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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001668
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20231227BHJP
   E01B 35/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01B11/00 H
E01B35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100484
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】592105620
【氏名又は名称】ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593122321
【氏名又は名称】綜合計測株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515237795
【氏名又は名称】アキュイティー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】辻家 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】津野 義博
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 義晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 大
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 順也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 眞平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遼雅
【テーマコード(参考)】
2D057
2F065
【Fターム(参考)】
2D057AB01
2F065AA01
2F065AA06
2F065AA17
2F065AA51
2F065BB02
2F065BB11
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ06
2F065QQ25
2F065RR06
2F065SS09
(57)【要約】
【課題】計測対象物の位置精度よく計測できる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置2は、画像取得部242と、画像取得部242が取得した撮像画像5におけるターゲットTの位置を特定するターゲット位置特定部243と、予め決定されたターゲットの基準位置とターゲット位置特定部243が特定した位置との関係を示す変位情報を出力する出力部244と、を備え、ターゲットTは、互いに隣接する2つの領域によって第1方向に延びる第1境界線51が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの領域によって第1方向に交差する第2方向に延びる第2境界線52が形成されるパターンを有し、ターゲット位置特定部243は、撮像画像内のターゲットにおける第1境界線と第2境界線との交点を、撮像画像におけるターゲットの位置として特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に取り付けられたターゲットを撮像装置が撮影することにより生成した撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記撮像画像における前記ターゲットの位置を特定するターゲット位置特定部と、
予め決定された前記ターゲットの基準位置と、前記ターゲット位置特定部が特定した位置との関係を示す変位情報を出力する出力部と、
を備え、
前記ターゲットは、複数の領域を含むパターンであって、互いに隣接する2つの前記領域によって第1方向に延びる第1境界線が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの前記領域によって前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2境界線が形成されるパターンを有し、
前記ターゲット位置特定部は、前記撮像画像内の前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を、前記撮像画像における前記ターゲットの位置として特定する、
計測装置。
【請求項2】
前記ターゲット位置特定部は、
前記第1境界線上の2つの点を結ぶ第1直線を特定し、
前記第2境界線上の他の2つの点を結ぶ第2直線を特定し、
前記第1直線と前記第2直線との交点を前記ターゲットの前記位置として特定する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合に、アラートを出力する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記撮像画像に複数の前記ターゲットの画像が含まれており、
前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合に、前記アラートとともに、複数の前記ターゲットのうち前記交点が特定されなかった前記ターゲットを示す情報を含む前記撮像画像を出力する、
