(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166801
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】溶融袋、それを用いてホットメルト接着剤を包装した塊状体、胴巻きラベルおよびペットボトル容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/00 20060101AFI20241122BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20241122BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B65D65/00 A
C08J5/00 CES
C08J5/00 CET
C08J5/00 CFH
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083148
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一平
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘征
(72)【発明者】
【氏名】石黒 秀之
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB58
3E086CA29
4F071AA15X
4F071AA18
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4F071AH04
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4F071BC12
4J040DA031
4J040DB021
4J040JB01
4J040KA26
(57)【要約】
【課題】
従来よりも耐ブロッキング、接着強度に優れるホットメルト接着剤用溶融袋、それを用いたホットメルトシート、およびホットメルト積層体の提供。
【解決手段】
スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含有する樹脂組成物から形成される溶融袋により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含有する樹脂組成物から形成される溶融袋。
【請求項2】
樹脂組成物100質量%中、シリコーンオイル(B)を0.1~10質量%含む、請求項1に記載の溶融袋。
【請求項3】
シリコーンオイル(B)の動粘度から求められる分子量が650以上100,000以下である、請求項1または2に記載の溶融袋。
【請求項4】
膜厚が25~500μmである、請求項1または2に記載の溶融袋。
【請求項5】
ホットメルト接着剤の包装用である、請求項1または2に記載の溶融袋。
【請求項6】
ホットメルト接着剤が溶融袋で包装された塊状体であって、溶融袋が請求項1または2に記載の溶融袋である塊状体。
【請求項7】
ホットメルト接着剤の軟化点と溶融袋の軟化点の差が50℃以内である、請求項6に記載の塊状体。
【請求項8】
基材の一部または全面に、請求項7記載の塊状体のシート状成形物が積層された胴巻きラベル。
【請求項9】
請求項8記載の胴巻きラベルが取り付けられた容器。
【請求項10】
基材の材質がポリエチレンテレフタレートである請求項9記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融袋、それを用いてホットメルト接着剤を包装した塊状体、胴巻きラベルおよびペットボトル容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルトは溶融して対象物を貼り合わせた後、放冷・冷却すればすぐに接着機能が発現することから、養生期間を不要とする利点が見直され、包装、工業用途で適用が広がっている。そして昨今の環境への負荷低減を重視する社会変化を受け、使用時に溶剤や乾燥工程も不要な利点も再認識され、ますますの拡大が進みつつある。
【0003】
ホットメルトの適用範囲が広がると作業性向上が求められる。夏場は塊状のホットメルト同士がくっついてしまい(ブロッキング)、梱包された段ボール等から取り出す際に巨大塊状となり作業性が著しく低下する問題があった。そこで特に常温で粘着性を示すホットメルトは、剥離紙や剥離フィルムにより包装された状態で梱包、輸送、保管され、ホットメルトを使用する際にそれらを剥がし、廃棄していたが、これら剥離材の廃棄も環境負荷として問題視されるようになった。
【0004】
そこでホットメルトを硬い材料で包装し、使用時には包装したままホットメルトを溶融する、いわゆる溶融袋としての仕様が出てきた(特許文献1)。これにより剥離材の廃棄による環境負荷を回避でき、また塊状のホットメルトを溶融するたびに剥離材を剥離する作業負担もなくなり、作業効率は格段に向上した。
【0005】
