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特開2024-166828コンバータ装置、及びこれを備えるモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166828
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】コンバータ装置、及びこれを備えるモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H02M7/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083203
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】角藤 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真一
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006BB05
5H006CA01
5H006CB02
5H006CB04
5H006CC01
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】切替スイッチング素子をオンさせたときのコンデンサへ流れるラッシュ電流を抑制することができるコンバータ装置を提供する。
【解決手段】コンバータ装置10は、交流電源2と、第1スイッチング素子Tr1を備える第1アーム部arm1と、第2スイッチング素子Tr2を備える第2アーム部arm2とを備えるブリッジ整流回路5と、ブリッジ整流回路5に並列接続され、直列接続された複数のコンデンサC1,C2と、ブリッジ整流回路5と複数のコンデンサを流れる電流経路を切替える切替スイッチング素子SW1と、交流電源2の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて生成した昇圧制御信号に基づいて第1スイッチング素子Tr1及び第2スイッチング素子Tr2のオン/オフを制御することにより出力電圧を昇圧した後に切替スイッチング素子をオンに切替える制御部24とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子と前記第1スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第3スイッチング素子とを備える第1アーム部と、第2スイッチング素子と前記第2スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第4スイッチング素子とを備える第2アーム部とを備えるブリッジ整流回路と、
前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、
直列接続された複数の前記スイッチング素子の間の接続点、又は直列接続された前記スイッチング素子と前記整流素子との間の接続点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続された切替スイッチング素子と、
前記切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部と
を備え、
前記制御部は、前記交流電源の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて昇圧制御信号を生成し、生成した前記昇圧制御信号に基づいて前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオン/オフを制御することにより前記コンデンサの端子間電圧を昇圧した後に前記切替スイッチング素子をオンに切替えるコンバータ装置。
【請求項2】
交流電源から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子と前記第1スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第3スイッチング素子を備える第1アーム部と、第2スイッチング素子と前記第2スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第4スイッチング素子を備える第2アーム部とを備えるブリッジ整流回路と、
前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、
直列接続された複数の前記スイッチング素子の間の接続点、又は直列接続された前記スイッチング素子と前記整流素子との間の接続点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続された切替スイッチング素子と、
前記切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部と
を備え、
前記制御部は、前記低圧制御から前記高圧制御に切替える際に、前記切替スイッチング素子を漸近的に増加するデューティ比に従ってPWM制御させた後に前記切替スイッチング素子をオンに切替えるコンバータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記端子間電圧が前記高圧制御の端子間電圧の近傍に設定された所定の閾値以上となった場合に、前記切替スイッチング素子をオンに切替える請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記デューティ比を所定値まで増加させた場合に、前記切替スイッチング素子をオンに切替える請求項2に記載のコンバータ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のコンバータ装置を備えるモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ装置、及びこれを備えるモータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタによって構成されたブリッジ回路を用いた整流制御及び昇圧制御が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、交流電源から電力を供給する、ダイオードやコンデンサを備えるブリッジ回路を備えたインバータ装置の構成が開示されている。このインバータ装置は、交流電源から出力された交流電圧を直流電圧に変換するとともに、変換した直流電圧の周波数に応じて、ブリッジ回路の導通状態を切替えるリレー素子のオン/オフを制御し、ブリッジ整流モードと倍圧整流モードの2つの整流モードを切替えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-112575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているブリッジ回路は、ブリッジ回路の動作中にスイッチング素子(リレー素子)のオン/オフを切替えると、切替えるタイミングによっては、例えば、ブリッジ回路が備えるコンデンサの蓄電量が少ない場合には、コンデンサに過大な電流が流れてしまい、ブリッジ回路が備える電子部品が破損してしまう虞があった。