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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166847
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】熱マネジメントシステム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20241122BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20241122BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241122BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241122BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241122BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20241122BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/03 Z
B60H1/22 651C
B60H1/00 102C
F25B1/00 399Y
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/26
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083229
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
(72)【発明者】
【氏名】藤原 章博
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA34
3L211CA19
3L211DA22
3L211DA28
3L211EA38
3L211EA41
3L211GA22
3L211GA93
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125EE41
5H125FF22
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率のよい熱マネジメントシステムを提供する。
【解決手段】熱マネジメントシステム1は、冷媒が循環する冷媒回路10と、車室内の空気を加熱するヒータコア21を含み冷媒回路10と熱交換し得る高温側熱媒体回路20と、車室内の空気を冷却するクーラコア31を含み冷媒回路10と熱交換し得る低温側熱媒体回路30と、バッテリ41を温調するバッテリ温調部を含み冷媒回路10と熱交換し得るバッテリ温調回路40と、モータ51を温調するモータ温調部を含むモータ温調回路50と、ラジエータ61を含む室外熱交換回路60と、流路切替装置70とを備え、流路切替装置70は、圧縮機11が停止した状態のままで暖房要求があったとき、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50と低温側熱媒体回路30とを接続し、バッテリ41で発生した熱とモータ51で発生した熱とで温められた熱媒体をクーラコア31に導くように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環するように構成されており、圧縮機、高温側熱交換器、減圧装置、及び低温側熱交換器を含む冷媒回路と、
車室内に供給される空気を加熱するヒータコアを含み、前記高温側熱交換器を介して前記冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環するように構成された高温側熱媒体回路と、
車室内に供給される空気を冷却するクーラコアを含み、前記低温側熱交換器を介して前記冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環するように構成された低温側熱媒体回路と、
バッテリを温調するバッテリ温調部を含むバッテリ温調回路と、
モータを温調するモータ温調部を含むモータ温調回路と、
前記低温側熱媒体回路と前記バッテリ温調回路と前記モータ温調回路との互いの接続と独立とを切替えられるように構成された流路切替装置と
を備え、
前記圧縮機が停止した状態のままで、暖房要求があったときに、前記流路切替装置は、
前記バッテリ温調回路と前記モータ温調回路と前記低温側熱媒体回路とを接続し、前記バッテリで発生した熱と前記モータで発生した熱とで温められた熱媒体を前記クーラコアに導く、
熱マネジメントシステム。
【請求項2】
前記クーラコアは、ヘッダタンクがアルミニウムを主材質とする金属製の熱交換器である、
請求項1に記載の熱マネジメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱マネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の利用が増えている。電気自動車では、車室内、各種車載機器等の温調にもバッテリの電力が用いられる。充電されたバッテリによる十分な走行距離を確保するためには、効率的に電力を利用する必要がある。例えば特許文献1には、ヒートポンプによる熱管理システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-032565
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、エネルギー効率のよい熱マネジメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、熱マネジメントシステムは、冷媒が循環するように構成されており、圧縮機、高温側熱交換器、減圧装置、及び低温側熱交換器を含む冷媒回路と、車室内に供給される空気を加熱するヒータコアを含み、前記高温側熱交換器を介して前記冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環するように構成された高温側熱媒体回路と、車室内に供給される空気を冷却するクーラコアを含み、前記低温側熱交換器を介して前記冷媒と熱交換可能な熱媒体が循環するように構成された低温側熱媒体回路と、バッテリを温調するバッテリ温調部を含むバッテリ温調回路と、モータを温調するモータ温調部を含むモータ温調回路と、前記低温側熱媒体回路と前記バッテリ温調回路と前記モータ温調回路との互いの接続と独立とを切替えられるように構成された流路切替装置とを備え、前記圧縮機が停止した状態のままで、暖房要求があったときに、前記流路切替装置は、前記バッテリ温調回路と前記モータ温調回路と前記低温側熱媒体回路とを接続し、前記バッテリで発生した熱と前記モータで発生した熱とで温められた熱媒体を前記クーラコアに導くように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エネルギー効率のよい熱マネジメントシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときの起動時の熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図2図2は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときでありバッテリが適温域になったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図3図3は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低くモータの排熱のみで暖房運転ができないときでありバッテリが適温域になったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図4図4は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときでありバッテリの温度が上昇して適温域の上限値を超えそうになったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図5図5は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、走行中にラジエータの除霜と車室内の暖房運転とを行うときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図6図6は、第一実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、圧縮機が停止した状態ままで、暖房要求があったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図7図7は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときの起動時の熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図8図8は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときでありバッテリが適温域になったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図9図9は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低くモータの排熱のみで暖房運転ができないときでありバッテリが適温域になったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図10図10は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が低いときでありバッテリの温度が上昇して適温域の上限値を超えそうになったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図11図11は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、外気温が高いときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
