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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016686
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ドラムブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20240131BHJP
   F16D 51/24 20060101ALI20240131BHJP
   F16D 65/09 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D51/24
F16D65/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118989
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇
(72)【発明者】
【氏名】西口 佳孝
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA03
3J058AA08
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA24
3J058AA28
3J058AA37
3J058BA60
3J058CA18
3J058DB29
3J058FA05
(57)【要約】
【課題】制動トルクの算出精度を向上させることができるドラムブレーキを提供する。
【解決手段】ドラムブレーキは、回転するブレーキドラムと、ブレーキドラムを制動する制動シュー11Lと、制動シュー11Lの一方側端部111Lをブレーキドラム側に押すピストン12と、他方側端部112Lと接触して配置されるアンカー13と、ブレーキドラムに制動シュー11Lが押し付けられるときに、アンカー13が他方側端部112Lから受ける荷重に応じた信号を出力するセンサ部と、センサ部の出力に基づいて求めた荷重および基準位置から制動シュー11Lとアンカー13との接触点までの距離を用いて、制動トルクの演算を行う演算装置15と、を備える。センサ部は、接触点の初期設定位置に対する変動量に応じた信号を出力し、演算装置15は、制動トルクの演算において、距離情報として、センサ部の出力に基づいて求めた変動量を用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムブレーキであって、
回転するブレーキドラムと、
前記ブレーキドラムの内側に配置され、前記ブレーキドラムの周方向での一方側端部(111L)および他方側端部(112L)を有し、前記ブレーキドラムに押し付けられることで、前記ブレーキドラムを制動する制動シュー(11L)と、
前記制動シューの前記一方側端部を前記ブレーキドラム側に押して、前記制動シューを前記ブレーキドラムに押し付ける押付部(12)と、
前記制動シューの前記他方側端部と接触して配置されるアンカー(13)と、
前記ブレーキドラムに前記制動シューが押し付けられるときに、前記アンカーが前記制動シューの前記他方側端部から受ける荷重に応じた信号を出力するセンサ部(31)と、
前記センサ部の出力に基づいて求めた前記荷重と、基準位置から前記制動シューと前記アンカーとの接触点(21L)までの距離と、を用いて、前記制動シューが前記ブレーキドラムに与える制動トルクの演算を行う演算部(15、32)と、を備え、
前記センサ部は、前記接触点の初期設定位置に対する変動量に応じた信号、または、前記接触点の現在位置に応じた信号を出力し、
前記演算部は、前記制動トルクの演算において、前記距離に関する情報として、前記センサ部の出力に基づいて求めた前記変動量または前記現在位置を用いる、ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記センサ部は、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の内側に配置され、前記アンカーに生じる歪に応じた信号を出力する内側歪センサ(SLI)と、前記接触点よりも前記径方向の外側に配置され、前記アンカーに生じる歪を検出する外側歪センサ(SLO)と、を有し、
前記演算部は、前記内側歪センサの出力と前記外側歪センサの出力との差分である差分出力と、前記差分出力と前記変動量との関係と、に基づいて、前記変動量を求める、請求項1に記載のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記演算部は、前記内側歪センサの出力と前記外側歪センサの出力との合計である合成出力と、前記合成出力と前記荷重との関係と、に基づいて、前記荷重を求める、請求項2に記載のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記センサ部は、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の内側に配置され、前記アンカーに生じる歪に応じた信号を出力する内側歪センサ(SLI)と、前記接触点よりも前記径方向の外側に配置され、前記アンカーに生じる歪を検出する外側歪センサ(SLO)と、を有し、
前記演算部は、前記内側歪センサの出力と前記外側歪センサの出力との合計である合成出力と、前記合成出力と前記荷重との関係と、に基づいて、前記荷重を求めるとともに、前記内側歪センサの出力と前記外側歪センサの出力との差分である差分出力と、求めた前記荷重の大きさに応じた前記差分出力と前記変動量との関係と、に基づいて、前記変動量を求める、請求項1に記載のドラムブレーキ。
