(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166858
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083244
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繁内 宏治
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義信
(72)【発明者】
【氏名】田内 豊
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB26
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF17
5H730FG05
5H730XX43
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、それぞれが巻線を備える複数のコネクタによってトランスを構成した電力変換装置について、互いに離脱した各コネクタから発せられるノイズ電磁波を抑制することである。
【解決手段】第2コネクタ34は、1次巻線L
1と信号用1次巻線L
s1とを備える第1コネクタ14に結合する。第2コネクタ34は、1次巻線L
1に結合する2次巻線L
2と、信号用1次巻線L
s1に結合する信号用2次巻線L
s2とを備えている。第2スイッチング回路32は2次巻線L
2に接続されている。第2コントローラ36は、信号用1次巻線L
s1および信号用2次巻線L
s2を介して取得される同期信号に基づくタイミングで、第2スイッチング回路32をスイッチングし、同期信号の大きさに基づいて、第1コネクタ14と第2コネクタ34との間のコネクタ間距離を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線および信号用1次巻線を備える第1コネクタと、
前記1次巻線に結合する2次巻線、および前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線を備える第2コネクタと、
前記1次巻線に接続された第1スイッチング回路と、
前記2次巻線に接続された第2スイッチング回路と、
前記信号用1次巻線に接続され、前記第1スイッチング回路をスイッチングする第1コントローラと、
前記信号用2次巻線に接続され、前記第2スイッチング回路をスイッチングする第2コントローラと、を備え、
前記第1コントローラは、前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して、同期信号を前記第2コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、
前記同期信号に基づいて、前記第1スイッチング回路のスイッチングに同期させて、前記第2スイッチング回路をスイッチングし、
前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1コントローラに接続される第1通信部と、
前記第2コントローラに接続され、前記第1通信部との間で無線通信をする第2通信部と、を備え、
前記第2コントローラは、前記第1通信部および前記第2通信部との間の無線通信を介して、前記コネクタ間距離を前記第1コントローラに送信し、
前記第1コントローラおよび前記第2コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、それぞれ、前記第1スイッチング回路および前記第2スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
1次巻線と、信号用1次巻線とを備える第1コネクタに結合する第2コネクタであって、 前記1次巻線に結合する2次巻線と、前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線とを備える第2コネクタと、
前記2次巻線に接続されたスイッチング回路と、
前記信号用2次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して取得される同期信号に基づくタイミングで、前記スイッチング回路をスイッチングし、
前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする電力変換器。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換器。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記2次巻線に印加される電圧または前記2次巻線に流れる電流を調整することを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記スイッチング回路における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが、所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
【請求項7】
2次巻線と、信号用2次巻線とを備える第2コネクタに結合する第1コネクタであって、 前記2次巻線に結合する1次巻線と、前記信号用2次巻線に結合する信号用1次巻線とを備える第1コネクタと、
前記1次巻線に接続されたスイッチング回路と、
前記信号用1次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、
前記コントローラに接続される通信部と、を備え、
前記コントローラは、
前記スイッチング回路のスイッチングタイミングを示す同期信号を前記信号用1次巻線に出力し、
前記通信部を介して取得され、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間の距離を示すコネクタ間距離であって、前記第2コネクタを備える第2電力変換器から送信されたコネクタ間距離を取得し、
前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換器。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記1次巻線に印加される電圧または前記1次巻線に流れる電流を調整することを特徴とする電力変換器。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記第2電力変換器から送信され、前記通信部を介して取得された制御値であって、前記第2電力変換器における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
【請求項10】
請求項3または請求項7に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離が所定の距離閾値以上となったときは、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置および電力変換器に関し、特に、スイッチング回路を備える装置および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのスイッチング回路をトランスによって結合した電力変換装置が広く用いられている。2次側のスイッチング回路には、例えば、電気自動車に搭載される電気回路が接続され、1次側のスイッチング回路には、例えば、商用電源が接続される。1次側のスイッチング回路と2次側のスイッチング回路とがトランスによって電気的に絶縁されているので、高出力電圧のバッテリが搭載されている場合であっても、商用電源の取り扱いが容易になる。
【0003】
このような電力変換装置には、以下の特許文献1、非特許文献1および2に示されているように、1次側のスイッチング回路をスイッチングする位相と、2次側のスイッチング回路をスイッチングする位相との差異に応じて、1次側から2次側に伝送される電力が定まるものがある。
【0004】
また、トランスの1次巻線が設けられた第1スイッチング回路と、トランスの2次巻線が設けられた第2スイッチング回路とを個別に構成し、1次巻線を備える第1コネクタと、2次巻線を備える第2コネクタとを着脱自在としたものもある。この構成では、第1コネクタと第2コネクタとが結合することでトランスが構成され、第1スイッチング回路と第2スイッチング回路との間で電力伝送が行われる。特許文献2~4に記載の電力変換装置では、1次巻線を有するコネクタと、2次巻線を有するコネクタとが結合することでトランスが構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-160093号公報
【特許文献2】米国特許5341083号明細書
【特許文献3】米国特許公開公報2017/179765号明細書
【特許文献4】特開2021-27281号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日下佳祐, 伊東 淳一, Dual Active Bridge Converter動作を応用した非共振形非接触給電システムの基礎検証, 電気学会論文誌D(産業応用部門誌), 2016, 136 巻, 2 号, p. 189-197