図12図12は、第二実施形態に係る熱マネジメントシステムの構成例の概略を示す図であって、圧縮機が停止した状態ままで、暖房要求があったときの熱マネジメントシステムの状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第一実施形態]
まず、第一実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
[システムの構成]
〈システムの概要〉
本実施形態は、冷媒回路と熱媒体回路とを有する熱マネジメントシステムに係る。本実施形態の熱マネジメントシステムは、電気自動車に搭載され、車室内の空調、及び、バッテリその他の車載装置の温調等をエネルギー効率よく行うことができるように構成されている。本実施形態の熱マネジメントシステムは、外気吸熱とバッテリ排熱とモータ排熱とを単独又は組み合わせて暖房運転の吸熱源とするなどして、排熱を余すことなく有効利用することができる。また、本実施形態の熱マネジメントシステムは、モータ排熱を吸熱源として暖房運転を継続しつつ、バッテリ排熱を利用してラジエータの除霜を行うことができる。また、本実施形態の熱マネジメントシステムは、冷媒回路の圧縮機が停止した状態のままでも、モータ排熱とバッテリ排熱とを効率よく利用して、エネルギー効率よく車室内を暖房することができる。
【0010】
図1乃至6は、本実施形態に係る熱マネジメントシステム1の構成例の概略を示す説明図である。熱マネジメントシステム1は、各種動作に応じて回路が切り替わるように構成されている。図1乃至6のそれぞれは、それら各種動作のうちの一部の動作時における回路構成を示す。
【0011】
熱マネジメントシステム1は、冷媒が循環するように構成された冷媒回路10を備える。冷媒には、これに限らないが例えば、ハイドロフルオロオレフィンなどが用いられ得る。また、熱マネジメントシステム1は、例えばクーラント液などの流体の熱媒体が循環するように構成された、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30と、バッテリ温調回路40と、モータ温調回路50と、室外熱交換回路60とを備える。これらの回路のうち、低温側熱媒体回路30と、バッテリ温調回路40と、モータ温調回路50と、室外熱交換回路60とは、八方弁などの流路切替装置70に接続されている。流路切替装置70は、これらの流路を互いに連結させてこれらの回路が協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成したり、他の回路から切り離して一つ以上の回路を独立させたりすることができる。また、高温側熱媒体回路20と室外熱交換回路60とは、互いの流路を接続し又は非接続とする四方弁V20などの流路切替装置に接続されている。この四方弁V20は、高温側熱媒体回路20と室外熱交換回路60とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成したり、これらの回路を互いに切り離したりすることができる。
【0012】
また、熱マネジメントシステム1は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニット100を備える。また、熱マネジメントシステム1は、図示しない各種センサや熱マネジメントシステム1の各部の動作を制御する制御装置を備える。熱マネジメントシステム1は、各種センサの検出値や各種要求等に基づいて、その動作が制御される。
【0013】
〈冷媒回路〉
冷媒回路10は、ガス状の冷媒を圧縮して高温高圧にしてから吐出する圧縮機11と、圧縮されたガス状の冷媒を凝縮させて放熱する高温側熱交換器12と、液状の冷媒を膨張させて低圧にする膨張弁などの減圧装置13と、低温低圧にされた液状の冷媒を蒸発させて吸熱する低温側熱交換器14とを含む。冷媒回路10は、冷媒を循環させて、圧縮、凝縮、膨張、蒸発を繰り返すヒートポンプとして機能するように構成されている。
【0014】
高温側熱交換器12では、冷媒は、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体と熱交換する。また、低温側熱交換器14では、冷媒は、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体と熱交換する。
【0015】
図に示す一例において、高温側熱交換器12は、冷媒回路10を循環する冷媒が通過する冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路12bとを備えている。低温側熱交換器14は、冷媒回路10を循環する冷媒が通過する冷媒通路14aと、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路14bとを備えている。
【0016】
冷媒回路10の各要素は、冷媒流路10a,10b,10cによって接続されている。圧縮機11は、冷媒流路10aによって高温側熱交換器12の冷媒通路12aの入口に接続されている。高温側熱交換器12の冷媒通路12aの出口は、冷媒流路10bによって低温側熱交換器14の冷媒通路14aの入口に接続されており、この冷媒流路10bの経路上には、膨張弁といった減圧装置13が設置されている。低温側熱交換器14の冷媒通路14aの出口は、冷媒流路10cによって圧縮機11に接続されている。この冷媒流路10dの経路上には、アキュムレータ15が設置されている。
【0017】
〈高温側熱媒体回路〉
高温側熱媒体回路20は、上述の高温側熱交換器12の熱媒体通路12bと、HVACユニット100のケース110内に収容されて、車室内に供給される空気を加熱するヒータコア21とを含む。高温側熱媒体回路20は、高温側熱交換器12を介して冷媒回路10から熱を受け取って温められた熱媒体が循環する回路である。高温側熱媒体回路20は、ヒータコア21を機能させて車室内を暖房するために利用され得る。
【0018】
図に示す一例において、高温側熱媒体回路20の各要素は、熱媒体流路20a,20b,20cによって接続されている。ヒータコア21の入口側21aは、熱媒体流路20aによって高温側熱交換器12の熱媒体通路12bの出口に接続されている。高温側熱交換器12の熱媒体通路12bの入口は、熱媒体流路20cによって四方弁V20に接続されている。ヒータコア21の出口側21bは、熱媒体流路20bによって四方弁V20に接続されている。この熱媒体流路20bの経路上には、熱媒体を流すための循環ポンプP20が設置されている。熱媒体は、循環ポンプP20により押し出されて、高温側熱媒体回路20を循環する。高温側熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する際に冷媒回路10から熱を受け取って温められた熱媒体は、ヒータコア21に入口側21aから供給されてヒータコア21を通過する。このとき、熱媒体がヒータコア21で熱を放出することで、ヒータコア21は機能する。ヒータコア21を通過した後に出口側21bから排出された熱媒体は、再び高温側熱交換器12の熱媒体通路12bに向かう。
【0019】
〈低温側熱媒体回路〉
低温側熱媒体回路30は、上述の低温側熱交換器14の熱媒体通路14bと、HVACユニット100のケース110内に収容されて、車室内に供給される空気を冷却するクーラコア31と、回路を切り替えるための三方弁V30とを含む。低温側熱媒体回路30は、低温側熱交換器14を介して冷媒回路10に熱を渡して冷却された熱媒体が循環する回路である。低温側熱媒体回路30は、クーラコア31を機能させて車室内を冷房又は除湿するために利用され得る。
【0020】
さらに、低温側熱媒体回路30の流路とバッテリ温調回路40の流路とモータ温調回路50の流路とは、流路切替装置70により、互いに接続され得る。低温側熱媒体回路30は、バッテリ温調回路40やモータ温調回路50と協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成することによって、バッテリ41の温調やモータ51の温調にも利用され得る。言い換えると、この場合は、バッテリ41やモータ51の排熱を冷媒回路10の吸熱源にすることができる。
【0021】
図に示す一例において、低温側熱媒体回路30の各要素は、熱媒体流路30a,30b,30c,30d,30e,30fによって接続されている。低温側熱交換器14の熱媒体通路14bの出口と三方弁V30とは、熱媒体流路30aによって接続されており、三方弁V30とクーラコア31の入口側31aとは、熱媒体流路30bによって接続されている。三方弁V30がこれら熱媒体流路30a,30bを接続すると、低温側熱交換器14の熱媒体通路14bの出口とクーラコア31の入口側31aとが接続される。
【0022】
クーラコア31の出口側31bは、そこに接続された熱媒体流路30c、合流点及びその下流の熱媒体流路30eを介して、流路切替装置70に接続されている。三方弁V30と合流点とは、熱媒体流路30dによって接続されている。三方弁V30によって、クーラコア31への接続を切断し、低温側熱交換器14の熱媒体通路14bの出口と流路切替装置70とを熱媒体流路30a,30d,30eによって接続すると、クーラコア31を通らずに迂回するバイパス流路が形成される。
【0023】
また、熱媒体流路30fによって、流路切替装置70と低温側熱交換器14の熱媒体通路14bの入口とが接続されている。熱媒体流路30fの経路上には、熱媒体を流すための循環ポンプP30が設置されている。
【0024】
低温側熱媒体回路30は、流路切替装置70により、バッテリ温調回路40、モータ温調回路50、及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して、熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0025】
