(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166810
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】デジタル遺品整理キット
(51)【国際特許分類】
B42D 15/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B42D15/00 331Z
B42D15/00 341D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083170
(22)【出願日】2023-05-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 全日本印刷工業組合連合会が、令和5年3月20日に発行の第16回メディア・ユニバーサルデザインコンペティション受賞作品集において、村中成仁らが発明した「デジタル遺品整理キット」を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 成仁
(72)【発明者】
【氏名】中原 聡美
(72)【発明者】
【氏名】池田 恒
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 昌典
(72)【発明者】
【氏名】河澄 香菜子
(72)【発明者】
【氏名】勝山 優行
(72)【発明者】
【氏名】柴田 みお
(72)【発明者】
【氏名】藪脇 香帆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 恵
(72)【発明者】
【氏名】清水 鈴太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生前の秘密保持と死後の発見容易性とを兼ね備えたデジタル遺品整理キットを提供する。
【解決手段】デジタル遺品整理キットKは、事前準備キットと、自身の死後にデジタル遺品の処分を依頼したい旨を依頼相手に予告する予告カード3とを備えている。事前準備キットは、依頼対象ネットワークサービスのアカウントを特定可能にする第1記入欄と、アカウント情報を記入する第2記入欄と、アカウントに紐づいたデジタル遺品の処分依頼内容を記入する第3記入欄を含む記入用紙1と、第1記入欄、第2記入欄および第3記入欄を隠ぺいする隠蔽手段2と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
依頼対象となるネットワークサービスのアカウントを特定可能にする第1記入欄と、前記ネットワークサービスのアカウント情報を記入する第2記入欄と、前記アカウントに紐づいたデジタル遺品の処分依頼内容を記入する第3記入欄を含む記入用紙と、
前記第1記入欄、前記第2記入欄および前記第3記入欄を隠ぺいする隠蔽手段と、
を備える事前準備キットと、
自身の死後に前記デジタル遺品の処分を依頼したい旨を依頼相手に予告する予告カードと、を備えている、
ことを特徴とするデジタル遺品整理キット。
【請求項2】
前記第2記入欄には、1文字ごとに区切られた記入枠が設けられており、
前記記入枠には、文字の記入を補助するガイド用のドットが印字されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル遺品整理キット。
【請求項3】
前記事前準備キットと、前記予告カードに共通のロゴが付されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル遺品整理キット。
【請求項4】
前記事前準備キットを収納可能に構成された収納ケースをさらに備え、
前記収納ケースの表面には、前記隠蔽手段で隠蔽された前記記入用紙を依頼相手に渡すことを依頼する文面が印字されている
ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル遺品整理キット。
【請求項5】
前記記入用紙または前記隠蔽手段の外表面のいずれか一方には、前記依頼相手の宛名を記入する宛名記入欄が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデジタル遺品整理キット。
【請求項6】
前記予告カードは、携帯端末を介して依頼相手に送信することができるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のデジタル遺品整理キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル遺品を整理するためのデジタル遺品整理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の死亡に備えて、親族等に伝える遺言を記載する遺言ノート(例えば、特許文献1参照)や、生前の記録等を記すライフノートやエンディングノート(例えば、特許文献2,3参照)が知られている。
