(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166868
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】保護層転写シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20241122BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083257
(22)【出願日】2023-05-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】大泉 知久
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03C
4F100AK04C
4F100AK15E
4F100AK15J
4F100AK22E
4F100AK22J
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK41E
4F100AK42A
4F100AK52D
4F100AL01E
4F100AL06C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02E
4F100CA23B
4F100CC01B
4F100CC01C
4F100CC01D
4F100CC01E
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EH46E
4F100EJ542
4F100EJ652
4F100EJ65E
4F100JB14B
4F100JL11C
4F100JL14D
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】被転写体に対する転写層の接着性及び耐ブロッキング性を高めることが可能な、保護層転写シートを提供する。
【解決手段】保護層転写シート10は、基材11と、基材11上に設けられた転写層14とを備えている。転写層14は、基材11上に設けられた保護層12と、保護層12上に設けられた接着層13と、を有している。接着層13を撮影した画像を二値化処理することにより、画像を、輝度が所定値未満の白色部13aと、輝度が所定値以上の黒色部13bとに区画したとき、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比は、0.005以上0.054以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた転写層とを備え、
前記転写層は、
前記基材上に設けられた保護層と、
前記保護層上に設けられた接着層と、を有し、
前記接着層を撮影した画像を二値化処理することにより、前記画像を、輝度が所定値未満の白色部と、輝度が所定値以上の黒色部とに区画したとき、白色部の合計面積に対する黒色部の合計面積比は、0.005以上0.054以下である、保護層転写シート。
【請求項2】
前記接着層は、ポリエチレンワックスを含み、
前記黒色部は、前記ポリエチレンワックスが前記接着層の表面から露出している領域を示す、請求項1に記載の保護層転写シート。
【請求項3】
前記基材と前記転写層との間に設けられた離型層又は剥離層を更に備える、請求項1に記載の保護層転写シート。
【請求項4】
前記転写層は、前記保護層と前記接着層との間に設けられたプライマー層を更に有する、請求項1に記載の保護層転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保護層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
透明性に優れ、中間色の再現性及び階調性が高く、従来のフルカラー写真画像と同等の高品質画像を容易に形成できるという理由から、昇華型熱転写方式による熱転写画像の形成が広く行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。昇華型熱転写方式は、染料層が設けられた熱転写シートと、受容層が設けられた被転写体とを用い、熱転写シートに熱を印加することにより、染料層に含まれる色材を受容層に移行させて熱転写画像を形成する方法である。
【0003】
昇華型熱転写方式によって受容層上に形成された熱転写画像は、階調性に優れる。一方、受容層上に形成された熱転写画像は、被転写体の最表面に位置するため、耐久性に劣るという問題がある。
【0004】
近年、この問題を解決すべく、熱転写画像が転写された受容層と、保護層を備える保護層転写シートとを重ね合わせ、受容層上に保護層等の転写層を転写することにより、熱転写画像の耐久性の改善が行われている(例えば、特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-75480号公報
【特許文献2】特開2013-82212号公報
【特許文献3】特開2015-85554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような保護層転写シートには、転写層の耐久性の他にも、未転写部が発生しないように、転写層の高い転写性及び接着性が要求される。
【0007】
また、転写層には、接着性を向上させた場合に弊害として発生するブロッキングへの対策として、ブロッキング防止剤が添加され得る。この場合、転写層には、接着性と耐ブロッキング性とを両立させることが求められ得る。
【0008】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、被転写体に対する転写層の接着性及び耐ブロッキング性を高めることが可能な、保護層転写シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[4]に関する。
【0010】
[1]基材と、前記基材上に設けられた転写層とを備え、前記転写層は、前記基材上に設けられた保護層と、前記保護層上に設けられた接着層と、を有し、前記接着層を撮影した画像を二値化処理することにより、前記画像を、輝度が所定値未満の白色部と、輝度が所定値以上の黒色部とに区画したとき、白色部の合計面積に対する黒色部の合計面積比は、0.005以上0.054以下である、保護層転写シート。
【0011】
[2]前記接着層は、ポリエチレンワックスを含み、前記黒色部は、前記ポリエチレンワックスが前記接着層の表面から露出している領域を示す、[1]に記載の保護層転写シート。
【0012】
[3]前記基材と前記転写層との間に設けられた離型層又は剥離層を更に備える、[1]又は[2]に記載の保護層転写シート。
【0013】
[4]前記転写層は、前記保護層と前記接着層との間に設けられたプライマー層を更に有する、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の保護層転写シート。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、被転写体に対する転写層の接着性及び耐ブロッキング性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施の形態による保護層転写シートを示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による保護層転写シートを示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による保護層転写シートを示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による保護層転写シートの接着層を撮影した撮影画像を二値化処理した画像である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による被転写体を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1による保護層転写シートの接着層を撮影した撮影画像である。
【
図7】
図7は、実施例2による保護層転写シートの接着層を撮影した撮影画像である。
【
図8】
図8は、実施例3による保護層転写シートの接着層を撮影した撮影画像である。
【
図9】
図9は、実施例4による保護層転写シートの接着層を撮影した撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本実施の形態について説明する。
図1乃至
図5は本実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。なお、本明細書中、「上」及び「下」とは、それぞれ紙製容器を正立させた状態(
図1)における上方及び下方のことをいう。なお、本明細書中、「表面」とは、内容物と向かい合う側の面、又は紙製容器を正立させた際に上方を向く面のことをいう。
【0017】
保護層転写シート
図1乃至
図3に示すように、保護層転写シート10は、基材11と、基材11上に設けられた転写層14とを備えている。また、
図2に示すように、保護層転写シート10は、基材11と転写層14との間に設けられた離型層15を更に備えていても良い。この場合、保護層転写シート10は、基材11と離型層15との間に設けられた第1プライマー層19を更に備えていても良い。また、
