(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166830
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ボイラシステムおよびボイラシステムの運転方法
(51)【国際特許分類】
F23K 5/22 20060101AFI20241122BHJP
F23D 11/44 20060101ALI20241122BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20241122BHJP
F01K 17/02 20060101ALI20241122BHJP
F23C 1/12 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
F23K5/22
F23D11/44 A
F22B35/00 B
F01K17/02
F23C1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083205
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
【テーマコード(参考)】
3K068
3K091
3L021
【Fターム(参考)】
3K068AA11
3K068AB23
3K068BB02
3K068BB03
3K068BB12
3K068BB24
3K068BB25
3K068EA03
3K091BB02
3K091BB25
3K091CC06
3K091CC13
3K091CC23
3K091DD01
3L021BA08
3L021DA26
(57)【要約】
【課題】アンモニア燃料の外部への流出や熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させる。
【解決手段】アンモニア燃料バーナによりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ10と、アンモニア燃料バーナへアンモニア燃料を供給する第1燃料供給系統210と、ボイラ10で生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、蒸気タービンから抽気される蒸気により駆動されるとともにボイラ10へボイラ水を供給するボイラ給水ポンプ123を有する給水系統と、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気を給水系統へ排出する排出系統250と、排出系統を流通する蒸気との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を気化させるアンモニア気化器251と、を備えるボイラシステム100を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナによりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、
前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統と、
前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプを有する給水系統と、
前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を前記給水系統へ排出する排出系統と、
前記排出系統を流通する前記蒸気との熱交換により前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化器と、を備えるボイラシステム。
【請求項2】
前記アンモニア気化器を通過した前記蒸気との熱交換により前記アンモニア気化器へ供給される液体の前記アンモニア燃料を予熱するアンモニア予熱器を備える請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記アンモニア気化器は、前記排出系統を流通する前記蒸気と第1熱媒体とを熱交換させる第1熱交換部と、前記第1熱交換部により加熱された前記第1熱媒体との熱交換により前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させる気化部と、を有する請求項1または請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記アンモニア予熱器は、前記アンモニア気化器を通過した前記蒸気と第2熱媒体とを熱交換させる第2熱交換部と、前記第2熱交換部により加熱された前記第2熱媒体との熱交換により前記アンモニア気化器へ供給される液体の前記アンモニア燃料を予熱する予熱部と、を有する請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項5】
前記蒸気タービンを回転駆動した前記蒸気を凝縮させて前記給水系統へ供給する復水器と、
前記排出系統は、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気の一部を前記アンモニア気化器へ導く第1排出ラインと、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気の他の一部を前記復水器へ導く第2排出ラインと、を有する請求項1または請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項6】
前記第1排出ラインに配置される第1調整弁と、
前記第2排出ラインに配置される第2調整弁と、
前記アンモニア気化器を通過した前記アンモニア燃料の温度または圧力を検出する検出部と、
前記検出部が検出する前記温度または前記圧力が所定の目標値となるように前記第1調整弁および前記第2調整弁の開度を制御する制御部と、を備える請求項5に記載のボイラシステム。
【請求項7】
ボイラシステムの運転方法であって、
前記ボイラシステムは、
バーナによりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、
前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統と、
前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプを有する給水系統と、
前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を前記給水系統へ排出する排出系統と、を備え、