熱媒体流路30fの経路上に設置された循環ポンプP30により、熱媒体は、低温側熱媒体回路30を循環する。熱媒体は、低温側熱交換器14の熱媒体通路14bを通過する際に、冷媒回路10に排熱して冷却される。冷却された熱媒体は、クーラコア31に入口側31aから供給されてクーラコア31を通過し得る。このとき、熱媒体がクーラコア31で吸熱することで、クーラコア31は機能し得る。クーラコア31を通過した後に出口側31bから排出された熱媒体は、又は、クーラコア31を通らずに迂回した熱媒体は、次いで、流路切替装置70を介して接続された、バッテリ温調回路40、モータ温調回路50、及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つを経由してから、再び低温側熱交換器14の熱媒体通路14bに向かう。
【0026】
〈バッテリ温調回路〉
バッテリ温調回路40は、上述の低温側熱交換器14の熱媒体通路14bと、車載機器としてのバッテリ41とを含む。バッテリ41には、バッテリ41を温調するためのバッテリ温調部が設けられている。バッテリ温調回路40は、バッテリ41の温度を調整するために利用され得る。
【0027】
なお、バッテリ温調回路40と同様の構成は、バッテリに限らず同様に温調が必要な他の車載機器の温調のための車載機器温調部を有する他の車載機器温調回路にも適用され得る。
【0028】
図に示す一例において、バッテリ温調回路40の各要素は、熱媒体流路40a,40bによって接続されている。バッテリ41の入口側41aは、熱媒体流路40aによって流路切替装置70に接続されている。バッテリ41の出口側41bは、熱媒体流路40bによって流路切替装置70に接続されている。
【0029】
バッテリ温調回路40は、流路切替装置70により、独立して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。また、バッテリ温調回路40は、流路切替装置70により、少なくとも低温側熱媒体回路30、モータ温調回路50、及び室外熱交換回路60の何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0030】
熱媒体流路40aの経路上には、その上流側から順に、循環ポンプP40、熱媒体加熱装置42が設置されている。バッテリ温調回路40が、他の回路から独立した循環経路を形成する場合であっても、協働して循環経路を形成する相手方の回路に循環ポンプが設置されていない場合であっても、熱媒体は循環ポンプP40により循環することができ、バッテリ41の温度は調整され得る。
【0031】
〈モータ温調回路〉
モータ温調回路50は、車載機器としてのモータ51を含む。モータ51には、モータ51を温調するためのモータ温調部が設けられている。モータ温調回路50は、熱媒体を循環させて、当該モータ51の温度を調整するために利用され得る。また、熱マネジメントシステム1は、モータ温調回路50を介して、走行中などに常に発熱するモータ51を熱源として利用することができる。
【0032】
図に示す一例において、モータ温調回路50の各要素は、熱媒体流路50a,50bによって接続されている。モータ51の入口側51aは、熱媒体流路50aによって流路切替装置70に接続されている。モータ51の出口側51bは、熱媒体流路50bによって流路切替装置70に接続されている。モータ温調回路50は、流路切替装置70により、低温側熱媒体回路30、バッテリ温調回路40、及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0033】
〈室外熱交換回路〉
室外熱交換回路60は、室外熱交換器としてのラジエータ61を含む。室外熱交換回路60は、熱媒体を循環させて、熱媒体を外気と熱交換させるために利用され得る。
【0034】
図に示す一例において、室外熱交換回路60の各要素は、熱媒体流路60a,60b,60cによって接続されている。ラジエータ61の入口側61aは、熱媒体流路60aによって四方弁V20に接続されている。流路切替装置70と四方弁V20とは、熱媒体流路60cによって接続されている。四方弁V20が、これら2つの熱媒体流路60a,60cを接続するとき、ラジエータ61の入口側61aは、流路切替装置70に接続される。ラジエータ61の出口側61bは、熱媒体流路60bによって流路切替装置70に接続されている。
【0035】
室外熱交換回路60は、流路切替装置70により、他の回路から切り離されて独立され得る。また、室外熱交換回路60は、流路切替装置70により、少なくとも低温側熱媒体回路30、バッテリ温調回路40、及びモータ温調回路50の何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくともいずれか一つと協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0036】
〈HVACユニット〉
前述したように、高温側熱媒体回路20のヒータコア21と、低温側熱媒体回路30のクーラコア31は、HVACユニット100のケース110内に収容されている。ケース110は、HVACユニット100の外殻を形成するとともに、内部に空気流通路120を形成している。
【0037】
また、HVACユニット100は、インテークユニット130を有している。インテークユニット130は、車室外空気を導入する外気吸入口と、車室内空気を導入する内気吸入口とのいずれか一方を閉鎖して、ケース110内に導入される空気を、車室外空気(外気導入)と車室内空気(内気循環)とのいずれかに切り替える。さらに、HVACユニット100は、ケース110内に導入された空気が、空気流通路120に送給されるように、インテークユニット130に隣接して設置された送風機140を有している。
【0038】
空気流通路120の上流側部には、クーラコア31が設置されている。そして、空気流通路120の下流側部には、ヒータコア通路121とバイパス通路122とが並列に形成されている。ヒータコア21は、ヒータコア通路121に設けられている。したがって、ケース110内に導入された空気をヒータコア通路121に誘導すると、空気は、クーラコア31に通風された後に、ヒータコア21に通風される。一方、ケース110内に導入された空気をバイパス通路122に誘導すると、空気は、クーラコア31に通風された後に、ヒータコア21を通らずに迂回する。ヒータコア通路121を経由する空気と、バイパス通路122を経由する空気との割合は、エアミックスダンパ150によって調整される。
【0039】
[システムの動作]
本実施形態に係る熱マネジメントシステム1の具体的な動作について、各図を参照して説明する。
【0040】
〈暖房運転(起動時/バッテリ温度適温域未満)〉
図1は、外気温が低いときの起動時の熱マネジメントシステム1の状態を示す。このとき、車室内が暖房されるとともに、バッテリ41が暖機される。
【0041】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0042】
低温側熱交換器14で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱交換器14で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとラジエータ61を通る熱媒体流路60a,60bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、低温側熱交換器14で熱交換される熱媒体が、ラジエータ61を通過して外気と熱交換される。以上のようにして、ラジエータ61で外気から吸熱した熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は外気吸熱暖房で運転される。
【0043】
また、流路切替装置70は、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、モータ51を通る熱媒体流路50a,50bとバッテリ41を通る熱媒体流路40a,40bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体によって、バッテリ41が暖機される。モータ51の排熱がバッテリ41の暖機に有効に利用されることで、省電力が実現される。
【0044】
この際、必要に応じて、バッテリ温調回路40の熱媒体流路40aの経路上に、すなわちバッテリ41に対して循環経路の上流側に設置された熱媒体加熱装置42で循環する熱媒体を加熱してもよい。これにより、バッテリ41の暖機が完了までに要する時間を短縮し得るが、例えば中間期のように外気温がそれほど低くない環境下などにおいて、バッテリ41の自己発熱とモータ51の排熱だけでもバッテリ41の暖機を短時間で完了できれば、熱媒体加熱装置42による熱媒体の加熱は省略し得る。
【0045】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とが接続された車室内温調のための空調用回路と、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが接続されたバッテリ暖気用回路とを、それぞれ独立させることにより、バッテリ41の温度管理を容易にして、バッテリ41を暖機し得る。
【0046】
〈暖房運転(バッテリ温度適温域)〉
図2は、外気温が低いときであって、バッテリ41の暖機が完了しバッテリ41が適温域になった後の熱マネジメントシステム1の状態を示す。バッテリ41の適温域は、例えば、25±5℃等である。すなわち、図2は、バッテリ41の温度が例えば20℃といった所定の下限値以上になった状態を示す。このとき、車室内が暖房される。また、バッテリ41は、自己発熱で温度管理がされる。
【0047】
流路切替装置70は、バッテリ温調回路40が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。バッテリ41も発熱しているので、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体の流量を調整することで、バッテリ41が温調される。この際、必要に応じて、熱媒体加熱装置42で熱媒体を加温してもよい。
【0048】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0049】