【非特許文献2】K. Ishikawa, M. Ishigaki, K. Tahara, M. Kusakabe and T. Sugiyama, "Time Synchronization and an Encoded Wireless Gate-signal Transfer Method for a High-power and Bi-directional Contactless Power Transfer System for Vehicle-to-Grid Applications," 2019 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition (ECCE), 2019, pp. 6768-6774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1コネクタと第2コネクタによってトランスを構成した電力変換装置では、第1コネクタと第2コネクタとが離れた状態にある場合、第1スイッチング回路または第2スイッチング回路に過大な電圧が現れたり、過大な電流が流れたりすることがある。また、1次巻線または2次巻線からノイズ電磁波が放射されることがある。
【0008】
本発明の目的は、それぞれが巻線を備える複数のコネクタによってトランスを構成した電力変換装置について、互いに離脱した各コネクタから発せられるノイズ電磁波を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1次巻線および信号用1次巻線を備える第1コネクタと、前記1次巻線に結合する2次巻線、および前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線を備える第2コネクタと、前記1次巻線に接続された第1スイッチング回路と、前記2次巻線に接続された第2スイッチング回路と、前記信号用1次巻線に接続され、前記第1スイッチング回路をスイッチングする第1コントローラと、前記信号用2次巻線に接続され、前記第2スイッチング回路をスイッチングする第2コントローラと、を備え、前記第1コントローラは、前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して、同期信号を前記第2コントローラに送信し、前記第2コントローラは、前記同期信号に基づいて、前記第1スイッチング回路のスイッチングに同期させて、前記第2スイッチング回路をスイッチングし、前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記第1コントローラに接続される第1通信部と、前記第2コントローラに接続され、前記第1通信部との間で無線通信をする第2通信部と、を備え、前記第2コントローラは、前記第1通信部および前記第2通信部との間の無線通信を介して、前記コネクタ間距離を前記第1コントローラに送信し、前記第1コントローラおよび前記第2コントローラは、前記コネクタ間距離に応じて、それぞれ、前記第1スイッチング回路および前記第2スイッチング回路のスイッチング状態を制御する。
【0011】
また、本発明は、1次巻線と、信号用1次巻線とを備える第1コネクタに結合する第2コネクタであって、 前記1次巻線に結合する2次巻線と、前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線とを備える第2コネクタと、前記2次巻線に接続されたスイッチング回路と、前記信号用2次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して取得される同期信号に基づくタイミングで、前記スイッチング回路をスイッチングし、前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする。
【0012】
望ましくは、前記コントローラは、前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御する。
【0013】
望ましくは、前記コントローラは、前記コネクタ間距離に応じて、前記2次巻線に印加される電圧または前記2次巻線に流れる電流を調整する。
【0014】
望ましくは、前記コントローラは、前記スイッチング回路における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが、所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止する。
【0015】
また、本発明は、2次巻線と、信号用2次巻線とを備える第2コネクタに結合する第1コネクタであって、前記2次巻線に結合する1次巻線と、前記信号用2次巻線に結合する信号用1次巻線とを備える第1コネクタと、前記1次巻線に接続されたスイッチング回路と、前記信号用1次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、前記コントローラに接続される通信部と、を備え、前記コントローラは、前記スイッチング回路のスイッチングタイミングを示す同期信号を前記信号用1次巻線に出力し、前記通信部を介して取得され、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間の距離を示すコネクタ間距離であって、前記第2コネクタを備える第2電力変換器から送信されたコネクタ間距離を取得し、前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする。
【0016】
望ましくは、前記コントローラは、前記コネクタ間距離に応じて、前記1次巻線に印加される電圧または前記1次巻線に流れる電流を調整する。
【0017】
望ましくは、前記コントローラは、前記第2電力変換器から送信され、前記通信部を介して取得された制御値であって、前記第2電力変換器における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止する。
【0018】
望ましくは、前記コントローラは、前記コネクタ間距離が所定の距離閾値以上となったときは、前記スイッチング回路のスイッチングを停止する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、それぞれが巻線を備える複数のコネクタによってトランスを構成した電力変換装置について、互いに離脱した各コネクタから発せられるノイズ電磁波を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第1コントローラおよび第2コントローラによって構成される伝送電力制御モデルを示す図である。
【
図3】電力変換装置の具体的な構成例を示す図である。
【
図4】1次巻線の端子間電圧の時間波形を示す図である。
【
図5】第1キャリア波、第2キャリア波および位相誤差の時間波形を示す図である。
【
図6】第1コントローラが第1キャリア波を生成する処理のフローチャートである。
【
図7】第2コントローラが第2キャリア波を生成する処理のフローチャートである。
【
図9】同期信号処理システムの構成を示す図である。
【
図10】同期信号処理システムが実行する処理のフローチャートである。
【
図11】コネクタ間距離と、1次巻線および2次巻線の端子間電圧との関係についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】コネクタ間距離と、1次巻線および2次巻線に流れる循環電流との関係についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】応用実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。本明細書における「上」、「下」等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。これらの用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0022】
図1には、本発明の実施形態に係る電力変換装置100の構成が示されている。電力変換装置100は、第1電力変換器10および第2電力変換器30を備えている。第1電力変換器10には直流電源40が接続され、第2電力変換器30には負荷42が接続されている。第1電力変換器10は第1コネクタ14を備え、第2電力変換器30は第2コネクタ34を備えている。第1コネクタ14および第2コネクタ34が結合することで、第1電力変換器10および第2電力変換器30が結合する。第1電力変換器10および第2電力変換器30がスイッチングをすることで、直流電源40から負荷42に電力が供給される。
【0023】
第2電力変換器30は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される。この場合、負荷42は、モータおよびそれを駆動する電気回路である。第2電力変換器30は、自動車用の充電装置に備えられてよい。直流電源40は、商用電源から交流電力を取得し、その交流電力を直流電力に変換する装置であってよい。