また、電子部品が破損に至らない場合においても、過大な電流が流れることにより、各電子部品の耐久性や寿命を低下させてしまう虞があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、切替スイッチング素子をオンさせたときのコンデンサへ流れるラッシュ電流を抑制することができるコンバータ装置、及びこれを備えるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るコンバータ装置は、交流電源から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子と前記第1スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第3スイッチング素子とを備える第1アーム部と、第2スイッチング素子と前記第2スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第4スイッチング素子とを備える第2アーム部とを備えるブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、直列接続された複数の前記スイッチング素子の間の接続点、又は直列接続された前記スイッチング素子と前記整流素子との間の接続点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続された切替スイッチング素子と、前記切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部とを備え、前記制御部は、前記交流電源の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて昇圧制御信号を生成し、生成した前記昇圧制御信号に基づいて前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオン/オフを制御することにより前記コンデンサの端子間電圧を昇圧した後に前記切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0008】
本開示の一態様に係るコンバータ装置は、交流電源から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子と前記第1スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第3スイッチング素子を備える第1アーム部と、第3スイッチング素子と前記第3スイッチング素子と直列接続される整流素子又は第4スイッチング素子を備える第2アーム部とを備えるブリッジ整流回路と、前記ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサと、直列接続された複数の前記スイッチング素子の間の接続点、又は直列接続された前記スイッチング素子と前記整流素子との間の接続点に第1端子が接続され、複数の前記コンデンサの間の中点に第2端子が接続された切替スイッチング素子と、前記切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部とを備え、前記制御部は、前記低圧制御から前記高圧制御に切替える際に、前記切替スイッチング素子を漸近的に増加するデューティ比に従ってPWM制御させた後に前記切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0009】
本開示の一態様に係るモータ駆動装置は、上記コンバータ装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コンバータ装置が備える電子部品が破損することや寿命により劣化することを抑制し、コンバータ装置を安全に駆動することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2図1において交流電源から出力される電圧が正の極性である区間における電流の経路を示す図である。
図3図1において交流電源から出力される電圧が負の極性である区間における電流の経路を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る低圧制御から高圧制御へ切替える際にPAM制御を実行する場合の各波形を示すタイミングチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係るコンバータ装置において切替スイッチング素子をオンにした際に発生するラッシュ電流の比較図である。
図6図1において、ブリッジ整流回路をフルブリッジレス回路に変更した場合のモータ駆動装置の構成を示す図である。
図7図6のモータ駆動装置において、低圧制御から高圧制御へ切替える際にPAM制御を実行する場合の各波形を示すタイミングチャートである。
図8図1において、切替スイッチング素子をパワートランジスタに変更した場合のモータ駆動装置の構成を示す図である。
図9図8の切替スイッチング素子のPWM信号のデューティ比が漸近的に増加することを例示する図である。
図10】本開示の一実施形態に係るコンバータ装置において切替スイッチング素子をオンにした際に発生するラッシュ電流の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係るコンバータ装置、及びこれを備えるモータ駆動装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるモータ駆動装置1の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、図1に示すように、コンバータ装置10と、インバータ装置40と、交流電源2と、モータ50とを備える。また、コンバータ装置10は、ブリッジ整流回路5と、入力電流検出部21と、入力電圧検出部22と、ゼロクロス検出部23と、制御部24とを備える。
モータ駆動装置1は、交流電源2からの交流電力をコンバータ装置10によって直流電力に変換し、直流電力をインバータ装置40によって三相交流電力に変換してモータ50に出力する装置である。
【0014】
交流電源2は、例えば、単相の交流電力をコンバータ装置10に供給する。交流電源2は、例えば、電源電圧及び入力電流をコンバータ装置10に供給する。
コンバータ装置10は、交流電力を直流電力へ変換し、その直流電力をインバータ装置40に出力する。
インバータ装置40は、例えば、直流電力を三相交流電力に変換して、モータ50に出力する。
モータ50は、インバータ装置40から供給される三相交流電力によって回転駆動される。モータ50は、例えば、空気調和機に用いられる圧縮機モータである。
【0015】
コンバータ装置10は、例えば、力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を有する。また、コンバータ装置10は、例えば、交流電源2から出力される交流電圧の極性に応じてスイッチング素子Tr1,Tr2をスイッチング制御することにより、交流電力の整流化を行う同期整流制御及びコンデンサC1,C2の端子間電圧(コンバータ装置10の出力電圧)を昇圧するPAM制御を行う。
図1に示すように、コンバータ装置10は、ブリッジ整流回路5と、リアクトルL1と、コンデンサC1,C2と、切替スイッチング素子SW1と、制御部24とを備える。また、コンバータ装置10は、例えば、入力電流検出部21、入力電圧検出部22、ゼロクロス検出部23などの各種検出部を備えている。
【0016】
ブリッジ整流回路5は、例えば、第1アーム部arm1と、第1アーム部arm1に並列に接続された第2アーム部arm2とを備える。
第1アーム部arm1は、スイッチング素子(第1スイッチング素子)Tr1と、スイッチング素子Tr1に並列接続されたダイオードD1と、スイッチング素子Tr1に直列接続されたダイオードD3とを備える。スイッチング素子Tr1のソースは、ダイオードD3のアノードに接続され、リアクトルL1を介して交流電源2の第1端子に接続される。
