(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166843
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20241122BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20241122BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20241122BHJP
G01G 19/03 20060101ALI20241122BHJP
G01G 19/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01P21/00
G01B21/00 C
G01P15/18
G01G19/03
G01G19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083223
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥宏
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA06
2F069AA72
2F069BB40
2F069DD12
2F069GG01
2F069HH30
2F069JJ02
2F069JJ19
2F069QQ03
(57)【要約】
【課題】鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーの状態を容易に判定することが可能な計測方法を提供すること。
【解決手段】鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、を含む、計測方法。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
を含む、計測方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの姿勢が正常であるか異常であるかを判定する工程を含む、計測方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの前記重力加速度方向に対する感度誤差を算出する工程と、
前記感度誤差に基づいて、前記加速度センサーの姿勢が正常であるか異常であるかを判定する工程と、
を含む、計測方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記第1方向の加速度の極性を判定する工程を含む、計測方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1方向の加速度に前記極性に応じた値を乗算した加速度を算出する極性値乗算工程を含む、計測方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記角度特定工程は、
所定期間における前記第1方向の加速度の平均値を算出する工程と、
重力加速度の値と前記第1方向の加速度の平均値とに基づいて、前記角度を特定する工程と、
を含む、計測方法。
【請求項7】
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出部と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定部と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定部と、
を含む、計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の計測装置と、
前記加速度センサーと、
を備えた、計測システム。
【請求項9】
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
をコンピューターに実行させる、計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基地局が取り付けられた建柱が傾くといった異常状態が生じた場合、互いに直交する2軸のうちの少なくとも1軸が水平方向に対して所定の傾斜角度をなすように固定部材に固定された2軸の加速度センサーを用いて異常状態を検出し、異常状態の発生を管理センターに自動的に通知する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、固定部材を用いて、検出軸が水平方向に対して所定の角度で傾くように加速度センサーを設置する必要があるため高コストであり、加速度センサーの状態を容易に判定することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る計測方法の一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
を含む。
【0006】
本発明に係る計測装置の一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出部と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定部と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定部と、
を含む。
【0007】
本発明に係る計測システムの一態様は、
前記計測装置の一態様と、
前記加速度センサーと、
を備える。
【0008】
本発明に係る計測プログラムの一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
をコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の上部構造をA-A線で切断した断面図。
【
図4】重力加速度方向と第1方向とのなす角度θの説明図。
【
図5】角度θと加速度α
dのバイアスとの関係を示す図。
【
図10】第1実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図11】角度特定工程の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図12】第1実施形態における状態判定工程の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図13】センサー、計測装置及び監視装置の構成例を示す図。
【
図14】感度誤差S
eの経時的な変化の一例を示す図。
【
図15】第2実施形態における状態判定工程の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図16】第3実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図17】第3実施形態における状態判定工程の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図18】第3実施形態における計測装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.計測システムの構成
橋梁を通過する鉄道車両は、重量が大きく、BWIMで計測可能である。BWIMは、Bridge Weigh in Motionの略であり、橋梁を「はかり」に見立て、橋梁の変形を計測することにより、橋梁を通過する鉄道車両の重量、軸数などを測定する技術である。変形やひずみなどの応答から通過する鉄道車両の重量を解析可能な橋梁は、BWIMが機能する構造であり、橋梁への作用と応答の間の物理的なプロセスを応用するBWIMシステムが通行する鉄道車両の重量の計測を可能にする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る計測システムの一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る計測システム10は、計測装置1と、橋梁5に設けられる少なくとも1つのセンサー2と、を備えている。また、計測システム10は、監視装置3を備えていてもよい。
【0013】
橋梁5は上部構造7と下部構造8からなる。
図2は、上部構造7を
図1のA-A線で切断した断面図である。
図1及び
図2に示すように、上部構造7は、床板F、主桁G、不図示の横桁等からなる橋床7aと、支承7bと、レール7cと、枕木7dと、バラスト7eと、を含む。また、
図1に示すように、下部構造8は、橋脚8aと、橋台8bと、を含む。上部構造7は、隣り合う橋台8bと橋脚8a、隣り合う2つの橋台8b、又は、隣り合う2つの橋脚8aのいずれか1つに渡された構造である。上部構造7の両端部は、隣り合う橋台8bと橋脚8aの位置、隣り合う2つの橋台8bの位置、又は、隣り合う2つの橋脚8aの位置にある。
【0014】
鉄道車両6が橋梁5の上部構造7に進入すると、鉄道車両6の荷重によって上部構造7が撓むが、鉄道車両6は複数の車両が連結されているので、各車両の通過に伴って上部構造7の撓みが周期的に繰り返される。
【0015】
計測装置1と各センサー2とは、例えば、不図示のケーブルで接続され、CAN等の通信ネットワークを介して通信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。あるいは、計測装置1と各センサー2とは、無線ネットワークを介して通信を行ってもよい。