前記排出系統を流通する前記蒸気と前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体とを熱交換させ、前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化工程を備えるボイラシステムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラシステムおよびボイラシステムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素化に有効な技術として、発電機等を駆動する蒸気を発生させるための燃料としてアンモニア燃料を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される発電システムは、蒸気タービンから排出される蒸気を海水との熱交換により凝縮させる復水器と、復水器で加熱された海水との熱交換により液体のアンモニア燃料を気化させる気化器とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、海水と液体のアンモニア燃料とを熱交換させる気化器に故障が発生した場合、アンモニア燃料が海水に混入して外部へ流出し、環境への影響を与える可能性がある。また、蒸気タービンから排出される蒸気に対して海水の温度が低い場合、アンモニア燃料を気化させるのに十分な温度に海水で加熱することが困難となる可能性がある。この場合、アンモニア燃料を気化させるための熱量の不足を補うため、蒸気タービンで使用される蒸気の一部を抽気してアンモニアの気化に使用すると発電システムの熱効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、アンモニア燃料の外部への流出や熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させることが可能なボイラシステムおよびボイラシステムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係るボイラシステムは、バーナによりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統と、前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプを有する給水系統と、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を前記給水系統へ排出する排出系統と、前記排出系統を流通する前記蒸気との熱交換により前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化器と、を備える。
【0007】
本開示に係るボイラシステムの運転方法において、前記ボイラシステムは、バーナによりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラと、前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統と、前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプを有する給水系統と、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を前記給水系統へ排出する排出系統と、を備え、前記排出系統を流通する前記蒸気と前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体とを熱交換させ、前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アンモニア燃料の外部への流出や熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させることが可能なボイラシステムおよびボイラシステムの運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るボイラを示す概略構成図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るボイラシステムにおけるボイラ水の循環系統を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るボイラシステムにおける第1燃料供給系統および排出系統を示す概略構成図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係るボイラシステムにおける第1燃料供給系統および排出系統を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下に、本開示の第1実施形態に係るボイラシステムについて、図面を参照して説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。以降の説明で、上や上方とは鉛直方向上側を示し、下や下方とは鉛直方向下側を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含む。
【0011】
図1は、本開示の第1実施形態に係るボイラ10を示す概略構成図である。本実施形態のボイラ10は、固体燃料を粉砕した微粉燃料およびアンモニアを含むアンモニア燃料をバーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成することが可能なボイラである。固体燃料としては、バイオマス燃料や石炭などが使用される。
【0012】
ボイラ10は、火炉11と燃焼装置20と燃焼ガス通路12とを有する。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置されている。火炉11の内壁面を構成する火炉壁11aは、複数の伝熱管と、伝熱管同士を接続するフィンとで構成され、微粉燃料の燃焼により発生した熱を、伝熱管の内部を流通する水や蒸気と熱交換して回収するとともに、火炉壁11aの温度上昇を抑制している。
【0013】
燃焼装置20は、火炉11の下部領域に設置されている。本実施形態の燃焼装置20は、火炉壁11aに装着された複数の微粉燃料バーナ(第2バーナ)21A,21B,21C(以下、一括して「微粉燃料バーナ21」と記載する場合がある。)と、アンモニア燃料バーナ(第1バーナ)210Aと、を有する。微粉燃料バーナ21は、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたもの(例えば、四角形の火炉11の各コーナ部に設置された4個)を1セットとして、鉛直方向に沿って複数段配置されている(
図1に示す例では3段)。アンモニア燃料バーナ210Aは、火炉11の周方向に沿って均等間隔で配設されたもの(例えば、四角形の火炉11の各コーナ部に設置された4個)を1セットとして1段又は複数段配置されている(
図1に示す例では1段)。
【0014】
なお、