第2アーム部arm2は、スイッチング素子(第2スイッチング素子)Tr2と、スイッチング素子Tr2に並列接続されたダイオードD2と、スイッチング素子Tr2に直列接続されたダイオードD4とを備える。スイッチング素子Tr2のソースは、ダイオードD4のアノードに接続されている。スイッチング素子Tr2のソースは、交流電源2の第2端子に接続される。
【0017】
スイッチング素子Tr1,Tr2は、後述するように制御部24からのPWM信号によってオン/オフが制御される。スイッチング素子Tr1,Tr2は、例えば、MOSFETであり、各スイッチング素子の電気的特性は同じである。スイッチング素子Tr1,Tr2を用いることで、コンバータ装置10のスイッチングを高速で行うことができ、更に電圧ドロップの小さいMOSFETに電流を流すことで、同期整流制御を行うことが可能であり、回路の導通損失を低減できる。
なお、MOSFETは、好ましくは、例えば、オン抵抗が小さく高速タイプのスーパージャンクションMOSFETである。または、酸化ガリウムやシリコンカーバイド(SiC)等を用いた次世代パワーMOSFETであってもよい。
また、電気的特性とは、絶縁性、誘電性、帯電性等の意味に限らず、電子部品の使用時における耐熱性や印加可能な電圧範囲及び電流範囲等、電子部品の仕様に関わる特性を指すものとする。
【0018】
リアクトルL1は、交流電源2とブリッジ整流回路5との間に設けられている。リアクトルL1は、交流電源2から供給される電力をエネルギとして蓄え、更にこのエネルギを放出することで昇圧を行う。
【0019】
コンデンサC1,C2は、ダイオードD3やダイオードD4を通って整流化された電圧を平滑化して、直流電圧を生成する。複数のコンデンサC1,C2は、ブリッジ整流回路5の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続されている。なお、コンデンサC1は、正極側がダイオードD3及びダイオードD4のカソードに接続され、負極側がコンデンサC2の正極側に接続されている。また、コンデンサC2は、正極側がコンデンサC1の負極側に接続され、負極側がダイオードD1及びダイオードD2のアノードに接続されている。
ここで、コンデンサC1及びコンデンサC2は、ブリッジ整流回路5の出力する直流電力を平滑化するコンデンサである。コンデンサC1及びコンデンサC2によって、直流電圧の電圧値の変動を抑制する。コンデンサC1及びコンデンサC2は、例えば、電解コンデンサである。
【0020】
切替スイッチング素子SW1は、直列接続されたスイッチング素子Tr2及びダイオードD4の間の接続点P1に第1端子が接続され、直列接続されたコンデンサC1及びコンデンサC2の間に位置する切替スイッチング素子SW1の中点P2に第2端子が接続されている。また、切替スイッチング素子SW1は、制御部24から制御信号が入力されることによってオン/オフが制御される。切替スイッチング素子SW1の例として、リレー素子やMOSFET等のパワートランジスタが挙げられる。
【0021】
入力電流検出部21は、交流電源2からコンバータ装置10へ供給される入力電流の電流値を、交流電源2が出力する交流電圧の周期よりも充分に短い周期毎に検出する。例えば、入力電流検出部21は、交流電源2とコンバータ装置10との間に設けられた電流センサを含み、その電流センサの読み取った入力電流の電流値(入力電流に係る物理量の一例)を検出する。また、例えば、入力電流検出部21は、交流電源2とコンバータ装置10との間に設けられたシャント抵抗を含み、そのシャント抵抗の両端の電位差(入力電流に係る物理量の一例)を抵抗値で除算して電流値を検出するものであってもよい。
入力電流検出部21は、検出した入力電流の電流値を制御部24に出力する。
【0022】
入力電圧検出部22は、交流電源2からコンバータ装置10へ供給される入力電流の電圧値を、交流電源2が出力する交流電圧の周期よりも充分に短い周期毎に検出する。例えば、入力電圧検出部22は、交流電源2とコンバータ装置10との間に設けられた電圧センサを含み、その電圧センサの読み取った入力電圧の電圧値(入力電圧に係る物理量の一例)を検出する。
入力電圧検出部22は、検出した入力電圧の電圧値をゼロクロス検出部23に出力する。
【0023】
ゼロクロス検出部23は、入力電圧検出部22によって検出される交流電源の電圧の値に関して、その正負が切替わったか否か(ゼロクロス点に達したか否か)を判定する機能を有する。ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧の極性を検出する極性検出部であり、ゼロクロス信号を制御部24に出力する。例えば、ゼロクロス検出部23は、交流電源2の電圧が正の期間中には制御部24に「1」の信号を出力し、交流電源2の電圧が負の期間中には制御部24に「0」の信号を出力する。
【0024】
制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0025】
制御部24は、入力電流検出部21から入力電流の電流値を受取る。また、制御部24は、ゼロクロス検出部23からゼロクロス信号を受取る。そして、制御部24は、入力電流検出部21及びゼロクロス検出部23から受取った信号に基づいて、各スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフ制御及び切替スイッチング素子SW1のオン/オフ制御を行う。
【0026】
具体的には、制御部24は、低圧の電圧を出力する低圧制御において、切替スイッチング素子SW1をオフに制御するとともに、以下に説明する通り、スイッチング素子Tr1、Tr2のオン/オフを半周期毎に切替える。なお、制御部24は、モータ回転数が所定の回転数以下の場合に、低圧制御を行う。
例えば、制御部24は、交流電源2の正極側から電力が供給される半周期においては、スイッチング素子Tr1をオフ、スイッチング素子Tr2をオンに制御する。これにより、図2に太線で示されるように、交流電源2の第1端子からリアクトルL1、ダイオードD3、コンデンサC1、コンデンサC2、スイッチング素子Tr2、交流電源2の第2端子へと電流が流れ、コンデンサC1,C2が充電される。
【0027】
また、制御部24は、交流電源2の負極側から電力が供給される半周期においては、スイッチング素子Tr1をオン、スイッチング素子Tr2をオフに制御する。これにより、図3に太線で示されるように、交流電源2の第2端子からダイオードD4、コンデンサC1、コンデンサC2、スイッチング素子Tr1、リアクトルL1、交流電源2の第1端子へと電流が流れ、コンデンサC1,C2が充電される。
【0028】
また、制御部24は、高圧の電圧を出力する高圧制御において、切替スイッチング素子SW1をオンに制御するとともに、以下に説明する通り、スイッチング素子Tr1のオン/オフを半周期毎に切替える。また、スイッチング素子Tr2は常時オフにする。制御部24は、モータ回転数が所定の回転数を超えた場合に、高圧制御を行う。
例えば、制御部24は、交流電源2の正極側から電力が供給される半周期においては、スイッチング素子Tr1をオフ、スイッチング素子Tr2をオフに制御する。これにより、交流電源2の第1端子からリアクトルL1、ダイオードD3、コンデンサC1、切替スイッチング素子SW1、交流電源2の第2端子へと電流が流れ、コンデンサC1が充電される。
【0029】