【0003】
従前の遺言ノートやエンディングノートは、一般的に、人生を振り返って自分の履歴、家系、年表、思い出、出逢い等を整理したり、整理した内容を親族等への思いとともに後世に伝えるために用いられる。また、遺産相続に向けた事前準備に用いられる場合や、財産分与の希望、葬儀やお墓についての希望等を子供達、配偶者、その他の親族等に伝える遺言として用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-224353号公報
【特許文献2】特開2008-173854号公報
【特許文献3】特許第6829539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、SNS(Social Networking Service)等のネットワークサービス(以下、単に「ネットワークサービス」と称する場合がある)が、様々な企業から多様な形態で提供されている。
【0006】
具体的には、例えば、SNSだけでも、短い文章を投稿するもの(例えば、TWITTER(登録商標))や、写真を中心に投稿するもの(例えば、Tic Tok(登録商標))、特定のメンバーとの会話や情報の共有を楽しんだり、企業から各種情報を受け取るもの(例えば、LINE(登録商標))等様々なサービスがある。また、Apple社、Google社、Yahoo社のようなプラットフォームを提供する企業のメール機能(例えば、iCloud(登録商標)メール)やカレンダー機能等のネットワークを介して提供される各種サービスもある。
【0007】
それぞれのSNSでは、独自のコミュニティーが形成されており、個人が複数のネットワークサービス(SNS)にアカウントを持つことは珍しいことではない。実際に、個人が所有するアカウント数について、3人に1人がSNSを3アカウント以上所持しているという調査結果がある。
【0008】
また、一般的に、ネットワークサービスは、それぞれ独立したプラットフォーム上で運用されている。そうすると、利用者は、各自で設定したアカウント情報(ログインIDおよびパスワード)を使ってそれぞれのネットワークサービスにログインする。ネットワークサービスにおいて、アカウント名(他の利用者向けに表示する名前)として本名が使用される場合もあれば、ハンドルネームやニックネームが使用されてもよい場合もある。また、1つのSNSに対して、個人が複数のアカウントを持つ場合もある。利用者の中には、プライベートな内容である等の理由から、家族等の身近な存在に知られないよう、ネットワークサービスを介して情報を発信したり、知人や友人とメッセージを送受信している者も少なくない。
【0009】
ここで、ネットワークサービスのサービス提供者側では、利用者が死亡したかどうかを把握することができない。そのため、利用者が死亡した場合でも、死亡した利用者のアカウントは有効である、すなわち、ネットワークサービスの契約は継続される。そうすると、SNS上に死亡した利用者のデータが残り続けることがある。
【0010】
ここで、SNSに関して興味深い調査結果がある。
【0011】
出願人が入手したデジタル遺品(後で詳述する)についての調査結果によると、「デジタル遺品で残しておきたくない情報がある」と回答した人は68.3%であり、「デジタル遺品のトラブルに不安を感じる」と回答した人(少し不安を感じる人を含む)が56.7%であった。以上の結果から、デジタル遺品への関心は無視できないものであり、何らかの対策の必要性が示唆されている。
【0012】
一方で、「デジタル遺品の整理を行う予定がない」と回答した人が85.5%と高い数値であった。このことから、デジタル遺品を整理するための有効な手段が一般に広く知られていないことが示唆されている。
【0013】
例えば、特許文献3のエンディングノートは、遺言証書を収納できるように構成されている。しかしながら、本特許文献3のエンディングノートは、デジタル遺品の整理用に用いることが想定されていない。そのため、利用者がデジタル遺品の整理にこのようなエンディングノートを用いた場合、使い勝手が悪いと感じることが考えられる。
【0014】
また、依頼内容を示す書面は、依頼相手以外に内容を見られずに依頼相手に届けられる必要があり、その点においても特許文献1-3の発明には改善の余地がある。
【0015】
例えば、特許文献1の遺言ノートや特許文献2のエンディングノートにデジタル遺品の整理依頼を目的として利用者のアカウント情報を記載していた場合、生前にそのアカウント情報が家族に知られてしまい、利用者自身のSNSへの投稿内容等が家族に見られるおそれがある。
【0016】
また、家族であっても離れて暮らしている場合があり、従来の遺言ノートやエンディングノートでは、依頼内容が確実に届けられるとは限らないという問題がある。