図3に示すように、保護層転写シート10は、基材11と転写層14との間に設けられた剥離層16を更に備えていても良い。さらに、
図2及び
図3に示すように、保護層転写シート10は、基材11の転写層14を設けた面とは反対側に設けられた背面層17を更に備えていても良い。なお、
図2及び
図3に示す例においては、保護層転写シート10は、離型層15及び剥離層16のいずれか一方のみを備えている。しかしながら、これに限られず、保護層転写シート10は、離型層15及び剥離層16を共に備えていても良い。
【0018】
図1乃至
図3に示すように、保護層転写シート10の転写層14は、基材11上に設けられた保護層12と、保護層12上に設けられた接着層13と、を有している。また、
図2及び
図3に示すように、転写層14は、任意の層間に設けられた第2プライマー層(プライマー層)18を備えていても良い。
図2及び
図3に示す例においては、第2プライマー層18は、保護層12と接着層13との間に設けられている。
【0019】
このような保護層転写シート10は、被転写体(図示せず)へ転写層14を転写するためのシートである。
図1に示す保護層転写シート10では、転写層14を被転写体(図示せず)へ転写する場合、転写層14として、保護層12及び接着層13が、被転写体へ転写される。
図2及び
図3に示す保護層転写シート10では、転写層14を被転写体(図示せず)へ転写する場合、転写層14として、保護層12、第2プライマー層18及び接着層13が、被転写体へ転写される。また、
図3に示す保護層転写シート10では、転写層14を被転写体(図示せず)へ転写する場合、剥離層16も被転写体へ転写される。
【0020】
以下、本実施の形態による保護層転写シート10を構成する各層について説明する。
【0021】
<基材>
基材11は、転写層14等を支持するとともに、保護層転写シート10全体の強度を高めるための層である。基材11としては、熱転写時に加えられる熱エネルギー(例えば、サーマルヘッドによる熱)に耐え得る耐熱性を有し、転写層14を支持できる機械的強度及び耐溶剤性を有する部材であれば、特に制限なく使用できる。
【0022】
基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等のビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド、ポリエーテルポリイミド等のイミド系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルファイト等のエンジニアリング樹脂、ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」という)が使用されても良い。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との両方を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を包含することを意味する。
【0023】
なお、上述して樹脂により構成されるフィルムの中でも、PET又はPEN等のポリエステル系樹脂により構成されるフィルムは、耐熱性及び機械的強度に優れる。このため、基材11は、ポリエステル系樹脂により構成されるフィルムであっても良い。とりわけ、基材11は、PETにより構成されるフィルムであっても良い。
【0024】
また、基材11として、上述した樹脂フィルムの積層体が使用されても良い。この場合、積層体は、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法、又はエクストリュージョン法等を利用することにより作製され得る。
【0025】
基材11が上述した樹脂により構成されるフィルムである場合、当該樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても良く、未延伸フィルムであっても良い。強度を高めるという観点からは、当該樹脂フィルムは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであっても良い。
【0026】
また、保護層12等との密着性及び耐ブロッキング性の向上という観点からは、基材11は、表面に凹凸を有していても良い。基材11の表面へ凹凸を形成する手段としては、例えば、マット材練り込み加工、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、マットコーティング加工、又はケミカルエッチング加工等が挙げられる。マット材練り込み加工は、無機物、又は有機物を練り込んだ樹脂により、基材11を形成する加工法である。マットコーティング加工は、基材11の表面に、有機物、又は無機物を含むコート材をコーティングし、基材11の表面に凹凸を付与する加工法である。
【0027】
基材11の厚みは、4μm以上50μm以下であっても良く、12μm以上30μm以下であっても良い。基材11の厚みを上記数値範囲とすることにより、基材11の機械的強度を高めることができるとともに、熱転写時に、熱エネルギーを効果的に伝達できる。
【0028】
<転写層>
転写層14は、後述する被転写体30に転写される層である。上述したように、転写層14は、保護層12と、接着層13と、を有している。また、転写層14は、任意の層間に設けられた第2プライマー層18を有していても良い。ここでは、まず、転写層14の保護層12について説明する。
【0029】
<<保護層>>
保護層12は、後述する被転写体30を保護するための層である。保護層12は、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱硬化性樹脂又は活性光線硬化樹脂等を含んでいても良い。耐久性という観点からは、保護層12は、活性光線硬化樹脂を含んでいても良い。なお、本明細書において、「活性光線硬化樹脂」とは、活性光線硬化性樹脂に対して活性光線を照射することにより、活性光線硬化性樹脂を硬化させた樹脂を意味する。また、本明細書において、「活性光線」とは、活性光線硬化性樹脂に対して、化学的に作用することにより重合を促進させる放射線を意味し、具体的には、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、又はγ線等を意味する。本実施の形態では、活性光線硬化性樹脂に対して照射される活性光線は、紫外線であることが好ましく、保護層12は、活性光線硬化性樹脂として、紫外線硬化樹脂を含んでいることが好ましい。
【0030】
活性光線硬化性樹脂としては、活性光線照射により重合可能な化合物であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、活性光線硬化性樹脂として、アクリロイル基、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基等のラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマー、重合性オリゴマー、並びに重合性プレポリマー等が使用されても良い。なお、本明細書において、「オリゴマー」とは、重量平均分子量(Mw)が1,000より大きく、10,000以下の重合体をいう。また、本明細書において、「プレポリマー」とは、重量平均分子量(Mw)が10,000より大きく、30,000以下の重合体をいう。また、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS-K-7252-1:2016に準拠した方法で測定できる。
【0031】
重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、シリコーンアクリレート及びポリオールアクリレート等が使用されても良い。また、これらのメタクリレート、イタコネート、クロトネート、又はマレエートが使用されても良い。
より具体的には、重合性モノマーとしては、
(1)2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3-ジオキサンアルコールのε-カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3-ジオキソランアクリレート等の単官能アクリレート、
(2)エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート、2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-ヒドロキシメチル-5-エチル-1,3-ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε-カプロラクトン付加物、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリルレート、
(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε-カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリレート等が挙げられる。