また、制御部24は、交流電源2の負極側から電力が供給される半周期においては、スイッチング素子Tr1をオン、スイッチング素子Tr2をオフに制御する。すなわち、交流電源2の負極側から電力が供給される半周期においては、同期整流制御が実行される。これにより、交流電源2の第2端子から切替スイッチング素子SW1、コンデンサC2、スイッチング素子Tr1、リアクトルL1、交流電源2の第1端子へと電流が流れる。また、この電流により、コンデンサC2が充電される。なお、仮にスイッチング素子Tr1をオフにした場合、ダイオード整流制御となる。
【0030】
以上より、高圧制御において、交流電源2の正極側から電力が供給される半周期においてはダイオードD3を流れる電流によりコンデンサC1が充電され、交流電源2の負極側から電力が供給される半周期においては、ダイオードD1を流れる電流によりコンデンサC2が充電される。これにより、コンデンサC1,C2の端子間電圧に交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧が発生することとなり、この出力電力がインバータ装置へ供給される。
【0031】
上述のように、制御部24は、モータ回転数に応じて切替スイッチング素子SW1のオン/オフを切替えることにより、低圧制御と高圧制御とを切替える。しかしながら、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える際に、切替スイッチング素子SW1の両端に位置する接続点P1と中点P2との間に電位差が存在する場合、切替スイッチング素子SW1をオンにした瞬間に、コンデンサC1,C2等のコンバータ装置10が備える電子部品にラッシュ電流が流れ込んでしまい、各電子部品の耐久性や寿命を低下させてしまう虞がある。
【0032】
そこで、発明者らは、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前に、コンバータ装置10の回路に流れる電流を制御し、コンデンサC1,C2の端子間電圧を漸近的に昇圧することにより、切替スイッチング素子SW1をオンにした際のラッシュ電流を抑制するコンバータ装置10の制御を発案した。具体的には、以下に説明するように、制御部24がPAM制御を行い、コンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧した後に、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えることとした。
【0033】
以下、切替スイッチング素子SW1をオフからオンに切替える際のPAM制御について説明する。
制御部24は、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフをそれぞれ切替える制御信号を各スイッチング素子Tr1,Tr2へ出力することにより、PAM制御を実行する。ここで、制御部24が行うPAM制御は、入力電圧に応じてPAM制御信号(昇圧制御信号)を生成するPWM(Pulse Width Modulation)生成技術を用いればよい。また、PWM生成技術については、基準電圧と三角波を比較して信号を生成する公知のものを適宜採用すればよく、ここでは詳述しない。
【0034】
具体的には、制御部24は、PAM制御の実行時において、交流電源2の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いてPAM制御信号を生成する。そして、制御部24は、生成したPAM制御信号に基づいてスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを制御することによりコンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧する。
【0035】
具体的には、制御部24は、交流電源2から出力される電圧が正の極性である区間において、スイッチング素子Tr1をオフにし、スイッチング素子Tr2については所定のキャリア周波数で複数回に亘ってオン/オフを切替える。ここで、スイッチング素子Tr2がオンの場合、コンバータ装置10には力率改善電流が流れる。このとき、リアクトルL1にはエネルギが蓄えられる。そして、リアクトルL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1,C2に放出されることで、コンデンサC1,C2の端子間電圧の昇圧及び力率の改善がなされる。
【0036】
また、制御部24は、交流電源2から出力される電圧が負の極性である区間において、スイッチング素子Tr2をオフにし、スイッチング素子Tr1については所定のキャリア周波数で複数回に亘ってオン/オフを切替える。ここで、スイッチング素子Tr1がオンの場合、コンバータ装置10には力率改善電流が流れる。このとき、リアクトルL1にはエネルギが蓄えられる。そして、リアクトルL1に蓄えられたエネルギがコンデンサC1,C2に放出されることで、コンデンサC1,C2の端子間電圧の昇圧及び力率の改善がなされる。
【0037】
このように、制御部24は、交流電源2の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いてPAM制御信号を生成し、生成したPAM制御信号に基づいて、交流電源2から出力される電圧の極性に対応してスイッチング素子Tr1,Tr2の駆動状態を切替えてPAM制御を実行する。
そして、制御部24は、コンデンサC1、C2の端子間電圧が予め設定されている所定の電圧に達すると、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える。このように、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行してコンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧してから、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えることにより、コンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することが可能となる。
【0038】
(第1実施形態における各波形について)
次に、図4は、低圧制御から高圧制御へ切替える際にPAM制御を実行する場合の各波形を示すタイミングチャートである。なお、図4(a)は、交流電源2の出力電圧を示す波形図である。図4(b)は、スイッチング素子Tr1の駆動状態を示す波形図である。図4(c)は、スイッチング素子Tr2の駆動状態を示す波形図である。図4(d)は、切替スイッチング素子SW1の駆動状態を示す波形図である。図4(e)は、コンバータ装置10の出力電圧を示す波形図である。
制御部24は、上述した通り、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えてPAM制御を行うことにより、交流電源2から出力される入力電流を交流電源2の出力する交流電圧の周期に近づけるとともに、高調波歪みを所望の歪み率以下にすることができる。
【0039】
図4(a)~(e)より、コンバータ装置10の出力電圧が1倍圧(低圧)で駆動している期間において、制御部24は、入力電圧の極性に対応して、スイッチング素子Tr1,Tr2のそれぞれのオン/オフを交互に切替え、入力電圧に同期して電流を整流化する同期整流制御を実行する。
