IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-166841計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166841
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/68 20060101AFI20241122BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01P3/68 A
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083221
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥宏
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の走行による橋梁の変位振幅の精度を向上させることが可能な計測方法を提供すること。
【解決手段】橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、を含む、計測方法。
【選択図】図37
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
を含む、計測方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記橋梁の構造モデルへの荷重の印加によるたわみ量に基づいて前記速度振幅と前記変位振幅との特性分布を算出し、前記特性分布に基づいて前記回帰直線を算出する回帰直線算出工程を含む、計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記通過時間を基準通過時間に基づいて規格化した規格化通過時間、前記橋梁長を基準橋梁長に基づいて規格化した規格化橋梁長及び前記車両数を基準車両数に基づいて規格化した規格化車両数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出する、計測方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記速度振幅と前記通過時間との相関を近似した関数、前記速度振幅と前記橋梁長との相関を近似した関数及び前記速度振幅と前記車両数との相関を近似した関数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出する、計測方法。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記速度振幅と、前記通過時間を基準通過時間に基づいて規格化した規格化通過時間との相関を近似した関数、前記速度振幅と、前記橋梁長を基準橋梁長に基づいて規格化した規格化橋梁長との相関を近似した関数、及び、前記速度振幅と、前記車両数を基準車両数に基づいて規格化した規格化車両数との相関を近似した関数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出する、計測方法。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記複数の部位のそれぞれは車軸又は車輪である、計測方法。
【請求項7】
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出部と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出部と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出部と、
を含む、計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の計測装置と、
前記加速度センサーと、
を備えた、計測システム。
【請求項9】
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
をコンピューターに実行させる、計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道橋梁に装着された加速度センサーと、鉄道橋梁が無載荷状態であるときの加速度センサーの出力を加速度のゼロ点として設定し、鉄道橋梁が載荷状態であるときに加速度センサーが出力した加速度のゼロ点を補正し、ゼロ点補正後に2回積分、ベイズ推定、カルマンフィルター等の適用により、ドリフトを抑制して鉄道橋梁のたわみ量を推定するたわみ測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-049095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のFIG.3Cでは、鉄道橋梁が載荷状態となる区間で無載荷状態の区間よりも変位が上昇する結果となっているが、期待される変位波形は、鉄道橋梁が載荷状態となる区間の変位が無載荷状態の区間よりも下降した波形であることは明らかである。これは、変位波形の低周波数域の信号成分が低周波数域のドリフト成分とともに抑制された結果と類似である。したがって、特許文献1に記載のたわみ測定装置によるたわみ量の推定方法では、ドリフトとともに変位波形の低周波数域の成分についても抑制してしまうので、本来の変位の振幅を精度良く推定することができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る計測方法の一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
を含む。
【0006】
本発明に係る計測装置の一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出部と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出部と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出部と、
を含む。
【0007】
本発明に係る計測システムの一態様は、
前記計測装置の一態様と、
前記加速度センサーと、
を備える。
【0008】
本発明に係る計測プログラムの一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
をコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】計測システムの構成例を示す図。
図2図1の上部構造をA-A線で切断した断面図。
図3】加速度センサーが検出する加速度の説明図。
図4】車両の長さL(C)及び車軸間の距離La(a(C,n))の一例を示す図。
図5】橋梁の上部構造の構造モデルの説明図。
図6】たわみ量wstd(a(C,n),t)の一例を示す図。
図7】たわみ量Cstd(C,t)の一例を示す図。
図8】たわみ量Tstd(t)の一例を示す図。
図9】たわみ量Tstd_p(t)とその変位振幅Sの一例を示す図。
図10】たわみ量Tstd_p(t)の速度波形とその速度振幅Sの一例を示す図。
図11】荷重比Pと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図12】荷重比Pと、変位振幅Sと速度振幅Sとの比との関係の一例を示す図。
図13】荷重比Pが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図14】通過時間tと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図15】通過時間tが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図16図14に示した通過時間tと速度振幅Sとの関係を両対数で示す図。
図17】通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_tsとの関係の一例を示す図。
図18】通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_tsとの関係の一例を示す図。
図19】通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts1との関係の一例を示す図。
図20】通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts1との関係の一例を示す図。
図21】橋梁長Lと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図22】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図23図21に示した橋梁長Lと速度振幅Sとの関係を両対数で示す図。
図24】橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LBとの関係の一例を示す図。
図25】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LBとの関係の一例を示す図。
図26】橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB1との関係の一例を示す図。
図27】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB1との関係の一例を示す図。
図28】車両数Cと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図29】車両数Cが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す図。
図30図28に示した車両数Cと速度振幅Sとの関係を示す図。
図31】車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CTとの関係の一例を示す図。
図32】車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT1との関係の一例を示す図。
図33】加速度データa(t)の一例を示す図。
図34】加速度データa(t)の一例を示す図。
図35】速度データv(t)及び速度振幅Sの一例を示す図。
図36】加速度データa(t)と進入時刻t、進出時刻t及び通過時間tとの関係の一例を示す図。
図37】計測方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図38】センサー、計測装置及び監視装置の構成例を示す図。
図39】変位振幅Sと速度振幅Sの分布を示す図。
図40】第1実施形態における変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を示す図。
図41】規格化通過時間ts_std(t)と速度振幅Sとの関係を両対数で示す図。
図42】通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts2との関係の一例を示す図。
図43】通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts2との関係の一例を示す図。
図44】規格化橋梁長LB_std(L)と速度振幅Sとの関係を両対数で示す図。
図45】橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB2との関係の一例を示す図。
図46】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB2との関係の一例を示す図。
図47】橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB3との関係の一例を示す図。
図48】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB3との関係の一例を示す図。
図49】規格化車両数CT_std(C)と速度振幅Sとの関係を示す図。
図50】車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT2との関係の一例を示す図。
図51】第2実施形態における変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を示す図。
図52】通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts3との関係の一例を示す図。
図53】通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts3との関係の一例を示す図。
図54】橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB4との関係の一例を示す図。
図55】橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB4との関係の一例を示す図。
図56】車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT3との関係の一例を示す図。
図57】第3実施形態における変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.計測システムの構成
橋梁を通過する鉄道車両は、重量が大きく、BWIMで計測可能である。BWIMは、Bridge Weigh in Motionの略であり、橋梁を「はかり」に見立て、橋梁の変形を計測することにより、橋梁を通過する鉄道車両の重量、軸数などを測定する技術である。変形やひずみなどの応答から通過する鉄道車両の重量を解析可能な橋梁は、BWIMが機能する構造であり、橋梁への作用と応答の間の物理的なプロセスを応用するBWIMシステムが通行する鉄道車両の重量の計測を可能にする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る計測システムの一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る計測システム10は、計測装置1と、橋梁5に設けられる少なくとも1つのセンサー2と、を備えている。また、計測システム10は、監視装置3を備えていてもよい。
【0013】
橋梁5は上部構造7と下部構造8からなる。図2は、上部構造7を図1のA-A線で切断した断面図である。図1及び図2に示すように、上部構造7は、床板F、主桁G、不図示の横桁等からなる橋床7aと、支承7bと、レール7cと、枕木7dと、バラスト7eと、を含む。また、図1に示すように、下部構造8は、橋脚8aと、橋台8bと、を含む。上部構造7は、隣り合う橋台8bと橋脚8a、隣り合う2つの橋台8b、又は、隣り合う2つの橋脚8aのいずれか1つに渡された構造である。上部構造7の両端部は、隣り合う橋台8bと橋脚8aの位置、隣り合う2つの橋台8bの位置、又は、隣り合う2つの橋脚8aの位置にある。
【0014】
鉄道車両6が橋梁5の上部構造7に進入すると、鉄道車両6の荷重によって上部構造7が撓むが、鉄道車両6は複数の車両が連結されているので、各車両の通過に伴って上部構造7の撓みが周期的に繰り返される。
【0015】