【0017】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、使用者の生前には、身近な人(例えば家族)や依頼相手にデジタル遺品のアカウント情報を知られることがなく、かつ、使用者の死後には、デジタル遺品の整理に必要な情報が、依頼相手の手元により確実に届くように構成されたデジタル遺品整理キットを提供することを目的とする。なお、ここでの「使用者」とは、デジタル遺品の所有者であり、デジタル遺品整理キットを利用する人を指し、以下同様とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、第1の発明では、ネットワークサービスの名称を特定する第1記入欄と、前記ネットワークサービス用のアカウント情報を記入する第2記入欄と、前記アカウントに紐づいたデジタル遺品の処分依頼内容を記入する第3記入欄を含む記入用紙と、前記第1記入欄、前記第2記入欄および前記第3記入欄を隠ぺいする隠蔽手段と、を備える事前準備キットと、自身の死後に前記デジタル遺品の処分を依頼したい旨をあらかじめ依頼相手に予告する予告カードと、を備えている、ことを特徴とする。
【0019】
上記構成によると、事前準備キットの記入用紙に処分を依頼するアカウントの内容を記載して隠蔽手段で隠蔽することができるので、他人に記載内容が漏洩しないように防ぐことができる。また、上記の事前準備キットに加えて、生前にアカウントの処分を依頼したい旨を予告する予告カードが設けられているので、デジタル遺品が処分されずに残ってしまうリスクを軽減することができる。また、予告カードは、予告したい旨を伝えるためのものなので、生前に依頼相手にアカウント情報が知られることもない。
【0020】
第2の発明では、第1の発明において、前記第2記入欄には、1文字ごとに区切られた記入枠が設けられており、前記記入枠には、文字の記入を補助するガイド用のドットが印字されている、ことを特徴とする。
【0021】
アカウント情報は、基本的には、英数字または記号で構成されており、’i’と’j’や’G’と’6’のように、書き損ないやすい文字、記載の仕方によっては混同しやすい文字がある。そこで、上記態様のように、ガイド用のドットを設けることで、未然に書き損じを防ぐことができる。また、使用者が1文字ずつ区別して明瞭に記入できるため、依頼相手が使用者の意図を正しく把握できる。
【0022】
第3の発明では、第1の発明において、前記事前準備キットと、前記予告カードに共通のロゴが付されている、ことを特徴とする。
【0023】
上記構成によると、使用者の死亡後に、家族等が使用者の遺品の中から事前準備キットを特定するのが容易になる。例えば、予告カードが生前に友人等の家族以外の依頼相手に渡されていた場合に、依頼相手から家族に問い合わせをする際に役立てることができる。
【0024】
第4の発明では、第1の発明において、前記事前準備キットを収納可能に構成された収納ケースをさらに備え、前記収納ケースの表面には、前記隠蔽手段で隠蔽された前記記入用紙を依頼相手に渡すことを依頼する文面が印字されている、ことを特徴とする。
【0025】
上記構成によると、予告カードを受け取った依頼相手以外の人が収納ケースの第1発見者であった場合であっても、その第1発見者から依頼相手に記入用紙を渡してもらうことができる。
【0026】
第5の発明では、第1の発明において、前記記入用紙または前記隠蔽手段の外表面のいずれか一方には、前記依頼相手の宛名を記入する宛名記入欄が設けられている、ことを特徴とする。
【0027】
上記の構成によると、予告カードを受け取った依頼相手以外の人が収納ケースの第1発見者であった場合であっても、その第1発見者から依頼相手に記入用紙を渡してもらうことができる。
【0028】
第6の発明では、第1の発明から第4の発明のいずれかにおいて、前記予告カードは、携帯端末を介して依頼相手に送信することができるように構成されている。
【0029】
上記構成によると、予告カードを手渡したり、郵送する手間が省けるので、より簡便にアカウントの処分を依頼したい旨の予告をすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のデジタル遺品整理キットによれば、使用者の生前には、身近な人(例えば家族)や依頼相手にデジタル遺品のアカウント情報を知られることがなく、かつ、使用者の死後には、デジタル遺品の整理に必要な情報が、依頼相手の手元により確実に届くように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】デジタル遺品整理キットの全体構成の一例を示す図である。
【
図4】予告カードの展開図および予告カードを折り合わせたイメージ図である。
【
図5】収納ケースを閉じた状態を示す斜視図である。
【
図6】収納ケースを開いて背面側から見た図である。
【