請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記第1境界線上の前記2つの点の間の距離、及び、前記第2境界線上の前記他の2つの点の間の距離の少なくとも一方が、検出精度に関する閾値として設定された所定の閾値未満である場合に、アラートを出力する、
請求項2に記載の計測装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が特定した所定の前記ターゲットの位置と、前記所定のターゲットに隣接する他の前記ターゲットの位置との間の距離が、ターゲット位置の異常に関する閾値として設定された所定の閾値以上の場合に、アラートを出力する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項7】
前記ターゲット位置特定部は、前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合、前記交点が特定されなかった前記ターゲットの輪郭形状を抽出し、抽出した前記輪郭形状の重心位置を前記ターゲットの位置として特定する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項8】
第1方向又は第2方向と異なる方向の輪郭線を検出することにより、前記ターゲットに付着した付着物の存在、又は、前記ターゲットの前面に位置する障害物の存在を特定するターゲット状態特定部をさらに備え、
前記出力部は、前記付着物又は前記障害物が存在すると特定された場合に、アラートを出力する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項9】
前記ターゲット位置特定部は、
前記計測対象物に取り付けられた前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定することによって前記ターゲットの位置を特定する第1動作モードと、
前記計測対象物に取り付けられた標識を前記撮像装置が撮影することにより生成された撮像画像内における、前記標識の輪郭形状を抽出し、抽出した前記輪郭形状の重心位置を前記標識の位置として特定する第2動作モードとを実行可能であり、
作業者から受け付けた選択に応じて、第1動作モードと第2動作モードとのいずれかを実行する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項10】
前記基準位置を含み、かつ前記ターゲットの領域よりも大きな検出対象領域の設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、
前記ターゲット位置特定部は、前記検出対象領域において前記第1境界線及び前記第2境界線を探索する、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項11】
計測対象物に取り付けられたターゲットを撮像装置が撮影することにより生成した撮像画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップで取得した前記撮像画像における前記ターゲットの位置を特定するターゲット位置特定ステップと、
予め決定された前記ターゲットの基準位置と、前記ターゲット位置特定ステップで特定された位置との関係を示す変位情報を出力する出力ステップと、
を有し、各ステップはコンピュータが実行する計測方法であって、
前記ターゲットは、複数の領域を含むパターンであって、互いに隣接する2つの前記領域によって第1方向に延びる第1境界線が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの前記領域によって前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2境界線が形成されるパターンを有し、
前記ターゲット位置特定ステップでは、前記撮像画像内の前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を、前記撮像画像における前記ターゲットの位置として特定する、
計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば既設の線路の付近で工事を行う場合に、その工事期間中、線路の軌道狂いを計測することが行われている。特許文献1には、レールに予め複数のターゲットを取り付け、カメラでそれらのターゲットの経時的な位置の変化を計測することが開示されている。特許文献1では、ターゲットとして円形パターンが用いられ、円形パターンの重心位置を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3597832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術でも、線路の軌道狂いを実用上十分な精度計測することが可能であるが、ターゲットに付着物が付着した場合や、ターゲットの一部が植物等の障害物によって隠れた場合に、計測対象物の位置精度が低下することがあり、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、計測対象物を位置精度よく計測できる計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態の計測装置は、計測対象物に取り付けられたターゲットを撮像装置が撮影することにより生成した撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した前記撮像画像における前記ターゲットの位置を特定するターゲット位置特定部と、予め決定された前記ターゲットの基準位置と、前記ターゲット位置特定部が特定した位置との関係を示す変位情報を出力する出力部と、を備え、前記ターゲットは、複数の領域を含むパターンであって、互いに隣接する2つの前記領域によって第1方向に延びる第1境界線が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの前記領域によって前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2境界線が形成されるパターンを有し、前記ターゲット位置特定部は、前記撮像画像内の前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を、前記撮像画像における前記ターゲットの位置として特定する。