近年では溶融袋の強度を上げたり(特許文献2)、形状をエンボス上にしたり(特許文献3)して、ブロッキングしない施策が取られている。しかしこれらの方法では実際にはホットメルト接着剤を溶融袋で包んだ塊状体同士のブロッキングの発生を抑えきれない問題があり、物理的な対策に限らず、化学的な対策も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-002581号公報
【特許文献2】WO2014/194087号公報
【特許文献3】特開2019-065164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明は、従来よりも化学的なアプローチにより塊状体同士の耐ブロッキング性に優れ、かつ耐ブロッキング剤がホットメルト接着剤の接着特性に悪影響を及ぼさない溶融袋、それを用いてホットメルト接着剤を包装した塊状体、胴巻きラベルおよびペットボトル容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の実施態様は、スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含有する樹脂組成物から形成される溶融袋である。
【0009】
また、本発明の実施態様は、樹脂組成物100質量%中、シリコーンオイル(B)を0.1~10質量%含む、前記溶融袋である。
【0010】
また、本発明の実施態様は、シリコーンオイル(B)の動粘度から求められる分子量が650以上100,000以下である、前記溶融袋である。
【0011】
また、本発明の実施態様は、膜厚が25~500μmである、前記溶融袋である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、ホットメルト接着剤の包装用である、前記溶融袋である。
【0013】
また、本発明の実施態様は、ホットメルト接着剤が溶融袋で包装された塊状体であって、溶融袋が前記溶融袋である塊状体である。
【0014】
また、本発明の実施態様は、ホットメルト接着剤の軟化点と溶融袋の軟化点の差が50℃以内である、前記塊状体である。
【0015】
また、本発明の実施態様は、基材の一部または全面に、前記塊状体のシート状成形物が積層された胴巻きラベルである。
【0016】
また、本発明の実施態様は、前記胴巻きラベルが取り付けられた容器である。
【0017】
また、本発明の実施態様は、材質がポリエチレンテレフタレートである前記容器である。
【発明の効果】
【0018】
上記の本発明により、従来よりも耐ブロッキング、接着強度に優れる溶融袋、それを用いてホットメルト接着剤を包装した塊状体、胴巻きラベルおよびペットボトル容器の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の塊状体を、部分的に示す概略断面図である。
【
図2】動粘度と分子量の関係のグラフ(「信越シリコーン:KF-96性能試験結果」のP5記載)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の溶融袋、それを用いてホットメルト接着剤を包装した塊状体、胴巻きラベルおよびペットボトル容器について更に詳細に説明するが、これに限定されない。
溶融袋でホットメルト接着剤を包装したものを塊状体とする。なお、ホットメルト接着剤とはホットメルト粘着剤を包含する。
なお、本明細書において「分子量」は平均分子量を意味する。
【0021】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。本明細書においてはホットメルト接着剤を「ホットメルト」と略記する場合がある。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0022】
≪溶融袋≫
本発明の溶融袋は、ホットメルト接着剤を包装するために好適に用いられる。しかし、ホットメルト接着剤以外の物品に対し、技術的に貢献できるのであればこの限りではない。
溶融袋はスチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含む。スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含む材料(樹脂組成物)を加温して溶融し、既知の手法により成膜(製造)できる。
【0023】
溶融袋の軟化点は、下限としては50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましく、80℃以上が特に好ましい。上限としては150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましく、100℃以下が特に好ましい。軟化点が上記範囲内であることで、耐ブロッキングおよび接着強度を発現しやすい。
なお、軟化点の測定は、JIS K-2207(石油アスファルト)6.4軟化点試験方法(環球法)に準拠して行う。
【0024】
溶融袋の膜厚は、25~500μmであることが好ましく、50~500μmであることがより好ましく、50~300μmであることが更に好ましく、50~200μmが特に好ましい。膜厚が上記範囲内であることで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0025】