【0032】
重合性オリゴマー及び重合性プレポリマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、又はポリカーボネート(メタ)アクリレート等の上記した重合性モノマーの重合体が挙げられる。
【0033】
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、又はエポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0034】
一実施形態において、保護層12は、重合開始剤を含んでいても良い。重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系、パーオキシド系、又はアゾ系の化合物が使用されても良い。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-モルホリノ-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート、又はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が使用されても良い。
【0035】
保護層12における重合開始剤の含有量は、保護層12に含まれる活性光線硬化樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下であっても良く、1質量部以上3質量部以下であっても良い。
【0036】
一実施形態において、保護層12は、フィラーを含んでいても良い。フィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、又は、有機-無機のハイブリッド型のフィラーが挙げられる。また、フィラーは、粉体であっても良く、ゾル状であっても良い。塗工液を調整する際の溶剤の選択肢を広げるという観点からは、粉体のフィラーが使用されても良い。
【0037】
保護層12に含有されるフィラーは、平均粒子径が1nm以上200nm以下であっても良く、1nm以上50nm以下であっても良く、7nm以上25nm以下であっても良い。フィラーの平均粒子径を上記数値範囲とすることにより、転写性を向上できる。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、体積平均粒子径を意味する。「平均粒子径」は、粒度分布・粒径分布測定装置(日機装(株)製、ナノトラック粒度分布測定装置)を用いて公知の方法により測定できる。
【0038】
粉体の有機フィラーとしては、非架橋アクリル系粒子、若しくは架橋アクリル系粒子等のアクリル系粒子、ポリアミド系粒子、フッ素系粒子、又はポリエチレンワックス等が挙げられる。また、粉体の無機フィラーとしては、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、又は酸化チタン等の金属酸化物粒子等が挙げられる。また、有機-無機のハイブリッド型のフィラーとしては、アクリル樹脂にシリカ粒子をハイブリッドしたフィラー等が挙げられる。さらに、ゾル状のフィラーとしては、シリカゾル系、又はオルガノゾル系のフィラー等が挙げられる。これらのフィラーは、単独で用いられても良く、2種以上を混合して用いられても良い。
【0039】
保護層12におけるフィラーの含有量は、5質量%以上60質量%以下であっても良く、20質量%以上50質量%以下であっても良い。これにより、保護層12の耐久性を向上できる。
【0040】
保護層12の厚みは、1μm以上15μm以下であっても良く、2μm以上8μm以下であっても良い。保護層12の厚みを上記数値範囲とすることにより、保護層転写シート10の耐久性及び転写性を高くできる。
【0041】
保護層12を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を基材11等の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布液は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、基材11等の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このとき、必要に応じて、塗布膜に対して活性光線を照射することにより、塗布膜を硬化させる。このようにして、保護層12が形成される。ここで、活性光線として電子線を使用する場合、加速電圧は、使用する樹脂及び層の厚みに応じて、適宜変更され得る。加速電圧は、例えば、100kV以上300kV以下であっても良い。また、照射線量は、活性光線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する程度の量であっても良い。具体的には、照射線量は、100kGy以上300kGy以下であっても良く、100kGy以上200kGy以下であっても良い。電子線源としては、特に制限はなく、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、又は高周波型等の各種電子線加速器が使用されても良い。また、活性光線として紫外線を使用する場合、塗布膜に対して、波長190nm以上380nm以下の紫外線を含む活性光線が放射されても良い。紫外線源としては、特に制限はなく、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、又はカーボンアーク燈等が使用されても良い。
【0042】
<<接着層>>
次に、接着層13について説明する。接着層13は、保護層12と、後述する被転写体30とを接着するための層である。接着層13は、保護層転写シート10の最外層として設けられている。接着層13は、ポリオレフィン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂を含んでいても良い。これにより、転写層14の被転写体に対する接着性及び転写性を向上できる。
【0043】
接着層13におけるポリオレフィン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との含有量比(ポリオレフィン系樹脂/アクリル系樹脂)は、質量基準で、9/1以上6/4以下であっても良く、8/2以上7/3以下であっても良い。ポリオレフィン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との含有量比を上記数値範囲とすることにより、転写層14の被転写体に対する接着性及び転写性を更に向上できる。また、ポリオレフィン系樹脂と(メタ)アクリル系樹脂との含有量比を上記数値範囲とすることにより、保護層転写シート10の耐ブロッキング性を向上できる。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリノルボルネン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又はエチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。なお、α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等が挙げられる。また、上述した樹脂を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸等によりグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が使用されても良い。転写層14の被転写体に対する接着力向上という観点からは、ポリオレフィン系樹脂として、酸変性ポリオレフィン系樹脂が用いられても良い。接着層13は、上述したポリオレフィン系樹脂を2種以上含んでいても良い。
【0045】
上述したように、ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系モノマーと、その他のモノマーとの共重合体であっても良い。この場合、ポリオレフィン系樹脂を構成する全モノマー100質量%に対するポリオレフィン系モノマーの構成割合は、50質量%以上であっても良く、70質量%以上であっても良く、100質量%、すなわち、ポリオレフィン系樹脂がポリオレフィン系モノマーのみにより構成されても良い。ポリオレフィン系モノマーの構成割合を上記数値範囲とすることにより、転写層14の被転写体に対する接着性及び転写性を向上できる。
【0046】
接着層13におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、60質量%以上90質量%以下であっても良く、70質量%以上85質量%以下であっても良い。ポリオレフィン系樹脂の含有量を上記数値範囲とすることにより、転写層14の被転写体に対する接着性及び転写性を更に向上できる。
