(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166821
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/375 20060101AFI20241122BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A61K31/375
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083192
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(71)【出願人】
【識別番号】509258038
【氏名又は名称】アスパック企業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】須田 康一
(72)【発明者】
【氏名】水野 智博
(72)【発明者】
【氏名】古関 竹直
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 匡
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 学之
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC80
(57)【要約】
【課題】 分子標的薬の使用による副作用に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストで副作用による皮膚皮疹を効果的に抑制できる分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤を提供すること。
【解決手段】 ビタミンC誘導体(例えば、リン酸L-アスコルビルナトリウム)を有効成分として含有することを特徴とするものであり、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC誘導体を有効成分として含有することを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項2】
請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
背部上方から上の皮膚に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられることを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項3】
請求項2記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
顔に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられることを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項4】
請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
ビタミンC誘導体を3重量%以上含有することを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項5】
請求項4記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
ビタミンC誘導体を5重量%以上含有することを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項6】
請求項5記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
ビタミンC誘導体を5重量%含有することを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項7】
請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
ビタミンC誘導体はリン酸L-アスコルビルナトリウムであることを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【請求項8】
請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、
分子標的薬は抗EGFR薬であることを特徴とする分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤に係り、特に、分子標的薬の副作用による皮膚皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストで分子標的薬の副作用による皮膚皮疹を効果的に抑制できるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
癌における化学療法とは、抗腫瘍薬剤(例えば、細胞障害性薬剤、分子標的薬、ホルモン剤、等)と呼ばれる特定の薬剤を使用することにより、癌細胞の増殖を抑えたり、破壊したりする事を目的とした治療法の総称である。化学療法剤は、投与されると全身を巡り、体内に存在する癌細胞を攻撃するため、どこに癌細胞があってもそれを破壊するという前進的な効果が期待できる。
【0003】
しかしながら、化学療法剤は時として、「だるい」、「疲れやすい」、「気力がない」、「体が重い」、「物事に集中できない」、「口内炎」、「下痢、腰痛」、「嘔気、嘔吐、食欲不振」、等の疲労感や倦怠感を中心とした副作用を発生させる。これらの副作用は治療中の患者の生活の質(QOL:Quality of life)を著しく低下させることになる。
【0004】
中でも、QOLの低下に極めて直結する副作用の一つが皮膚炎である。皮膚炎を発症する化学療法剤としては、フルオロウラシル系薬剤(ゼローダ(登録商標)、TS-1(登録商標)、等)、タキサン系薬剤に代表される殺細胞障害性薬剤、抗EGFR薬(アービタックス(登録商標)、ベクティビックス(登録商標))、Multiple TKI(スチバーガ(登録商標)、スーテント(登録商標)、ネクサバール(登録商標))に分類される「分子標的薬」、抗PD-1抗体(オプジーボ(登録商標)、キートルーダ(登録商標))に代表される「免疫チェックポイント阻害剤」、等が挙げられる。
【0005】
特に、「分子標的薬」を用いた場合の副作用として発生する皮膚皮疹は全身に影響を及ぼす場合も多く、顔面、首周辺、背部上方周辺において、ざ瘡様の皮疹と脂肪塞栓、及びそれらの病変部周囲の炎症を発症する。又、指先部では爪囲炎と化膿性肉芽腫が特徴的に発生する。さらに、長期の投与例では乾燥が全身に広がりかゆみを伴う場合もある。その様子を
図3乃至
図9の写真に示す。
【0006】
図3は抗EGFR薬を投与した場合の副作用としての皮膚皮疹を示す正面からの写真、
図4は
図3の写真の一部(顎部)を拡大した写真、
図5は背面からの写真、
図6は
図5の一部(背中)を拡大した写真、
図7は手指の写真、
図8は両足の写真、
図9は
図8の一部(足指)を拡大した写真である。何れにおいてもざ瘡様の皮膚皮疹が観察される。
【0007】
これらの対応としては、テトラサイクリン系抗生剤の内服(ミノマイシン(登録商標))、マクロライド系抗生剤の内服(ルリッド(登録商標))、こまめな洗顔(いわゆるニキビ治療)、乾燥期には保湿剤、ステロイド外用剤の使用が報告されているが、現在のところそれらの方法によって十分な予防・改善効果を発揮しているとは言い難い。