図7】端末装置を用いて予告カードを送信する例を示す図である。
【
図8】使用者が生前にデジタル遺品整理キットを使用する際の手順、および、使用者の死後においてデジタル遺品が整理されるまでの手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。以下の説明では、各図面の上下左右に基づいた方向を用いて説明をする。そして、図面上方向を単に「上方向」または「上」という、前後左右下のそれぞれの方向についても同様である。
【0033】
本開示では、以下の(1)~(3)に記載する情報等を総称して、「デジタル遺品」と称する。
【0034】
デジタル遺品整理キットKの使用者の死亡後に残される
(1)ネットワークサービスに関するアカウントの契約(金銭が関係する契約を含む)
(2)ネットワークサービスに登録されたアカウント情報
(3)ネットワークサービスで使用者が投稿した情報等のプライベートな情報
そして、本発明は、上記のデジタル遺品を生前に使用していた使用者の死亡後に利用されるデジタル遺品整理キットKである。
【0035】
本開示において、「使用者」とは、デジタル遺品の所有者であり、遺品整理キットを利用する人を指す。
【0036】
本開示において、デジタル遺品を託された人を、「依頼相手」と称する。
【0037】
本開示において、「アカウント」とは、インターネット等のネットワークを介して提供されるネットワークサービスを受けるための権利を指す。
【0038】
「ネットワークサービス」には、例えば、以下の(1),(2)に記載するサービスが含まれる。
【0039】
(1)LINE(登録商標)、TWITTER(登録商標)、Tic Tok(登録商標)、FACEBOOK(登録商標)等のSNS
(2)Apple社、Google社、Yahoo社のようなプラットフォームを提供する企業のメール機能(例えば、iCloud(登録商標)メール)やカレンダー機能等のネットワークを介して提供される各種サービス
本開示において、「アカウント情報」とは、ネットワークサービスのアカウントの登録および利用に際して必要な情報を指す。具体的に、「アカウント情報」は、ID情報とパスワード情報を含む。また、「アカウント名」とは、それぞれのネットワークサービスでアカウントを取得する際に、設定する名称を指す。
【0040】
<デジタル遺品整理キットの構成>
図1は、本実施形態のデジタル遺品整理キットKの全体構成の一例を示す図である。
【0041】
図1に示すように、デジタル遺品整理キットKは、アカウントの処分依頼内容を記入する記入用紙1(以下、単に「記入用紙1」という)と、記入用紙1を封入するための封筒2(特許請求の範囲に記載の「隠蔽手段」に相当)と、予告カード3と、収納ケース4と、メモ用紙5と、を備える。
【0042】
-記入用紙-
図2は、記入用紙1の一例である。
図2では、左側に記入用紙1の表面を示し、右側に記入用紙1の裏面を示している。
【0043】
図2に示すように、記入用紙1の表面には、依頼対象となるネットワークサービスのアカウントを特定可能にする第1記入欄11と、アカウント情報に紐づいたアカウントの処分依頼内容を記入する第3記入欄13と、が上下に並べて設けられている。第1記入欄11は、ネットワークサービスの名称を記入するサービス名記入欄11aと、ユーザ名やアカウント名(以下、総称して「アカウント名」という)を記入するアカウント名記入欄11bとを含む。具体的に、サービス名記入欄11aには、例えば、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の名称、サブスクリプションサービスの名称、ブログサービスの名称が記入される。
【0044】
さらに、記入用紙1の表面において、第1記入欄11の上側には、ロゴ18が印字されている。本開示において、ロゴとは、会社名・商品名等を独特の字体・デザインで表したものを指す。本実施形態では、ロゴ18として、ハトのマークと、「あとはまかせた。」という文字とを組み合わせて構成した例を示す。なお、ロゴ18は、マークと文字の組み合わせに限定されず、例えば、マークのみであってもよい。後述する他のロゴについても同様である。
【0045】
記入用紙の裏面には、ネットワークサービスのアカウント情報を記入する第2記入欄12が設けられている。第2記入欄12は、ID情報を記入するID記入欄14と、パスワード情報を記入するパスワード記入欄15と、が設けられている。
【0046】
ID記入欄14は、メールアドレスの前半部分(ドメイン名を含まない部分)またはユーザ名を記入する記入欄14aと、ドメイン名を記入する記入欄14dと、を含む。
【0047】
記入欄14a,14dおよびパスワード記入欄15では、1文字ごとに区切られた記入枠17が設けられている。それぞれの記入枠17には、文字の記入を補助するガイド用のドットDが印字されている。
【0048】
【0049】