低温側熱交換器14で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱交換器14で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は暖房で運転される。
【0050】
例えば中間期のように外気温がそれほど低くない環境下などにおいて、モータ51の排熱のみで暖房運転ができる場合は、図2に示すように、流路切替装置70及び四方弁V20は、室外熱交換回路60が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。室外熱交換回路60による外気吸熱が行われずに済むため、ラジエータ61への着霜を回避できる。また、ラジエータファンの駆動が不要となり、バッテリ41の消費電力を抑制できる。
【0051】
モータ51の排熱のみで暖房運転ができない場合は、図3に示すように、流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30f,30a,30d,30eとラジエータ61を通る室外熱交換回路60の熱媒体流路60a,60b,60cとモータ51を通るモータ温調回路50の熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、ラジエータ61で外気から吸熱し、さらに、モータ51の排熱を吸熱した熱媒体の熱によって、冷媒回路10が動作する。この場合も、熱源としては、モータ51が主となり得る。その結果、ラジエータ61への着霜は低減される。
【0052】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、少なくとも低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とを接続し、モータ排熱を暖房運転の吸熱源にして、モータ51の排熱を余すことなく有効に利用することで、省電力が実現される。
【0053】
〈暖房運転(バッテリ温度上昇)〉
図4は、外気温が低いときであって、バッテリ41の温度が上昇して適温域の上限値を超えそうになったときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。バッテリ41の適温域の上限値は、例えば、45±5℃等である。すなわち、図4は、バッテリ41の温度が例えば40℃といった所定の上限値以上になったときの状態を示す。このとき、車室内が暖房される。また、バッテリ41は、冷却される。
【0054】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0055】
低温側熱交換器14で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱交換器14で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとバッテリ41を通る熱媒体流路40a,40bとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、バッテリ41で発生した熱とモータ51で発生した熱で温められた熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は暖房で運転される。また、バッテリ温調回路40の熱媒体は、低温側熱交換器14で冷媒回路10と熱交換し、冷却される。冷却された熱媒体によって、バッテリ41は冷却される。以上のように、バッテリ41を冷却しつつ、モータ排熱を吸熱源として有効に利用して暖房運転を継続し得る。
【0056】
図4では、流路切替装置70を切替えて、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50とを接続する場合に、モータ51の発熱量がバッテリ41の発熱量より多いことを考慮して、低温側熱媒体回路30、バッテリ温調回路40、モータ温調回路50の順で熱媒体が流れるようにしている。その結果、バッテリ41の排熱とモータ51の排熱とで温められた熱媒体が、低温側熱交換器14で冷媒回路10と熱交換して冷却されてから、バッテリ温調回路40に流れることになる。これにより、バッテリ41は効率よく冷却される。
【0057】
バッテリ41の冷却が優先される場合は、特に図示しないが、流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとバッテリ41を通る熱媒体流路40a,40bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、バッテリ温調回路40の熱媒体は、モータ温調回路50を経由せずに低温側熱交換器14で冷媒回路10と熱交換し、モータ51の排熱で温められない分だけ、より冷却される。このより冷却された熱媒体によって、バッテリ41の冷却を優先して行うことができる。
【0058】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、少なくとも低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とを接続し、バッテリ温調回路40の熱媒体が冷却され得るようにすることで、バッテリ41を冷却することができる。
【0059】
バッテリ41が冷却され、バッテリ41の温度が低下して適温域の下限値を超えそうになったときには、熱マネジメントシステム1は、図2図3に示す状態になるように流路切替装置70を切替える。要するに、熱マネジメントシステム1は、バッテリ41の温度やモータ51の温度を監視しながらバッテリ41の温度を適温域に維持しつつ、これらの排熱を余すことなく有効に利用し得るように流路切替装置70を切替える。
【0060】
〈暖房運転(走行中除霜)〉
図5は、走行中にラジエータ61の除霜と車室内の暖房運転とを行うときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。
【0061】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0062】
低温側熱交換器14で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱交換器14で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は暖房で運転される。
【0063】
また、流路切替装置70は、バッテリ温調回路40と室外熱交換回路60との互いの流路を接続し、バッテリ温調回路40と室外熱交換回路60とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、バッテリ41を通る熱媒体流路40a,40bとラジエータ61を通る熱媒体流路60a,60bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、バッテリ41で発生した熱で温められた熱媒体によって、ラジエータ61が除霜される。
【0064】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、モータ温調回路50とバッテリ温調回路40とを、それぞれ独立して、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とに接続することで、発熱量が異なるモータ51とバッテリ41とのそれぞれの排熱を有効に利用することができる。すなわち、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とを接続して、発熱量の多いモータ51の排熱を利用して暖房運転を継続し得る。また、バッテリ41の発熱量はモータ51の発熱量より少ないが、ラジエータ61を除霜するには十分であるため、バッテリ温調回路40と室外熱交換回路60とを接続して、バッテリ41の排熱を利用してラジエータ61の除霜を実行し得る。その際、ラジエータ61の除霜で冷却された熱媒体でバッテリ41を冷却して、バッテリ41の温度も調整し得る。
【0065】
また、走行中にラジエータ61の除霜を行う場面では、既にラジエータ61に着霜するような条件下で外気吸熱暖房が行われており、車室内の温度は、目標温度付近に調整されていることが想定される。このため、モータ51の排熱のみで暖房運転しても暖房要求は満たされ、車室内の快適性を維持しつつ除霜を行うことができる。その際、好ましくは、HVACユニット100のケース110のインテークユニット130は、車室外空気を導入する外気吸入口を閉鎖して、ケース110内に車室内空気を導入する内気循環に切替える。これによって、温度の低い外気が車室内に導入されるのを避けて、車室内の快適性が損なわれないようにすることができる。
【0066】
〈圧縮機不調時〉
図6は、走行中に何らかの原因で圧縮機11が停止してしまい、冷媒回路10がヒートポンプとして機能しなくなった場合に、圧縮機11が停止した状態のままで、暖房要求があったときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。
【0067】
高温側熱媒体回路20では、熱媒体を循環させても冷媒回路10と熱交換されないことから、不要な電力消費を避けるために循環ポンプP20を停止する。
【0068】
低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体がクーラコア31を流れるように、熱媒体流路30a,30b,30c,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとバッテリ41を通る熱媒体流路40a,40bとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、バッテリ41で発生した熱とモータ41で発生した熱とで温められた熱媒体が、クーラコア31に導かれる。これにより、HVACユニット100のケース110内に導入され、空気流通路120に送給された空気がクーラコア31で温められて、車室内が暖房される。