【0047】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(1)(メタ)アクリル酸の重合体又はその誘導体、(2)(メタ)アクリル酸エステルの重合体又はその誘導体、(3)(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの共重合体又はその誘導体、(4)(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体又はその誘導体、及び(5)(1)~(4)のフッ素変性樹脂、シリコーン変性樹脂、又はエポキシ変性樹脂等が挙げられる。
【0048】
より具体的には、上記(1)に分類される(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸、上記(2)に分類される(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリn-ブチル(メタ)アクリレート、ポリi-ブチル(メタ)アクリレート、ポリt-ブチル(メタ)アクリレート、ポリn-へキシル(メタ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレート、ポリ2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、又はこれらを構成する2以上のモノマーの共重合体、上記(3)に分類される(メタ)アクリル系樹脂としては、塩化ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、又はベンジルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、上記(4)に分類される(メタ)アクリル系樹脂としては、塩化ビニル-メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジルスチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル-エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジルスチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル-プロピル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-プロピル(メタ)アクリレート共重合体、又はベンジルスチレン-プロピル(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。なお、接着層13は、上述した(メタ)アクリル系樹脂を2種以上含んでいても良い。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、25℃以上100℃以下であっても良く、30℃以上80℃以下であっても良く、50℃以上80℃以下であっても良い。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記数値範囲とすることにより、転写層14の転写性及び保護層転写シート10の耐ブロッキング性を向上できる。本明細書において、ガラス転移温度(Tg)の測定は、JIS-K-7121:2012に準拠して示差走査熱量測定により求めることができる。
【0050】
接着層13における(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、10質量%以上40質量%以下であっても良く、15質量%以上30質量%以下であっても良い。(メタ)アクリル系樹脂の含有量を上記数値範囲とすることにより、転写層14の被転写体に対する接着性及び転写性を更に向上できる。
【0051】
接着層13は、本実施の形態の特性を損なわない範囲において、ポリオレフィン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいても良い。例えば、接着層13は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、スチレン系樹脂、又はセルロース系樹脂等を含んでいても良い。
【0052】
一実施形態において、接着層13は、ワックス材を含んでいても良い。接着層13にワックス材を含有させることにより、保護層転写シート10の耐ブロッキング性を向上できる。ワックス材としては、例えば、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、シリコーンワックス、キャンデリラワックス、鯨ロウ、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、又は一部変性ワックス等が挙げられる。耐ブロッキング性を向上させるという観点からは、ポリエチレンワックスが用いられても良い。なお、接着層13は、上述したワックス材を2種以上含んでいても良い。
【0053】
接着層13におけるワックス材の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であっても良く、0.5質量%以上5質量%以下であっても良い。ワックス材の含有量を上記数値範囲とすることにより、保護層転写シート10の耐ブロッキング性をより向上できる。
【0054】
また、接着層13は、本実施の形態の特性を損なわない範囲において、可塑材、紫外線安定化材、着色防止材、艶消し材、消臭材、難燃材、耐候材、帯電防止材、糸摩擦低減材、スリップ材、離型材、抗酸化材、イオン交換材、又は着色顔料等の添加材を含んでいても良い。
【0055】
ここで、
図4に示すように、接着層13を撮影した画像を二値化処理することにより、画像を、輝度が所定値未満の白色部13aと、輝度が所定値以上の黒色部13bとに区画したとする。このとき、本実施の形態では、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比は、0.005以上0.054以下である。また、上述したように、接着層13は、ポリエチレンワックスを含んでいても良い。この場合、黒色部13bは、ポリエチレンワックスが接着層13の表面から露出している領域を示している。言い換えれば、接着層13は、主成分としての樹脂材料と、ブロッキング防止剤としてのポリエチレンワックスとを含んでいても良く、黒色部13bは、ポリエチレンワックスが、主成分としての樹脂材料から露出している領域を示している。
【0056】
このように、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が0.005以上であることにより、接着層13に添加されたブロッキング防止剤が、主成分としての樹脂材料に溶融することなく、球状の状態で存在する割合が大きくなる。この場合、平面画像(
図4)において、接着層13のうち、主成分の樹脂材料内にブロッキング防止剤の成分が溶け出していない範囲を広くできる。このため、接着層13の接着性を良好に維持した状態で、耐ブロッキング性を向上できる。また、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が0.054以下であることにより、接着層13に添加されたブロッキング防止剤が、主成分としての樹脂材料に溶融する割合を大きくできる。このため、耐ブロッキング性が低下することを抑制できる。なお、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比は、接着層形成用塗工液の乾燥温度を調整することにより、調整され得る。
【0057】
接着層13を撮影した画像の二値化処理を行う場合、まず、走査型電子顕微鏡を用いて、保護層転写シート10を、接着層13側から、1000倍の倍率で撮影する。これにより、保護層12の8ビットグレースケールの撮影画像を取得する。次に、画像解析ソフトを用いて、撮影画像を解析する。次いで、得られた解析画像の明暗を反転するとともに、OTSU法により、自動閾値処理を行う。これにより、解析画像における輝度分布の閾値を決定し、閾値未満の部分を白色部13aとし、閾値以上の部分を黒色部13bとする。
【0058】
本開示において、走査型電子顕微鏡は、(株)日立ハイテクフィールディング製の「走査型電子顕微鏡、SU-1510」を用いる。また、画像解析ソフトは、「Image J」を用いる。さらに、OTSU法は、解析画像の輝度分布を利用して自動的に閾値を決定する方法である。ISODATA法による自動閾値処理は、従来公知の方法により行うことができる。
【0059】
接着層13の厚みは、0.3μm以上5.0μm以下であっても良く、0.3μm以上1.0μm以下であっても良く、0.5μm以上0.8μm以下であっても良い。接着層13の厚みを上記数値範囲とすることにより、転写層14の転写性をより向上できる。また、接着層13の厚みを上記数値範囲とすることにより、転写層14の耐久性及び被転写体に対する接着力を向上できる。
【0060】
接着層13を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を保護層12等の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、保護層12等の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、接着層13が形成される。
【0061】
<<プライマー層>>