【0024】
第1電力変換器10は、第1スイッチング回路12、第1コネクタ14、第1コントローラ16および第1通信部18を備えている。第1コネクタ14は1次巻線L1および信号用1次巻線Ls1を備えている。第2電力変換器30は、第2スイッチング回路32、第2コネクタ34、第2コントローラ36および第2通信部38を備えている。第2コネクタ34は2次巻線L2および信号用2次巻線Ls2を備えている。
【0025】
第1スイッチング回路12には、直流電源40および1次巻線L1が接続され、第1コントローラ16には信号用1次巻線Ls1が接続されている。第2スイッチング回路32には、2次巻線L2および負荷42が接続され、第2コントローラ36には信号用2次巻線Ls2が接続されている。第1コネクタ14と第2コネクタ34が接近または接触することで、1次巻線L1と2次巻線L2とが結合し、信号用1次巻線Ls1と信号用2次巻線Ls2とが結合する。すなわち、第1コネクタ14と第2コネクタ34が接近または接触することで、1次巻線L1、2次巻線L2、信号用1次巻線Ls1および信号用2次巻線Ls2を含むトランスが構成される。
【0026】
第1コントローラ16および第2コントローラ36のそれぞれは、プログラムを実行することで各機能を実現するコンピュータを備えてよい。このコンピュータは、演算によって得られるデータやプログラムを記憶するメモリを備えてよい。
【0027】
第1通信部18および第2通信部38は相互に無線通信を行う。第1通信部18は、第1コントローラ16が出力した情報を第2通信部38に無線送信する。第2通信部38は第1通信部18から受信した情報を第2コントローラ36に出力する。第2通信部38は、第2コントローラ36が出力した情報を第1通信部18に無線送信する。第1通信部18は第2通信部38から受信した情報を第1コントローラ16に出力する。このような無線通信によって、電力変換装置100の制御に必要な情報が、第1コントローラ16および第2コントローラ36によって共有されてよい。
【0028】
直流電源40は、第1スイッチング回路12に直流電圧を印加する。第1スイッチング回路12は、直流電圧をスイッチングすることで、1次巻線L1に交流電圧を印加する。1次巻線L1に印加された電圧に応じて、2次巻線L2には交流電圧が発生し、第2スイッチング回路32のスイッチングによって、交流電圧が直流電圧に変換され、この直流電圧に基づく直流電力が負荷42に供給される。
【0029】
直流電源40から負荷42に伝送される電力、すなわち、第1スイッチング回路12から第2スイッチング回路32に伝送される電力は、1次巻線L1の両端の交流電圧と、2次巻線L2の両端の交流電圧との位相差によって定まる。1次巻線L1の両端の交流電圧の位相が2次巻線L2の両端の交流電圧の位相に対して進んでいるときは、第1スイッチング回路12から第2スイッチング回路32に電力が伝送される。1次巻線L1の両端の交流電圧の位相が2次巻線L2の両端の交流電圧の位相に対して0°以上90°以下の範囲で進んでいる場合、第1スイッチング回路12から第2スイッチング回路32に伝送される電力は位相の進みが大きい程大きい。
【0030】
一方、1次巻線L1の両端の交流電圧の位相が、2次巻線L2の両端の交流電圧の位相に対して遅れているときは、第2スイッチング回路32から第1スイッチング回路12に電力が伝送される。1次巻線L1の両端の交流電圧の位相が、2次巻線L2の両端の交流電圧の位相に対して0°以上90°以下の範囲で遅れている場合、第2スイッチング回路32から第1スイッチング回路12に伝送される電力は位相の遅れが大きい程大きい。
【0031】
第1コントローラ16は、第1スイッチング回路12のスイッチング状態を制御することで、1次巻線L1の両端の交流電圧の位相を調整する。第1コントローラ16は、第1スイッチング回路12のスイッチングタイミングを示す同期信号を、信号用1次巻線Ls1に出力する。信号用2次巻線Ls2には同期信号に基づく誘導起電力が発生し、信号用2次巻線Ls2から第2コントローラ36に同期信号が入力される。第2コントローラ36は、同期信号が示すスイッチングタイミングに従って、第2スイッチング回路32のスイッチング状態を制御する。これによって、第1スイッチング回路12のスイッチングと、第2スイッチング回路32のスイッチングとが同期する。ここで、本明細書でいう同期とは、スイッチング周波数が一致していることをいい、必ずしもスイッチングの位相が一致していることを意味しない。第1スイッチング回路12のスイッチングと、第2スイッチング回路32のスイッチングとの位相差は、必ずしも目標とする伝送電力に対応する値に収束しているとは限らない。そこで、電力変換装置100では、次に説明するような伝送電力制御が実行される。
【0032】
図2には、第1コントローラ16および第2コントローラ36によって構成される伝送電力制御モデル102が示されている。伝送電力制御モデル102は、減算器50、PI制御器52および電力変換装置モデル部54を備えている。電力変換装置モデル部54は、上述の第1スイッチング回路12、第1コネクタ14、第2スイッチング回路32、第2コネクタ34および第2コントローラ36に対応している。減算器50およびPI制御器52は、第2コントローラ36に構成される。
【0033】
第2コントローラ36は、第2スイッチング回路32から負荷42に流れる出力電流の測定値である出力電流測定値Ioutを読み込む。第2コントローラ36は、出力電流測定値Ioutと電流目標値Iout
*との差異、例えば、電流目標値Iout
*から出力電流測定値Ioutを減算した電流誤差に基づいて目標位相差を求める。
【0034】
すなわち、減算器50は、電流目標値Iout
*から出力電流測定値Ioutを減算した電流誤差を求め、PI制御器52に出力する。PI制御器52は、電流誤差と、電流誤差を積分した値とを加算した値に比例定数Kを乗じることで目標位相差を求め、電力変換装置モデル部54に出力する。
【0035】
第2コントローラ36は、同期信号によって示されるスイッチング位相に対して目標位相差だけ遅れた位相で、第2スイッチング回路32をスイッチングする。一方、第1コントローラ16は、位相を調整することなく第1スイッチング回路12をスイッチングする。
【0036】
このような処理によって、第2スイッチング回路32は第1スイッチング回路12に対して目標位相差だけ遅れた位相でスイッチングすると共に、第1スイッチング回路12は第2スイッチング回路32に同期してスイッチングをする。
【0037】
ここでは、負荷42に流れる出力電流の測定値Ioutと電流目標値Iout
*との差異に基づく目標位相差が、電力変換装置モデル部54に制御値として与えられる実施形態が示された。目標位相差は、その他の物理量とその目標値との差異に基づいて求められてもよい。例えば、第2スイッチング回路32の正極端子p2および負極端子n2との間に現れる電圧と、電圧目標値との差異を制御値としてPI制御器52に入力することで目標位相差が求められてもよい。
【0038】
ここでは、減算器50およびPI制御器52が第2コントローラ36に構成される例が示された。減算器50およびPI制御器52は、第1コントローラ16に構成されてもよい。この場合、電力変換装置モデル部54は、上述の第1スイッチング回路12、第1コネクタ14、第2スイッチング回路32、第2コネクタ34および第1コントローラ16に対応する。正極端子p1に流れる入力電流の測定値Iinと電流目標値Iin
*との差異に基づく目標位相差が、電力変換装置モデル部54に制御値として与えられる。第1コントローラ16は、直流電源40から第1スイッチング回路12に流れる入力電流の測定値である入力電流測定値Iinを読み込む。第1コントローラ16は、入力電流測定値Iinと電流目標値Iin
*との差異、例えば、電流目標値Iin
*から入力電流測定値Iinを減算した電流誤差に基づいて目標位相差を求める。
【0039】
すなわち、減算器50は、電流目標値Iin
*から入力電流測定値Iinを減算した電流誤差を求め、PI制御器52に出力する。PI制御器52は、電流誤差と、電流誤差を積分した値とを加算した値に比例定数Kを乗じることで目標位相差を求め、電力変換装置モデル部54に出力する。
【0040】
第1コントローラ16は、同期信号によって示されるスイッチング位相に対して目標位相差だけ進んだ位相で、第1スイッチング回路12をスイッチングする。一方、第2コントローラ36は、位相を調整することなく第2スイッチング回路32をスイッチングする。
【0041】
本実施形態に係る電力変換装置100では、PI制御器52が出力する目標位相差の絶対値(制御値の大きさ)が、所定の位相限界値δmaxを超えるときには、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路32のスイッチングが停止される。位相限界値δmaxは、例えば、90°である。
【0042】