計測装置1と各センサー2とは、例えば、不図示のケーブルで接続され、CAN等の通信ネットワークを介して通信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。あるいは、計測装置1と各センサー2とは、無線ネットワークを介して通信を行ってもよい。
【0016】
本実施形態では、各センサー2は、加速度センサーであり、鉄道車両6が橋梁5を走行したときの加速度データを出力する。各センサー2は、例えば、水晶加速度センサーであってもよいし、MEMS加速度センサーであってもよい。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0017】
本実施形態では、各センサー2は橋梁5の上部構造7の長手方向の中央部、具体的には、主桁Gの長手方向の中央部に設置されている。ただし、各センサー2は、鉄道車両6の走行によって発生する加速度を検出することができればよく、その設置位置は上部構造7の中央部に限定されない。なお、各センサー2を上部構造7の床板Fに設けると、鉄道車両6の走行によって破壊するおそれがあり、また橋床7aの局部的な変形により測定精度が影響を受けるおそれがあるため、図1及び図2の例では、各センサー2は上部構造7の主桁Gに設けられている。
【0018】
上部構造7の床板Fや主桁G等は、橋梁5を通過する鉄道車両6による荷重によって、垂直方向に撓む。各センサー2は、橋梁5を通過する鉄道車両6の荷重による床板Fや主桁Gの撓みの加速度を検出する。
【0019】
計測装置1は、各センサー2から出力される加速度データに基づいて、鉄道車両6が橋梁5を通過したときの橋梁5の変位振幅を算出する。計測装置1は、例えば、橋台8bに設置される。
【0020】
計測装置1と監視装置3とは、例えば、携帯電話の無線ネットワーク及びインターネット等の通信ネットワーク4を介して、通信を行うことができる。計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を通過したときの橋梁5の変位振幅を含む計測データを監視装置3に送信する。監視装置3は、当該計測データを不図示の記憶装置に記憶し、例えば、計測データに基づいて鉄道車両6の監視や上部構造7の異常判定等の処理を行ってもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、橋梁5は、鉄道橋であり、例えば、鋼橋や桁橋、RC橋等である。RCは、Reinforced-Concreteの略である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、センサー2に対応付けて観測点Rが設定されている。図2の例では、観測点Rは、主桁Gに設けられたセンサー2の鉛直上方向にある上部構造7の表面の位置に設定されている。すなわち、センサー2は、観測点Rを観測する加速度センサーであり、橋梁5を走行する鉄道車両6の複数の部位の観測点Rへの作用に対する応答である加速度を検出し、検出した加速度を含む加速度データを出力する。例えば、鉄道車両6の複数の部位のそれぞれは車軸又は車輪であるが、以降では車軸であるものとする。センサー2は、鉄道車両6の走行により観測点Rに生じる加速度を検出可能な位置に設けられていればよいが、観測点Rの鉛直上に近い位置に設けられることが望ましい。
【0023】
なお、センサー2の数及び設置位置は、図1及び図2に示した例には限定されず種々の変形実施が可能である。
【0024】
計測装置1は、センサー2から出力される加速度データに基づいて、鉄道車両6が走行する橋梁5の上部構造7の面と交差する方向の加速度を取得する。鉄道車両6が走行する上部構造7の面は、鉄道車両6が走行する方向、すなわち上部構造7の長手方向であるX方向と、鉄道車両6が走行する方向と直交する方向、すなわち上部構造7の幅方向であるY方向とによって規定される。鉄道車両6の走行によって、観測点Rは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、計測装置1は、撓みの加速度の大きさを正確に算出するために、X方向及びY方向と直交する方向、すなわち、床板Fの法線方向であるZ方向の加速度を取得するのが望ましい。
【0025】
図3は、センサー2が検出する加速度を説明する図である。センサー2は、互いに直交する3軸の各軸方向に生じる加速度を検出する加速度センサーである。
【0026】
鉄道車両6の走行による観測点Rの撓みの加速度を検出するために、センサー2は、3つの検出軸であるx軸、y軸、z軸のうち、1軸がX方向及びY方向と交差する方向となるように設置される。観測点Rは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、撓みの加速度を正確に検出するために、理想的には、センサー2は、1軸をX方向及びY方向と直交するZ方向、すなわち、床板Fの法線方向に合わせて設置される。
【0027】
ただし、センサー2を上部構造7に設置する場合、設置場所が傾いている場合もある。計測装置1は、センサー2の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、概ね法線方向に向いていることで誤差は小さく無視できる。また、計測装置1は、センサー2の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、x軸、y軸、z軸の加速度を合成した3軸合成加速度によって、センサー2の傾斜による検出誤差の補正を行うことができる。また、センサー2は、少なくとも鉛直方向にほぼ平行な方向に生ずる加速度、あるいは、床板Fの法線方向の加速度を検出する1軸加速度センサーであってもよい。
【0028】
以下、計測装置1が実行する本実施形態の計測方法の詳細について説明する。
【0029】
1-2.計測方法の詳細
1-2-1.回帰直線の算出
本実施形態では、計測装置1は、センサー2から出力される加速度データに基づいて、鉄道車両6が橋梁5を通過したときの鉄道車両6の速度波形の振幅である速度振幅を算出し、速度振幅を補正関数に代入して補正速度振幅を算出する。そして、計測装置1は、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に、補正速度振幅を代入して橋梁5の変位振幅を算出する。この回帰直線及び補正関数は、計測装置1の変位振幅の算出に先立って、予め作成された鉄道車両6の寸法及び橋梁5の寸法を含む環境情報と、橋梁5の上部構造7の構造モデルとを用いてあらかじめ算出される。
【0030】
環境情報は、橋梁5の寸法として、例えば、橋梁長L及び観測点Rの位置Lを含む。橋梁長Lは、橋梁5の長さであり、本実施形態では、上部構造7の進入端と進出端との間の距離である。例えば、橋梁5が複数の上部構造7を有する場合、橋梁長Lは、各上部構造7の進入端と進出端との間の距離である。また、観測点Rの位置Lは、上部構造7の進入端から観測点Rまでの距離である。また、環境情報は、鉄道車両6の寸法として、例えば、鉄道車両6の各車両の長さL(C)、各車両の車軸数a(C)及び各車両の車軸間の距離La(a(C,n))を含む。Cは車両番号であり、各車両の長さL(C)は、先頭からC番目の車両の両端の間の距離である。各車両の車軸数a(C)は、先頭からC番目の車両の車軸数である。nは、各車両の車軸番号であり、1≦n≦a(C)である。各車両の車軸間の距離La(a(C,n))は、n=1のときは先頭からC番目の車両の先端と先頭から1番目の車軸との間の距離であり、n≧2のときは先頭からn-1番目の車軸とn番目の車軸との間の距離である。図4に、鉄道車両6のC番目の車両の長さL(C)及び車軸間の距離La(a(C,n))の一例を示す。鉄道車両6の寸法や上部構造7の寸法は、公知の手法によって測定することができる。予め、橋梁5を通過する鉄道車両6の寸法のデータベースを作成し、通過時刻から該当する車両の寸法を参照しても良い。
【0031】
なお、橋梁5の上部構造7を、寸法が同じである任意の数の車両が連結された鉄道車両6が走行すると想定される場合、環境情報は、1両分についての、車両の長さL(C)、車両の車軸数a(C)及び車軸間の距離La(a(C,n))を含んでいればよい。
【0032】
鉄道車両6の車両数Cをパラメーターとして、鉄道車両6の総車軸数Taは、環境情報に含まれる各車両の車軸数a(C)を用いて、式(1)により算出される。
【0033】
【数1】
【0034】
鉄道車両6の先頭の車軸からC番目の車両のn番目の車軸までの距離Dwa(a(C,n))は、環境情報に含まれる各車両の長さL(C)、各車両の車軸数a(C)及び各車両の車軸間の距離La(a(C,n))を用いて、式(2)により算出される。なお、式(2)では、L(C)=L(1)であるものとしている。
【0035】
【数2】
【0036】
式(2)においてC=C、n=a(C)とした式(3)により、鉄道車両6の先頭の車軸から最後尾の車両の最後尾の車軸までの距離Dwa(a(C,a(C)))が算出される。
【0037】
【数3】
【0038】
鉄道車両6が橋梁5の上部構造7を通過する通過時間tをパラメーターとして、鉄道車両6の平均速度vは、環境情報に含まれる橋梁長L及び距離Dwa(a(C,a(C)))を用いて、式(4)により算出される。
【0039】
【数4】
【0040】
式(4)に式(3)を代入した式(5)により、鉄道車両6の平均速度vが算出される。
【0041】
【数5】
【0042】
本実施形態では、橋梁5の上部構造7において、床板Fと主桁Gなどで構成される橋床7aが1つ或いは複数の連続配置される構成として考え、1つの橋床7aの変位を長手方向の中央部における変位とする。上部構造7に印加される荷重は上部構造7の一端から他端へ移動する。この時、荷重の上部構造7上の位置と荷重量を用いて、上部構造7の中央部の変位であるたわみ量を表すことができる。本実施形態では、鉄道車両6の車軸が上部構造7上を移動するときのたわみ変形を、1点荷重の梁上の移動によるたわみ量の軌跡として表すために、図5に示す構造モデルを考え、当該構造モデルにおいて、中間部におけるたわみ量が算出される。図5において、Pは荷重である。aは、鉄道車両6が進入する側の上部構造7の進入端からの荷重位置である。bは、鉄道車両6が進出する側の上部構造7の進出端からの荷重位置である。図5に示す構造モデルは、両端を支点とする両端を支持した単純梁である。
【0043】
図5に示す構造モデルにおいて、上部構造7の進入端の位置をゼロとしてたわみ量の観測位置をxとしたとき、単純梁の曲げモーメントMは式(6)で表される。
【0044】
【数6】
【0045】
式(6)において、関数Hは式(7)のように定義される。
【0046】
【数7】
【0047】
式(6)を変形し、式(8)が得られる。
【0048】
【数8】
【0049】
一方、曲げモーメントMは式(9)で表される。式(9)において、θは角度であり、Iは二次モーメントであり、Eはヤング率である。
【0050】
【数9】
【0051】
式(9)を式(8)に代入し、式(10)が得られる。
【0052】
【数10】
【0053】
式(10)を観測位置xについて積分する式(11)を計算し、式(12)が得られる。式(12)において、Cは積分定数である。
【0054】
【数11】
【0055】
【数12】
【0056】
さらに、式(12)を観測位置xについて積分する式(13)を計算し、式(14)が得られる。式(14)において、Cは積分定数である。
【0057】
【数13】
【0058】
【数14】
【0059】
式(14)において、θxはたわみ量を表し、θxをたわみ量wに置き換えて式(15)が得られる。
【0060】
【数15】
【0061】
図5より、b=L-aなので、式(15)は式(16)のように変形される。
【0062】
【数16】
【0063】
x=0でたわみ量w=0として、x≦aよりH=0であるから、式(16)にx=w=H=0を代入して整理すると、式(17)が得られる。
【0064】
【数17】
【0065】
また、x=Lでたわみ量w=0として、x>aよりH=1であるから、式(16)にx=L,w=0,H=1を代入して整理すると、式(18)が得られる。
【0066】
【数18】
【0067】
式(18)にb=L-aを代入し、式(19)が得られる。
【0068】
【数19】
【0069】
式(15)に式(18)の積分定数C及び式(17)の積分定数Cを代入し、式(20)が得られる。
【0070】
【数20】
【0071】
式(20)を変形し、荷重Pが位置aに印加された時の観測位置xにおけるたわみ量wは、式(21)で表される。
【0072】
【数21】
【0073】
荷重Pが上部構造7の中央にある時の中央の観測位置xにおけるたわみ量w0.5LBは、x=0.5LB,a=b=0.5LB,H=0として、式(22)で表される。このたわみ量w0.5LBが、たわみ量wの最大振幅となる。
【0074】
【数22】
【0075】
任意の観測位置xにおけるたわみ量wは、たわみ量w0.5LBで規格化される。荷重Pの位置aが観測位置xよりも進入端側にある場合、x>aより、式(22)にH=1を代入して式(23)が得られる。
【0076】
【数23】
【0077】
荷重Pの位置aをa=Lrとし、式(23)にa=Lr,b=L(1-r)を代入して整理すると、式(24)により、たわみ量wが規格化されたたわみ量wstdが得られる。rは、橋梁長Lに対する荷重Pの位置aの比を示す。
【0078】
【数24】
【0079】
同様に、荷重Pの位置aが観測位置xよりも進出端側にある場合、x≦aより、式(22)にH=0を代入して式(25)が得られる。
【0080】
【数25】
【0081】
荷重Pの位置aをa=Lrとし、式(25)にa=Lr,b=L(1-r)を代入して整理すると、式(26)により、たわみ量wが規格化されたたわみ量wstdが得られる。
【0082】
【数26】
【0083】
式(24)、式(26)をまとめて、任意の観測位置x=Lにおけるたわみ量wstd(r)は、式(27)で表される。式(27)において、関数R(r)は式(28)で表される。式(27)は、構造物である上部構造7のたわみの近似式であり、上部構造7の構造モデルに基づく式である。具体的には、式(27)は、上部構造7の進入端と進出端との中央位置におけるたわみの最大振幅で規格化された近似式である。
【0084】
【数27】
【0085】
【数28】
【0086】
本実施形態では、荷重Pは鉄道車両6の任意の車軸の荷重である。鉄道車両6の任意の車軸が上部構造7の進入端から観測点Rの位置Lに至るまでに要する時間txnは、式(5)によって算出される平均速度vを用いて、式(29)により算出される。
【0087】
【数29】
【0088】
また、鉄道車両6の任意の車軸が長さLの上部構造7を通過するのに要する時間tlnは、式(30)により算出される。
【0089】
【数30】
【0090】
鉄道車両6のC番目の車両のn番目の車軸が上部構造7の進入端に到達する時刻t(C,n)は、観測情報に含まれる進入時刻t、式(2)によって算出される距離Dwa(a(C,n))及び式(5)によって算出される平均速度vを用いて、式(31)により算出される。
【0091】
【数31】
【0092】
式(29)、式(30)及び式(31)を用いて、式(32)により、C番目の車両のn番目の車軸による式(27)で表されるたわみ量wstd(r)を時間に置き換えたたわみ量wstd(a(C,n),t)が算出される。式(32)において、関数R(t)は式(33)で表される。図6に、1番目の車両の1~4番目の車軸によるたわみ量wstd(a(1,1),t)~wstd(a(1,4),t)の一例を示す。
【0093】
【数32】
【0094】
【数33】
【0095】
また、式(34)により、C番目の車両によるたわみ量Cstd(C,t)が算出される。図7に、車両数C=10の鉄道車両6によるたわみ量Cstd(1,t)~Cstd(10,t)を示す。
