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  • 特開-炭化水素の直接分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166831
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】炭化水素の直接分解方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20241122BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20241122BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20241122BHJP
【FI】
C01B3/26
B01J23/745 M
C01B32/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083207
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
(72)【発明者】
【氏名】安武 聡信
(72)【発明者】
【氏名】久保田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】清澤 正志
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB01
4G140DC02
4G140DC07
4G146AA01
4G146BA12
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC38B
4G146BC44
4G146BC48
4G169AA02
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CB81
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
(57)【要約】
【課題】炭化水素の転化率を向上させた炭化水素の直接分解方法を提供する。
【解決手段】炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する炭化水素の直接分解方法は、鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒である触媒に、メタンと2つ以上の炭素原子を有する炭化水素とを含む原料ガスを接触させるステップを備え、原料ガス中の2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.02~10vol%である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する炭化水素の直接分解方法であって、
鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒である触媒に、メタンと2つ以上の炭素原子を有する炭化水素とを含む原料ガスを接触させるステップを備え、
前記原料ガス中の前記2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.02~10vol%である炭化水素の直接分解方法。
【請求項2】
前記原料ガス中の前記2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.5~9.7vol%である、請求項1に記載の炭化水素の直接分解方法。
【請求項3】
前記複数の粒子の粒径の範囲は32~180μmである、請求項1に記載の炭化水素の直接分解方法。
【請求項4】
前記触媒に前記原料ガスを接触させるステップは700~800℃の温度範囲で行われる、請求項1または2に記載の炭化水素の直接分解方法。
【請求項5】
前記触媒に前記原料ガスを接触させた後のガスの一部を前記原料ガスに混合させて前記触媒に接触させる、請求項1または2に記載の炭化水素の直接分解方法。
【請求項6】
前記原料ガスは都市ガスである、請求項5に記載の炭化水素の直接分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素の直接分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状、各種エネルギーの製造は、石油や石炭、天然ガス等の化石燃料に大きく依存しているが、地球環境保全等の観点からは、化石燃料の燃焼によって放出される二酸化炭素の排出量の増加が問題視されている。2015年に合意されたパリ協定では、気候変動問題に対応するために、二酸化炭素の排出量の低減が要求されているが、火力発電所等では、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出量の削減が重要な課題となっている。排出された二酸化炭素を分離・回収するプロセスが精力的に検討されている一方で、化石燃料の代替燃料を用いて、二酸化炭素を排出せずにエネルギーを製造する技術も検討されている。
【0003】
そこで、化石燃料の代替燃料として、燃焼によって二酸化炭素を排出しないクリーンな燃料である水素が注目されている。水素は例えば、天然ガスに含まれるメタンを水蒸気改質することによって製造することができる。しかし、この製造方法では副生成物として一酸化炭素が生成し、一酸化炭素は最終的に酸化されて二酸化炭素として排出されてしまう。一方で、化石燃料を使用せずに水から水素を製造する方法として、水電解法や光触媒法等が検討されているが、これらの方法では多大なエネルギーを必要として経済的に問題がある。
【0004】
これに対し、メタンを直接分解させて水素及びカーボンを製造する方法が開発されている。メタンの直接分解の特徴は、二酸化炭素を排出せずに水素燃料を得られる点、並びに、副生するカーボンは固体であるため容易に固定化できるとともに、カーボンそのものを電極材料やタイヤ材料、建築材料等の幅広い用途に有効利用できる点にある。これまで、担持触媒と炭化水素ガスとを接触させることにより、炭化水素を水素とカーボンとに直接分解する方法が開発されているが、炭化水素の直接分解反応の生成物であるカーボンが触媒に付着することにより、短時間で触媒活性が低下してしまうことが問題となっていた。
【0005】
これに対し、本開示の出願人は、特許文献1に記載されるように、鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒である触媒を使用して、炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する方法を開発した。この方法によれば、炭化水素の直接分解反応の生成物であるカーボンが触媒に付着しても、新たな活性点を発現させることで活性が維持されるので、この反応の活性を長く維持することができると考察した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7089235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の出願人は、特許文献1に記載された炭化水素の直接分解方法をさらに発展させて、炭化水素の転化率を向上させる方法を見出した。