第1コントローラ16および第2コントローラ36は、次のような処理によって、目標位相差を共有する。減算器50およびPI制御器52が、第2コントローラ36に構成される場合には、第2コントローラ36から第2通信部38および第1通信部18を介して、第1コントローラ16に目標位相差が送信される。減算器50およびPI制御器52が、第1コントローラ16に構成される場合には、第1コントローラ16から第1通信部18および第2通信部38を介して、第2コントローラ36に目標位相差が送信される。
【0043】
第1コントローラ16および第2コントローラ36は、目標位相差の絶対値が位相限界値δmaxを超えたときに、それぞれ、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路32のスイッチングを停止する。
【0044】
伝送電力制御モデル102では、第1スイッチング回路12のスイッチングと第2スイッチング回路32のスイッチングとが同期していない場合、目標位相差が位相限界値δmaxを超える可能性が高い。したがって、例えば、第1コネクタ14と第2コネクタ34とが離れてしまい、第1スイッチング回路12のスイッチングと第2スイッチング回路32のスイッチングとが同期していない状態となったときには、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路32のスイッチングが停止する。これによって、1次巻線L1および2次巻線L2からノイズ電磁波が発生することが回避される。また、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路32に過大な電流が流れたり、過大な電圧が発生したりすることが回避される。
【0045】
図3には、電力変換装置100の具体的な構成例が示されている。第1スイッチング回路12は、入出力コンデンサC
1、上スイッチング素子S
11、下スイッチング素子S
21、中間コンデンサC
buf1、正極端子p1および負極端子n1を備えている。上スイッチング素子S
11の一端(下端)は、下スイッチング素子S
21の一端(上端)に接続され、上スイッチング素子S
11および下スイッチング素子S
21は、直列接続されている。
【0046】
スイッチング素子S11およびS21は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってよい。2つのIGBTが直列接続されるとは、一方のIGBTのエミッタ端子と他方のIGBTのコレクタ端子とが接続されることをいう。2つのMOSFETが直列接続されるとは、一方のMOSFETのソース端子が、他方のMOSFETのドレイン端子に接続されることをいう。
【0047】
中間コンデンサC
buf1は、上スイッチング素子S
11の上端と、下スイッチング素子S
21の下端との間に接続されている。1次巻線
L1の一端は正極端子p1に接続され、1次巻線L
1の他端は上スイッチング素子S
11と下スイッチング素子S
21との接続点に接続されている。入出力コンデンサC
1の一端(上端)は、1次巻線L
1の一端に接続され、入出力コンデンサC
1の他端(下端)は、下スイッチング素子S
21の下端に接続されている。入出力コンデンサC
1の下端および下スイッチング素子S
21の下端は負極端子n1に接続されている。正極端子p1と負極端子n1との間には、
図1に示された直流電源40が接続される。
【0048】
第2スイッチング回路32は、入出力コンデンサC
2、上スイッチング素子S12、下スイッチング素子S
22、中間コンデンサC
buf2、正極端子p2および負極端子n2を備えている。第2スイッチング回路32は、第1スイッチング回路12と同様の構成を有している。入出力コンデンサC
2、上スイッチング素子S
12、下スイッチング素子S
22、中間コンデンサC
buf2、正極端子p2および負極端子n2は、それぞれ、入出力コンデンサC1、上スイッチング素子S
11、下スイッチング素子S
21、中間コンデンサC
buf1、正極端子p1および負極端子n1に対応している。正極端子p2と負極端子n2との間には、
図1に示された負荷42が接続される。
【0049】
第1コントローラ16の制御によって、上スイッチング素子S11および下スイッチング素子S21は交互にオンオフする。すなわち、上スイッチング素子S11がオフからオンになると共に、下スイッチング素子S21がオンからオフになり、上スイッチング素子S11がオンからオフになると共に、下スイッチング素子S21がオフからオンになる。
【0050】
正極端子p1と負極端子n1との間に印加される入力電圧Vinと、中間コンデンサCbuf1の端子間電圧Vboost1との関係は、(数1)に示されているように、上スイッチング素子S11のオンデューティ比Dによって従って定まる。オンデューティ比Dとは、スイッチング周期に対する上スイッチング素子S11がオンになる時間の比率をいう。
【0051】
【0052】
図4には、1次巻線L
1の端子間電圧V
tr1の時間波形が示されている。上スイッチング素子S
11がオンになる時間(位相換算で2πD)の間、1次巻線L
1の端子間電圧V
tr1は、(数2)のように表される。
【0053】
【0054】
上スイッチング素子S11がオフになる時間(位相換算で2π(1-D))の間、1次巻線L1の端子間電圧Vtr1は、入力電圧Vinとなる。
【0055】
端子間電圧Vtr1の基本波成分振幅Vfは、(数3)のように表される。
【0056】
【0057】
(数3)に示される基本波成分振幅Vfは、オンデューティ比Dが0のときに2Vinであり、オンデューティ比Dが1であるときに0である。オンデューティ比Dの調整によって、1次巻線L1の端子間に印加される基本波成分振幅Vfは0~2Vinの範囲で調整される。
【0058】
第1スイッチング回路12から第2スイッチング回路32に伝送される電力Pは、(数4)で表される。
【0059】
【0060】
ただし、Voutは、正極端子p2と負極端子n2との間に現れる出力電圧である。ωは、各スイッチング素子のスイッチング角周波数である。Ltrは、1次巻線L1および2次巻線L2の自己インダクタンスをLとし、それらの間の磁気結合係数をkとした場合に、(数5)によって求められるインダクタンスである。δは、第1スイッチング回路12のスイッチング位相に対する第2スイッチング回路32のスイッチング位相の遅れである。
【0061】
【0062】
図3に示されているように、第1コントローラ16には信号用1次巻線L
s1が接続され、第2コントローラ36には信号用2次巻線L
s2が接続されている。第1コントローラ16は、第1スイッチング回路12のスイッチングタイミングを示す同期信号を信号用1次巻線L
s1に出力する。これによって、信号用2次巻線L
s2には同期信号が誘起され、同期信号が第2コントローラ36に入力される。第1コントローラ16および第2コントローラ36における同期信号に関する処理については後述する。
【0063】
第1コントローラ16は、自らの内部で生成する第1キャリア波に従って、上スイッチング素子S11および下スイッチング素子S21をスイッチングする。すなわち、第1コントローラ16は、時間波形が三角波形または鋸波形である第1キャリア波の瞬時値が、調整閾値以上であるときは、上スイッチング素子S11をオンにし、下スイッチング素子S21をオフにする。第1コントローラ16は、第1キャリア波の瞬時値が、調整閾値未満であるときは、上スイッチング素子S11をオフにし、下スイッチング素子S21をオンにする。このようなスイッチングによれば、調整閾値が小さい程、オンデューティ比Dが大きくなる。
【0064】
第2コントローラ36は、第1コントローラ16と同様、自らの内部で生成する第2キャリア波に従って、上スイッチング素子S12および下スイッチング素子S22をスイッチングする。第1キャリア波と第2キャリア波が同期しているという条件の下で、第1キャリア波の位相と第2キャリア波の位相とを異ならせることで、その位相差に応じた電力が第1電力変換器10と第2電力変換器30との間で授受される。
【0065】
第1キャリア波と第2キャリア波が同期することで、第1スイッチング回路12のスイッチングと第2スイッチング回路32のスイッチングが同期する。ここでは、第1キャリア波と第2キャリア波とを同期させる制御について説明する。
図5(a)には、第1キャリア波i
txおよび第2キャリア波i
rxの時間波形が示されている。
【0066】
図5(a)に示されているように、第1キャリア波は、0から波高値periodの範囲で鋸波形状に変化する。すなわち、第1キャリア波は0から波高値periodに達するまで時間経過に対して直線的に増加し、波高値periodに達すると共に0となる。第1コントローラ16は、
図5(b)に示されているように、第1キャリア波がperiod/2になるタイミングで立ち上がるパルスを生成することで、時間軸上で連なるパルスによる同期信号を生成する。第1コントローラ16は、信号用1次巻線L
s1および信号用2次巻線L
s2を介して、同期信号を第2コントローラ36に送信する。
【0067】
第2コントローラ36は、同期信号に含まれるパルスの立ち上がりにおいて、瞬時値がperiod/2になるように、第2キャリア波の周波数および位相を調整する。これによって、第1キャリア波と第2キャリア波が同期し、さらには、第1スイッチング回路12のスイッチングと第2スイッチング回路32のスイッチングとが同期する。