図1では、1セットの微粉燃料バーナ21のうちの2個のみを記載し、各セットに符号21A,21B,21Cを付している。火炉11の形状やバーナの段数、一つの段におけるバーナの数、バーナの配置などは、この実施形態に限定されるものではない。
【0015】
微粉燃料バーナ21A,21B,21Cは、それぞれ、複数の微粉燃料供給管22A,22B,22C(以下、一括して「微粉燃料供給管22」と記載する場合がある。)を介して、複数の微粉燃料供給部31A,31B,31C(以下、一括して「微粉燃料供給部31」と記載する場合がある。)に連結されている。
【0016】
微粉燃料供給部31A,31B,31Cは、例えば、内部に粉砕テーブル(図示略)が駆動回転可能に支持されていて、粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示略)が粉砕テーブルの回転に連動回転可能に支持されて構成されている竪型ローラミルである。粉砕ローラと粉砕テーブルが協働して粉砕された固体燃料は、微粉燃料供給部31A,31B,31Cに供給される一次空気(搬送用ガス、酸化性ガス)により、微粉燃料供給部31A,31B,31Cが備える分級機(図示略)に搬送される。
【0017】
分級機では、微粉燃料バーナ21A,21B,21Cでの燃焼に適した粒径以下の微粉燃料と、該粒径より大きな粗粉燃料とに分級される。微粉燃料は、分級機を通過して、一次空気と共に微粉燃料供給管22A,22B,22Cを介して微粉燃料バーナ21A,21B,21Cに供給される。分級機を通過しなかった粗粉燃料は、微粉燃料供給部31A,31B,31Cの内部で、自重により粉砕テーブル上に落下し、再粉砕される。
【0018】
第1燃料供給系統(アンモニア燃料供給系統)210は、アンモニアを含むアンモニア燃料をアンモニア燃料バーナ210Aに供給する装置である。アンモニア燃料は、燃料供給配管210aを介してアンモニア燃料バーナ210Aに供給される。第1燃料供給系統210を含むアンモニア燃料の燃料供給については、後述する。
【0019】
本実施形態のボイラシステム100において、ボイラ10は、アンモニア燃料バーナ210A(第1バーナ)によりアンモニア燃料(第1燃料)を燃焼させ、微粉燃料バーナ(第2バーナ)21A,21B,21Cにより微粉燃料(第2燃料)を燃焼させて、蒸気を生成する。なお、アンモニア燃料バーナ(第1バーナ)210Aと微粉燃料バーナ(第2バーナ)21の数や配置は、
図1の形態に限定されない。
【0020】
本実施形態のボイラシステム100において、第1燃料供給系統210は、アンモニア燃料バーナ210Aへアンモニア燃料を供給する系統である。また、本実施形態のボイラシステム100において、微粉燃料供給部31A,31B,31Cおよび微粉燃料供給管22A,22B,22Cは、微粉燃料バーナ21A,21B,21Cへ微粉燃料を供給する系統(第2燃料供給系統)である。
【0021】
微粉燃料バーナ21およびアンモニア燃料バーナ210Aの装着位置における火炉11の炉外側には、風箱(エアレジスタ)23が設けられており、この風箱23には風道(空気ダクト)24の一端部が連結されている。風道24の他端部には、押込通風機(FDF:Forced Draft Fan)32が連結されている。押込通風機32から供給された空気は、風道24に設置された空気予熱器42で加熱され(詳細は後述する)、風箱23を介して微粉燃料バーナ21に二次空気(燃焼用空気、酸化性ガス)として供給され、火炉11の内部に投入される。
【0022】
燃焼ガス通路12は、火炉11の鉛直方向上部に連結されている。燃焼ガス通路12には、燃焼ガスの熱を回収するための熱交換器として、過熱器102A,102B,102C(以下、一括して「過熱器102」と記載する場合がある。)、再熱器103A,103B(以下、一括して「再熱器103」と記載する場合がある。)、節炭器104が設けられており、火炉11で発生した燃焼ガスと各熱交換器の内部を流通する給水や蒸気との間で熱交換が行われる。なお、各熱交換器の配置や形状は、
図1に記載した形態に限定されない。
【0023】
燃焼ガス通路12の下流側には、熱交換器で熱回収された燃焼ガスが排出される煙道13が連結されている。煙道13には、風道24との間に空気予熱器(エアヒータ)42が設けられており、風道24を流れる空気と、煙道13を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行い、微粉燃料供給部31A,31B,31Cに供給する一次空気や微粉燃料バーナ21及びアンモニア燃料バーナ210Aに供給する二次空気を加熱することで、水や蒸気との熱交換後の燃焼ガスから、さらに熱回収を行う。
【0024】
煙道13には、空気予熱器42よりも上流側の位置に、脱硝装置43が設けられていてもよい。脱硝装置43は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を、煙道13内を流通する燃焼ガスに供給し、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)と還元剤との反応を、脱硝装置43内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減するものである。
【0025】
煙道13の空気予熱器42より下流側には、ガスダクト41が連結されている。ガスダクト41には、燃焼ガス中の灰などを除去する電気集じん機などの集じん装置44や硫黄酸化物を除去する脱硫装置46などの環境装置、また、それらの環境装置に排ガスを導くための誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)45が設けられている。ガスダクト41の下流端部は、煙突47に連結されており、環境装置で処理された燃焼ガスが、排ガスとして系外に排出される。
【0026】
ボイラ10において、微粉燃料供給部31A,31B,31Cが駆動すると、微粉燃料が、一次空気とともに微粉燃料供給管22A,22B,22Cを介して微粉燃料バーナ21A,21B,21Cに供給される。また、空気予熱器42で加熱された二次空気が、風道24から風箱23を介して微粉燃料バーナ21に供給される。微粉燃料バーナ21A,21B,21Cは、燃料と一次空気とが混合した微粉燃料混合気を火炉11に吹き込むと共に、二次空気を火炉11に吹き込む。
【0027】
また、ボイラ10において、アンモニア燃料を使用する場合は、第1燃料供給系統210から燃料供給配管210aを介してアンモニア燃料バーナ210Aにアンモニア燃料が供給される。また、空気予熱器42で加熱された二次空気が、風道24から風箱23を介してアンモニア燃料バーナ210Aに供給される。アンモニア燃料バーナ210Aは、アンモニア燃料を火炉11に吹き込むと共に、二次空気を火炉11に吹き込む。
【0028】