図6の図面左下には、記入枠17を拡大し、記入枠17内に文字「A」を記入した記入例が示されている。
【0050】
図6に示すように、記入枠17内には、左右方向に5列、上下方向に7列のドットDがそれぞれの方向に等ピッチで配置されている。このように、上下方向および左右方向のドット列を奇数列とすることで、記入する文字の中心が取りやすい。また、上下方向のドット列を7列にすることで、数字、アルファベットの大文字および小文字のいずれを記載する場合にも、ドットDがガイドとして機能しやすい。
【0051】
なお、
図2に示すように、ID記入欄14において、登録者数が多いと想定される所定のドメイン名(例えば、「XXXX.co.jp」)をあらかじめ印字し、その中から依頼対象となるドメインを選択するような記入欄14cを設けてもよい。これにより、ドメイン名の記入間違いの防止および記入の手間を削減できる。
【0052】
また、記入欄14aに文字が書ききれなかった場合のために、記入欄14aの後にフリーの記入スペース14bを設けてもよい。同様に、記入欄14dの後にフリーの記入スペース14eを設け、パスワード記入欄15の後にフリーの記入スペース15aを設けてもよい。
【0053】
-封筒-
図3は、隠蔽手段としての封筒2の展開図を示している。
【0054】
この例では、封筒2として、不透明の素材(例えば、白色の厚紙)で形成された矩形状の袋を例示している。この封筒2は、上部に設けられた開口から封筒内に記入用紙1を入れて、フラップ23を閉じて封をすることで、記入用紙1の記入欄(第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13を含む)を隠蔽できる。封筒2の前面中央付近には、依頼相手を特定するための情報(例えば、宛名等)を記入するための宛名記入欄21aが設けられている。
【0055】
なお、封筒2の素材および形状は、記入用紙1の記入欄(第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13を含む)を隠蔽できればよく、特に限定されない。例えば、紙以外の素材を用いてもよく、矩形袋状以外の形状であってもよい。
【0056】
図3は、封筒2が1枚の紙片から構成された例を示している。
図3において、前側片21と後側片22とが左右に並べて配置され、境界に直線状の折り目C1が設けられている。後側片22の右側および下側には、直線状の折り目C2を介して糊代部24が設けられている。前側片21の上側には、直線状の折り目C3を介してフラップ23が設けられている。また、後側片22の上側の左右中央には、矩形状のスリット22aが形成されている。フラップ23には、折りたたんだときに、スリット22aと重なる位置に係止爪23aが形成されている。
【0057】
図3の状態から、糊代部24が後側に折り曲げられ、後側片22が前側片21の後側に折りたたまれ、糊代部24が糊付けされる。そして、記入後の記入用紙1が投入され、フラップ23の係止爪23aが後側片22のスリット22aに係止されることで、簡易的に封筒2に封をすることができる。すなわち、記入用紙1が封筒2内に封入される。
【0058】
なお、
図3に示すように、依頼相手の郵便番号・住所・氏名等が記入でき、封筒2に貼り付け可能に構成された宛名シール29を別途設けてもよい。また、フラップ23の裏側に、依頼相手へのメッセージ記入欄23bを設けてもよい。また、封筒2に記入用紙1と共通した構成(本実施形態の場合、
図1を参照して説明した鳩のロゴと「あとはまかせた。」の文字)のロゴ27を付してもよい。
【0059】
-予告カード-
予告カード3は、使用者が、自身の死後にデジタル遺品の処分を依頼したい旨を依頼相手に予告する際に用いられるカードである。
【0060】
図4は、予告カード3の展開図および予告カード3を折り目C4で折り合わせたときのイメージ図である。言い換えると、
図4では、折り合わせて用いる予告カード3の一例を示している。
図4では、予告カード3は、折り目C4で折り合わせた外側の面を表面とし、内側の面を裏面(つまり、外側から裏面に記載した内容が視認できない状態である)として説明する。
【0061】
図4に示すように、予告カード3の表面および裏面には、上下方向の中央に横方向に延びる直線状の折り目C4が形成されている。以下、折り目C4よりも上側の領域を単に「上側領域」といい、折り目よりも下側の領域を単に「下側領域」という。
【0062】
裏面の上側領域には、自身(使用者)の死後にデジタル遺品の処分を依頼したい旨を記載したメッセージ31が予め印字されている。さらに、記入用紙1、封筒2、および後述する収納ケース4と共通のロゴ32が付されている。このように、依頼相手に渡される予告カード3に、使用者の自宅に残される収納ケース4や封筒2と共通のロゴが付されることにより、使用者の死後に、依頼相手に渡された予告カード3に対応する収納ケース4や封筒2の特定が容易になる。