【0016】
本実施形態では、各センサー2は、加速度センサーであり、鉄道車両6が橋梁5を走行したときの加速度データを出力する。各センサー2は、例えば、水晶加速度センサーであってもよいし、MEMS加速度センサーであってもよい。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0017】
本実施形態では、各センサー2は橋梁5の上部構造7の長手方向の中央部、具体的には、主桁Gの長手方向の中央部に設置されている。ただし、各センサー2は、鉄道車両6の走行によって発生する加速度を検出することができればよく、その設置位置は上部構造7の中央部に限定されない。なお、各センサー2を上部構造7の床板Fに設けると、鉄道車両6の走行によって破壊するおそれがあり、また橋床7aの局部的な変形により測定精度が影響を受けるおそれがあるため、
図1及び
図2の例では、各センサー2は上部構造7の主桁Gに設けられている。
【0018】
上部構造7の床板Fや主桁G等は、橋梁5を通過する鉄道車両6による荷重によって、垂直方向に撓む。各センサー2は、橋梁5を通過する鉄道車両6の荷重による床板Fや主桁Gの撓みの加速度を検出する。
【0019】
計測装置1は、各センサー2から出力される加速度データに基づいて、各センサー2の状態を判定する。計測装置1は、あらかじめ決められた時間間隔で各センサー2の状態を判定してもよい。また、計測装置1は、各センサー2から出力される加速度データに基づいて、鉄道車両6が橋梁5を通過したときの橋梁5の変位を算出する。計測装置1は、例えば、橋台8bに設置される。
【0020】
計測装置1と監視装置3とは、例えば、携帯電話の無線ネットワーク及びインターネット等の通信ネットワーク4を介して、通信を行うことができる。計測装置1は、センサー2の状態の判定結果及び鉄道車両6が橋梁5を通過したときの橋梁5の変位を含む計測データを監視装置3に送信する。監視装置3は、当該計測データを不図示の記憶装置に記憶し、例えば、計測データに含まれるセンサー2の状態の判定結果に基づいて、センサー2が正常な状態であるか異常な状態であるかを表示させてもよい。また、計測装置1は、例えば、計測データに含まれる橋梁5の変位に基づいて、鉄道車両6の監視や上部構造7の異常判定等の処理を行ってもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、橋梁5は、鉄道橋であり、例えば、鋼橋や桁橋、RC橋等である。RCは、Reinforced-Concreteの略である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、センサー2に対応付けて観測点Rが設定されている。
図2の例では、観測点Rは、主桁Gに設けられたセンサー2の鉛直上方向にある上部構造7の表面の位置に設定されている。すなわち、センサー2は、観測点Rを観測する加速度センサーであり、橋梁5を走行する鉄道車両6の複数の部位の観測点Rへの作用に対する応答である加速度を検出し、検出した加速度を含む加速度データを出力する。例えば、鉄道車両6の複数の部位のそれぞれは車軸又は車輪であるが、以降では車軸であるものとする。センサー2は、鉄道車両6の走行により観測点Rに生じる加速度を検出可能な位置に設けられていればよいが、観測点Rの鉛直上に近い位置に設けられることが望ましい。
【0023】
なお、センサー2の数及び設置位置は、
図1及び
図2に示した例には限定されず種々の変形実施が可能である。
【0024】
計測装置1は、センサー2から出力される加速度データに基づいて、鉄道車両6が走行する橋梁5の上部構造7の面と交差する方向の加速度を取得する。鉄道車両6が走行する上部構造7の面は、鉄道車両6が走行する方向、すなわち上部構造7の長手方向であるX方向と、鉄道車両6が走行する方向と直交する方向、すなわち上部構造7の幅方向であるY方向とによって規定される。鉄道車両6の走行によって、観測点Rは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、計測装置1は、撓みの加速度の大きさを正確に算出するために、X方向及びY方向と直交する方向、すなわち、床板Fの法線方向であるZ方向の加速度を取得するのが望ましい。
【0025】
図3は、センサー2が検出する加速度を説明する図である。センサー2は、互いに直交する3軸の各軸方向に生じる加速度を検出する加速度センサーである。
【0026】
鉄道車両6の走行による観測点Rの撓みの加速度を検出するために、センサー2は、3つの検出軸であるx軸、y軸、z軸のうち、1軸がX方向及びY方向と交差する方向となるように設置される。観測点Rは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、撓みの加速度を正確に検出するために、理想的には、センサー2は、1軸をX方向及びY方向と直交するZ方向、すなわち、床板Fの法線方向に合わせて設置される。
【0027】
ただし、センサー2を上部構造7に設置する場合、設置場所が傾いている場合もある。計測装置1は、センサー2の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、概ね法線方向に向いていることで誤差は小さく無視できる。また、計測装置1は、センサー2の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、x軸、y軸、z軸の加速度を合成した3軸合成加速度によって、センサー2の傾斜による検出誤差の補正を行うことができる。また、センサー2は、少なくとも鉛直方向にほぼ平行な方向に生ずる加速度、あるいは、床板Fの法線方向の加速度を検出する1軸加速度センサーであってもよい。
【0028】
以下、計測装置1が実行する本実施形態の計測方法の詳細について説明する。
【0029】
1-2.センサーの状態判定
鉄道車両6が橋梁5を走行するとき、観測点Rには重力加速度方向に加速度αが発生する。
図4に示すように、センサー2がこの加速度αをz軸方向の加速度α
dとして検出するものとすると、z軸方向の加速度α
dは、式(1)によって算出される。式(1)において、θは重力加速度方向とz軸との間の角度であり、gは重力加速度である。
【0030】
【0031】
式(1)より、α=0のとき、αd=cosθ×gであり、z軸方向の加速度αdにはcosθ×gのバイアスが含まれている。このバイアスは角度θによって変化する。
【0032】
図5に、角度θと加速度α
dのバイアスとの関係を示す。
図5に示すように、θ=0°のときバイアスはgであり、θ=±180°のときバイアスは-gである。また、θ=±18°のときバイアスは約0.95gであり、θ=±60°のときバイアスは0.5gである。
【0033】
図6に、θ=0°のときの加速度α
dの波形の一例を示す。また、
図7に、θ=±180°のときの加速度α
dの一例を示す。また、
図8に、θ=±60°のときの加速度α
dの一例を示す。
図6、
図7及び
図8は、鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度α
dの波形であり、加速度α
dの波形に含まれる振動は環境振動である。
【0034】
加速度αdの平均値は式(2)によって算出される。式(2)において、kはサンプル番号である。
【0035】
【0036】
比較的長時間の観測点Rにおける加速度αdの平均値は、環境振動成分が除かれているので、直流成分であるバイアスオフセット成分αBの平均値との間に、式(3)の関係が成り立つ。
【0037】
【0038】
センサー2のz軸の方向が重力加速度方向と一致するように橋梁5に設置された場合、バイアスオフセット成分αBは重力加速度gとほぼ一致すると考えると、式(3)より、式(4)が得られる。
【0039】
【0040】
センサー2の姿勢が変化しなければ、θ=0°であり、cosθ=1であるから、加速度αdの平均値を重力加速度gで割った値はほぼ1になる。逆に言えば、加速度αdの平均値を重力加速度gで割った値がほぼ1であれば、cosθ≒1であり、θ≒0°であると特定される。したがって、計測装置1は、センサー2の姿勢が変化していないと判定することができる。
【0041】
一方、加速度αdの平均値を重力加速度gで割った値がほぼ1にならなければ、何等かの理由でセンサー2の姿勢が変化したと推察される。この場合も、加速度αdの平均値を重力加速度gで割ることによりcosθが算出され、角度θが特定される。
【0042】
なお、センサー2のz軸の方向が重力加速度方向と逆向きになるように橋梁5に設置された場合は、cosθは負の値となる。そして、センサー2が脱落した場合等、センサー2の姿勢に異常が生じた場合には、cosθの絶対値が1よりも小さくなる。したがって、計測装置1は、式(5)のように、式(4)によって算出されるcosθの絶対値を所定の閾値caと比較することで、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定することができる。例えば、計測装置1は、閾値caを0.5として、|cosθ|>0.5のときはセンサー2の姿勢が正常であると判定し、|cosθ|≦0.5のときはセンサー2の姿勢が異常であると判定してもよい。
【0043】
【0044】
図9に、式(4)によって算出されるcosθの経時的な変化の一例を示す。