火炉11に吹き込まれた微粉燃料混合気及びアンモニア燃料が着火し、二次空気と反応することで火炎を形成する。火炉11内の下部領域で火炎が形成され、高温の燃焼ガスが火炉11内を上昇し、燃焼ガス通路12に流入する。なお、本実施形態では、酸化性ガス(一次空気、二次空気)として空気を用いるが、空気よりも酸素割合が多いものや逆に少ないものであってもよく、供給される燃料量に対する酸素量の比率を適正な範囲に調整することで、火炉11において安定した燃焼が実現される。
【0029】
燃焼ガス通路12に流入した燃焼ガスは、燃焼ガス通路12の内部に配置された過熱器102、再熱器103、節炭器104で水や蒸気と熱交換した後、煙道13に排出され、脱硝装置43で窒素酸化物が除去され、空気予熱器42で一次空気及び二次空気と熱交換した後、さらにガスダクト41に排出され、集じん装置44で灰などが除去され、脱硫装置46で硫黄酸化物が除去された後、煙突47から系外に排出される。なお、燃焼ガス通路12における各熱交換器及び煙道13からガスダクト41における各装置の配置は、燃焼ガス流れに対して、必ずしも上述の記載順に配置されなくともよい。
【0030】
次に、ボイラ10を含むボイラシステム100において、ボイラ水をボイラ10に供給し、ボイラ水から蒸気を生成して蒸気タービン111へ供給する構成について説明する。
図2は、本開示の第1実施形態に係るボイラシステム100におけるボイラ水の循環系統を示す概略構成図である。なお、
図2では燃焼ガス通路12内の各熱交換器(過熱器102A,102B,102C,再熱器103A,103B,節炭器104)の位置を正確に示しているものではなく、各熱交換器の燃焼ガス流れに対する配置順も
図2に限定されるものではない。
【0031】
図2に示すように、本実施形態のボイラシステム100は、ボイラ10に設けられた熱交換器と、ボイラ10で生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン111と、蒸気タービン111に連結され蒸気タービン111の回転力によって発電を行う発電機113とを備える。
【0032】
蒸気タービン111は、例えば、高圧タービン111Aと中圧タービン111Bと低圧タービン111Cから構成される。ボイラ10の過熱器102で加熱された蒸気が高圧タービン111Aを回転駆動した後、ボイラ10の再熱器103で再過熱され、中圧タービン111B、及び低圧タービン111Cを回転駆動する。低圧タービン111Cには、復水器112が連結されており、低圧タービン111Cを回転駆動した蒸気が、この復水器112で冷却水(例えば、海水や河川水など)との熱交換によって凝縮されて復水となる。
【0033】
復水器112は、給水ラインL1を介して節炭器104に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、蒸気タービン111を駆動する蒸気の一部が抽気されて、抽気ライン(図示略)を介して熱源として供給され、節炭器104へ供給される給水が加熱される。
【0034】
ボイラシステム100は、給水ラインL1と、復水ポンプ121と、低圧給水ヒータ122と、ボイラ給水ポンプ123とで、ボイラ10へボイラ水を供給する給水系統240を構成する。
図2に示すように、ボイラ給水ポンプ123は、ボイラ10へボイラ水を供給するポンプ部123aとポンプ部123aを駆動するタービン部123bとを有する。タービン部123bは、中圧タービン111Bの出口から抽気ラインL6を介して供給される蒸気により回転駆動する。ポンプ部123aは、タービン部123bから伝達される動力により動作し、給水ラインL1を流通するボイラ水を給送する。
【0035】
抽気ラインL6には、制御弁127が配置されている。制御弁127は、中圧タービン111Bの出口から抽気ラインL6を介してボイラ給水ポンプ123のタービン部123bへ抽気される蒸気の流量を調整する。
【0036】
例えば、ボイラ10が貫流ボイラの場合について説明する。節炭器104は、火炉壁11aを構成する伝熱管に連結されている。節炭器104で加熱された給水は、火炉壁11aを構成する伝熱管を通過する際に、火炉11内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器125へと導かれる。汽水分離器125にて分離された蒸気は、過熱器102へと供給され、汽水分離器125にて分離されたドレン水は、汽水分離器ドレンタンク126へ流入し、ドレン水ラインL2を介して復水器112へと導かれる。
【0037】
燃焼ガスが燃焼ガス通路12を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102、再熱器103、節炭器104で熱回収される。一方、ボイラ給水ポンプ123から供給された給水は、節炭器104で予熱された後、火炉壁11aを構成する伝熱管を通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器125に導かれる。汽水分離器125で分離された蒸気は、過熱器102A、過熱器102B、過熱器102Cに導入され、燃焼ガスによって過熱される。
【0038】
過熱器102で生成された過熱蒸気は、蒸気ラインL3を介して高圧タービン111Aに供給され、高圧タービン111Aを回転駆動する。高圧タービン111Aから排出された蒸気は、蒸気ラインL4を介して、再熱器103A、再熱器103Bに導入されて再度過熱される。再過熱された蒸気は、蒸気ラインL5を介して、中圧タービン111Bを経て低圧タービン111Cに供給され、中圧タービン111Bおよび低圧タービン111Cを回転駆動する。蒸気タービン111の回転軸が発電機113を回転駆動することにより、発電が行われる。低圧タービン111Cから排出された蒸気は、復水器112で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して、再び、節炭器104に送られる。
【0039】
次に、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気の熱を利用して液体のアンモニア燃料を気化させてアンモニア燃料バーナ210Aに供給する構成について
図2および
図3を参照して説明する。
図3は、本開示の第1実施形態に係るボイラシステム100における第1燃料供給系統210および排出系統250を示す概略構成図である。
【0040】
図2および
図3に示すように、ボイラシステム100は、排出ラインL7と、排出ラインL7から分岐した排出ライン(第1排出ライン)L8および排出ライン(第2排出ライン)L9により、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気を給水系統240へ排出する排出系統250を構成する。排出系統250の排出ラインL8には、アンモニア気化器251と、アンモニア予熱器252とが配置されている。排出ラインL8には第1調整弁253が配置され、排出ラインL9には第2調整弁254が配置される。