溶融袋に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、実質含まないことが好ましい。VOCの量が上記範囲内であることで、食品や医療業界といった衛生性を重視する用途にも適合させやすい。
【0026】
≪樹脂組成物≫
本発明において樹脂組成物は、溶融袋を形成するための材料を指し、スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種と、シリコーンオイル(B)とを含有する。
【0027】
<スチレン系共重合体(A1)>
スチレン系共重合体(A1)は、熱可塑性エラストマーの一種である。熱可塑性エラストマーとは、常温では加硫ゴムと同様な性質を持ち、弾性のある材料をいい、高温では普通の熱可塑性樹脂と同じく、既存の成形機をそのまま使用できる高分子材料である。熱可塑性エラストマーは、分子中に弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント:軟質相)と塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント:硬質相)との両方を持っているためゴムとプラスチックの中間の性質を持つ。
スチレン系共重合体は、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)およびポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン(EP)、エチレン・ブチレン(EB)、ブチレン・ブタジエン(BB)) があり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖型(リニアタイプ)および分岐型(ラジアルタイプ)とに分かれる。
【0028】
スチレン系共重合体としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEBSと略記することもある)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロックコポリマー(以下SEPSと略記することもある)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(以下SISと略記することもある)、スチレン-ブチレン・ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(以下SBBSと略記することもある)等が挙げられる。
【0029】
スチレン系共重合体(A1)は、スチレン含有率10~50質量%であることが好ましく、スチレン含有率15~45質量%であることがより好ましく、スチレン含有率20~40質量%であることが更に好ましい。スチレン含有率がこの範囲内にあることで耐ブロッキングに優れ、ホットメルト接着剤の接着強度とのバランス取りをしやすくなる。
なお、スチレン含有率とはスチレン系共重合体100質量%中のスチレンの含有率(質量%)である。
【0030】
スチレン系共重合体(A1)を用いる場合には、さらにプロセスオイルおよび粘着付与剤、ワックスを含有することが好ましい。これらを含有することで、溶融袋自体をホットメルト接着剤の性能に近づけることができるため好ましい。
【0031】
スチレン系共重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~300,000であることが好ましく、50,000~200,000であることがより好ましく、80,000~150,000であることがさらに好ましく、100,000~150,000であることが特に好ましい。上記範囲の分子量とすることで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。
【0032】
スチレン系共重合体(A1)の含有率は、樹脂組成物100質量%中、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、10~50質量%が更に好ましい。上記範囲でスチレン系共重合体(A1)を含有することで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0033】
<エチレン-ビニル系共重合体(A2)>
本発明におけるエチレン-ビニル系共重合体(A2)はスチレン系共重合体(A1)と同様に、熱可塑性エラストマーの一種である。エチレン部位をハードセグメント、ビニル部位をソフトセグメントとして、その高い接着性を利用してホットメルト材料として使用されるものである。ビニル部位としては酢酸ビニル由来のものが一般的に使用され、樹脂全体におけるエチレン部位の比率や、ビニル部位の比率を適宜調整し、所望の性能が得られる。これらのエチレン-ビニル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0034】
エチレン-ビニル系共重合体(A2)のビニル含有率は、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは2~20質量%であり、更に好ましくは3~15質量%である。エチレン-ビニル系共重合体(A2)が2種以上のエチレン-ビニル系共重合体を含む場合、そのビニル含有率は、各エチレン-ビニル系共重合体のビニル含有率と配合比から算出することができる。