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧とする高圧制御を実行する前、すなわち、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える以前の期間において、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えてPAM制御を行う。これにより、コンデンサC1,C2の端子間電圧を漸近的に昇圧して、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧に近づける。
【0040】
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧が交流電源2の入力電圧Vinの2倍に達した際に、スイッチング素子Tr1,Tr2をオフするとともに、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えて高圧制御を実行する。なお、コンデンサC1,C2の端子間電圧の検出には、例えば、電圧センサや検出抵抗を設ける等公知の手法を適宜採用すればよい。
次に、制御部24は、高圧制御を実行した後において、スイッチング素子Tr2をオフにするとともに、スイッチング素子Tr1のオン/オフを交互に切替えて同期整流制御を実行する。
なお、制御部24は、切替スイッチング素子SW1をオンにした状態でさらにPAM制御を実行することにより、コンバータ装置10の出力電圧をさらに高電圧にすることとしてもよい。
【0041】
図5は、上述のコンバータ装置10において切替スイッチング素子SW1をオンにした際に発生するラッシュ電流の比較図である。図5において、太線は、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行しなかった場合のコンデンサC1に流れる電流である。また、破線は、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行しなかった場合のコンデンサC2に流れる電流である。細線は、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行した場合のコンデンサC1,C2に流れる電流である。
【0042】
図5より、切替スイッチング素子SW1をオンにした直後の破線、太線及び細線を比較すると、細線の電流の振幅は、破線及び太線の各電流の振幅よりも小さい。これは、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行したことにより、ラッシュ電流の発生が抑制されているためである。すなわち、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行してコンデンサC1,C2の端子間電圧を予め昇圧することにより、切替スイッチング素子SW1をオンにした場合にコンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することができる。
【0043】
また、切替スイッチング素子SW1をオンにした後の破線及び太線の2つ目の電流の振幅は、ラッシュ電流の影響により一時的に小さくなってしまう。一方、細線の3つ目及び4つ目の電流の振幅は、ラッシュ電流の影響が抑制されているため小さくなることがなく安定している。
【0044】
したがって、制御部24が低圧制御から高圧制御へ切替える前にPAM制御を実行することにより、切替スイッチング素子SW1をオンにした際のラッシュ電流を抑制することができる。これにより、低圧制御から高圧制御へ切替える際にコンデンサC1,C2へ流れる電流量を安定させることができ、コンバータ装置10を安全に駆動することができる。
なお、図4の説明においては、低圧制御時のスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを切替えるタイミングは、交流電源2の入力電圧Vinのゼロクロスとしたが、この例に限らず、交流電源2の入力電圧Vinの位相を変調してスイッチング素子Tr1,Tr2の切替タイミングを変更してもよい。
【0045】
(フルブリッジレス回路である場合の例)
また、図1に示すブリッジ整流回路5は、ハーフブリッジレス回路の構成であるが、ダイオードD3に並列接続されたスイッチング素子(第3スイッチング素子)Tr3と、ダイオードD4に並列接続されたスイッチング素子(第4スイッチング素子)Tr4とをさらに備えるフルブリッジレス回路に対しても、上述の制御を適用することが可能である。図6は、図1におけるブリッジ整流回路5をフルブリッジレス回路に変更した場合のモータ駆動装置1の構成を示す図である。
【0046】
ブリッジ整流回路5がフルブリッジレス回路である場合においても、制御部24は、PAM制御の実行時において、交流電源2の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いてPAM制御信号を生成し、生成したPAM制御信号に基づいてスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを制御することによりコンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧する。このとき、制御部24は、スイッチング素子Tr3,Tr4の両方をオフにしてもよく、又はスイッチング素子Tr1,Tr2のそれぞれに対応して相補PWM制御を実行してもよい。
【0047】
制御部24は、モータ回転数が所定の回転数以下の場合に、低圧制御を行う。
例えば、制御部24は、交流電源2から出力される電圧が正の極性である区間においては、スイッチング素子Tr2,Tr3をオン、かつスイッチング素子Tr1,Tr4についてはオフに制御する。スイッチング素子Tr2,Tr3がオンの場合、交流電源2の第1端子→リアクトルL1→スイッチング素子Tr3→コンデンサC1→コンデンサC2→スイッチング素子Tr2→交流電源2の第2端子へと電流が流れ、コンデンサC1、C2が充電される。
【0048】
また、制御部24は、交流電源2から出力される電圧が負の極性である区間においては、スイッチング素子Tr1,Tr4をオン、かつスイッチング素子Tr2,Tr3についてはオフに制御する。スイッチング素子Tr1,Tr4がオンの場合、交流電源2の第1端子→スイッチング素子Tr4→コンデンサC1→コンデンサC2→スイッチング素子Tr1→リアクトルL1→交流電源2の第2端子へと電流が流れ、コンデンサC1、C2が充電される。
なお、フルブリッジレス回路の場合、スイッチング素子Tr3,Tr4を常時オフにする場合、スイッチング素子Tr3,Tr4に代わってダイオードD3,D4へ電流が流れる。
【0049】
ブリッジ整流回路5がフルブリッジレス回路であって、スイッチング素子Tr3,Tr4を備える場合においても、制御部24は、ブリッジ整流回路5がハーフブリッジレス回路である場合と同様に、交流電源2から出力される電圧の極性に対応してスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを切替えて、PAM制御を実行する。すなわち、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える前にPAM制御を実行して、コンデンサC1,C2の端子間電圧を予め昇圧することにより、切替スイッチング素子SW1をオンにした場合にコンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することができる。なお、制御部24がPAM制御を実行する際、スイッチング素子Tr3,Tr4は、スイッチング素子Tr1,Tr2に対応する相補PWM制御によりオン/オフが切換えられてもよい。
【0050】