【0069】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50と低温側熱媒体回路30とを接続し、バッテリ41で発生した熱とモータ51で発生した熱とで温められた熱媒体がクーラコア31に導かれるようにすることで、バッテリ41の排熱とモータ51の排熱とを効率よく利用して、車室内の暖房を確保できる。その際、必要に応じて、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体を熱媒体加熱装置42によって加熱し、クーラコア31に導かれる熱媒体の含熱量を増加させてもよい。この場合、バッテリ41の温度管理を考慮すると、熱媒体加熱装置42は、バッテリ温調回路40の熱媒体流路40bの経路上、すなわちバッテリ41に対して循環経路の下流側に設置するのが好ましい。
【0070】
また、流路を延長してこれらの排熱によって温められた熱媒体をヒータコア21まで流そうとすると、配管の追加等により回路が複雑になり、流路の切替えも複雑になる。流路の延長に伴う熱の損失も生じ得るため、エネルギー的にも非効率である。バッテリ41の排熱とモータ51の排熱を利用して温められた熱媒体をクーラコア31に導いて、ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させることで、そのようなエネルギー的な非効率性を回避できる。ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させるにあたり、クーラコア31には、異なる温度帯の熱媒体が流れることになる。熱媒体の温度差によるシール面の不具合を考慮すると、クーラコア31は、ヘッダタンクがアルミニウムを主材質とする金属製の熱交換器であるのが好ましい。このようにすることで、熱媒体の漏れを抑制することができる。
【0071】
また、クーラコア31に通風されて温められた空気が、機能しなくなったヒータコア21に通風されて、当該ヒータコア21に熱が奪われてしまうのは好ましくない。このような不具合を回避するために、エアミックスダンパ150によりヒータコア通路121を閉鎖して、クーラコア31に通風されて温められた空気がバイパス通路122に誘導されるようにするのが好ましい。
【0072】
[システムについて]
本実施形態に係る熱マネジメントシステム1によれば、バッテリ41の加熱要求、空調要求等に応じて、適宜に回路を切り替えながら、モータ51の排熱等を余すことなく有効利用することができる。例えば、起動時にバッテリ41の温度を上昇させる必要があるときには、モータ51の排熱を用いてバッテリ41を暖機することができる。バッテリ41を暖機する必要がないときは、モータ51の排熱と必要に応じてバッテリ41の排熱とを暖房のために利用することもできる。モータ51の排熱を利用して暖房運転を継続しつつ、バッテリ41の排熱を利用してラジエータ61の除霜もできる。
【0073】
また、熱マネジメントシステム1は、バッテリ温調回路40と車室内温調のための空調用回路とがそれぞれ独立可能であるため、例えばバッテリ41の加熱が暖房に影響を与えること等が抑制され得る。
【0074】
また、熱マネジメントシステム1は、圧縮機11が不調なときには、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50と低温側熱媒体回路30とを接続し、排熱を利用して温められた熱媒体をクーラコア31に導いて、ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させて、エネルギー効率よく車室内の暖房を確保することもできる。
【0075】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について図面を参照して説明する。
【0076】
[システムの構成]
〈システムの概要〉
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、冷媒回路と熱媒体回路とを有する熱マネジメントシステムに係る。本実施形態の熱マネジメントシステムは、電気自動車に搭載され、車室内の空調、及び、バッテリその他の車載装置の温調等を行うことができるように構成されている。本実施形態の熱マネジメントシステムは、特にモータを熱源として利用することができる。このため、熱媒体を加熱するための電気ヒータを別途設ける必要がない、又は、設けるとしてもその消費電力を小さくすることができる。また、本実施形態の熱マネジメントシステムでは、冷媒回路の蒸発器が、空調用回路に設けられた冷却装置とバッテリ等の車載装置の温調用回路に設けられた冷却装置とに設けられている。このため、バッテリ等の車載装置の適切な温調が容易になる。また、本実施形態の熱マネジメントシステムは、冷媒回路の圧縮機が停止した状態のままでも、モータ排熱とバッテリ排熱とを効率よく利用して、エネルギー効率よく車室内を暖房することができる。
【0077】
図7乃至12は、本実施形態に係る熱マネジメントシステム1の構成例の概略を示す説明図である。熱マネジメントシステム1は、各種動作に応じて回路が切り替わるように構成されている。図7乃至12のそれぞれは、それら各種動作のうちの一部の動作時における回路構成を示す。
【0078】
熱マネジメントシステム1は、冷媒が循環するように構成された冷媒回路10を備える。冷媒には、これに限らないが例えば、ハイドロフルオロオレフィンなどが用いられ得る。また、熱マネジメントシステム1は、例えばクーラント液などの流体の熱媒体が循環するように構成された、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30と、バッテリ温調回路40と、モータ温調回路50と、室外熱交換回路60とを備える。これらの回路のうち、低温側熱媒体回路30と、バッテリ温調回路40と、モータ温調回路50と、室外熱交換回路60とは、八方弁などの流路切替装置70に接続されている。流路切替装置70は、これらの流路を互いに連結させてこれらの回路が協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成したり、他の回路から切り離して一つ以上の回路を独立させたりすることができる。また、高温側熱媒体回路20と室外熱交換回路60とは、互いの流路を接続し又は非接続とする四方弁V20などの流路切替装置に接続されている。この四方弁V20は、高温側熱媒体回路20と室外熱交換回路60とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成したり、これらの回路を互いに切り離したりすることができる。
【0079】
また、熱マネジメントシステム1は、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)ユニット100を備える。また、熱マネジメントシステム1は、図示しない各種センサや熱マネジメントシステム1の各部の動作を制御する制御装置を備える。熱マネジメントシステム1は、各種センサの検出値や各種要求等に基づいて、その動作が制御される。
【0080】
〈冷媒回路〉
冷媒回路10は、ガス状の冷媒を圧縮して高温高圧にしてから吐出する圧縮機11と、圧縮されたガス状の冷媒を凝縮させて放熱する高温側熱交換器12と、液状の冷媒を膨張させて低圧にする膨張弁などの減圧装置と、低温低圧にされた液状の冷媒を蒸発させて吸熱する低温側熱交換器とを含む。冷媒回路10は、冷媒を循環させて、圧縮、凝縮、膨張、蒸発を繰り返すヒートポンプとして機能するように構成されている。本実施形態の冷媒回路10では、高温側熱交換器12の下流に、減圧装置及び低温側熱交換器が2つ並列に設けられている。すなわち、冷媒回路10は、第一の減圧装置131及び第一の低温側熱交換器141と、第二の減圧装置132及び第二の低温側熱交換器142とを含む。第一の低温側熱交換器141を流れる冷媒の流量と、第二の低温側熱交換器142を流れる冷媒の流量とは、膨張弁などを含む第一の減圧装置131及び第二の減圧装置132によって調整され得る。
【0081】
高温側熱交換器12では、冷媒は、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体と熱交換する。また、第一の低温側熱交換器141では、冷媒は、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体と熱交換する。また、第二の低温側熱交換器142では、冷媒は、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体と熱交換する。
【0082】
図に示す一例において、高温側熱交換器12は、冷媒回路10を循環する冷媒が通過する冷媒通路12aと、高温側熱媒体回路20を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路12bとを備えている。第一の低温側熱交換器141は、冷媒回路10を循環する冷媒が通過する冷媒通路141aと、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路141bとを備えている。第二の低温側熱交換器142は、冷媒回路10を循環する冷媒が通過する冷媒通路142aと、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体が通過する熱媒体通路142bとを備えている。
【0083】
本実施形態の熱マネジメントシステム1では、第一の低温側熱交換器141の熱交換容量は、第二の低温側熱交換器142の熱交換容量よりも大きい。
【0084】
冷媒回路10の各要素は、冷媒流路10a,10b,10c,10d,10eによって接続されている。圧縮機11は、冷媒流路10aによって高温側熱交換器12の冷媒通路12aの入口に接続されている。高温側熱交換器12の冷媒通路12aの出口は、冷媒流路10bによって第一の低温側熱交換器141の冷媒通路141aの入口に接続されており、この冷媒流路10bの経路上には、膨張弁といった第一の減圧装置131が設置されている。第一の低温側熱交換器141の冷媒通路141aの出口は、冷媒流路10cによって圧縮機11に接続されている。この冷媒流路10cの経路上には、アキュムレータ15が設置されている。
【0085】
さらに、高温側熱交換器12の冷媒通路12aと第一の減圧装置131との間の冷媒流路10b上には、分岐した冷媒流路10dが接続されている。この冷媒流路10dによって、高温側熱交換器12の冷媒通路12aの出口は、第二の低温側熱交換器142の冷媒通路142aの入口にも接続されており、この冷媒流路10dの経路上には、膨張弁といった第二の減圧装置132が設置されている。第二の低温側熱交換器142の出口は、冷媒流路10eによって、第一の低温側熱交換器141の冷媒通路141aと圧縮機11と接続する冷媒通路142aのアキュムレータ15よりも上流側に接続されている。