また、エチレン-ビニル系共重合体(A2)のメルトマスフローレート(以下、MFR)は、好ましくは30~2000g/10分であり、より好ましくは60~1000g/10分である。なお、本明細書におけるMFRは、JIS K 7210に準拠して測定される、190℃、2,160g荷重での10分間の流出量(g/10分)である。エチレン-ビニル系共重合体(A2)が2種以上のエチレン-ビニル系共重合体を含む場合、そのMFRは、押出機で混錬した後の混合物を測定して求めることができる。
【0035】
エチレン-ビニル系共重合体(A2)の含有率は、樹脂組成物100質量%中、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、15~30質量%が更に好ましい。上記範囲でエチレン-ビニル系共重合体を含有することで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0036】
<低密度ポリエチレン>
樹脂組成物としてエチレン-ビニル系共重合体(A2)を用いる場合は、さらに低密度ポリエチレン(LDPE)を含有することが好ましい。低密度ポリエチレンは、繰り返し単位であるエチレンがランダムに結合した分枝構造を持つ熱可塑性樹脂であり、直鎖状低密度ポリエチレンに比べて、分枝構造が多いため、結晶性が低く融点が低い傾向にある。低密度ポリエチレンを併用することで溶融袋の結晶性が増し、ブロッキングしくにい設計が容易となる。
低密度ポリエチレン(LDPE)の含有率は、樹脂組成物100質量%中、50~99質量%が好ましく、55~95質量%がより好ましく、60~90質量%が更に好ましい。上記範囲で低密度ポリエチレン(LDPE)を含有することで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0037】
低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.910~0.930g/cm3の範囲であり、より好ましくは0.915~0.925g/cm3の範囲であり、特に好ましくは0.917~0.922g/cm3の範囲である。
【0038】
低密度ポリエチレンの融解ピーク温度は、好ましくは95~120℃の範囲であり、より好ましくは100~115℃の範囲であり、特に好ましくは105~110℃の範囲である。
なお、融解ピーク温度は示差走査熱量測定(DSC)装置を使用して測定した。
【0039】
低密度ポリエチレンのMFRは、好ましくは1~200g/10分の範囲であり、より好ましくは1~50g/10分の範囲であり、更に好ましくは1~20g/10分の範囲であり、特に好ましくは5~20g/10分の範囲である。
【0040】
<シリコーンオイル(B)>
シリコーンオイル(B)は機能として主に離型性や剥離性を付与する材料として知られており、本発明においても公知のものを使用することができる。シリコーンオイル(B)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシリコーン、ポリメチルハイドロジェンシリコーン、末端または側鎖を変性させたエポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、弗素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。ポリジメチルシロキサンが好ましい。
これらの中でも擬似接着性を有する材料を使用することが好ましい。疑似接着性を有する材料としては、他の物質と接触した際、接触面で接触状態を維持する力を発揮する材料であり、信越化学工業(株)製KF96シリーズやモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製tskシリーズ、ダウ・東レ(株)社製DOESIL SH200シリーズ、旭化成ワッカーシリコーン(株)社製WACKER AKシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF451シリーズである。これらは単独または2種以上を併用できる。
本発明においてシリコーンオイル(B)は、塊状体においては耐ブロッキング性を付与し、その後に接着剤として使用する際には剥離性能を抑制して接着機能を発現する必要がある。
【0041】
シリコーンオイル(B)の含有率は、樹脂組成物100質量%中、0.1~10質量%が好ましく、0.3~10質量%がより好ましく、0.5~5質量%が更に好ましい。上記範囲でシリコーンオイル(B)を含有することで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0042】
シリコーンオイル(B)の動粘度から求められる分子量は、350~1,000,000が好ましく、650~500,000がより好ましく、1300~100,000が更に好ましく、3500~10,000が特に好ましい。上記範囲でシリコーンオイル(B)を含有することで、耐ブロッキングと接着強度を両立しやすい。