【0008】
具体的には、2011年、2012年の抗EGFR薬使用例35例において、grade2以上のざ瘡様の皮膚皮疹の発現率は24%であった。これまでの大規模臨床試験において報告された大規模臨床試験においても凡そ19%~40%程度であり、現行の対策が効果を発揮していないことが示唆される。
【0009】
尚、分子標的薬の投与による副作用に関してこれを軽減させることが記載されている先行技術文献として、例えば、特許文献1、特許文献2、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-147501号公報
【特許文献2】特開2019-48850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、抗EGFR薬を投与した場合の副作用である皮疹に対して、テトラサイクリン系抗生剤の内服(ミノマイシン(登録商標))、マクロライド系抗生剤の内服(ルリッド(登録商標))、こまめな洗顔(いわゆるニキビ治療)、乾燥期には保湿剤、ステロイド外用剤の使用、等の方法がとられていたが、十分な改善効果を得ることができないという問題があった。
これは他の分子標的薬を使用した場合にもいえる。
【0012】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、分子標的薬の使用による副作用に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストで副作用による皮膚皮疹を効果的に抑制できる分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、ビタミンC誘導体を有効成分として含有することを特徴とするものである。
又、請求項2による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、背部上方から上の皮膚に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられことを特徴とするものである。
又、請求項3による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項2記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、顔に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられことを特徴とするものである。
又、請求項4による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を3重量%以上含有することを特徴とするものである。
又、請求項5による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項4記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を5重量%以上含有することを特徴とするものである。
又、請求項6による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項5記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を5重量%含有することを特徴とするものである。
又、請求項7による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体はリン酸L-アスコルビルナトリウムであることを特徴とするものである。
又、請求項8による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、分子標的薬は抗EGFR薬であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本願発明の請求項1による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、ビタミンC誘導体を有効成分として含有するので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項2による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、背部上方から上の皮膚に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられるので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項3による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項2記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、顔に発生した分子標的薬副作用皮膚皮疹の改善に用いられるので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項4による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を3重量%以上含有するので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項5による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項4記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を5重量%以上含有するので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項6による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項5記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体を5重量%含有するので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項6による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、ビタミンC誘導体はリン酸L-アスコルビルナトリウムであるので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
又、請求項7による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤によると、請求項1記載の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤において、分子標的薬は抗EGFR薬であるので、分子標的薬の使用による副作用である皮疹に対して、抗生物質に頼らず、簡便、安全、且つ、低コストでこれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の実施例1を示す写真で、
図1(a)は改善剤処方前の状態を示す写真、
図1(b)は改善剤処方後の状態を示す写真である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態の実施例1を示す写真で、