【0063】
裏面の下側領域および表面の下側領域には、それぞれ、使用者から依頼相手へのフリーのメッセージ記入欄33,34が設けられている。メッセージ記入欄33,34には、例えば、使用者の死後に問い合わせてほしい連絡先、連絡相手等を自由に記載することができる。また、表面の上側領域には、レターの封をイメージしたイラストが印刷されている。
【0064】
ここで、予告カード3には、記入用紙1の第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13の記入内容に相当する記入欄は設けられていない。生前に家族や友人・知人にアカウント情報を教えることなく、死後にデジタル遺品を整理してほしい旨を伝えるために、依頼対象のアカウントについてのアカウント情報は記載しない構成を採用している。
【0065】
なお、予告カード3は、携帯端末等の情報伝達媒体を介して依頼相手に送信することができるように構成されていてもよい。具体例については、以下の「収納ケース」の説明の中であわせて説明する。
【0066】
-収納ケース-
図1、
図5および
図6に示すように、収納ケース4は、三つ折りのケースである。
図1は収納ケース4を展開した状態で内側から見た図であり、
図6は収納ケース4を展開した状態で表紙44や背表紙47の側(以下、「外側」ともいう)から見た図である。
【0067】
図1に示すように、収納ケース4は、中央に設けられた本体42を介して左右両側にマチ付きの封筒41,43が接続され、それぞれの封筒41,43が内側に向かって折り畳めるように構成されている。
図5には、収納ケース4を閉じた状態を示している。
図5に示すように、収納ケース4の表紙44および背表紙47には、それぞれ、記入用紙1および封筒2と共通のロゴ44a,47aが付されている。
【0068】
図1に戻り、収納ケース4の本体42の下側には、上側が開口されたマチ付きの収納袋46が設けられている。収納袋46には、前述の記入用紙1、封筒2、予告カード3、宛名シール29、メモ用紙5が収納できる。
【0069】
ここで、使用者の死後に、予告カード3を受け取った依頼相手以外の人が収納ケースの第1発見者であった場合があり得る。そのような場合に備えて、収納袋46の表面には、左右の封筒41,43に入っている封筒2を依頼相手に送付するように依頼する文面46aが印字されている。なお、文面46aの印字場所は、収納袋46の表面に限定されず、収納ケース4の別の表面(発見者が見つけやすい位置)に印字されてもよい。
【0070】
メモ用紙5は、方眼用紙であり、使用者が生前、デジタル遺品の書き出しや処分方法の検討等に用いることができる。
【0071】
左側の封筒41は、友人・知人(以下、まとめて「知人」という)宛に記載した記入用紙1が封入された封筒2の保管用に用いられる。封筒41は、上向きの上部開口が設けられたマチ付きの封筒であり、開閉自在に設けられたフラップ41aで上部開口が覆われている。フラップ41aの下端部には、係止構造41bが設けられており、フラップ41aを閉じた状態で係止構造41bを係止させることで、封筒41を簡易的に封止できる。
【0072】
また、封筒41の下側表面には、知人であることを示す人のマーク41dと、その周りにマーク41dと共通のカラー(例えば、水色)で色付けされた右下がりの斜めボーダーライン41eが印刷されている。
【0073】
右側の封筒43は、家族宛に記載した記入用紙1が封入された封筒2の保管用に用いられる。封筒43の形状及び封止構造は、封筒41と同じである。具体的に、封筒43の上部開口は、開閉自在に設けられたフラップ43aで覆われており、フラップ43aの下端部には、係止構造43bが設けられている。
【0074】
また、封筒43下側の表面には、家族であることを示す家のマーク43dと、その周りにマーク43dと共通のカラー(例えば、黄色)で色付けされた右下がりの斜めボーダーライン43eが印刷されている。このように、知人用の封筒41と、家族用の封筒43とでそれぞれ統一感のあるカラーを使い分けることで、使用者の視認性、利便性を高めている。
【0075】
図6に示すように、本体42の外表面45には、説明欄45a,45bが設けられている。説明欄45aには、デジタル遺品整理キットKに含まれるセット内容(記入用紙1、封筒2、予告カード3、メモ用紙5、宛名シール29)についての説明が記載されている。説明欄45bには、デジタル遺品整理キットKの使い方の流れが記載されている。
【0076】
説明欄45bには、携帯端末を介して予告カード3を依頼相手に送信することができるようにする構成として、QRコード(商標登録)が印字された領域R1が設けられている。
【0077】