【0043】
樹脂組成物は、さらにプロセスオイルおよび/または粘着付与剤を含むことが好ましい。
【0044】
<プロセスオイル>
プロセスオイルは、ゴムや熱可塑性エラストマー等の可塑剤として一般的に使用される。いわゆる石油精製等において生産されるプロセスオイルであり、パラフィン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルに大別される。プロセスオイルは、パラフィン鎖・芳香族環・ナフテン環の混合物であり、全炭素中のパラフィン鎖炭素が50重量%以上のものをパラフィン系プロセスオイル、全炭素中の芳香族炭素が30重量%以上のものを芳香族系プロセスオイル、全炭素中のナフテン環炭素が30質量%以上のものをナフテン系プロセスオイルと分類する。
【0045】
プロセスオイルの含有率は、樹脂組成物100質量%中、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、15~70質量%が更に好ましく、20~60質量%が特に好ましい。上記範囲でプロセスオイルを含有することで、接着強度に優れる。
【0046】
<粘着付与剤>
粘着付与剤は、分子量が数百から数千程度の比較的分子量の低い重合体である。常温において液状または固形の特性を示し、粘着付与剤を添加することで流動性・タックを付与し、接着力を向上させる。本発明においては、粘着付与剤は常温固体であるものが好ましい。常温固体であれば、耐破砕性に優れながら、ホットメルトとして使用する際には本来の機能である粘着力を底上げする役割を果たす。
【0047】
粘着付与剤は、天然樹脂系と合成樹脂系に大別される。天然樹脂系としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂があり、合成樹脂系としては、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などが挙げられる。用途に応じていずれの粘着付与剤を単独もしくは併用して用いることができる。
【0048】
粘着付与剤の含有率は、樹脂組成物100質量%中、1~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。上記範囲で粘着付与剤を含有することで、接着強度に優れる。
【0049】
本発明の課題解決ができる範囲で、溶融袋を形成する樹脂組成物に含まれる成分として、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス、α-メチルスチレン樹脂、その他熱可塑性エラストマーなどを用いることが出来る。
その他熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2-ブタジエン系などが挙げられる。
また、必要に応じて、熱劣化、熱分解を防ぐための酸化防止剤、老化防止剤などを添加することができる。
【0050】
[樹脂組成物の製造]
樹脂組成物は、上述した材料を加温しながら、既知の方式で加温しながら、配合・混合することができる。有機溶剤などで希釈してしまうと作業性は増すが用途展開に制限を課してしまうため、極力有機溶剤は使わないことが好ましい。
【0051】
<塊状体>
塊状体は、ホットメルト接着剤を溶融袋で包装したものである。重量としては、10g~5000gが好ましい。上記の範囲内であれば扱いやすく、かつ充填回数の作業性に優れるため好ましい。重量に応じて溶融袋の膜厚を適宜調整することができる。
溶融袋を成膜(製造)後、出来るだけ空気が入らないようにホットメルト接着剤を充填することで、塊状体を得ることができる。本工程は成膜後すぐに冷却するか、もしくは水中で行われることがエネルギー効率の観点で好ましい。
【0052】
(ホットメルト接着剤)
ホットメルト接着剤は、例えば、粘着用途を鑑みたものである場合には樹脂系としてはスチレン系共重合体を含有することが、種々の粘着性能を発現しやすいという点で好ましい。スチレン系共重合体としては、上述の溶融袋製造用の樹脂組成物に用いられる材料をそのまま用いることができる。
溶融炉内での相溶性の点で樹脂組成物と同種の材料を用いることがより好ましい。具体的には、スチレン系共重合体(A1)およびエチレン-ビニル系共重合体(A2)のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
スチレン系共重合体(A1)および/またはエチレン-ビニル系共重合体(A2)、シリコーンオイル(B)、プロセスオイルおよび粘着付与剤の種類は、ホットメルトの用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、リサイクル用途であればアルカリ水溶液による脱離性が求められるので、100mgKOH/g以上の高い酸価を有する粘着付与剤が好ましい。また環境対応製品であればバイオマス度80%以上のバイオマス度が高い粘着付与剤が好ましい。
【0053】