【請求項5】
前記ブレーキドラムの軸心方向が前記アンカーの厚さ方向であり、
前記アンカーは、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の内側に配置され、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する内側貫通孔(61)と、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の外側に配置され、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する外側貫通孔(62)と、を有し、
前記内側歪センサは、前記内側貫通孔の周辺部に設けられ、
前記外側歪センサは、前記外側貫通孔の周辺部に設けられる、請求項2または4に記載のドラムブレーキ。
【請求項6】
前記ブレーキドラムの軸心方向が前記アンカーの厚さ方向であり、
前記アンカーは、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の内側に配置され、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する内側貫通孔(61)と、前記接触点よりも前記ブレーキドラムの径方向の外側に配置され、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する外側貫通孔(62)と、を有し、
前記内側歪センサは、前記内側貫通孔の内壁面のうち前記厚さ方向での中央部に設けられ、
前記外側歪センサは、前記外側貫通孔の内壁面のうち前記厚さ方向での中央部に設けられる、請求項2または4に記載のドラムブレーキ。
【請求項7】
前記センサ部は、前記アンカーに生じる歪に応じた信号を出力する歪センサ(S)を有し、
前記演算部は、前記押付部が前記制動シューを前記ブレーキドラムに押し付ける力に関する物理量の計測値と、前記歪センサの出力と、前記物理量、前記歪センサの出力および前記接触点の位置の関係と、に基づいて、前記現在位置を求める、請求項1に記載のドラムブレーキ。
【請求項8】
前記ブレーキドラムの軸心方向が前記アンカーの厚さ方向であり、
前記アンカーは、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する貫通孔を有し、
前記歪センサは、前記貫通孔の周辺部に設けられる、請求項7に記載のドラムブレーキ。
【請求項9】
前記ブレーキドラムの軸心方向が前記アンカーの厚さ方向であり、
前記アンカーは、前記厚さ方向で前記アンカーを貫通する貫通孔を有し、
前記歪センサは、前記貫通孔の内壁面のうち前記厚さ方向での中央部に設けられる、請求項7に記載のドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキにおいて、車両制御を高い応答性で実現するために、車輪制動時の制動トルクの演算が行われる。特許文献1には、ドラムブレーキにおいて、制動シューからアンカーにかかる荷重をセンサによって求め、求めた荷重を制動トルクの演算に用いることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-528527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制動トルクの演算は、アンカーが制動シューから受ける荷重と、基準位置から制動シューとアンカーとの接触点までの距離と、を用いて行われる。荷重として、センサ部の出力に基づいて求めた数値が用いられる。距離として、予め設定された数値、すなわち、固定値が用いられる。
【0005】
この場合、制動シューの摩耗、ドラムブレーキの製造の際の組付けバラツキ等によって、制動シューとアンカーとの接触点の位置が初期設定位置から変動すると、距離の実際の大きさが変動する。このため、制動トルクの算出精度が悪化する。なお、この問題は、ドラムブレーキが車両以外の用途に用いられる場合においても生じる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、制動トルクの算出精度を向上させることができるドラムブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
ドラムブレーキは、
回転するブレーキドラムと、
ブレーキドラムの内側に配置され、ブレーキドラムの周方向での一方側端部(111L)および他方側端部(112L)を有し、ブレーキドラムに押し付けられることで、ブレーキドラムを制動する制動シュー(11L)と、
制動シューの一方側端部をブレーキドラム側に押して、制動シューをブレーキドラムに押し付ける押付部(12)と、
制動シューの他方側端部と接触して配置されるアンカー(13)と、
ブレーキドラムに制動シューが押し付けられるときに、アンカーが制動シューの他方側端部から受ける荷重に応じた信号を出力するセンサ部(31)と、
センサ部の出力に基づいて求めた荷重と、基準位置から制動シューとアンカーとの接触点(21L)までの距離と、を用いて、制動シューがブレーキドラムに与える制動トルクの演算を行う演算部(15、32)と、を備え、
センサ部は、接触点の初期設定位置に対する変動量に応じた信号、または、接触点の現在位置に応じた信号を出力し、
演算部は、制動トルクの演算において、距離に関する情報として、センサ部の出力に基づいて求めた変動量または現在位置を用いる。
【0008】