図5(c)には、第1キャリア波と第2キャリア波との位相誤差が示されている。
図5(c)には、時間経過と共に、位相誤差が小さくなっていく様子が示されている。
【0068】
第1コントローラ16または第2コントローラ36は、第1キャリア波と第2キャリア波とが同期した状態で、第1キャリア波の位相が第2キャリア波に対して目標位相だけ進むように、第1キャリア波の位相または第2キャリア波の位相を調整する。
【0069】
図6には、第1コントローラ16が第1キャリア波を生成する処理のフローチャートが示されている。第1コントローラ16は、クロック信号を発生するクロック信号発生回路を備えている。あるいは、第1コントローラ16は、他の回路からクロック信号を取得してもよい。第1コントローラ16は、最初にクロック信号の立ち上がりが検出されたか否かを判定する(S101)。第1コントローラ16は、クロック信号の立ち上がりを検出しなかったときは、この判定を繰り返す(S101)。
【0070】
クロック信号の立ち上がりを検出すると、第1コントローラ16は、第1キャリア波itxの値を1だけ増加させる(S102)。第1コントローラ16は、第1キャリア波itxの値が波高値period未満であるときは、第1キャリア波itxの値を維持し、第1キャリア波itxの値が波高値periodに達したときは、第1キャリア波itxの値を0とする(S103)。
【0071】
第1コントローラ16は、第1キャリア波itxの値が、波高値periodの半分であるという条件が成立したか否かを判定する(S104)。第1コントローラ16は、この条件が成立したときは、同期信号のパルスを信号用1次巻線Ls1に出力する(S105)。第1コントローラ16は、この条件が成立しないときは、ステップS101の処理に戻る。
【0072】
図7には、第2コントローラ36が第2キャリアを生成する処理のフローチャートが示されている。第2コントローラ36は、クロック信号を発生するクロック信号発生回路を備えている。あるいは、第2コントローラ36は、他の回路からクロック信号を取得してもよい。第2コントローラ36は、最初にクロック信号の立ち上がりが検出されたか否かを判定する(S201)。第2コントローラ36は、クロック信号の立ち上がりを検出しない場合には、この判定を繰り返す(S201)。
【0073】
クロック信号の立ち上がりを検出すると、第2コントローラ36は、同期信号のパルスが検出されたか否かを判定する(S202)。第2コントローラ36は、同期信号のパルスを検出しなかったときは、第2キャリア波irxの値を1だけ増加させる(S204)。第2コントローラ36は、第2キャリア波irxの値が波高値period未満であるときは、第2キャリア波irxの値を維持し、第2キャリア波irxの値が波高値periodに達したときは、第2キャリア波irxの値を0とする(S205)。第2コントローラ36は、同期信号のパルスを検出したときは、第2キャリア波irxの値をperiod/2に近付け、または一致させる処理を実行する(S203)。
【0074】
図7のステップS203に記載された関数sign(period/2-i
rx)の値は、period/2-i
rxが負の値であるときは-1となり、period/2-i
rxが正の値であるときは1となる。また、period/2-i
rxが0のときは0となる。すなわち、第2コントローラ36は、第2キャリア波i
rxの値がperiod/2より小さいときは、第2キャリア波i
rxの値に1を加算した値を新たな第2キャリア波i
rxの値とする。また、第2キャリア波i
rxの値がperiod/2を超えるときは、第2コントローラ36は、第2キャリア波i
rxの値から1を減算した値を新たな第2キャリア波i
rxの値とする。そして、第2キャリア波i
rxの値がperiod/2であるときは、第2キャリア波i
rxの値をそのまま維持する。第2キャリア波i
rxの値をperiod/2に近付け、または一致させた後(S203)、第2コントローラ36は、ステップS201の処理に戻る。
【0075】
図1に戻って、第1コネクタ14と第2コネクタ34との間の距離測定について説明する。第2コントローラ36は、第1コントローラ16から信号用1次巻線L
s1および信号用2次巻線L
s2を介して受信した同期信号の大きさを測定する。第2コントローラ36で受信される同期信号の大きさは、第1コネクタ14と第2コネクタ34との間のコネクタ間距離が大きい程、小さくなる。
【0076】
第2コントローラ36は、同期信号の大きさとコネクタ間距離とを対応付けた距離測定テーブルを記憶している。あるいは、第2コントローラ36では同期信号の大きさを与えることでコネクタ間距離を求める関数が演算可能となっている。第2コントローラ36は、同期信号の大きさおよび距離測定テーブルに基づいて、あるいは、同期信号の大きさを関数に代入することで、コネクタ間距離を求める。
【0077】
第2コントローラ36は、第2通信部38および第1通信部18を介して、第1コントローラ16にコネクタ間距離を送信する。第1コントローラ16および第2コントローラ36は、コネクタ間距離を記憶する。
【0078】
第1コントローラ16は、コネクタ間距離が所定の範囲内にある場合には、コネクタ間距離に応じて1次巻線L
1の端子間電圧V
tr1を制御する。すなわち、コネクタ間距離が大きい程、1次巻線L
1の端子間電圧V
tr1を小さくする。
図1に示される電力変換装置100については、(数2)および(数3)に示されているように、コネクタ間距離が大きい程、オンデューティ比Dを1に近付ける。
【0079】
第1コントローラ16と同様に、第2コントローラ36は、コネクタ間距離が所定の範囲内にある場合には、コネクタ間距離に応じて2次巻線L
2の端子間電圧V
tr2を制御する。すなわち、コネクタ間距離が大きい程、2次巻線L
2の端子間電圧V
tr2を小さくする。
図1に示される電力変換装置100については、第1コントローラ16が実行する処理と同様、第2コントローラ36は、コネクタ間距離が大きい程、オンデューティ比Dを1に近付ける。
【0080】
図8には、第1コントローラ16に構成される電圧調整器104の構成が示されている。電圧調整器104は、減算器56、傾き乗算器58、加算器60、およびリミタ62を備えている。減算器56には、コネクタ間距離L
estと、予め定められた距離上限値L
maxが入力される。減算器56は、距離上限値L
maxからコネクタ間距離L
estを減算した距離残余値を求める。傾き乗算器58は、距離残余値に傾きαを乗じて加算器60に出力する。ここで、傾きαは(数6)で表される。
【0081】
【0082】
ここで、Vmaxは、予め定められた1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の上限値である。Vminは、予め定められた1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の下限値である。Lminは、予め定められた距離下限値Lminである。
【0083】
加算器60には、距離残余値に傾きαを乗じた値と、1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の下限値Vminが入力される。加算器60は、距離残余値に傾きαを乗じた値と、1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の下限値Vminとを加算した初期電圧指令値を求め、リミタ62に出力する。リミタ62は、初期電圧指令値が、1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の下限値Vmin以上、上限値Vmax以下であるときは、初期電圧指令値をそのまま電圧指令値Vamp
*として出力する。リミタ62は、初期電圧指令値が1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の上限値Vmaxを超えるときは、上限値Vmaxを電圧指令値Vamp
*として出力する。リミタ62は、初期電圧指令値が1次巻線L1の端子間電圧Vtr1の下限値Vmin未満であるときは、下限値Vminを電圧指令値Vamp
*として出力する。
【0084】
これによって、電圧指令値Vamp
*は、コネクタ間距離の増減に対して傾き-αで増減し、下限値Vmin以上、上限値Vmax以下に制限される。
【0085】
ここでは、第1コントローラ16が、電圧調整器104によって電圧指令値Vamp
*の取り得る範囲を制限する処理について説明した。電圧調整器104は、第2コントローラ36にも構成される。第1コントローラ16が実行する処理と同様の処理によって、2次巻線L2の端子間電圧Vtr2に対する電圧指令値Vamp
*が、下限値Vmin以上、上限値Vmax以下に制限される。
【0086】
第1コントローラ16は、1次巻線L1の端子間電圧Vtr1が電圧指令値Vamp1