【0086】
〈高温側熱媒体回路〉
高温側熱媒体回路20は、上述の高温側熱交換器12の熱媒体通路12bと、HVACユニット100のケース110内に収容されて、車室内に供給される空気を加熱するヒータコア21とを含む。高温側熱媒体回路20は、高温側熱交換器12を介して冷媒回路10から熱を受け取って温められた熱媒体が循環する回路である。高温側熱媒体回路20は、ヒータコア21を機能させて車室内を暖房するために利用され得る。
【0087】
図に示す一例において、高温側熱媒体回路20の各要素は、熱媒体流路20a,20b,20cによって接続されている。ヒータコア21の入口側21aは、熱媒体流路20aによって高温側熱交換器12の熱媒体通路12bの出口に接続されている。高温側熱交換器12の熱媒体通路12bの入口は、熱媒体流路20cによって四方弁V20に接続されている。ヒータコア21の出口側21bは、熱媒体流路20bによって四方弁V20に接続されている。この熱媒体流路20bの経路上には、熱媒体を流すための循環ポンプP20が設置されている。熱媒体は、循環ポンプP20により押し出されて、高温側熱媒体回路20を循環する。高温側熱交換器12の熱媒体通路12bを通過する際に冷媒回路10から熱を受け取って温められた熱媒体は、ヒータコア21に入口側21aから供給されてヒータコア21を通過する。このとき、熱媒体がヒータコア21で熱を放出することで、ヒータコア21は機能する。ヒータコア21を通過した後に出口側21bから排出された熱媒体は、再び高温側熱交換器12の熱媒体通路12bに向かう。
【0088】
〈低温側熱媒体回路〉
低温側熱媒体回路30は、上述の第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bと、HVACユニット100のケース110内に収容されて、車室内に供給される空気を冷却するクーラコア31と、回路を切り替えるための三方弁V30とを含む。低温側熱媒体回路30は、第一の低温側熱交換器141を介して冷媒回路10に熱を渡して冷却された熱媒体が循環する回路である。低温側熱媒体回路30は、クーラコア31を機能させて車室内を冷房又は除湿するために利用され得る。
【0089】
さらに、低温側熱媒体回路30の流路とモータ温調回路50の流路とは、流路切替装置70により、互いに接続され得る。低温側熱媒体回路30は、モータ温調回路50と協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成することによって、モータ51の温調にも利用され得る。言い換えると、この場合は、モータ51の排熱を冷媒回路10の吸熱源にすることができる。
【0090】
図に示す一例において、低温側熱媒体回路30の各要素は、熱媒体流路30a,30b,30c,30d,30e,30fによって接続されている。第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bの出口と三方弁V30とは、熱媒体流路30aによって接続されており、三方弁V30とクーラコア31の入口側31aとは、熱媒体流路30bによって接続されている。三方弁V30がこれら熱媒体流路30a,30bを接続すると、第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bの出口とクーラコア31の入口側31aとが接続される。
【0091】
クーラコア31の出口側31bは、そこに接続された熱媒体流路30c、合流点及びその下流の熱媒体流路30eを介して、流路切替装置70に接続されている。三方弁V30と合流点とは、熱媒体流路30dによって接続されている。三方弁V30によって、クーラコア31への接続を切断し、第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bの出口と流路切替装置70とを熱媒体流路30d,30eによって接続すると、クーラコア31を通らずに迂回するバイパス流路が形成される。
【0092】
また、熱媒体流路30fによって、流路切替装置70と第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bの入口とが接続されている。熱媒体流路30fの経路上には、熱媒体を流すための循環ポンプP30が設置されている。
【0093】
低温側熱媒体回路30は、流路切替装置70により、独立して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。また、低温側熱媒体回路30は、流路切替装置70により、モータ温調回路50、及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して、熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0094】
熱媒体流路30fの経路上に設置された循環ポンプP30により、熱媒体は、低温側熱媒体回路30を循環する。熱媒体は、第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bを通過する際に、冷媒回路10に排熱して冷却される。冷却された熱媒体は、クーラコア31に入口側31aから供給されてクーラコア31を通過し得る。このとき、熱媒体がクーラコア31で吸熱することで、クーラコア31は機能し得る。クーラコア31を通過した後に出口側31bから排出された熱媒体は、又は、クーラコア31を通らずに迂回した熱媒体は、次いで、流路切替装置70を介して連結された、モータ温調回路50及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つを経由してから、又は、これらの回路を経由せずに、再び第一の低温側熱交換器141の熱媒体通路141bに向かう。
【0095】
〈バッテリ温調回路〉
バッテリ温調回路40は、上述の第二の低温側熱交換器142の熱媒体通路142bと、車載機器としてのバッテリ41とを含む。バッテリ41には、バッテリ41を温調するためのバッテリ温調部が設けられている。バッテリ温調回路40は、第二の低温側熱交換器142を介して冷媒回路10に熱を渡して冷却された熱媒体が循環することができる回路である。バッテリ温調回路40は、バッテリ41の温度を調整するために利用され得る。
【0096】
なお、バッテリ温調回路40と同様の構成は、バッテリに限らず同様に温調が必要な他の車載機器の温調のための車載機器温調部を有する他の車載機器温調回路にも適用され得る。
【0097】
図に示す一例において、バッテリ温調回路40の各要素は、熱媒体流路40a,40b,40cによって接続されている。バッテリ41の入口側41aは、熱媒体流路40aによって第二の低温側熱交換器142の熱媒体通路142bの出口に接続されている。バッテリ41の出口側41bは、熱媒体流路40bによって流路切替装置70に接続されている。流路切替装置70と第二の低温側熱交換器142の熱媒体通路142bの入口とは、熱媒体流路40cによって接続されている。
【0098】
バッテリ温調回路40は、流路切替装置70により、独立して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。また、バッテリ温調回路40は、流路切替装置70により、モータ温調回路50と互いの流路を接続し、少なくともモータ温調回路50と協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0099】
熱媒体流路40cの経路上には、循環ポンプP40が設置されている。バッテリ温調回路40が、他の回路から独立した循環経路を形成する場合であっても、協働して循環経路を形成する相手方の回路に循環ポンプが設置されていない場合であっても、熱媒体は循環ポンプP40により循環することができ、バッテリ41の温度は調整され得る。
【0100】
〈モータ温調回路〉
モータ温調回路50は、車載機器としてのモータ51を含む。モータ51には、モータ51を温調するためのモータ温調部が設けられている。モータ温調回路50は、熱媒体を循環させて、当該モータ51の温度を調整するために利用され得る。また、熱マネジメントシステム1は、モータ温調回路50を介して、走行中などに常に発熱するモータ51を熱源として利用することができる。
【0101】
図に示す一例において、モータ温調回路50の各要素は、熱媒体流路50a,50bによって接続されている。モータ51の入口側51aは、熱媒体流路50aによって流路切替装置70に接続されている。モータ51の出口側51bは、熱媒体流路50bによって流路切替装置70に接続されている。モータ温調回路50は、流路切替装置70により、低温側熱媒体回路30、バッテリ温調回路40、及び室外熱交換回路60の少なくとも何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0102】
〈室外熱交換回路〉
室外熱交換回路60は、室外熱交換器としてのラジエータ61を含む。室外熱交換回路60は、熱媒体を循環させて、熱媒体を外気と熱交換させるために利用され得る。
【0103】
図に示す一例において、室外熱交換回路60の各要素は、熱媒体流路60a,60b,60cによって接続されている。ラジエータ61の入口側61aは、熱媒体流路60aによって四方弁V20に接続されている。流路切替装置70と四方弁V20とは、熱媒体流路60cによって接続されている。四方弁V20が、これら2つの熱媒体流路60a,60cを接続するとき、ラジエータ61の入口側61aは、流路切替装置70に接続される。ラジエータ61の出口側61bは、熱媒体流路60bによって流路切替装置70に接続されている。
【0104】