このように、演算部は、制動トルクの演算において、センサ部の出力に基づいて求めた変動量を用いる。これにより、接触点の位置が変動したとき、演算に用いる距離を初期値から変動後の数値に補正することができる。または、演算部は、制動トルクの演算において、センサ部の出力に基づいて求めた現在位置を用いる。これにより、接触点の位置が変動したとき、演算に用いる距離を適切な数値に補正することができる。よって、制動トルクの演算に用いる距離として、予め設定された数値のみを用いる場合と比較して、制動トルクの算出精度を向上させることができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態のドラムブレーキの正面図である。
図2図1のドラムブレーキにおける制動トルクを説明するための図である。
図3図1中のアンカーの内部透視図である。
図4図1中のアンカーの拡大図である。
図5図4のV―V線断面図である。
図6】第1ずれ量を検出するための回路を示す図である。
図7】第1ずれ量と差分出力との関係を示す図である。
図8】第2ずれ量を検出するための回路を示す図である。
図9】第1荷重を検出するための回路を示す図である。
図10】第1ずれ量と合成出力との関係を示す図である。
図11】第2荷重を検出するための回路を示す図である。
図12】演算部が行う制動トルクの演算内容を示す図である。
図13】第2実施形態のドラムブレーキの正面図である。
図14】第2実施形態のアンカーの内部透視図であって、第1接触点の位置が異なるときの状態を示す図である。
図15】第1接触点の位置毎におけるモータ電流と第1歪センサのセンサ出力との関係を示す図である。
図16】第3実施形態のアンカーの一部および第1制動シューの一部の拡大図である。
図17】第4実施形態のアンカーの一部および第1制動シューの一部の拡大図である。
図18図17中のXVIII-XVIII線断面図である。
図19図18と同じ断面図であって、作用点に荷重がかかるときの貫通孔の内壁面に生じる歪の大きさを示す図である。
図20】第4実施形態における歪センサのアンカーへの組み付け方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態のドラムブレーキ10は、車輪を制動する車両用ブレーキである。ドラムブレーキ10は、リーディングトレーリングタイプであり、図1に示されないブレーキドラムと、第1制動シュー11Lと、第2制動シュー11Rと、ピストン12と、アンカー13と、バックプレート14と、図1に示されないセンサ部と、演算装置15とを有する。
【0013】
ブレーキドラムは、車輪とともに回転する環状の回転体である。ブレーキドラムは、中心Oの位置を回転軸心として回転する。ブレーキドラムは、第1制動シュー11Lおよび第2制動シュー11Rの外周側に配置される。
【0014】
第1制動シュー11Lと第2制動シュー11Rのそれぞれは、ブレーキドラムの内側に配置される。第1制動シュー11Lと第2制動シュー11Rのそれぞれは、ブレーキドラムに押し付けられることで、ブレーキドラムを制動する。第1制動シュー11Lと第2制動シュー11Rのそれぞれは、ブレーキドラムの周方向に沿って延びる円弧形状であり、周方向一方側の一方側端部111L、111Rおよび周方向他方側の他方側端部112L、112Rを有する。第1制動シュー11Lと第2制動シュー11Rのそれぞれの外側には、摩擦材113L、113Rが設けられている。
【0015】
ピストン12は、第1制動シュー11Lの一方側端部111Lと、第2制動シュー11Rの一方側端111R部との間に配置される。ピストン12は、第1制動シュー11Lの一方側端部111Lと第2制動シュー11Rの一方側端部111Rとをブレーキドラム側に押して、第1制動シュー11Lと第2制動シュー11Rとをブレーキドラムに押し付ける押付部である。ピストン12は、油圧または電動モータによって作動する。なお、ピストン12に替えて、他の押付部が用いられてもよい。
【0016】
アンカー13は、第1制動シュー11Lの他方側端部112Lと、第2制動シュー11Rの他方側端部112Rとの間に、それぞれに接して配置される。第1制動シュー11Lの一方側端部111Lと第2制動シュー11Rの一方側端部111Rとをピストン12がブレーキドラム側に押す。このとき、図2に示すように、アンカー13は、第1制動シュー11Lの他方側端部112Lから第1荷重Fを受けるとともに、第2制動シュー11Rの他方側端部112Rから第2荷重Fを受ける。
【0017】
バックプレート14は、ピストン12およびアンカー13を保持する板状部材である。バックプレート14の中心Oの位置は、ブレーキドラムの中心Oの位置と一致している。したがって、図1および図2中の中心Oは、ブレーキドラムとバックプレート14のそれぞれの中心を示している。
【0018】
センサ部は、アンカー13に内蔵されている。センサ部は、図2に示す第1荷重Fおよび第2荷重Fを検出するとともに、第1制動シュー11Lとアンカー13との第1接触点21Lの第1ずれ量および第2制動シュー11Rとアンカー13との第2接触点21Rの第2ずれ量を検出するためのものである。センサ部は、第1荷重Fと第2荷重Fのそれぞれに応じた信号を出力するとともに、第1ずれ量と第2ずれ量のそれぞれに応じた信号を出力する。
【0019】
演算装置15は、第1制動シュー11Lおよび第2制動シュー11Rがブレーキドラムに与える制動トルクの演算を行う。演算装置15は、コンピュータを有しており、演算部の一部を構成する。演算装置15は、入出力線16を介して、アンカー13に内蔵されたセンサ部と接続されている。センサ部から出力された信号が、演算装置15に入力される。