*に近付き、または一致するように、第1スイッチング回路12を制御し、第2コントローラ36は、2次巻線L2の端子間電圧Vtr2が電圧指令値Vamp2
*に近付き、または一致するように、第2スイッチング回路32を制御する。このような制御によれば、下限値Vmin以上、上限値Vmax以下の範囲で、コネクタ間距離が大きい程、1次巻線L1および2次巻線L2のそれぞれの端子間電圧Vtr1,Vtr2が小さくなるように、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路32が制御される。これによって、第1電力変換器10および第2電力変換器30の電気的負担が軽減される。さらには、第1コネクタ14と第2コネクタ34とが離れたときに、第1電力変換器10および第2電力変換器30から発せられるノイズ電磁波が抑制される。
【0087】
第1コントローラ16および第2コントローラ36は、同様の制御によって、1次巻線L1に流れる電流および2次巻線L2に流れる電流を、コネクタ間距離に応じて、予め定められた下限値以上、上限値以下に制限する制御を実行してもよい。この場合、1次巻線L1および2次巻線L2の端子間電圧Vtr2に対する上限値Vmaxが、電流に対する上限値Imaxに置き換えられる。また、1次巻線L1および2次巻線L2の端子間電圧Vtr2に対する下限値Vminが、電流に対する下限値Iminに置き換えられる。
【0088】
なお、第1コントローラ16は、コネクタ間距離が所定の距離閾値以上の場合には、第1スイッチング回路12のスイッチングを停止してもよい。同様に、第2コントローラ36は、コネクタ間距離が所定の距離閾値以上の場合には、第2スイッチング回路32のスイッチングを停止してもよい。
【0089】
図9には、同期信号処理システム106の構成が示されている。同期信号処理システム106は、電力変換装置100が備える構成要素のうち、同期信号に対する処理に関連する構成要素を含んでいる。同期信号処理システム106では、同期信号を第1コントローラ16で生成する処理、第1キャリア波に同期する第2キャリア波を第2コントローラ36で生成する処理、およびコネクタ間距離を第2コントローラ36で測定する処理が実行される。
【0090】
同期信号処理システム106は、第1コントローラ16に含まれる第1キャリア波生成器70および同期信号生成器72を備えている。第1キャリア波生成器70は、第1キャリア波を生成し、同期信号生成器72に出力する。第1キャリア波は、
図5(a)に示されているように、0以上、波高値period以下の範囲で時間経過と共に鋸波状に変動する鋸波形を有してよい。
図5(b)に示されているように、同期信号生成器72は、第1キャリア波が、period/2となったタイミングで立ち上がるパルスが時間軸上で連なる同期信号を生成する。
【0091】
同期信号処理システム106は、さらに、フィルタ回路74、信号用1次巻線Ls1、信号用2次巻線Ls2およびフィルタ回路76を備えている。信号用1次巻線Ls1は、フィルタ回路74を介して同期信号生成器72に接続されている。同期信号生成器72は、フィルタ回路74を介して同期信号を信号用1次巻線Ls1に出力する。フィルタ回路74は、同期信号生成器72が出力する不要な高調波成分を抑制する。信号用2次巻線Ls2は、フィルタ回路76を介して、同期信号を第2コントローラ36における比較器78に出力する。
【0092】
同期信号処理システム106は、さらに、第2コントローラ36に含まれる比較器78、第2キャリア波生成器80、ゼロ検出器82、フリップフロップ回路84、減算器86、2値化器88、積分器90、D/A変換器92およびコネクタ間距離決定器94を備えている。比較器78は、同期信号の値が、D/A変換器92から出力される基準電圧Vthよりも大きい場合にはハイ電圧をフリップフロップ回路84のS端子および第2キャリア波生成器80に出力する。比較器78は、同期信号の値が、D/A変換器92から出力される基準電圧Vth以下である場合にはロー電圧として0をフリップフロップ回路84のS端子および第2キャリア波生成器80に出力する。
【0093】
第2キャリア波生成器80は、比較器78から出力される電圧が0からハイ電圧に立ち上がった時に値がperiod/2となり、波高値(振れ幅)がperiodである鋸波形の第2キャリア波i
xr(
図5(a))を生成し、ゼロ検出器82に出力する。ゼロ検出器82は、第2キャリア波が0となったタイミングで立ち上がるパルスを、フリップフロップ回路84のR端子に出力する。これによって、フリップフロップ回路84のQ端子からの出力値Qは、第2キャリア波が0になる毎に強制的に0となり、リセットされる。
【0094】
第2キャリア波生成器80から出力された第2キャリア波ixrは、上記のように、第2スイッチング回路32をスイッチングする制御に用いられる。
【0095】
フリップフロップ回路84は、比較器78から出力される電圧が0からハイ電圧に立ち上がった時に出力値Qを1にする。このような処理によれば、第2キャリア波が0となる時間間隔である1周期の間に、同期信号のパルスが比較器78に入力されなかった場合には、その1周期の間で出力値Qは0に維持される。一方、第2キャリア波の1周期の間に、同期信号のパルスが比較器78に入力された場合には、同期信号のパルスが立ち上がった時からその1周期が終了するまでの間出力値Qは1となる。
【0096】
フリップフロップ回路84は、出力値Qを減算器86に出力する。減算器86は、0.5から出力値Qを減算し2値化器88に出力する。2値化器88は、減算器88から出力された値が負であるときは-1を積分器90に出力し、減算器88から出力された値が正であるときは1を積分器90に出力する。
【0097】
ゼロ検出器82は、第2キャリア波が0となったタイミングで立ち上がるパルスを、フリップフロップ回路84のR端子の他、積分器90にも出力する。積分器90は、ゼロ検出器82からパルスが出力されてから次のパルスが出力されるまでの1周期の間に、2値化器88から1が出力された場合には、現時点の基準電圧Vthに刻み値ΔVを加算した電圧を新たな基準電圧VthとしてD/A変換器92およびコネクタ間距離決定器94に出力する。積分器90は、ゼロ検出器82からパルスが出力されてから次のパルスが出力されるまでの1周期の間に、2値化器88から出力される値が0に維持されていた場合には、現時点の基準電圧Vthから刻み値ΔVを減算した電圧を新たな基準電圧VthとしてD/A変換器92およびコネクタ間距離決定器94に出力する。D/A変換器92は、積分器90から出力されたディジタル信号の基準電圧Vthをアナログ値に変換し、比較器78に出力する。
【0098】
コネクタ間距離決定器94は、積分器90による積分出力値に対してコネクタ間距離を対応付けた距離測定テーブルを記憶している。あるいは、コネクタ間距離決定器94では、積分出力値を与えることでコネクタ間距離を求める関数が演算可能となっている。コネクタ間距離決定器94は、積分出力値および距離測定テーブルに基づいて、あるいは、積分出力値を関数に代入することで、コネクタ間距離を求め、同期信号処理システム106から出力する。
【0099】
図10には、同期信号処理システム106が実行する処理のフローチャートが示されている。同期信号処理システム106は、最初に第2キャリア波i
rxの値が0であるという条件が成立したか否かを判定する(S301)。第2キャリア波i
rxの値が0であるという条件が成立しないときは、同期信号処理システム106は、第2コントローラ36で同期信号のパルスが受信されたか否かを判定する(S302)。同期信号のパルスが受信されていないときは、同期信号処理システム106は、ステップS301の処理に戻る。 一方、同期信号のパルスが受信されたときは、フリップフロップ回路84の出力値Qが1に設定され(S303)、同期信号処理システム106は、ステップS301の処理に戻る。
【0100】
第2キャリア波irxの値が0であるという条件が成立したときは、同期信号処理システム106は、フリップフロップ回路84の出力値Qが0であるという条件が成立するか否かを判定する(S304)。同期信号処理システム106は、フリップフロップ回路84の出力値Qが0であるという条件が成立するときは、基準電圧Vthから刻み値を減算した電圧を新たな基準電圧Vthとし(S305)、出力値Qが0であるという条件が成立しないときは、基準電圧Vthに刻み値を加算した電圧を新たな基準電圧Vthとする(S307)。基準電圧Vthの値が新たな値とされた後(S305、S307)、フリップフロップ回路84の出力値Qが0に設定され(S306)、同期信号処理システム106は、ステップS301の処理に戻る。
【0101】
このような構成および処理によれば、第1コントローラ16から第2コントローラ36に送信された同期信号が立ち上がるタイミングで、波高値(振れ幅)periodの半分の値を有する鋸波形の第2キャリア波が生成される。また、第2キャリア波の1周期の間に、同期信号の値が基準電圧Vthを超えたときには、積分出力値および基準電圧Vthが刻み幅ΔVだけ増加し、第2キャリア波の1周期の間に、同期信号の値が基準電圧Vth以下であるときには、積分出力値および基準電圧Vthが刻み幅ΔVだけ減少する。これによって、積分出力値および基準電圧Vthは、同期信号の包絡線に近似された値となる。したがって、コネクタ間距離決定器94によって、積分出力値に応じたコネクタ間距離が求められることで、同期信号の大きさに基づくコネクタ間距離が測定される。