図9の例では、1回目の判定から17回目の判定まではcosθがほぼ1であるが、18回目以降の判定ではcosθが閾値c
aである0.5以下になっており、17回目の判定と18回目の判定との間でセンサー2の姿勢が正常状態から異常状態に変化したと推定される。
【0045】
なお、前述の通り、センサー2が複数の検出軸を有する場合は、いずれの検出軸も重力加速度方向に平行でない場合でも、一般に、センサー2の座標系は、センサー2が検出した各検出軸方向の加速度を合成して水平面に平行な2軸とこれらに直交する重力加速度方向に平行な1軸の座標系に変換される。そのため、センサー2が、1つの検出軸が重力加速度方向に平行になるように設置されることと同等になる。したがって、計測装置1は、重力加速度方向と当該検出軸との間の角度をθとして、センサー2の姿勢を判定すればよい。
【0046】
1-3.計測方法の手順
図10は、第1実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図である。本実施形態では、計測装置1が
図10に示す手順を実行する。
【0047】
図10に示すように、まず、加速度データ取得工程S10において、計測装置1は、橋梁5の観測点Rを観測し、橋梁5を走行する鉄道車両6の複数の部位の観測点Rへの作用に対する応答である加速度を検出する加速度センサーであるセンサー2から出力される加速度データを取得する。
【0048】
次に、第1方向加速度算出工程S20において、計測装置1は、工程S10で取得した加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度αdを算出する。第1方向は、重力加速度方向に平行であると想定される方向であることが好ましい。例えば、センサー2が、z軸が重力加速度方向に平行になるように設置される場合、第1方向は、センサー2のz軸の方向であってもよい。この場合、計測装置1は、加速度データに含まれるz軸方向の加速度を第1方向の加速度αdとしてもよいし、z軸方向の加速度をフィルター処理して第1方向の加速度αdを算出してもよい。また、例えば、センサー2が、x軸、y軸及びz軸のいずれも重力加速度方向に平行でないように設置される場合、第1方向は、x軸、y軸及びz軸の方向から算出される重力加速度方向に平行な方向であると想定される方向であってもよい。この場合、計測装置1は、加速度データに含まれるx軸方向の加速度、y軸方向の加速度及びz軸方向の加速度を合成して第1方向の加速度αdとしてもよいし、合成した加速度をフィルター処理して第1方向の加速度αdを算出してもよい。
【0049】
次に、角度特定工程S30において、計測装置1は、工程S20で算出した第1方向の加速度αdに基づいて、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを特定する。具体的には、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を走行していないときに工程S10で取得した加速度データに基づいて工程S20で算出した第1方向の加速度αdに基づいて、角度θを特定する。計測装置1は、前出の式(4)によってcosθを算出することにより角度θを特定してもよいし、実際に角度θを算出して特定してもよい。角度特定工程S30の手順の一例については後述する。
【0050】
次に、状態判定工程S40において、計測装置1は、工程S30で特定した角度θに基づいて、センサー2の状態を判定する。例えば、計測装置1は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値caと比較してセンサー2の状態を判定してもよい。状態判定工程S40の手順の一例については後述する。
【0051】
次に、変位算出工程S50において、計測装置1は、工程S20で算出した第1方向の加速度αdに基づいて、鉄道車両6が走行したときの橋梁5の変位を算出する。具体的には、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を走行しているときに工程S10で取得した加速度データに基づいて工程S20で算出した第1方向の加速度αdに基づいて、橋梁5の変位を算出する。例えば、計測装置1は、加速度αdに対して2回積分と積分誤差を低減させるためのフィルター処理とを行って橋梁5の変位を算出してもよいし、その他の公知の手法によって橋梁5の変位を算出してもよい。
【0052】
次に、計測データ出力工程S60において、計測装置1は、工程S40の判定結果や工程S50で算出した変位を含む計測データを監視装置3に出力する。具体的には、計測装置1は、計測データを、通信ネットワーク4を介して監視装置3に送信する。計測データは、さらに、加速度αd、cosθ、角度θ等を含んでもよい。
【0053】
そして、工程S70において計測を終了するまで、計測装置1は、工程S10~S60の処理を繰り返し行う。
【0054】
図11は、
図10の角度特定工程S30の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0055】
図11に示すように、工程S301において、計測装置1は、角度θの特定タイミングであるか否かを判断する。角度θの特定タイミングは、工程S10で取得した加速度データが鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであることが保証されているタイミングである。例えば、角度θの特定タイミングは、深夜などの鉄道車両6が橋梁5を走行していないタイミングであってもよいし、計測装置1が、工程S10で取得した加速度データを解析して鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであると判断したタイミングであってもよい。角度θの特定タイミングは、あらかじめ決められた時間間隔で発生してもよい。
【0056】
次に、工程S301において角度θの特定タイミングである場合、工程S302において、計測装置1は、所定期間における第1方向の加速度αdの平均値を算出する。
【0057】
そして、工程S303において、計測装置1は、重力加速度gの値と工程S302で算出した第1方向の加速度αdの平均値とに基づいて、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを特定する。例えば、計測装置1は、前出の式(4)によってcosθを算出することにより角度θを特定してもよいし、実際に角度θを算出して特定してもよい。
【0058】
工程S301において角度θの特定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S302,S303の処理を行わない。
【0059】
図12は、
図10の状態判定工程S40の手順の一例を示すフローチャート図である。
【0060】
図12に示すように、工程S401において、計測装置1は、センサー2の状態判定タイミングであるか否かを判断する。センサー2の状態判定タイミングは、工程S10で取得した加速度データが、鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであることが保証されているタイミングである。例えば、センサー2の状態判定タイミングは、深夜などの鉄道車両6が橋梁5を走行していないタイミングであってもよいし、計測装置1が、工程S10で取得した加速度データを解析して鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであると判断したタイミングであってもよい。センサー2の状態判定タイミングは、あらかじめ決められた時間間隔で発生してもよい。また、センサー2の状態判定タイミングは、角度θの特定タイミングと同じであってもよい。
【0061】
次に、工程S401においてセンサー2の状態判定タイミングである場合、工程S402において、計測装置1は、工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、計測装置1は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値caと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。
【0062】
工程S401においてセンサー2の状態判定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S402の処理を行わない。
【0063】
1-4.センサー、計測装置及び監視装置の構成
図13は、センサー2、計測装置1及び監視装置3の構成例を示す図である。
【0064】
図13に示すように、センサー2は、通信部21と、加速度センサー22と、プロセッサー23と、記憶部24と、を備えている。
【0065】
記憶部24は、プロセッサー23が計算処理や制御処理を行うための各種のプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部24は、プロセッサー23が所定のアプリケーション機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0066】
加速度センサー22は、3軸の各軸方向に生じる加速度を検出する。
【0067】