【0020】
ブレーキドラムの回転時に、ピストン12が第1、第2制動シュー11L、11Rをブレーキドラムに押し付ける。このとき、図2に示すように、ブレーキドラムの回転方向に対して反対の方向に、ブレーキドラムに対して制動トルクTが与えられる。
【0021】
制動トルクTは、図2に示す第1距離C、第1荷重F、第2距離Cおよび第2荷重Fを用いて、下記の式(1)によって算出される。
【0022】
T=C・F-C・F 式(1)
第1距離Cは、基準位置としての仮想直線VL1から第1接触点21Lまでの重力方向での距離である。仮想直線VL1は、図2に示す平面において、中心Oの位置を通り、水平方向に直線状に延びる仮想線である。図2に示す平面は、第1接触点21Lと第2接触点21Rのそれぞれの初期設定位置を通り、ブレーキドラムの回転軸心に垂直な仮想平面である。図2の上下方向が重力方向であり、図2の左右方向が水平方向である。第1荷重Fは、第1制動シュー11Lからアンカー13が受ける荷重である。第2距離Cは、基準位置としての仮想直線VL1から第2接触点21Rまでの重力方向での距離である。第2荷重Fは、第2制動シュー11Rからアンカー13が受ける荷重である。
【0023】
演算装置15が行う制動トルクTの演算において、式(1)中の第1荷重Fと第2荷重Fのそれぞれとして、センサ部の出力に基づいて求めた数値が用いられる。式(1)中の第1距離Cと第2距離Cのそれぞれとして、予め設定された数値、すなわち、固定値が用いられる。この場合、第1制動シュー11Lの摩耗、ドラムブレーキの製造の際の組付けバラツキ等によって、第1接触点21Lの位置が変動すると、第1距離Cの実際の大きさが変動する。同様の理由により、第2接触点21Rの位置が変動すると、第2距離Cの実際の大きさが変動する。このため、制動トルクTの算出精度が悪化する。
【0024】
そこで、本実施形態では、センサ部は、第1接触点21Lの第1ずれ量ΔCと、第2接触点21Rの第2ずれ量ΔCとのそれぞれに応じた信号を出力する。第1ずれ量ΔCは、第1接触点21Lの初期設定位置に対する重力方向での変動量である。第2ずれ量ΔCは、第2接触点21Rの初期設定位置に対する重力方向での変動量である。
【0025】
演算装置15は、第1距離Cとして、第1距離Cの初期値CLIと、センサ部の出力に基づいて求めた第1ずれ量ΔCとを用いるとともに、第2距離Cとして、第2距離Cの初期値CRIと、センサ部の出力に基づいて求めた第2ずれ量ΔCとを用いて、式(2)により、制動トルクTを算出する。
【0026】
T=(CLI±ΔC)F-(CRI±ΔC)F 式(2)
このとき、式(2)中の第1荷重Fとして、センサ部の出力に基づいて求めた数値が用いられる。式(2)中の第2荷重Fとして、センサ部の出力に基づいて求めた数値が用いられる。第1距離Cの初期値CLIは、予め設定される数値であり、演算装置15が有する記憶部に記憶されている。第2距離Cの初期値CRIは、予め設定される数値であり、記憶部に記憶されている。
【0027】
このように、演算装置15は、制動トルクTの演算において、第1距離Cおよび第2距離Cに関する情報として、センサ部の出力に基づいて求めた第1ずれ量ΔCおよび第2ずれ量ΔCを用いる。これにより、第1接触点21Lおよび第2接触点21Rの位置が変動したとき、第1距離Cおよび第2距離Cを初期値から変動後の数値に補正することができる。よって、第1距離Cおよび第2距離Cとして、初期値のみを用いる場合と比較して、制動トルクTの算出精度を向上させることができる。
【0028】
(センサ部の構成)
図3に示すように、アンカー13の内部には、センサ部31と基板32とが設けられている。センサ部31は、4つの歪センサSLI、SLO、SRI、SROを有する。4つの歪センサSLI、SLO、SRI、SROは、第1内側歪センサSLI、第1外側歪センサSLO、第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROである。4つの歪センサSLI、SLO、SRI、SROのそれぞれは、ワイヤー33を介して、基板32と接続されている。基板32は、図1中の入出力線16を介して、演算装置15と接続される。基板32は、電子部品および配線を有する。基板32は、演算部の一部を構成する。
【0029】
第1内側歪センサSLIおよび第1外側歪センサSLOは、第1制動シュー11Lからの第1荷重Fによってアンカー13に生じる歪を検出するためのセンサである。第1内側歪センサSLIおよび第1外側歪センサSLOは、アンカー13のうち第1制動シュー11L側の半分の領域内に配置される。第1内側歪センサSLIは、第1接触点21Lよりもブレーキドラムの径方向の内側に配置される。第1外側歪センサSLOは、第1接触点21Lよりもブレーキドラムの径方向の外側に配置される。第1内側歪センサSLIが内側歪センサに対応し、第1外側歪センサSLOが外側歪センサに対応する。
【0030】
第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROは、第2制動シュー11Rからの第2荷重Fによってアンカー13に生じる歪を検出するためのセンサである。第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROは、アンカー13のうち第2制動シュー11R側の半分の領域内に配置される。第2内側歪センサSRIは、第2接触点21Rよりもブレーキドラムの径方向の内側に配置される。第1外側歪センサSROは、第2接触点21Rよりもブレーキドラムの径方向の外側に配置される。