【0102】
図11には、コネクタ間距離と、1次巻線L
1および2次巻線L
2の端子間電圧との関係についてのシミュレーション結果が示されている。横軸は、コネクタ間距離を示し、縦軸は1次巻線L
1および2次巻線L
2の端子間電圧を示す。本シミュレーションでは、1次巻線L
1および2次巻線L
2の端子間電圧は等しい。黒丸でプロットされている特性は、1次巻線L
1および2次巻線L
2の端子間電圧に対する電圧指令値V
amp
*を、コネクタ間距離に応じて制御した場合の特性である。四角形でプロットされている特性は、1次巻線L
1および2次巻線L
2の端子間電圧に対する電圧指令値V
amp
*を、コネクタ間距離に応じて制御しない場合の特性である。このシミュレーションには、コネクタ間距離が増加した場合であっても、電圧指令値V
amp
*の制御によって各巻線における端子間電圧が低減され、放射されるノイズ電磁波が抑制されることが示されている。
【0103】
図12には、コネクタ間距離と、1次巻線L
1および2次巻線L
2に流れる循環電流との関係についてのシミュレーション結果が示されている。横軸は、コネクタ間距離を示し、縦軸は1次巻線L
1および2次巻線L
2に流れる循環電流を示す。ここで、循環電流とは、電力伝送に寄与することなく各巻線に流れる電流をいう。循環電流が小さい程、力率が大きい。本シミュレーションでは、1次巻線L
1および2次巻線L
2に流れる循環電流は等しい。
【0104】
黒丸でプロットされている特性は、1次巻線L1および2次巻線L2の端子間電圧に対する電圧指令値Vamp
*を、コネクタ間距離に応じて制御した場合の循環電流の特性である。四角形でプロットされている特性は、1次巻線L1および2次巻線L2の端子間電圧に対する電圧指令値Vamp
*を、コネクタ間距離に応じて制御しない場合の循環電流の特性である。このシミュレーションには、コネクタ間距離が増加した場合であっても、電圧指令値Vamp
*の制御によって各巻線に流れる循環電流が低減され、力率が向上することが示されている。
【0105】
図13には、応用実施形態に係る電力変換装置108の構成が示されている。電力変換装置108は、第1電力変換器10aおよび第2電力変換器30aのそれぞれにおいて、3つのスイッチングブリッジおよび中間コンデンサを並列に接続したものである。各スイッチングブリッジは、直列に接続された上スイッチング素子Saおよび下スイッチング素子Sbから構成される。
【0106】
電力変換装置108の具体的な構成について説明する。第1電力変換器10aは、第1スイッチング回路12aおよび第1コネクタ14aを備えている。第1スイッチング回路12aは、入出力コンデンサC1と、並列に接続されたU相スイッチングブリッジ、V相スイッチングブリッジ、W相スイッチングブリッジおよび中間コンデンサCbuf1を備えている。また、第1スイッチング回路12aは、正極端子p1および負極端子n1を備えている。U相スイッチングブリッジ、V相スイッチングブリッジおよびW相スイッチング素子のそれぞれは、直列に接続された上スイッチング素子Saおよび下スイッチング素子Sbを備えている。
【0107】
第1コネクタ14aは、U相1次巻線Lu、V相1次巻線Lv、W相1次巻線Lwおよび信号用1次巻線Ls1を備えている。U相1次巻線Luの一端は、U相スイッチングブリッジにおける上スイッチング素子Saと下スイッチング素子Sbの接続点に接続されている。V相1次巻線Lvの一端は、V相スイッチングブリッジにおける上スイッチング素子Saと下スイッチング素子Sbの接続点に接続されている。W相1次巻線Lwの一端は、W相スイッチングブリッジにおける上スイッチング素子Saと下スイッチング素子Sbの接続点に接続されている。
【0108】
U相1次巻線Lu、V相1次巻線LvおよびW相1次巻線Lwのそれぞれの他端は、正極端子p1に共通に接続されている。各スイッチングブリッジの下スイッチング素子Sbの下端は負極端子n1に接続されている。正極端子p1と負極端子n1との間には、入出力コンデンサC1が接続されている。
【0109】
第1電力変換器10aは、さらに、第1コントローラ16aおよび第1通信部18aを備えている。信号用1次巻線Ls1は、第1コントローラ16aに接続されている。
【0110】
第2電力変換器30aは、第2スイッチング回路32aおよび第2コネクタ34aを備えている。第1スイッチング回路12aは、入出力コンデンサC2と、並列に接続されたX相スイッチングブリッジ、Y相スイッチングブリッジ、Z相スイッチングブリッジおよび中間コンデンサCbuf2を備えている。また、第2スイッチング回路32aは、正極端子p2および負極端子n2を備えている。X相スイッチングブリッジ、Y相スイッチングブリッジおよびZ相スイッチング素子のそれぞれは、直列に接続された上スイッチング素子Saおよび下スイッチング素子Sbを備えている。
【0111】
第2コネクタ34aは、X相2次巻線Lx、Y相2次巻線Ly、Z相2次巻線Lz、および信号用2次巻線Ls2を備えている。第2電力変換器30aは、さらに、第2コントローラ36aおよび第2通信部38aを備えている。信号用2次巻線Ls2は、第2コントローラ36aに接続されている。
【0112】
第2電力変換器30aは、第1電力変換器10aと同様の構成を有している。X相スイッチングブリッジ、Y相スイッチングブリッジ、Z相スイッチングブリッジおよび中間コンデンサCbuf2は、それぞれ、U相スイッチングブリッジ、V相スイッチングブリッジ、W相スイッチングブリッジおよび中間コンデンサCbuf1に対応している。X相2次巻線Lx、Y相2次巻線LyおよびZ相2次巻線Lzは、それぞれ、U相1次巻線Lu、V相1次巻線LvおよびW相1次巻線Lwに対応している。入出力コンデンサC2、正極端子p2および負極端子n2は、それぞれ、入出力コンデンサC1、正極端子p1および負極端子n1に対応している。第2コントローラ36a、信号用2次巻線Ls2および第2通信部38aは、それぞれ、第1コントローラ16a、信号用1次巻線Ls1および第1通信部18aに対応している。
【0113】
第1コネクタ14aと第2コネクタ34aとが結合することで、U相1次巻線LuとX相2次巻線Lxとが結合し、V相1次巻線LvとY相2次巻線Lyとが結合する。さらに、W相1次巻線LwとZ相2次巻線Lzとが結合し、信号用1次巻線Ls1と信号用2次巻線Ls2とが結合する。
【0114】
第1電力変換器10aにおける正極端子p1と負極端子n1との間には、
図1に示された直流電源40が接続される。第2電力変換器30aにおける正極端子p2と負極端子n2との間には、
図1に示された負荷42が接続される。
【0115】
U相スイッチングブリッジおよびX相スイッチングブリッジは、それぞれ、電力変換装置100における1次側の第1スイッチングブリッジおよび2次側の第2スイッチングブリッジと同様の動作をする。ここで、第1スイッチングブリッジは、上スイッチング素子S11および下スイッチング素子S21から構成されるスイッチングブリッジである。第2スイッチングブリッジは、上スイッチング素子S12および下スイッチング素子S22から構成されるスイッチングブリッジである。V相スイッチングブリッジおよびY相スイッチングブリッジもまた、それぞれ、第1スイッチングブリッジおよび第2スイッチングブリッジと同様の動作をし、W相スイッチングブリッジおよびZ相スイッチングブリッジもまた、それぞれ、第1スイッチングブリッジおよび第2スイッチングブリッジと同様の動作をする。
【0116】
ただし、U相スイッチングブリッジおよびX相スイッチングブリッジと、V相スイッチングブリッジおよびY相スイッチングブリッジとでは、スイッチングに60°以上、120°以下の位相差があってよい。同様に、V相スイッチングブリッジおよびY相スイッチングブリッジと、W相スイッチングブリッジおよびZ相スイッチングブリッジとでは、スイッチングに60°以上、120°以下の位相差があってよい。
【0117】
応用実施形態に係る電力変換装置108によれば、電力変換装置100と同様、第1コネクタ14aと第2コネクタ34aとが離れたときに、各1次巻線および各2次巻線からノイズ電磁波が発生することが回避される。また、第1スイッチング回路12aおよび第2スイッチング回路32aに過大な電流が流れたり、過大な電圧が発生したりすることが回避される。さらに、電力変換装置100に比べて、各スイッチング素子の耐電圧または許容電流を大きくしなくても、より大きい電力を直流電源40から負荷42に伝送することができる。これによって、耐電圧または許容電流を特別に大きくした高価なスイッチング素子を用いる必要がなくなり、製造コストが抑制される。
【0118】
