態では、中間導電層8の最大高さH1は絶縁樹脂層7の最大高さH2以上の高さになるように設定されている(H1≧H2)。
【0027】
端面電極9は、絶縁基板2の端面に向けてNi-Cr等の金属粒子をスパッタして形成されたスパッタ膜(金属薄膜)であり、この端面電極9によって絶縁基板2の端面を介して上下に離間する表電極3と裏電極4とが導通されている。端面電極9は絶縁基板2の表面において、表電極3に重なる第1電極部9aと、第1電極部9aから連続して中間導電層8に重なる第2電極部9bとを有しており、第2電極部9bによって中間導電層8の最大高さよりも外方側の部位(図3において、表電極3の絶縁樹脂層7に覆われていないところに近い側の部位)が覆われている。なお、中間導電層8の下端(図3において、表電極3に接する絶縁樹脂層7の端部に近い側の中間導電層8の端部)と表電極3との間から露出する絶縁樹脂層7の外側端部も第2電極部9bによって覆われているが、中間導電層の頂部よりも内方側の端部は第2電極部9bに覆われていない。
【0028】
外部メッキ層10は、内側のバリヤー層11と外側の外部接続層12との2層構造からなる。バリヤー層11は電解めっきによって形成されたNiメッキ層であり、このバリヤー層11は、第1電極部9aと第2電極部9bを含む端面電極9の表面全体を覆っており、かつ、第2電極部9bを超えて中間導電層8の内方側端部と絶縁樹脂層7の境界部分を覆っている。また、外部接続層12は電解めっきによって形成されたSnメッキ層であり、この外部接続層12はバリヤー層11の表面全体を覆っている。
【0029】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、図4図8を参照しながら説明する。なお、図4図5はチップ抵抗器1の製造工程を示す平面図、図6図7はチップ抵抗器1の製造工程を示す断面図、図8はチップ抵抗器1の製造工程を示すフローチャートである。
【0030】
まず、図8のステップS1に示すように、絶縁基板2が多数個取りされるシート状の大判基板2Aを準備する。この大判基板2Aには格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝が形成されており、これら両分割溝で区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となる。なお、図4図7には1つのチップ形成領域が代表的に示されているが、実際には、このようなチップ形成領域が格子状に多数配列されている。
【0031】
そして、大判基板2Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する(図8のステップS2)。しかる後、大判基板2Aの表面にAg-Pd系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図4(a)と図6(a)に示すように、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する(図8のステップS3)。なお、表電極3と裏電極4の形成順序は上記と逆でも良く、表電極3と裏電極4を同時に形成するようにしても良い。
【0032】
次に、大判基板2Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図4(b)と図6(b)に示すように、両端部を表電極3に重ね合わせた長方形状の抵抗体5を形成する(図8のステップS4)。
【0033】
次に、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから600℃で焼成することにより、図4(c)と図6(c)に示すように、表電極3との接続端部を含めて抵抗体5の全体を被覆するガラス層6を形成する(図8のステップS5)。そして、このガラス層6の上からレーザー光を照射することにより、抵抗体5にトリミング溝5aを形成して抵抗値を調整する。
【0034】
次に、ガラス層6の上からエポキシ樹脂系(またはフェノール樹脂系)ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化(焼付け)することにより、図4(d)と図6(d)に示すように、ガラス層6の全体を覆う絶縁樹脂層7を形成する(図8のステップS6)。
【0035】
次に、絶縁樹脂層7の上から導電性粒子(Ag系、Cu系、Ni系、カーボン等)を添加したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化することにより、図5(e)と図7(e)に示すように、絶縁樹脂層7の両端部分に中間導電層8を形成する(図8のステップS7)。これら中間導電層8は、表電極3と接触しないように形成されており、絶縁樹脂層7のX方向に沿う両端は中間導電層8に覆われていない露出部となっている。また、大判基板2Aの表面から中間導電層8の頂部に至る最大高さは、大判基板2Aの表面から絶縁樹脂層7の頂部に至る最大高さ以上となるように形成される。
【0036】
これまでの工程は大判基板2Aに対する一括処理であるが、次なる工程では、図8のステップS8に示すように、大判基板2Aを一次分割溝に沿って1次ブレイク(一次分割)して短冊状基板2Bを得る。
【0037】