次に、第2プライマー層18について説明する。第2プライマー層18は、層間の接着力を向上させる役割を果たす。なお、上述した第1プライマー層19の構成は、第2プライマー層18の構成と同一であっても良い。このため、上述した第1プライマー層の詳細な説明は省略する。
【0062】
第2プライマー層18は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、又はセルロース系樹脂等を含んでいても良い。また、第2プライマー層18は、上述した樹脂以外にも、イソシアネート化合物を含んでいても良い。イソシアネート化合物は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であっても良い。イソシアネート化合物としては、例えば、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1-クロロ-2,4-フェニルジイソシアネート、2-クロロ-1,4-フェニルジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、trans-シクロヘキサン、1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート及び4,4’,4’’-トリメチル-3,3’,2’-トリイソシアネート-2,4,6-トリフェニルシアヌレート等が挙げられる。
【0063】
第2プライマー層18の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上5μm以下であっても良く、0.3μm以上2μm以下であっても良い。
【0064】
第2プライマー層18を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を基材11等の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、基材11等の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、第2プライマー層18が形成される。
【0065】
<離型層>
離型層15は、転写層14の転写性を向上させるための層である。なお、離型層15は、熱転写時に基材11側に留まる層である。
【0066】
一実施形態において、離型層15は、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオール系樹脂、セルロース系樹脂等、又はシリコーン系樹脂のバインダー樹脂を含んでいても良い。離型層15は、上述した材料の中でも、特にシリコーン系樹脂を含んでいても良い。
【0067】
また、一実施形態において、離型層15は、シリコーンオイル、リン酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物、ワックス、金属石鹸、又はフィラー等の離型材を含んでいても良い。
【0068】
離型層15の厚みは、0.1μm以上5μm以下であっても良く、0.3μm以上2μm以下であっても良い。
【0069】
離型層15を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を基材11の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、基材11の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、離型層15が形成される。
【0070】
<剥離層>
剥離層16は、転写層14の転写性を向上させるための層である。また、剥離層16は、熱転写時に基材11から剥離し、転写層14とともに被転写体に転写される層である。なお、保護層転写シート10が、離型層15を備える場合、剥離層16は、離型層15と保護層12との間に設けられ得る。
【0071】
一実施形態において、剥離層16は、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、フッ素変性樹脂、又はワックス等を含んでいても良い。ワックスとしては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、又は脂肪酸アミド等が挙げられる。剥離層16は、上述した材料の中でも、特にポリエチレンワックスを含んでいても良い。
【0072】
剥離層16の厚みは、0.1μm以上5μm以下であっても良く、0.3μm以上2μm以下であっても良い。
【0073】
剥離層16を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を基材11の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、基材11の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、剥離層16が形成される。
【0074】
<背面層>
背面層17は、転写時の加熱によるスティッキング及びシワ等の発生を抑制する役割を果たす。
【0075】
一実施形態において、背面層17は、バインダー樹脂を含んでいても良い。バインダー樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン変性ウレタン系樹脂、フッ素変性ウレタン系樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。背面層17と、熱転写を行うためのサーマルヘッド(図示せず)との焼き付き防止の観点、及び、熱転写時におけるカスの発生防止の観点からは、背面層17は、上述した材料の中でも、スチレン系樹脂、具体的には、スチレン-アクリロニトリル共重合体を含んでいても良い。
【0076】
また、一実施形態において、背面層17は、イソシアネート化合物等を使用することにより硬化させることができる2液硬化型の樹脂を、バインダー樹脂として含んでいても良い。このような樹脂としては、ポリビニルアセタール系樹脂又はポリビニルブチラール系樹脂等が挙げられる。
【0077】
イソシアネート化合物としては、特に制限なく従来公知のイソシアネート化合物が使用されても良い。従来公知のイソシアネート化合物の中でも、芳香族系イソシアネートのアダクト体が使用されても良い。芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、又は、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、trans-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートが挙げられ、特に2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、又は、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物が挙げられる。
【0078】
一実施形態において、背面層17は、無機又は有機の微粒子を含んでいても良い。背面層17が、このような微粒子を含むことにより、熱転写時の加熱によるスティッキング及びシワ等の発生をより効果的に抑制できる。
【0079】
無機微粒子としては、例えば、タルク、カオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、シリカ等の酸化物、グラファイト、硝石、又は窒化ホウ素等の無機微粒子が挙げられる。
【0080】
有機微粒子としては、(メタ)アクリル系樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、シリコーン系樹脂、ラウロイル系樹脂、フェノール系樹脂、アセタール系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等からなる有機樹脂微粒子、又はこれらを架橋材と反応させた架橋樹脂微粒子等が挙げられる。
【0081】
背面層17の厚みは、0.1μm以上5μm以下であっても良く、0.3μm以上2μm以下であっても良い。背面層17の厚みを上記数値範囲とすることにより、熱転写時の熱エネルギーの伝達性を維持しつつ、スティッキング及びシワの発生等を抑制できる。
【0082】
背面層17を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を基材11の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、基材11の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、背面層17が形成される。
【0083】
被転写体
次に、
図5により、被転写体30について説明する。被転写体30は、保護層転写シート10によって転写層14が転写される部材である。
【0084】
図5に示すように、被転写体30は、支持体31と、受容層32とを少なくとも備えている。また、一実施形態において、被転写体30は、支持体31上に設けられたクッション層33を更に備えていても良い。また、一実施形態において、被転写体30は、受容層32上に設けられた樹脂層34を更に備えていても良い。また、一実施形態において、被転写体30は、支持体31上又はクッション層33上に設けられたバリア層35を更に備えていても良い。さらに、一実施形態において、被転写体30は、支持体31上又はクッション層33上に設けられた絵柄層36を更に備えていても良い。