【0096】
【数34】
【0097】
さらに、式(35)により、鉄道車両6によるたわみ量Tstd(t)が算出される。図8に、車両数C=10の鉄道車両6によるたわみ量Tstd(t)の一例を示す。
【0098】
【数35】
【0099】
鉄道車両6によるたわみ量Tstd(t)は、最大振幅で規格化されているので、式(36)により、荷重比Pによって変位振幅Sが変化するたわみ量Tstd_p(t)が算出される。変位振幅Sは、たわみ量Tstd_p(t)の最大値と最小値との差に相当する。図9に、荷重比P=1のときのたわみ量Tstd_p(t)とその変位振幅Sの一例を示す。
【0100】
【数36】
【0101】
たわみ量Tstd_p(t)を微分することで変位変化の速度波形が得られる。この速度波形の速度振幅Sも荷重比Pによって変化する。速度振幅Sは、たわみ量Tstd_p(t)の速度波形の最大値と最小値との差に相当する。図10に、荷重比P=1のときのたわみ量Tstd_p(t)の速度波形とその速度振幅Sの一例を示す。
【0102】
荷重比Pが変化したとき、変位振幅S及び速度振幅Sも変化する。図11に、荷重比Pと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す。また、図12に、荷重比Pと、変位振幅Sと速度振幅Sとの比との関係の一例を示す。また、図13に、荷重比Pが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す。図11に示すように、変位振幅S及び速度振幅Sは、それぞれ荷重比Pに対して線形に変化する。また、図12に示すように、変位振幅Sと速度振幅Sとの比は、荷重比Pによらずほぼ一定となる。すなわち、荷重比Pが変化したとき、変位振幅Sは速度振幅Sに対して線形に変化する。したがって、図13において破線で示すように、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線として、式(37)で表される近似直線を求めることができる。
【0103】
【数37】
【0104】
1-2-2.通過時間と速度振幅との関係
通過時間tをパラメーターとして、複数の通過時間tの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出すると、これらのたわみ量Tstd(t)から通過時間tと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係が得られる。図14に、通過時間tと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す。また、図15に、通過時間tが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す。図14に示すように、通過時間tによって変位振幅Sは変化しないが、速度振幅Sは、通過時間tに対してほぼ反比例する。また、図15に示すように、速度振幅Sと変位振幅Sとは相関しない。
【0105】
図16に、図14に示した通過時間tと速度振幅Sとの関係を両対数で示す。図16に示すように、通過時間tと速度振幅Sとの関係を両対数で示すと、両者は線形に変化する。したがって、図16において破線で示すように、通過時間tの対数と速度振幅Sの対数との相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、通過時間tをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_ts(t)として、式(38)で表される。
【0106】
【数38】
【0107】
式(38)より、式(39)が得られる。
【0108】
【数39】
【0109】
例えば、たわみ量Tstd(t)に対して、荷重P=1、橋梁長L=12、車両数C=10として通過時間tを6秒から17秒まで変化させて式(39)の各係数を求め、at1=-0.993905218、bt1=2.586860853とする。式(39)より、通過時間tによって速度振幅S(t)を補正した補正速度振幅Sv_cor_ts(t)を算出する補正関数は、式(40)に係数at1,bt1の各値を代入して算出される。
【0110】
【数40】
【0111】
図17に、通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_tsとの関係の一例を示す。また、図18に、通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_tsとの関係の一例を示す。図17に示すように、通過時間tが変化しても補正速度振幅Sv_cor_tsはほぼ一定である。また、図18に示すように、変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_tsとの関係を示す複数の点がほぼ一点に重なっている。すなわち、式(40)により、通過時間tによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_tsが得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(40)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_tsを代入すれば、通過時間tによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0112】
式(40)の計算を簡素化するためにat1=-0.993905218≒-1とすると、補正速度振幅Sv_cor_ts1(t)を算出する補正関数は、式(41)に係数bt1の値を代入して算出される。
【0113】
【数41】
【0114】
図19に、通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts1との関係の一例を示す。また、図20に、通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts1との関係の一例を示す。図19に示すように、通過時間tが変化しても補正速度振幅Sv_cor_ts1はほぼ一定である。また、図20に示すように、変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts1との関係を示す複数の点がほぼ一点に重なっている。すなわち、式(41)により、通過時間tによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_ts1が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(41)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_ts1を代入すれば、通過時間tによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0115】
1-2-3.橋梁長と速度振幅との関係
橋梁長Lをパラメーターとして、複数の橋梁長Lの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出すると、これらのたわみ量Tstd(t)から橋梁長Lと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係が得られる。図21に、橋梁長Lと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す。また、図22に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す。図21に示すように、橋梁長Lが変化すると、変位振幅S及び速度振幅Sは変動する。また、図22に示すように、速度振幅Sと変位振幅Sとの関係は、橋梁長Lによって変化する。
【0116】
図23に、図21に示した橋梁長Lと速度振幅Sとの関係を両対数で示す。図23に示すように、橋梁長Lと速度振幅Sとの関係を両対数で示すと、両者は線形に近い形で変化する。したがって、図23において破線で示すように、橋梁長Lの対数と速度振幅Sの対数との相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、橋梁長Lをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_LB(L)として、式(42)で表される。
【0117】
【数42】
【0118】
式(42)より、式(43)が得られる。
【0119】
【数43】
【0120】
例えば、最小二乗法により、式(43)の各係数を求め、a=-1.502119999、b=3.881500791とする。式(43)より、橋梁長Lによって速度振幅S(L)を補正した補正速度振幅Sv_cor_LB(L)を算出する補正関数は、式(44)に係数a,bの各値を代入して算出される。
【0121】
【数44】
【0122】
図24に、橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LBとの関係の一例を示す。また、図25に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LBとの関係の一例を示す。図24及び図25に示すように、橋梁長Lによる補正速度振幅Sv_cor_LBのばらつきが小さく、式(44)により、橋梁長Lによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_LBが得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(44)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_LBを代入すれば、橋梁長Lによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0123】
図23に示した橋梁長Lの対数と速度振幅Sの対数との関係では、橋梁長L=20mに不連続な変化があるので、式(45)のようにL=20mの前後で分割して近似する。
【0124】
【数45】
【0125】
式(45)より、式(46)が得られる。
【0126】
【数46】
【0127】
例えば、最小二乗法により、式(46)の各係数を求め、al1=-1.397257916、bl1=3.636461599、al2=-2.703113665、bl2=7.576922907とする。式(46)より、橋梁長Lによって速度振幅S(L)を補正した補正速度振幅Sv_cor_LB1(L)を算出する補正関数は、式(47)に係数al1,bl1,al2,bl2の各値を代入して算出される。
【0128】
【数47】
【0129】
図26に、橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB1との関係の一例を示す。また、図27に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB1との関係の一例を示す。図26及び図27に示すように、橋梁長Lによる補正速度振幅Sv_cor_LB1のばらつきが小さく、式(47)により、橋梁長Lによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_LB1が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(47)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_LB1を代入すれば、橋梁長Lによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0130】
1-2-4.車両数と速度振幅との関係
車両数Cをパラメーターとして、複数の車両数Cの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出すると、これらのたわみ量Tstd(t)から車両数Cと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係が得られる。図28に、車両数Cと変位振幅S及び速度振幅Sとの関係の一例を示す。また、図29に、車両数Cが変化したときの変位振幅Sと速度振幅Sとの関係の一例を示す。図28に示すように、車両数Cによって変位振幅Sは変化しないが、速度振幅Sは変動する。また、図29に示すように、速度振幅Sと変位振幅Sとの関係は、車両数Cによって変化する。
【0131】
図30に、図28に示した車両数Cと速度振幅Sとの関係を示す。図30に示すように、車両数Cと速度振幅Sとは線形に変化する。したがって、図30において破線で示すように、車両数Cと速度振幅Sとの相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、車両数Cをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_CT(C)として、式(42)で表される。
【0132】
【数48】
【0133】
例えば、最小二乗法により、式(48)の各係数を求め、ac1=0.107313366、bc1=0.05067018とする。式(48)より、車両数Cによって速度振幅S(C)を補正した補正速度振幅Sv_cor_CT(C)を算出する補正関数は、式(49)に係数ac1,bc1の各値を代入して算出される。
【0134】
【数49】
【0135】
図31に、車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CTとの関係の一例を示す。図31に示すように、車両数Cによる補正速度振幅Sv_cor_CTのばらつきが小さく、式(49)により、車両数Cによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_CTが得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(49)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_CTを代入すれば、車両数Cによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0136】
式(49)の計算を簡素化するためにbc1=0.05067018≒0とすると、補正速度振幅Sv_cor_CT1(C)を算出する補正関数は、式(50)に係数ac1の値を代入して算出される。
【0137】
【数50】
【0138】
図32に、車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT1との関係の一例を示す。図32に示すように、車両数Cによる補正速度振幅Sv_cor_CT1のばらつきが小さく、式(50)により、車両数Cによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_CT1が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(50)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_CT1を代入すれば、車両数Cによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0139】
1-2-5.変位振幅の算出