【0008】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、炭化水素の転化率を向上させた炭化水素の直接分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示に係る炭化水素の直接分解方法は、炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する炭化水素の直接分解方法であって、鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒である触媒に、メタンと2つ以上の炭素原子を有する炭化水素とを含む原料ガスを接触させるステップを備え、前記原料ガス中の前記2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.02~10vol%である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の炭化水素の直接分解方法によれば、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法を実施するための装置の構成模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法を実施するための装置の変形例の構成模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法の効果を検証するための実験装置の構成模式図である。
図4】実施例1~3及び比較例1のそれぞれの実験結果(原料ガス中の2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度とメタンの転化率のピーク値との関係)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態による炭化水素の直接分解方法について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0013】
<本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法を実施するための装置の構成>
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法を実施するための装置1は、必須な構成要件として、触媒2が収容された反応器3を備えている。反応器3には、反応器3の内部、特に触媒2を昇温するための加熱装置4(例えば、スチームが流通するジャケット等)が設けられている。反応器3には、原料ガスを反応器3に供給するための原料供給ライン5と、原料ガス中の炭化水素が触媒2によって反応して生成した水素を含む反応ガスが反応器3から流出後に流通する反応ガス流通ライン6とが接続されている。
【0014】
原料ガス中の炭化水素は、メタンと、例えばエタンやプロパン、ブタンのような2つ以上の炭素原子を有する炭化水素とを含んでいる。原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.02~10vol%であり、好ましくは5~10vol%、さらに好ましくは5~9.7vol%である。このような原料ガスとして例えば、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が約10vol%である都市ガスを使用することができるが、都市ガスに限定するものではなく、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が上述の範囲となるように調製された任意の原料ガスを使用することができる。
【0015】
触媒2は鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒であり、反応器3内では触媒2の各粒子は静置した状態でもよいし、上向きに原料ガスを噴出させることによって粒子を原料ガス中に懸濁浮遊させた状態である流動床の状態にしてもよい。原料ガス中の炭化水素が触媒2によって反応して生成したカーボンは触媒2の粒子に付着するが、触媒2が流動床を形成する場合には、触媒2の粒子同士が互いに擦れ合うことで、触媒2の粒子に付着したカーボンは粒子から物理的に除去される。尚、反応器3として例えば固定床式の反応器を使用する場合は、触媒2に付着したカーボンを触媒2から除去するために、反応器3の外部にカーボン除去装置を備えてもよい。
【0016】
反応ガス流通ライン6には、バグフィルタやサイクロン等の固気分離装置7を設けてもよい。また、反応ガス中の水素の濃度にもよるが、必要であれば、反応ガス中の水素を精製するための、すなわち水素濃度を上昇させるための水素精製装置11を反応ガス流通ライン6に設けてもよい。水素精製装置11の構成は特に限定しないが、例えば、圧力変動吸着(PSA)装置等を使用することができる。
【0017】
図2に示されるように、原料供給ライン5と反応ガス流通ライン6とを接続するリサイクルライン8を設けてもよい。リサイクルライン8には、リサイクルライン8を流通するガス(反応ガスの一部)の流量を調節するための流量調節弁9を設けてもよい。
【0018】
<本開示の一実施形態に係る炭化水素の直接分解方法>
次に、図1に示される装置1の動作(炭化水素の直接分解方法)について説明する。メタン等の炭化水素を含む原料ガスを、原料供給ライン5を介して反応器3に供給する。反応器3内に流入した原料ガスは、触媒2と接触しながら触媒2を通過する。この際、原料ガス中の炭化水素は水素とカーボンに直接分解される(以下ではこの反応を「直接分解反応」という)。直接分解反応における炭化水素としてメタンを例にすると、下記の反応式(1)で表される反応が反応器3内で生じる。
CH→2H+C ・・・(1)
【0019】
直接分解反応の活性が長く維持される原理については、本開示の出願人が特許文献1において詳細に説明している。また、直接分解反応を促進するために、加熱装置4によって触媒2の温度を600℃~900℃の範囲に維持することが好ましいことも同様である。
【0020】
直接分解方法によって生成したカーボンは触媒2に付着し、生成した水素は、未反応の炭化水素(及び不活性ガス)とともに反応ガスとして反応器3から流出し、反応ガス流通ライン6を流通する。カーボンの回収は、反応器3への反応ガスの供給を停止した後に、反応器3から触媒2を回収し、必要であれば触媒2に付着したカーボンをカーボン除去装置によって除去することによって行うことができる。水素の回収は、反応ガス流通ライン6を流通する反応ガスを回収することによって行われる。反応ガス流通ライン6に水素精製装置11が設けられている場合には、水素が精製される。炭化水素の転化率が低い場合には反応ガス中の水素濃度が低くなるが、水素精製装置11によって最終製品としての水素の濃度を高めることができる。