【0085】
以下、被転写体30を構成する各層について説明する。
【0086】
<支持体>
支持体31は、受容層32等を支持するとともに、被転写体30全体の強度を高めるための層である。支持体31は、受容層32を保持することができる程度の機械的強度、及び熱転写時に加えられる熱に耐えることができる程度の耐熱性を有していれば、特に限定されることなく、従来公知のものが使用され得る。
【0087】
支持体31として、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙(RC原紙)、キャストコート紙、壁紙、裏打ち用紙、合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙、又はセルロース紙の表裏をポリエチレンでコートした銀塩写真の印画用紙の支持体として使用されるレジンコート紙が使用されても良い。
【0088】
また、支持体31として、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂等から構成されるフィルムが使用されても良い。また、支持体31として、合成樹脂に白色顔料、又は充填材を加えて成膜することにより得られる、内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(多孔質フィルム)が使用されても良い。
【0089】
また、上述した材料の任意の組み合わせによる積層体が、支持体31として使用されても良い。代表的な積層体の例として、セルロース系繊維紙と合成紙との積層体及びセルロース系合成紙とプラスチックフィルムとの積層体が挙げられる。このような積層合成紙は、2層体でも良いが、支持体31の風合い及び質感を出すために、セルロース繊維紙(芯材として使用)の両面に合成紙、プラスチックフィルム若しくは多孔質フィルムを貼合した3層体、又は3層以上の積層体であっても良い。また、支持体31として使用される積層体は、コート紙、レジンコート紙、又はプラスチックフィルム等の表面上に中空粒子を分散させた樹脂層(中空粒子層)を塗設し、断熱性を付与した積層体であっても良い。
【0090】
支持体31が上述した樹脂から構成されるフィルムである場合、該フィルムは、延伸フィルムであっても良く、未延伸フィルムであっても良い。強度を高めるという観点からは、当該樹脂フィルムは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであっても良い。
【0091】
また、受容層32等との密着性の向上の観点からは、支持体31は、表面に凹凸を有していても良い。なお、支持体31に凹凸を形成する場合、上述した基材11と同様の方法により、凹凸を形成できる。
【0092】
支持体31の厚みは、機械的強度及び耐熱性という観点からは、30μm以上300μm以下であっても良く、50μm以上200μm以下であっても良い。
【0093】
<受容層>
受容層32は、顔写真等の画像情報、カードの種類、氏名、住所、生年月日、及び有効期限等の文字情報(以下、これらをまとめて個人情報という場合がある)が記録される層である。受容層32は、画像情報及び文字情報の他、画像情報の枠又は文字情報以外の固定文字等のフォーマット印刷が施されていても良い。
【0094】
一実施形態において、受容層32は、昇華性染料又は熱溶融性インキ等の熱移行性の色材を受容し易い従来公知の樹脂材料を含んでいても良い。このような樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0095】
また、情報の記録に使用する染料は、従来公知の染料を使用できる。例えば、染料としては、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン系染料、ピラゾロン系染料、メチン系染料、インドシアニン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、シアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、又はキノフタロン系染料等が挙げられる。
【0096】
また、低いエネルギーで画像の濃淡を表現できると共に、画像耐久性を向上させることができるため、ポストキレート染料が使用されても良い。
【0097】
一実施形態において、受容層32は離型材を含んでいても良い。受容層32が離型材を含んでいることにより、保護層転写シート10との離型性を向上できる。離型材としては、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系若しくはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応型シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、又は各種シリコーン樹脂等が挙げられる。受容層32は、上述した離型材のうち、シリコーンオイルを含んでいても良い。シリコーンオイルとしては、油状又は硬化型のシリコーンオイルが用いられても良い。このうち硬化型のシリコーンオイルとしては、反応硬化型、光硬化型、又は触媒硬化型等のシリコーンオイルが挙げられる。本実施の形態では、硬化型のシリコーンオイルとして、反応硬化型又は触媒硬化型のシリコーンオイルが用いられても良い。
【0098】
画像等の形成にポストキレート染料が使用される場合、受容層32は、金属イオン含有化合物を含んでいても良い。金属イオン含有化合物としては、Ni2+、Cu2+、Cr2+、Co2+又はZn2+と、酢酸若しくはステアリン酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、又はサルチル酸等の芳香族カルボン酸等との塩が挙げられる。
【0099】
また、一実施形態において、受容層32は、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、又は微粉末シリカ等の顔料又は充填材を含んでいても良い。受容層32が、これらの顔料又は充填材を含んでいることにより、受容層32の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高めることができる。また、一実施形態において、受容層32は、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、又はリン酸エステル化合物等の可塑材を含んでいても良い。
【0100】
さらに、一実施形態において、受容層32は、可塑材、紫外線安定化材、着色防止材、艶消し材、消臭材、難燃材、耐候材、帯電防止材、糸摩擦低減材、スリップ材、離型材、抗酸化材、又はイオン交換材等の添加材を含んでいても良い。
【0101】
受容層32の厚みは、1μm以上50μm以下であっても良く、2μm以上10μm以下であっても良い。
【0102】
受容層32を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を支持体31等の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、支持体31等の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、受容層32が形成される。
【0103】
<クッション層>
クッション層33は、受容層32に形成する画像の品質をより良好なものとするための層である。
【0104】
一実施形態において、クッション層33は、ポリオレフィン系樹脂を含んでいても良い。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-水素添加イソプレン-スチレンブロック共重合体、又はポリブタジエン等が挙げられる。
【0105】
また、一実施形態において、クッション層33は、上述した活性光線硬化性樹脂の硬化物である活性光線硬化樹脂を含んでいても良い。クッション層33が、活性光線硬化樹脂を含んでいることにより、被転写体30の耐薬品性を向上できる。さらに、一実施形態において、クッション層33は、上述した重合開始剤を含んでいても良い。
【0106】
クッション層33の厚みは、3μm以上50μm以下であっても良く、5μm以上30μm以下であっても良い。
【0107】
クッション層33を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を支持体31等の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、支持体31等の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、クッション層33が形成される。
【0108】
<樹脂層>
樹脂層34は、被転写体30と、後述する熱転写シートの熱溶融着色層との融着を抑制する役割を果たす。また、樹脂層34は、後述する熱転写シートから転写された色素の逆転写を抑制するための層である。
【0109】