以下に示すように、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を走行中にセンサー2が検出した加速度と、前出の式(37)で示される回帰直線と、前出の式(40)、式(44)及び式(49)でそれぞれ示される補正関数とを用いて、橋梁5の変位振幅を算出する。
【0140】
センサー2から出力される加速度データa(t)には低周波数域の信号が含まれており、まず、計測装置1は、センサー2から出力される加速度データa(t)をハイパスフィルター処理してこの低周波数域の信号を除いた加速度データa(t)を生成する。図33に、加速度データa(t)の一例を示す。また、図34に、加速度データa(t)の一例を示す。
【0141】
次に、計測装置1は、式(51)のように、加速度データa(t)を積分して速度データv(t)を生成する。式(51)において、kはサンプル番号であり、ΔTはサンプルの時間間隔である。
【0142】
【数51】
【0143】
サンプル番号kを変数とする速度データv(k)は、時刻t=kΔTとして、時刻tを変数とする速度データv(t)に変換される。なお、計測装置1は、加速度データa(t)を積分した後にハイパスフィルター処理して速度データv(t)を生成してもよい。
【0144】
次に、計測装置1は、式(52)により、速度データv(t)から速度振幅Sを算出する。速度振幅Sは、速度データv(t)の最大値と最小値との差に相当する。図35に、速度データv(t)及び速度振幅Sの一例を示す。
【0145】
【数52】
【0146】
次に、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5の上部構造7を通過するのに要した通過時間tを算出する。例えば、計測装置1は、図36に示すように、加速度データa(t)が閾値THと最初に交差する時刻を進入時刻tとして算出し、加速度データa(t)が閾値THと最後に交差する時刻をtとして算出する。そして、計測装置1は、式(53)により、進出時刻tと進入時刻tとの差として、鉄道車両6が橋梁5の上部構造7を通過する通過時間tを算出する。
【0147】
【数53】
【0148】
また、計測装置1は、鉄道車両6の車両数Cを算出する。例えば、計測装置1は、速度データv(t)の正のピーク数Pをカウントし、式(54)により、車両数Cを算出する。
【0149】
【数54】
【0150】
次に、計測装置1は、前出の式(40)、式(44)及び式(49)の補正関数に基づく補正式(55)に、式(52)で算出した速度振幅S、式(53)で算出した通過時間t、式(54)で算出した車両数C及び計測対象の橋梁5の長さである橋梁長Lを代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。なお、計測装置1は、補正式(55)に代えて、前出の式(41)、式(47)及び式(50)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。
【0151】
【数55】
【0152】
そして、計測装置1は、前出の回帰直線の式(37)の速度振幅Sを、式(55)で算出した補正速度振幅Sv_corに置き換えた回帰直線の式(56)により、推定される橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。
【0153】
【数56】
【0154】
1-3.計測方法の手順
図37は、第1実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図である。本実施形態では、計測装置1が図37に示す手順を実行する。
【0155】
図37に示すように、まず、回帰直線算出工程S10において、計測装置1は、図5に示した橋梁5の構造モデルへの荷重Pの印加によるたわみ量Tstdに基づいて速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布を算出し、算出した速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布に基づいて、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線を算出する。具体的には、回帰直線算出工程S10において、まず、計測装置1は、前出の式(1)~式(35)により、鉄道車両6によるたわみ量Tstd(t)を算出し、前出の式(36)により、荷重比Pによって変位振幅Sが変化するたわみ量Tstd_p(t)を算出する。次に、計測装置1は、荷重比Pをパラメーターとして、複数の荷重比Pの各々に対応するたわみ量Tstd_p(t)を算出する。次に、計測装置1は、算出した複数のたわみ量Tstd_p(t)の各々の変位振幅Sと、複数のたわみ量Tstd_p(t)の各々を微分して得られる速度波形の速度振幅Sとを算出する。そして、計測装置1は、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す近似直線を算出し、前出の式(56)に示した回帰直線とする。なお、回帰直線算出工程S10は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。
【0156】
次に、補正関数算出工程S20において、計測装置1は、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sを補正する補正関数を算出する。具体的には、補正関数算出工程S20において、計測装置1は、通過時間tをパラメーターとして、複数の通過時間tの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(38)~式(40)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_tsに補正する式(40)の補正関数を算出する。また、計測装置1は、橋梁長Lをパラメーターとして、複数の橋梁長Lの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(42)~式(44)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_LBに補正する式(44)の補正関数を算出する。また、計測装置1は、車両数Cをパラメーターとして、複数の車両数Cの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(48),式(49)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_CTに補正する式(49)の補正関数を算出する。あるいは、計測装置1は、式(40)、式(44)及び式(49)の補正関数に代えて、式(41)、式(47)及び式(50)の補正関数を算出してもよい。なお、補正関数算出工程S20は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。
【0157】
次に、加速度データ取得工程S30において、計測装置1は、橋梁5の観測点Rを観測し、橋梁5を走行する鉄道車両6の複数の部位の観測点Rへの作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーであるセンサー2から出力される加速度データa(t)を取得する。
【0158】
次に、速度振幅算出工程S40において、計測装置1は、工程S30で取得した加速度データa(t)に基づいて、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Svを算出する。具体的には、速度振幅算出工程S40において、計測装置1は、加速度データa(t)をハイパスフィルター処理して加速度データa(t)を生成し、前出の式(51)により、加速度データa(t)を積分して速度データv(t)を生成する。そして、計測装置1は、式(52)により、速度データv(t)から速度振幅Sを算出する。
【0159】
次に、観測情報生成工程S50において、計測装置1は、観測情報を生成する。具体的には、観測情報生成工程S50において、計測装置1は、工程S40で生成した加速度データa(t)を用いて進入時刻t及び進出時刻tを算出し、前出の式(53)により通過時間tsを算出する。また、計測装置1は、工程S40で生成した速度データv(t)の正のピーク数Pをカウントし、前出の式(54)により、車両数Cを算出する。そして、計測装置1は、進入時刻t、進出時刻t、通過時間t、車両数Cを含む観測情報を生成する。
【0160】
次に、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を通過する通過時間t、橋梁長L及び鉄道車両6の車両数Cの少なくとも1つに基づいて、工程S40で算出した速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。通過時間t及び車両数Cは、工程S50で生成した観測情報に含まれている。また、橋梁長Lは、あらかじめ作成された環境情報に含まれている。例えば、計測装置1は、速度振幅Sと通過時間tとの相関を近似した関数の式(39)、速度振幅Sと橋梁長Lとの相関を近似した関数の式(43)及び速度振幅Sと車両数Cとの相関を近似した関数の式(48)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。具体的には、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。そして、計測装置1は、算出した通過時間t、車両数C、橋梁長L及び速度振幅Sを、補正関数算出工程S20で算出した式(40)、式(44)及び式(49)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(55)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。計測装置1は、補正式(55)に代えて、補正関数算出工程S20で算出した前出の式(41)、式(47)及び式(50)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。
【0161】
なお、計測対象の橋梁5が1種類のみの場合等、橋梁長Lが定数である場合は、計測装置1は、式(55)のLを定数値とした式に通過時間t及び車両数Cを代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、計測対象の橋梁5を走行する鉄道車両6が1種類のみの場合等、車両数Cが定数である場合は、計測装置1は、式(55)のCを定数値とした式に通過時間t及び橋梁長Lを代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、橋梁長L及び車両数Cがともに定数である場合は、計測装置1は、式(55)のL及びCをそれぞれ定数値とした式に通過時間tを代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。
【0162】
次に、変位振幅算出工程S70において、計測装置1は、回帰直線算出工程S10で算出した、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線の式(56)に、工程S60で算出した補正速度振幅Sv_corを代入して変位振幅Su_estiを算出する。
【0163】
次に、計測データ出力工程S80において、計測装置1は、工程S70で算出した変位振幅Su_estiを含む計測データを監視装置3に出力する。具体的には、計測装置1は、計測データを、通信ネットワーク4を介して監視装置3に送信する。計測データは、変位振幅Su_estiに加えて、加速度データa(t),a(t)、速度データv(t)、速度振幅S、補正速度振幅Sv_cor等を含んでもよい。
【0164】
そして、工程S90において計測を終了するまで、計測装置1は、工程S30~S80の処理を繰り返し行う。
【0165】
1-4.センサー、計測装置及び監視装置の構成
図38は、センサー2、計測装置1及び監視装置3の構成例を示す図である。
【0166】
図38に示すように、センサー2は、通信部21と、加速度センサー22と、プロセッサー23と、記憶部24と、を備えている。
【0167】
記憶部24は、プロセッサー23が計算処理や制御処理を行うための各種のプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部24は、プロセッサー23が所定のアプリケーション機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0168】
加速度センサー22は、3軸の各軸方向に生じる加速度を検出する。
【0169】
プロセッサー23は、記憶部24に記憶された観測プログラム241を実行することにより、加速度センサー22を制御し、加速度センサー22が検出した加速度に基づいて加速度データ242を生成し、生成した加速度データ242を記憶部24に記憶させる。本実施形態では、加速度データ242は、加速度データa(t)である。
【0170】
通信部21は、プロセッサー23の制御により、記憶部24に記憶されている加速度データ242を計測装置1に送信する。
【0171】
図38に示すように、計測装置1は、第1通信部11と、第2通信部12と、記憶部13と、プロセッサー14と、を備えている。
【0172】
第1通信部11は、センサー2から加速度データ242を受信し、受信した加速度データ242をプロセッサー14に出力する。前述の通り、加速度データ242は、加速度データa(t)である。
【0173】
記憶部13は、プロセッサー14が計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部13は、プロセッサー14が所定のアプリケーション機能を実現するための各種のプログラムやデータ等を記憶している。また、プロセッサー14が通信ネットワーク4を介して各種のプログラムやデータ等を受信して記憶部13に記憶させてもよい。
【0174】
プロセッサー14は、第1通信部11が受信した加速度データ242及び予め記憶部13に記憶されている環境情報132に基づいて計測データ135を生成し、生成した計測データ135を記憶部13に記憶させる。
【0175】
本実施形態では、プロセッサー14は、記憶部13に記憶された計測プログラム131を実行することにより、加速度データ取得部141、速度振幅算出部142、観測情報生成部143、補正速度振幅算出部144、変位振幅算出部145及び計測データ出力部146として機能し、さらに、回帰直線算出部147及び補正関数算出部148として機能してもよい。すなわち、プロセッサー14は、加速度データ取得部141、速度振幅算出部142、観測情報生成部143、補正速度振幅算出部144、変位振幅算出部145及び計測データ出力部146を含み、さらに、回帰直線算出部147及び補正関数算出部148を含んでもよい。
【0176】