【0007】
前記ターゲット位置特定部は、前記第1境界線上の2つの点を結ぶ第1直線を特定し、前記第2境界線上の他の2つの点を結ぶ第2直線を特定し、前記第1直線と前記第2直線との交点を前記ターゲットの前記位置として特定してもよい。
【0008】
前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合に、アラートを出力してもよい。
【0009】
前記撮像画像に複数の前記ターゲットの画像が含まれており、前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合に、前記アラートとともに、複数の前記ターゲットのうち前記交点が特定されなかった前記ターゲットを示す情報を含む前記撮像画像を出力してもよい。
【0010】
前記出力部は、前記第1境界線上の前記2つの点の間の距離、及び、前記第2境界線上の前記他の2つの点の間の距離の少なくとも一方が、検出精度に関する閾値として設定された所定の閾値未満である場合に、アラートを出力してもよい。
【0011】
前記出力部は、前記ターゲット位置特定部が特定した所定の前記ターゲットの位置と、前記所定のターゲットに隣接する他の前記ターゲットの位置との間の距離が、ターゲット位置の異常に関する閾値として設定された所定の閾値以上の場合に、アラートを出力してもよい。
【0012】
前記ターゲット位置特定部は、前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定できない場合、前記交点が特定されなかった前記ターゲットの輪郭形状を抽出し、抽出した前記輪郭形状の重心位置を前記ターゲットの位置として特定してもよい。
【0013】
第1方向又は第2方向と異なる方向の輪郭線を検出することにより、前記ターゲットに付着した付着物の存在、又は、前記ターゲットの前面に位置する障害物の存在を特定するターゲット状態特定部をさらに備え、前記出力部は、前記付着物又は前記障害物が存在すると特定された場合に、アラートを出力してもよい。
【0014】
前記ターゲット位置特定部は、前記計測対象物に取り付けられた前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を特定することによって前記ターゲットの位置を特定する第1動作モードと、前記計測対象物に取り付けられた標識を前記撮像装置が撮影することにより生成された撮像画像内における、前記標識の輪郭形状を抽出し、抽出した前記輪郭形状の重心位置を前記標識の位置として特定する第2動作モードとを実行可能であり、作業者から受け付けた選択に応じて、第1動作モードと第2動作モードとのいずれかを実行してもよい。
【0015】
前記基準位置を含み、かつ前記ターゲットの領域よりも大きな検出対象領域の設定を受け付ける設定受付部をさらに有し、前記ターゲット位置特定部は、前記検出対象領域において前記第1境界線及び前記第2境界線を探索してもよい。
【0016】
本発明の一形態の計測方法は、計測対象物に取り付けられたターゲットを撮像装置が撮影することにより生成した撮像画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップで取得した前記撮像画像における前記ターゲットの位置を特定するターゲット位置特定ステップと、予め決定された前記ターゲットの基準位置と、前記ターゲット位置特定ステップで特定された位置との関係を示す変位情報を出力する出力ステップと、を有し、各ステップはコンピュータが実行する計測方法であって、前記ターゲットは、複数の領域を含むパターンであって、互いに隣接する2つの前記領域によって第1方向に延びる第1境界線が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの前記領域によって前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2境界線が形成されるパターンを有し、前記ターゲット位置特定ステップでは、前記撮像画像内の前記ターゲットにおける前記第1境界線と前記第2境界線との交点を、前記撮像画像における前記ターゲットの位置として特定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、計測対象物を位置精度よく計測できる計測装置及び計測方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の計測システムの構成を示す図である。
図2】レールに取り付けられたターゲットを示す図である。
図3】ターゲットの拡大図である。
図4】計測システムの構成を示すブロック図である。
図5】撮像画像に設定された検出対象領域を説明するための図である。
図6】ターゲットの位置を特定する処理を説明するための図である。
図7】付着物が付着した状態のターゲットの位置を特定する手法を説明するための図である。
図8】ターゲットの輪郭形状に基づきターゲットの位置を特定する手法を説明するための図である。
図9】線路の変位情報の一例を示す図である。