【0041】
排出ラインL8は、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気の一部をアンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252を経由して復水器112へ導く配管である。排出ラインL9は、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気の他の一部をアンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252を経由せずに復水器112へ直接的に導く配管である。排出ラインL7から排出ラインL8へ導かれる蒸気の供給量と、排出ラインL7から排出ラインL9へ導かれる蒸気の供給量との比率は、第1調整弁253および第2調整弁254の開度により調整される。
【0042】
アンモニア気化器251は、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。アンモニア気化器251には、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気が排出ラインL7および排出ラインL8を介して供給される。アンモニア気化器251に導入される蒸気の温度は、例えば、40℃以上かつ80℃以下の範囲の温度である。
【0043】
アンモニアタンク260に貯留された液体のアンモニア燃料は、給送ポンプ211により給送され、燃料供給配管210aを流通する。燃料供給配管210aを流通する液体のアンモニア燃料は、アンモニア気化器251に導かれる。アンモニア気化器251は、排出ラインL8を流通する蒸気との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を気化させる。
【0044】
アンモニア気化器251で気化されたアンモニア燃料は、アンモニア燃料バーナ210Aに供給される。第1燃料供給系統210からアンモニア燃料バーナ210Aへアンモニア燃料を供給する供給状態と、第1燃料供給系統210からアンモニア燃料バーナ210Aへアンモニア燃料を供給しない遮断状態とは、バーナ弁210Bにより切り替えられる。
【0045】
アンモニア予熱器252は、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。アンモニア予熱器252には、アンモニア気化器251を通過した蒸気が排出ラインL8を介して供給される。排出ラインL8には、アンモニア気化器251を通過した蒸気をアンモニア予熱器252へ給送する給送ポンプ255が配置されている。燃料供給配管210aを流通する液体のアンモニア燃料は、アンモニア予熱器252に導かれる。アンモニア予熱器252は、アンモニア気化器251を通過した蒸気との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を予熱する。
【0046】
アンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252が配置される燃料供給配管210aにおいて、アンモニア気化器251とバーナ弁210Bとの間には、温度センサ(検出部)281および圧力センサ(検出部)282が配置されている。温度センサ281は、アンモニア気化器251を通過したアンモニア燃料の温度を検出するセンサである。圧力センサ282は、アンモニア気化器251を通過したアンモニア燃料の圧力を検出するセンサである。
【0047】
図3に示すように、本実施形態のボイラシステム100は、第1調整弁253および第2調整弁254を含むボイラシステム100の各部を制御する制御部270を備える。温度センサ281が検出するアンモニア燃料の温度および圧力センサ282が検出するアンモニア燃料の圧力は、制御部270に伝達される。
【0048】
制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲(目標値)となり、かつ圧力センサ282が検出する圧力が所定の目標圧力範囲(目標値)となるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度を制御する。
【0049】
制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲を下回る場合、アンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252に供給される蒸気の流量が多くなるように、第2調整弁254の開度に対する第1調整弁253の開度の比率を増加させる。また、制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲を上回る場合、アンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252に供給される蒸気の流量が少なくなるように、第2調整弁254の開度に対する第1調整弁253の開度の比率を減少させる。
【0050】
制御部270は、圧力センサ282が検出したアンモニア燃料の圧力が所定の目標圧力範囲を下回る場合、アンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252に供給される蒸気の流量が多くなるように、第2調整弁254の開度に対する第1調整弁253の開度の比率を増加させる。また、制御部270は、圧力センサ282が検出したアンモニア燃料の圧力が所定の目標圧力範囲を上回る場合、アンモニア気化器251およびアンモニア予熱器252に供給される蒸気の流量が少なくなるように、第2調整弁254の開度に対する第1調整弁253の開度の比率を減少させる。
【0051】
以上において、制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲(目標値)となり、かつ圧力センサ282が検出する圧力が所定の目標圧力範囲(目標値)となるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度を制御するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲(目標値)となるか、または圧力センサ282が検出する圧力が所定の目標圧力範囲(目標値)となるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度を制御してもよい。
【0052】