【0031】
図4、5に示すように、アンカー13は、本体部131と、蓋部132とを有する。本体部131は、4つの凹部34を有する。図3、5に示すように、4つの凹部34のそれぞれの底面に、4つの歪センサSLI、SLO、SRI、SROのそれぞれが固定される。その状態で、図5に示すように、4つの凹部34のそれぞれには、ゲル状の絶縁材料35が埋め込まれている。なお、4つの凹部34のそれぞれは、空洞の状態であってもよい。
【0032】
図5に示すように、アンカー13は、締結部材36によってバックプレート14に固定される。締結部材36は、バックプレート14の周方向において、第1内側歪センサSLIおよび第1外側歪センサSLOの第1センサ群と、第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROの第2センサ群との間の位置に配置される。これにより、第1センサ群と第2センサ群とのそれぞれが、検出対象の荷重とは別の荷重の影響を受けることを抑制することができる。
【0033】
(第1ずれ量ΔCおよび第2ずれ量ΔCの求め方)
基板32は、図6に示す第1ブリッジ回路41と第1増幅回路42とを有する。第1ブリッジ回路41は、第1内側歪センサSLIを含み、第1内側歪センサSLIの電気抵抗の変化量を電圧として出力する。第1増幅回路42は、第1ブリッジ回路41から出力される電圧を増幅させ、増幅後の電圧G・VSLIを演算装置15へ出力する。
【0034】
同様に、基板32は、図6に示す第2ブリッジ回路43と第2増幅回路44とを有する。第2ブリッジ回路43は、第1外側歪センサSLOを含み、第1外側歪センサSLOの電気抵抗の変化を電圧として出力する。第2増幅回路44は、第2ブリッジ回路43から出力される電圧を増幅させ、増幅後の電圧G・VSLOを演算装置15に出力する。
【0035】
演算装置15は、第1増幅回路42の出力電圧G・VSLIと、第2増幅回路44の出力電圧G・VSLOとを減算して、第1差分出力G(VSLI-VSLO)を求める。この第1差分出力G(VSLI-VSLO)が、内側歪センサの出力と外側歪センサの出力との差分である差分出力に対応する。
【0036】
図7は、第1荷重Fの大きさが同じとなる条件での第1ずれ量ΔCと第1差分出力G(VSLI-VSLO)との関係を示す図である。図7に示すように、第1ずれ量ΔCと、第1差分出力G(VSLI-VSLO)との間には、所定の傾きの線形に近い関係がある。このため、演算装置15は、第1差分出力G(VSLI-VSLO)の大きさと、図7に示す第1ずれ量ΔCと第1差分出力G(VSLI-VSLO)との関係と、に基づいて、第1ずれ量ΔCを求めることができる。
【0037】
また、基板32は、図8に示す第3ブリッジ回路45と第3増幅回路46とを有する。
第3ブリッジ回路45は、第2内側歪センサSRIを含み、第2内側歪センサSRIの電気抵抗の変化を電圧として出力する。第3増幅回路46は、第3ブリッジ回路45から出力される電圧を増幅させ、増幅後の電圧G・VSRIを、演算装置15へ出力する。
【0038】
同様に、基板32は、図8に示す第4ブリッジ回路47と第4増幅回路48とを有する。第4ブリッジ回路47は、第2外側歪センサSROを含み、第2外側歪センサSROの電気抵抗の変化を電圧として出力する。第4増幅回路48は、第4ブリッジ回路47から出力される電圧を増幅させ、増幅後の電圧G・VSROを、演算装置15へ出力する。
【0039】
そして、演算装置15は、第3増幅回路46の出力電圧G・VSRIと、第4増幅回路48の出力電圧G・VSROとを減算して、第2差分出力G(VSRI-VSRO)を求める。図示しないが、第2ずれ量ΔCと、第2差分出力G(VSRI-VSRO)との間にも、所定の傾きの線形に近い関係がある。このため、演算装置15は、第2差分出力G(VSRI-VSRO)の大きさと、第2ずれ量ΔCと第2差分出力G(VSRI-VSRO)との関係と、に基づいて、第2ずれ量ΔCを求めることができる。
【0040】
(第1荷重Fおよび第2荷重Fの求め方)
図9に示すように、演算装置15は、第1増幅回路42の出力電圧G・VSLIと、第2増幅回路44の出力電圧G・VSLOとを加算して、第1合成出力G(VSLI+VSLO)を求める。この第1合成出力G(VSLI+VSLO)が、内側歪センサの出力と外側歪センサの出力との合計である合成出力に対応する。
【0041】
図10は、第1荷重Fが同じ大きさのときにおける第1合成出力G(VSLI+VSLO)と第1ずれ量ΔCとの関係を示す図である。図10に示すように、第1合成出力G(VSLI+VSLO)は、第1ずれ量ΔCに対してフラットな出力特性を有する。すなわち、第1合成出力G(VSLI+VSLO)は、第1ずれ量ΔCの大きさに関わらず、一定の大きさである。
【0042】
また、図示しないが、第1荷重Fの大きさと、第1合成出力G(VSLI+VSLO)との間には、一対一で対応する所定の関係がある。このため、演算装置15は、第1合成出力(VSLI+VSLO)の大きさと、第1荷重Fの大きさと第1合成出力G(VSLI+VSLO)との関係と、に基づいて、第1荷重Fを求めることができる。
【0043】
このように、第1合成出力G(VSLI+VSLO)を用いることで、第1接触点21Lが変動しても、第1荷重Fを精度良く求めることができる。なお、演算装置15は、第1増幅回路42の出力電圧G・VSLIと、第2増幅回路44の出力電圧G・VSLOとの平均値を用いて、第1荷重Fを求めてもよい。平均値は、第1合成出力G(VSLI+VSLO)を用いて算出される。このため、この場合も、演算装置15は、第1合成出力(VSLI+VSLO)の大きさと、第1荷重Fの大きさと第1合成出力G(VSLI+VSLO)との関係と、に基づいて、第1荷重Fを求めることになる。