図10】計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図11】ターゲットの基準位置を精度良く検出できない例を示す図である。
図12】ターゲットがレールから外れている可能性がある場合の変位情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の一実施形態の計測システムS100の構成を示す図である。図2は、レールRに取り付けられたターゲットTを示す図である。図3は、ターゲットTの拡大図である。
【0020】
[計測システムS100の概要]
本実施形態の計測システムS100は、図1に示すように、主として、カメラ1と、計測装置2と、ターゲットTとを備えている。計測システムS100は、計測対象物であるレールRに取り付けられた複数のターゲットTの位置を特定することで、線路の軌道狂いを計測するシステムである。以下では、計測対象物として線路を例示するが、計測システムS100は例えば高架橋やトンネルなどの他の構造物の計測にも利用可能である。
【0021】
本実施形態では、レールRに取り付けられたターゲットTが図3に示すように十字パターンを有しており、計測装置2は、ターゲットTの十字パターンの第1境界線51と第2境界線52との交点を検出し、その交点をターゲットTの位置として特定する。計測装置2は、複数のターゲットTの位置を継続的に検出することによって、線路の軌道狂いを計測する。
【0022】
従来技術のように円形パターンを有するターゲットを用いるシステムでは、ターゲットに汚れなどの付着物が付着した場合や、ターゲットの一部が植物などの障害物によって隠れた場合に、ターゲットTの正確な位置を特定できず、その結果、計測される線路の軌道狂いの精度が低下することがあった。
【0023】
本実施形態の構成によれば、第1境界線51及び第2境界線52の少なくとも一部の領域が視認可能な状態であれば、計測システムS100が第1境界線51と第2境界線52との交点を特定することができる。したがって、計測システムS100は、付着物や障害物によってターゲットTの一部が隠れたとしても、ターゲットTの位置を良好に特定でき、線路の軌道狂いを精度よく計測することが可能となる。
【0024】
[計測システムS100の各部の説明]
(カメラ1)
カメラ1は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有する撮像装置である。カメラ1は、例えば支柱11によって支持され、線路よりも高い位置に設置されている。カメラ1は、一例として計測装置2からの制御信号により、撮影時刻、撮影枚数及びシャッタースピード等が制御される。カメラ1は、レールRに取り付けられた複数のターゲットTを同時に撮影し、生成した撮像画像を計測装置2へ送信する。
【0025】
支柱11は、例えば、工事が行われる範囲の外側の場所に設置される。支柱11には、一例として、複数のターゲットTを照らすための照明器具12が取り付けられている。
【0026】
(ターゲットT)
ターゲットTは、図2及び図3に示すように、一例として円形の輪郭形状に形成され、十字パターンを有している。具体的には、ターゲットTは、第1境界線51及び第2境界線52によって分割された、複数の領域Ta、領域Tb、領域Tc及び領域Tdを含む。この例では、第1境界線51は第1方向である鉛直方向に延在し、第2境界線52は第2方向である水平方向に延在している。第1境界線51及び第2境界線52は、例えば、ターゲットTの円の中心で交差している。領域Ta及び領域Tcは第1色であり、領域Tb及び領域Tdは第2色に色付けされている。第1色及び第2色の色は任意であるが、例えば、第1色は黒色であり、第2色は黄色である。
【0027】
このように、本実施形態のターゲットTでは、互いに隣接する2つの領域によって第1境界線51が形成されるとともに、互いに隣接する他の2つの領域によって延びる第2境界線52が形成されている。ターゲットTは、図3のようなパターンに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。第1境界線51と第2境界線52とは必ずしも直交している必要はない。ターゲットTの輪郭形状は円形に限定されず、四角形、多角形、楕円形状などの他の形状であってもよい。
【0028】
ターゲットTは、図2に示すように、取付プレート55の表面に形成されている。取付プレート55は、例えば平板状の部材又は断面がL字形状の部材であり、ターゲットTがカメラ1側を向くように、レールRの腹部の側面に固定される。取付プレート55は、計測装置2がターゲットTの輪郭形状を特定できるように、例えば、第1色及び第2色とは異なる第3色であってもよい。
【0029】
ターゲットTは、図1に示すように、レールRに沿って所定のピッチで互いに間隔を空けて配置されている。「所定のピッチ」は、ターゲットTが取り付けられる計測対象物の種別や工事内容に応じて適宜設定されるが、一例として、1mから10mの範囲内である。レールRに取り付けられるターゲットTの数は任意であるが、本実施形態では、各レールRに4つのターゲットT(ターゲットT1、T2、T3、T4)が固定されている。
【0030】
ターゲットTは、一例として、各レールRの同じ側(図中の下方)に配置されている。本発明はこれに限らず、一方のレールRに対して第1側にターゲットTが配置され、他方のレールRに対して第1側とは反対の第2側にターゲットTが配置されてもよい。
【0031】