本実施形態のボイラシステム100は、温度センサ281および圧力センサ282を備えるものとしたが、温度センサ281または圧力センサ282のいずれか一方のみを備えるものであってもよい。ボイラシステム100が温度センサ281のみを備える場合、制御部270は、温度センサ281が検出したアンモニア燃料の温度が所定の目標温度範囲(目標値)となるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度を制御する。ボイラシステム100が圧力センサ282のみを備える場合、制御部270は、圧力センサ282が検出したアンモニア燃料の圧力が所定の目標圧力範囲(目標値)となるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度を制御する。
【0053】
以上で説明した本実施形態のボイラシステム100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態のボイラシステム100によれば、ボイラ10で生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン111から抽気される蒸気により、ボイラ10へボイラ水を供給するボイラ給水ポンプ123が駆動される。ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気は、排出系統250により復水器112へ排出される。アンモニア気化器251は、排出系統250を流通する蒸気との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を気化させる。アンモニア気化器251で気化したアンモニア燃料は、第1燃料供給系統210により、アンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するアンモニア燃料バーナ210Aへ導かれる。
【0054】
本実施形態のボイラシステム100によれば、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、蒸気タービン111から抽気され、ボイラ給水ポンプ123(タービン部123b)に供給され、排出系統250から復水器112へ回収され、給水系統240により再度ボイラ10に供給される。アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気がボイラシステム100内で循環するため、アンモニア燃料がアンモニア気化器251で蒸気に混入したとしても、アンモニア燃料が外部へ流出することがない。
【0055】
また、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、ボイラ給水ポンプ123を駆動する動力として用いられた後の蒸気である。そのため、アンモニア燃料を気化させる熱源としての蒸気を蒸気タービン111から直接的に抽気する場合に比べ、ボイラシステム100の熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させることができる。
【0056】
本実施形態のボイラシステム100によれば、アンモニア気化器251を通過した蒸気の熱を利用してアンモニア気化器251へ供給される液体のアンモニア燃料を予熱することができるため、ボイラシステム100の熱効率を更に向上させることができる。
【0057】
本実施形態のボイラシステム100によれば、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気の一部をアンモニア気化器251へ導いて液体のアンモニア燃料を気化する熱源として利用することができる。また、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気の他の一部を復水器112へ導いて、アンモニア燃料を気化する熱源として用いない蒸気を適切に復水器112を介して給水系統240に導くことができる。
【0058】
本実施形態のボイラシステム100によれば、温度センサ281または圧力センサ282が検出する温度または圧力が所定の目標値をとなるように第1調整弁253および第2調整弁254の開度が制御部270により制御される。そのため、液体のアンモニア燃料を適切に気化させるために必要な流量の蒸気を排出ラインL8からアンモニア気化器251へ導き、その他の蒸気を排出ラインL9から復水器112へ導くことができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
以下に、本開示の第2実施形態に係るボイラシステム100Aについて、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0060】
第1実施形態のボイラシステム100は、単一の熱交換器であるアンモニア気化器251においてボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換を行い、単一の熱交換器であるアンモニア予熱器252においてアンモニア気化器251を通過した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換を行うものであった。それに対して、本実施形態のボイラシステム100Aは、複数の熱交換器からなるアンモニア気化器251Aにおいてボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換を行い、複数の熱交換器からなるアンモニア予熱器252Aにおいてアンモニア気化器251Aを通過した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換を行うものである。
【0061】
図4は、本開示の第2実施形態に係るボイラシステム100Aにおける第1燃料供給系統210および排出系統250を示す概略構成図である。
図4に示すように、アンモニア気化器251Aは、第1熱交換部251Aaと、気化部251Abとを有する。アンモニア予熱器252Aは、第2熱交換部252Aaと、予熱部252Abとを有する。
【0062】
第1熱交換部251Aaは、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。第1熱交換部251Aaには、ボイラ給水ポンプ123を駆動した蒸気が排出ラインL7および排出ラインL8を介して供給される。第1熱交換部251Aaに導入される蒸気の温度は、例えば、40℃以上かつ80℃以下の範囲の温度である。第1熱交換部251Aaには、循環ポンプ251Acにより循環ラインL10を循環する第1熱媒体(例えば、水)が供給される。第1熱交換部251Aaは、排出系統250を流通する蒸気と第1熱媒体とを熱交換させる。
【0063】