しかる後、複数の短冊状基板2Bを上下方向に積み重ね、この状態で各短冊状基板2Bの分割面に向けてNi-Crをスパッタすることにより、図5(f)と図7(f)に示すように、表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9を形成する(図8のステップS9)。この端面電極9によって短冊状基板2Bの端面と、表電極3の上面から中間導電層8に至る部分と、裏電極4の下面とが連続的に覆われた状態となり、端面電極9に、表電極3に重なる第1電極部9aと、第1電極部9aから連続して中間導電層8に重なる第2電極部9bとが形成される。
【0038】
この場合において、絶縁樹脂層7の両端部側に形成された一対の中間導電層8の最大高さが絶縁樹脂層7の最大高さ以上となっているため、これら一対の中間導電層8の頂部が上段に重なる短冊状基板2Bの下面に当接した状態でスパッタされる。その結果、端面電極9は中間導電層8の内方側まで回り込まず、中間導電層8の外方側の部位と絶縁樹脂層7の露出部を覆うように第2電極部9bが形成される。
【0039】
次に、図8のステップS10に示すように、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って2次ブレイク(二次分割)して、チップ抵抗器1と同等の大きさのチップ単体2Cを得る。
【0040】
しかる後、個片化されたチップ単体2Cに対して電解Niめっきを施すことにより、第1電極部9aと第2電極部9bを含む端面電極9の表面全体を被覆するバリヤー層11を形成する。このバリヤー層11は、第2電極部9bを超えて中間導電層8の内方側端部と絶縁樹脂層7の境界部分を覆う位置まで形成される。次いで、チップ単体2Cに対して電解Snめっきを施すことにより、バリヤー層11の全体を被覆する外部接続層12を形成する。これにより、図5(g)と図7(g)に示すように、バリヤー層11と外部接続層12からなる2層構造の外部メッキ層10が形成され(図8のステップS12)、図1図2に示すチップ抵抗器1が完成する。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態に係るチップ抵抗器1は、導電性樹脂からなる中間導電層8が絶縁樹脂層(保護膜)7の両端部に形成されており、この中間導電層8は表電極3と接触していないため、中間導電層8によってチップ抵抗器1に占める電極部の抵抗値成分が大きくなることはなく、TCRの増大を抑制することができる。また、中間導電層8の絶縁樹脂層7に対する密着性が高く、端面電極9の中間導電層8に対する密着性も高いため、高温環境下においても中間導電層8の剥離を防止することができる。したがって、外部メッキ層10と絶縁樹脂層7の境界部分から硫化ガスが侵入しようとしても、硫化ガスは中間導電層8に遮られて表電極3まで到達しなくなり、耐硫化性を維持することができる。
【0042】
しかも、外部メッキ層10が端面電極9の第2電極部9bを超えて中間導電層8の内方側の端部まで延びているため、絶縁樹脂層7との密着性に劣る端面電極9が絶縁樹脂層7上に存在しなくなり、外部メッキ層10が端面電極9を起点として絶縁樹脂層7から剥離してしまうことを防止できる。
【0043】
また、第1実施形態に係るチップ抵抗器1は、中間導電層8における絶縁基板2の表面からの最大高さH1が、絶縁樹脂層7における絶縁基板2の表面からの最大高さH2以上に設定されているため、端面電極9の第2電極部9bを中間導電層8の頂部より外方側の部位に容易に形成することができる。
【0044】
その際に、複数の短冊状基板2Bを上下方向に積み重ねた状態で、各短冊状基板2Bの端面に向けてNi-Cr等の金属粒子をスパッタして端面電極9を形成するため、端面電極9が中間導電層8の頂部を超えて内方側まで回り込んでしまうことはなく、中間導電層8の外方側の部位を覆うように端面電極9の第2電極部9bを形成することができる。
【0045】
図9は本発明の第2実施形態に係るチップ抵抗器20の断面図であり、図1図2に対応する部分には同一符号を付すことで重複する説明を省略する。
【0046】
第2実施形態に係るチップ抵抗器20が第1実施形態に係るチップ抵抗器1と相違する点は、中間導電層8における絶縁基板2の表面からの最大高さH1が、絶縁樹脂層7における絶縁基板2の表面からの最大高さH2よりも低いこと(H1<H2)にあり、それ以外の構成は基本的に同じである。すなわち、中間導電層8は、絶縁樹脂層7の両端部の湾曲状部分に表電極3と接触しないように形成されているが、中間導電層8の頂部は絶縁樹脂層7の頂部を超えていない。また、端面電極9の第2電極部9bは中間導電層8の頂部よりも外方側の部位を覆っており、外部メッキ層10は中間導電層8の頂部を超えて絶縁樹脂層7の上面まで延びている。
【0047】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器20の製造方法について、図10図12を参照しながら説明する。なお、図10図11はチップ抵抗器20の製造工程を示す断面図、図12はチップ抵抗器20の製造工程を示すフローチャートである。
【0048】
まず、図12のステップS1に示すように、絶縁基板2が多数個取りされるシート状の大判基板20Aを準備する。この大判基板20Aには格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝が形成されており、これら両分割溝で区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となる。
【0049】