ターゲットTの材質は、例えば、ターゲットTに対して入射する照明器具12からの光を、入射方向と同じ方向に反射させる再規性反射材であってもよい。線路上を列車が特定の向きに走行する場合、ターゲットTは、列車が走行する向きとは反対側の向き(すなわち、ターゲットTが列車に対向しないような向き)に配置されることが一形態において好ましい。このような構成によれば、ターゲットTに汚れなどが付着し難く、計測装置2は長期に亘ってターゲットTの位置を良好に特定できる。
【0032】
〔計測装置2〕
図4は、計測システムS100の構成を示すブロック図である。計測装置2は、例えば、コンピュータプログラムがインストールされたコンピュータである。計測装置2は、一例として、入力部21、表示部22、記憶部23、及び制御部24を有する。
【0033】
入力部21は、作業者からの入力を受け付けるためのデバイスである。入力部21は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の任意のデバイスである。表示部22は、各種の情報を表示する1つ又は複数のディスプレイである。入力部21及び表示部22が、タッチパネル式ディスプレイとして構成されていてもよい。
【0034】
記憶部23は、各種のデータを記憶する記憶媒体であり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びハードディスク等を有する。記憶部23は、制御部24が実行するコンピュータプログラムを記憶する。
【0035】
記憶部23は、例えば作業者が測量を行って取得したカメラ1と各ターゲットTとの位置関係を記憶する。測量は、例えば、カメラ1から各ターゲットTまでの距離及び角度を測定するトータルステーションを用いて行われる。記憶部23は、また、後述する制御部24の各部が演算を行った各種の結果を記憶する。
【0036】
(制御部24の各機能部)
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)を有する。制御部24は、例えば、記憶部23が記憶するコンピュータプログラムを実行することにより、図4に示すように、設定受付部241、画像取得部242、ターゲット位置特定部243、出力部244、及びターゲット状態特定部245として機能する。
【0037】
設定受付部241は、計測装置2が撮像画像のどの領域を解析してターゲットTの位置を特定するかを設定するための機能部である。図5は、撮像画像5に設定された検出対象領域Aを説明するための図である。図5に示すように、カメラ1が生成した撮像画像5には、線路の画像と、複数のターゲットTの画像とが含まれている。計測装置2は、撮像画像5を解析して各ターゲットTの位置を検出するが、計測装置2が、仮に、撮像画像5の全範囲に亘って各ターゲットTの位置を探索する場合、計算量が増大する。
【0038】
そこで、本実施形態では、設定受付部241が、作業者による各ターゲットTに対応する検出対象領域A(A1~A4)の設定を受け付ける。設定受付部241は、具体的には、作業者による、ターゲットTの基準位置(ここでは中心位置)を含み、かつターゲットTの領域よりも大きな検出対象領域Aの設定を受け付ける。検出対象領域Aは、一例として四角形である。設定受付部241は、例えば各ターゲットT1に対応して検出対象領域A1の設定を受け付ける。同様の処理が、ターゲットT2~T4についても行われ、検出対象領域A2~A4が設定される。図5の例では、カメラ1に近い側の検出対象領域A1ほどカメラ1から遠い側のものよりも大きいサイズに設定されている。設定された各ターゲットTについての検出対象領域Aは、記憶部23に記憶される。
【0039】
画像取得部242は、計測対象物であるレールRに取り付けられたターゲットTをカメラ1が撮影することにより生成した撮像画像5を取得する。
【0040】
図6は、ターゲットTの位置を特定する処理を説明するための図である。ターゲット位置特定部243は、撮像画像5における各ターゲットTの位置を特定する。具体的には、ターゲット位置特定部243は、撮像画像5に対して設定された検出対象領域A(図5参照)において第1境界線51と第2境界線52とを探索し、それらの交点の座標を、ターゲットTの位置として特定する。
【0041】
より具体的には、ターゲット位置特定部243は、第1境界線51上で2つの点P1を検出し、それらの点P1どうしを結ぶ第1直線L1を特定する。同様に、ターゲット位置特定部243は、第2境界線52上で2つの点P2を検出し、それらの2点P2どうしを結ぶ第2直線L2を特定する。そして、ターゲット位置特定部243は、第1直線L1と第2直線L2との交点O1の座標を第1境界線51と第2境界線52の交点として特定し、ターゲットTの位置を求める。
【0042】
ターゲット位置特定部243は、それぞれの検出対象領域Aにおいて、このように第1境界線51及び前記第2境界線52を探索し、各ターゲットTの位置を特定する。記憶部23は、ターゲット位置特定部243が特定した各ターゲットTの位置を、計測時刻に対応付けて記憶する。
【0043】
なお、ターゲット位置特定部243は、カメラ1が所定の時間間隔で複数回撮影を行って生成した複数の撮像画像に基づいて特定したターゲットTの複数の位置を平均化したデータをターゲットTの位置として決定してもよい。
【0044】
図7は、付着物56が付着した状態のターゲットTの位置を特定する手法を説明するための図である。図8は、ターゲットの輪郭形状に基づきターゲットの位置を特定する手法を説明するための図である。図8のターゲットは、十字パターンを有しない円形のパターンである。
【0045】
図7及び図8に示すように、ターゲットには付着物56が付着することがある。付着物56は、一例として、泥や鉄粉などの汚れである。又は、雪などが付着物56としてターゲットに付着することもある。
【0046】