プロセッサー23は、記憶部24に記憶された観測プログラム241を実行することにより、加速度センサー22を制御し、加速度センサー22が検出した加速度に基づいて加速度データ242を生成し、生成した加速度データ242を記憶部24に記憶させる。
【0068】
通信部21は、プロセッサー23の制御により、記憶部24に記憶されている加速度データ242を計測装置1に送信する。
【0069】
図13に示すように、計測装置1は、第1通信部11と、第2通信部12と、記憶部13と、プロセッサー14と、を備えている。
【0070】
第1通信部11は、センサー2から加速度データ242を受信し、受信した加速度データ242をプロセッサー14に出力する。
【0071】
記憶部13は、プロセッサー14が計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部13は、プロセッサー14が所定のアプリケーション機能を実現するための各種のプログラムやデータ等を記憶している。また、プロセッサー14が通信ネットワーク4を介して各種のプログラムやデータ等を受信して記憶部13に記憶させてもよい。
【0072】
プロセッサー14は、第1通信部11が受信した加速度データ242に基づいて計測データ133を生成し、生成した計測データ133を記憶部13に記憶させる。
【0073】
本実施形態では、プロセッサー14は、記憶部13に記憶された計測プログラム131を実行することにより、加速度データ取得部141、第1方向加速度算出部142、角度特定部143、状態判定部144、変位算出部145及び計測データ出力部146として機能する。すなわち、プロセッサー14は、加速度データ取得部141、第1方向加速度算出部142、角度特定部143、状態判定部144、変位算出部145及び計測データ出力部146を含む。
【0074】
加速度データ取得部141は、第1通信部11が受信した加速度データ242を取得し、加速度データ132として記憶部13に記憶させる。すなわち、加速度データ取得部141は、
図10における加速度データ取得工程S10の処理を行う。
【0075】
第1方向加速度算出部142は、加速度データ取得部141が取得した加速度データ132に基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度α
dを算出する。第1方向加速度算出部142は、加速度データ132に含まれるz軸方向の加速度を第1方向の加速度α
dとしてもよいし、z軸方向の加速度をフィルター処理して第1方向の加速度α
dを算出してもよい。また、第1方向加速度算出部142は、加速度データ132に含まれるx軸方向の加速度、y軸方向の加速度及びz軸方向の加速度を合成して第1方向の加速度α
dとしてもよいし、合成した加速度をフィルター処理して第1方向の加速度α
dを算出してもよい。すなわち、第1方向加速度算出部142は、
図10における第1方向加速度算出工程S20の処理を行う。
【0076】
角度特定部143は、第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度α
dに基づいて、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを特定する。具体的には、角度特定部143は、鉄道車両6が橋梁5を走行していないときに加速度データ取得部141が取得した加速度データ132に基づいて第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度α
dに基づいて、角度θを特定する。角度特定部143は、前出の式(4)によってcosθを算出することにより角度θを特定してもよいし、実際に角度θを算出して特定してもよい。例えば、角度特定部143は、角度θの特定タイミングであるか否かを判断し、角度θの特定タイミングである場合は、所定期間における第1方向の加速度α
dの平均値を算出し、重力加速度gの値と第1方向の加速度α
dの平均値とに基づいて、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを特定してもよい。すなわち、角度特定部143は、
図10における角度特定工程S30の処理、具体的には
図11の工程S301,S302,S303の処理を行う。
【0077】
状態判定部144は、角度特定部143が特定した角度θに基づいて、センサー2の状態を判定する。例えば、状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の状態を判定してもよい。具体的には、状態判定部144は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部144は、センサー2の状態判定タイミングであるか否かを判断し、センサー2の状態判定タイミングである場合は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。すなわち、状態判定部144は、
図10における状態判定工程S40の処理、具体的には
図12の工程S401,S402の処理を行う。
【0078】
変位算出部145は、第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度αdに基づいて、鉄道車両6が走行したときの橋梁5の変位を算出する。具体的には、変位算出部145は、鉄道車両6が橋梁5を走行しているときに加速度データ取得部141が取得した加速度データ132に基づいて第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度αdに基づいて、橋梁5の変位を算出する。例えば、変位算出部145は、加速度αdに対して2回積分と積分誤差を低減させるためのフィルター処理とを行って橋梁5の変位を算出してもよいし、その他の公知の手法によって橋梁5の変位を算出してもよい。
【0079】
状態判定部144の判定結果及び変位算出部145が算出した橋梁5の変位は、計測データ133の少なくとも一部として記憶部13に記憶される。計測データ133は、さらに、加速度αd、cosθ、角度θ等を含んでもよい。
【0080】
計測データ出力部146は、記憶部13に記憶されている計測データ133を読み出し、計測データ133を監視装置3に出力する。具体的には、計測データ出力部146の制御により、第2通信部12が、記憶部13に記憶されている計測データ133を、通信ネットワーク4を介して、監視装置3に送信する。すなわち、計測データ出力部146は、
図10における計測データ出力工程S60の処理を行う。
【0081】
このように、計測プログラム131は、
図10に示したフローチャートの各手順を、コンピューターである計測装置1に実行させるプログラムである。
【0082】
図13に示すように、監視装置3は、通信部31と、プロセッサー32と、表示部33と、操作部34と、記憶部35と、を備えている。
【0083】
通信部31は、計測装置1から計測データ133を受信し、受信した計測データ133をプロセッサー32に出力する。
【0084】
表示部33は、プロセッサー32の制御により、各種の情報を表示させる。表示部33は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであってもよい。ELは、Electro Luminescenceの略である。
【0085】
操作部34は、ユーザーによる操作に対応する操作データをプロセッサー32に出力する。操作部34は、例えば、マウス、キーボード、マイクロフォン等の入力装置であってもよい。
【0086】
記憶部35は、プロセッサー32が計算処理や制御処理を行うための各種のプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部35は、プロセッサー32が所定のアプリケーション機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0087】
プロセッサー32は、通信部31が受信した計測データ133を取得し、取得した計測データ133に基づいて、センサー2の状態を示す情報を表示部33に表示させる。また、プロセッサー32は、計測データ133に基づいて、橋梁5の変位の経時的な変化を評価して評価情報を生成し、生成した評価情報を表示部33に表示させる。
【0088】
本実施形態では、プロセッサー32は、記憶部35に記憶された監視プログラム351を実行することにより、計測データ取得部321及び監視部322として機能する。すなわち、プロセッサー32は、計測データ取得部321及び監視部322を含む。
【0089】
計測データ取得部321は、通信部31が受信した計測データ133を取得し、取得した計測データ133を記憶部35に記憶される計測データ列352に追加する。
【0090】
監視部322は、記憶部35に記憶される計測データ列352に基づいて、センサー2の状態を示す情報を表示部33に表示させる。ユーザーは、表示部33に表示される評価情報に基づいて、センサー2の状態を監視することができる。また、監視部322は、計測データ列352に基づいて、統計的に橋梁5の変位の経時的な変化を評価する。そして、監視部322は、評価結果を示す評価情報を生成し、生成した評価情報を表示部33に表示させる。ユーザーは、表示部33に表示される評価情報に基づいて、橋梁5の状態を監視することができる。
【0091】
監視部322は、記憶部35に記憶される計測データ列352に基づいて、鉄道車両6の監視や橋梁5の異常判定等の処理を行ってもよい。