そして、大判基板20Aの裏面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する(図12のステップS2)。しかる後、大判基板20Aの表面にAg-Pd系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図10(a)に示すように、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する(図12のステップS3)。なお、表電極3と裏電極4の形成順序は上記と逆でも良く、表電極3と裏電極4を同時に形成するようにしても良い。
【0050】
次に、大判基板20Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから850℃で焼成することにより、図10(b)に示すように、両端部を表電極3に重ね合わせた平面視長方形状の抵抗体5を形成する(図12のステップS4)。
【0051】
次に、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥してから600℃で焼成することにより、図10(c)に示すように、表電極3との接続端部を含めて抵抗体5の全体を被覆するガラス層6を形成する(図12のステップS5)。そして、このガラス層6の上からレーザー光を照射することにより、抵抗体5にトリミング溝5aを形成して抵抗値を調整する。
【0052】
次に、ガラス層6の上からエポキシ樹脂系(またはフェノール樹脂系)ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化(焼付け)することにより、図10(d)に示すように、ガラス層6の全体を覆う絶縁樹脂層7を形成する(図12のステップS6)。
【0053】
次に、絶縁樹脂層7の上から導電性粒子(Ag系、Cu系、Ni系、カーボン等)を添加したエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の樹脂ペーストをスクリーン印刷した後、これを200℃で加熱硬化することにより、図11(e)に示すように、絶縁樹脂層7の両端部分に中間導電層8を形成する(図12のステップS7)。この中間導電層8は、表電極3と接触しないように形成されており、絶縁樹脂層7の両端は中間導電層8に覆われていない露出部となっている。ただし、大判基板20Aの表面から中間導電層8の頂部に至る最大高さは、大判基板20Aの表面から絶縁樹脂層7の頂部に至る最大高さよりも低くなっている。
【0054】
次に、絶縁樹脂層7の上からエポキシ樹脂系やフェノール樹脂系等からなる可溶性のマスキングをスクリーン印刷した後、これを100~150℃で加熱硬化することにより、図11(f)に示すように、絶縁樹脂層7上にマスキング樹脂層21を形成する(図12のステップS8)。このマスキング樹脂層21により、一対の中間導電層8間に位置する絶縁樹脂層7の上面と、一対の中間導電層8の頂部よりも内方側の部位がそれぞれ覆われる。
【0055】
次に、マスキング樹脂層21の上方から大判基板20Aの表面に向けてNi-Crを面スパッタすることにより、表電極3と中間導電層8および絶縁樹脂層7を覆うスパッタ膜を形成する(図12のステップS9)。
【0056】
これまでの工程は大判基板20Aに対する一括処理であるが、次なる工程では、図12のステップS10に示すように、大判基板20Aを一次分割溝に沿って1次ブレイク(一次分割)して短冊状基板20Bを得る。
【0057】
しかる後、複数の短冊状基板20Bを上下方向に積み重ね、この状態で各短冊状基板2Bの分割面に向けてNi-Crをスパッタすることにより、このスパッタ膜を図12のステップS9で形成されたスパッタ膜に重ねる。これにより、図11(g)に示すように、表電極3と裏電極4とを導通する一対の端面電極9が形成される(図12のステップS11)。
【0058】
次に、図12のステップS12に示すように、短冊状基板20Bを二次分割溝に沿って2次ブレイク(二次分割)して、チップ抵抗器20と同等の大きさのチップ単体20Cを得る。
【0059】
次に、チップ単体20Cを絶縁樹脂層7が溶解せず、マスキング樹脂層21だけが溶解する溶液に浸漬することにより、マスキング樹脂層21を除去する(図12のステップS13)。これにより、一対の中間導電層8の頂部よりも内方側の部位と、一対の中間導電層8間に位置する絶縁樹脂層7の上面がそれぞれ露出する。
【0060】
しかる後、個片化されたチップ単体20Cに対して電解Niめっきを施すことにより、端面電極9の表面全体を被覆するバリヤー層11を形成する。このバリヤー層11は、端面電極9を超えて中間導電層8の内方側端部と絶縁樹脂層7の境界部分を覆う位置まで形成される。次いで、チップ単体20Cに対して電解Snめっきを施すことにより、バリヤー層11の全体を被覆する外部接続層12を形成する。これにより、図11(h)に示すように、バリヤー層11と外部接続層12からなる2層構造の外部メッキ層10が形成され(図12のステップS13)、図9に示すチップ抵抗器20が完成する。
【0061】
このように構成された第2実施形態に係るチップ抵抗器20においても、絶縁樹脂層7の頂部に対する中間導電層8の頂部の高さが異なるだけで、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1,20 チップ抵抗器
2 絶縁基板
2A,20A 大判基板
2B,20B 短冊状基板
2C,20C チップ単体
3 表電極
4 裏電極
5 抵抗体
5a トリミング溝
6 ガラス層
7 絶縁樹脂層(保護膜)
8 中間導電層
9 端面電極
9a 第1電極部
9b 第2電極部9b
10 外部メッキ層
11 バリヤー層
12 外部接続層
21 マスキング樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12