上記では、第1電力変換器(10,10a)に直流電源40が接続され、第2電力変換器(30,30a)に負荷42が接続された実施形態が示された。すなわち、第1電力変換器(10,10a)から第2電力変換器(30,30b)に電力が伝送される電力変換システム(100,108)が示された。電力変換システム(100,108)では、第2電力変換器(30,30a)に直流電源40が接続され、第1電力変換器(10,10a)に負荷42が接続されてもよい。すなわち、第2電力変換器(30,30a)から第1電力変換器(10,10a)に電力が伝送されてもよい。
【0119】
この場合、第1電力変換器(10,10a)が実行する処理として説明された処理は、第2電力変換器(30,30a)が実行し、第2電力変換器(30,30a)が実行する処理として説明された処理は、第1電力変換器(10,10a)が実行する。
【0120】
[本発明の構成]
構成1:
1次巻線および信号用1次巻線を備える第1コネクタと、
前記1次巻線に結合する2次巻線、および前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線を備える第2コネクタと、
前記1次巻線に接続された第1スイッチング回路と、
前記2次巻線に接続された第2スイッチング回路と、
前記信号用1次巻線に接続され、前記第1スイッチング回路をスイッチングする第1コントローラと、
前記信号用2次巻線に接続され、前記第2スイッチング回路をスイッチングする第2コントローラと、を備え、
前記第1コントローラは、前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して、同期信号を前記第2コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、
前記同期信号に基づいて、前記第1スイッチング回路のスイッチングに同期させて、前記第2スイッチング回路をスイッチングし、
前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする電力変換装置。
構成2:
構成1に記載の電力変換装置であって、
前記第1コントローラに接続される第1通信部と、
前記第2コントローラに接続され、前記第1通信部との間で無線通信をする第2通信部と、を備え、
前記第2コントローラは、前記第1通信部および前記第2通信部との間の無線通信を介して、前記コネクタ間距離を前記第1コントローラに送信し、
前記第1コントローラおよび前記第2コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、それぞれ、前記第1スイッチング回路および前記第2スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換装置。
構成3:
構成2に記載の電力変換装置であって、
前記第1コントローラおよび前記第2コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、それぞれ、前記1次巻線および前記2次巻線に印加される電圧、または前記1次巻線および前記2次巻線に流れる電流を調整することを特徴とする電力変換装置。
構成4:
構成2または3に記載の電力変換装置であって、
前記第1コントローラおよび前記第2コントローラは、
前記コネクタ間距離が所定の距離閾値以上となったときは、それぞれ、前記第1スイッチング回路および前記第2スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換装置。
構成5:
構成2から4のいずれか1つに記載の電力変換装置であって、
前記第2コントローラは、
前記第2スイッチング回路における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値を、前記第1通信部および前記第2通信部との間の無線通信を介して、前記第1コントローラに送信し、
前記第1コントローラは、
前記制御値の大きさが、所定の閾値を超えた場合には、前記第1スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換装置。
構成6:
1次巻線と、信号用1次巻線とを備える第1コネクタに結合する第2コネクタであって、 前記1次巻線に結合する2次巻線と、前記信号用1次巻線に結合する信号用2次巻線とを備える第2コネクタと、
前記2次巻線に接続されたスイッチング回路と、
前記信号用2次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記信号用1次巻線および前記信号用2次巻線を介して取得される同期信号に基づくタイミングで、前記スイッチング回路をスイッチングし、
前記同期信号の大きさに基づいて、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間のコネクタ間距離を測定することを特徴とする電力変換器。
構成7:
構成6に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換器。
構成8:
構成7に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記2次巻線に印加される電圧または前記2次巻線に流れる電流を調整することを特徴とする電力変換器。
構成9:
構成6から8のいずれか1つに記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離が所定の距離閾値以上となったときは、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
構成10:
構成6から9のいずれか1つに記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記スイッチング回路における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが、所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
構成11:
2次巻線と、信号用2次巻線とを備える第2コネクタに結合する第1コネクタであって、 前記2次巻線に結合する1次巻線と、前記信号用2次巻線に結合する信号用1次巻線とを備える第1コネクタと、
前記1次巻線に接続されたスイッチング回路と、
前記信号用1次巻線に接続され前記スイッチング回路をスイッチングするコントローラと、
前記コントローラに接続される通信部と、を備え、
前記コントローラは、
前記スイッチング回路のスイッチングタイミングを示す同期信号を前記信号用1次巻線に出力し、
前記通信部を介して取得され、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間の距離を示すコネクタ間距離であって、前記第2コネクタを備える第2電力変換器から送信されたコネクタ間距離を取得し、
前記コネクタ間距離に応じて、前記スイッチング回路のスイッチング状態を制御することを特徴とする電力変換器。
構成12:
構成11に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離に応じて、前記1次巻線に印加される電圧または前記1次巻線に流れる電流を調整することを特徴とする電力変換器。
構成13:
構成11または12に記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記コネクタ間距離が所定の距離閾値以上となったときは、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
構成14:
請求項11から13のいずれか1つに記載の電力変換器であって、
前記コントローラは、
前記第2電力変換器から送信され、前記通信部を介して取得された制御値であって、前記第2電力変換器における電圧または電流を表す物理量と目標値との差異に基づき求められた制御値の大きさが所定の閾値を超えた場合には、前記スイッチング回路のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
【符号の説明】
【0121】
10,10a 第1電力変換器、12,12a 第1スイッチング回路、14,14a 第1コネクタ、16,16a 第1コントローラ、18,18a 第1通信部、30,30a 第2電力変換器、32,32a 第2スイッチング回路、34,34a 第2コネクタ、36,36a 第2コントローラ、38,38a 第2通信部、40 直流電源、42 負荷、50,56,86 減算器、52 PI制御器、54 電力変換装置モデル部、58 傾き乗算器、60 加算器、62 リミタ、70 第1キャリア波生成器、72 同期信号生成器、74,76 フィルタ回路、78 比較器、80 第2キャリア波生成器、82 ゼロ検出器、84 フリップフロップ回路、88 2値化器、90 D/A変換器、94 コネクタ間距離決定器、L1 1次巻線、L2 2次巻線、Ls1 信号用1次巻線、Ls2 信号用2次巻線、p1,p2 正極端子、n1,n2 負極端子、C1,C2 入出力コンデンサ、Cbuf1,Cbuf2 中間コンデンサ、S11,S21,Sa 上スイッチング素子、S12,S22,Sb 下スイッチング素子、48 電流計、100,108 電力変換装置、102 伝送電力制御モデル、104 電圧調整器、106 同期信号処理システム。