【0044】
また、図11に示すように、演算装置15は、第3増幅回路46の出力電圧G・VSRIと、第4増幅回路48の出力電圧G・VSROとを加算して、第2合成出力G(VSRI+VSRO)を求める。第1合成出力G(VSLI+VSLO)と同様に、第2合成出力G(VSRI+VSRO)は、第2ずれ量ΔCに対してフラットな出力特性を有する。第2荷重Fの大きさと、第2合成出力G(VSRI+VSRO)との間には、一対一で対応する所定の関係がある。このため、演算装置15は、第2合成出力G(VSRI+VSRO)の大きさと、第2荷重Fの大きさと第2合成出力G(VSRI+VSRO)との関係と、に基づいて、第2荷重Fを求めることができる。
【0045】
(制動トルクTの具体的な演算方法)
図12に示すように、演算装置15は、上記の説明の通り、第1増幅回路42の出力電圧G・VSLIと第2増幅回路44の出力電圧G・VSLOとが加算された第1合成出力G(VSLI+VSLO)と、第1合成出力と第1荷重との関係と、に基づいて、第1荷重Fを求める。
【0046】
続いて、演算装置15は、図12中の±ΔC算出にて、第1ずれ量ΔCを求める。図7中の実線と破線で示すように、第1ずれ量ΔCと第1差分出力G(VSLI-VSLO)との関係(すなわち、傾き)は、第1荷重Fの大きさによって異なる。破線は、実線のときと第1荷重Fの大きさが異なるときの関係を示す。第1荷重Fの大きさ毎に、第1ずれ量と第1差分出力との関係が決まっている。そこで、演算装置15は、第1増幅回路42の出力電圧G・VSLIと第2増幅回路44の出力電圧G・VSLOとが減算された第1差分出力G(VSLI-VSLO)と、求めた第1荷重Fの大きさに応じた第1差分出力G(VSLI-VSLO)と第1ずれ量ΔCとの関係と、に基づいて、第1ずれ量ΔCを求める。これにより、第1ずれ量ΔCを精度良く求めることができる。
【0047】
そして、演算装置15は、図12中のT演算に示すように、求めた第1ずれ量ΔCと、第1距離の初期値CLIと、求めた第1荷重Fとを用いて、第1制動シュー11L側トルクTを演算する。
【0048】
同様に、演算装置15は、上記の説明の通り、第3増幅回路46の出力電圧G・VSRIと第4増幅回路48の出力電圧G・VSROとが加算された第2合成出力G(VSRI+VSRO)と、第2合成出力と第2荷重との関係と、に基づいて、第2荷重Fを求める。
【0049】
続いて、演算装置15は、図12中の±ΔC算出にて、第3増幅回路46の出力電圧G・VSRIと第4増幅回路48の出力電圧G・VSROとが減算された第2差分出力G(VSRI-VSRO)と、求めた第2荷重Fの大きさに応じた第2差分出力G(VSRI-VSRO)と第2ずれ量ΔCとの関係と、に基づいて、第2ずれ量ΔCを求める。
【0050】
そして、演算装置15は、図12中のT演算に示すように、求めた第2ずれ量ΔCと、第2距離の初期値CRIと、求めた第2荷重Fとを用いて、第2制動シュー11R側トルクTを演算する。
【0051】
その後、演算装置15は、求めた第1制動シュー11L側トルクTと第2制動シュー11R側トルクTとを用いて、制動トルクTを演算する。このようにして、制動トルクTを求めることができる。
【0052】
(第2実施形態)
図13に示すように、本実施形態のドラムブレーキ10では、ピストン12は、ギヤ51を介して、電動モータ52によって作動する。電動モータ52のモータ電流が大きいほど、アンカー13が第1制動シュー11Lから受ける第1荷重Fおよびアンカー13が第2制動シュー11Rから受ける第2荷重Fが大きくなる。
【0053】
図14(a)に示すように、センサ部31は、第1歪センサSと第2歪センサSの2つの歪センサを有する。第1歪センサSは、第1制動シュー11Lからの第1荷重Fによってアンカー13に生じる歪を検出する。第1歪センサSは、アンカー13のうち第1制動シュー11L側の半分の領域内に配置される。第1歪センサSは、第1実施形態の第1内側歪センサSLIと第1外側歪センサSLOの一方に対する。第2歪センサSは、第2制動シュー11Rからの第2荷重Fによってアンカー13に生じる歪を検出する。第2歪センサSは、アンカー13のうち第2制動シュー11R側の半分の領域内に配置される。第2歪センサSは、第2内側歪センサSRIと第2外側歪センサSROの一方に対応する。
【0054】
このように、本実施形態では、1つの制動シューに対して1つの歪センサが設けられる。ドラムブレーキ10の他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0055】
本実施形態では、ブレーキドラムの回転ゼロ時に、電動モータ52にモータ電流を流すことで、ピストン12が第1制動シュー11Lおよび第2制動シュー11Rをブレーキドラムに押し付ける。このとき、モータ電流の大きさと第1歪センサSのセンサ出力との間には、一対一で対応する所定の関係がある。
【0056】
例えば、図15に示すように、モータ電流とセンサ出力とは、所定の傾きの線形の関係を有する。この関係における傾きは、第1接触点21Lの位置P1、P2、P3によって異なる。位置P1は、第1制動シュー11Lの摩耗量が少ない状態のときの図14(a)に示す位置である。位置P2は、第1制動シュー11Lの摩耗量が中の状態のときの図14(b)に示す位置である。位置P3は、第1制動シュー11Lの摩耗量が多い状態のときの図14(c)に示す位置である。摩耗量が増えるにつれて、第1接触点21Lの位置が径方向の外側に変動するとともに、モータ電流とセンサ出力との線形の関係の傾きが小さくなる。図15に示すように、第1接触点21Lの位置P1、P2、P3によって、モータ電流が所定値Iのときのセンサ出力の大きさが異なる。このように、モータ電流、第1歪センサSの出力および第1接触点21Lの位置には、所定の関係がある。