回帰直線算出部147は、荷重Pの印加による橋梁5のたわみ量Tstd_pを算出し、たわみ量Tstd_pを用いて得られた速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布に基づいて、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線を算出する。具体的には、まず、回帰直線算出部147は、前出の式(1)~式(35)により、鉄道車両6によるたわみ量Tstd(t)を算出し、前出の式(36)により、荷重比Pによって変位振幅Sが変化するたわみ量Tstd_p(t)を算出する。次に、回帰直線算出部147は、荷重比Pをパラメーターとして、複数の荷重比Pの各々に対応するたわみ量Tstd_p(t)を算出する。次に、回帰直線算出部147は、算出した複数のたわみ量Tstd_p(t)の各々の変位振幅Sと、複数のたわみ量Tstd_p(t)の各々を微分して得られる速度波形の速度振幅Sとを算出する。そして、回帰直線算出部147は、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す近似直線を算出し、前出の式(56)に示した回帰直線とする。すなわち、回帰直線算出部147は、図37における回帰直線算出工程S10の処理を行う。なお、回帰直線算出部147が行う処理は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。この場合、プロセッサー14は、回帰直線算出部147を含まなくてもよい。
【0177】
補正関数算出部148は、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sを補正する補正関数を算出する。具体的には、補正関数算出部148は、通過時間tをパラメーターとして、複数の通過時間tの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(38)~式(40)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_tsに補正する式(40)の補正関数を算出する。また、補正関数算出部148は、橋梁長Lをパラメーターとして、複数の橋梁長Lの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(42)~式(44)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_LBに補正する式(44)の補正関数を算出する。また、補正関数算出部148は、車両数Cをパラメーターとして、複数の車両数Cの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(48),式(49)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_CTに補正する式(49)の補正関数を算出する。あるいは、補正関数算出部148は、式(40)、式(44)及び式(49)の補正関数に代えて、式(41)、式(47)及び式(50)の補正関数を算出してもよい。すなわち、補正関数算出部148は、図37における補正関数算出工程S20の処理を行う。なお、補正関数算出部148が行う処理は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。この場合、プロセッサー14は、補正関数算出部148を含まなくてもよい。
【0178】
加速度データ取得部141は、第1通信部11が受信した加速度データ242を取得し、加速度データ133として記憶部13に記憶させる。すなわち、加速度データ取得部141は、図37における加速度データ取得工程S30の処理を行う。
【0179】
速度振幅算出部142は、加速度データ取得部141が取得した加速度データ133に基づいて、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Svを算出する。具体的には、速度振幅算出部142は、加速度データ133である加速度データa(t)をハイパスフィルター処理して加速度データa(t)を生成し、前出の式(51)により、加速度データa(t)を積分して速度データv(t)を生成する。そして、速度振幅算出部142は、式(52)により、速度データv(t)から速度振幅Sを算出する。すなわち、速度振幅算出部142は、図37における速度振幅算出工程S40の処理を行う。
【0180】
観測情報生成部143は、観測情報を生成する。具体的には、観測情報生成部143は、速度振幅算出部142が生成した加速度データa(t)を用いて進入時刻t及び進出時刻tを算出し、前出の式(53)により通過時間tを算出する。また、観測情報生成部143は、速度振幅算出部142が生成した速度データv(t)の正のピーク数Pをカウントし、前出の式(54)により、車両数Cを算出する。そして、観測情報生成部143は、進入時刻t、進出時刻t、通過時間ts、車両数Cを含む観測情報を生成する。すなわち、観測情報生成部143は、図37における観測情報生成工程S50の処理を行う。
【0181】
補正速度振幅算出部144は、鉄道車両6が橋梁5を通過する通過時間t、橋梁長L及び鉄道車両6の車両数Cの少なくとも1つに基づいて、速度振幅算出部142が算出した速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。通過時間t及び車両数Cは、観測情報生成部143が算出した観測情報に含まれている。また、橋梁長Lは、あらかじめ作成された環境情報に含まれている。例えば、補正速度振幅算出部1441は、速度振幅Sと通過時間tとの相関を近似した関数の式(39)、速度振幅Sと橋梁長Lとの相関を近似した関数の式(43)及び速度振幅Sと車両数Cとの相関を近似した関数の式(48)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。具体的には、補正速度振幅算出部144は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。そして、補正速度振幅算出部144は、算出した通過時間t、車両数C、橋梁長L及び速度振幅Sを、補正関数算出部148が算出した式(40)、式(44)及び式(49)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(55)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。補正速度振幅算出部144は、補正式(55)に代えて、補正関数算出部148が算出した前出の式(41)、式(47)及び式(50)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。すなわち、補正速度振幅算出部144は、図37における補正速度振幅算出工程S60の処理を行う。
【0182】
変位振幅算出部145は、回帰直線算出部147が算出した、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線の式(56)に、補正速度振幅算出部144が算出した補正速度振幅Sv_corを代入して変位振幅Su_estiを算出する。すなわち、変位振幅算出部145は、図37における変位振幅算出工程S70の処理を行う。
【0183】
変位振幅Su_estiは、計測データ135の少なくとも一部として記憶部13に記憶される。計測データ135は、変位振幅Su_estiに加えて、加速度データa(t),a(t)、速度データv(t)、速度振幅S、補正速度振幅Sv_cor等を含んでもよい。
【0184】
計測データ出力部146は、記憶部13に記憶されている計測データ135を読み出し、計測データ135を監視装置3に出力する。具体的には、計測データ出力部146の制御により、第2通信部12が、記憶部13に記憶されている計測データ135を、通信ネットワーク4を介して、監視装置3に送信する。すなわち、計測データ出力部146は、図37における計測データ出力工程S80の処理を行う。
【0185】
このように、計測プログラム131は、図37に示したフローチャートの各手順を、コンピューターである計測装置1に実行させるプログラムである。
【0186】
図38に示すように、監視装置3は、通信部31と、プロセッサー32と、表示部33と、操作部34と、記憶部35と、を備えている。
【0187】
通信部31は、計測装置1から計測データ135を受信し、受信した計測データ135をプロセッサー32に出力する。
【0188】
表示部33は、プロセッサー32の制御により、各種の情報を表示させる。表示部33は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであってもよい。ELは、Electro Luminescenceの略である。
【0189】
操作部34は、ユーザーによる操作に対応する操作データをプロセッサー32に出力する。操作部34は、例えば、マウス、キーボード、マイクロフォン等の入力装置であってもよい。
【0190】
記憶部35は、プロセッサー32が計算処理や制御処理を行うための各種のプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部35は、プロセッサー32が所定のアプリケーション機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0191】
プロセッサー32は、通信部31が受信した計測データ135を取得し、取得した計測データ135に基づいて橋梁5の状態の経時的な変化を評価して評価情報を生成し、生成した評価情報を表示部33に表示させる。
【0192】
本実施形態では、プロセッサー32は、記憶部35に記憶された監視プログラム351を実行することにより、計測データ取得部321及び監視部322として機能する。すなわち、プロセッサー32は、計測データ取得部321及び監視部322を含む。
【0193】
計測データ取得部321は、通信部31が受信した計測データ135を取得し、取得した計測データ135を記憶部35に記憶される計測データ列352に追加する。
【0194】
監視部322は、記憶部35に記憶される計測データ列352に基づいて、統計的に橋梁5の状態の経時的な変化を評価する。そして、監視部322は、評価結果を示す評価情報を生成し、生成した評価情報を表示部33に表示させる。ユーザーは、表示部33に表示される評価情報に基づいて、橋梁5の状態を監視することができる。
【0195】
監視部322は、記憶部35に記憶される計測データ列352に基づいて、鉄道車両6の監視や橋梁5の異常判定等の処理を行ってもよい。
【0196】
また、プロセッサー32は、操作部34から出力される操作データに基づいて、計測装置1やセンサー2の動作状況を調整するための情報を、通信部31を介して計測装置1に送信する。計測装置1は、第2通信部12を介して受信した情報によって動作状況が調整される。また、計測装置1は、第2通信部12を介して受信したセンサー2の動作状況を調整するための情報を、第1通信部11を介してセンサー2に送信する。センサー2は、通信部21を介して受信した情報によって動作状況が調整される。
【0197】
なお、プロセッサー14,23,32は、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサー14,23,32はハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。プロセッサー14,23,32は、CPU、GPU、或いはDSP等であってもよい。CPUはCentral Processing Unitの略であり、GPUはGraphics Processing Unitの略であり、DSPはDigital Signal Processorの略である。また、プロセッサー14,23,32は、ASICなどのカスタムICとして構成され、各部の機能を実現してもよいし、CPUとASICとによって各部の機能を実現してもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略であり、ICはIntegrated Circuitの略である。
【0198】
また、記憶部13,24,35は、例えば、ROMやフラッシュROM、RAM等の各種ICメモリーやハードディスク、メモリーカードなどの記録媒体等により構成される。ROMはRead Only Memoryの略であり、RAMはRandom Access Memoryの略であり、ICはIntegrated Circuitの略である。記憶部13,24,35は、コンピューターにより読み取り可能な装置や媒体である不揮発性の情報記憶装置を含み、各種のプログラムやデータ等は当該情報記憶装置に記憶されていてもよい。情報記憶装置は、光ディスクDVD、CD等の光ディスク、ハードディスクドライブ、或いはカード型メモリーやROM等の各種のメモリー等であってもよい。
【0199】
なお、図38ではセンサー2は1つのみ図示されているが、複数のセンサー2がそれぞれ加速度データ242を生成し、計測装置1に送信してもよい。この場合、計測装置1は、複数のセンサー2から送信された複数の加速度データ242を受信して複数の計測データ135を生成し、監視装置3に送信する。また、監視装置3は、計測装置1から送信された複数の計測データ135を受信し、受信した複数の計測データ135に基づいて、橋梁5の状態を監視する。
【0200】
1-5.作用効果
本実施形態の計測方法の効果を検証するために、本発明者は、まず、0.5~5.45の範囲の荷重比P、8m~17mの範囲の橋梁長L、5.625秒~18秒の範囲の通過時間t及び7両~16両の範囲の車両数Cの各値をランダムに発生させてたわみ量Tstd(t)を算出した。そして、本発明者は、算出したたわみ量Tstd(t)を微分した速度波形から速度振幅Sを算出し、前出の式(37)を用いて変位振幅Sを算出し、図39に示す変位振幅Sと速度振幅Sの分布を作成した。次に、本発明者は、前出の式(55)により、速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出し、前出の式(56)により、変位振幅Su_estiを算出し、図40に示す変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を作成した。図39の変位振幅Sと速度振幅Sとの相関係数の値は0.602189271であるが、図40の変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corとの相関係数の値は0.987674069であり、本実施形態の計測方法によって相関性が向上することが確認された。
【0201】
以上に説明したように、第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、橋梁5を走行する鉄道車両6によって橋梁5の観測点Rに生じる振動の加速度を2回積分して橋梁5の変位を算出するのではなく、センサー2が検出する加速度に基づいて橋梁5が振動する速度振幅Sを算出し、速度振幅Sと、鉄道車両6の走行による橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線とを用いて、橋梁5の変位振幅Sを算出する。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、加速度の2回積分による大きな積分誤差がなくハイパスフィルター処理によって変位振幅が損なわれるおそれがない。一方、鉄道車両6が橋梁5を通過する通過時間t、橋梁長L又は鉄道車両6の車両数Cによって、橋梁5の変位振幅Sは変化しないが橋梁5の速度振幅Sは変化する。そのため、第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、通過時間tが不変でない場合は、速度振幅Sと通過時間tとの相関を近似した関数に基づいて通過時間tによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、橋梁長Lが不変でない場合は、速度振幅Sと橋梁長Lとの相関を近似した関数に基づいて橋梁長Lによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、車両数Cが不変でない場合は、速度振幅Sと車両数Cとの相関を近似した関数に基づいて車両数Cによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。そして、計測装置1は、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線に補正速度振幅Sv_corを代入して橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、鉄道車両6の走行による橋梁5の変位振幅Su_estiの精度を向上させることができる。