ホットメルト接着剤の軟化点は、40℃~110℃であることが好ましく、50℃~100℃であることがより好ましく、60℃~90℃であることが更に好ましい。軟化点が上記範囲内のホットメルト接着剤は常温で粘着性を示すことから、塊状体にする利点を享受しつつ溶融袋との相溶性に優れ、ホットメルトとして使用する際の凝集力も発現しやすい。
【0054】
ホットメルト接着剤の軟化点は、溶融袋の軟化点と比較し、その差が50℃以内であると好ましく、40℃以内であるとより好ましく、30℃以内であると更に好ましく、20℃以内であると特に好ましい。上記範囲内となることで、双方の相溶性に優れる。
【0055】
<胴巻きラベル>
本発明において胴巻きラベルとは、容器胴部に適用されるラベルであって、基材の一部または全面に前記塊状体をシート状に成形した成形物が積層されたものである。
胴巻きラベルは、内容物の表示や消費者の購買意欲を掻き立てるデザイン性の向上を目的に貼り付けられ、飲食品や調味料、化粧品や洗面用品、薬品や試薬など様々な用途展開がなされている。
胴巻きラベルの基材としては、プラスチックフィルムやシート、紙や不織布、発泡体などが挙げられる。ラベルは裏面に印刷がなされているものであっても良く、印刷がなされていないものであっても良い。
塊状体をシート状に成形した成形物は、ラベルの全面に積層されても良いが、ラベルの一部に積層されていても良い。ラベル上に、塊状体をシート状に成形して積層する方法(塗工方法)としては、一般的なロールコート方式のほか、スリットコート方式、スパイラルスプレー方式、フォーミングメルト方式などがある。
【0056】
胴巻きラベルにおける塊状体のシート状成形物(ホットメルト接着剤層)の膜厚は、1~500μmであることが好ましく、5~300μmであることがより好ましく、10~100μmであることが更に好ましく、15~50μmが特に好ましい。膜厚が上記範囲内であることで、所望の接着強度を発現しやすい。
【0057】
<容器>
本発明における容器は、前記胴巻きラベルが取り付けられたものを指す。容器の材質としてはガラス、金属、プラスチック、紙などが挙げられるが、特に限定されない。また、その形状は丸型であっても角型等の非丸型であっても良い。代表的な容器としてはペットボトルが挙げられる。胴巻きラベルの取り付け方としては、従来既知の方法が挙げられ、特に制限はない。
【実施例0058】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示し、「RH」は相対湿度を意味する。また、表中の配合量は、質量部である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0059】
<シリコーンオイルの分子量>
シリコーンオイルの分子量は「信越シリコーン:KF-96性能試験結果」のP5に記載の動粘度と分子量の関係のグラフを用いて、シリコーンオイルの動粘度に対応する分子量を読み取った。
なお、動粘度はJIS K2283に従い、測定することができる。本発明においては信越化学工業(株)がホームページで公表している値を用いた。
【0060】
表1~4に記載の略称について、下記に示す。
[スチレン系共重合体(A1)]
・G1642:クレイトン G1642(クレイトンポリマー社製、スチレン含有率:21質量%、重量平均分子量:12.4万)
・G1650:クレイトン G1650(クレイトンポリマー社製、スチレン含有率:30質量%、重量平均分子量:9.6万)
・G1726:クレイトン G1726 (クレイトンポリマー社製、スチレン含有率:30質量%、重量平均分子量:4.6万)
[エチレン-ビニル系共重合体(A2)]
・EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率20質量%)
[低密度ポリエチレン]
・LDPE:低密度ポリエチレン(融解ピーク温度107℃、密度0.919g/cm3)
【0061】
[プロセスオイル]
・PW-90:ダイアナプロセスPW-90(出光興産社製、パラフィン系プロセスオイル)
【0062】
[粘着付与剤]
・P-100:アルコンP-100(荒川化学社製、水素化石油樹脂、軟化点:100℃)
・ハリタックF(ハリマ化成社製、水添ロジン系、酸価:170mgKOH/g、軟化点:80℃)
【0063】
[ワックス]
・H1:サゾールH1(Sasol Chemical Industries社製、フィッシャートロプスワックス、軟化点:112℃)
・C80:サゾールC80(Sasol Chemical Industries社製、フィッシャートロプスワックス、軟化点:88℃)
【0064】
[シリコーンオイル(B)]
・1000CS:シンエツシリコーンKF96-1000CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量27,000)
・5CS:シンエツシリコーンKF96-5CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量650)
・10CS:シンエツシリコーンKF96-10CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量1,300)
・50CS:シンエツシリコーンKF96-50CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量3,500)