【0057】
そこで、本実施形態では、演算装置15は、モータ電流の計測値と、第1歪センサSの出力と、モータ電流、第1歪センサSの出力および第1接触点21Lの位置が有する図15に示す関係と、に基づいて、第1接触点21Lの現在位置を求める。このとき、モータ電流の計測値は、電流計等によって取得される。第1接触点21Lの現在位置は、基準位置からの距離で表される。
【0058】
モータ電流と第2歪センサSのセンサ出力との間にも、上記と同様の関係がある。このため、演算装置15は、モータ電流の計測値と、第2歪センサSの出力と、モータ電流、第2歪センサSの出力および第2接触点21Rの位置が有する関係と、に基づいて、第2接触点21Rの現在位置を求めることができる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、1つの制動シューに対して1つの歪センサを用いて、接触点の現在位置を求めることができる。
【0060】
なお、ピストン12が油圧によって作動する場合においても、上記と同様に、演算装置15は、第1接触点21Lの現在位置を求めることができる。この場合、油圧を計測する計測器の計測値が用いられる。モータ電流および油圧の大きさは、どちらも、押付部が制動シューをブレーキドラムに押し付ける力に関する物理量である。
【0061】
演算装置15は、式(1)によって、制動トルクTの演算を行う。このとき、演算装置15は、上記の方法によって求めた第1接触点21Lの現在位置、すなわち、基準位置からの第1接触点21Lの現在位置までの距離を、式(1)の第1距離Cとして用いる。同様に、上記の方法によって求めた第2接触点21Rの現在位置、すなわち、基準位置からの第2接触点21Rの現在位置までの距離を、式(1)の第2距離Cとして用いる。これにより、第1接触点21Lおよび第2接触点21Rの位置が変動したとき、第1距離Cおよび第2距離Cを適切な数値に補正することができる。よって、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0062】
(第3実施形態)
図16に示すように、本実施形態のドラムブレーキ10では、アンカー13は、第1制動シュー11L側の部分に、第1内側貫通孔61と、第1外側貫通孔62と、を有する。ブレーキドラムの軸心方向がアンカー13の厚さ方向である。第1内側貫通孔61および第1外側貫通孔62は、アンカー13の表面から裏面まで厚さ方向でアンカー13を貫通する。第1内側貫通孔61および第1外側貫通孔62は、アンカー13のうち第1制動シュー11L側の半分の領域内に配置される。第1内側貫通孔61は、第1接触点21Lよりもブレーキドラムの径方向の内側に配置される。第1外側貫通孔62は、第1接触点21Lよりもブレーキドラムの径方向の外側に配置される。第1内側貫通孔61および第1外側貫通孔62の直径は、例えば、1mmである。第1内側貫通孔61が内側貫通孔に対応し、第1外側貫通孔62が外側貫通孔に対応する。
【0063】
そして、センサ部31の第1内側歪センサSLIは、アンカー13の表面のうち第1内側貫通孔61の周辺部に設けられる。センサ部31の第1外側歪センサSLOは、アンカー13の表面のうち第1外側貫通孔62の周辺部に設けられる。
【0064】
また、図示しないが、第2制動シュー11R側においても同様に、アンカー13は、第2内側貫通孔と、第2外側貫通孔と、を有する。第2内側貫通孔は、第1内側貫通孔に対応する。第2外側貫通孔は、第1内側貫通孔に対応する。そして、センサ部31の第2内側歪センサSRIは、第2内側貫通孔の周辺部に設けられる。センサ部31の第2外側歪センサSROは、第2外側貫通孔の周辺部に設けられる。
【0065】
ドラムブレーキ10の他の構成は、第1実施形態と同じである。このため、本実施形態によっても、第1実施形態と同じ効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、下記の効果が得られる。
【0066】
アンカー13が第1荷重Fを受けると、第1内側貫通孔61と第1外側貫通孔62のそれぞれの貫通孔の周辺部に応力が集中する。同様に、アンカー13が第2荷重Fを受けると、第2内側貫通孔と第2外側貫通孔のそれぞれの貫通孔の周辺部に応力が集中する。図示しないが、本発明者の解析結果によると、貫通孔の周辺部は、貫通孔が形成されていない場合の同じ場所と比較して、同じ大きさの荷重を受けたときに生じる歪が大きい。このため、第1内側歪センサSLI、第1外側歪センサSLO、第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROの各歪センサの感度を向上させることができる。感度を向上させるために、貫通孔に隣接して歪センサが配置されることが好ましい。
【0067】
なお、第2実施形態に本実施形態が適用されてもよい。この場合、アンカー13は、厚さ方向でアンカー13を貫通する第1貫通孔を有する。第1貫通孔は、第3実施形態の第1内側貫通孔61と第1外側貫通孔62の一方に対応する。そして、第1歪センサSは、アンカー13の表面のうち第1貫通孔の周辺部に設けられる。同様に、アンカー13は、厚さ方向でアンカー13を貫通する第2貫通孔を有する。第2貫通孔は、第3実施形態の第2内側貫通孔と第2外側貫通孔の一方に対応する。そして、第2歪センサSは、アンカー13の表面のうち第2貫通孔の周辺部に設けられる。この場合においても、第3実施形態と同じ効果が得られる。