図7は、図6のモータ駆動装置1において、低圧制御から高圧制御へ切替える際にPAM制御を実行する場合の各波形を示すタイミングチャートである。なお、図7(a)は、交流電源2の出力電圧を示す波形図である。図7(b)は、スイッチング素子Tr1の駆動状態を示す波形図である。図7(c)は、スイッチング素子Tr2の駆動状態を示す波形図である。図7(d)は、スイッチング素子Tr3の駆動状態を示す波形図である。図7(e)は、スイッチング素子Tr4の駆動状態を示す波形図である。図7(f)は、切替スイッチング素子SW1の駆動状態を示す波形図である。図7(g)は、コンバータ装置10の出力電圧を示す波形図である。
制御部24は、ブリッジ整流回路5がフルブリッジレス回路である場合においても、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えてPAM制御を行うことにより、交流電源2から出力される入力電流を交流電源2の出力する交流電圧の周期に近づけるとともに、高調波歪みを所望の歪み率以下にすることができる。
【0051】
図7(a)~(g)より、コンバータ装置10の出力電圧が1倍圧(低圧)で駆動している期間において、制御部24は、入力電圧の極性に対応して、スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4のそれぞれのオン/オフを交互に切替え、入力電圧に同期して電流を整流化する同期整流制御を実行する。
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧とする高圧制御を実行する前、すなわち、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える以前の期間において、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えてPAM制御を行う。これにより、コンデンサC1,C2の端子間電圧を漸近的に昇圧して、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧に近づける。この時、図7(d),(e)より、制御部24は、スイッチング素子Tr3,Tr4がスイッチング素子Tr1,Tr2のそれぞれに対応する相補PWM制御を実行するように、スイッチング素子Tr3,Tr4へ制御信号を送信する。
【0052】
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧が交流電源2の入力電圧Vinの2倍に達した際に、スイッチング素子Tr1~Tr4をオフするとともに、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えて高圧制御を実行する。なお、この時、スイッチング素子Tr1~Tr4をオフすることに代わって、再び同期整流制御を実行してもよい。
図7において、制御部24は、高圧制御を実行した後、スイッチング素子Tr3,Tr4はオフするとともに、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えて同期整流制御を実行する。
なお、制御部24は、切替スイッチング素子SW1をオンにした状態で同様にPAM制御を実行することにより、コンバータ装置10の出力電圧をさらに高電圧にする。
【0053】
以上より、制御部24は、ブリッジ整流回路5がフルブリッジレス回路である場合においても、ブリッジ整流回路5がハーフブリッジレス回路である場合と同様に、切替スイッチング素子SW1をオンに切替える以前の期間において、スイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを交互に切替えてPAM制御を行うことが可能である。そのため、ブリッジ整流回路5がフルブリッジレス回路である場合においても、切替スイッチング素子SW1をオンにした際のコンバータ装置10に発生するラッシュ電流を抑制することができる。
【0054】
また、上述の例では、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧を漸近的に昇圧して、コンデンサC1,C2の端子間電圧が交流電源2の入力電圧Vinの2倍に達した際にPAM制御を中断し、切替スイッチング素子SW1をオンにしていたが、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えるタイミングはこの例に限らない。例えば、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧が高圧制御の端子間電圧の近傍に設定された所定の閾値以上となった場合に、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えることにしてもよい。なお、所定の閾値は、コンバータ装置10の駆動条件やコンバータ装置10が備える電子部品の耐圧に基づいて決定されればよい。
【0055】
〔第2実施形態〕
図8は、図1において、切替スイッチング素子をパワートランジスタに変更した場合のモータ駆動装置1の構成を示す図である。
上述した第1実施形態では、スイッチング素子Tr1、Tr2をPAM制御することにより切替スイッチング素子SW1の切替え時におけるサージ電流を抑制したが、本実施形態は、切替スイッチング素子SW2をPWM制御することによりコンデンサC1,C2の端子間電圧を漸近的に昇圧させる点で上述した第1実施形態と異なる。また、本実施形態では、上述した切替スイッチング素子SW1をパワートランジスタである切替スイッチング素子SW2に変更する。
以下、上述した第1実施形態と共通する点については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0056】
切替スイッチング素子SW2は、切替スイッチング素子SW1と同様に、直列接続されたスイッチング素子Tr2及びダイオードD4の間の接続点P1に第1端子が接続され、コンデンサC1及びコンデンサC2の間の中点P2に第2端子が接続されている。また、切替スイッチング素子SW2は、制御部24から制御信号が入力されることによってオン/オフのいずれかの状態とされる。切替スイッチング素子SW2は、例えば、MOSFET等のパワートランジスタである。
【0057】
制御部24は、切替スイッチング素子SW2をオンに切替えて高圧制御を実行する以前の期間において、図9に示すように、切替スイッチング素子SW2を漸近的に増加するデューティ比に従ってPWM制御する。制御部24が、切替スイッチング素子SW2のPWM信号のデューティ比を漸近的に増加することによって、コンデンサC1,C2の端子間電圧を高圧制御の端子間電圧に徐々に近づけることができる。そして、高圧制御が実行される場合において、切替スイッチング素子SW2をオンにした際のコンバータ装置10に発生するラッシュ電流を抑制することができる。
【0058】
具体的には、コンバータ装置10の出力電圧が1倍圧(低圧)で駆動している期間において、制御部24は、入力電圧の極性に対応して、スイッチング素子Tr1,Tr2のそれぞれのオン/オフを交互に切替え、入力電圧に同期して電流を整流化する同期整流制御を実行する。
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧とする高圧制御を実行する前、すなわち、切替スイッチング素子SW2をオンに切替える以前の期間において、切替スイッチング素子SW2のPWM信号のデューティ比を漸近的に増加する。これにより、切替スイッチング素子SW2の両端子間の電位差を徐々に低減させ、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧に近づける。