【0092】
また、プロセッサー32は、操作部34から出力される操作データに基づいて、計測装置1やセンサー2の動作状況を調整するための情報を、通信部31を介して計測装置1に送信する。計測装置1は、第2通信部12を介して受信した情報によって動作状況が調整される。また、計測装置1は、第2通信部12を介して受信したセンサー2の動作状況を調整するための情報を、第1通信部11を介してセンサー2に送信する。センサー2は、通信部21を介して受信した情報によって動作状況が調整される。
【0093】
なお、プロセッサー14,23,32は、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサー14,23,32はハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。プロセッサー14,23,32は、CPU、GPU、或いはDSP等であってもよい。CPUはCentral Processing Unitの略であり、GPUはGraphics Processing Unitの略であり、DSPはDigital Signal Processorの略である。また、プロセッサー14,23,32は、ASICなどのカスタムICとして構成され、各部の機能を実現してもよいし、CPUとASICとによって各部の機能を実現してもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略であり、ICはIntegrated Circuitの略である。
【0094】
また、記憶部13,24,35は、例えば、ROMやフラッシュROM、RAM等の各種ICメモリーやハードディスク、メモリーカードなどの記録媒体等により構成される。ROMはRead Only Memoryの略であり、RAMはRandom Access Memoryの略であり、ICはIntegrated Circuitの略である。記憶部13,24,35は、コンピューターにより読み取り可能な装置や媒体である不揮発性の情報記憶装置を含み、各種のプログラムやデータ等は当該情報記憶装置に記憶されていてもよい。情報記憶装置は、光ディスクDVD、CD等の光ディスク、ハードディスクドライブ、或いはカード型メモリーやROM等の各種のメモリー等であってもよい。
【0095】
なお、
図13ではセンサー2は1つのみ図示されているが、複数のセンサー2がそれぞれ加速度データ242を生成し、計測装置1に送信してもよい。この場合、計測装置1は、複数のセンサー2から送信された複数の加速度データ242を受信して複数の計測データ133を生成し、監視装置3に送信する。また、監視装置3は、計測装置1から送信された複数の計測データ133を受信し、受信した複数の計測データ133に基づいて、橋梁5の状態を監視する。
【0096】
1-5.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、橋梁5に設けられたセンサー2から出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度αdを算出し、第1方向の加速度αdに基づいて、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを特定する。そして、計測装置1は、角度θがセンサー2の設置状態から想定される角度と整合していればセンサー2が正常な状態であると判定し、角度θがセンサー2の設置状態から想定される角度と整合していなければ、例えば、センサー2が脱落や故障などによって異常な状態であると判定することができる。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、鉄道車両6が走行する橋梁5に設けられたセンサー2の状態を容易に判定することができる。
【0097】
また、第1実施形態の計測方法では、センサー2の姿勢が変われば検出軸の方向も変わるので、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θが変化する。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、角度θに基づいて、センサー2の姿勢を容易に判定することができる。
【0098】
また、第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、所定期間における第1方向の加速度αdの平均値を算出することにより、第1方向の加速度αdに含まれる振動成分が低減される。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θを精度よく特定することができるので、センサー2の状態の判定精度が向上する。
【0099】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0100】
第2実施形態では、状態判定工程S40の処理が第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、状態判定工程S40において、計測装置1は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差Seを算出し、感度誤差Seに基づいてセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。
【0101】
例えば、センサー2のz軸の方向を第1方向とすると、重力加速度方向とセンサー2のz軸の方向とのなす角度が角度θに相当する。この場合、センサー2のz軸の方向が重力加速度方向とほぼ一致するように橋梁5に設置されていれば、cosθは1に近い値となる。したがって、感度誤差Seは、式(6)によって算出される。
【0102】
【0103】
センサー2の姿勢が正常であれば感度誤差Seは0%に近い値となる。一方、センサー2が脱落した場合等、センサー2の姿勢に異常が生じた場合には、cosθが小さくなり、感度誤差Seの絶対値が大きくなる。したがって、計測装置1は、式(7)のように、式(6)によって算出される感度誤差Seを所定の閾値csと比較することで、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定することができる。例えば、計測装置1は、閾値csを-2%として、Se>-2%のときはセンサー2の姿勢が正常であると判定し、Se≦-2%のときはセンサー2の姿勢が異常であると判定してもよい。
【0104】
【0105】
図14に、式(6)によって算出される感度誤差S
eの経時的な変化の一例を示す。
図14の例では、1回目の判定から16回目の判定まで感度誤差S
eがほぼ0%であり、閾値c
sである-2%よりも大きいので、センサー2の姿勢が正常状態であると判定される。
【0106】
なお、前述の通り、センサー2が複数の検出軸を有する場合は、いずれの検出軸も重力加速度方向に平行でない場合でも、一般に、センサー2の座標系は、センサー2が検出した各検出軸方向の加速度を合成して水平面に平行な2軸とこれらに直交する重力加速度方向に平行な1軸の座標系に変換される。そのため、センサー2が、1つの検出軸が重力加速度方向に平行になるように設置されることと同等になる。したがって、計測装置1は、重力加速度方向と当該検出軸との間の角度をθとして感度誤差Seを算出し、センサー2の姿勢を判定すればよい。
【0107】
第2実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図は、
図10と同様であるため、その図示を省略する。第2実施形態の計測方法における加速度データ取得工程S10、第1方向加速度算出工程S20、角度特定工程S30、変位算出工程S50及び計測データ出力工程S60の処理は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0108】
第2実施形態の計測方法では、第1実施形態と同様、状態判定工程S40において、計測装置1は、工程S30で特定した角度θに基づいて、センサー2の状態を判定するが、その手順が第1実施形態と異なる。
【0109】
図15は、第2実施形態における状態判定工程S40の手順の一例を示すフローチャート図である。なお、
図15において、
図12と同様の工程には同じ符号が付されている。
【0110】
図15に示すように、まず、工程S401において、計測装置1は、センサー2の状態を判定する第1状態判定タイミングであるか否かを判断する。工程S401において第1状態判定タイミングである場合、次に、工程S402において、計測装置1は、
図10の工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、計測装置1は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。工程S401において第1状態判定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S402の処理を行わない。
【0111】
次に、工程S403において、計測装置1は、センサー2の状態を判定する第2状態判定タイミングであるか否かを判断する。第1状態判定タイミング及び第2状態判定タイミングは、それぞれ、