室外熱交換回路60は、流路切替装置70により、他の回路から切り離されて独立され得る。また、室外熱交換回路60は、流路切替装置70により、少なくとも低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50との何れか一つと互いの流路を接続し、これらの回路の少なくとも何れか一つと協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。あるいは、室外熱交換回路60の流路と高温側熱媒体回路20の流路とは、四方弁V20により、互いに接続され、室外熱交換回路60と高温側熱媒体回路20とは、協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成できる。
【0105】
〈HVACユニット〉
前述したように、高温側熱媒体回路20のヒータコア21と、低温側熱媒体回路30のクーラコア31は、HVACユニット100のケース110内に収容されている。ケース110は、HVACユニット100の外殻を形成するとともに、内部に空気流通路120を形成している。
【0106】
また、HVACユニット100は、インテークユニット130を有している。インテークユニット130は、車室外空気を導入する外気吸入口と車室内空気を導入する内気吸入口との何れか一方を閉鎖して、ケース110内に導入される空気を、車室外空気(外気導入)と車室内空気(内気循環)との何れかに切り替える。さらに、HVACユニット100は、ケース110内に導入された空気が、空気流通路120に送給されるように、インテークユニット130に隣接して設置された送風機140を有している。
【0107】
空気流通路120の上流側部には、クーラコア31が設置されている。そして、空気流通路120の下流側部には、ヒータコア通路121とバイパス通路122とが並列に形成されている。ヒータコア21は、ヒータコア通路121に設けられている。したがって、ケース110内に導入された空気をヒータコア通路121に誘導すると、空気は、クーラコア31に通風された後に、ヒータコア21に通風される。一方、ケース110内に導入された空気をバイパス通路122に誘導すると、空気は、クーラコア31に通風された後に、ヒータコア21を通らずに迂回する。ヒータコア通路121を経由する空気と、バイパス通路122を経由する空気との割合は、エアミックスダンパ150によって調整される。
【0108】
[システムの動作]
本実施形態に係る熱マネジメントシステム1の具体的な動作について、各図を参照して説明する。
【0109】
〈暖房運転(起動時/バッテリ温度適温域未満)〉
図7は、外気温が低いときの起動時の熱マネジメントシステム1の状態を示す。このとき、車室内が暖房されるとともに、バッテリ41が暖機される。この状態では、冷媒回路10において、第一の減圧装置131の膨張弁が開かれて第二の減圧装置132の膨張弁が閉じられ、冷媒は、第一の低温側熱交換器141を流れて第二の低温側熱交換器142を流れない。
【0110】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0111】
第一の低温側熱交換器141で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、第一の低温側熱交換器141で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。

流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。その結果、第一の低温側熱交換器141で熱交換される熱媒体が、ラジエータ61を通過して外気と熱交換される。以上のようにして、ラジエータ61で外気から吸熱した熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は外気吸熱暖房で運転される。
【0112】
また、流路切替装置70は、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、モータ51を通る熱媒体流路50a,50bとバッテリ41を通る熱媒体流路40a,40b,40cとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体によって、バッテリ41が暖機される。以上のように、モータ51の排熱がバッテリ41の暖機に有効に利用されることで、省電力が実現される。
【0113】
〈暖房運転(バッテリ温度適温域)〉
図8は、外気温が低いときであって、バッテリ41の暖機が完了しバッテリ41が適温域になった後の熱マネジメントシステム1の状態を示す。バッテリ41の適温域は、例えば、25±5℃等である。すなわち、図8は、バッテリ41の温度が例えば20℃といった所定の下限値以上になった状態を示す。このとき、車室内が暖房される。また、バッテリ41は、自己発熱で温度管理がされる。この状態では、冷媒回路10において、第一の減圧装置131の膨張弁が開かれて第二の減圧装置132の膨張弁が閉じられ、冷媒は、第一の低温側熱交換器141を流れて第二の低温側熱交換器142を流れない。
【0114】
流路切替装置70は、バッテリ温調回路40が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。バッテリ41も発熱しているので、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体の流量を調整することで、バッテリ41が温調される。
【0115】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、室外熱交換回路60と切り離された高温側熱媒体回路20を循環して、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。
【0116】
第一の低温側熱交換器141で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、第一の低温側熱交換器141で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続される。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体の熱を吸熱源として冷媒回路10が動作し、車室内の空調は暖房で運転される。
【0117】
モータ51の排熱のみで暖房運転ができる場合は、図8に示すように、流路切替装置70及び四方弁V20は、室外熱交換回路60が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。室外熱交換回路60による外気吸熱が行われずに済むため、ラジエータ61への着霜を回避できる。
【0118】
モータ51の排熱のみで暖房運転ができない場合は、図9に示すように、流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30f,30a,30d,30eと、ラジエータ61を通る室外熱交換回路60の熱媒体流路60a,60b,60cと、モータ51を通るモータ温調回路50の熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、ラジエータ61で外気から吸熱し、さらに、モータ51の排熱を吸熱した熱媒体の熱によって、冷媒回路10が動作する。この場合も、熱源としては、モータ51が主となり得る。その結果、ラジエータ61への着霜は低減される。
【0119】
以上のように、モータ51の排熱が有効に利用されることで、省電力が実現される。
【0120】
〈暖房運転(バッテリ温度上昇)〉
図10は、外気温が低いときであって、バッテリ41の温度が上昇して適温域の上限値を超えそうになったときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。バッテリ41の適温域の上限値は、例えば、45±5℃等である。すなわち、図10は、バッテリ41の温度が例えば40℃といった所定の上限値以上になったときの状態を示す。このとき、車室内が暖房される。また、バッテリ41は、冷却される。この状態では、冷媒回路10において、第一の減圧装置131の膨張弁と第二の減圧装置132の膨張弁とが開かれ、冷媒は、第一の低温側熱交換器141と第二の低温側熱交換器142とを流れる。
【0121】
流路切替装置70は、バッテリ温調回路40が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。このとき、バッテリ温調回路40の熱媒体は、第二の低温側熱交換器142で冷媒回路10と熱交換し、冷却される。冷却された熱媒体によって、バッテリ41は冷却される。バッテリ41の冷却は、第二の減圧装置132の膨張弁の開度で調整された第二の低温側熱交換器142を流れる冷媒の流量の調整によって制御される。バッテリ41の温調用に第二の低温側熱交換器142を含む独立した冷却回路が設けられているため、バッテリ41の温調は容易に最適に制御され得る。
【0122】
第一の低温側熱交換器141で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、第一の低温側熱交換器141で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を通らずに迂回して流れるように、熱媒体流路30a,30d,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続される。その結果、モータ51で発生した熱で温められた熱媒体の熱によって、冷媒回路10が動作する。
【0123】
高温側熱交換器12で熱交換される熱媒体が流れる高温側熱媒体回路20は、次のように設定される。すなわち、四方弁V20は、高温側熱交換器12で熱交換して温められた熱媒体が、ヒータコア21を流れるように、熱媒体流路20b,20cを接続する。その結果、高温側熱交換器12で吸熱した熱媒体の熱によって、車室内が暖房される。以上のようにして、モータ51を熱源として暖房が運転される。
【0124】