【0059】
なお、切替スイッチング素子SW2がオンである時に、スイッチング素子Tr2がオンであると、逆電流が発生してしまい、電子部品の耐久性や寿命を低下させてしまう虞がある。そのため、制御部24は、切替スイッチング素子SW2がオンである時には、スイッチング素子Tr2は常にオフにするか、又は、切替スイッチング素子SW2がオフである時にのみスイッチング素子Tr2をオフにする相補PWM制御を実行する。
【0060】
次に、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧が交流電源2の入力電圧Vinの2倍に達した際に、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替えて高圧制御を実行する。なお、コンデンサC1,C2の端子間電圧の検出には、例えば、電圧センサや検出抵抗を設ける等、公知の手法を適宜採用すればよい。
制御部24は、高圧制御を実行した後、スイッチング素子Tr2をオフして、スイッチング素子Tr1のオン/オフを交互に切替えて同期整流制御を実行する。
【0061】
図10は、切替スイッチング素子SW1をオンにした際のコンバータ装置10に発生するラッシュ電流の比較図である。図10において、太線は、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替える前に切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加しなかった場合のコンデンサC1に流れる電流である。また、破線は、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替える前に切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加しなかった場合のコンデンサC2に流れる電流である。細線は、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替える前に切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加した場合のコンデンサC1,C2に流れる電流である。なお、図10において、細線の振幅に描かれる垂線は、切替スイッチング素子SW2のオン/オフが切替わっていることを表す。
【0062】
図10より、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替えた後の破線、太線及び細線を比較すると、細線の電流の振幅は、破線及び太線の各電流の振幅よりも小さい。これは、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替える前に切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加したことにより、ラッシュ電流の発生が抑制されているためである。すなわち、切替スイッチング素子SW2をオンに切替える前に切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加して、切替スイッチング素子SW2の両端子間の電位差を徐々に低減させることにより、切替スイッチング素子SW1をオンに切替えた場合にコンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することができる。
【0063】
また、切替スイッチング素子SW1をデューティ比100%でオンに切替えた後の破線及び太線の2つ目の電流の振幅は、ラッシュ電流の影響により一時的に小さくなってしまう。一方、細線の3つ目及び4つ目の電流の振幅は、ラッシュ電流の影響が抑制されているため小さくなることがなく安定している。
【0064】
したがって、制御部24が切替スイッチング素子SW1をオンに切替えた際のラッシュ電流を抑制することにより、低圧制御から高圧制御へ切替える際にコンデンサC1,C2へ流れる電流量を安定させることができ、コンバータ装置10を安全に駆動することができる。
【0065】
上述の例では、制御部24は、切替スイッチング素子SW2のデューティ比を漸近的に増加し、コンデンサC1,C2の端子間電圧が交流電源2の入力電圧Vinの2倍に達した際に、切替スイッチング素子SW2をオンに切替えていたが、切替スイッチング素子SW2をオンに切替えるタイミングはこの例に限らない。例えば、制御部24は、コンデンサC1,C2の端子間電圧が高圧制御の端子間電圧の近傍に設定された所定の閾値以上となった場合に、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替えてもよい。また、コンデンサC1,C2の端子間電圧が高圧制御の端子間電圧の近傍に設定された所定の閾値以上となった場合に限らず、デューティ比が所定値まで増加した場合に、切替スイッチング素子SW2をデューティ比100%でオンに切替えてもよい。なお、所定の閾値又はデューティ比の所定値は、コンバータ装置10の駆動条件やコンバータ装置10が備える電子部品の耐圧に基づいて決定されればよい。
【0066】
また、上述の例では、ブリッジ整流回路5がハーフブリッジレス回路の例を示したが、この例に限らず、フルブリッジレス回路であってもよい。この場合、制御部24は、切替スイッチング素子SW2をPWM制御することに代わって、図6に例示するスイッチング素子Tr3,Tr4のそれぞれをPWM制御することにより、コンデンサC1,C2の端子間電圧を逐次的に昇圧して、コンデンサC1,C2の端子間電圧を交流電源2の入力電圧Vinの2倍の直流電圧に近づけることとしてもよい。
【0067】
本開示の幾つかの本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
制御部24は、低圧制御から高圧制御へ切替える際に、交流電源2の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて昇圧制御信号を生成し、生成した昇圧制御信号を用いてスイッチング素子Tr1,Tr2のオン/オフを制御する。これにより、コンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧する。そして、制御部24が、コンデンサC1,C2の端子間電圧を昇圧させた後に切替スイッチング素子SW1をオンに切替えることにより、切替スイッチング素子SW1をオンさせたときのコンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することができる。この結果、コンバータ装置10が備える電子部品が破損することを抑制し、コンバータ装置10を安全に駆動することができる。
【0068】
また、他の実施形態によれば、制御部24は、切替スイッチング素子SW1の代わりにパワートランジスタである切替スイッチング素子SW2を利用し、低圧制御から高圧制御に切替える際に、切替スイッチング素子SW2へPWM信号を出力することによって切替スイッチング素子SW2のオン/オフを切替える。この際、切替スイッチング素子SW2のPWM信号のデューティ比は漸近的に増加することにより、切替スイッチング素子SW2の両端子間の電位差を徐々に低減させることができる。これにより、低圧制御から高圧制御へ切替える際において、コンデンサC1,C2へ流れるラッシュ電流を抑制することができる。この結果、コンバータ装置10が備える電子部品が破損することを抑制し、コンバータ装置10を安全に駆動することができる。
【0069】