図10の工程S10で取得した加速度データが鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであることが保証されているタイミングである。例えば、第1状態判定タイミング及び第2状態判定タイミングは、それぞれ、深夜などの鉄道車両6が橋梁5を走行していないタイミングであってもよいし、計測装置1が、工程S10で取得した加速度データを解析して鉄道車両6が橋梁5を走行していないときの加速度データであると判断したタイミングであってもよい。第1状態判定タイミング及び第2状態判定タイミングは、それぞれ、あらかじめ決められた時間間隔で発生してもよい。また、第1状態判定と第2状態判定タイミングとは同じタイミングであってもよい。例えば、第1状態判定タイミング及び第2状態判定タイミングは、角度θの特定タイミングと同じであってもよい。
【0112】
工程S403において第2状態判定タイミングである場合、工程S404において、計測装置1は、
図10の工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、前出の式(6)により、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差S
eを算出する。
【0113】
次に、工程S405において、計測装置1は、工程S404で算出した感度誤差Seに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、計測装置1は、工程S404で算出した感度誤差Seを所定の閾値csと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。
【0114】
工程S403において第2状態判定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S404,S405の処理を行わない。
【0115】
なお、計測装置1は、工程S401,S402の処理を行わなくてもよい。
【0116】
また、第2実施形態におけるセンサー2、計測装置1及び監視装置3の構成は、
図13と同様であるため、その図示を省略する。第2実施形態の計測装置1では、第1実施形態と同様、状態判定部144は、角度特定部143が特定した角度θに基づいて、センサー2の状態を判定するが、その手順が第1実施形態と異なる。
【0117】
状態判定部144は、角度特定部143が特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、前出の式(6)により、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差S
eを算出する。そして、状態判定部144は、算出した感度誤差S
eに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。状態判定部144は、算出した感度誤差S
eを所定の閾値c
sと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部144は、第2状態判定タイミングであるか否かを判断し、第2状態判定タイミングである場合は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。すなわち、状態判定部144は、
図10における状態判定工程S40の処理、具体的には
図15の工程S403~S405の処理を行う。
【0118】
さらに、状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の状態を判定してもよい。具体的には、第1実施形態と同様、状態判定部144は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部144は、第1状態判定タイミングであるか否かを判断し、第1状態判定タイミングである場合は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。すなわち、状態判定部144は、
図15の工程S401,S402の処理を行ってもよい。
【0119】
状態判定部144の各判定結果及び変位算出部145が算出した橋梁5の変位は、計測データ133の少なくとも一部として記憶部13に記憶される。計測データ133は、さらに、感度誤差Se、加速度αd、cosθ、角度θ等を含んでもよい。
【0120】
第2実施形態における計測装置1のその他の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、第2実施形態におけるセンサー2及び監視装置3の機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0121】
以上に説明した第2実施形態の計測方法では、計測装置1は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差Seを算出し、感度誤差Seに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。そして、センサー2の姿勢が変われば検出軸の方向も変わるので、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差Seが変化する。したがって、第2実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、感度誤差Seに基づいて、加速度センサーの姿勢を容易に判定することができる。
【0122】
その他、第2実施形態の計測方法によれば、第1実施形態の計測方法と同様の効果を奏することができる。
【0123】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態について、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0124】
第3実施形態では、状態判定工程S40の処理が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。具体的には、第3実施形態では、状態判定工程S40において、計測装置1は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2が検出する第1方向の加速度αdの極性を判定する。
【0125】
角度θが180°よりも小さい場合は、cosθが正の値となるので、前出の式(1)より、重力加速度gと重力加速度方向に発生する加速度αとの和g+αが正の値のときは加速度αdも正の値となり、g+αが負の値のときはαdも負の値となる。一方、角度θが180°よりも大きい場合は、cosθが負の値となるので、前出の式(1)より、g+αが正の値のときはαdが負の値となり、g+αが負の値のときはαdが正の値となる。したがって、計測装置1は、cosθ>0の場合は加速度αdの極性が正であると判定し、cosθ<0の場合は加速度αdの極性が負であると判定する。
【0126】
例えば、センサー2の検出軸が想定とは逆向きに設置されることが起こり得るとすると、計測装置1は、センサー2が設置後に最初に稼働する時に加速度αdの極性判定を行い、判定結果を記憶部13に記憶させる。そして、計測装置1は、加速度αdに判定結果の極性に応じた値を乗算した加速度αd’を算出し、加速度αd’を用いて橋梁5の変位を算出する。例えば、加速度αdの極性に応じた値は、加速度αdの極性が正であれば1であり、加速度αdの極性が負であれば-1である。
【0127】
図16は、第3実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図である。
図16において、
図10の各工程と同様の処理を行う工程には同じ符号が付されている。本実施形態では、計測装置1が
図16に示す手順を実行する。
【0128】
図16に示すように、まず、第1実施形態と同様、計測装置1は、工程S10,S20,S30の各処理を行う。
【0129】
次に、状態判定工程S40において、計測装置1は、工程S30で特定した角度θに基づいて、センサー2の状態を判定する。具体的には、計測装置1は、角度θに基づいて、工程S20で算出した第1方向の加速度αdの極性を判定する。状態判定工程S40の手順の一例については後述する。
【0130】
次に、極性値乗算工程S42において、計測装置1は、工程S20で算出した第1方向の加速度αdに、工程S40で判定した、第1方向の加速度αdの極性に応じた値を乗算した加速度αd’を算出する。例えば、計測装置1は、加速度αdの極性が正であれば加速度αdに1を乗算して加速度αd’を算出し、加速度αdの極性が負であれば加速度αdに-1を乗算して加速度αd’を算出してもよい。
【0131】
次に、変位算出工程S50において、計測装置1は、工程S42で算出した加速度αd’に基づいて、鉄道車両6が走行したときの橋梁5の変位を算出する。具体的には、計測装置1は、鉄道車両6が橋梁5を走行しているときに工程S10で取得した加速度データに基づいて工程S42で算出した加速度αd’に基づいて、橋梁5の変位を算出する。例えば、計測装置1は、加速度αd’に対して2回積分と積分誤差を低減させるためのフィルター処理とを行って橋梁5の変位を算出してもよいし、その他の公知の手法によって橋梁5の変位を算出してもよい。
【0132】
次に、計測データ出力工程S60において、計測装置1は、工程S40の判定結果や工程S50で算出した変位を含む計測データを監視装置3に出力する。具体的には、計測装置1は、計測データを、通信ネットワーク4を介して監視装置3に送信する。計測データは、さらに、加速度αd,αd’、cosθ、角度θ等を含んでもよい。