図2(a)は改善剤処方前の状態を示す写真、
図2(b)は改善剤処方後の状態を示す写真、
図2(c)は改善剤処方後の状態を示す写真、である。
【
図3】抗EGFR薬を投与した場合の副作用としての皮膚皮疹を示す正面からの写真である。
【
図4】
図3の一部(顎部)を拡大して示す写真である。
【
図5】抗EGFR薬を投与した場合の副作用としての皮膚皮疹を示す背面からの写真である。
【
図6】
図5の一部(背中)を拡大して示す写真である。
【
図7】抗EGFR薬を投与した場合の副作用としての皮膚皮疹を示す手指先の写真である。
【
図8】抗EGFR薬を投与した場合の副作用としての皮膚皮疹を示す両足の写真である。
【
図9】
図8の一部(右足指)を拡大して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1及び
図2を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
この第1の実施の形態による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、ビタミンC誘導体であるリン酸L-アスコルビルナトリウムの水溶液である。上記分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤を患部に塗布することで、分子標的薬の副作用による皮膚皮疹を改善するものである。
【0017】
ビタミンC誘導体とは、ビタミンC(L-アスコルビン酸)を改良した加工物の総称である。又、ビタミンC誘導体はビタミンCが持つ課題、すなわち、不安定で分子構造が壊れやすい、皮膚への吸収性が低い、皮膚乾燥を起こす、等を解決したものであり、食品添加物並びに医薬部外品として認可され、美白有効成分として広く使用されている。
【0018】
リン酸L-アスコルビルナトリウムはビタミンC誘導体の一種であり、化粧品用途/医薬部外品(有効成分:美白)用途に使用されている。効果としては、紫外線等により発生する活性酸素の除去機能(ラジカルスカベンジ)に優れ、ニキビ・創傷・熱傷等の深刻な皮膚のダメージを改善する。又、ビタミンCはコラーゲン合成を促進することから、様々なストレスや加齢等による皮膚の変化を回復する。
尚、ビタミンC誘導体に関しては、皮膚に起こる様々なトラブルを解消することが報告されているものの、化学療法剤、特に、分子標的薬を使用した際の皮膚皮疹を伴う皮膚炎症に対する予防的・改善的効果を持つことについては全く報告されていない。
【0019】
ビタミンC誘導体としては、上記リン酸L-アスコルビルナトリウム以外に、例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、リン酸アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビン酸アミノプロリル、アスコルビン酸グルコシド、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、等が挙げられる。
【0020】
本実施の形態におけるビタミンC誘導体の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、5.0重量%である。
【0021】
本実施の形態による分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤を含有する医薬品・医薬部外品・化粧品の剤形は、本発明の効果を損なわなければ特に限定しない。例えば、スプレー、軟膏剤、ローション剤およびクリーム剤等の皮膚外用剤に用いられる剤型であればすべて適応できる。これらの皮膚外用剤に用いる基剤としては、公知のもの、又は、今後新たに提供されるものを用いればよく、特に限定はない。例えば、ワセリン、ひまし油、シリコーン、スクワラン、アクリル酸ナトリウム、ベヘニルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、ステアリルアルコール、エタノール、バチルアルコール、フェノキシエタノール、1,3-ブチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸、レシチンおよび精製水等を挙げることができ、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明の分子標的薬副作用皮膚皮疹改善剤は、上記基剤成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で医薬品、医薬部外品、化粧品を製造するにあたって許容される各種成分、すなわち、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、粘稠剤、緩衝剤、吸着剤、溶剤、乳化剤および安定化剤等の添加剤を適宜加えることができる。
【0023】
以上述べたように、本発明はビタミンC誘導体を有効成分とする皮疹改善剤であり、ビタミンC誘導体は医薬品成分ではなく、一般流通している化粧品や健康食品や一般食品においても配合されている成分であるため、安全性も高い。
又、皮膚外用剤として患部に塗布するだけでよく、使用方法は簡単である。
又、爪周辺炎症には効果を発揮せず、顔面・首周辺・背部上方周辺を中心とした皮膚皮疹に対して改善効果を示す。
【0024】
以下、実施例を挙げてこの第1の実施の形態について具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では特段の記載のない限り百分率(%)は重量%を示す。
【実施例0025】
実施例1について説明する。
処方例1にはリン酸L-アスコルビルナトリウムが5.0重量%含有されている。リン酸L-アスコルビルナトリウムの量としては、好ましくは3.0重量%以上、より好ましくは、5.0重量%以上である。上限は凡そ10重量%程度である。10重量%を超えると溶解性の点で問題がある。
処方例1において、ビタミンC誘導体のリン酸L-アスコルビルナトリウムとして昭和電工株式会社の「アスコルビン酸PS」、プロパンジオールとしてデュポン株式会社社製の「ゼメアセレクトプロパンジオール」、グリセリンとして阪本薬品工業株式会社製の「化粧品用濃グリセリン」、をそれぞれ使用した。又、精製水として水道水又は地下水をメンブレンフィルタで濾過したものを使用した。
分子標的薬における皮膚副作用の程度評価について説明する。皮膚皮疹の程度の評価は、抗癌剤の副作用に関しまとめられたCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)version4.0(May, 2009)記載の「ざ瘡用皮疹の病変に対するGrade」を、ビタミンC誘導体を含有した外用剤を塗布した病変を評価することに特化した形で改変することで評価した。下記に評価の基準を記載する。
本実施例1においては、塗布終了後において改善が見られた被験者(Excellent+Good+Fair)を改善が見られた被験者として判断し、下記の計算式で改善率(%)を算出した。
改善率(%)={(改善が見られた被験者数)/(試験に用いた被験者数)}×100
本実施例1においては、抗EGFR薬を使用した9人の被験者に対して、処方例1に示した溶液をスプレーボトルに充填し、ワンプッシュあたり、2~3ml量を1日3~5回患部に塗布し、2週間~8週間後に効果を検証した。