【0021】
図2に示される装置1では、反応ガスの一部がリサイクルライン8を介して原料供給ライン5に流入し、原料供給ライン5を流通する原料ガスと混合された混合ガスとして反応器3に流入する。この装置1では、反応ガスの一部と原料ガスとが混合した混合ガスと触媒2とが接触することにより、直接分解反応が生じる。反応ガスには、炭化水素が直接分解して生成した水素が含まれているため、原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度に比べて、反応ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が低い。このため、混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は、原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度に比べて低くなる。例えば、原料ガスとして都市ガスを使用する場合、都市ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は約10vol%であるが、反応器3内で触媒と接触する混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は10vol%よりも低くなる。尚、流量調節弁9によってリサイクルライン8を流通する反応ガスの流量を増加させるほど、混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度を低下させることができる。
【0022】
後述する実施例によって検証するが、メタンのみのガスを直接分解することによるメタンの転化率に比べて、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が0.02~10vol%のガス、好ましくは5~10vol%のガスを直接分解することにより炭化水素の転化率は向上するものの、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%の場合(例えば、原料ガスとして都市ガスを使用した場合に相当する)は、5~9.7vol%の濃度の場合に比べて炭化水素の転化率が向上する効果はやや低くなる。しかしながら、原料ガスとして都市ガスを使用しても、図2に示される装置1において直接分解反応を生じさせれば、混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%よりも低くなるので、図1に示される装置1において原料ガスとして都市ガスを使用した場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。尚、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%よりも低い原料ガスは、例えば都市ガスとメタンガスとを混合すること等により別途調製する必要があるが、都市ガスを使用できれば、このような原料ガスの調製作業が不要になるので、炭化水素の直接分解方法を実施する作業性を向上することができる。
【実施例0023】
本開示の発明者らは、本開示の炭化水素の直接分解方法に相当する実施例1~4と、本開示の炭化水素の直接分解方法に相当しない比較例1とを対比することにより、本開示の炭化水素の直接分解方法の効果を明らかにする。実施例1~4と比較例1とを対比するための実験装置の構成を図3に示す。実験装置20は、実施例1~4と比較例1のそれぞれの触媒22を収容した内径16mmの石英製の反応器23を備えている。反応器23は、電気炉24で加熱可能になっている。触媒22として、株式会社ニラコから入手した電解鉄製粒子から32μm~40μmの範囲の粒径の粒子を分級したものを使用した。
【0024】
反応器23には、メタン及び都市ガスをそれぞれ供給するための原料供給ライン25と、炭化水素の直接分解反応によって生成した水素を含む反応ガスが反応器23から流出後に流通する反応ガス流通ライン26とが接続されている。すなわち、反応器23に供給される原料ガスとして、メタンと、都市ガスと、メタン及び都市ガスの混合ガスとの3通りが可能である。反応ガス流通ライン26は、反応ガスの組成を測定するためのガスクロマトグラフィー27に接続されている。実施例1~4と比較例1のそれぞれの実験条件を下記表1にまとめる。尚、比較例1では反応器23に都市ガスのみを供給し、実施例では3反応器23にメタンのみを供給し、実施例1及び2では、原料ガス中の2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が表1の値になるように、反応器23へのメタン及び都市ガスのそれぞれの供給量を調節した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1~4及び比較例1のそれぞれの実験結果を図4に示す。実施例1~4及び比較例1のそれぞれの実験においてメタンの転化率の経時変化を測定し、メタンの転化率のピーク値を特定した。図4には、原料ガス中の2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度とメタンの転化率のピーク値との関係が示されている。尚、メタンの転化率は、下記式(2)で定義される。
転化率=(1-(未反応のメタン量/原料のメタン量))×100 ・・・(2)
【0027】
図4の結果から、原料ガス中の2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度を0.02~10vol%の場合の炭化水素の転化率は、特に5~10vol%の場合の炭化水素の転化率は、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合のメタンの転化率に比べて高いことが分かった。
【0028】
また、図4の結果から、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%の場合は、5~9.7vol%の濃度の場合に比べて炭化水素の転化率が向上する効果はやや低くなることが分かった。都市ガス中に含まれる2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は約10vol%であるので、原料ガスとして都市ガスを使用すると、炭化水素の転化率が向上する効果が、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて想定よりも低くなるおそれがある。
【0029】