【0133】
そして、工程S70において計測を終了するまで、計測装置1は、工程S10~S60の処理を繰り返し行う。
【0134】
図17は、第3実施形態における状態判定工程S40の手順の一例を示すフローチャート図である。なお、
図17において、
図15と同様の工程には同じ符号が付されている。
【0135】
図17に示すように、まず、工程S401において、計測装置1は、センサー2の状態を判定する第1状態判定タイミングであるか否かを判断する。工程S401において第1状態判定タイミングである場合、次に、工程S402において、計測装置1は、
図16の工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、計測装置1は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。工程S401において第1状態判定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S402の処理を行わない。
【0136】
次に、工程S403において、計測装置1は、センサー2の状態を判定する第2状態判定タイミングであるか否かを判断する。工程S403において第2状態判定タイミングである場合、工程S404において、計測装置1は、
図16の工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、前出の式(6)により、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差S
eを算出する。次に、工程S405において、計測装置1は、工程S404で算出した感度誤差S
eに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定する。
【0137】
次に、工程S406において、計測装置1は、センサー2の状態を判定する第3状態判定タイミングであるか否かを判断する。第3状態判定タイミングは、センサー2が設置後に最初に稼働するタイミングであってもよい。
【0138】
工程S406において第3状態判定タイミングである場合、工程S407において、計測装置1は、
図16の工程S30で特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2が検出する第1方向の加速度α
dの極性を判定する。具体的には、計測装置1は、cosθ>0の場合は加速度α
dの極性が正であると判定し、cosθ<0の場合は加速度α
dの極性が負であると判定し、判定結果を記憶部13に記憶させる。
【0139】
工程S406において第3状態判定タイミングでない場合は、計測装置1は、工程S407の処理を行わない。
【0140】
なお、計測装置1は、工程S401,S402の処理を行わなくてもよい。また、計測装置1は、工程S403,S404,S405の処理を行わなくてもよい。
【0141】
第3実施形態におけるセンサー2及び監視装置3の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
図18は、第3実施形態における計測装置1の構成例を示す図である。
【0142】
図18に示すように、第3実施形態における計測装置1は、第1実施形態又は第2実施形態と同様、第1通信部11と、第2通信部12と、記憶部13と、プロセッサー14と、を備えている。第1通信部11、第2通信部12及び記憶部13の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0143】
本実施形態では、プロセッサー14は、記憶部13に記憶された計測プログラム131を実行することにより、加速度データ取得部141、第1方向加速度算出部142、角度特定部143、状態判定部144、変位算出部145、計測データ出力部146及び極性値乗算部147として機能する。すなわち、プロセッサー14は、加速度データ取得部141、第1方向加速度算出部142、角度特定部143、状態判定部144、変位算出部145、計測データ出力部146及び極性値乗算部147を含む。加速度データ取得部141、第1方向加速度算出部142及び角度特定部143の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、加速度データ取得部141は、
図16の加速度データ取得工程S10の処理を行う。また、第1方向加速度算出部142は、
図16の第1方向加速度算出工程S20の処理を行う。また、角度特定部143は、
図16の角度特定工程S30の処理を行う。
【0144】
状態判定部144は、角度特定部143が特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度α
dの極性を判定する。具体的には、例えば、状態判定部144は、第3状態判定タイミングであるか否かを判断し、第3状態判定タイミングである場合は、cosθ>0であれば加速度α
dの極性が正であると判定し、cosθ<0であれば加速度α
dの極性が負であると判定し、判定結果を記憶部13に記憶させてもよい。すなわち、状態判定部144は、
図16における状態判定工程S40の処理、具体的には
図17の工程S406,S407の処理を行う。
【0145】
さらに、状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の状態を判定してもよい。具体的には、第1実施形態と同様、状態判定部144は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。状態判定部144は、前出の式(4)によって算出したcosθ又は角度θを所定の閾値c
aと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部144は、第1状態判定タイミングであるか否かを判断し、第1状態判定タイミングである場合は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。すなわち、状態判定部144は、
図17の工程S401,S402の処理を行ってもよい。
【0146】
また、状態判定部144は、角度特定部143が特定した、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、前出の式(6)により、センサー2の重力加速度方向に対する感度誤差S
eを算出してもよい。そして、状態判定部144は、算出した感度誤差S
eに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。状態判定部144は、算出した感度誤差S
eを所定の閾値c
sと比較してセンサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。例えば、状態判定部144は、第2状態判定タイミングであるか否かを判断し、第2状態判定タイミングである場合は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、センサー2の姿勢が正常であるか異常であるかを判定してもよい。すなわち、状態判定部144は、
図17の工程S403~S405の処理を行ってもよい。
【0147】
極性値乗算部147は、第1方向加速度算出部142が算出した第1方向の加速度α
dに、状態判定部144が判定した、第1方向の加速度α
dの極性に応じた値を乗算した加速度α
d’を算出する。例えば、極性値乗算部147は、加速度α
dの極性が正であれば加速度α
dに1を乗算して加速度α
d’を算出し、加速度α
dの極性が負であれば加速度α
dに-1を乗算して加速度α
d’を算出してもよい。すなわち、極性値乗算部147は、
図16における極性値乗算工程S42の処理を行う。
【0148】
変位算出部145は、極性値乗算部147が算出した加速度α
d’に基づいて、鉄道車両6が走行したときの橋梁5の変位を算出する。すなわち、変位算出部145は、
図16における変位算出工程S50の処理を行う。
【0149】
状態判定部144の各判定結果及び変位算出部145が算出した橋梁5の変位は、計測データ133の少なくとも一部として記憶部13に記憶される。計測データ133は、さらに、感度誤差Se、加速度αd、cosθ、角度θ等を含んでもよい。
【0150】
計測データ出力部146は、記憶部13に記憶されている計測データ133を読み出し、計測データ133を監視装置3に出力する。すなわち、計測データ出力部146は、
図16における計測データ出力工程S60の処理を行う。
【0151】
第3実施形態における計測装置1のその他の機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0152】
以上に説明した第3実施形態の計測方法では、計測装置1は、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θに基づいて、第1方向の加速度αdの極性を判定する。第1方向が意図した方向になるようにセンサー2が設置された場合と、第1方向が意図した方向とは逆向きになるようにセンサー2が設置された場合とで、重力加速度方向と第1方向とのなす角度θが180°異なるので、第1方向の加速度αdの極性が変わる。したがって、第3実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、角度θに基づいて、第1方向の加速度αdの極性を容易に判定することができる。