【0202】
また、第1実施形態の計測方法によれば、回帰直線算出工程S10において、計測装置1は、橋梁5の構造モデルを用いて算出した橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布に基づいて回帰直線を算出するので、実測によって橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布を取得する必要がなく、回帰直線を算出するコストが低減される。
【0203】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0204】
第2実施形態では、速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出する補正関数が第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、各補正関数は、規格化された通過時間t、橋梁長L及び車両数Cをそれぞれパラメーターとする関数である。
【0205】
まず、通過時間tに対して基準とする基準通過時間ts_refを定め、式(57)で示すように、通過時間tと基準通過時間ts_refとの比を規格化通過時間ts_std(t)とする。
【0206】
【数57】
【0207】
図41に、図14に示した通過時間tと速度振幅Sとの関係から得られる規格化通過時間ts_std(t)と速度振幅Sとの関係を両対数で示す。図41に示すように、規格化通過時間ts_std(t)と速度振幅Sとの関係を両対数で示すと、両者は線形に変化する。したがって、図41において破線で示すように、規格化通過時間ts_std(t)の対数と速度振幅Sの対数との相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、通過時間tをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_ts1(t)として、式(58)で表される。
【0208】
【数58】
【0209】
式(58)より、式(59)が得られる。
【0210】
【数59】
【0211】
例えば、たわみ量Tstd(t)に対して、荷重P=1、橋梁長L=12、車両数C=10として通過時間tを6秒から17秒まで変化させて式(59)の各係数を求め、at2=-0.993905218、bt2=0.117099168とする。式(59)より、規格化通過時間ts_std(t)によって速度振幅S(t)を補正した補正速度振幅Sv_cor_ts2(t)を算出する補正関数は、式(60)に係数at2,bt2の各値を代入して算出される。
【0212】
【数60】
【0213】
図42に、通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts2との関係の一例を示す。また、図43に、通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts2との関係の一例を示す。図42に示すように、通過時間tが変化しても補正速度振幅Sv_cor_ts2はほぼ一定である。また、図43に示すように、変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts2との関係を示す複数の点がほぼ一点に重なっている。すなわち、式(60)により、通過時間tによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_ts2が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(60)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_ts2を代入すれば、通過時間tによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0214】
また、橋梁長Lに対して基準とする基準橋梁長LB_refを定め、式(61)で示すように、橋梁長Lと基準橋梁長LB_refとの比を規格化橋梁長LB_std(L)とする。
【0215】
【数61】
【0216】
図44に、図21に示した橋梁長Lと速度振幅Sとの関係から得られる規格化橋梁長LB_std(L)と速度振幅Sとの関係を両対数で示す。図44に示すように、規格化橋梁長LB_std(L)と速度振幅Sとの関係を両対数で示すと、両者は線形に近い形で変化する。したがって、図44において破線で示すように、規格化橋梁長LB_std(L)の対数と速度振幅Sの対数との相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、橋梁長Lをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_LB2(L)として、式(62)で表される。
【0217】
【数62】
【0218】
式(62)より、式(63)が得られる。
【0219】
【数63】
【0220】
例えば、最小二乗法により、式(63)の各係数を求め、al3=-1.502119999、bl3=0.148872818とする。式(63)より、橋梁長Lによって速度振幅S(L)を補正した補正速度振幅Sv_cor_LB2(L)を算出する補正関数は、式(64)に係数al3,bl3の各値を代入して算出される。
【0221】
【数64】
【0222】
図45に、橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB2との関係の一例を示す。また、図46に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB2との関係の一例を示す。図45及び図46に示すように、橋梁長Lによる補正速度振幅Sv_cor_LB2のばらつきが小さく、式(64)により、橋梁長Lによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_LB2が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(64)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_LB2を代入すれば、橋梁長Lによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0223】
図44に示した規格化橋梁長LB_std(L)の対数と速度振幅Sの対数との関係では、橋梁長L=20mに不連続な変化があるので、式(65)のようにL=20mの前後で分割して近似する。
【0224】
【数65】
【0225】
式(65)より、式(66)が得られる。
【0226】
【数66】
【0227】
例えば、最小二乗法により、式(66)の各係数を求め、al4=-1.388693279、bl4=0.166353027、al5=-2.703113665、bl5=0.859937785とする。式(66)より、橋梁長Lによって速度振幅S(L)を補正した補正速度振幅Sv_cor_LB3(L)を算出する補正関数は、式(67)に係数al4,bl4,al5,bl5の各値を代入して算出される。
【0228】
【数67】
【0229】
図47に、橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB3との関係の一例を示す。また、図48に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB3との関係の一例を示す。図47及び図48に示すように、橋梁長Lによる補正速度振幅Sv_cor_LB3のばらつきが小さく、式(67)により、橋梁長Lによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_LB3が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(67)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_LB3を代入すれば、橋梁長Lによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0230】
また、車両数Cに対して基準とする基準車両数CT_refを定め、式(68)で示すように、車両数Cと基準車両数CT_refとの比を規格化車両数CT_std(C)とする。
【0231】
【数68】
【0232】
図49に、図28に示した車両数Cと速度振幅Sとの関係から得られる規格化車両数CT_std(C)と速度振幅Sとの関係を示す。図49に示すように、規格化車両数CT_std(C)と速度振幅Sとは線形に変化する。したがって、図49において破線で示すように、規格化車両数CT_std(C)と速度振幅Sとの相関を示す近似直線を求めることができる。この近似直線は、車両数Cをパラメーターとする速度振幅Sを速度振幅Sv_CT1(C)として、式(69)で表される。
【0233】
【数69】
【0234】
例えば、最小二乗法により、式(69)の各係数を求め、ac2=1.073133658、bc2=0.05067018とする。式(69)より、車両数Cによって速度振幅S(C)を補正した補正速度振幅Sv_cor_CT1(C)を算出する補正関数は、式(70)に係数ac2,bc2の各値を代入して算出される。
【0235】
【数70】
【0236】
図50に、車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT2との関係の一例を示す。図50に示すように、車両数Cによる補正速度振幅Sv_cor_CT2のばらつきが小さく、式(70)により、車両数Cによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_CT2が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(70)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_CT2を代入すれば、車両数Cによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0237】
本実施形態では、計測装置1は、前出の式(60)、式(64)及び式(70)の補正関数に基づく補正式(71)に、前出の式(52)で算出した速度振幅S、前出の式(53)で算出した通過時間t、前出の式(54)で算出した車両数C及び計測対象の橋梁5の長さである橋梁長Lを代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。なお、計測装置1は、補正式(71)に代えて、前出の式(60)、式(67)及び式(70)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。
【0238】
【数71】
【0239】
そして、計測装置1は、前出の式(56)により、推定される橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。
【0240】
第2実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図は、図37と同様であるため、その図示を省略する。
【0241】
第2実施形態では、補正関数算出工程S20において、計測装置1は、通過時間tをパラメーターとして、複数の通過時間tの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(57)~式(60)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_ts2に補正する式(60)の補正関数を算出する。また、計測装置1は、橋梁長Lをパラメーターとして、複数の橋梁長Lの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(61)~式(64)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_LB2に補正する式(64)の補正関数を算出する。また、計測装置1は、車両数Cをパラメーターとして、複数の車両数Cの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(68)~式(70)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_CT2に補正する式(70)の補正関数を算出する。あるいは、計測装置1は、式(64)の補正関数に代えて、式(67)の補正関数を算出してもよい。なお、補正関数算出工程S20は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。
【0242】
また、第2実施形態では、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、速度振幅Sと、通過時間tを基準通過時間ts_refに基づいて規格化した規格化通過時間ts_std(t)との相関を近似した関数の式(59)、速度振幅Sと、橋梁長Lを基準橋梁長LB_refに基づいて規格化した規格化橋梁長LB_std(L)との相関を近似した関数の式(63)、及び、速度振幅Sと、車両数Cを基準車両数CT_refに基づいて規格化した規格化車両数CT_std(C)との相関を近似した関数の式(69)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出する。具体的には、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。さらに、計測装置1は、前出の式(57)により規格化通過時間ts_std(t)を算出し、前出の式(61)により規格化橋梁長LB_std(L)を算出し、前出の式(68)により規格化車両数CT_std(C)を算出する。そして、計測装置1は、算出した規格化通過時間ts_std(t)、規格化橋梁長LB_std(L)、規格化車両数CT_std(C)及び速度振幅Sを、補正関数算出工程S20で算出した式(60)、式(64)及び式(70)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(71)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。計測装置1は、補正式(71)に代えて、補正関数算出工程S20で算出した前出の式(60)、式(67)及び式(70)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。
【0243】