一実施形態において、樹脂層34は、ポリオレフィン系樹脂を含んでいても良い。とりわけ、樹脂層34は、ポリエチレン又はポリプロピレンを含んでいても良い。樹脂層34がポリエチレンを含んでいる場合、ポリエチレンは、エチレンアクリル変性ポリエチレン、ウレタン変性ポリエチレン、パラフィン変性ポリエチレン、又は低分子量ポリエチレン(重量平均分子量400~3000)であっても良い。なお、樹脂層34は、2種以上のポリオレフィン系樹脂を含んでいても良い。
【0110】
また、一実施形態において、樹脂層34は、ポリエチレンワックス、又はポリプロピレンワックス等のポリオレフィン系ワックスを含んでいても良い。
【0111】
樹脂層34の厚みは、0.1μm以上5μm以下であっても良く、0.3μm以上2μm以下であっても良い。
【0112】
樹脂層34を形成する場合、まず、上記材料を水又は適当な溶媒へ分散又は溶解することにより、塗布液を作製する。次に、当該塗布液を受容層32の上に塗布することにより、塗布膜を形成する。塗布膜は、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター又はロッドコーター等の公知の手段により、受容層32の上に塗布されても良い。次いで、塗布膜を乾燥させる。このようにして、樹脂層34が形成される。
【0113】
<バリア層>
バリア層35は、被転写体30のバリア性を向上させるための層である。被転写体30がクッション層33を備えている場合、バリア層35は、クッション層33上に設けられても良い。
【0114】
一実施形態において、バリア層35は、水溶性樹脂を含んでいても良い。なお、本明細書において、「水溶性樹脂」とは、1気圧下、25℃の水100質量部に、1質量部以上溶解する樹脂を意味する。水溶性樹脂としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0115】
バリア層35の厚みは、0.5μm以上10μm以下であっても良く、1μm以上5μm以下であっても良い。
【0116】
<絵柄層>
絵柄層36は、意匠性を付与するための層である。一実施形態において、絵柄層36は、着色剤及びバインダー樹脂を含んでいても良い。
【0117】
着色剤は、特に限定されるものではなく、従来公知の着色剤が適宜使用されても良い。バインダー樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、又はポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。本実施の形態では、バインダー樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂であっても良い。
【0118】
絵柄層36の厚みは、特に限定されるものではなく、0.1μm以上5μm以下であっても良い。
【0119】
絵柄層36は、熱溶融着色層を備える熱転写シートを使用することにより形成することができる。より、具体的には、基材及び熱溶融着色層を少なくとも備える熱転写シートの裏面側(基材の熱溶融着色層が設けられていない側)を、熱転写用プリンタ(図示せず)のサーマルヘッドを用いて加熱し、熱溶融着色層を被転写体30に熱転写することにより形成できる。
【0120】
このような被転写体30への転写層14転写は、以下のようにして行うことができる。まず、被転写体30の樹脂層34と、保護層転写シート10の転写層14とを重ね合わせる。
【0121】
次に、ラミネーター(日本ジー・ビー・シー(株)製、型番GL835PRO)を使用してこれらをラミネートする。なお、ラミネートは、上下のロール温度を150℃、ラミネートスピードを15.07mm/秒、ロールニップ幅は1mmで行うものとする。ラミネート後、保護層転写シート10から基材11を剥離することで、被転写体30に転写層14が転写される(
図5の破線参照)。
【0122】
以上説明したように、本実施の形態によれば、保護層転写シート10が、基材11と、基材11上に設けられた転写層14とを備えている。また、転写層14が、基材11上に設けられた保護層12と、保護層12上に設けられた接着層13と、を有している。そして、接着層13を撮影した画像を二値化処理することにより、画像を、輝度が所定値未満の白色部13aと、輝度が所定値以上の黒色部13bとに区画したとき、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が、0.005以上0.054以下である。このように、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が0.005以上であることにより、接着層13に添加されたブロッキング防止剤が、主成分としての樹脂材料に溶融することなく、球状の状態で存在する割合が大きくなる。この場合、平面画像(
図4)において、接着層13のうち、主成分の樹脂材料内にブロッキング防止剤の成分が溶け出していない範囲を広くできる。このため、接着層13の接着性を良好に維持した状態で、耐ブロッキング性を向上できる。また、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が0.054以下であることにより、接着層13に添加されたブロッキング防止剤が、主成分としての樹脂材料に溶融する割合を大きくできる。このため、耐ブロッキング性が低下することを抑制できる。なお、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比が、0.005以上0.054以下であることにより、上述した効果を得られることは、後述する実施例により説明する。
【実施例0123】
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0124】
[実施例1]
<保護層転写シートの作製>
厚み25μmのPETフィルム上に、下記の組成からなるプライマー層形成用塗工液を、グラビアコート法により塗布した後、乾燥させ、厚さ0.5μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層形成用塗工液の組成>
・水系ポリウレタン系樹脂(固形分35%) 8質量部
(DIC(株)製、ハイドラン(登録商標)AP-40N)
・エポキシ系樹脂 0.3質量部
(DIC(株)製、ウォーターゾール(登録商標)WSA-950)
・水 10質量部
・溶剤 50質量部
(日本アルコール販売(株)製、ソルミックス(登録商標)A-11)
【0125】
プライマー層上に、下記の組成からなる離型層形成用塗工液を、グラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、厚さ0.6μmの離型層を形成した。
<離型層形成用塗工液の組成>
・エポキシ含有シルセスキオキサン 67質量部
(荒川化学工業(株)製、コンポセラン(登録商標)SQ502―8)
・硬化触媒 3質量部
((株)ダイセル製、セルトップ(登録商標)CAT-A)
・ポリエステル系樹脂 3質量部
(東洋紡(株)製、UR-3500)
・トルエン 100質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
【0126】
離型層上に、下記の組成からなる保護層形成用塗工液を、グラビアコーターにより塗布した後、乾燥させた後に、下記の条件下において、UV露光機(Fusion UV、F600V、LH10ランプ、Hバルブ、反射鏡はコールドタイプ)を用いて紫外線を照射し、厚さ4.5μmの保護層を形成した。
<保護層形成用塗工液の組成>
・多官能アクリレート 20質量部
(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-9300)
・ウレタンアクリレート 20質量部
(新中村化学工業(株)製、NKオリゴマーEA1020)
・ウレタンアクリレート 10質量部
(新中村化学工業(株)製、NKエステルU-15HA)
・反応性バインダー(不飽和基含有) 5質量部
(新中村化学工業(株)製、NKポリマーC24T)
・フィラー(体積平均粒子径12nm) 40質量部
(日産化学工業(株)製、MEK-AC2140)
・界面活性剤(アクリル系界面活性剤) 0.1部
(楠本化学(株)製、LF-1984)
・トルエン 200質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
【0127】
保護層上に、下記の組成からなるプライマー層形成用塗工液を、グラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、厚さ0.8μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層形成用塗工液の組成>
・ポリエステル系樹脂 3.3質量部
(東洋紡(株)、バイロン(登録商標)200)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 2.7質量部
(日信化学工業(株)、ソルバイン(登録商標)CNL)
・ポリイソシアネート硬化剤 1.5質量部
(三井化学(株)製、タケネート(登録商標)D110N)
・トルエン 3.3質量部
・メチルエチルケトン 6.7質量部
【0128】