図7には、使用者が所有する端末装置6(例えば、スマートフォン)を用いて、依頼相手の端末装置7(例えば、スマートフォン)に予告カード3を送信する例を示している。端末装置を用いる場合においても、予告カード3は、使用者が、自身の死後にデジタル遺品の処分を依頼したい旨を依頼相手に予告するように構成されている。
【0078】
具体的に、使用者が、端末装置6のカメラ62を介して前述の領域R1に印刷されたQRコードを読み込むと、端末装置6の表示画面61に、あらかじめ用意された予告メッセージ64とロゴ65が表示される。予告メッセージ64の具体的な内容は、特に限定されないが、例えば、前述の
図4の予告カード3のメッセージ31と同じ内容である。また、端末装置6の表示画面61に、使用者が依頼相手に送る任意のメッセージ記入欄66が設けられていてもよい。
【0079】
そして、使用者があて先を指定して送信ボタン(図示省略)を押すと、インターネット等のネットワーク8を介して、予告カード3が依頼相手の端末装置7に送信される。そして、依頼相手の端末操作により、端末装置7の表示画面71に上記予告メッセージ64の内容とロゴ65、任意のメッセージ記入欄66が表示される。
【0080】
図6に戻り、封筒43の裏側の外表面48には、記入用紙1の記入枠17への記入の手引きとして、文字の書き方、前述の記入枠17の拡大図および文字の記入例、文字をかき分けるコツ等が記載されている。
【0081】
<デジタル遺品整理キットの使用方法>
次に、
図8を参照しつつ、想定されるデジタル遺品整理キットKの使用方法の一例について説明する。図面上段には、使用者の生前の流れを記載し、図面下段には、使用者の死後の流れを示す。
【0082】
-使用者の生前の流れ-
まず、使用者は、メモ用紙5を用いて、自身のデジタル遺品の現在の状況を整理する(S11)。
【0083】
次に、使用者は、メモ用紙5の整理内容に基づいて、記入用紙1を記入し(S12)、依頼相手ごとの封筒2に封入する(S13)。
【0084】
次に、この封筒2を(知人用の)封筒41、(家族用の)封筒43のそれぞれに収納する(S14)。
【0085】
その後、使用者は、予告カード3を作成し、その予告カード3を依頼相手に渡す。あるいは、端末装置6を利用して予告カード3を依頼相手に送信する(S15)。
【0086】
-使用者の死後の流れ-
使用者が死亡した場合、発見者(例えば、使用者の親族)がデジタル遺品整理キットKを発見する(S21)。
【0087】
発見者は、例えば、本体42の収納袋46の文面46aを確認し、封筒41,43のそれぞれに収納された封筒2を取り出し、依頼相手に手渡したり、郵送したりする(S22)。
【0088】
発見者から封筒2を受け取った依頼相手は、封筒2を開封して、記入用紙1を取り出す。その後、記入用紙1の第1記入欄11に記載されたアカウントに対して、第2記入欄12に記載されたアカウント情報を用いてアクセスし、第3記入欄13にしたがってデジタル遺品の整理を実行する(S23)。これにより、デジタル遺品の整理が完了する。
【0089】
(その他の実施形態)
なお、本開示における技術は、上記実施形態での説明した構成に限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用が可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、記入用紙1の一方の面(例えば、表面)に第1記入欄11、第3記入欄13を設け、他方の面(例えば、裏面)に第2記入欄12を設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、一方の面に第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13を設けてもよい。
【0091】
例えば、上記実施形態において、第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13を隠ぺいする隠蔽手段が封筒2である例を示したが、これに限定されない。例えば、第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13を隠ぺいする隠蔽手段として、封筒2に代えて剥離可能な弱粘着性シール(図示省略)を用いてもよい。この場合に、宛名記入欄21aは、例えば、記入用紙1内の第1記入欄11、第2記入欄12および第3記入欄13以外の場所や、弱粘着性シールの上に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上に説明したように、本発明は、デジタル遺品の整理を、1または複数のアカウント毎に特定の人に依頼したい人向けのデジタル遺品整理キットとして、特に有用である。
【符号の説明】
【0093】
K デジタル遺品整理キット
1 記入用紙
2 封筒(隠蔽手段)
3 予告カード
4 収納ケース
11 第1記入欄
12 第2記入欄
13 第3記入欄
17 記入枠
21a 宛名記入欄
D ドット