これに対し、図2に示される構成の装置1において、都市ガスを原料ガスとして本開示の炭化水素の直接分解方法を実施すると、反応器3から流出した反応ガスの一部が原料ガスと混合して反応器3に流入し、反応器3内で触媒2と接触する。上述したように、反応ガスには、炭化水素が直接分解して生成した水素が含まれているため、原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度に比べて、反応ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が低い。このため、混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は、原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度に比べて低くなる。すなわち、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%である都市ガスを原料ガスと使用しても、反応器3内で触媒2と接触する混合ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が5~9.7vol%の範囲になり得る。そうすると、図4の結果から、都市ガスを原料ガスと使用しても、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて想定通りの炭化水素の転化率が向上する効果が得られると言うことができる。
【0030】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0031】
[1]一の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、
炭化水素をカーボン及び水素に直接分解する炭化水素の直接分解方法であって、
鉄製の複数の粒子の集合体の非担持触媒である触媒(2)に、メタンと2つ以上の炭素原子を有する炭化水素とを含む原料ガスを接触させるステップを備え、
前記原料ガス中の前記2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.02~10vol%である。
【0032】
本開示の炭化水素の直接分解方法によれば、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。
【0033】
[2]別の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、[1]の炭化水素の直接分解方法であって、
前記原料ガス中の前記2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は0.5~9.7vol%である。
【0034】
このような構成によれば、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。
【0035】
[3]さらに別の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、[1]または[2]の炭化水素の直接分解方法であって、
前記複数の粒子の粒径の範囲は32~180μmである。
【0036】
このような構成によれば、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。
【0037】
[4]さらに別の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、[1]~[3]のいずれかの炭化水素の直接分解方法であって、
前記触媒(2)に前記原料ガスを接触させるステップは700~800℃の温度範囲で行われる。
【0038】
このような構成によれば、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができる。
【0039】
[5]さらに別の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、[1]~[4]のいずれかの炭化水素の直接分解方法であって、
前記触媒(2)に前記原料ガスを接触させた後のガスの一部を前記原料ガスに混合させて前記触媒(2)に接触させる。
【0040】
原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度を0.02~10vol%とすることにより、メタンのみを含む原料ガスを使用する場合に比べて炭化水素の転化率を向上することができるが、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%の場合は、5vol%の濃度の場合に比べて炭化水素の転化率が向上する効果はやや低くなる。触媒に原料ガスを接触させた後のガスには、炭化水素が直接分解することにより生成した水素が含まれているので、原料ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%であったとしても、触媒に原料ガスを接触させた後のガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は10vol%よりも低くなる。このため、[5]の構成によれば、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%の原料ガスを使用したとしても、触媒に原料ガスを接触させた後のガスが原料ガスと混合した後に触媒と接触することにより、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%よりも低い状態で原料ガスと触媒とが接触することになり、その結果、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%の原料ガスを使用しても、5vol%の濃度の場合に得られる炭化水素の転化率の向上効果に近い効果を得ることができる。
【0041】
[6]さらに別の態様に係る炭化水素の直接分解方法は、[5]のいずれかの炭化水素の直接分解方法であって、
前記原料ガスは都市ガスである。
【0042】
都市ガス中における2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度は約10vol%であるため、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が5vol%である原料ガスを使用した場合に比べて炭化水素の転化率が向上する効果はやや低くなる。しかしながら、上記[5]の構成から上述の作用効果が得られる理由と同じ理由により、都市ガスを使用しても5vol%の濃度の場合に得られる炭化水素の転化率の向上効果に近い効果を得ることができる。尚、2つ以上の炭素原子を有する炭化水素の濃度が10vol%よりも低い原料ガスは別途調製する必要があるが、都市ガスを使用できれば、原料ガスの調製作業が不要になるので、炭化水素の直接分解方法を実施する作業性を向上することができる。
【符号の説明】
【0043】
2 触媒
図1
図2
図3
図4