【0153】
また、第3実施形態の計測方法では、計測装置1は、第1方向の加速度αdに、判定した極性に応じた値を乗算した加速度αd’を算出する。第1方向が意図した方向とは逆向きになるようにセンサー2が設置された場合の加速度αd’は、第1方向が意図した方向になるようにセンサー2が設置された場合の加速度αd’と等価になる。したがって、第3実施形態の計測方法によれば、第1方向が意図した方向とは逆向きになるようにセンサー2が設置された場合でも、センサー2を設置しなおす必要がない。
【0154】
その他、第3実施形態の計測方法によれば、第1実施形態又は第2実施形態の計測方法と同様の効果を奏することができる。
【0155】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0156】
例えば、上記の各実施形態では、各センサー2は、それぞれ上部構造7の主桁Gに設けられているが、上部構造7の表面や内部、床板Fの下面、橋脚8a等に設けられていてもよい。
【0157】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0158】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0159】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0160】
計測方法の一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
を含む。
【0161】
この計測方法によれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて特定した、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していれば、加速度センサーが正常な状態であると判定することができる。また、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していなければ、例えば、加速度センサーが脱落や故障などによって異常な状態であると判定することができる。したがって、この計測方法によれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーの状態を容易に判定することができる。
【0162】
前記計測方法の一態様において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの姿勢が正常であるか異常であるかを判定する工程を含んでもよい。
【0163】
この計測方法では、加速度センサーの姿勢が変われば検出軸の方向も変わるので、重力加速度方向と第1方向とのなす角度が変化する。したがって、この計測方法によれば、重力加速度方向と第1方向とのなす角度に基づいて、加速度センサーの姿勢を容易に判定することができる。
【0164】
前記計測方法の一態様において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの前記重力加速度方向に対する感度誤差を算出する工程と、
前記感度誤差に基づいて、前記加速度センサーの姿勢が正常であるか異常であるかを判定する工程と、
を含んでもよい。
【0165】
この計測方法では、加速度センサーの姿勢が変われば検出軸の方向も変わるので、加速度センサーの重力加速度方向に対する感度誤差が変化する。したがって、この計測方法によれば、加速度センサーの前記重力加速度方向に対する感度誤差に基づいて、加速度センサーの姿勢を容易に判定することができる。
【0166】
前記計測方法の一態様において、
前記状態判定工程は、
前記角度に基づいて、前記第1方向の加速度の極性を判定する工程を含んでもよい。
【0167】
この計測方法では、第1方向が意図した方向になるように加速度センサーが設置された場合と、第1方向が意図した方向とは逆向きになるように加速度センサーが設置された場合とで、重力加速度方向と第1方向とのなす角度が180°異なるので、第1方向の加速度の極性が変わる。したがって、この計測方法によれば、重力加速度方向と第1方向とのなす角度に基づいて、第1方向の加速度の極性を容易に判定することができる。
【0168】
前記計測方法の一態様は、
前記第1方向の加速度に前記極性に応じた値を乗算した加速度を算出する極性値乗算工程を含んでもよい。
【0169】
この計測方法では、第1方向が意図した方向とは逆向きになるように加速度センサーが設置された場合でも、第1方向の加速度に極性に応じた値を乗算した加速度は、第1方向が意図した方向になるように加速度センサーが設置された場合の第1方向の加速度に前記極性に応じた値を乗算した加速度と等価になる。したがって、この計測方法によれば、第1方向が意図した方向とは逆向きになるように加速度センサーが設置された場合でも、加速度センサーを設置しなおす必要がない。
【0170】
前記計測方法の一態様において、
前記角度特定工程は、
所定期間における前記第1方向の加速度の平均値を算出する工程と、
重力加速度の値と前記第1方向の加速度の平均値とに基づいて、前記角度を特定する工程と、
を含んでもよい。
【0171】
この計測方法では、所定期間における第1方向の加速度の平均値を算出することにより、第1方向の加速度に含まれる振動成分が低減される。したがって、この計測方法によれば、重力加速度方向と第1方向とのなす角度を精度よく特定することができるので、加速度センサーの状態の判定精度が向上する。
【0172】
計測装置の一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出部と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定部と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定部と、
を含む。
【0173】
この計測装置によれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて特定した、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していれば、加速度センサーが正常な状態であると判定することができる。また、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していなければ、例えば、加速度センサーが脱落や故障などによって異常な状態であると判定することができる。したがって、この計測装置によれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーの状態を容易に判定することができる。
【0174】
計測システムの一態様は、
前記計測装置の一態様と、
前記加速度センサーと、
を備える。
【0175】
計測プログラムの一態様は、
鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて重力加速度方向と直交しない第1方向の加速度を算出する第1方向加速度算出工程と、
前記第1方向の加速度に基づいて、前記重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度を特定する角度特定工程と、
前記角度に基づいて、前記加速度センサーの状態を判定する状態判定工程と、
をコンピューターに実行させる。
【0176】
この計測プログラムによれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーから出力される加速度データに基づいて特定した、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していれば、加速度センサーが正常な状態であると判定することができる。また、重力加速度方向と前記第1方向とのなす角度が、加速度センサーの設置状態から想定される角度と整合していなければ、例えば、加速度センサーが脱落や故障などによって異常な状態であると判定することができる。したがって、この計測プログラムによれば、鉄道車両が走行する橋梁に設けられた加速度センサーの状態を容易に判定することができる。
【符号の説明】
【0177】
1…計測装置、2…センサー、3…監視装置、4…通信ネットワーク、5…橋梁、6…鉄道車両、7…上部構造、7a…橋床、7b…支承、7c…レール、7d…枕木、7e…バラスト、F…床板、G…主桁、8…下部構造、8a…橋脚、8b…橋台、10…計測システム、11…第1通信部、12…第2通信部、13…記憶部、14…プロセッサー、21…通信部、22…加速度センサー、23…プロセッサー、24…記憶部、31…通信部、32…プロセッサー、33…表示部、34…操作部、35…記憶部、131…計測プログラム、132…加速度データ、133…計測データ、141…加速度データ取得部、142…第1方向加速度算出部、143…角度特定部、144…状態判定部、145…変位算出部、146…計測データ出力部、147…極性値乗算部、241…観測プログラム、242…加速度データ、321…計測データ取得部、322…監視部、351…監視プログラム、352…計測データ列