図8のターゲットの場合、ターゲットの位置を特定するために、計測装置は、まずターゲットの輪郭形状を求め、その輪郭形状の重心位置を特定する。この手法では、計測装置は、ターゲットの輪郭に沿って複数の特徴点pを検出し、複数の特徴点pが形成する形状の重心の座標を特定する。しかしながら、この手法の場合、図8のような形状の付着物56が存在していると、ターゲットTの輪郭形状を正しく求めることができない。そのため、特定される重心位置o1が本来のターゲット中心oからずれた位置となり、その結果、計測されるレールRの位置精度が低下する。
【0047】
一方、本実施形態の十字パターンのターゲットTの場合、図7に示すように、十字パターンの境界線上の4点を検出できれば、第1直線L1及び第2直線L2の交点O1を求めることができ、ターゲットTの位置を特定することができる。
【0048】
図9は、レールRの変位情報60の一例を示す図である。出力部244は、ターゲット位置特定部243が特定したターゲットTの位置に関する変位情報60を出力する。出力部244は、具体例として、各ターゲットTの初期位置の座標と、ターゲット位置特定部243が特定した各ターゲットTの位置の座標との差分を求め、その差分に、カメラ1と各ターゲットTの位置関係に応じた所定の係数を乗じることで求められた相対位置を出力する。
【0049】
図9の変位情報60は、初期設定として予め決定されたターゲットTの基準位置(初期位置)と、ターゲット位置特定部243が撮像画像5に基づいて特定した各ターゲットTの位置との関係を示す情報である。変位情報60において、横軸はターゲットT1~T4の位置を示し、縦軸は各ターゲットTの変位を示している。変位情報60では、具体的には、各ターゲットTの初期位置「0」に対する各ターゲットTの相対変位が示されている。
【0050】
線路の軌道狂いの計測においては、一例として、高低狂い(高さ方向の狂い)、通り狂い(水平方向の狂い)、軌間狂い(2本のレール間隔の狂い)、水準狂い(2本のレールの高さの差の狂い)、及び平面性狂い(2本のレールの高さの捩じれの狂い)の5項目が算出される。各項目の計測は、例えば特許3597832号公報に記載されている公知の方法で実施可能である。出力部244は、ターゲット位置特定部243が特定した各ターゲットTの位置に基づき、上記の5項目を算出し、算出結果を出力する。図示は省略するが、出力部244は、各項目の経時的な変化を出力してもよい。
【0051】
上記のように、ターゲットTのある時刻における位置を基準とし、その基準に対してターゲットTがどの程度変位したかを出力する、又は、複数のターゲットTの相対的な位置関係を出力する以外にも、出力部244は、例えば所定の基準点ターゲットの位置に対する各ターゲットTの絶対位置を出力してもよい。具体的には、基準点ターゲットは、例えば、工事範囲外の、工事の影響を受けない不動地点に配置されたターゲットである。
【0052】
(アラートの出力)
出力部244は、各種のアラート及び所定の情報を作業者に対して出力する。出力部244は、アラートや所定の情報を表示部22に表示させてもよいし、計測装置2に不図示のネットワーク経由で接続された他の機器に表示させてもよい。
【0053】
本実施形態では、上述したように、ターゲット位置特定部243が検出したターゲットT上の4点に基づき、第1直線L1及び第2直線L2を特定して両直線の交点をターゲットTの位置と特定する。しかし、例えばターゲットTに付着した付着物56の範囲や形状によっては、第1直線L1及び/又は第2直線L2を特定できず、ターゲットTの位置の特定ができないことが想定される。
【0054】
そこで、出力部244は、例えば、ターゲット位置特定部243が第1直線L1及び/又は第2直線L2を特定できず第1境界線51と第2境界線52との交点を特定できない場合に、アラートを出力する。
【0055】
出力部244は、また、ターゲット位置特定部243が第1境界線51と第2境界線52との交点を特定できない場合に、上記のアラートとともに、複数のターゲットTのうち交点が特定されなかったターゲットを示す情報を出力してもよい。例えば、ターゲットT1~T4のうちターゲットT4について交点が特定できなかった場合、出力部244は、交点が特定されなかったターゲットがターゲットT4であることを示す情報を出力する。具体的には、出力部244は、撮像画像5に、特定されなかったターゲットTを示すテキスト情報又は画像情報が付加された画像を出力してもよい。このような構成によれば、出力された情報を見た作業者は、複数のターゲットTのうちどのターゲットTの位置が特定できていないかを確認でき、現場のターゲットTを清掃するなどの対応を取ることができる。
【0056】
出力部244は、また、ターゲット位置特定部243が検出対象領域Aにおいて第1境界線51及び第2境界線52を探索した結果、第1境界線51又は第2境界線52を探索できなかった場合に、アラートを出力してもよい。
【0057】
ターゲット状態特定部245は、撮像画像5に基づき、例えば、ターゲットTに付着物56が付着していることを特定する。ターゲット状態特定部245は、一例として、それぞれの検出対象領域Aにおいて、ターゲットTの第1直線L1が延びる第1方向又は第2直線L2が延びる第2方向とは異なる方向の輪郭線を検出することにより、ターゲットTに付着した付着物56の存在を特定する。ターゲット状態特定部245は、具体的には、検出した上記輪郭線が例えば所定の閾値以上の長さの場合に、付着物56が存在すると判定する。
【0058】