・1万CS:シンエツシリコーンKF96H-1万CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量55,000)
・10万CS:シンエツシリコーンKF96H-10万CS(信越化学工業(株)製、動粘度から求められる分子量110,000)
【0065】
<ホットメルト接着剤Q-1の製造>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ワックスとしてサゾールC80を5部、プロセスオイルとしてPW-90を40部、粘着付与剤としてハリタックFを30部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130~150℃になるように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融液とした後、130~150℃の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物にスチレン系共重合体(A1)としてG1726を25部加え、添加終了後、130~150℃の温度で加熱撹拌し、G1726を完全に溶融させた。その後、冷却してホットメルト接着剤Q-1を作製した。
【0066】
【0067】
(実施例1)
<樹脂組成物P-1の製造>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、ワックスとしてサゾールH1を5部、プロセスオイルとしてPW-90を59.9部、粘着付与剤としてP-100を5部、シリコーンオイルとして1000CSを0.1部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130~150℃になるように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融液とした後、130~150℃の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物にスチレン系共重合体(A1)としてG1642を30部加え、添加終了後、130~150℃の温度で加熱撹拌した。その後、冷却して樹脂組成物P-1を作製した。
<溶融袋および塊状体1の製造>
次に樹脂組成物P-1を溶融袋成型機に投入し、温度100℃の条件で、膜厚200μmの溶融袋となるように設定した。ホットメルト接着剤Q-1を加温しながら溶融膜に向けて500g押し出し、それを水中で包み込むように成形して、そのまま水中で冷却した後、塊状体1を得た。塊状体1に対して溶融袋は2質量%であった。
【0068】
(実施例2~22、比較例1)
表2~4記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物(P-2~22、P’-1)を製造した。
続いて、実施例1と同様の方法で溶融袋および溶融袋中にホットメルトを充填した実施例2~22、比較例1の塊状体を得た。
なお、表1~4においてホットメルトをHMと略記した。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
<耐ブロッキング>
小型の段ボールに剥離フィルムを敷き、その上に溶融したホットメルト接着剤を流し込み、自然放冷させて固めることで表面が平らなブロック状ホットメルト接着剤を製造した。得られたブロック状ホットメルト接着剤上に溶融袋(10cm四方、膜厚200μm)を積層し、さらにその上に溶融袋(10cm四方、膜厚200μm)とブロック状ホットメルト接着剤をこの順に積層し、ブロック状ホットメルト接着剤/溶融袋//溶融袋/ブロック状ホットメルト接着剤の積層物を作製した。この積層物上に10kgの重りを載せ、40℃で24時間保管し、空冷した後に手で溶融袋間を引き剥がし、耐破砕性の評価を行った。評価基準は下記の通りである。
[評価基準]
◎:剥離音、剥離強度無し、優良。
〇:若干の剥離音、剥離強度あり、良好。
△:ブロッキングしているが剥離しても溶融袋の破砕なし、実用上問題なし。
×:ブロッキングしており剥離すると溶融袋が破砕する、実用上問題あり。
【0073】
<接着強度>
厚さ30μmのOPPフィルムに印刷を施したラベルの印刷面に塊状体を塗工量15g/m2となるように塗工(温度条件:150℃)し、ホットメルト接着剤付きラベルを得た。
厚さ30μmのOPPフィルムの非印刷面に前記ホットメルト接着剤付きラベルを23℃で貼り付けて、ハンドローラーで1往復させて圧着し、15mm幅に断裁した。23℃65%RH条件下で24時間保管した後、23℃の恒温室中で180度剥離(剥離速度:300mm/分)を行った。
(評価基準)
◎:1.5N/15mm以上:非常に良好
○:1.0N/15mm以上1.5N/15mm未満:良好
△:0.5N/15mm以上1.0N/15mm未満:実用可
×:0.5N/15mm未満:実用不可
【0074】
表2~4の結果から実施例1~22の塊状体は、耐ブロッキング、接着強度に優れるものであった。一方、比較例1の塊状体は、前記特性の全てを満たすことはできなかった。