モータ51の排熱のみで暖房運転ができる場合は、図10に示すように、流路切替装置70及び四方弁V20は、室外熱交換回路60が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。室外熱交換回路60による外気吸熱が行われずに済むため、ラジエータ61への着霜を回避できる。モータ51の排熱のみで暖房運転ができない場合は、上述の場合と同様に、流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50の互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30と室外熱交換回路60とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30f,30a,30d,30eと、ラジエータ61を通る室外熱交換回路60の熱媒体流路60a,60b,60cと、モータ51を通るモータ温調回路50の熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、ラジエータ61で外気から吸熱し、さらに、モータ51の排熱を吸熱した熱媒体の熱によって、冷媒回路10が動作する。この場合も、熱源としては、モータ51が主となり得る。その結果、ラジエータ61への着霜は低減される。
【0125】
以上のように、モータ51の排熱が有効に利用されることで、省電力が実現される。
【0126】
〈冷房運転〉
図11は、外気温が高いときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。このとき、車室内が冷房される。また、バッテリ41は、冷却される。この状態では、冷媒回路10において、第一の減圧装置131の膨張弁と第二の減圧装置132の膨張弁とが開かれ、冷媒は、第一の低温側熱交換器141と第二の低温側熱交換器142とを流れる。
【0127】
流路切替装置70は、バッテリ温調回路40が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。このとき、バッテリ温調回路40の熱媒体は、第二の低温側熱交換器142で冷媒回路10と熱交換し、冷却される。冷却された熱媒体によって、バッテリ41は冷却される。バッテリ41の冷却は、第二の減圧装置132の膨張弁の開度で調整された第二の低温側熱交換器142を流れる冷媒の流量の調整によって制御される。このため、バッテリ41の温調は容易に最適に制御され得る。
【0128】
第一の低温側熱交換器141で熱交換される熱媒体が流れる低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30が独立して熱媒体の循環経路を形成するようにする。また、三方弁V30は、第一の低温側熱交換器141で熱交換して冷却された熱媒体がクーラコア31を流れるように、熱媒体流路30a,30b,30c,30eを形成する。その結果、第一の低温側熱交換器141で放熱した熱媒体によって、車室内が冷房される。
【0129】
流路切替装置70は、室外熱交換回路60とモータ温調回路50と高温側熱媒体回路20の互いの流路を接続し、室外熱交換回路60とモータ温調回路50と高温側熱媒体回路20とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、ラジエータ61を通る室外熱交換回路60の熱媒体流路60b,60cと、モータ51を通るモータ温調回路50の熱媒体流路50a,50bと、室外熱交換回路60の熱媒体流路60aを介して高温側熱交換器12を通る高温側熱媒体回路20の熱媒体流路20a,20bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。すなわち、モータ51の排熱は、ラジエータ61を介して外気に放熱される。なお、このとき、エアミックスダンパ150は、ヒータコア通路121を閉鎖し、車室内は暖房されず、クーラコア31で冷却された空気は、バイパス通路122を通り、車室内は冷房される。
【0130】
〈圧縮機不調時〉
図12は、走行中に何らかの原因で圧縮機11が停止してしまい、冷媒回路10がヒートポンプとして機能しなくなった場合に、圧縮機11が停止した状態のままで、暖房要求があったときの熱マネジメントシステム1の状態を示す。
【0131】
高温側熱媒体回路20では、熱媒体を循環させても冷媒回路10と熱交換されないことから、不要な電力消費を避けるために循環ポンプP20を停止する。
【0132】
低温側熱媒体回路30は、次のように設定される。すなわち、三方弁V30は、低温側熱媒体回路30を循環する熱媒体がクーラコア31を流れるように、熱媒体流路30a,30b,30c,30eを形成する。流路切替装置70は、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50との互いの流路を接続し、低温側熱媒体回路30とバッテリ温調回路40とモータ温調回路50とが協働して熱媒体を循環させる循環経路を形成する。すなわち、低温側熱媒体回路30の熱媒体流路30a,30d,30eとバッテリ41を通る熱媒体流路40c,40a,40bとモータ51を通る熱媒体流路50a,50bとが接続され、これら循環経路を熱媒体が循環する。その結果、バッテリ41で発生した熱とモータ41で発生した熱とで温められた熱媒体が、クーラコア31に導かれる。これにより、HVACユニット100のケース110内に導入され、空気流通路120に送給された空気がクーラコア31で温められて、車室内が暖房される。
【0133】
以上のように、流路切替装置70を切替えて、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50と低温側熱媒体回路30とを接続し、バッテリ41で発生した熱とモータ51で発生した熱とで温められた熱媒体がクーラコア31に導かれるようにすることで、バッテリ41の排熱とモータ51の排熱とを効率よく利用して、車室内の暖房を確保できる。その際、必要に応じて、バッテリ温調回路40を循環する熱媒体を熱媒体加熱装置42によって加熱し、クーラコア31に導かれる熱媒体の含熱量を増加させてもよい。この場合、バッテリ41の温度管理を考慮すると、熱媒体加熱装置42は、バッテリ温調回路40の熱媒体流路40bの経路上、すなわちバッテリ41に対して循環経路の下流側に設置するのが好ましい。
【0134】
また、流路を延長してこれらの排熱によって温められた熱媒体をヒータコア21まで流そうとすると、配管の追加等により回路が複雑になり、流路の切替えも複雑になる。流路の延長に伴う熱の損失も生じ得るため、エネルギー的にも非効率である。バッテリ41の排熱とモータ51の排熱を利用して温められた熱媒体をクーラコア31に導いて、ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させることで、そのようなエネルギー的な非効率性を回避できる。ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させるにあたり、クーラコア31には、異なる温度帯の熱媒体が流れることになる。熱媒体の温度差によるシール面の不具合を考慮すると、クーラコア31は、ヘッダタンクがアルミニウムを主材質とする金属製の熱交換器であるのが好ましい。このようにすることで、熱媒体の漏れを抑制することができる。
【0135】
また、クーラコア31に通風されて温められた空気が、機能しなくなったヒータコア21に通風されて、当該ヒータコア21に熱が奪われてしまうのは好ましくない。このような不具合を回避するために、エアミックスダンパ150によりヒータコア通路121を閉鎖して、クーラコア31に通風されて温められた空気がバイパス通路122に誘導されるようにするのが好ましい。
【0136】
[システムについて]
本実施形態に係る熱マネジメントシステム1によれば、バッテリ41の加熱要求、空調要求等に応じて、適宜に回路を切り替えながら、モータ51の排熱を余すことなく有効利用することができる。例えば、起動時にバッテリ41の温度を上昇させる必要があるときには、モータ51の排熱を用いてバッテリ41を暖機することができる。また、バッテリ41を暖機する必要がないときは、モータ51の排熱を暖房のために利用することもできる。これらのため、電気ヒータなどの別途の補助加熱装置等が不要である。
【0137】
また、熱マネジメントシステム1には、第一の低温側熱交換器141と第二の低温側熱交換器142とが並列に設けられている。熱マネジメントシステム1は、第二の低温側熱交換器142を有する独立可能なバッテリ温調回路40を有することで、バッテリ41の温度が十分に上昇した後は、自己発熱と第二の低温側熱交換器142の冷却機能とにより、バッテリ41を適温に容易に温調できる。精密なバッテリ41の温調によって、バッテリ41の劣化が抑制され得る。また、バッテリ温調回路40と車室内温調のための空調用回路とがそれぞれ独立可能であるため、例えばバッテリ41の加熱が暖房に影響を与えること等が抑制され得る。このような適切な温調のため、第二の低温側熱交換器142の熱交換容量は、第一の低温側熱交換器141の熱交換容量よりも小さく設計されている。このように、第一の低温側熱交換器141と第二の低温側熱交換器142とを独立にそれぞれ適切な熱交換容量で設けるため、これらを比較的小さくすることができる。
【0138】
また、熱マネジメントシステム1は、圧縮機11が不調なときには、バッテリ温調回路40とモータ温調回路50と低温側熱媒体回路30とを接続し、排熱を利用して温められた熱媒体をクーラコア31に導いて、ヒータコア21の機能をクーラコア31に代替させて、エネルギー効率よく車室内の暖房を確保することもできる。
【0139】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0140】
1:熱マネジメントシステム
10:冷媒回路、11:圧縮機、12:高温側熱交換器、13:減圧装置、14:低温側熱交換器、131:第一の減圧装置、141:第一の低温側熱交換器、132:第二の減圧装置、142:第二の低温側熱交換器、15:アキュムレータ
20:高温側熱媒体回路、21:ヒータコア、P20:循環ポンプ、V20:四方弁
30:低温側熱媒体回路、31:クーラコア、P30:循環ポンプ、V30:三方弁
40:バッテリ温調回路、41:バッテリ、P40:循環ポンプ
50:モータ温調回路、51:モータ
60:室外熱交換回路、61:ラジエータ
70:流路切替装置
100:HVACユニット、110:ケース、120:空気流通路、121:ヒータコア通路、122:バイパス通路、150:エアミックスダンパ
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