ターゲットTに直接付着する付着物以外にも、例えば、植物の一部などがターゲットTの前面に存在することによってターゲットTの十字パターンを正しく撮影できなくなる状況も想定される。そこで、ターゲット状態特定部245は、ターゲットTの前面に位置する障害物の存在を特定してもよい。ターゲット状態特定部245は、上記同様、ターゲットTの第1直線L1が延びる第1方向又は第2直線L2が延びる第2方向と異なる方向の輪郭線を検出することにより、障害物があることを特定してもよい。ターゲット状態特定部245は、一例として、付着物と障害物とを分類するように学習が行われた学習済みモデルを用い、画像認識により付着物及び障害物を識別してもよい。ターゲット状態特定部245は、付着物の種別、又は、障害物の種別を識別する機能を有していてもよい。出力部244は、例えば、ターゲット状態特定部245の識別結果を作業者に対して出力する。
【0059】
[軌道狂いの計測動作]
上述のように構成された計測システムS100の動作について、以下説明する。図10は、計測システムS100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS1は初期設定のステップである。まず、ステップS1において、計測装置2は、レールRに取り付けられた複数のターゲットTの位置を特定し、特定した位置をターゲットTの基準位置として記憶部23に記憶させる。ステップS1では、また、作業者がカメラ1と各ターゲットTとの位置関係を測量により実測して取得した距離関係の情報が、記憶部23に記憶される。また、設定受付部241が、作業者による各ターゲットTに対する検出対象領域A(図6参照)の設定を受け付け、設定受付部241が受け付けた設定の情報が記憶部23に記憶される。このような初期設定の完了後、計測システムS100による軌道狂いの計測の運用が開始される。
【0061】
ステップS2において、計測装置2は、カメラ1を予め設定された所定の測定時刻に動作させ、複数のターゲットTを撮影する。カメラ1は、一例として、設定された所定の期間に所定回数だけターゲットTを撮影し、複数の撮像画像5を生成する。
【0062】
次いで、ステップS3において、画像取得部242がカメラ1から取得した撮像画像5に基づいて、ターゲット位置特定部243が撮像画像5におけるそれぞれの検出対象領域Aにおいて画像を解析する。具体的には、ターゲット位置特定部243は、ターゲットTの十字パターン上の2点P1、P1を検出して第1直線L1を特定するとともに、他の2点P2、P2を検出して第2直線L2を特定し、それらの交点O1をターゲットTの位置として特定する。ターゲット位置特定部243はこのような処理を全てのターゲットTについて行い、特定されたターゲットTの位置は記憶部23に記憶される。
【0063】
次いで、ステップS4において、出力部244は、ターゲット位置特定部243が特定したターゲットTの位置と、記憶部23に予め記憶されたカメラ1とターゲットTとの位置関係等に基づいて、一例として、線路に関する高低狂い、通り狂い、軌間狂い、水準狂い、及び平面性狂いの5項目を算出する。そして、ステップS5において、出力部244は算出結果を出力する。
【0064】
次いで、ステップS6において、上記項目のうちいずれかの値が所定の閾値以上であり、算出結果が所定の範囲内に無い場合(ステップS6でNo)、出力部244はアラートを出力する。ステップS6において、上記項目の算出結果が所定の範囲内の場合にはアラートは出力せず、上記ステップS2~ステップS5を繰り返す。なお、アラートを発出するタイミングや回数、及び、アラートの内容については、種々変更可能であり、例えば軌道狂いの程度に応じて複数回のアラートが発出されてもよい。
【0065】
計測装置2がこのように動作することで、計測システムS100が稼働している間、計測対象物である線路の軌道狂いが計測装置2によって自動的に計測され、作業者は計測装置2の出力結果を確認することで、線路の状態を監視できる。
【0066】
(実施形態1の構成の作用効果)
以上のような本実施形態の構成では、計測システムS100の計測装置2は、ターゲットT上の点P1、P2を検出し、第1直線L1と第2直線L2の交点O1を求めることによってターゲットTの位置を特定する。したがって、付着物や障害物によってターゲットTの一部が隠れたとしても、ターゲットT上の点P1、P2が検出できいていれば、ターゲットTの位置を特定でき、線路の軌道狂いを精度よく計測することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態のターゲットTは、原則としてターゲットTの輪郭形状を検出する必要がない。従来の円形パターンの場合、ターゲットの輪郭形状を検出し易いように、円形パターンのサイズは、取付プレート55の高さ寸法よりある程度小さい形状とされていた。このような構成で、かつ、ターゲットと取付プレート55の色を異ならせることで、計測装置が円形パターンであるターゲットの輪郭形状を検出し易くなる。このような構成の場合、円形パターンのサイズが比較的小さくする必要があったが、本実施形態の十字パターンのターゲットTでは、例えば、ターゲットTの直径は取付プレート55の高さ寸法と同程度であってもよく、したがって、ターゲットTのサイズを大きくすることができる。その結果、撮像画像におけるターゲットTのサイズが大きくなり、ターゲットTの識別性が向上する効果が生じる。
【0068】
また、出力部244は、ターゲット位置特定部243が第1境界線51と第2境界線52との交点を特定できない場合に、アラートを出力するため、作業者は、ターゲットTの位置の検出異常を知ることができる。特に、このような検出異常が発生した場合に、出力部244が、アラートとともに、複数の前記ターゲットのうち交点が特定されなかったターゲットを示す情報を含む撮像画像を出力することにより、作業者は、その内容を確認し、どのターゲットが異常であるかを確認することができる。
【0069】
<変形例1>