また、制御部24は、コンバータ装置10の出力電圧が所定の閾値以上となった場合に切替スイッチング素子SW1をオンに切替える、又は、切替スイッチング素子SW2のPWM信号のデューティ比を所定値まで増加させた場合に切替スイッチング素子SW2をオンに切替える。所定の閾値又はデューティ比を所定値は、高圧制御の端子間電圧の近傍の値に基づいて設定されているので、この状態で制御部24が切替スイッチング素子をオンに切替えることで、コンデンサC1,C2にラッシュ電流が流れることを抑制することができる。これにより、コンバータ装置10を安全に駆動することができる。
【0070】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0071】
(付記事項)
上述した実施形態に記載のコンバータ装置、及びこれを備えたモータ駆動装置は、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係るコンバータ装置は、交流電源(2)から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子(Tr1)と第1スイッチング素子と直列接続される整流素子(D3)又は第3スイッチング素子(Tr3)とを備える第1アーム部(arm1)と、第2スイッチング素子(Tr2)と第2スイッチング素子と直列接続される整流素子(D4)又は第4スイッチング素子(Tr4)とを備える第2アーム部(arm2)とを備えるブリッジ整流回路(5)と、ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサ(C1,C2)と、直列接続された複数のスイッチング素子の間の接続点(P1)、又は直列接続されたスイッチング素子と整流素子との間の接続点(P1)に第1端子が接続され、複数のコンデンサの間の中点(P2)に第2端子が接続された切替スイッチング素子(SW1)と、切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部(24)とを備え、制御部は、交流電源の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて昇圧制御信号を生成し、生成した昇圧制御信号に基づいて第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子のオン/オフを制御することによりコンデンサの端子間電圧を昇圧した後に切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0072】
本開示のコンバータ装置によれば、制御部は、低圧制御から高圧制御へ切替える際に、交流電源の交流電圧の周波数よりも高い周波数のキャリア周波数を用いて昇圧制御信号を生成し、生成した昇圧制御信号を用いて第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子のオン/オフを制御する。換言すると、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をPWM制御する。これにより、コンデンサの端子間電圧を昇圧させた後に、切替スイッチング素子をオンに切替える。このように、切替スイッチング素子をオンに切替える前に、コンバータ装置の出力電圧を昇圧しておくことにより、切替スイッチング素子をオンに切替えたときにコンデンサへ流れるラッシュ電流を抑制することができる。この結果、コンバータ装置が備える電子部品が破損することを抑制し、コンバータ装置を安全に駆動することができる。
【0073】
本開示の第2態様に係るコンバータ装置は、交流電源(2)から供給される交流電力を整流するとともに、第1スイッチング素子と第1スイッチング素子(Tr1)と直列接続される整流素子(D3)又は第3スイッチング素子(Tr3)を備える第1アーム部(arm1)と、第2スイッチング素子(Tr2)と第2スイッチング素子と直列接続される整流素子(D4)又は第4スイッチング素子(Tr4)を備える第2アーム部(arm1)とを備えるブリッジ整流回路(5)と、ブリッジ整流回路の出力側に並列接続されるとともに、互いに直列接続された複数のコンデンサ(C1,C2)と、直列接続された複数のスイッチング素子の間の接続点(P1)、又は直列接続されたスイッチング素子と整流素子との間の接続点(P1)に第1端子が接続され、複数のコンデンサの間の中点(P2)に第2端子が接続された切替スイッチング素子(SW2)と、切替スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、低圧の電圧を出力する低圧制御と、高圧の電圧を出力する高圧制御とを切替える制御部(24)とを備え、制御部は、低圧制御から高圧制御に切替える際に、切替スイッチング素子を漸近的に増加するデューティ比に従ってPWM制御させた後に切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0074】
本開示のコンバータ装置によれば、切替スイッチング素子は、低圧制御から高圧制御に切替える際に、制御部から出力されるPWM信号によってオン/オフが切替えられる。この際、PWM信号のデューティ比は漸近的に増加されることから、切替スイッチング素子の両端子間の電位差を徐々に低減させることができる。これにより、低圧制御から高圧制御へ切替える際において、コンデンサへ流れるラッシュ電流を抑制することができる。この結果、コンバータ装置が備える電子部品が破損することを抑制し、コンバータ装置を安全に駆動することができる。
【0075】
本開示の第3態様に係るコンバータ装置は、前記第1態様において、制御部は、前記端子間電圧が前記高圧制御の端子間電圧の近傍に設定された所定の閾値以上となった場合に、切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0076】
本開示のコンバータ装置によれば、制御部は、端子間電圧が所定の閾値以上となった場合に、切替スイッチング素子をオンに切替える。所定の閾値が高圧制御の端子間電圧の近傍に設定されているので、この状態で制御部が切替スイッチング素子をオンに切替えることで、コンデンサにラッシュ電流が流れることを抑制することができる。これにより、コンバータ装置を安全に駆動することができる。
【0077】
本開示の第4態様に係るコンバータ装置は、前記第2態様において、デューティ比を所定値まで増加させた場合に、切替スイッチング素子をオンに切替える。
【0078】
本開示のコンバータ装置によれば、制御部は、デューティ比を所定値まで増加させた場合に、切替スイッチング素子をオンに切替える。所定値は、切替スイッチング素子の両端子間の電位差が高圧制御の端子間電圧の近傍にとなる値に設定されているので、この状態で制御部が切替スイッチング素子をオンに切替えることで、コンデンサにラッシュ電流が流れることを抑制することができる。これにより、コンバータ装置を安全に駆動することができる。
【0079】
本開示の第5態様に係るモータ駆動装置は、前記第1態様乃至前記第4態様のいずれかのコンバータ装置を備える。
【符号の説明】
【0080】
1 モータ駆動装置
2 交流電源
5 ブリッジ整流回路
10 コンバータ装置
21 入力電流検出部
22 入力電圧検出部
24 制御部
40 インバータ装置
50 モータ
arm1 第1アーム部
arm2 第2アーム部
C1,C2 コンデンサ
D1~D4 ダイオード
L1 リアクトル
P1 接続点
P2 中点
Tr1~Tr4 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10