気化部251Abは、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。気化部251Abには、循環ラインL10を循環する第1熱媒体が供給される。燃料供給配管210aを流通する液体のアンモニア燃料は、気化部251Abに導かれる。気化部251Abは、第1熱交換部251Aaにより加熱された第1熱媒体との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を気化させる。
【0064】
第2熱交換部252Aaは、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。第2熱交換部252Aaには、第1熱交換部251Aaを通過した蒸気が排出ラインL8を介して供給される。第2熱交換部252Aaには、循環ポンプ252Acにより循環ラインL11を循環する第2熱媒体(例えば、水)が供給される。第2熱交換部252Aaは、排出系統250を流通する蒸気と第2熱媒体とを熱交換させる。
【0065】
予熱部252Abは、例えば、シェルアンドチューブ式の熱交換器である。予熱部252Abには、循環ラインL11を循環する第2熱媒体が供給される。燃料供給配管210aを流通する液体のアンモニア燃料は、予熱部252Abに導かれる。予熱部252Abは、第2熱交換部252Aaにより加熱された第2熱媒体との熱交換により第1燃料供給系統210を流通する液体のアンモニア燃料を予熱する。
【0066】
本実施形態のボイラシステム100Aによれば、第1熱交換部251Aaにおいて排出系統250を流通する蒸気により第1熱媒体が加熱され、気化部251Abにおいて第1熱媒体により液体のアンモニア燃料が加熱される。排出系統250を流通する蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換は、第1熱媒体を介して間接的に行われる。そのため、アンモニア燃料が気化部251Abにおいて第1熱媒体に混入したとしても、第1熱媒体に混入したアンモニア燃料が更に排出系統250を流通する蒸気に混入することがない。よって、アンモニア燃料が外部へ流出することを確実に防止することができる。
【0067】
また、本実施形態のボイラシステム100Aによれば、第2熱交換部252Aaにおいて排出系統250を流通する蒸気により第2熱媒体が加熱され、予熱部252Abにおいて第2熱媒体により液体のアンモニア燃料が加熱される。第2熱交換部252Aaを通過した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換は、第2熱媒体を介して間接的に行われる。そのため、アンモニア燃料が予熱部252Abにおいて第2熱媒体に混入したとしても、第2熱媒体に混入したアンモニア燃料が更に排出系統250を流通する蒸気に混入することがない。よって、アンモニア燃料が外部へ流出することを確実に防止することができる。
【0068】
以上説明した各実施形態に記載のボイラシステムおよびボイラシステムの運転方法は例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係るボイラシステム(100)は、バーナ(210A)によりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ(10)と、前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統(210)と、前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービン(111)と、前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプ(123)を有する給水系統(240)と、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を排出する排出系統(250)と、前記排出系統を流通する前記蒸気との熱交換により前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化器(251)と、を備える。
【0069】
本開示の第1態様に係るボイラシステムによれば、ボイラで生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービンから抽気される蒸気により、ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプが駆動される。給水ポンプを駆動した蒸気は、排出系統により給水系統へ排出される。アンモニア気化器は、排出系統を流通する蒸気との熱交換によりアンモニア燃料供給系統を流通する液体のアンモニア燃料を気化させる。アンモニア気化器で気化したアンモニア燃料は、アンモニア燃料供給系統により、アンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するバーナへ導かれる。
【0070】
本開示の第1態様に係るボイラシステムによれば、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、蒸気タービンから給水ポンプに抽気され、排出系統から給水系統へ排出される。アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気がボイラシステム内で循環するため、アンモニア燃料がアンモニア気化器で蒸気に混入したとしても、アンモニア燃料が外部へ流出することがない。また、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、給水ポンプを駆動する動力として用いられた後の蒸気である。そのため、アンモニア燃料を気化させる熱源としての蒸気を蒸気タービンから直接的に抽気する場合に比べ、ボイラシステムの熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させることができる。
【0071】
本開示の第2態様に係るボイラシステムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記アンモニア気化器を通過した前記蒸気との熱交換により前記アンモニア気化器へ供給される液体の前記アンモニア燃料を予熱するアンモニア予熱器(252)を備える。
【0072】
本開示の第2態様に係るボイラシステムによれば、アンモニア気化器を通過した蒸気の熱を利用してアンモニア気化器へ供給される液体のアンモニア燃料を予熱することができるため、ボイラシステムの熱効率を更に向上させることができる。
【0073】
本開示の第3態様に係るボイラシステムは、第1態様または第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記アンモニア気化器は、前記排出系統を流通する前記蒸気と第1熱媒体とを熱交換させる第1熱交換部(251Aa)と、前記第1熱交換部により加熱された前記第1熱媒体との熱交換により前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させる気化部(251Ab)と、を有する。