上記実施形態では、ターゲットTの画像に基づいて第1境界線51及び第2境界線52の交点を検出することを説明したが、ターゲット位置特定部243は、第1境界線51と第2境界線52との交点を特定できない場合、交点が特定されなかったそのターゲットTの輪郭形状を抽出し、抽出した輪郭形状の重心位置をターゲットTの位置として特定してもよい。ターゲット位置特定部243は、具体的には、ターゲットTの輪郭に沿って複数の特徴点を特定し、その複数の特徴点が形成する形状の重心位置をターゲットTの位置と特定する。
【0070】
このような構成によれば、仮に付着物56や植物などの障害物によって、第1境界線51と第2境界線52との交点を特定することができない場合であっても、ターゲットTの輪郭形状を特性することができればターゲットTの位置を特定できる。そのため、第1境界線51と第2境界線52との交点を特定する方式のみでターゲットTの位置を特定する構成と比べて、ターゲットTの位置を特定できないということが発生する頻度を低減させることができる。
【0071】
<変形例2>
図11は、ターゲットTの位置を精度良く検出できない例を示す図である。図6を参照して説明したように、ターゲット位置特定部243は、ターゲットTの第1境界線51及び第2境界線52上の点P1、P2を検出して第1直線L1及び第2直線L2を特定する。したがって、付着物や障害物の形状によっては、図11のように、点P1間の距離d1及び点P2間の距離d2が短くなることがある。この場合、第1直線L1及び第2直線L2の方向が第1境界線51及び第2境界線52から大きくずれ、第1直線L1と第2直線L2との交点O1を精度良く特定できないおそれがある。
【0072】
そこで、本発明の一変形例においては、出力部244が、第1境界線51上の2つの点P1の間の距離d1、及び、第2境界線52上の他の2つの点P2の間の距離d2の少なくとも一方が、所定の閾値未満である場合に、アラートを出力してもよい。「所定の閾値未満」は、検出精度に関する閾値として設定された閾値であり、作業者が設定した値であってもよいし、計測装置2が設定した値であってよい。ターゲット位置特定部243は、距離d1又は距離d2が所定の閾値未満である場合、第1直線L1と第2直線L2との交点の特定を行わず、例えば、カメラ1が再びターゲットTを撮影した撮像画像5に基づいて、各点P1、P1、P2、P2の検出をやり直し、距離d1及び距離d2が所定閾値以上の場合に、第1直線L1と第2直線L2の交点を特定してもよい。
【0073】
記憶部23が、ターゲットTの複数のサイズと、複数の上記閾値とを関連づけて記憶しており、出力部244又はターゲット位置特定部243は、記憶部23を参照し、ターゲット位置特定部243が特定したターゲットTのサイズに基づいて、関連する上記閾値を自動的に決定し、上記の処理を行ってもよい。
【0074】
<変形例3>
図12は、ターゲットTがレールRから外れている可能性がある場合の変位情報の一例である。計測対象物がレールRのようなものである場合、仮に何らかの原因でレールRの形状が変形した場合であっても、レールRは全体的になだらかに変形すると想定され、レールRの一部のみが他に比べて局所的に大きく変位することは生じにくい。図12では、一例としてターゲットT3の位置が他のターゲットT1、T2及びT4の位置に比べて大きく変位している。このような場合、ターゲットT3がレールRから外れている可能性が想定される。
【0075】
そこで、出力部244は、ターゲット位置特定部243が特定した所定のターゲットの位置(例えばターゲットT3の位置)と、それに隣接する他の前記ターゲット(例えば、ターゲットT4)の位置との間の距離d3が、ターゲット位置の異常に関する閾値として設定された所定の閾値以上の場合に、アラートを出力してもよい。
【0076】
<変形例4>
上記の実施形態では、ターゲットT上の第1境界線51と第2境界線52との交点を求めてターゲットTの位置を特定することを説明した。しかしながら、計測システムS100においては、特定されたターゲットの輪郭形状から重心位置を求めてターゲットの位置を特定する方式と、十字パターンを利用した方式とを選択可能であることも好ましい。
【0077】
そこで、ターゲット位置特定部243は、計測対象物であるレールRに取り付けられたターゲットTにおける第1境界線51と第2境界線52との交点を特定することによってターゲットTの位置を特定する第1動作モードと、レールRに取り付けられた複数の標識をカメラ1が撮影することにより生成された撮像画像5内における、標識の輪郭形状を抽出し、抽出した輪郭形状の重心位置を標識の位置として特定する第2動作モードとを実行可能であり、作業者から受け付けた選択に応じて、第1動作モードと第2動作モードとのいずれかを実行してもよい。「標識」は、例えば円形パターンであり、円形パターンは十字パターンのターゲットTとは別にレールRに取り付けられていてもよい。
【0078】
ターゲット位置特定部243は、例えば、施工対象物の種別と、動作モードの種別が関連づけられた記憶部23を参照して、作業が入力した施工対象物の種別に応じて動作モードを自動的に決定してもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0080】
1 カメラ
2 計測装置
5 撮像画像
11 支柱
12 照明器具
21 入力部
22 表示部
23 記憶部
24 制御部
51 第1境界線
52 第2境界線
55 取付プレート
56 付着物
60 変位情報
241 設定受付部
242 画像取得部
243 ターゲット位置特定部
244 出力部
245 ターゲット状態特定部
A 検出対象領域
L1 第1直線
L2 第2直線
o ターゲット中心
o1 重心位置
p 特徴点
R レール
S100 計測システム
T ターゲット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12