【0068】
(第4実施形態)
図17に示すように、本実施形態のドラムブレーキ10では、第3実施形態のドラムブレーキ10と同様に、アンカー13は、第1制動シュー11L側の部分に、第1内側貫通孔61と、第1外側貫通孔62と、を有する。図18に示すように、本実施形態のドラムブレーキ10では、第3実施形態のドラムブレーキ10と異なり、センサ部31の第1内側歪センサSLIは、第1内側貫通孔61の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。図示しないが、センサ部31の第1外側歪センサSLOは、第1外側貫通孔62の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。
【0069】
また、図示しないが、第2制動シュー11R側においても同様に、アンカー13は、第2内側貫通孔と、第2外側貫通孔と、を有する。そして、センサ部31の第2内側歪センサSRIは、第2内側貫通孔の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。センサ部31の第2外側歪センサSROは、第2外側貫通孔の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。
【0070】
図19(a)、(b)では、アンカー13が受ける荷重が同じ大きさであって、荷重が作用する作用点の位置が厚さ方向でアンカー13の厚さ方向で異なるときの第1内側貫通孔61の内壁面に生じる歪の大きさを矢印の長さで示している。第1内側貫通孔61の厚さ方向での中央部では、図19(a)、(b)に示すように、作用点の位置が異なっても、歪の大きさはほぼ同じである。このことは、第1外側貫通孔62、第2内側貫通孔、第2外側貫通孔においても同様である。
【0071】
このため、本実施形態によれば、厚さ方向での第1接触点21Lおよび第2接触点21Rの変動による第1内側歪センサSLI、第1外側歪センサSLO、第2内側歪センサSRIおよび第2外側歪センサSROの各歪センサの出力変動を抑制することができる。
【0072】
各歪センサのアンカー13への組み付けは、次の方法によって可能である。図20に示すように、円弧形状の取付部材71の内壁面に、第1内側歪センサSLIが貼り付けられて固定される。この状態の取付部材71が、第1内側貫通孔61に圧入される。第1内側貫通孔61の内壁面は、その内壁面のうち他の部分61aよりも直径が拡大された拡大部61bを有する。この拡大部61bに取付部材71が固定される。他の歪センサの組み付け方法も同様である。
【0073】
なお、第2実施形態に本実施形態が適用されてもよい。この場合、アンカー13は、厚さ方向でアンカー13を貫通する第1貫通孔を有する。第1貫通孔は、第4実施形態の第1内側貫通孔61と第1外側貫通孔62の一方に対応する。そして、第1歪センサSは、第1貫通孔の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。同様に、アンカー13は、厚さ方向でアンカー13を貫通する第2貫通孔を有する。第2貫通孔は、第4実施形態の第2内側貫通孔と第2外側貫通孔の一方に対応する。そして、第2歪センサSは、第2貫通孔の内壁面のうちアンカー13の厚さ方向での中央部に設けられる。この場合においても、第4実施形態と同じ効果が得られる。
【0074】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、第1距離Cおよび第2距離Cにおける基準位置を仮想直線VL1の位置としたが、基準位置をブレーキドラムの中心Oの位置としてもよい。この場合、第1距離Cおよび第2距離Cは、中心Oからの径方向距離である。第1ずれ量ΔCおよび第2ずれ量ΔCは、径方向での変動量である。
【0075】
(2)第1実施形態では、センサ部は、荷重に応じた信号の出力と、変動量に応じた信号の出力とを、共通のセンサが行う構成である。しかしながら、これに限らず、センサ部は、荷重に応じた信号を出力するセンサと、ずれ量、すなわち、変動量に応じた信号を出力するセンサとを、別々に有する構成であってもよい。ずれ量の検出を行うセンサとしては、例えば、制動シューの変位を検出する変位センサを用いることができる。
【0076】
(3)上記した各実施形態では、リーディングトレーリングタイプのドラムブレーキに対して本発明が適用されている。この場合に限られず、アンカーを備えるドラムブレーキに対して本発明の適用が可能である。
【0077】
(4)上記した各実施形態のドラムブレーキは、車両以外の用途に用いられてもよい。
【0078】
(5)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0079】
(6)本開示に記載の演算部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の演算部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の演算部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 ドラムブレーキ
11L 第1制動シュー
12 ピストン
13 アンカー
15 演算装置
31 センサ部
32 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20