【0074】
本開示の第3態様に係るボイラシステムによれば、第1熱交換部において排出系統を流通する蒸気により第1熱媒体が加熱され、気化部において第1熱媒体により液体のアンモニア燃料が加熱される。排出系統を流通する蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換は、第1熱媒体を介して間接的に行われる。そのため、アンモニア燃料が気化部において第1熱媒体に混入したとしても、第1熱媒体に混入したアンモニア燃料が更に排出系統を流通する蒸気に混入することがない。よって、アンモニア燃料が外部へ流出することを確実に防止することができる。
【0075】
本開示の第4態様に係るボイラシステムは、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記アンモニア予熱器は、前記アンモニア気化器を通過した前記蒸気と第2熱媒体とを熱交換させる第2熱交換部(251Ba)と、前記第2熱交換部により加熱された前記第2熱媒体との熱交換により前記アンモニア気化器へ供給される液体の前記アンモニア燃料を予熱する予熱部(251Bb)と、を有する。
【0076】
本開示の第4態様に係るボイラシステムによれば、第2熱交換部において排出系統を流通する蒸気により第2熱媒体が加熱され、予熱部において第2熱媒体により液体のアンモニア燃料が加熱される。第2熱交換部を通過した蒸気と液体のアンモニア燃料との熱交換は、第2熱媒体を介して間接的に行われる。そのため、アンモニア燃料が予熱部において第2熱媒体に混入したとしても、第2熱媒体に混入したアンモニア燃料が更に排出系統を流通する蒸気に混入することがない。よって、アンモニア燃料が外部へ流出することを確実に防止することができる。
【0077】
本開示の第5態様に係るボイラシステムは、第1態様または第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記蒸気タービンを回転駆動した前記蒸気を凝縮させて前記給水系統へ供給する復水器(112)と、前記排出系統は、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気の一部を前記アンモニア気化器へ導く第1排出ライン(L8)と、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気の他の一部を前記復水器へ導く第2排出ライン(L9)と、を有する。
【0078】
本開示の第5態様に係るボイラシステムによれば、給水ポンプを駆動した蒸気の一部をアンモニア気化器へ導いて液体のアンモニア燃料を気化する熱源として利用することができる。また、給水ポンプを駆動した蒸気の他の一部を復水器へ導いて、アンモニア燃料を気化する熱源として用いない蒸気を適切に復水器を介して給水系統に導くことができる。
【0079】
本開示の第6態様に係るボイラシステムは、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第1排出ラインに配置される第1調整弁(253)と、前記第2排出ラインに配置される第2調整弁(254)と、前記アンモニア気化器を通過した前記アンモニア燃料の温度または圧力を検出する検出部(281,282)と、前記検出部が検出する前記温度または前記圧力が所定の目標値となるように前記第1調整弁および前記第2調整弁の開度を制御する制御部(270)と、を備える。
【0080】
本開示の第6態様に係るボイラシステムによれば、検出部が検出する温度または圧力が所定の目標値をとなるように第1調整弁および第2調整弁の開度が制御部により制御される。そのため、液体のアンモニア燃料を適切に気化させるために必要な流量の蒸気を第1排出ラインからアンモニア気化器へ導き、その他の蒸気を第2排出ラインから復水器へ導くことができる。
【0081】
本開示の第7態様に係るボイラシステムの運転方法において、前記ボイラシステムは、バーナ(210A)によりアンモニアを含むアンモニア燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ(10)と、前記バーナへ前記アンモニア燃料を供給するアンモニア燃料供給系統(210)と、前記ボイラで生成した前記蒸気によって回転駆動される蒸気タービン(111)と、前記蒸気タービンから抽気される前記蒸気により駆動されるとともに前記ボイラへボイラ水を供給する給水ポンプ(123)を有する給水系統(240)と、前記給水ポンプを駆動した前記蒸気を前記給水系統へ排出する排出系統(250)と、を備え、前記排出系統を流通する前記蒸気と前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体とを熱交換させ、前記アンモニア燃料供給系統を流通する液体の前記アンモニア燃料を気化させるアンモニア気化工程を備える。
【0082】
本開示の第7態様に係るボイラシステムの運転方法によれば、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、蒸気タービンから給水ポンプに抽気され、排出系統から復水器へ排出される。アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気がボイラシステム内で循環するため、アンモニア燃料がアンモニア気化器で蒸気に混入したとしても、アンモニア燃料が外部へ流出することがない。また、アンモニア燃料を気化させる熱源となる蒸気は、給水ポンプを駆動する動力として用いられた後の蒸気である。そのため、アンモニア燃料を気化させる熱源としての蒸気を蒸気タービンから直接的に抽気する場合に比べ、ボイラシステムの熱効率の低下を発生させずに適切に液体のアンモニア燃料を気化させることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 ボイラ
100,100A ボイラシステム
111 蒸気タービン
111A 高圧タービン
111B 中圧タービン
111C 低圧タービン
112 復水器
113 発電機
121 復水ポンプ
123 ボイラ給水ポンプ
123a ポンプ部
123b タービン部
127 制御弁
210 第1燃料供給系統
210A アンモニア燃料バーナ
210B バーナ弁
210a 燃料供給配管
211 給送ポンプ
240 給水系統
250 排出系統
251,251A アンモニア気化器
251Aa 第1熱交換部
251Ab 気化部
251Ac 循環ポンプ
252,252A アンモニア予熱器
252Aa 第2熱交換部
252Ab 予熱部
252Ac 循環ポンプ
253 第1調整弁
254 第2調整弁
255 給送ポンプ
260 アンモニアタンク
270 制御部
281 温度センサ(検出部)
282 圧力センサ(検出部)