プライマー層上に、下記の組成からなる接着層形成用塗工液を、グラビアコーターにより塗布した後、乾燥させ、厚さ0.6μmの接着層を形成させ、保護層転写シートを得た(ポリオレフィン系樹脂/(メタ)アクリル系樹脂=9/1)。このとき、接着層形成用塗工液の乾燥温度は、70℃とした。
<接着層形成用塗工液の組成>
・変性ポリオレフィン系樹脂 20質量部
(ユニチカ(株)製、アローベース(登録商標)SE1030N)
・(メタ)アクリル系樹脂 5質量部
(東亞合成(株)製、ジュリマー(登録商標)AT-510)
・ポリオレフィン系樹脂 0.5質量部
(三井化学(株)製、ケミパール(登録商標)W401)
・水 25質量部
・イソプロピルアルコール 25質量部
【0129】
<被転写体の作製>
厚み188μmの白色PETフィルムの一方の面に、グラビアコーターにより、下記組成のクッション層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、水銀灯(300mJ/cm2)を用いて活性光線を照射し、硬化させ、厚さ10μmのクッション層を形成した。
<クッション層形成用塗工液の組成>
・ウレタンアクリレートオリゴマー 50質量部
(新中村化学工業(株)製、NKオリゴUA-160TM)
・アクリル酸エステルポリマー 30質量部
(新中村化学工業(株)製、バナレジンGH-5270)
・ウレタンアクリレートオリゴマー 18質量部
(新中村化学工業(株)製、NKオリゴUA-1280T)
・重合開始剤 2質量部
(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)127)
・メチルエチルケトン 100質量部
【0130】
クッション層上の一部に、グラビアコーターにより、ゼラチンを塗布し、乾燥させ、厚さ0.7μmのバリア層を形成した。
【0131】
バリア層上に、グラビアコーターにより、下記組成の受容層形成用塗工液を塗布し、乾燥させ、厚さ2.45μmの受容層を形成した。
<受容層形成用塗工液の組成>
・ポリビニルブチラール樹脂 6.0質量部
(積水化学工業(株)製、エスレック(登録商標)BX-1)
・金属イオン含有化合物 4.0質量部
(Ni2+[C7H15COC(COOCH3)=C(CH3)O-]2)
・メチルエチルケトン 80質量部
・酢酸n-ブチル 10質量部
【0132】
受容層上に、グラビアコーターにより、下記組成の樹脂層形成用塗工液を塗布し、乾燥させ、厚さ0.4μmの樹脂層を形成させ、被転写体を得た。
<樹脂層形成用塗工液の組成>
・ポリプロピレンワックスエマルジョン(30%固形分) 33質量部
(東邦化学工業(株)製、ハイテックE433N)
・水 67質量部
【0133】
<保護層転写シートの評価>
<<画像評価>>
まず、接着層の画像を評価した。このとき、まず、接着層13を撮影した画像を二値化処理することにより、画像を、輝度が所定値未満の白色部13aと、輝度が所定値以上の黒色部13bとに区画した。
【0134】
接着層13を撮影した画像の二値化処理を行う場合、まず、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクフィールディング製、SU-1510)を用いて、保護層転写シートを、接着層側から、1000倍の倍率で撮影した。このようにして、保護層12の8ビットグレースケールの撮影画像を取得した。
【0135】
次に、画像解析ソフト(Image J)を用いて、撮影画像を解析した。次いで、得られた解析画像の明暗を反転するとともに、OTSU法により、自動閾値処理を行った。これにより、解析画像における輝度分布の閾値を決定し、閾値未満の部分を白色部13aとし、閾値以上の部分を黒色部13bとした。そして、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を測定した。
【0136】
<<転写性評価>>
次に、被転写体への転写層の転写性を評価した。
【0137】
このとき、下記条件で、実施例1による保護層転写シートを用いて、被転写体の樹脂層上へ転写層(保護層+プライマー層+接着層)を転写した。
【0138】
被転写体の樹脂層上への転写層の転写の際、まず、被転写体の樹脂層と、保護層転写シートの転写層とを重ね合わせた。次に、ラミネーター(日本ジー・ビー・シー(株)製、型番GL835PRO)を使用し、被転写体と、保護層転写シートとをラミネートした。この際、ラミネーターの上下のロール温度を150℃、ラミネートスピードを15.07mm/秒、ロールニップ幅を1mmとした。次いで、保護層転写シートから基材を剥離した。このようにして、被転写体に転写層を転写した。
【0139】
被転写体へ転写した転写層の転写性は、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:転写されていない部分(以下、未転写部と記す)が発生していなかったか、又は、未転写部の長さが、保護層転写シートの転写開始端部から0.5mm未満であった。
B:未転写部の長さが、保護層転写シートの転写開始端部から0.5mm以上1.0mm未満であった。
C:未転写部の長さが、保護層転写シートの転写開始端部から1.0mm以上であった。
【0140】
<<耐ブロッキング性評価>>
また、作製した保護層転写シートの耐ブロッキング性を、下記評価基準に基づいて評価した。このとき、まず、保護層転写シートを5cm×5cmの大きさにカットすることにより、サンプルを2枚ずつ作製した。
【0141】
次に、この2枚のサンプルを、一方の接着層と、他方の基材とが接するように重ね合わせた。
【0142】
次いで、重ね合わせたサンプルに1.47MPaの荷重をかけながら、温度が45℃、湿度が85%RHの環境下で、サンプルをオーブンで48時間加熱した。加熱後、2枚のサンプルを手で剥がし、耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
A:サンプル同士を容易に剥がすことができた。
B:サンプル同士を剥がすことができたが、若干抵抗が生じた。
C:サンプル同士が強固に接着しており、サンプル同士を剥がすのが困難であった(剥離できなかった場合を含む)。
【0143】
[実施例2]
接着層形成用塗工液の乾燥温度が80℃であったこと、以外は実施例1と同様にして、保護層転写シートの評価を行った。
【0144】
[実施例3]
接着層形成用塗工液の乾燥温度が90℃であったこと、以外は実施例1と同様にして、保護層転写シートの評価を行った。
【0145】
[実施例4]
接着層形成用塗工液の乾燥温度が100℃であったこと、以外は実施例1と同様にして、保護層転写シートの評価を行った。
【0146】
[比較例1]
接着層形成用塗工液の乾燥温度が60℃であったこと、以外は実施例1と同様にして、保護層転写シートの評価を行った。
【0147】
[比較例2]
接着層形成用塗工液の乾燥温度が110℃であったこと、以外は実施例1と同様にして、保護層転写シートの評価を行った。
【0148】
以上の結果を表1及び
図6乃至
図9に示す。なお、
図6乃至
図9においては、接着層を撮影した画像において、二値化処理後に白色部13a又は黒色部13bになる部分に、符号を付している。
【0149】
【0150】
この結果、表1に示すように、実施例1乃至実施例4による保護層転写シートでは、転写性及び耐ブロッキング性のいずれにおいても、所望の性能を維持できた。このため、本実施の形態による保護層転写シートでは、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を0.005以上0.054以下とすることにより、転写性及び耐ブロッキング性のいずれにおいても、所望の性能を維持できることがわかった。とりわけ、実施例1及び実施例2による保護層転写シートでは、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を0.035以上0.054以下とすることにより、転写性において特に優れた性能を維持しつつ、耐ブロッキング性においても、所望の性能を維持できることがわかった。また、実施例3及び実施例4による保護層転写シートでは、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を0.005以上0.035以下とすることにより、耐ブロッキング性において特に優れた性能を維持しつつ、転写性においても、所望の性能を維持できることがわかった。さらに、実施例2による保護層転写シートでは、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を0.038とすることにより、転写性及び耐ブロッキング性において特に優れた性能を維持できることがわかった。また、接着層形成用塗工液の乾燥温度を調整することにより、白色部13aの合計面積に対する黒色部13bの合計面積比を調整できることがわかった。このため、接着層形成用塗工液の乾燥温度を調整することにより、接着性、転写性及び耐ブロッキング性のいずれにおいても、所望の性能を維持できる保護層転写シートを作製できることがわかった。
【0151】
本開示は上記実施の形態及び各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。