なお、計測対象の橋梁5が1種類のみの場合等、規格化橋梁長LB_std(L)が定数である場合は、計測装置1は、式(71)のLB_std(L)を定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)及び規格化車両数CT_std(C)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、計測対象の橋梁5を走行する鉄道車両6が1種類のみの場合等、規格化車両数CT_std(C)が定数である場合は、計測装置1は、式(71)のCT_std(C)を定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)及び規格化橋梁長LB_std(L)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、規格化橋梁長LB_std(L)及び規格化車両数CT_std(C)がともに定数である場合は、計測装置1は、式(71)のLB_std(L)及びCT_std(C)をそれぞれ定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。
【0244】
第2実施形態の計測方法における回帰直線算出工程S10、加速度データ取得工程S30、速度振幅算出工程S40、観測情報生成工程S50、変位振幅算出工程S70及び計測データ出力工程S80の処理は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0245】
また、第2実施形態におけるセンサー2、計測装置1及び監視装置3の構成は、図38と同様であるため、その図示を省略する。
【0246】
第2実施形態では、補正関数算出部148は、通過時間tをパラメーターとして、複数の通過時間tの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(57)~式(60)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_ts2に補正する式(60)の補正関数を算出する。また補正関数算出部148は、橋梁長Lをパラメーターとして、複数の橋梁長Lの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(61)~式(64)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_LB2に補正する式(64)の補正関数を算出する。また、補正関数算出部148は、車両数Cをパラメーターとして、複数の車両数Cの各々に対応するたわみ量Tstd(t)を算出し、算出した複数のたわみ量Tstd(t)を用いて、前出の式(68)~式(70)により、速度振幅Sを補正速度振幅Sv_cor_CT2に補正する式(70)の補正関数を算出する。あるいは、補正関数算出部148は、式(64)の補正関数に代えて、式(67)の補正関数を算出してもよい。すなわち、補正関数算出部148は、図37における補正関数算出工程S20の処理を行う。なお、補正関数算出部148が行う処理は、計測装置1とは異なる装置が行ってもよい。この場合、プロセッサー14は、補正関数算出部148を含まなくてもよい。
【0247】
また、第2実施形態では、補正速度振幅算出部144は、速度振幅Sと、通過時間tを基準通過時間ts_refに基づいて規格化した規格化通過時間ts_std(t)との相関を近似した関数の式(59)、速度振幅Sと、橋梁長Lを基準橋梁長LB_refに基づいて規格化した規格化橋梁長LB_std(L)との相関を近似した関数の式(63)、及び、速度振幅Sと、車両数Cを基準車両数CT_refに基づいて規格化した規格化車両数CT_std(C)との相関を近似した関数の式(69)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出する。具体的には、補正速度振幅算出部144は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。さらに、補正速度振幅算出部144は、前出の式(57)により規格化通過時間ts_std(t)を算出し、前出の式(61)により規格化橋梁長LB_std(L)を算出し、前出の式(68)により規格化車両数CT_std(C)を算出する。そして、補正速度振幅算出部144は、算出した規格化通過時間ts_std(t)、規格化橋梁長LB_std(L)、規格化車両数CT_std(C)及び速度振幅Sを、補正関数算出工程S20で算出した式(60)、式(64)及び式(70)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(71)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。補正速度振幅算出部144は、補正式(71)に代えて、補正関数算出工程S20で算出した前出の式(60)、式(67)及び式(70)の補正関数に基づく補正式を用いて、補正速度振幅Sv_corを算出してもよい。すなわち、補正速度振幅算出部144は、図37における補正速度振幅算出工程S60の処理を行う。
【0248】
第2実施形態における計測装置1のその他の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、第2実施形態におけるセンサー2及び監視装置3の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0249】
本実施形態の計測方法の効果を検証するために、本発明者は、前述の通り、図39に示す変位振幅Sと速度振幅Sの分布を作成した。次に、本発明者は、前出の式(71)により、速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出し、前出の式(56)により、変位振幅Su_estiを算出し、図51に示す変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を作成した。図39の変位振幅Sと速度振幅Sとの相関係数の値は0.6022であるが、図51の変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corとの相関係数の値は0.9934であり、本実施形態の計測方法によって相関性が向上することが確認された。
【0250】
以上に説明した第2実施形態の計測方法では、計測装置1は、通過時間tが不変でない場合は、速度振幅Sと規格化通過時間ts_std(t)との相関を近似した関数に基づいて通過時間tによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、橋梁長Lが不変でない場合は、速度振幅Sと規格化橋梁長LB_std(L)との相関を近似した関数に基づいて橋梁長Lによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、車両数Cが不変でない場合は、速度振幅Sと規格化車両数CT_std(C)との相関を近似した関数に基づいて車両数Cによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。そして、計測装置1は、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線に補正速度振幅Sv_corを代入して橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。したがって、第2実施形態の計測方法によれば、鉄道車両6の走行による橋梁5の変位振幅Su_estiの精度を向上させることができる。
【0251】
その他、第2実施形態の計測方法によれば、第1実施形態の計測方法と同様の効果を奏することができる。
【0252】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0253】
第3実施形態では、速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出する補正関数が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。具体的には、第3実施形態では、各補正関数は、前出の式(60)、式(64)及び式(70)の各補正関数を簡素化した関数である。
【0254】
式(60)の計算を簡素化するためにat2=-0.993905218≒-1、bt2=0.117099168≒0とすると、補正速度振幅Sv_cor_ts3(t)を算出する補正関数の式(72)が得られる。式(72)によれば、通過時間tに依存する速度振幅S(t)を近似した関数の式(60)の係数を求める必要がなく容易に補正ができる。
【0255】
【数72】
【0256】
図52に、通過時間tと補正速度振幅Sv_cor_ts3との関係の一例を示す。また、図53に、通過時間tが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts3との関係の一例を示す。図52に示すように、通過時間tが変化しても補正速度振幅Sv_cor_ts3はほぼ一定である。また、図53に示すように、変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_ts3との関係を示す複数の点がほぼ一点に重なっている。すなわち、式(72)により、通過時間tによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_ts3が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(72)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_ts3を代入すれば、通過時間tによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0257】
また、式(64)の計算を簡素化するためにal3=-1.502119999≒-1、bl3=0.148872818≒0とすると、補正速度振幅Sv_cor_LB4(L)を算出する補正関数の式(73)が得られる。式(73)によれば、橋梁長Lに依存する速度振幅S(L)を近似した関数の式(64)の係数を求める必要がなく容易に補正ができる。
【0258】
【数73】
【0259】
図54に、橋梁長Lと補正速度振幅Sv_cor_LB4との関係の一例を示す。また、図55に、橋梁長Lが変化したときの変位振幅Sと補正速度振幅Sv_cor_LB4との関係の一例を示す。図54及び図55に示すように、橋梁長Lによる補正速度振幅Sv_cor_LB4のばらつきが小さく、式(73)により、橋梁長Lによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_LB4が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(73)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_LB4を代入すれば、橋梁長Lによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0260】
また、式(70)の計算を簡素化するためにac2=1.073133658≒1、bc2=0.05067018≒0とすると、補正速度振幅Sv_cor_CT3(C)を算出する補正関数の式(74)が得られる。式(74)によれば、車両数Cに依存する速度振幅S(C)を近似した関数の式(70)の係数を求める必要がなく容易に補正ができる。
【0261】
【数74】
【0262】
このように、補正関数の式(72)、式(73)及び式(74)は係数を有さず一意に決まる関数であるので、計測に先立って係数を算出して補正関数を算出する必要がない。すなわち、第3実施形態の計測方法は、補正関数算出工程S20を含まなくてもよい。
【0263】
図56に、車両数Cと補正速度振幅Sv_cor_CT3との関係の一例を示す。図56に示すように、車両数Cによる補正速度振幅Sv_cor_CT3のばらつきが小さく、式(74)により、車両数Cによる影響が補正された補正速度振幅Sv_cor_CT3が得られることがわかる。したがって、前出の速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を示す回帰直線の式(37)において、速度振幅Sに式(74)によって得られる補正速度振幅Sv_cor_CT3を代入すれば、車両数Cによらず適正な変位振幅Sが算出される。
【0264】
本実施形態では、計測装置1は、前出の式(72)、式(73)及び式(74)の補正関数に基づく補正式(75)に、前出の式(52)で算出した速度振幅S、前出の式(53)で算出した通過時間t、前出の式(54)で算出した車両数C及び計測対象の橋梁5の長さである橋梁長Lを代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。
【0265】
【数75】
【0266】
そして、計測装置1は、前出の式(56)により、推定される橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。
【0267】
第3実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図は、補正関数算出工程S20が不要である点を除いて図37と同様であるため、その図示を省略する。
【0268】
第3実施形態では、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、速度振幅Sと、通過時間tを基準通過時間ts_refに基づいて規格化した規格化通過時間ts_std(t)、橋梁長Lを基準橋梁長LB_refに基づいて規格化した規格化橋梁長LB_std(L)及び車両数Cを基準車両数CT_refに基づいて規格化した規格化車両数CT_std(C)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出する。具体的には、補正速度振幅算出工程S60において、計測装置1は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。さらに、計測装置1は、前出の式(57)により規格化通過時間ts_std(t)を算出し、前出の式(61)により規格化橋梁長LB_std(L)を算出し、前出の式(68)により規格化車両数CT_std(C)を算出する。そして、計測装置1は、算出した規格化通過時間ts_std(t)、規格化橋梁長LB_std(L)、規格化車両数CT_std(C)及び速度振幅Sを、補正関数算出工程S20で算出した式(72)、式(73)及び式(74)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(75)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。
【0269】
なお、計測対象の橋梁5が1種類のみの場合等、規格化橋梁長LB_std(L)が定数である場合は、計測装置1は、式(75)のLB_std(L)を定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)及び規格化車両数CT_std(C)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、計測対象の橋梁5を走行する鉄道車両6が1種類のみの場合等、規格化車両数CT_std(C)が定数である場合は、計測装置1は、式(75)のCT_std(C)を定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)及び規格化橋梁長LB_std(L)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。また、規格化橋梁長LB_std(L)及び規格化車両数CT_std(C)がともに定数である場合は、計測装置1は、式(75)のLB_std(L)及びCT_std(C)をそれぞれ定数値とした式に規格化通過時間ts_std(t)を代入して補正速度振幅Sv_corを算出すればよい。
【0270】
第3実施形態の計測方法における回帰直線算出工程S10、加速度データ取得工程S30、速度振幅算出工程S40、観測情報生成工程S50、変位振幅算出工程S70及び計測データ出力工程S80の処理は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0271】
また、第3実施形態におけるセンサー2、計測装置1及び監視装置3の構成は、計測装置1のプロセッサー14が補正関数算出部148を含まない点を除いて図38と同様であるため、その図示を省略する。
【0272】
第3実施形態では、補正速度振幅算出部144は、速度振幅Sと、通過時間tを基準通過時間ts_refに基づいて規格化した規格化通過時間ts_std(t)、橋梁長Lを基準橋梁長LB_refに基づいて規格化した規格化橋梁長LB_std(L)及び車両数Cを基準車両数CT_refに基づいて規格化した規格化車両数CT_std(C)の少なくとも1つに基づいて、補正速度振幅Sv_corを算出する。具体的には、補正速度振幅算出部144は、前出の式(53)により通過時間tを算出し、前出の式(54)により車両数Cを算出する。さらに、補正速度振幅算出部144は、前出の式(57)により規格化通過時間ts_std(t)を算出し、前出の式(61)により規格化橋梁長LB_std(L)を算出し、前出の式(68)により規格化車両数CT_std(C)を算出する。そして、補正速度振幅算出部144は、算出した規格化通過時間ts_std(t)、規格化橋梁長LB_std(L)、規格化車両数CT_std(C)及び速度振幅Sを、補正関数算出工程S20で算出した式(72)、式(73)及び式(74)の補正関数に基づいて算出される前出の補正式(75)に代入し、補正速度振幅Sv_corを算出する。すなわち、補正速度振幅算出部144は、図37における補正速度振幅算出工程S60の処理を行う。
【0273】
第3実施形態における計測装置1のその他の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、第3実施形態におけるセンサー2及び監視装置3の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0274】
本実施形態の計測方法の効果を検証するために、本発明者は、前述の通り、図39に示す変位振幅Sと速度振幅Sの分布を作成した。次に、本発明者は、前出の式(75)により、速度振幅Sを補正した補正速度振幅Sv_corを算出し、前出の式(56)により、変位振幅Su_estiを算出し、図57に示す変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corの分布を作成した。図39の変位振幅Sと速度振幅Sとの相関係数の値は0.6022であるが、図57の変位振幅Su_estiと補正速度振幅Sv_corとの相関係数の値は0.9932であり、本実施形態の計測方法によって相関性が向上することが確認された。
【0275】
以上に説明した第3実施形態の計測方法では、計測装置1は、通過時間tが不変でない場合は、規格化通過時間ts_std(t)に基づいて通過時間tによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、橋梁長Lが不変でない場合は、規格化橋梁長LB_std(L)に基づいて橋梁長Lによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。また、計測装置1は、車両数Cが不変でない場合は、規格化車両数CT_std(C)に基づいて車両数Cによる速度振幅Sの変動を補正した補正速度振幅Sv_corを算出する。そして、計測装置1は、速度振幅Sと変位振幅Sとの相関を表す回帰直線に補正速度振幅Sv_corを代入して橋梁5の変位振幅Su_estiを算出する。したがって、第3実施形態の計測方法によれば、鉄道車両6の走行による橋梁5の変位振幅Su_estiの精度を向上させることができる。
【0276】
また、第3実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、計測時に、通過時間t、橋梁長L及び車両数Cに基づいて補正速度振幅Sv_corを算出することができるので、計測に先立って、通過時間t、橋梁長L又は車両数Cによる速度振幅Sの変動を補正する関数を算出する必要がない。
【0277】
その他、第3実施形態の計測方法によれば、第1実施形態又は第2実施形態の計測方法と同様の効果を奏することができる。
【0278】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0279】
例えば、上記の各実施形態では、回帰直線算出工程S10において、計測装置1は、橋梁5の構造モデルに基づいて算出した橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布を用いて回帰直線を算出しているが、実測によって取得した橋梁5の速度振幅Sと変位振幅Sとの特性分布を用いて回帰直線を算出してもよい。
【0280】
また、上記の各実施形態では、補正関数算出工程S20において、計測装置1は、橋梁5の構造モデルに基づいて算出したたわみ量Tstd(t)を用いて補正関数を算出しているが、実測によって取得した橋梁5の変位量を用いて補正関数を算出してもよい。
【0281】
また、上記の各実施形態では、各センサー2は、それぞれ上部構造7の主桁Gに設けられているが、上部構造7の表面や内部、床板Fの下面、橋脚8a等に設けられていてもよい。
【0282】
また、上記の各実施形態では、計測装置1は、観測点Rを観測する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて進入時刻tを算出しているが、上部構造7の進入端を観測する観測装置から出力される観測データに基づいて進入時刻tを算出してもよい。同様に、上記の各実施形態では、計測装置1は、観測点Rを観測する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて進出時刻tを算出しているが、上部構造7の進出端を観測する観測装置から出力される観測データに基づいて進出時刻tを算出してもよい。
【0283】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0284】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0285】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0286】
計測方法の一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
を含む。
【0287】
この計測方法では、橋梁を走行する鉄道車両によって橋梁の観測点に生じる振動の加速度を2回積分して橋梁の変位を算出するのではなく、加速度に基づいて橋梁が振動する速度振幅を算出し、当該速度振幅と、鉄道車両の走行による橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線とを用いて、橋梁の変位振幅を算出する。したがって、この計測方法によれば、加速度の2回積分による大きな積分誤差がなくハイパスフィルター処理によって変位振幅が損なわれるおそれがない。一方、鉄道車両が橋梁を通過する通過時間、橋梁長又は鉄道車両の車両数によって、橋梁の変位振幅は変化しないが橋梁の速度振幅は変化する。そのため、この計測方法では、鉄道車両が橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び鉄道車両の車両数の少なくとも1つが不変でない場合は、これらの少なくとも1つによって速度振幅を補正した補正速度振幅を算出し、回帰直線に補正速度振幅を代入して変位振幅を算出する。したがって、この計測方法によれば、鉄道車両の走行による橋梁の変位振幅の精度を向上させることができる。
【0288】
前記計測方法の一態様は、
前記橋梁の構造モデルへの荷重の印加によるたわみ量に基づいて前記速度振幅と前記変位振幅との特性分布を算出し、前記特性分布に基づいて前記回帰直線を算出する回帰直線算出工程を含んでもよい。
【0289】
この計測方法によれば、橋梁の構造モデルを用いて算出した橋梁の速度振幅と変位振幅との特性分布に基づいて回帰直線を算出するので、実測によって橋梁の速度振幅と変位振幅との特性分布を取得する必要がなく、回帰直線を算出するコストが低減される。
【0290】
前記計測方法の一態様において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記通過時間を基準通過時間に基づいて規格化した規格化通過時間、前記橋梁長を基準橋梁長に基づいて規格化した規格化橋梁長及び前記車両数を基準車両数に基づいて規格化した規格化車両数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出してもよい。
【0291】
この計測方法によれば、規格化通過時間に基づいて通過時間による速度振幅の変動を補正し、規格化橋梁長に基づいて橋梁長による速度振幅の変動を補正し、規格化車両数に基づいて車両数による速度振幅の変動を補正することができる。また、この計測方法によれば、計測時に、通過時間、橋梁長及び車両数に基づいて補正速度振幅を算出することができるので、計測に先立って、通過時間、橋梁長又は車両数による速度振幅の変動を補正する関数を算出する必要がない。
【0292】
前記計測方法の一態様において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記速度振幅と前記通過時間との相関を近似した関数、前記速度振幅と前記橋梁長との相関を近似した関数及び前記速度振幅と前記車両数との相関を近似した関数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出してもよい。
【0293】
この計測方法によれば、速度振幅と通過時間との相関を近似した関数に基づいて通過時間による速度振幅の変動を補正し、速度振幅と橋梁長との相関を近似した関数に基づいて橋梁長による速度振幅の変動を補正し、速度振幅と車両数との相関を近似した関数に基づいて車両数による速度振幅の変動を補正することができる。
【0294】
前記計測方法の一態様において、
前記補正速度振幅算出工程では、
前記速度振幅と、前記通過時間を基準通過時間に基づいて規格化した規格化通過時間との相関を近似した関数、前記速度振幅と、前記橋梁長を基準橋梁長に基づいて規格化した規格化橋梁長との相関を近似した関数、及び、前記速度振幅と、前記車両数を基準車両数に基づいて規格化した規格化車両数との相関を近似した関数の少なくとも1つに基づいて、前記補正速度振幅を算出してもよい。
【0295】
この計測方法によれば、速度振幅と規格化通過時間との相関を近似した関数に基づいて通過時間による速度振幅の変動を補正し、速度振幅と規格化橋梁長との相関を近似した関数に基づいて橋梁長による速度振幅の変動を補正し、速度振幅と規格化車両数との相関を近似した関数に基づいて車両数による速度振幅の変動を補正することができる。
【0296】
前記計測方法の一態様において、
前記複数の部位のそれぞれは車軸又は車輪であってもよい。
【0297】
計測装置の一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出部と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出部と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出部と、
を含む。
【0298】
この計測装置によれば、加速度の2回積分による大きな積分誤差がなくハイパスフィルター処理によって変位振幅が損なわれるおそれがない。また、この計測装置によれば、通過時間、橋梁長又は鉄道車両の車両数による橋梁の速度振幅の変動を補正した補正速度振幅を算出し、回帰直線に補正速度振幅を代入して変位振幅を算出するので、鉄道車両の走行による橋梁の変位振幅の精度を向上させることができる。
【0299】
計測システムの一態様は、
前記計測装置の一態様と、
前記加速度センサーと、
を備える。
【0300】
計測プログラムの一態様は、
橋梁の観測点を観測し、前記橋梁を走行する鉄道車両の複数の部位の前記観測点への作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーから出力される加速度データに基づいて、前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅を算出する速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両が前記橋梁を通過する通過時間、橋梁長及び前記鉄道車両の車両数の少なくとも1つに基づいて、前記速度振幅を補正した補正速度振幅を算出する補正速度振幅算出工程と、
前記鉄道車両の走行による前記橋梁の速度振幅と変位振幅との相関を表す回帰直線に前記補正速度振幅を代入して前記変位振幅を算出する変位振幅算出工程と、
をコンピューターに実行させる。
【0301】
この計測プログラムによれば、加速度の2回積分による大きな積分誤差がなくハイパスフィルター処理によって変位振幅が損なわれるおそれがない。また、この計測プログラムによれば、通過時間、橋梁長又は鉄道車両の車両数による橋梁の速度振幅の変動を補正した補正速度振幅を算出し、回帰直線に補正速度振幅を代入して変位振幅を算出するので、鉄道車両の走行による橋梁の変位振幅の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0302】
1…計測装置、2…センサー、3…監視装置、4…通信ネットワーク、5…橋梁、6…鉄道車両、7…上部構造、7a…橋床、7b…支承、7c…レール、7d…枕木、7e…バラスト、F…床板、G…主桁、8…下部構造、8a…橋脚、8b…橋台、10…計測システム、11…第1通信部、12…第2通信部、13…記憶部、14…プロセッサー、21…通信部、22…加速度センサー、23…プロセッサー、24…記憶部、31…通信部、32…プロセッサー、33…表示部、34…操作部、35…記憶部、131…計測プログラム、132…環境情報、133…加速度データ、134…観測情報、135…計測データ、141…加速度データ取得部、142…速度振幅算出部、143…観測情報生成部、144…補正速度振幅算出部、145…変位振幅算出部、146…計測データ出力部、147…回帰直線算出部、148…補正関数算出部、241…観測プログラム、242…加速度データ、321…計測データ取得部、322…監視部、351…監視プログラム、352…計測データ列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57